(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151654
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】多層反射膜付き基板の製造方法、反射型マスクブランク及びその製造方法、並びに反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20220929BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20220929BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/84
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026612
(22)【出願日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2021050261
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】浜本 和宏
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BD04
2H195BD27
2H195BE08
2H195CA11
2H195CA22
2H197BA11
2H197CA10
2H197GA01
(57)【要約】
【課題】 欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスクを製造するための多層反射膜付き基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板と、該基板上にEUV光を反射する多層反射膜とを含む多層反射膜付き基板の製造方法であって、前記多層反射膜付き基板に対して、第1の波長を用いて第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して、前記第1の波長とは異なる第2の波長を用いて第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程と、前記第1の欠陥情報と、前記第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定することにより、第3の欠陥情報を取得する工程とを含むことを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上にEUV光を反射する多層反射膜とを含む多層反射膜付き基板の製造方法であって、
前記多層反射膜付き基板に対して、第1の波長を用いて第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程と、
前記多層反射膜付き基板に対して、前記第1の波長とは異なる第2の波長を用いて第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程と、
前記第1の欠陥情報と、前記第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定することにより、第3の欠陥情報を取得する工程とを含むことを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の波長は、露光波長と同程度の波長であり、
前記第1の波長は、前記第2の波長よりも長い波長であることを特徴とする請求項1に記載の多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項3】
前記多層反射膜付き基板は、基準マークRMを含み、
前記第1の欠陥情報は、前記基準マークRMの第1のマーク座標RM1及び第1の欠陥座標を含み、
前記第2の欠陥情報は、前記基準マークRMの第2のマーク座標RM2及び第2の欠陥座標を含み、
前記第3の欠陥情報を取得する工程は、前記第1のマーク座標RM1と前記第2のマーク座標RM2との相対位置座標に基づいて、前記第1のマーク座標RM1を基準とした前記第1の欠陥座標を、前記第2のマーク座標RM2を基準とした座標に変換することに基づくことを特徴とする請求項1又は2に記載の多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記不一致欠陥は、前記第1のマーク座標RM1を基準とした第1の欠陥マップの欠陥とし、
前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記一致欠陥がある場合には、前記一致欠陥は、前記第2のマーク座標RM2を基準とした第2の欠陥マップの欠陥とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程と、
前記多層反射膜付き基板に対して、前記第1の欠陥検査及び前記第2の欠陥検査とは異なる第3の欠陥検査を行う工程とを更に含み、
前記第3の欠陥検査は、前記一致欠陥、及び前記第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含み、
前記第3の欠陥検査で測定された前記欠陥寸法が、前記第3の欠陥情報に追加されることを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項6】
多層反射膜付き基板が、前記多層反射膜の上に保護膜を更に含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の多層反射膜付き基板の製造方法で作製された多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板の上に形成された吸収体膜とを有することを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記吸収体膜は、該吸収体膜に形成された第2基準マークFMと、前記吸収体膜に前記基準マークRMが転写された転写基準マークRM’とを含むことを特徴とする請求項7に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の反射型マスクブランクの前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程と、
前記反射型マスクブランクに対して、前記第1の波長及び前記第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査を行う工程とを更に含み、
前記第3の欠陥検査は、前記吸収体膜に転写された前記一致欠陥、及び前記第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含み、
前記第3の欠陥検査で測定された前記欠陥寸法が、前記第3の欠陥情報に追加されることを含むことを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項10】
請求項7若しくは8に記載の反射型マスクブランク、又は請求項9に記載の反射型マスクブランクの製造方法により製造される反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される反射型マスク、反射型マスクを製造するために用いられる反射型マスクブランク及びその製造方法、並びに反射型マスクブランクを製造するために用いられる多層反射膜付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、半導体装置の高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィ法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされてきている。このような微細パターン形成を可能とするため、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2~100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィにおいて用いられる転写用マスクとして反射型マスクが提案されている。このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、その多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。
【0003】
露光装置にセットされた反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射される。反射された像は反射光学系を通して半導体基板上に転写されることでマスクパターンを形成する。上記多層反射膜としては、例えば13~14nmの波長を有するEUV光を反射するものとして、数nmの厚さのMoとSiを交互に積層させたものなどが知られている。
【0004】
このような反射型マスクブランクの製造方法として、特許文献1には、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、積層膜が形成されている反射型マスクブランクの製造方法が記載されている。具体的には、特許文献1には、製造方法が、前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記積層膜を成膜する工程と、前記積層膜の上部に、欠陥情報における欠陥位置の基準となる基準マークを形成して、該基準マークが形成された反射型マスクブランクを形成する工程と、前記基準マークを基準にして前記反射型マスクブランクの欠陥検査を行う工程と、を含むことが記載されている。
【0005】
特許文献2には、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法が記載されている。具体的には、特許文献2には、製造方法が、前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記吸収体膜を成膜する工程と、パターン形成領域の外周縁領域に、前記吸収体膜を除去して、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成された反射型マスクブランクを形成する工程と、前記アライメント領域を用いて前記反射型マスクブランクの欠陥管理を行う工程と、を含むことが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜とを有する多層反射膜付き基板が記載されている。具体的には、特許文献3には、多層反射膜付き基板が、前記多層反射膜付き基板における欠陥の位置の基準となる基準マークを備えており、前記基準マークの個数は、所定の手順によって予め求められた個数であることが記載されている。所定の手順として次のことが記載されている。すなわち、所定の手順の(1)では、第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。所定の手順の(2)では、第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板における前記欠陥の第2の欠陥座標、及び、前記基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。所定の手順の(3)では、前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。所定の手順の(4)では、上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。所定の手順の(5)では、上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。所定の手順の(6)では、基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。所定の手順の(7)では、3σの値が、50nm未満となる基準マークの個数を決定する。
【0007】
また、特許文献4及び5には、リソグラフィに使用されるマスクブランク用基板が記載されている。また、特許文献4及び5には、検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA-Tencor社製「Teron600シリーズ」)、及び検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、多層反射膜付き基板の欠陥検査をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2014/129527号
【特許文献2】国際公開第2017/169973号
【特許文献3】国際公開第2020/95959号
【特許文献4】国際公開第2014/104276号
【特許文献5】国際公開第2015/046303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マスクブランクの欠陥データとデバイスパターンデータとを元に、欠陥が存在している箇所に吸収体パターンが形成されるように描画データを補正して、欠陥を軽減させる技術(Defect Mitigation Technology、本明細書では、「DM技術」という。)が提案されている。DM技術を実現するために、例えば、多層反射膜上に吸収体膜が形成された反射型マスクブランクにおいて、吸収体膜上に形成されたレジスト膜に電子線描画装置を用いてパターンを描画する際に、電子線描画装置においても電子線で基準マークを検出する。DM技術では、電子線描画装置で検出した基準点に基づいて、補正・修正した描画データを元に、レジスト膜にパターンを描画する。
