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2022-151682新規キノイド型ビチオフェン化合物および近赤外吸収色素
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  • -新規キノイド型ビチオフェン化合物および近赤外吸収色素 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151682
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】新規キノイド型ビチオフェン化合物および近赤外吸収色素
(51)【国際特許分類】
   C09B 57/00 20060101AFI20220929BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220929BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09B57/00 N CSP
C09B57/00 Z
C09K3/00 105
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034101
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021052204
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】八木 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真紀
(72)【発明者】
【氏名】岡地 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、近赤外光領域に吸収を有し、塗膜に適した溶解性、高耐光性を有する近赤外吸収色素を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、R~Rは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
およびXは、それぞれ独立した二価基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)のXおよびXが、下記一般式(2)または一般式(3)で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を表す。]
【化3】

[式中、Zは、酸素原子、CRまたはNRを表し、
およびRは、それぞれ独立して、
ニトリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアシル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基を表し、
は、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
を表す。]
【請求項3】
前記一般式(1)において、R~Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む近赤外吸収色素。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物を含む薄膜。
【請求項6】
請求項4に記載の近赤外吸収色素を含むカラーフィルター。
【請求項7】
請求項4に記載の近赤外吸収色素を含む近赤外線カットフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規キノイド型ビチオフェン化合物、および近赤外吸収色素に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、色素化合物については、堅牢性、特に耐光性、耐候性に対するニーズや、顔料ではなく染料の需要(フィルム、分子分散状態での機能)が増加しているものの、諸物性を調整するための分子設計が手詰まり状態にある。このため、新規骨格による有機色素化合物の探索が進められている。
【0003】
近赤外吸収色素は、可視光より長波長領域(700-2000nm)に吸収を有する色素であり、有機色素や金属錯体の電荷移動に基づく強い光吸収を示す。近赤外光は、生体透過性が高く、太陽光に多く含まれるため、近赤外領域の光線を利用した様々な開発が行われ、有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池等の光電変換素子、NeuralDensity(ND)フィルター、カラーフィルター、セキュリティー分野、農業用フィルム、調光フィルター(熱遮断・半導体センサー)、光線力学療法など幅広い分野での応用が期待されている。
【0004】
これまでの近赤外吸収色素については耐光性が低いものが多く、課題となっている。また、上記の用途に近赤外吸収色素を用いる場合、様々な制約を受ける。例えば、これまでに、フタロシアニンやローダミンなどを母核とする近赤外光を吸収する有機色素が合成されてきた。しかしながら、その種類と数は限られており、またその多くは可視光も吸収するものが多いため(特許文献1)、近赤外吸収フィルムなどの透明度が要求される用途に適するものは少なかった。
【0005】
また、例えば光電変換素子として利用するため色素溶液を塗布して膜を形成する場合には、色素の溶解性が必要であり、製膜する場合には分子の構造が大きく寄与する。
したがって、近赤外光を吸収し可視光領域の吸収が比較的少なく、塗膜に適した溶解性を有し、高耐久性であり、取り扱いが容易な近赤外領域に吸収を持つ近赤外吸収色素の開発が望まれている。
【0006】
また、近赤外吸収色素の液晶や電界発光(EL)の表示装置およびCCDやCMOSの撮像素子に、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、ガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより、着色層などを積層することによって製造され、カラーフィルターの性能が向上することにより、光源の輝度を下げることができ、表示装置の低電圧化が可能となる。
【0007】
従来使用されているカラーフィルターは、可視光領域では青、緑、赤の三原色のみを透過するフィルターとして機能するが、近赤外光領域の光に対してはカット能力が弱く、近赤外光を透過してしまう。
このため、カラーフィルター層に近赤外線カットフィルター層を併用することにより近赤外光の影響を排除し、赤、緑および青色光のみを画素へ取り込んで光電変換させる方法が提案されている。特許文献2には、無機多層膜を近赤外線カットフィルター層としてカラーフィルター層の下部に設ける方法が記載されている。
【0008】
一方、近年の固体撮像素子の軽量化やノイズ低減などの観点から、近赤外線カットフィルター層の薄膜化が求められている。例えば、特許文献3には、有機着色顔料と赤外線吸収色素を含む着色樹脂組成物を用いることで、カラーフィルターと近赤外線カットフィルターの両方の機能を有する光学フィルター層について記載されている。従来の2層構成から1層構成になることで薄膜化したフィルターを作製し得る。
【0009】
前記のそれぞれの用途に使用可能な色素には共通して、最適な分光吸収を有すること、耐光性、耐湿性、耐薬品性などの堅牢性が良好であること、溶解性が高いことなどの性質を具備していることが望まれている。
【0010】
電子吸引基で架橋したビチオフェン化合物(非特許文献1および2)がこれまでに合成されているが、これらのCT由来の吸収は長波長領域に観測されるものの、禁制遷移であり吸収係数は非常に小さいものが多く、近赤外領域に吸収帯を有する材料としては不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-116717号公報
【特許文献2】国際公開2014/041742
【特許文献3】国際公開2017/002910
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】The Journal of Physical Chemistry C 2014年,118巻,15号,P.7844-7855
【非特許文献2】Macromolecular Chemistry and Physics 2012年,213巻,12巻,P.1216-1224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、近赤外光領域に吸収を有し、塗膜に適した溶解性、高耐光性を有する近赤外吸収色素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、発明者らは新規近赤外吸収色素の開発について、ビチオフェン骨格に着目し、鋭意検討した結果、本発明の化合物は上記課題を解決する近赤外吸収色素として有用であることを見出した。すなわち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0015】
1.下記一般式(1)で表される化合物。
【0016】
【化1】
【0017】
[式中、R~Rは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
およびXは、それぞれ独立した二価基を表す。]
【0018】
2.前記一般式(1)のXおよびXが、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物。
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表し、
Yは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を表す。]
【0021】
【化3】
【0022】
[式中、Zは、酸素原子、CRまたはNRを表し、
およびRは、それぞれ独立して、
ニトリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアシル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基を表し、
は、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
を表す。]
