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特開2022-151699電気機械用の固定子デバイス及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151699
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】電気機械用の固定子デバイス及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20220929BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220929BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K15/02 F
H02K9/19 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036851
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】10 2021 107 454.1
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ヒンリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヴェンデ
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD30
5H601EE19
5H601EE25
5H601GA02
5H601GA22
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC25
5H601GE02
5H601GE12
5H609BB01
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ01
5H609QQ12
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気機械用の固定子デバイス及び製造方法を提供する。
【解決手段】電気機械10用の固定子デバイス1であって、固定子巻線11の導体要素4を導体チャネル13に収容するための複数の収容溝3を有する積層コア構成2を備える固定子デバイス1。収容溝3は、導体要素4を冷却するための冷却剤用のフローチャネル23を提供し、フローチャネル23は、導体チャネル13に沿って延びる。積層コア構成2は、複数の積層コアユニット12を備え、積層コアユニット12は、軸方向で整列され、収容溝3の軸方向溝部33を提供する。溝部33は、少なくとも2つの異なる溝形状バリエーション5、15、25、35を有し、それにより、収容溝3は、積層コア構成2に沿ったそれらの軸方向経路にわたって、それぞれ少なくとも2つの異なる溝形状バリエーション5、15、25、35を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(10)用の固定子デバイス(1)であって、各場合に固定子巻線(11)の少なくとも1つの導体要素(4)を導体チャネル(13)に収容するための複数の収容溝(3)を有する積層コア構成(2)を備え、前記収容溝(3)がそれぞれ、少なくとも1つの導体要素(4)を冷却するための冷却剤用の少なくとも1つのフローチャネル(23)を提供し、前記フローチャネル(23)が、少なくとも1つの導体要素(4)の前記導体チャネル(13)に沿って延びる、固定子デバイス(1)において、
前記積層コア構成(2)が、複数の積層コアユニット(12)を備え、前記積層コアユニット(12)が、軸方向で整列され、それぞれが前記収容溝(3)の軸方向溝部(33)を提供し、1つの積層コアユニット(12)に関連する前記溝部(33)が、少なくとも部分的に、少なくとも2つの異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)のグループから取られる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を有し、それにより、前記収容溝(3)が、前記積層コア構成(2)に沿ったそれらの軸方向経路にわたって、それぞれ少なくとも2つの異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を有することを特徴とする固定子デバイス(1)。
【請求項2】
前記溝形状バリエーション(5、15、25、35)が、それぞれの導体チャネル(13)に対するそれぞれのフローチャネル(23)の配置に関して異なる、請求項1に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項3】
前記導体チャネル(13)が、前記収容溝(3)の壁(43)によって少なくとも2つの側面で境界を画され、前記フローチャネル(23)が、前記収容溝(3)の壁(43)によって少なくとも2つの側面で境界を画され、前記導体チャネル(13)と前記フローチャネル(23)とが、少なくとも2つの側面で互いに隣接し、前記溝形状バリエーション(5、15、25、35)が、前記導体チャネル(13)と前記フローチャネル(23)とが互いに隣接する前記チャネル(13、23)の側面に関して異なる、請求項1又は2に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項4】
前記収容溝(3)内で前記フローチャネル(23)が各場合に前記導体チャネル(13)の周りで螺旋状に延びるように、前記異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を有する前記積層コアユニット(12)が軸方向で整列される、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項5】
隣接する積層コアユニット(12)が、異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項6】
少なくとも2つの積層コアユニット(12)が互いに対して180°回転されて前記積層コア構成(2)に設置されることによって、少なくとも2つの溝形状バリエーション(5、15、25、35)が形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項7】
前記積層コアユニット(12)を180°回転させることによって、収容溝(3)の前記フローチャネル(23)が、時計回りで見て前記収容溝(3)の前記導体チャネル(13)の前に配置されるか後ろに配置されるかを設定することができる請求項1~6のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項8】
少なくとも2つの幾何学的に異なる構成の積層コアユニット(12)が前記積層コア構成(2)に設置されることによって、少なくとも2つの溝形状バリエーション(5、15、25、35)が形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項9】
前記溝形状バリエーション(5、15、25、35)に応じて、収容溝(3)の前記フローチャネル(23)が、径方向で前記収容溝(3)の前記導体チャネル(13)の内側に配置される、又は径方向で外側に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項10】