【0010】
一方、EUV光を使用したリソグラフィにおける急速なパターンの微細化に伴い、反射型マスクであるEUVマスクに要求される欠陥寸法(Defect Size)も年々微細になっている。このような微細欠陥を発見するために、欠陥検査で使用する検査光源波長は露光光(例えばEUV光)の光源波長に近づきつつある。
【0011】
EUVマスク、EUVマスクの原版であるEUVマスクブランク、多層反射膜付き基板、及び基板(サブストレート)の欠陥検査装置としては、例えば、検査光源波長が266nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」、検査光源波長が193nmであるKLA-Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ(例えば「Teron610」)」などが普及している。近年では、検査光源波長が露光光源波長の13.5nmであるABI(Actinic Blank Inspection)装置が提案されている。
【0012】
しかしながら、検査光源波長が266nm又は193nmの欠陥検査装置では、微細欠陥を発見することが困難である。一方、検査光源波長13.5nmのABI装置を用いて反射型マスクブランクの高精度な欠陥検査を行った場合でも、すべての欠陥及び寸法を特適することが困難である。そのため、DM技術による描画データの補正に問題が生じる場合がある。
【0013】
そこで本発明は、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスクを製造するための多層反射膜付き基板、及び反射型マスクブランクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0016】
(構成1)
本発明の構成1は、基板と、該基板上にEUV光を反射する多層反射膜とを含む多層反射膜付き基板の製造方法であって、
前記多層反射膜付き基板に対して、第1の波長を用いて第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程と、
前記多層反射膜付き基板に対して、前記第1の波長とは異なる第2の波長を用いて第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程と、
前記第1の欠陥情報と、前記第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定することにより、第3の欠陥情報を取得する工程とを含むことを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0017】
(構成2)
本発明の構成2は、前記第2の波長は、露光波長と同程度の波長であり、前記第1の波長は、前記第2の波長よりも長い波長であることを特徴とする構成1の多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0018】
(構成3)
本発明の構成3は、前記多層反射膜付き基板は、基準マークRMを含み、
前記第1の欠陥情報は、前記基準マークRMの第1のマーク座標RM1及び第1の欠陥座標を含み、
前記第2の欠陥情報は、前記基準マークRMの第2のマーク座標RM2及び第2の欠陥座標を含み、
前記第3の欠陥情報を取得する工程は、前記第1のマーク座標RM1と前記第2のマーク座標RM2との相対位置座標に基づいて、前記第1のマーク座標RM1を基準とした前記第1の欠陥座標を、前記第2のマーク座標RM2を基準とした座標に変換することに基づくことを特徴とする構成1又は2の多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0019】
(構成4)
本発明の構成4は、前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記不一致欠陥は、前記第1のマーク座標RM1を基準とした第1の欠陥マップの欠陥とし、
前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記一致欠陥がある場合には、前記一致欠陥は、前記第2のマーク座標RM2を基準とした第2の欠陥マップの欠陥とすることを特徴とする構成1~3のいずれかの多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0020】
(構成5)
本発明の構成5は、前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程と、
前記多層反射膜付き基板に対して、前記第1の欠陥検査及び前記第2の欠陥検査とは異なる第3の欠陥検査を行う工程とを更に含み、
前記第3の欠陥検査は、前記一致欠陥、及び前記第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含み、
前記第3の欠陥検査で測定された前記欠陥寸法が、前記第3の欠陥情報に追加されることを含むことを特徴とする構成1~4のいずれかの多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0021】
(構成6)
本発明の構成6は、多層反射膜付き基板が、前記多層反射膜の上に保護膜を更に含むことを特徴とする構成1~5のいずれかの多層反射膜付き基板の製造方法である。
【0022】
(構成7)
本発明の構成7は、構成1~6のいずれかの多層反射膜付き基板の製造方法で作製された多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板の上に形成された吸収体膜とを有することを特徴とする反射型マスクブランクである。
【0023】
(構成8)
本発明の構成8は、前記吸収体膜は、該吸収体膜に形成された第2基準マークFMと、前記吸収体膜に前記基準マークRMが転写された転写基準マークRM’とを含むことを特徴とする構成7の反射型マスクブランクである。
【0024】
(構成9)
本発明の構成9は、構成7又は8の反射型マスクブランクの前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報との間で前記不一致欠陥がある場合には、前記第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程と、
反射型マスクブランクに対して、前記第1の波長及び前記第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査を行う工程とを更に含み、
前記第3の欠陥検査は、前記吸収体膜に転写された前記一致欠陥、及び前記第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含み、
前記第3の欠陥検査で測定された前記欠陥寸法が、前記第3の欠陥情報に追加されることを含むことを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
【0025】
(構成10)
本発明の構成10は、構成7若しくは8の反射型マスクブランク、又は構成9の反射型マスクブランクの製造方法により製造される反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスクの製造方法を提供することができる。
【0027】
また、本発明により、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスクを製造するための多層反射膜付き基板、及び反射型マスクブランクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態の多層反射膜付き基板の一例の断面模式図である。
【
図2】本実施形態の多層反射膜付き基板の別の一例の断面模式図である。
【
図3】本実施形態の反射型マスクブランクの一例の断面模式図である。
【
図4】本実施形態の反射型マスクの製造方法を断面模式図にて示した工程図である。
【
図5】本実施形態の多層反射膜付き基板の一例を示す平面模式図である。
【
図6】本実施形態の多層反射膜付き基板の別の一例を示す平面模式図である。
【
図7】本実施形態の反射型マスクブランクの一例を示す平面模式図である。
【
図8】基準マーク(第2基準マークFM)の形状の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体的に説明するための形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0030】
図1に、本実施形態の多層反射膜付き基板110の一例の断面模式図を示す。本実施形態は、基板1と、基板1上にEUV光を反射する多層反射膜5とを含む多層反射膜付き基板110の製造方法である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の多層反射膜付き基板110は、基板1の上に多層反射膜5を備える。多層反射膜5は、露光光を反射するための膜であり、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層させた多層膜からなる。なお、本実施形態の多層反射膜付き基板110は、基板1の裏面(多層反射膜5が形成された主表面とは反対側の主表面)に、裏面導電膜2を含むことができる。
【0032】
図2に、本実施形態の多層反射膜付き基板110の別の一例の断面模式図を示す。
図2に示す例では、多層反射膜付き基板110が保護膜6を含む。
【0033】
本実施形態の多層反射膜付き基板110を用いて、反射型マスクブランク100を製造することができる。
図3に、本実施形態の反射型マスクブランク100の一例の断面模式図を示す。反射型マスクブランク100は、吸収体膜7を更に含む。
【0034】
具体的には、本実施形態の反射型マスクブランク100は、多層反射膜付き基板110の最表面(例えば、多層反射膜5又は保護膜6の表面)の上に、吸収体膜7を有する。本実施形態の反射型マスクブランク100を用いることにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を得ることができる。
【0035】
本明細書において、「多層反射膜付き基板110」とは、所定の基板1の上に多層反射膜5が形成されたものをいう。
図1及び
図2に、多層反射膜付き基板110の断面模式図の例を示す。なお、多層反射膜付き基板110は、多層反射膜5以外の薄膜、例えば保護膜6及び/又は裏面導電膜2が形成されたものを含む。
【0036】
本明細書において、「反射型マスクブランク100」とは、多層反射膜付き基板110の上に吸収体膜7が形成されたものをいう。なお、反射型マスクブランク100は、多層反射膜付き基板110の上に、吸収体膜7以外の薄膜(例えば、エッチングマスク膜及び/又はレジスト膜8等)が更に形成されたものを含む。
【0037】
本明細書において、「多層反射膜5の上に吸収体膜7を配置(形成)する」とは、吸収体膜7が、多層反射膜5の表面に接して配置(形成)されることを意味する場合の他、多層反射膜5と、吸収体膜7との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。その他の膜についても同様である。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
【0038】
<多層反射膜付き基板110>
本実施形態の多層反射膜付き基板110を構成する基板1及び各薄膜について説明をする。
【0039】
<<基板1>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110における基板1は、EUV露光時の熱による吸収体パターン7aの歪みの発生を防止することが必要である。そのため、基板1としては、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0040】
基板1の転写パターン(後述の吸収体パターン7aに相当する。)が形成される側の第1主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から、所定の平坦度となるように表面加工される。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下である。また、吸収体膜7が形成される側と反対側の第2主表面(裏面)は、露光装置にセットするときに静電チャックされる表面である。第2主表面は、142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下である。
【0041】
また、基板1の表面平滑性の高さも極めて重要な項目である。転写用吸収体パターン7aが形成される第1主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)で0.15nm以下、より好ましくはRmsで0.10nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑性は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0042】
更に、基板1は、基板1の上に形成される膜(多層反射膜5など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、基板1は、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0043】