【0023】
3.前記一般式(1)において、R~Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である化合物。
【0024】
4.前記記載の化合物を含む近赤外吸収色素。
【0025】
5.前記記載の化合物を含む薄膜。
【0026】
6.前記近赤外吸収色素を含むカラーフィルター。
【0027】
7.前記近赤外吸収色素を含む近赤外線カットフィルター。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るビチオフェン骨格を有する化合物によれば、近赤外領域に主たる吸収特性を有し、塗膜に適した溶解性、高耐光性を有する近赤外吸収色素および該化合物による薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例2の吸収スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の新規ビチオフェン骨格を有する化合物は、該化合物を含む近赤外吸収色素、薄膜、それらを含む光電変換素子および液晶表示装置や撮像素子等に用いられるカラーフィルターに用いることができる。
【0031】
以下に、本発明の前記一般式(1)で表される化合物について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
一般式(1)において、R~Rは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表す。
【0033】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などをあげることができる。
【0034】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては具体的に、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基などをあげることができる。
【0035】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などをあげることができる。
【0036】
一般式(1)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基;ニトロソ基;カルボキシル基;リン酸基;
メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基など炭素原子数2~18の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1~20のアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などの環形成原子数5~19の複素環基;
無置換アミノ基(―NH)、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、またはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基である、炭素原子数0~20のアミノ基;
無置換チオ基(チオール基:―SH)、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ヘキサ-5-エン-3-チオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などの炭素原子数0~20のチオ基;
などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。
【0037】
一般式(1)において、R~Rは置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
一般式(1)において、XおよびXは、それぞれ独立した二価基を表す。
【0039】
一般式(1)のXおよびXは、前記一般式(2)または一般式(3)で表されることが好ましい。
【0040】
一般式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基を表す。
【0041】
一般式(2)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、前記一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0042】
一般式(2)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、前記一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0043】
一般式(2)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などのアリール基があげられる。ここで、本発明における「芳香族炭化水素基」とは、アリール基と同義であり、縮合多環芳香族基を含むものとし、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましい。
【0044】
一般式(2)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」、または、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「置換基」としては、一般式(1)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」等における「置換基」と同じものをあげることができる。
【0045】
一般式(2)において、Yは、炭素原子、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を表す。
【0046】
一般式(3)において、Zは、酸素原子、CRまたはNRを表す。ZがCRまたはNRである場合、Zが酸素原子であるケトン基と同様な電子的効果を有する。
【0047】
一般式(3)において、RおよびRは、それぞれ独立して、
ニトリル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアシル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基を表す。
【0048】
一般式(3)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアシル基」における「炭素原子数1~18のアシル基」としては、具体的に、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイルアセチル基、ベンゾイル基などをあげることができ、アルキル鎖を含む場合、水素原子が部分的にフルオロ化されているもの及び完全にフッ素原子に置換(パーフルオロ化)されているものを含む。
【0049】
一般式(3)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基」における「炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基」としては、具体的に、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などをあげることができる。
【0050】
一般式(3)において、Rは、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基、
を表す。
【0051】
一般式(3)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、前記一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0052】
一般式(3)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~10のシクロアルキル基」としては、前記一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」と同じものをあげることができる。
【0053】
一般式(3)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」としては、前記一般式(2)において、RおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」と同じものをあげることができる。
【0054】
一般式(3)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアシル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~18のアルコキシカルボニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」、または、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~36の芳香族炭化水素基」における「置換基」としては、一般式(1)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」等における「置換基」と同じものをあげることができる。
【0055】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の例示化合物は水素原子、炭素原子等を一部省略して記載しており、存在し得る異性体のうちの一例を示したものであり、その他すべての異性体を包含するものとする。また、それぞれ2種以上の異性体の混合物であってもよい。
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】
【化15】
【0068】
【化16】
【0069】
【化17】
【0070】
【化18】
【0071】
【化19】
【0072】
【化20】
【0073】
【化21】
【0074】
【化22】
【0075】
【化23】
【0076】
【化24】
【0077】
【化25】
【0078】
【化26】
【0079】
【化27】
【0080】
【化28】
【0081】
【化29】
【0082】
【化30】
【0083】
【化31】
【0084】
【化32】
【0085】
前記一般式(1)で表される本発明の化合物は、公知の方法によって合成することができる。
【0086】
例えば、本発明の化合物(A-6)のような4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-4-オンへのアクセプター導入は、非特許文献1の方法にて行い、本発明の化合物(A-35)のような4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェンへのアルキル基導入は非特許文献2の方法により行い、下記式(4)、(5)で表す化合物が得られる。その後、公知の方法により臭素化反応を行い、得られた下記式(6)、(7)で表すモノブロモ体と下記式(8)で表されるボロン酸エステル化合物との鈴木・宮浦クロスカップリング反応を行った後、さらに臭素化反応を行う。得られた化合物をスティルカップリング反応にて二量化後、酸化剤を用いて酸化することで本発明の一般式(1)で表される化合物を合成することができる。
【0087】
【化33】
【0088】
【化34】
【0089】
【化35】
【0090】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の精製方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製、溶媒による再結晶、再沈殿や洗浄により行うことができる。また、これらの化合物の同定は、核磁気共鳴分析(NMR)、質量分析により行うことができる。
【0091】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、近赤外吸収色素として用いることができ、本発明の一般式(1)で表される有機化合物以外に、公知の近赤外吸収物質と併用することもできる。また、近赤外吸収色素組成物として、溶剤や添加剤等を含有して使用することができる。さらに、近赤外吸収色素は、溶媒に溶解又は分散させることにより、近赤外吸収インクとして使用することも可能である。
【0092】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、近赤外吸収材料、有機エレクトロデバイス等に用いることができる。また、前記化合物を、種々の媒体(媒体は、有機溶媒等の液体であっても、高分子材料等の固体であってもよい)中に、溶解又は分散した組成物として、種々の用途に用いることもできる。また、前記化合物又は前記組成物から、膜を形成し、当該膜を上記用途に用いてもよい。
【0093】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、溶液プロセスに適した溶解性を有する。特に、本発明の前記一般式(1)で表される化合物を組成物として溶液プロセスにて使用し、有機エレクトロニクスデバイスを製造することも考えられる。本明細書で使用する「溶液プロセス」とは、化合物を有機溶媒等に溶解させた溶液、分散体、エマルション等の形態である組成物を用いて塗布し、簡便に素子等を作製する工程をいう。
【0094】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物を含む近赤外吸収色素組成物を用いて、薄膜を作製することができる。
【0095】
溶液プロセスにて塗布する場合、近赤外吸収色素組成物に添加剤やバインダーポリマー等が含まれていてもよい。化合物のみ、あるいはこれら化合物とバインダーポリマーとを溶媒に溶解又は分散させて塗布液とすることもできるが、バインダーポリマーとしては、具体的に、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリパラキシレン、ポリエチレン、ポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルスルフォン、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリフェニレンエチニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体等の有機または無機の高分子化合物があげられる。
【0096】
薄膜の形成方法としては、一般的に、真空プロセスである抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法などの気相法;スピンコート法、ドロップキャスト法、ディップコート法、スプレー法などの溶液法;フレキソ印刷法、樹脂凸版印刷法などの凸版印刷法、オフセット印刷法、ドライオフセット印刷法、パッド印刷法などの平版印刷法、グラビア印刷法などの凹版印刷法、シルクスクリーン印刷法などのスクリーン印刷法、謄写版印刷法、リソグラフ印刷法などの孔版印刷法、インクジェット印刷法、マイクロコンタクトプリント法等の印刷法;これらの手法を複数組み合わせた方法等があげられる。
【0097】
製膜の際、使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン(1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン)、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系有機溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系有機溶媒;ベンゾニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、THFと略称する)、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒;メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、2-n-ブトキシエタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO);クロロホルム(トリクロロメタン)等があげられるが、これらに限定されない。また、上記溶媒は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、構造により使用する溶媒を選択することができる。
【0098】
前記薄膜の膜厚は、その用途によって異なるが、通常1nm~10μmであることが好ましく、5nm~3μmであることがより好ましく、10nm~1μmであることがさらに好ましい。
【0099】
[溶解性の評価]
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の溶解性は、有機溶媒に本発明の化合物を添加し、室温下(25±5℃)にて1、2分程度の撹拌または超音波洗浄機にかけた後、目視にて溶解度(または飽和溶解度)を評価している。溶解度は、溶液プロセスによる素子等の製造過程にて必要な溶解性を有する必要があり、溶解度が高いことが好ましい。
【0100】
[耐光性評価]
耐光性試験は、紫外光を含む太陽光を模した試験機などを用いて、一定時間、試料に光照射し、試験前後の色相や吸光度の変化を測定することで行ってもよい。本発明においては、キセノンフェードメーターを用いて照射を行い、紫外可視分光光度計にて吸収極大波長における吸光度の変化を測定した。色素として産業上利用する場合、光耐久性が高いことが好ましい。
【0101】
[有機エレクトロニクスデバイス]
本発明の一般式(1)で表される化合物を用いて、有機エレクトロニクスデバイスを作製することができる。有機エレクトロニクスデバイスとしては、例えば、太陽電池や光センサー等の光電変換素子、薄膜トランジスタ、有機EL素子などがあげられる。
本発明の実施形態としては、特に近赤外用途の展開が期待される有機光電変換素子に着目し、近赤外光吸収材料として用いた光電変換素子について説明する。
なお、ここでは詳細に説明しないが、700nmを超える近赤外光は、生体組織に対する透過性が高い。従って、生体内組織の観測のため利用も可能であるため、近赤外蛍光プローブ等、医療分野での病理解明、診断等において、その目的に応じて、いろいろな態様での適用が可能である。
【0102】
[光電変換素子]
光電変換素子は、対向する一対の電極間に光電変換部を配置した素子である。本発明の一般式(1)で表される化合物は、近赤外光吸収特性を有することから、光電変換素子としての利用が期待され、光電変換素子の光電変換部に用いることが考えられる。光電変換素子は、太陽電池や近赤外光センサー、近赤外光イメージセンサー等の撮像素子としての利用できる。
【0103】
前記一般式(1)で表される化合物は、光電変換素子の光電変換部の構成材料として用いることができる。光電変換部は、光電変換層と、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、及び層間接触改良層等から成る群より選択される一種又は複数の光電変換層以外の薄膜層から成ることが多い。本発明の化合物は、光吸収材料、光電変換材料、電荷輸送材料等として有用であることが考えられるが、光電変換層の薄膜層として用いることが好ましい。特に有機薄膜太陽電池の光吸収材料、光電変換材料等に用いた場合には、太陽光エネルギーを効率よく補集して光電変換に利用することが期待できる。光電変換層は前記一般式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよく、一般式(1)で表される化合物以外に、公知の光吸収材料やその他添加剤等を含んでいてもよい。
【0104】
光電変換素子の電極として用い得る材料は、ある程度の導電性を有するものであれば特に限定されないが、隣接する光電変換層やその他の層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択することが好ましい。
【0105】
電極に用いる導電性材料の具体例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープの酸化スズ(FTO)、インジウム-スズ複合酸化物などの導電性透明酸化物半導体などをあげることができ、;金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル及びタングステン等の金属:ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質:ポリチオフェン、ポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマー:炭素等があげられる。これらの材料は、必要により複数を混合して用いてもよい。