<<多層反射膜5>>
多層反射膜5は、反射型マスク200において、EUV光を反射する機能を付与する。多層反射膜5は、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜の構成である。
【0044】
一般的には、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜5として用いられる。多層膜は、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。また、多層膜は、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜5の最表面の層、すなわち多層反射膜5の基板1と反対側の表面層は、高屈折率層とすることが好ましい。上述の多層膜において、基板1から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となる。この場合、低屈折率層が多層反射膜5の最表面を構成すると容易に酸化されてしまい反射型マスク200の反射率が減少する。そのため、最上層の低屈折率層上に高屈折率層を更に形成して多層反射膜5とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となるので、そのままでよい。
【0045】
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び酸素(O)を含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用の反射型マスク200が得られる。また、本実施形態において基板1としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜5としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜5の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、最上層(Si)とRu系保護膜6との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成するようにしてもよい。これにより、マスク洗浄耐性を向上させることができる。
【0046】
このような多層反射膜5の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜5の各構成層の膜厚及び周期は、露光波長により適宜選択すればよく、ブラッグ反射の法則を満たすように選択される。多層反射膜5において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在する。高屈折率層同士、そして低屈折率層同士の膜厚が同じでなくてもよい。また、多層反射膜5の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
【0047】
多層反射膜5の形成方法は当該技術分野において公知である。例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜5の各層を成膜することで形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板1の上に成膜する。その後、Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜する。このSi膜及びMo膜を1周期として、40から60周期積層して、多層反射膜5を形成する(最表面の層はSi層とする)。また、多層反射膜5の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜5を形成することが好ましい。なお、多層反射膜5は、積層周期数の増加による反射率の向上、及び工程数が増加することによるスループットの低下などの点から、40周期程度であることが好ましい。ただし、多層反射膜5の積層周期数は、40周期に限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
【0048】
<<保護膜6>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110では、
図2に示すように、多層反射膜5の上に保護膜6を有することが好ましい。多層反射膜5の上に保護膜6が形成されていることにより、多層反射膜付き基板110を用いて反射型マスク200を製造する際の多層反射膜5の表面へのダメージを抑制することができる。そのため、得られる反射型マスク200のEUV光に対する反射率特性が良好となる。
【0049】
保護膜6は、後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から、多層反射膜5を保護するために、多層反射膜5の上に形成される。また、保護膜6は、電子線(EB)を用いたマスクパターンの黒欠陥修正の際の多層反射膜5の保護という機能も兼ね備える。ここで、
図2では、保護膜6が1層の場合を示している。しかしながら、保護膜6を2層の積層構造としてもよいし、又は、保護膜6を3層以上の積層構造とし、最下層及び最上層を、例えばRuを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させたものすることができる。保護膜6は、例えば、ルテニウムを主成分として含む材料により形成される。ルテニウムを主成分として含む材料としては、Ru金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)及びレニウム(Re)から選択される少なくとも1つの金属を含有したRu合金、及びそれらに窒素を含む材料が挙げられる。
【0050】
保護膜6に用いるRu合金のRu含有比率は50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、より好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合には、保護膜6に対する多層反射膜5の構成元素(例えば、ケイ素)の拡散を抑えることが可能になる。また、この場合の保護膜6は、EUV光の反射率を十分確保しながら、マスク洗浄耐性、吸収体膜7をエッチング加工した時のエッチングストッパ機能、及び多層反射膜5の経時的変化防止の機能を兼ね備えることが可能となる。
【0051】
保護膜6の膜厚は、保護膜6としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜6の膜厚は、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
【0052】
保護膜6の形成方法としては、公知の膜形成方法を特に制限なく採用することができる。具体例としては、保護膜6の形成方法として、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0053】
<多層反射膜付き基板110の製造方法>
次に、本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法を説明する。
【0054】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、まず、上述の基板1を用意し、基板1の第1主表面の上に、上述の多層反射膜5を形成する(
図1参照)。必要に応じて、多層反射膜5の上に、上述の保護膜6を形成することができる(
図2参照)。なお、本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、更に、基板1の裏面(多層反射膜5が形成された主表面とは反対側の主表面)に、裏面導電膜2を形成することができる(
図2参照)。
【0055】
<<第1の欠陥情報を取得する工程>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法は、多層反射膜付き基板110の多層反射膜5が形成された主表面に対して、第1の波長を用いて第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程を含む。
なお、本明細書における「欠陥情報」とは、欠陥検査において検出された欠陥と評価され得る構造についての情報、例えば、位置情報を含むデータであり、欠陥情報は、必ずしも欠陥として扱われない構造についての情報も含む。
【0056】
なお、保護膜6の膜厚は、上述のように最も厚くても8nmであり、非常に薄い。そのため、多層反射膜5の上に保護膜6を形成した場合であっても、欠陥検査により、多層反射膜5の欠陥を検出することができる。他の欠陥検査についても同様である。
【0057】
第1の欠陥検査で用いられる「第1の波長」とは、後述する第2の欠陥検査のための第2の波長とは異なる波長である。第1の波長は、例えば、365nm、355nm、266nm、213nm及び193nmなどの波長であることができる。第1の波長が365nmの場合、第1の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、例えば、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の座標計測器「LMS-IPRO4」を用いることができる。第1の波長が266nm又は355nmの場合、第1の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、例えば、検査光源波長が266nm又は355nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」又は「MAGICS M8650」を用いることができる。第1の波長が213nmの場合、検査波長が213nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M9650」を用いることができる。第1の波長が193nmの場合、検査光源波長が193nmであるKLA-Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ、例えばTeron610」、又は波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の座標計測器「PROVE」を用いることができる。欠陥検査装置による欠陥検査、又は座標計測器による欠陥座標の測定によって、多層反射膜付き基板110の欠陥の位置及び寸法に関する情報(第1の欠陥情報)を得ることができる。
【0058】
精度よく欠陥検査を行うことができることから、第1の欠陥検査には、第1の波長が355nmであるマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M8650」を用いることが好ましい。
【0059】
多層反射膜付き基板110は、基準マークRM(例えば、ドットマーク)を含むことが好ましい。基準マークRMは、AM(アライメントマーク)と呼ばれることもある。AMは、欠陥検査装置で多層反射膜付き基板110上の欠陥を検査した際に、欠陥座標の基準として使用できるマークである。しかし、AMは、電子線描画装置によってパターンを描画する際には、直接使用されない。基準マークRMの形状は、例えば、ドットマーク、略十字型マーク又は四角形マークであることができる。基準マークRMの形状は、欠陥検査装置による検出が容易であることから、ドットマーク又は略十字型マークであることが好ましく、円形のドットマークであることがより好ましい。
図5に、基準マークRMとして、円形のドットマークである基準マーク20を形成した例を示す。多層反射膜付き基板110が、基準マークRMを有することにより、欠陥検査によって得られた欠陥の位置座標を、基準マークRMの位置座標と関連付けることができる。そのため、多層反射膜付き基板110の欠陥の位置を、より正確に特定することができる。
【0060】
第1の欠陥情報は、前記基準マークRMの第1のマーク座標RM1及び第1の欠陥座標を含むことが好ましい。
【0061】
本明細書では、第1の欠陥検査で測定された基準マークRMの位置座標のことを、「第1のマーク座標RM1」という場合がある。第1の欠陥情報は、基準マークRMの第1のマーク座標RM1を含むことができる。基準マークRMの位置座標を関連付けて多層反射膜付き基板110の欠陥の位置を特定することにより、第1の欠陥検査で測定された欠陥の位置を、より正確に特定することができる。
【0062】
図5は、本実施形態の多層反射膜付き基板110の平面図である。
図5に示す例では、略矩形状の多層反射膜付き基板110の4つの角部の近傍には、基準マークRMの一例として、基準マーク20がそれぞれ2つずつ形成されている。基準マーク20は、欠陥情報における欠陥位置の基準として使用されるマークである。
図5では、基準マーク20が8個形成されている例を示している。基準マーク20は、4つの角部のうち少なくとの3つの角部に配置する必要がある。したがって、基準マーク20の個数は、3個以上であればよく、4個以上であることが好ましい。また、基準マーク20は、4つの角部に各1個配置されることが好ましく、4つの角部に各2個配置されることがより好ましい。また、3個以上の基準マーク20は、少なくとも2軸上に配置することが必要である。
【0063】
図5に示す多層反射膜付き基板110において、基板1の大きさが152mm×152mmの場合、破線Aの内側のパターン形成領域(132mm×132mmの領域)には、反射型マスク200を製造するときに吸収体パターン7aが形成される。破線Aの外側の領域には、反射型マスク200を製造するときに吸収体パターン7aが形成されない。基準マーク20は、好ましくは、吸収体パターン7aが形成されない領域、すなわち、破線Aの上、あるいは、破線Aの外側の領域に形成される。
【0064】
図5に示すように、基準マーク20は、円形のドット形状を有している。円形のドット形状を有する基準マーク20の直径は、例えば、200nm以上10μm以下である。
図5では、円形のドット形状を有する基準マーク20の例を示しているが、基準マーク20の形状はこれに限定されない。基準マーク20の形状は、例えば、略十字型、平面視で略L字型、三角形又は四角形等であってもよい。
【0065】
本実施形態の多層反射膜付き基板110は、上述の基準マークRMとは形状又は寸法が異なる基準マークCMを更に有することができる。
図6に、円形のドット形状の基準マーク20(基準マークRM)と共に、略十字型の基準マーク22(基準マークCM)を有する多層反射膜付き基板110を示す。基準マークCMは、略十字型の基準マーク22であることが好ましい。多層反射膜付き基板110が、基準マークCMを含む場合、第1の欠陥情報及び/又は第2の欠陥情報は、基準マークCMのマーク座標CM1を更に含むことができる。多層反射膜付き基板110の上に吸収体膜7及びレジスト膜8を形成したときに、基準マークCMは、吸収体膜7及びレジスト膜8に転写されるように、基準マークCMの寸法(大きさ及び深さ)を調節することができる。このような基準マークCMは、第2基準マークFM(
図7に示す基準マーク24)として用いることができる。また、基準マークCMは、AM(アライメントマーク)として用いることもできる。多層反射膜付き基板110が基準マークCMを有することにより、第1及び第2の欠陥検査に基づく欠陥マップ(欠陥座標を示すマップ)を、第2基準マークFMを基準とした欠陥マップに変換することが可能になる。
【0066】
基準マーク20の断面形状は、例えば凹状であることができる。「凹状」とは、多層反射膜付き基板110の断面(多層反射膜付き基板110の主表面に垂直な断面)を見たときに、基準マーク20が下方に向けて例えば段差状あるいは湾曲状に凹むようにして形成されていることを意味する。凹状に形成された基準マーク20の深さDは、好ましくは、30nm以上であり、40nm以上がより好ましい。また、基準マーク20の深さDは、基板1が露出する深さとすることもできる。深さDとは、多層反射膜付き基板110の表面から、基準マーク20の底部の最も深い位置までの垂直方向の距離のことを意味する。
【0067】
基準マーク20の形成方法は、特に制限されない。基準マーク20は、例えば、多層反射膜付き基板110の表面にレーザ加工によって形成することができる。このとき、多層反射膜5を成膜した後に基準マーク20を形成し、その後、保護膜6を成膜することができる。また、先に多層反射膜5及び保護膜6を成膜し、その後、基準マーク20を形成することができる。レーザ加工の条件は、例えば、以下の通りである。
レーザの種類(波長):紫外線~可視光領域。例えば、波長405nmの半導体レーザ
レーザ出力:1~120 mW
スキャン速度:0.1~20 mm/s
パルス周波数:1~100 MHz
パルス幅:3ns~1000s
【0068】
基準マーク20をレーザ加工する際に使用するレーザは、連続波でもよく、パルス波でもよい。パルス波を用いた場合、連続波と比較して、基準マーク20の深さDが同程度であっても、基準マーク20の幅Wをより小さくすることが可能である。このため、パルス波を用いた場合、連続波と比較して、よりコントラストが大きく、欠陥検査装置や電子線描画装置によって検出し易い基準マーク20を形成することができる。
【0069】
基準マーク20の形成方法は、レーザに限定されない。基準マーク20は、例えば、フォトリソグラフィ法、FIB(集束イオンビーム)、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、微小圧子によるインデンション、及びインプリント法による型押しなどの方法で形成することができる。
【0070】
基準マーク20の断面形状は、凹状に限定されない。例えば、基準マーク20の断面形状は、上方に突出する凸状であってもよい。基準マーク20の断面形状が凸状の場合、FIBやスパッタリング法などによる部分成膜などで形成することができる。凸状に形成された基準マーク20の高さHは、好ましくは、30nm以上であり、40nm以上がより好ましい。高さHとは、多層反射膜付き基板110の表面から、基準マーク20の最も高い位置までの垂直方向の距離のことを意味する。
【0071】
多層反射膜付き基板110に基準マーク20を形成した場合には、欠陥検査装置によって、基準マーク20(基準マークRM)の座標(マーク座標RM1)及び欠陥の座標を高精度に取得する必要がある。したがって、多層反射膜付き基板110に形成された基準マーク20は、欠陥検査装置又は座標計測器によって検出可能な程度に高いコントラストを有している必要がある。
【0072】
<<第2の欠陥情報を取得する工程>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法は、多層反射膜付き基板110の多層反射膜5が形成された主表面に対して、第1の波長とは異なる第2の波長を用いて第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程を含む。
【0073】
「第2の波長」とは第2の欠陥検査に用いられる波長であり、上述の第1の欠陥検査のための第1の波長とは異なる波長である。本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法において、第2の波長は、露光波長と同程度の波長であることが好ましい。「露光波長と同程度の波長」とは、露光波長λとして、λ±1nmの波長であることができる。例えば、露光波長λ=13.5nmの場合には、第2の波長は、12.5~14.5nmの波長とすることができる。具体的には、第2の欠陥検査のための装置として、検査光源波長が露光光源波長の13.5nmと同じであるABI(Actinic Blank Inspection)装置を用いることができる。第2の波長が、露光波長と同程度の波長であることにより、微細な欠陥を検出することができる。
【0074】
第1の波長は、第2の波長よりも長い波長であることが好ましい。具体的には、第1の欠陥検査のための第1の波長として、193~365nm程度の波長を用い、第2の欠陥検査のための第2の波長として、12.5~14.5nmの波長を用いることができる。第1の波長が、第2の波長よりも長い波長であることにより、第2の波長で検出できる欠陥とは異なった欠陥を検出することができる場合がある。
【0075】
第2の欠陥検査では、第2の波長を用いて欠陥検査を行い、第2の欠陥座標を測定する。第2の欠陥検査では、第1の欠陥検査とは異なった波長を用いるため、第2の欠陥検査で得られる欠陥座標(第2の欠陥座標)は、同じ欠陥であっても、第1の欠陥座標とは異なる場合がある。また、第1の欠陥検査では検出できなかった欠陥が、第2の欠陥検査では検出される場合がある。また、第1の欠陥検査では検出できた欠陥が、第2の欠陥検査では検出されない場合がある。また、第1の欠陥検査では検出できた欠陥の寸法が、第2の欠陥検査では検出されたその欠陥の寸法と異なる場合がある。したがって、第1の欠陥検査の後に、第2の欠陥検査を行い、2つの欠陥検査から得られた情報を比較することにより、より正確な欠陥情報を得ることができる。
【0076】
第2の欠陥情報は、基準マークRMの第2のマーク座標RM2及び第2の欠陥座標を含むことが好ましい。
【0077】
本明細書では、第2の欠陥検査で測定された基準マークRM(例えば、
図5に示す基準マーク20)の位置座標のことを、「第2のマーク座標RM2」という場合がある。基準マークRMは、上述の第1の欠陥検査で述べたものと同じである。第2の欠陥情報は、基準マークRMの第2のマーク座標RM2を含むことができる。基準マークRMの位置座標を関連付けて多層反射膜付き基板110の欠陥の位置を特定することにより、第2の欠陥検査で測定された欠陥の位置を、より正確に特定することができる。
【0078】
また、本実施形態の別の実施形態として、第1の欠陥情報と、第2の欠陥情報とは、高さ方向の情報が異なることができる。
【0079】
すなわち、別の実施形態は、基板1と、基板1上にEUV光を反射する多層反射膜5を有する多層反射膜付き基板110の製造方法である。別の実施形態は、多層反射膜付き基板110に対して、第1の波長で第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程、及び多層反射膜付き基板110に対して、第1の波長とは異なる第2の波長で第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程とを備える。別の実施形態では、第1の欠陥情報と、第2の欠陥情報とは、高さ方向の情報が異なる。高さ方向とは、基板1の主表面に対して垂直な方向である。高さ方向の情報とは、欠陥の存在する高さ方向の位置、及び/又は欠陥の寸法のうちの高さ方向の大きさを意味する。例えば、第1の欠陥情報は、多層反射膜5の表層近傍に位置する欠陥の座標及び/又は高さ方向の大きさを含み、第2の欠陥情報は、多層反射膜5の内部に位置する欠陥の座標及び/又は高さ方向の大きさを含んでもよい。
【0080】
<<第3の欠陥情報を取得する工程>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法は、第1の欠陥情報と、第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定することにより、第3の欠陥情報を取得する工程を含む。
なお、本明細書における「第3の欠陥情報」とは、第1の欠陥情報及び第2の欠陥情報に基づき得られる欠陥情報を含むデータであり、第3の欠陥情報は、第1の欠陥情報及び第2の欠陥情報に基づき行われる第3の欠陥検査によって得られる欠陥情報も含む。
【0081】
第1の欠陥検査と、第2の欠陥検査とでは、異なった波長を用いて欠陥検査をするため、第1の欠陥検査では検出できなかった欠陥が、第2の欠陥検査では検出される場合がある。また、第1の欠陥検査では検出できた欠陥が、第2の欠陥検査では検出されない場合がある。また、第1の欠陥検査と同様の欠陥が、第2の欠陥検査で検出される場合がある。また、第2の欠陥検査で得られる欠陥座標(第2の欠陥座標)は、同じ欠陥であっても、第1の欠陥座標とは欠陥の寸法が異なる場合がある。そのため、第3の欠陥情報を取得するために、第1の欠陥情報と、第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定する。例えば、第1の欠陥検査の第1のマーク座標RM1と第2の欠陥検査の第2のマーク座標RM2とに基づいて、第1の欠陥検査の座標系を第2の欠陥検査の座標系にアフィン変換する。アフィン変換した第1の欠陥座標と第2の欠陥座標との距離及び第1の欠陥検査の座標精度と第2の欠陥検査の座標精度を考慮して算出した値(欠陥距離)と、第1の欠陥及び第2の欠陥の各寸法とに基づいて算出した値(欠陥長さ、すなわち距離)とを比較し、欠陥距離が欠陥長さより短い場合に、一致欠陥と判定することができる。この結果、欠陥の位置座標などの情報を、より正確に特定することができる。
【0082】
なお、本明細書で、「不一致欠陥」とは、第1の欠陥検査では検出できた欠陥が、第2の欠陥検査では検出されない欠陥、又は第2の欠陥検査では検出できた欠陥が、第1の欠陥検査では検出されない欠陥のことをいう。
【0083】
また、本明細書で、「一致欠陥」とは、第1の欠陥検査では検出できた欠陥が、第2の欠陥検査でも検出された欠陥のことをいう。
【0084】
第3の欠陥情報を取得する工程では、第1のマーク座標RM1と第2のマーク座標RM2との相対位置座標に基づいて、第1のマーク座標RM1を基準とした第1の欠陥座標を、第2のマーク座標RM2を基準とした座標に変換することによって第3の欠陥情報を取得することが好ましい。第3の欠陥情報を取得する際に、第1の欠陥検査の座標系である第1の欠陥座標を、第2の欠陥検査の座標系に変換することができる。
【0085】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報との間で不一致欠陥がある場合には、不一致欠陥は、第1のマーク座標RM1を基準とした第1の欠陥マップの欠陥とすることが好ましい。なお、第1の欠陥マップとは、第1のマーク座標RM1(第1の欠陥検査で測定された基準マークRMの位置座標)を基準とした欠陥の座標を示す欠陥マップのことを意味する。
【0086】
第1の波長より短波長の第2の波長を用いる第2の欠陥検査では、反射防止膜の表面近傍にある欠陥を検出できない場合がある。その場合には、不一致欠陥の欠陥情報として、第1の波長を用いて第1の欠陥検査により得られた第1の欠陥情報を採用して、第3の欠陥情報とすることができる。
【0087】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報との間で一致欠陥がある場合には、一致欠陥は、第2のマーク座標RM2を基準とした第2の欠陥マップの欠陥とすることが好ましい。なお、第2の欠陥マップとは、第2のマーク座標RM2(第2の欠陥検査で測定された基準マークRMの位置座標)を基準とした欠陥の座標を示す欠陥マップのことを意味する。
【0088】
一般的に、短波長の検査光を用いる第2の欠陥検査の方が、測定精度が高い。そのため、第1の欠陥検査及び第2の欠陥検査の両方で検出された欠陥(一致欠陥)の場合には、より精度の高い第2の欠陥検査により得られた第2の欠陥情報を採用して、第3の欠陥情報とすることができる。