【0106】
電極のうち、少なくとも光が入射する側の何れか一方に用いられる透明電極膜である導電性支持体は、光電変換に寄与する光を透過可能な透光性を有する必要がある。また、導電性支持体は、光電変換層より電流を取り出す機能を有する部材であることから、導電性基板であることが好ましい。材料としては、ITO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等があげられる。
【0107】
光電変換部は、光電変換層及び光電変換層以外の薄膜を含む場合もある。光電変換層には一般的に有機半導体膜が用いられるが、その有機半導体膜は一層若しくは複数の層であってもよく、一層の場合は、p型有機半導体層、n型有機半導体層、又はそれらの混合層が用いられる。一方、複数の層である場合は、2~10層程度であり、p型有機半導体層、n型有機半導体層、又はそれらの混合膜層のいずれかを積層した構造であり、層間にバッファ層が挿入されていてもよい。本発明の化合物は、p型半導体材料またはn型半導体材料として用いることが考えられる。
【0108】
光電変換部を構成する光電変換層以外の薄膜層としては、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、又は層間接触改良層等があげられ、本発明の化合物は、各層で使用することも考えられる。
【0109】
<近赤外線カットフィルター用途>
近赤外吸収材料は、選択的に特定波長域の光を吸収するというその特性を用いた近赤外線カットフィルターや、植物成長調整用フィルム等にも使用されている。本発明の化合物及び該化合物を含有する組成物は、近赤外線吸収能が高く、かつ耐光性に優れているため、近赤外線カットフィルター等を構成する材料として利用することが考えられる。具体的な近赤外線カットフィルター用途としては、半導体用途、電子機器用途、各種センサー用途、液晶表示装置や撮像素子等に用いられるカラーフィルターなどがあげられる。
【0110】
[カラーフィルター]
本発明の一般式(1)で表される化合物を近赤外吸収色素としてカラーフィルターに用いる場合、基板上にカラーフィルター層と近赤外線カットフィルター層の2層構成する方法、カラーフィルターと近赤外線カットフィルターの両方の機能を有する1層構成する方法で設けることができる。1層構成とする場合、光学フィルター層とすることで薄膜化したフィルターを作製し得る。
【0111】
1層構成の光学フィルター層とする場合、カラーフィルター用着色剤は、少なくとも1種の一般式(1)で表される近赤外吸収色素を含有する組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。その他の染料または顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。
【0112】
カラーフィルター用着色剤の染料または顔料としては、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254、255、264、269、C.I.ピグメントオレンジ38、43、71などの赤色系顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー138、139、150などの黄色系顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色系染料、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、キサンテン系;その他の青色系レーキ顔料などがあげられるが、特に限定されない。
【0113】
着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度や分散性が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、前記製膜の際使用される溶媒と同じものを用いることができる。
【0114】
カラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50質量%であるのがより好ましい。
【0115】
また、用途に応じて界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他の添加剤を添加することができる。添加剤の含有率は適量であることが好ましく、溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルターなどの製品の製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましく、着色剤調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0116】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【実施例0117】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、合成実施例において得られた化合物の同定は、H-NMR(1H-NMR(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECZ400S/L1型)、質量分析(日本電子株式会社製、JMS-T100LP)、元素分析(株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製、JM10)により行った。
【0118】
[実施例1]
〈化合物(A-1)の合成〉
反応容器にアルゴン気流下、4H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェン-4-オン(2.07g,0.0108mol、BLD pharmatech Ltd社製)、脱水テトラヒドロフラン50mLを加え、塩氷浴下-2℃で撹拌した。ここに、N-ブロモスクシンイミド(1.86g,0.0105mol、東京化成工業(株)製)の脱水テトラヒドロフラン50mL溶液を40分間かけて滴下し、0℃で5時間撹拌した後、自然昇温し、終夜で静置した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=(1:2))により精製し、目的物を含むフラクションを濃縮し赤茶色固体(2.55g)を得た。この固体をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=(1:1)(体積比))により精製し、下記式(9)で示す化合物を赤茶色固体(収量:1.19g,収率:41%)として得た。
【0119】
【化36】
【0120】
反応容器にアルゴン気流下、2,6-ジ-t-ブチル-4-ブロモフェノール(2.01g,0.00705mol、東京化成工業(株)製)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.44g,0.00961mol、キシダ化学(株)製)、酢酸カリウム(1.89g,0.0193mol、富士フイルム和光純薬(株)製)、脱水1,4-ジオキサン85mLを加え、超音波洗浄機(以下、超音波と略称する)に20分間かけ脱気した。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン付加物(260mg,0.318mmol、シグマアルドリッチ社製)を加え、84℃で22時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、セライトろ過をした。ろ物をクロロホルムで洗浄し、ろ液を溶媒留去することで粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=(1:1.5)(体積比))により精製し、下記式(10)で示す化合物を白色固体(収量:1.44g,収率:62%)として得た。
【0121】
【化37】
【0122】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(9)の化合物(1.21g,0.00446mol)、上記式(10)の化合物(1.48g,0.00445mol)、テトラヒドロフラン60mL、精製水30mLを加え、超音波を20分間かけ脱気した。炭酸ナトリウム(950mg,0.00896mol、キシダ化学(株)製)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、(267mg,0.231mmol、関東化学(株)製)を加え、64℃で6.5時間加熱した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、酢酸エチル100mL、市水100mLを加え、分液し、有機層を水100mLで2回、飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:酢酸エチル=5:1(体積比))により精製し、下記式(11)の化合物を黒紫色固体(収量:1.64g,収率:93%)として得た。
【0123】
反応容器に下記式(11)の化合物(832mg,0.00210mol)、N-ブロモスクシンイミド(411mg,0.00231mmol、東京化成工業(株)製)、脱水テトラヒドロフラン30mLを加え、アルゴン気流下、室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、溶媒留去し粗生成物を黒紫色固体として得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=1:1.5(体積比))により精製し、目的物を含むフラクションを濃縮し、結晶が析出したところでろ過し、下記式(12)の化合物を黒紫色固体(収量:604mg,収率:61%)として得た。
【0124】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=1.47(s,18H)、5.37(s,1H)、6.99(s,1H)、7.08(s,1H)、7.33(s、2H)
【0125】
【化38】
【0126】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(12)の化合物(384mg,0.808mmol)、ビス(トリブチルスズ)(215μL,0.426mmol、シグマアルドリッチ社製)、脱水テトラヒドロフラン5mLを加え、超音波を20分間かけ脱気した。トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(38.8mg,0.0424mmol、シグマアルドリッチ社製)、トリ-t-ブチルホスフィン(富士フイルム和光純薬(株)製)の33wt%キシレン溶液(117mg,0.578mmol)を加え、63℃で9時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物にアセトン20mLを加え超音波をかけ、ろ過後、ろ物をアセトンで洗浄することで黒色固体を得た。この黒色固体にクロロホルム500mLを加え、超音波を50℃で30分間かけ、シリカゲルろ過し、ろ液を濃縮し黒緑色固体を得た。この固体にアセトンを加えて超音波をかけ、ろ過することで下記式(13)の化合物を黒緑色固体(収量:99.4mg,収率:31%)として得た。
【0127】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=1.48(s,36H)、5.38(s,2H)、7.03(s,2H)、7.10(s,2H)、7.35(s、4H)
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI) m/z calc.for C4646(M):790.23,found:790.25
【0128】
【化39】
【0129】
反応容器に上記式(13)の化合物(21.0mg,0.0265mmol)、1,2-ジクロロベンゼン80mLを加え、超音波をかけ、ヒートガンで加熱し原料を溶解させた。不溶分をろ過し、ろ液にアルゴン気流下、10%水酸化カリウム水溶液7.5g、フェリシアン化カリウム(85mg,0.258mmol、富士フイルム和光純薬(株)製)を加え、室温で5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液をろ過し、ろ物を水、アセトンで洗浄し下記式(A-1)の化合物を茶色固体として得た。
【0130】
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI)m/zcalc.for C4644([M+H]):789.22,found:789.21
【0131】
【化40】
【0132】
〈吸収スペクトル測定〉
得られた化合物(A-1)の1,2‐ジクロロベンゼン溶液(濃度1.0×10-5mol/L)を調製し、紫外・可視分光光度計(日立製作所(株)製、U-3000)にて紫外可視吸収スペクトル測定を行った。紫外可視吸収スペクトル測定の結果に基づいて求めた吸収極大波長(nm)、モル吸光係数(M-1cm-1)の値を表2に示す。
【0133】
[実施例2]
〈化合物(A-6)の合成〉
反応容器にアルゴン気流下、脱水テトラヒドロフラン30mLを加え、塩氷浴下-2℃で冷却した。この反応容器に、撹拌しながら四塩化チタン(2.89mL,0.00265mol、富士フイルム和光純薬(株)製)を加えた。ここに、4H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェン-4-オン(598mg,0.00311mol、BLD pharmatech Ltd社製)とマロン酸ジヘキシル(4.40mL,0.0153mol、東京化成工業(株)製)の脱水テトラヒドロフラン溶液30mL、ピリジン(3.86mL,0.0478mol、ナカライテスク(株)製)を加えた後、塩氷浴を外し、自然昇温し室温で5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水100mL、クロロホルム200mLを加え分液し有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒留去し粗生成物(赤色オイル状)を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン:クロロホルム=50:1~1:1(体積比))により精製し、目的物を含むフラクションを濃縮し、市水100mLを加え、氷浴で冷却した。固体が析出したところでろ過し、ろ物を市水で洗浄し、赤黒色固体を得た。この固体をアセトン150mLに溶解し、無水硫酸マグネシウムを加え乾燥後、溶媒留去し下記式(14)の化合物を赤黒色固体(収量:1.54g)として得た。
【0134】
反応容器にアルゴン気流下、下記式(14)の化合物(1.42g,0.00302mol)、脱水テトラヒドロフラン44mLを加え、室温下、撹拌しながらN-ブロモスクシンイミド(536mg,0.00301mol、東京化成工業(株)製)の脱水テトラヒドロフラン30mL溶液を4時間かけて滴下し、その後30分間撹拌した。反応終了後、反応溶液を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン:クロロホルム=50:1~1:1.5(体積比))により精製し、下記式(15)の化合物を黒紫色固体(収量:966mg,収率:57%)として得た。
【0135】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.87(m,6H)、1.27-1.45(m,12H)、1.72(m,4H)、4.31(m,4H)7.02(d,1H)、7.20(d,1H)、7.38(s、1H)
【0136】
【化41】
【0137】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(15)の化合物(903mg,1.72mmol)、前記式(10)のボロン酸エステル体(572mg,1.72mmol)、テトラヒドロフラン43mL、精製水21mLを加え、超音波を20分間かけ脱気した。炭酸ナトリウム(366mg,3.45mmol、キシダ化学(株)製)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、(101mg,0.087mmol、関東化学(株))を加え、62℃で3.5時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、酢酸エチル200mL、市水150mLを加えて分液した。水層を酢酸エチル100mLで2回抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:酢酸エチル=20:1(体積比))により精製後、再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH-SiO/ヘキサン~ヘキサン:酢酸エチル=2:1(体積比))により精製し、下記式(16)の化合物を紫色オイル状物質(収量:803mg,収率:72%)として得た。
【0138】
反応容器に、下記式(16)の化合物(684mg,1.05mmol)、脱水テトラヒドロフラン50mL、N-ブロモスクシンイミド(189mg,1.06mmol、東京化成工業(株)製)を加えアルゴン気流下、室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=1:2(体積比))により精製し、下記式(17)の化合物を紫色オイル状物質(収量:679mg,収率:89%)として得た。
【0139】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.85-0.92(m,6H)、1.28-1.41(m,12H)、1.47(s,18H)、1.73(m,4H)、4.32(m,4H)、5.32(s,1H)、7.21(s,1H)、7.32(s,2H)、7.43(s、1H)
【0140】
【化42】
【0141】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(17)の化合物(499mg,0.684mmol)、脱水テトラヒドロフラン20mL、ビス(トリブチルスズ)(172μL,0.340mmol、シグマアルドリッチ社製)を加え、超音波を15分間かけ脱気し、トリ-t-ブチルホスフィン(富士フイルム和光純薬(株)製)の33wt%キシレン溶液(98.0mg,0.160mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(33.6mg,0.0367mmol、シグマアルドリッチ社製)を加え、62℃で2時間加熱撹拌した。さらに、トリ-t-ブチルホスフィンの33wt%キシレン溶液(116mg,0.189mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(31.6mg,0.156mmol)を追加し、62℃で、13.5時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、溶媒留去し粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=1:2(体積比))により精製し、目的物を含むフラクションを濃縮し黒緑色固体(760mg)を得た。この固体にメタノール10mLを加え、超音波をかけた後、ろ過し、下記式(18)の化合物を黒緑色固体(収量:301mg,収率:68%)として得た。
【0142】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.86-0.92(m,12H)、1.28-1.45(m,24H)、1.48(s,36H)、1.75(m,8H)、4.35(m,8H)、5.32(s,2H)、7.28(s,2H)、7.34(s,4H)、7.41(s、2H)
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI)m/z calc.for C769810([M]):1298.60,found:1298.59
〈元素分析結果〉
Anal.Calcd.For C769810:C,70.23;H,7.60;N,0.Found:C,70.58;H,7.58;N,0.18.