【0089】
なお、不一致欠陥のうち、第2の欠陥検査では検出されない欠陥については、第3の欠陥情報として、第1の欠陥情報を用いることができる。また、不一致欠陥のうち、第2の欠陥検査では検出できた欠陥については、第3の欠陥情報として、第2の欠陥情報を用いることができる。また、一致欠陥については、第3の欠陥情報として、第2の欠陥情報を用いることができる。一般的に短波長の検査光を用いる第2の欠陥検査の方が、通常は、測定精度が高いためである。
【0090】
第3の欠陥情報は、第1の欠陥情報及び/又は第2の欠陥情報における欠陥寸法を変換した情報を含む。すなわち、多層反射膜付き基板の製造方法は、多層反射膜付き基板に対して、第1の座標精度を有する第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程と、多層反射膜付き基板に対して、前記第1の座標精度とは異なる第2の座標精度を有する第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程とを含み、第1の欠陥情報における欠陥寸法及び第2の欠陥情報における欠陥寸法のうちの少なくとも1つの欠陥寸法のサイズ変換を行って第3の欠陥情報を取得する。
【0091】
また、多層反射膜付き基板の製造方法は、多層反射膜付き基板に対して、第1の座標精度を有する第1の欠陥検査を行い、第1の欠陥情報を取得する工程と、多層反射膜付き基板に対して、前記第1の座標精度とは異なる第2の座標精度を有する第2の欠陥検査を行い、第2の欠陥情報を取得する工程とを含み、前記第1の欠陥情報と前記第2の欠陥情報とを照合して、一致欠陥、第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定し、一致欠陥、第1の不一致欠陥及び第2の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法のサイズ変換を行って第3の欠陥情報を取得する。
【0092】
第1の座標精度を有する第1の欠陥検査は、上述の第1の波長を用いる欠陥検査装置を用いることができる。第2の座標精度を有する第2の欠陥検査は、上述の第2の波長を用いる欠陥検査装置を用いることができる。
【0093】
欠陥寸法は、多層反射膜付き基板110に対してX方向及びY方向の各々の長さ(幅)、高さまたは深さを含む。
【0094】
サイズ変換は、第1の欠陥情報における欠陥寸法及び第2の欠陥情報における欠陥寸法の両方に対して行ってもよいし、第1の欠陥情報における欠陥寸法又は第2の欠陥情報における欠陥寸法の何れか一方にのみ行ってもよい。第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合には、第1の欠陥情報における欠陥寸法に対してサイズ変換を行うことが好ましい。また、第2の座標精度が第1の座標精度よりも高い場合には、第1の欠陥情報における欠陥寸法及び第2の欠陥情報における欠陥寸法のうち、第1の欠陥情報における欠陥寸法に対してのみサイズ変換を行うことができ得る。
【0095】
また、サイズ変換は、一致欠陥寸法、第1の不一致欠陥寸法及び第2の不一致欠陥寸法のすべてに対して行ってもよいし、一致欠陥寸法、第1の不一致欠陥寸法及び第2の不一致欠陥寸法の何れか1つのみに対して行ってもよい。第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合には、第1の不一致欠陥寸法に対してサイズ変換を行うことが好ましい。また、第2の座標精度が第1の座標精度よりも高い場合には、一致欠陥寸法、第1の不一致欠陥寸法及び第2の不一致欠陥寸法のうち、第1の欠陥情報における欠陥寸法に対してのみサイズ変換を行うことができ得る。
【0096】
サイズ変換は、取得した欠陥寸法に所定の大きさ(バッファ値)を加えることにより行われる。例えば、第1の欠陥情報又は第1の不一致欠陥における欠陥寸法のX方向の長さにバッファ値としてαnmを加え、Y方向の長さにαnmを加える。第2の欠陥情報、第2の不一致欠陥又は一致欠陥における欠陥寸法のX方向の長さにバッファ値としてβnmを加え、Y方向の長さにβnmを加える。
αは第1の座標精度に応じて設定され、βは第2の座標精度に応じて設定される。第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合には、α>β(βはゼロを含む)であることが好ましい。
【0097】
第2の不一致欠陥及び一致欠陥における欠陥寸法のX方向の長さとY方向の長さにバッファ値を加える場合において、第2の不一致欠陥寸法に対するバッファ値と一致欠陥寸法に対するバッファ値を異なる値としてもよい。例えば、第2の不一致欠陥寸法のX方向の長さ及びY方向の長さに、バッファ値としてβ1nmをそれぞれ加え、一致欠陥寸法のX方向の長さ及びY方向の長さに、バッファ値としてβ2nmをそれぞれ加える。第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合には、β2>β1(β1はゼロを含む)であることが好ましい。
【0098】
第3の欠陥情報を有する多層反射膜付き基板110を製造することにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造するための多層反射膜付き基板110を得ることができる。
【0099】
<<第3の欠陥検査>>
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法は、第3の欠陥検査を含むことができる。第3の欠陥検査は、以下の工程を含むことができる。
【0100】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、第3の欠陥検査のために、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報との間で不一致欠陥がある場合には、第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程を更に含むことが好ましい。
【0101】
第1の不一致欠陥とは、第1の欠陥検査でのみ検出され、第2の欠陥検査では検出されない欠陥である。第2の不一致欠陥とは、第2の欠陥検査でのみ検出され、第1の欠陥検査では検出されない欠陥である。第1の不一致欠陥及び第2の不一致欠陥を特定することにより、第1の欠陥情報及び第2の欠陥情報のうちのどちらを採用すべきかを決定するための指針を得ることができる。
【0102】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法では、多層反射膜付き基板110に対して、第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査を行う工程を更に含むことが好ましい。また、多層反射膜付き基板110に対して、第1の欠陥検査及び第2の欠陥検査とは異なる装置又は測定方法で第3の欠陥検査を行う工程を更に含んでもよい。また、第3の欠陥検査では、一致欠陥、及び第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含むことが好ましい。なお、第3の欠陥検査では、欠陥寸法と共に、欠陥の座標を測定することができる。欠陥寸法は、多層反射膜付き基板110に対してX方向及びY方向の各々の長さ(幅)、高さまたは深さを含む。
【0103】
第3の欠陥検査で測定された欠陥寸法は、第3の欠陥情報に追加されることが好ましい。また、第3の欠陥検査で欠陥の座標を測定した場合には、欠陥の座標についても第3の欠陥情報に追加することができる。
【0104】
第3の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、例えば、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の座標計測器「LMS-IPRO4」、又は波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の座標計測器「PROVE」を用いることができる。鮮明な観察像を得る点から、第3の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、「PROVE」を用いることが好ましい。
【0105】
また、第3の欠陥検査としては、欠陥の表面形態を測定する方法を含んでもよい。例えば、欠陥の表面の凹凸情報を得ることができる原子間力顕微鏡(AFM)、走査電子顕微鏡(SEM)、又はEUV光顕微鏡を用いることができる。また、第3の欠陥検査は、一致欠陥及び第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つを含む所定の領域(例えば、1μm×1μmの領域)を測定する部分検査を含んでもよい。また、第3の欠陥検査は、一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域、第1の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域及び第2の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域が存在し、第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合に、第2の不一致欠陥のみを含む所定の領域を測定せず、第1の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域と一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域を測定する部分検査を含んでもよい。さらに、第3の欠陥検査は、一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域、第1の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域及び第2の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域が存在し、第1の座標精度が第2の座標精度よりも低い場合に、一致欠陥又は第2の不一致欠陥のみを含む所定の領域を測定せず、第1の不一致欠陥を少なくとも1つ含む所定の領域を測定する部分検査を含んでもよい。
【0106】
第3の欠陥検査を行うことにより、より正確な欠陥中心の座標を得ることができる。このため、第1の欠陥検査及び/又は第2の欠陥検査の欠陥中心の座標と、第3の欠陥検査の欠陥中心の座標とでずれが生じた場合には、第3の欠陥検査の欠陥座標を用いることができる。これにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造するための多層反射膜付き基板110を得ることができる。また、第3の欠陥検査を所定の領域のみを測定する部分検査とすることにより、第3の欠陥検査にかかる時間を短縮し、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、更に正確に行うことのできる反射型マスク200を製造するための多層反射膜付き基板110をより効率的に得ることができる。第1の欠陥情報と第2の欠陥情報に基づき行う第3の欠陥検査を部分検査とすることは、第3の欠陥検査が、測定精度は高いけれど、所定の領域を測定するためにかかる時間が長い検査である場合に、特に優れた効果をもたらす。
【0107】
本実施形態の多層反射膜付き基板110の製造方法が、第3の欠陥検査を更に含むことにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、更に正確に行うことのできる反射型マスク200を製造するための多層反射膜付き基板110を得ることができる。
【0108】
<<欠陥情報を含む多層反射膜付き基板110>>
多層反射膜付き基板110の構成として、基板1及び多層反射膜5という物理的な構成と共に、多層反射膜5の欠陥の位置及び寸法に関する情報である欠陥情報(第3の欠陥情報)を含むことができる。
【0109】
多層反射膜付き基板110(及び/又は反射型マスクブランク100)は、通常、欠陥情報をデータとして伴って、顧客に納品される。したがって、欠陥情報は多層反射膜付き基板110の一部であるといえる。例えば、欠陥情報は、多層反射膜付き基板110(及び/又は反射型マスクブランク100)と紐づけしたり、多層反射膜付き基板110(及び/又は反射型マスクブランク100)が収納された基板ケースと紐づけしたりした記憶媒体と共に顧客に納品される、又は所謂インターネット等のネットワークに接続されたサーバを経由して顧客に納品される。なお、欠陥情報は、多層反射膜5の欠陥の位置及び寸法に関する情報であることができる。そのため、本実施形態の上述の多層反射膜付き基板110の製造方法は、第1の欠陥情報及び第2の欠陥情報から得られた第3の欠陥情報を、その多層反射膜5の欠陥情報として顧客に提供することが可能である。多層反射膜付き基板110が欠陥情報(第3の欠陥情報)を含むことにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造することができる。
【0110】
<反射型マスクブランク100>
本実施形態の反射型マスクブランク100の実施形態について説明する。
【0111】
図3に示すように、本実施形態の反射型マスクブランク100は、上述のように製造された多層反射膜付き基板110と、その多層反射膜付き基板110の上に形成された吸収体膜7とを有する。本実施形態の反射型マスクブランク100を用いることにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造することができる。