【0143】
【化43】
【0144】
反応容器に、上記式(18)の化合物(226mg,0.174mmol)を加え、脱水1,2-ジクロロベンゼン10mL、酸化鉛(IV)(419mg,1.75mmol、関東化学(株)製)を加え、超音波を30分間かけた。再度、酸化鉛(IV)を同様に追加し、超音波を60分間かける操作を2回行い(酸化鉛(IV)追加量858mg,3.58mmol)、超音波を4時間かけ反応終了とした。反応溶液をセライトろ過し、ろ液を溶媒留去することで粗生成物を黒茶色固体として得た。この固体にクロロホルム60mLを加え、不溶分をセライトろ過し、さらにろ液をシリンジフィルターを用いてろ過をした。このろ液を溶媒留去し、ここにアセトン5mLを加え超音波をかけ、ろ過しアセトンで洗浄することで、下記式(A-6)の化合物を黒色固体(収量:187mg,収率83%)として得た。
【0145】
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI)m/z calc.for C769610([M+H]):1297.59,found:1297.57
〈元素分析結果〉
Anal.Calcd.For C769610:C,70.34;H,7.46;N,0.Found:C,70.05;H,7.41;N,0.12.
【0146】
【化44】
【0147】
〈溶解性評価〉
得られた化合物(A-6)を透明サンプルチューブに秤量し、テトラヒドロフランを用いて5wt%溶液となるように調整し、室温(25±2℃)で超音波洗浄機に1分間かけた後、溶け残りの有無を目視にて確認することで、溶解度評価を行った。表1に結果を示す。判定条件は、完全溶解(25±2℃)を○、濁り残る(25±2℃)を△、不溶解(25±2℃)を×と表記した。
【0148】
〈吸収スペクトル測定〉
化合物(A-1)の代わりに化合物(A-6)の1,2‐ジクロロベンゼン溶液(濃度5.0×10-6mol/L)を調製し、紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3600)にて測定を行った以外は、実施例1と同様に紫外可視吸収スペクトル測定を行った結果を表2に示す。また、化合物(A-6)の吸収スペクトルを図1に示す。
【0149】
[実施例3]
〈化合物(A-35)の合成〉
反応容器にアルゴン気流下、4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン(1.08g,6.06mmol、東京化成工業(株)製)、モレキュラーシーブで脱水したジメチルスルホキシド125mL、1-ブロモヘキサン(2.12mL,15.2mmol、東京化成工業(株)製)、ヨウ化カリウム(28.0mg,0.169mmol、純正化学(株)製)を加え、氷浴で2℃に冷却した。反応溶液に、あらかじめ乳鉢で粉砕した水酸化カリウム(905mg,16.1mmol、富士フイルム和光純薬(株)製)を加え氷浴を外し、室温まで昇温しながら5時間撹拌した。その後、水酸化カリウム(71.0mg,1.27mmol)を追加しさらに室温で15分間撹拌した。終夜で静置し、水酸化カリウム(112mg,2.00mmol)を追加し室温で7時間撹拌した。反応終了後、市水250mL、酢酸エチル200mLを加え分液し、有機層を市水200mL、飽和食塩水、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した。分液した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し粗生成物を茶色オイル状物質として得た。この組生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン)により精製し、下記式(19)の化合物を黄色オイル状物質(収量1.59g,収率:76%)として得た。
【0150】
反応容器に下記式(19)で示す化合物(295mg,0.851mmol)、テトラヒドロフラン5mL、N-ブロモスクシンイミド(151mg,0.849mmol、東京化成工業(株)製)を加え、氷浴下0℃で4時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を溶媒留去し、粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン)により精製し、目的物の下記式(20)の化合物であるモノブロモ体、ジブロモ体、下記式(19)で示す化合物を含む混合物を黄色オイル状物質(収量:343mg(モノブロモ体:60wt%)として得た。
【0151】
【化45】
【0152】
反応容器に、上記式(20)で示す化合物(161mg,0.234mmol)、テトラヒドロフラン5mL、精製水2.5mLを加え、15分間超音波脱気した。ここに、炭酸ナトリウム(67.8mg,0.640mmol、キシダ化学(株)製)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(19.0mg,0.0164mmol、関東化学(株)製)を加え、60℃で1.5時間加熱撹拌した。前記式(10)で示す化合物(28.1mg、0.0845mmol)を追加し50分間、60℃で加熱撹拌し反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、市水50mL、酢酸エチル50mLを加え分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:酢酸エチル=20:1(体積比))により精製し、下記式(21)の化合物(収量:112mg,収率:87%)を得た。
【0153】
反応容器に、下記式(21)の化合物(99.8mg,0.181mol)、テトラヒドロフラン2mL、N-ブロモスクシンイミド(32.9mg,0.185mmol、東京化成工業(株)製)を加え室温で25分間撹拌した。反応終了後、反応溶液を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン)により精製し、下記式(22)の化合物を(収量89.4mg:収率:78%)得た。
【0154】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.82(t,6H)、0.92-0.98(m,4H)、1.12-1.22(m,12H)、1.49(s,18H)、
1.79‐1.83(m,4H)5.27(s,1H)、6.93(s,1H)、6.99(s,1H)、7.40(s,2H)
【0155】
【化46】
【0156】
反応容器に、上記式(22)の化合物(90.9mg,0.137mmol)、ビス(トリブチル)スズ(35μL,0.0693mmol、シグマアルドリッチ社製)、脱水テトラヒドロフラン5mLを加えアルゴン気流下、15分間超音波をかけ脱気した。トリ-t-ブチルホスフィン(富士フイルム和光純薬工業(株)製)の33wt%キシレン溶液(18.5mg,0.0302mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(6.4mg,0.00699mmol、シグマアルドリッチ社製)を加え、61℃で2時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、溶媒留去し粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:酢酸エチル(又は、クロロホルム)=10:1(体積比))による精製操作を2回行い、橙褐色固体を得た。この固体をクロロホルム1mLに溶解させた後、メタノール1mLを加え再沈殿し、固体をろ取し、下記式(23)の化合物を黄茶色固体(収量:33.6mg,収率:45%)として得た。
【0157】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、THF‐d):δ(ppm)=0.81(m,12H)、0.98-1.04(m,8H)、1.14-1.22(m,24H)、1.47(s,36H)、
1.92‐1.94(m,8H)6.35(s,2H)、7.15(s,2H)、7.16(s,2H)、7.42(s,4H)
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI)m/z calc.for C7098([M]):1098.65,found:1098.66
〈元素分析結果〉
Anal.Calcd.For C7098:C,76.45;H,8.98;N,0.Found:C,76.51;H,8.87;N,0.23.