【0112】
<<吸収体膜7>>
反射型マスクブランク100は、上述の多層反射膜付き基板110の上に、吸収体膜7を有する。すなわち、吸収体膜7は、多層反射膜5の上(保護膜6が形成されている場合には、保護膜6の上)に形成される。吸収体膜7の基本的な機能は、EUV光を吸収することである。吸収体膜7は、EUV光の吸収を目的とした吸収体膜7であっても良いし、EUV光の位相差も考慮した位相シフト機能を有する吸収体膜7であっても良い。位相シフト機能を有する吸収体膜7とは、EUV光を吸収するとともに一部を反射させて位相をシフトさせるものである。すなわち、位相シフト機能を有する吸収体膜7がパターニングされた反射型マスク200において、吸収体膜7が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。また、吸収体膜7が形成されていない領域(フィールド部)では、EUV光は、保護膜6を介して多層反射膜5から反射する。そのため、位相シフト機能を有する吸収体膜7からの反射光と、フィールド部からの反射光との間に所望の位相差を有することになる。位相シフト機能を有する吸収体膜7は、吸収体膜7からの反射光と、多層反射膜5からの反射光との位相差が170度から190度となるように形成される。180度近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上に伴って解像度が上がり、露光量裕度、焦点裕度等の露光に関する各種裕度を大きくすることができる。
【0113】
吸収体膜7は単層の膜であることができる。また、吸収体膜7は、複数の膜からなる多層膜であることができる。吸収体膜7が単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。多層膜の場合には、上層吸収体膜が、光を用いたマスクパターン検査時の反射防止膜になるように、その光学定数と膜厚を適当に設定することができる。このことにより、光を用いたマスクパターン検査時の検査感度が向上する。また、上層吸収体膜に酸化耐性が向上する酸素(O)及び窒素(N)等が添加された膜を用いると、経時的安定性が向上する。このように、吸収体膜7を多層膜にすることによって様々な機能を付加させることが可能となる。吸収体膜7が位相シフト機能を有する吸収体膜7の場合には、多層膜にすることによって光学面での調整の範囲を大きくすることができるので、所望の反射率を得ることが容易になる。
【0114】
吸収体膜7の材料としては、EUV光を吸収する機能を有し、エッチング等により加工が可能(好ましくは塩素(Cl)やフッ素(F)系ガスのドライエッチングでエッチング可能)である限り、特に限定されない。そのような機能を有するものとして、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、銅(Cu)、テルル(Te)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、及びケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1つの金属、又はこれらの化合物を好ましく用いることができる。
【0115】
吸収体膜7は、DCスパッタリング法及びRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法で形成することができる。例えば、タンタル及びホウ素を含むターゲットを用い、酸素又は窒素を添加したアルゴンガスを用いた反応性スパッタリング法により、吸収体膜7を成膜することができる。
【0116】
多層反射膜付き基板110に形成された凹状の基準マーク20(基準マークRM)は、吸収体膜7及びレジスト膜8に転写されることができる。吸収体膜7とレジスト膜8との間にエッチングマスク膜が形成される場合、多層反射膜付き基板110に形成された凹状の基準マーク20は、吸収体膜7、エッチングマスク膜及びレジスト膜8に転写されることができる。基準マーク22(基準マークCM)を多層反射膜付き基板110に形成した場合についても同様である。
【0117】
本実施形態の反射型マスクブランク100の吸収体膜7は、吸収体膜7に形成された第2基準マークFMと、吸収体膜7に基準マークRMが転写された転写基準マークRM’とを含むことが好ましい。
【0118】
第2基準マークFMは、多層反射膜付き基板110には形成せず、反射型マスクブランク100の吸収体膜7に形成することができる。
図7に、第2基準マークFMである略十字型の基準マーク24を形成した反射型マスクブランク100の平面図を示す。なお、
図7に示す反射型マスクブランク100には、
図5に示すような多層反射膜付き基板110の多層反射膜5に形成された基準マーク20(基準マークRM)が、吸収体膜7に基準マーク20a(転写基準マークRM’)として転写された様子が図示されている。
【0119】
第2基準マークFMは、基準マークCMとして、多層反射膜付き基板110に形成することができる。すなわち、
図6に示す多層反射膜付き基板110には、基準マーク20(基準マークRM)及び基準マーク22(基準マークCM)が形成されている。
図6に示す多層反射膜付き基板110の上に吸収体膜7を形成した場合、これらの基準マーク20及び22は吸収体膜7に転写される。その結果、
図7に示す反射型マスクブランク100において、基準マーク20a(転写基準マークRM’)及び基準マーク24になる。基準マーク24は、第2基準マークFMとして用いることができる。
【0120】
基準マーク24(第2基準マークFM)は、例えば、FM(フィデュシャルマーク)として使用できる。FMとは、電子線描画装置によってパターンを描画する際に、欠陥座標の基準として使用されるマークである。FMは、通常、
図7に符号24として示すような十字型形状である。
【0121】
図8に、FM(フィデュシャルマーク)として使用できる基準マーク24(第2基準マークFM)の形状の模式図を示す。略十字型形状を有する基準マーク24の幅W1及び幅W2は、例えば、200nm以上10μm以下である。基準マーク24の長さLは、例えば、100μm以上1500μm以下である。
図8では、略十字型形状を有する基準マーク24の例を示しているが、基準マーク24の形状はこれに限定されない。基準マーク24の形状は、例えば、平面視で略L字型、円形、三角形又は四角形等であってもよい。
【0122】
基準マーク24(第2基準マークFM)をFMとして使用することにより、欠陥座標を高精度に管理することができる。電子線描画装置によってレジスト膜8にパターンを描画する際、レジスト膜8に転写された基準マーク24は、欠陥位置の基準であるFMとして使用される。例えば、電子線描画装置の座標計測器によってFMを検出することにより、欠陥検査装置で取得した欠陥座標を、電子線描画装置の座標系に変換することができる。これにより、例えば、欠陥が吸収体パターン7aの下に配置するように、電子線描画装置によって描画されるパターンの描画データを補正することができる(DM技術)。描画データを補正することによって、最終的に製造される反射型マスク200への欠陥による影響を低減することができる。
【0123】
吸収体膜7は、吸収体膜7に形成された第2基準マークFMと、吸収体膜7に基準マークRMが転写された転写基準マークRM’及び/又は吸収体膜7に基準マークCMが転写された転写基準マークCM’とを含んでもよい。
【0124】
図6に示す基準マーク22(基準マークCM)は、AM(アライメントマーク)として使用できる。吸収体膜7に基準マークRMが転写されにくかったり、吸収体膜7に転写された転写基準マークRM’が電子線で検出しにくかったりする場合に、吸収体膜7に基準マークCMが転写された転写基準マークCM’を用いることができる。
【0125】
基準マーク22(基準マークCM)をAMとして使用する場合、例えば略十字型形状を有する基準マーク22の幅W1、W2は、例えば、200nm以上10μm以下である。基準マーク22の長さLは、例えば、100μm以上1500μm以下である。基準マーク22の形状は、略十字型形状に限定されず、例えば、平面視で略L字型、円形、三角形又は四角形等であってもよい。
【0126】
多層反射膜付き基板110上にAM(基準マーク20、又は基準マーク20及び基準マーク22)を形成した場合には、多層反射膜付き基板110上の吸収体膜7にFM(基準マーク24である第2基準マークFM)を形成する。AMは、吸収体膜7に転写される。AMは、欠陥検査装置及び座標計測器で検出可能である。FMは、座標計測器及び電子線描画装置で検出可能である。AMとFMは共に座標計測器で検出することが可能であるため、これらの相対的な位置関係を高精度に管理することができる。したがって、欠陥検査装置によって取得されたAMを基準とする欠陥座標を、電子線描画装置で使用するFMを基準とする欠陥座標に高精度に変換することができる。なお、AMの個数は、FMの個数よりも多くすることができる。また、AM上の吸収体膜7を一部除去することにより、AMの検出精度を上げることもできる。
【0127】
本実施形態の反射型マスクブランク100の製造方法では、上述の多層反射膜付き基板110に対する第3の欠陥検査と同様の手順による欠陥検査を、反射型マスクブランク100に対して行うことが好ましい。
【0128】
本実施形態の反射型マスクブランク100の製造方法では、第3の欠陥検査を行う前に、上述の多層反射膜付き基板110に対する第1の欠陥情報と第2の欠陥情報との間で不一致欠陥がある場合には、第1の欠陥検査でのみ検出される第1の不一致欠陥及び第2の欠陥検査でのみ検出される第2の不一致欠陥を特定する工程を更に含むことが好ましい。
【0129】
第1の不一致欠陥とは、多層反射膜付き基板110の製造方法の第1の欠陥検査でのみ検出され、第2の欠陥検査では検出されない欠陥である。第2の不一致欠陥とは、多層反射膜付き基板110の製造方法の第2の欠陥検査でのみ検出され、第1の欠陥検査では検出されない欠陥である。第1の不一致欠陥及び第2の不一致欠陥を特定することにより、第1の欠陥情報及び第2の欠陥情報のうちのどちらを採用すべきかを決定するための指針を得ることができる。
【0130】
本実施形態の反射型マスクブランク100の製造方法では、反射型マスクブランク100に対して、第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査を行う工程を更に含むことが好ましい。また、反射型マスクブランク100に対して、第1の欠陥検査及び第2の欠陥検査とは異なる装置又は測定方法で第3の欠陥検査を行う工程を更に含んでもよい。また、第3の欠陥検査は、吸収体膜7に転写された一致欠陥、及び第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つの欠陥寸法を測定することを含むことが好ましい。なお、第3の欠陥検査では、欠陥寸法と共に、欠陥の座標を測定することができる。欠陥寸法は、多層反射膜付き基板110に対してX方向及びY方向の各々の長さ(幅)、高さまたは深さを含む。
【0131】
また、第3の欠陥検査で測定された欠陥寸法が、第3の欠陥情報に追加されることが好ましい。また、第3の欠陥検査で欠陥の座標を測定した場合には、欠陥の座標についても第3の欠陥情報に追加することができる。
【0132】
反射型マスクブランク100に対する第3の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、例えば、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の座標計測器「LMS-IPRO4」、又は波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の座標計測器「PROVE」を用いることができる。鮮明な観察像を得る点から、第3の欠陥検査のための欠陥検査装置としては、「PROVE」を用いることが好ましい。
また、第3の欠陥検査としては、欠陥の表面形態を測定する方法を含んでもよい。例えば、欠陥の表面の凹凸情報を得ることができる原子間力顕微鏡(AFM)、走査電子顕微鏡(SEM)、又はEUV光顕微鏡を用いることができる。また、第3の欠陥検査は、一致欠陥及び第1の不一致欠陥のうちの少なくとも1つを含む所定の領域(例えば、1μm×1μmの領域)を測定する部分検査を含んでもよい。
【0133】
本実施形態の反射型マスクブランク100の製造方法が、第3の欠陥検査を更に含むことにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、更に正確に行うことのできる反射型マスク200を製造するための反射型マスクブランク100を得ることができる。
【0134】
<<裏面導電膜2>>