【0158】
【化47】
【0159】
反応容器に、上記式(23)で表す化合物(10.5mg,0.00955mmol)、1,2-ジクロロベンゼン5mL、フェリシアン化カリウム(21.8mg,0.0662mmol、富士フイルム和光純薬工業(株)製)、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム308mg/精製水50mL)を1.3mL(0.145mmol)を加え室温で5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に市水20mL、1,2-ジクロロベンゼン30mLを加え、分液し有機層を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物にアセトン5mLを加え、超音波をかけ洗浄することで下記式(A-35)の化合物を赤茶色固体(収量:7.8mg,収率:74%)として得た。
【0160】
〈質量分析結果〉
TOF-MS(ESI)m/zcalc.for C709624([M+H]):1097.64:,found:1097.67
〈元素分析結果〉
Anal.Calcd.For C7096:C,76.59;H,8.81;N,0.Found:C,76.74;H,8.84;N,0.26.
【0161】
【化48】
【0162】
〈溶解性評価〉
化合物(A-6)の代わりに(A-35)を用いた以外は実施例1と同様に溶解性評価を行った。結果を表1に示す。
【0163】
〈吸収スペクトル測定〉
化合物(A-1)の代わりに化合物(A-35)のジクロロメタン溶液(濃度1.0×10-6mol/L)を調製し、紫外・可視分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3600)にて測定を行った以外は、実施例1と同様に紫外可視吸収スペクトル測定を行った。結果を表2に示す。
【0164】
[実施例4]
〈化合物(A-27)の合成
反応容器に、3,3’-ジブロモ-5,5’-ビス(トリメチルシリル)-2,2’-ビチオフェン(5.05g,0.0108mol、東京化成工業(株)製)を加えアルゴン置換した。脱水テトラヒドロフラン(100mL)を加え、ドライアイス-アセトンバスで-70℃以下に冷却した。n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.55M)(15mL,0.0232mol、関東化学(株)製)を22分間かけて滴下し、-70℃以下で2時間撹拌した。反応液にジクロロジブチルシラン(3.8mL,0.0137mol)を4分間かけて滴下し、2時間25分かけて室温まで昇温し反応終了とした。反応液に、市水、酢酸エチルを加え分液し、有機層を市水で2回洗浄した。分液した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン)により精製する操作を2回行い、下記式(24)の化合物を薄黄色オイル状物質(収量:4.44g,収率:81.0%)として得た。
【0165】
反応容器に、下記式(24)の化合物(3.31g,6.53mmol)、クロロホルム186mL、トリフルオロ酢酸(1.26mL,13.1mmol)を加え、室温で25分撹拌した。反応終了後、反応溶液に市水を加え分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄し有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン)により精製し、下記式(25)の化合物を黄色オイル状物質(収量:2.15g,収率:108%)として得た。
【0166】
【化49】
【0167】
反応容器をアルゴン置換し、上記式(25)の化合物(1.62g,0.00528mol)の脱水テトラヒドロフラン12mL溶液を加え、ドライアイスアセトンバスで-70℃以下とした。n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.58M)(3.1mL,0.00490mol、関東化学(株)製)を5分間かけて滴下し、-70℃以下で3時間20分撹拌した。トリメチルスズクロリド(1.08g,0.00542mol、東京化成工業(株)製)の脱水テトラヒドロフラン2.5mL溶液を10分間かけて滴下し-70℃以下で2時間撹拌した。その後、反応容器をドライアイス-アセトンバスから外し、自然昇温し、そのまま終夜で静置した。その後、室温で4時間撹拌した後、溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物にヘキサン100mLを加え、析出物をろ過し、ろ液を溶媒留去することで下記式(26)の化合物を含む黒緑色オイル状物質(収量:2.11g,HPLC純度79%)を得た。
【0168】
反応容器に、アルゴン気流下、下記式(26)の化合物(2.11g,HPLC純度79%,0.00355mol)、2,6-ジ-t-ブチル-4-ブロモフェノール(1.11g,0.00389mol、東京化成工業(株)製)、脱水テトラヒドロフラン30mLを加え、超音波を15分間かけ脱気した。テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム(0)(0.209g,0.000181mol、東京化成工業(株)製)を加え、63℃で2時間40分加熱還流し、反応溶液を室温まで冷却した後終夜で静置した。再び、63℃で50分間加熱還流後、テトラキス(トリフェニル)ホスフィンパラジウム(0)を同様に加え、63℃で8時間25分加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=5:1)による精製操作を2回行い、下記式(27)の化合物を橙黄色固体(収量:1.11g,収率:61%)として得た。
【0169】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.85(t,6H)、0.91-0.94(m,4H)、1.30-1.40(m,8H)、1.49(s,18H)、
5.26(s,1H)、7.06(d,1H)、7.11(s,1H)、7.19(d,1H)、7.41(s,2H)
【0170】
【化50】
【0171】
反応容器に、上記式(27)の化合物(1.11g,0.00217mol)、脱水テトラヒドロフラン80mLを加え、氷浴下、N-ブロモスクシンイミド(0.427g,0.00240mol、東京化成工業(株)製)の脱水テトラヒドロフラン10mL溶液を加え、20分間撹拌した。反応終了後、反応溶液を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/ヘキサン~ヘキサン:クロロホルム=30:1)により精製し下記式(28)の化合物をオレンジ色固体(収量:986mg,収率:77%)として得た。
【0172】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、CDCL):δ(ppm)=0.85(t,6H)、0.89-0.92(m,4H)、1.30-1.38(m,8H)、1.48(s,18H)、
5.28(s,1H)、7.00(s,1H)、7.09(s,1H)、7.39(s,2H)
【0173】
【化51】
【0174】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(28)の化合物(986mg,1.67mmol)、脱水テトラヒドロフラン50mLを加え、超音波を15分間かけ脱気した。ビス(トリブチル)スズ(425μL,0.841mmol、シグマアルドリッチ社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(78.5mg,0.0857mmol、シグマアルドリッチ社製)、トリ-t-ブチルホスフィン(富士フイルム和光純薬工業(株)製)の33Wt%キシレン溶液(230mg,0.375mmol)を加え、63℃で7時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却、終夜で静置し、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(81.3mg,0.0888mmol、シグマアルドリッチ社製)、トリ-t-ブチルホスフィンの33Wt%キシレン溶液(223mg,0.364mmol)を追加し、再度、63℃で9時間30分加熱還流した。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し反応溶液を溶媒留去し粗生成物を得た。
この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO/トルエン)により精製し、茶色オイル状物質を得た。この茶色オイル状物質にメタノール50mLを加え、超音波を60分間かけろ過した。ろ物にヘキサン10mLを加え、超音波を50分間かけろ過し、下記式(29)の化合物をオレンジ色固体(収量:285mg,収率:34%)として得た。
【0175】
〈NMR分析結果〉
H-NMR(400MHz、THF-d):δ(ppm)=0.86(t,12H)、0.97-1.00(m,8H)、1.29-1.45(m,16H)、1.47(s,36H)、6.37(s,2H)、7.20(s,2H)、7.21(s,2H)、7.42(s,4H)
【0176】
【化52】
【0177】
反応容器にアルゴン気流下、上記式(29)の化合物(31.1mg,0.0305mmol)、脱水1,2-ジクロロベンゼン5mL、酸化鉛(IV)(71.5mg,0.299mmol)を加え、50分間超音波をかけた。さらに、酸化鉛(IV)を加える操作を2回行い、合計80分間超音波をかけた(酸化鉛(IV)追加量232.8mg,0.973mmol)。反応終了後、反応溶液をろ過し酸化鉛(IV)を取り除いた後、ろ液を溶媒留去し粗生成物を得た。この粗生成物にメタノール5mLを加え超音波をかけろ過することで、下記式(A-27)の化合物を黒色固体として(収量:20mg)得た。
【0178】
【化53】
【0179】
〈溶解性評価〉
化合物(A-6)の代わりに(A-27)を用いた以外は実施例1と同様に溶解性評価を行った。結果を表1に示す。
【0180】
〈吸収スペクトル測定〉
化合物(A-1)の代わりに化合物(A-27)を用いた以外は、実施例1と同様に紫外可視吸収スペクトル測定を行った。結果を表2に示す。
【0181】
[比較例1]
化合物(A-6)の代わりに、下記式(B‐1)で表される比較化合物の銅(II)フタロシアニン(β-型(東京化成工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に溶解性評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
【化54】
【0183】
[比較例2]
化合物(A-6)の代わりに、下記式で表される比較化合物(B-2)のIR-813 p-トルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に溶解性評価を行った。結果を表1に示す。
【0184】
【化55】
【0185】
【表1】
【0186】
表1から明らかなように、実施例の本発明の化合物は、従来知られている近赤外吸収色素に比べて高い溶解性を示した。
【0187】
【表2】
【0188】
表2の結果より得られた本発明の化合物は近赤外領域に高いモル吸光係数を有しており、近赤外光を効率的に吸収できることは明らかである。近赤外光を効率的に吸収できることにより、例えば、光電変換素子作製などにおいても、低濃度で高い変換効率を示す素子の作製が期待でき、コストダウンが可能となる。また、図1より可視光領域の吸収が比較的少ないことが示された。
【0189】
[実施例5]耐光性評価
<塗膜の作成>
ポリマー溶液(ポリビニルブチラール樹脂BM-S[Lot.IE-C50]2.5g/エタノール25mL/トルエン25mL)5mLに近赤外吸収色素(A-6)10mgを溶解し、塗布溶液を作成した。作成した塗布溶液0.2mLをガラス基板(松浪スライドグラス S9111(76×52 t0.8~1.0))上に滴下した後、スピンコーターを用いて500rpm(10sec)、2000rpm(30sec)でスピンコートし、塗膜を作成した。
【0190】
作成した塗膜に、キセノンフェードメーター/ATLAS Ci3000+Xenon Weather Ometer(アトラス社製)を用いて、放射照度:300~400nm、60W/m、試験槽内温度:38℃、湿度:50%、ブラックパネル(BP)温度:63℃の条件で照射を行い、紫外可視分光光度計にて吸収極大波長における吸光度の変化を測定した。未照射の塗膜の吸収極大波長の吸光度を1としたときの、50時間、100時間および150時間照射後の吸光度を表3に示す。
【0191】
[比較例3および比較例4]
近赤外吸収色素(A-6)の代わりに、比較化合物(B-1)または比較化合物(B-2)を用いて作製した塗膜について、実施例5と同様に耐光性を評価した結果を合わせて表3に示す。
【0192】
【表3】
【0193】
表3から明らかなように、本発明の化合物は、従来知られている近赤外吸収色素に比べて高い耐光性を示した。
本発明の化合物は、良好な溶解性および耐光性を備えており、近赤外吸収色素として光電変換素子やカラーフィルター用途等への展開が可能であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明の化合物は、近赤外領域に吸収を有し、溶媒に対する高い溶解性、溶液プロセスによる製膜性、高い耐光性を有する近赤外吸収色素として、太陽電池および近赤外光センサー等の光電変換素子として、さらに、NeuralDensity(ND)フィルター、カラーフィルター、セキュリティー分野、農業用フィルム、調光フィルター(熱遮断・半導体センサー)等の近赤外吸収材料、光線力学療法用光増感色素として幅広い分野での応用が期待される。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
一般式(1)において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキニル基」、または「置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基;ニトロソ基;カルボキシル基;リン酸基;
メチルエステル基、エチルエステル基などのカルボン酸エステル基;
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基など炭素原子数2~18の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1~20のアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチルジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボニリル基などの環形成原子数5~19の複素環基;
無置換アミノ基(―NH)、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、またはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基である、炭素原子数0~20のアミノ基;
無置換チオ基(チオール基:―SH)、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ヘキサ-5-エン-3-チオ基、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基などの炭素原子数0~20のチオ基;
などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
前記一般式(1)で表される化合物は、光電変換素子の光電変換部の構成材料として用いることができる。光電変換部は、光電変換層と、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、及び層間接触改良層等から成る群より選択される一種又は複数の光電変換層以外の薄膜層から成ることが多い。本発明の化合物は、光吸収材料、光電変換材料、電荷輸送材料等として有用であることが考えられるが、光電変換層の薄膜層として用いることが好ましい。特に有機薄膜太陽電池の光吸収材料、光電変換材料等に用いた場合には、太陽光エネルギーを効率よく捕集して光電変換に利用することが期待できる。光電変換層は前記一般式(1)で表される化合物のみで構成されていてもよく、一般式(1)で表される化合物以外に、公知の光吸収材料やその他添加剤等を含んでいてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
カラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分を適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95質量%であるのが好ましく、10~50質量%であるのがより好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1