基板1の第2主表面(裏面)の上(多層反射膜5の形成面の反対側であり、基板1に水素侵入抑制膜等の中間層が形成されている場合には中間層の上)には、静電チャック用の裏面導電膜2が形成される。静電チャック用として、裏面導電膜2に求められるシート抵抗は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜2の形成方法は、例えば、クロム又はタンタル等の金属、又はそれらの合金のターゲットを使用したマグネトロンスパッタリング法又はイオンビームスパッタリング法である。裏面導電膜2がクロム(Cr)を含む材料の場合は、Crにホウ素、窒素、酸素、及び炭素から選択した少なくとも1つを含有したCr化合物であることが好ましい。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどを挙げることができる。裏面導電膜2のタンタル(Ta)を含む材料としては、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかにホウ素、窒素、酸素、炭素の少なくとも1つを含有したTa化合物を用いることが好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどを挙げることができる。裏面導電膜2の膜厚は、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜2はマスクブランク100の第2主表面側の応力調整も兼ね備えている。すなわち、裏面導電膜2は、第1主表面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランク100が得られるように調整される。
【0135】
なお、上述の吸収体膜7を形成する前に、多層反射膜付き基板110に対して裏面導電膜2を形成することができる。その場合には、
図2に示すような裏面導電膜2を備えた多層反射膜付き基板110を得ることができる。
【0136】
<<エッチングマスク膜>>
本実施形態の製造方法で製造される反射型マスクブランク100は、吸収体膜7の上にエッチングマスク膜(「エッチング用ハードマスク膜」ともいう。)を備えることができる。エッチングマスク膜の代表的な材料としては、ケイ素(Si)、並びにケイ素に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)から選択される少なくとも1つの元素を加えた材料、又は、クロム(Cr)、並びにクロムに酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)から選択される少なくとも1つの元素を加えた材料等がある。具体的には、SiO2、SiON、SiN、SiO、Si、SiC、SiCO、SiCN、SiCON、Cr、CrN、CrO、CrON、CrC、CrCO、CrCN、及びCrOCN等が挙げられる。ただし、吸収体膜7が酸素を含む化合物の場合、エッチングマスク膜として酸素を含む材料(例えばSiO2)はエッチング耐性の観点から避けたほうが良い。反射型マスクブランク100がエッチングマスク膜を有する場合には、反射型マスク200を製造する際に、レジスト膜8の膜厚を薄くすることが可能となり、パターンの微細化に対して有利である。
【0137】
<<その他の薄膜>>
本実施形態の製造方法で製造される反射型マスクブランク100は、吸収体膜7の上、又は上述のエッチングマスク膜の上に、レジスト膜8を備えることができる。すなわち、レジスト膜8を含む反射型マスクブランク100は、本実施形態の反射型マスクブランク100に含まれる。
【0138】
<反射型マスク200>
本実施形態の反射型マスク200の製造方法は、上述の反射型マスクブランク100の吸収体膜7をパターニングして、多層反射膜5の上に吸収体パターン7aを形成することを含む。すなわち、本実施形態の反射型マスク200は、多層反射膜5の上に吸収体パターン7aを有する。本実施形態の反射型マスクブランク100を用いることにより、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を得ることができる。
【0139】
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスク200を製造することができる。ここでは概要説明のみを行い、後に実施例において図面を参照しながら詳細に説明する。
【0140】
反射型マスクブランク100を準備して、その第1主表面の最表面(以下の実施例で説明するように、吸収体膜7の上)に、レジスト膜8を形成し(反射型マスクブランク100としてレジスト膜8を備えている場合は不要)、このレジスト膜8に回路パターン等の所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン8aを形成する。
【0141】
このレジストパターン8aをマスクとして使用して、吸収体膜7をドライエッチングすることにより、吸収体パターン7aを形成する。なお、エッチングガスとしては、Cl2、SiCl4、及びCHCl3等の塩素系のガス、塩素系ガスとO2とを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガスとHeとを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガスとArとを所定の割合で含む混合ガス、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6及びF2等のフッ素系のガス、並びにフッ素系ガスとO2とを所定の割合で含む混合ガス等から選択したガスを用いることができる。ここで、エッチングの最終段階でエッチングガスに酸素が含まれていると、Ru系保護膜6に表面荒れが生じる。このため、Ru系保護膜6がエッチングに曝されるオーバーエッチング段階では、酸素が含まれていないエッチングガスを用いることが好ましい。
【0142】
その後、アッシングやレジスト剥離液によりレジストパターン8aを除去し、所望の回路パターンが形成された吸収体パターン7aを作製する。
【0143】
以上の工程により、本実施形態の反射型マスク200を得ることができる。
【0144】
本実施形態の反射型マスク200の製造方法により、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造することができる。すなわち、本実施形態によれば、反射型マスク200の製造の際に、欠陥を軽減させる技術(DM技術)を、より適切に適用することができる。
【0145】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、上述の反射型マスク200を用いて、露光装置を使用したリソグラフィプロセスを行い、被転写体に転写パターンを形成する工程を有する。
【0146】
本実施形態では、反射型マスク200の製造の際に、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、反射型マスク200の製造の際に、欠陥を軽減させる技術(DM技術)を、より適切に適用することができる。その結果、半導体装置の製造の際のスループットを向上することができる。また、多層反射膜5の上に転写に影響を及ぼす欠陥がない反射型マスク200を使用して半導体装置を製造することができるので、多層反射膜5の欠陥に起因する半導体装置の歩留まり低下を抑制することができる。
【0147】
本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に所望の転写パターンを形成することができる。このリソグラフィ工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜、及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を高い歩留まりで製造することができる。
【実施例0148】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0149】
<実施例1>
実施例1の多層反射膜付き基板110は、
図1に示すように、基板1と、多層反射膜5とを有する。
【0150】
第1主表面及び第2主表面の両表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO2-TiO2系ガラス基板を準備し、基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0151】
基板1の裏面導電膜2が形成される側と反対側の主表面上に、Mo膜/Si膜を周期的に積層することで多層反射膜5を形成した。
【0152】
具体的には、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arを使用)により、基板1上に、Mo膜及びSi膜を交互に積層した。Mo膜の厚みは、2.8nmである。Si膜の厚みは、4.2nmである。1周期のMo/Si膜の厚みは、7.0nmである。このようなMo/Si膜を、40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜5を形成した。
【0153】
多層反射膜5の上に、Ru化合物を含む保護膜6を形成した。具体的には、RuNbターゲット(Ru:80原子%、Nb:20原子%)を使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜5の上に、RuNb膜からなる保護膜6を形成した。保護膜6の厚みは、2.5nmであった。
【0154】
次に、保護膜6の上に、多層反射膜5まで達するレーザ加工によって、基準マークRM(基準マーク20)を形成した。レーザ加工の条件は、以下の通りであった。
レーザの種類:波長405nmの半導体レーザ
レーザの出力:7mW(連続波)
スポットサイズ:430nmφ
【0155】
基準マーク20の形状及び寸法は、以下の通りであった。
形状:円形(ドットマーク)
深さD:40nm
直径:1.5μm
【0156】
基準マークRM(基準マーク20)は、
図5に示すように8個形成した。基準マーク20の形成箇所は、
図5に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線Aの内側の領域)の外側であった。
【0157】
次に、検査光源波長が355nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M8650」を用いて、多層反射膜付き基板110の欠陥に対する第1の欠陥検査行い、第1の欠陥情報として、第1の欠陥座標、及びその欠陥に対応する寸法を取得した。なお、第1の欠陥座標は、基準マークRMを基準として測定した。そのため、第1の欠陥座標は、基準マークRMの第1のマーク座標RM1を含む。このようにして、第1の欠陥情報として、第1の欠陥マップを得ることができた。表1に、実施例1の第1の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0158】
次に、検査光源波長が露光光源波長の13.5nmと同じであるABI(Actinic Blank Inspection)装置を用いて、多層反射膜付き基板110の欠陥に対する第2の欠陥検査行い、第2の欠陥情報として、第2の欠陥座標、及びその欠陥に対応する寸法を取得した。なお、第2の欠陥座標は、基準マークRMを基準として測定した。そのため、第2の欠陥座標は、基準マークRMの第2のマーク座標RM2を含む。このようにして、第2の欠陥情報として、第2の欠陥マップを得ることができた。表1に、実施例1の第2の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0159】
次に、第1のマーク座標RM1と第2のマーク座標RM2との相対位置座標に基づいて、第1のマーク座標RM1を基準とした第1の欠陥座標を、第2のマーク座標RM2を基準とした座標に変換した。
【0160】
次に、第1の欠陥情報を座標変換したものと、第2の欠陥情報とを照合して不一致欠陥及び一致欠陥の有無を判定した。表1に、不一致欠陥及び一致欠陥の個数を示す。なお、不一致欠陥については、第1の欠陥検査(第1検査)のみで検出された不一致欠陥の個数と、第2の欠陥検査(第2検査)のみで検出された不一致欠陥の個数とを記載した。
【0161】
次に、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報との間で一致欠陥がある場合には、一致欠陥は、第3の欠陥情報として、第2のマーク座標RM2を基準とした第2の欠陥マップの欠陥を採用した。また、不一致欠陥のうち、第2の欠陥検査では検出されない欠陥については、第3の欠陥情報として、第1の欠陥情報を座標変換したもの(第1の欠陥マップの欠陥)を用いた。また、不一致欠陥のうち、第2の欠陥検査では検出できた欠陥については、第3の欠陥情報として、第2の欠陥情報(第2の欠陥マップの欠陥)を用いた。
【0162】
以上のようにして、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報に基づく第3の欠陥情報を有する実施例1の多層反射膜付き基板110を製造した。
【0163】
次に、実施例1の多層反射膜付き基板110の保護膜6の上に吸収体膜7を形成して、反射型マスクブランク100を製造した。具体的には、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜7を、DCマグネトロンスパッタリングにより形成した。TaBN膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとN2ガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。TaBO膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとO2ガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。このようにして、実施例1の反射型マスクブランク100を製造した。
【0164】
次に、実施例1の反射型マスクブランク100の表面に、第2基準マークFMを形成した。
図7に、第2基準マークFMとして、基準マーク24を形成した状態を図示する。
図7の例では、8個の第2基準マークFM(基準マーク24)を形成した。基準マーク24の形成箇所は、
図7に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線Aの内側の領域)の外側であった。
【0165】
第2基準マークFM(基準マーク24)は、吸収体膜7の上に、レーザ加工によって形成した。レーザ加工の条件は、以下の通りであった。
レーザの種類:波長405nmの半導体レーザ
レーザの出力:20mW(連続波)
スポットサイズ:430nmφ
【0166】
第2基準マークFM(基準マーク24)の形状及び寸法(
図8参照)は、以下の通りであった。
形状:略十字型
深さD:70nm
幅W1及び幅W2:5μm
長さL:1mm
【0167】
その後、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の座標計測器「LMS-IPRO4」を用いて、吸収体膜7に転写された8個の転写基準マークRM’及び上記8個の第2基準マークFM(基準マーク24)を測定した。転写基準マークRM’と第2基準マークFMとの相対位置座標に基づいて、第2基準マークFMを基準として、上述の第3の欠陥情報を座標変換し、欠陥座標を有する欠陥マップを得た。
【0168】
上述のように製造した実施例1の反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
図4に、反射型マスクの製造方法を断面模式図にて示した工程図を示す。
【0169】
まず、実施例1の反射型マスクブランク100(
図4(a)参照)の吸収体膜7の上に、レジスト膜8を形成した(
図4(b)参照)。
【0170】
次に、電子線描画装置を用いて、レジスト膜8にパターンを描画した。パターンを描画する際には、第2基準マークFM(基準マーク24)を欠陥座標の基準として使用した欠陥マップを用い、欠陥が、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に存在しないようにした(DM技術)。パターンを描画した後、所定の現像処理を行い、吸収体膜7上にレジストパターン8aを形成した(
図4(c)参照)。
【0171】
レジストパターン8aをマスクとして、吸収体膜7に吸収体パターン7aを形成した(
図4(d)参照)。具体的には、フッ素系ガス(CF
4ガス)により、上層のTaBO膜をドライエッチングした後、塩素系ガス(Cl
2ガス)により、下層のTaBN膜をドライエッチングした。
【0172】
吸収体パターン7a上に残ったレジストパターン8aを、熱硫酸で除去することで、実施例1の反射型マスク200を得た(
図4(e)参照)。
【0173】
実施例1のEUV反射型マスク200についてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査した。表1に示すように、この欠陥検査では、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0174】
<実施例2>
実施例2の多層反射膜付き基板110では、第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査した以外は、上記実施例1と同様に、多層反射膜付き基板110及び反射型マスクブランク100を製造した。
【0175】
すなわち、実施例2の多層反射膜付き基板110を製造する際に、実施例1と同様に、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報に基づく第3の欠陥情報を有する多層反射膜付き基板110を製造した。次に、この多層反射膜付き基板110に対して、第3の欠陥検査を行うことにより、実施例2の多層反射膜付き基板110を製造した。表1に、実施例2の第1から第3の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0176】
実施例2の多層反射膜付き基板110に対する第3の欠陥検査は、波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の座標計測器「PROVE」を用いた。第3の欠陥検査は、一致欠陥、及び第1の不一致欠陥(第1の欠陥検査でのみ検出され、第2の欠陥検査では検出されない欠陥)の欠陥の座標及び欠陥寸法を測定した。第3の欠陥検査では、座標の基準となる基準マークとして、基準マークRM(基準マーク20)を用いた。
【0177】
第3の欠陥検査により得られた欠陥情報に基づき、第3の欠陥情報のうち、一致欠陥の欠陥寸法を、第3の欠陥検査で得られた欠陥寸法に変更した。また、第3の欠陥情報のうち、第1の不一致欠陥の欠陥寸法及び座標を、第3の欠陥検査で得られた欠陥寸法及び座標に変更した。これらの測定値については、第3の欠陥検査による測定値の方が、第1及び第2の欠陥検査の測定値より、信頼性が高いためである。
【0178】
以上のようにして、第1の欠陥情報、第2の欠陥情報及び第3の欠陥検査の測定値に基づく第3の欠陥情報を有する実施例2の多層反射膜付き基板110を製造した。
【0179】
次に、実施例1と同様に、実施例2の反射型マスクブランク100を製造した。実施例2の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1と同様に、実施例2の反射型マスク200を製造した。
【0180】
実施例2のEUV反射型マスク200についてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査した。表1に示すように、この欠陥検査では、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0181】
<実施例3>
実施例3の多層反射膜付き基板110を、実施例1と同様に製造した。次に、実施例3の反射型マスクブランク100の製造の際に、第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長で第3の欠陥検査した以外は、実施例1と同様に、反射型マスクブランク100を製造した。
【0182】
すなわち、まず、実施例3の多層反射膜付き基板110を製造する際に、実施例1と同様に、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報に基づく第3の欠陥情報を有する多層反射膜付き基板110を製造した。表1に、実施例3の第1及び第2の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0183】
次に、実施例3の反射型マスクブランク100を製造する際に、実施例1と同様に、吸収体膜7を有する反射型マスクブランク100を製造した。次に、実施例3の反射型マスクブランク100に対して、第3の欠陥検査の欠陥検査を行った。表1に、実施例3の第3の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0184】
実施例3の反射型マスクブランク100に対する第3の欠陥検査は、波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の座標計測器「PROVE」を用いた。第3の欠陥検査は、一致欠陥、及び第1の不一致欠陥(第1の欠陥検査でのみ検出され、第2の欠陥検査では検出されない欠陥)の欠陥の座標及び欠陥寸法を測定した。なお、第3の欠陥検査では、座標の基準となる基準マークは、転写基準マークRM’(基準マーク20a)を用いた。
【0185】
第3の欠陥検査により得られた欠陥情報に基づき、第3の欠陥情報のうち、一致欠陥の欠陥寸法を、第3の欠陥検査で得られた欠陥寸法に変更した。また、第3の欠陥情報のうち、第1の不一致欠陥の欠陥寸法及び座標を、第3の欠陥検査で得られた欠陥寸法及び座標に変更した。これらの測定値については、第3の欠陥検査による測定値の方が、第1及び第2の欠陥検査の測定値より、信頼性が高いためである。
【0186】
以上のようにして、第1の欠陥情報、第2の欠陥情報及び第3の欠陥検査の測定値に基づく第3の欠陥情報を有する実施例3の反射型マスクブランク100を製造した。
【0187】
次に、実施例3の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1と同様に、実施例3の反射型マスク200を製造した。
【0188】
実施例3のEUV反射型マスク200についてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査した。表1に示すように、この欠陥検査では、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0189】
<実施例4>
実施例4の多層反射膜付き基板110では、第1の欠陥検査及び第2の欠陥検査とは異なる第3の欠陥検査した以外は、上記実施例1と同様に、多層反射膜付き基板110及び反射型マスクブランク100を製造した。
【0190】
すなわち、実施例4の多層反射膜付き基板110を製造する際に、実施例1と同様に、第1の欠陥情報と第2の欠陥情報に基づく第3の欠陥情報を有する多層反射膜付き基板110を製造した。次に、この多層反射膜付き基板110に対して、第3の欠陥検査を行うことにより、実施例4の多層反射膜付き基板110を製造した。
その結果、第1の欠陥検査のみで検出された第1の不一致欠陥は2個であり、第2の欠陥検査のみで検出された第2の不一致欠陥は4個であり、一致欠陥は5個であった。
【0191】
実施例4の多層反射膜付き基板110に対する第3の欠陥検査は、Park systems社製の原子間力顕微鏡(AFM)を用いた。第3の欠陥検査は、第1の不一致欠陥(第1の欠陥検査でのみ検出され、第2の欠陥検査では検出されない欠陥)の欠陥の座標及び表面形態を測定した。第1の欠陥検査で得られた欠陥中心の座標と、第3の欠陥検査で得られた欠陥中心の座標とが異なっていたため、第1の不一致欠陥の座標は、第3の欠陥検査で得られた座標を用いた。第3の欠陥検査では、座標の基準となる基準マークとして、基準マークRM(基準マーク20)を用いた。
【0192】
以上のようにして、第1の欠陥情報、第2の欠陥情報及び第3の欠陥検査の測定値に基づく第3の欠陥情報を有する実施例4の多層反射膜付き基板110を製造した。
【0193】
次に、実施例1と同様に、実施例4の反射型マスクブランク100を製造した。実施例4の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1と同様に、実施例4の反射型マスク200を製造した。
【0194】
実施例4のEUV反射型マスク200についてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査した。この欠陥検査では、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0195】
<比較例1>
比較例1の多層反射膜付き基板110の製造の際には、第1の欠陥検査を行わなかった以外は、実施例1と同様に、多層反射膜付き基板110を製造した。したがって、比較例1の多層反射膜付き基板110は、実施例1の第2の欠陥検査の第2の欠陥情報に対応する欠陥情報のみを有する多層反射膜付き基板110である。表1に、比較例1の第2の欠陥検査での欠陥の個数を示す。
【0196】
比較例1の反射型マスクブランク100の製造の際には、実施例1と同様に、反射型マスクブランク100を製造した。
【0197】
その際、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の座標計測器「LMS-IPRO4」を用いて、吸収体膜7に転写された8個の転写基準マークRM’及び上記8個の第2基準マークFM(基準マーク24)を測定した。転写基準マークRM’と第2基準マークFMとの相対位置座標に基づいて、第2基準マークFMを基準として、上述の第2の欠陥情報を座標変換し、欠陥座標を有する欠陥マップを得た。
【0198】
比較例1の反射型マスク200の製造の際には、反射型マスクブランク100の吸収体膜7の上に、レジスト膜8を形成した。
【0199】
次に電子線描画装置を用いて、レジスト膜8にパターンを描画した。パターンを描画する際には、第2基準マークFM(基準マーク24)を欠陥座標の基準として使用した欠陥マップを用い、欠陥が、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に存在しないようにした。パターンを描画した後、所定の現像処理を行い、吸収体膜7上にレジストパターン8aを形成した。
【0200】
次に、実施例1と同様に、吸収体パターン7aを形成し、比較例1の反射型マスク200を得た。
【0201】
比較例1のEUV反射型マスク200についてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査した。表1に示すように、この欠陥検査では、吸収体パターン7aの多層反射膜5の露出領域に、欠陥が2個検出された。
【0202】
以上のことから、本実施形態の実施例1~3の多層反射膜付き基板110及び反射型マスクブランク100を用いるならば、欠陥検査に基づいた描画データの補正を、より正確に行うことのできる反射型マスク200を製造することができることが明らかになった。したがって、本実施形態の多層反射膜付き基板110及び反射型マスクブランク100を用いることにより、欠陥データとデバイスパターンデータとを元に、欠陥が存在している箇所に吸収体パターン7aが形成されるように描画データを補正して、欠陥を軽減させる技術(DM技術)を適切に適用することができることは明らかである。
【0203】