溝形状バリエーション(5、15、25、35)の前記グループが、少なくとも4つの異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を含み、前記溝形状バリエーション(5、15、25、35)が、少なくとも2つの幾何学的に異なる構成の積層コアユニット(12)が前記積層コア構成(2)に設置されることによって、及びまた前記異なる構成の積層コアユニット(12)がさらに少なくとも180°回転されて前記積層コア構成(2)に設置されることによって形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項11】
互いに180°回転されて設置された前記積層コアユニット(12)が、対として軸方向で隣接して配置され、前記幾何学的に異なる構成の積層コアユニット(12)も、対として軸方向で隣接して配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項12】
前記4つの異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)が、前記積層コア構成(2)内で繰り返しの順序で整列される、請求項10又は11に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項13】
前記4つの異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)が、互いに組み合わさって、前記導体要素(4)を前記積層コア構成(2)に沿って計4方向で嵌合式に固定する、請求項10~12のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項14】
前記フローチャネル(23)が、各場合に、異なる溝形状バリエーション(5、15、25、35)を有する軸方向で隣接する4つの積層コアユニット(12)にわたって前記導体チャネル(13)の周りで1回の螺旋状の回転を行う、請求項10~13のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の固定子デバイス(1)を製造するための方法であって、前記積層コアユニット(12)が軸方向で整列され、軸方向に延びる回転軸の周りで回転することによって、前記個々の積層コアユニット(12)の前記軸方向溝部(33)が、互いに最大限の重なりを有するように互いに対して向きを定められ、次いで、前記導体要素(4)が前記収容溝(3)に配置され、次いで、前記積層コアユニット(12)が、軸方向に延びる回転軸の周りで回転することによって、前記個々の積層コアユニット(12)の前記軸方向溝部(33)が互いに対してオフセットを有するように互いに対して向きを定められ、それにより前記導体要素(4)が前記収容溝(3)内に固定され、次いで、好ましくは、前記積層コアユニット(12)が、さらなる軸方向回転を受けないように固定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械用の固定子デバイス、及び上記タイプの固定子デバイスの製造方法に関する。固定子デバイスは、各場合に固定子巻線の少なくとも1つの導体要素を導体チャネル内に収容するための複数の収容溝を有する少なくとも1つの積層コア構成を備える。収容溝はそれぞれ、導体要素を冷却するための冷却剤用の少なくとも1つのフローチャネルを提供し、フローチャネルは、導体チャネルに沿って延びる。
【背景技術】
【0002】
そのような固定子デバイスは、固定子巻線の導体要素(ピン又はヘアピンとも呼ばれる)を直接冷却することができるので、効果的な熱放散を可能にする。しかし、ここで、設置プロセス中に導体要素が傾いて又は滑ってフローチャネルを部分的又は完全に閉塞しないことが重要である。流れ断面のそのような閉塞は、とりわけ冷却剤の流れの圧力損失を大幅に増加させ、全体として冷却作用の望ましくない制限をもたらす。
【0003】
したがって、(特許文献1)には、いくつかの区域で導体要素の絶縁にスペーサが適用され、それらのスペーサが、いくつかの区域で、導体要素を直接冷却するための冷却剤チャネルの境界を画す、電気機械が述べられている。フローチャネルの閉塞はスペーサによって防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2018 112 347A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに関連して、本発明の目的は、位置決め不良の導体要素による閉塞からのフローチャネルの保護をさらに改良することである。特に好ましくは、高い信頼性であり、それと同時に設計と製造の観点から容易に実装することができることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する固定子デバイス及び請求項15に記載の方法によって達成される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項の主題である。本発明のさらなる利点は、全般的な説明及び例示的実施形態の説明から明らかになろう。
【0007】
本発明による固定子デバイスは、電気機械用に提供され、複数の収容溝を有する積層コア構成を備える。収容溝は、各場合に固定子巻線の少なくとも1つの導体要素を収容する働きをする。収容溝は、各場合に固定子巻線の少なくとも1つの導体要素を少なくとも部分的に収容することができる少なくとも1つの導体チャネルを備える。収容溝はそれぞれ、少なくとも1つの導体要素を冷却するための冷却剤用の少なくとも1つのフローチャネルを提供し、フローチャネルは、導体要素の導体チャネルに沿って延びる。ここで、積層コア構成は、軸方向で整列された複数の積層コアユニットを有する。ここで、積層コアユニットはそれぞれ、収容溝の軸方向溝部を提供する。ここで、積層コアユニットに関連する溝部は、少なくとも部分的に、少なくとも2つの異なる溝形状バリエーションのグループから取られる溝形状バリエーションを有する。ここで、収容溝は、積層コア構成に沿ったそれらの(それぞれの)軸方向経路にわたって、それぞれ少なくとも2つの異なる溝形状バリエーションを有する。特に、少なくとも2つの異なる溝形状バリエーションが積層コア構成に存在する。したがって、積層コア構成の積層コアユニットは、特に少なくとも2つの溝形状バリエーションのうちの1つに属す。
【0008】
本発明による固定子デバイスは、多くの利点をもたらす。様々な溝形状バリエーションを有する溝部を備えた積層コアユニットから構成されるモジュール構造によって、大きな利点が得られる。このようにすると、収容溝の軸方向経路に沿って、異なる又は変化する溝形状、及び例えば流れの偏向が意図通りに可能である。それにより、さらに、傾いた導体要素によるフローチャネルの閉塞、又は傾き自体を意図通りに妨げることができる。異なる溝形状バリエーションを有する積層コアユニットを意図通りに整列させることによって、収容溝の所望の幾何形状を非常に容易に形成することができることも特に有利である。したがって、本発明は、電気機械用の固定子デバイスの特に迅速且つ経済的な製造を可能にする。
【0009】
溝形状バリエーションは、好ましくは、それぞれの導体チャネルに対するそれぞれのフローチャネルの配置に関して異なる。特に、溝形状バリエーションは、フローチャネルが時計回りで導体チャネルの前又は後ろに配置されるという点で異なる。言い換えると、溝形状バリエーションは、径方向内側から径方向外側への視線方向で見て、フローチャネルが導体チャネルの左側に配置されるか右側に配置されるかという点で特に異なる。したがって、1つの特定の積層コアユニットでは、フローチャネルは、例えば時計回りで見て導体チャネルの前に、すなわち導体チャネルの左側に配置される。このとき、別の特定の(特に隣接する)積層コアユニットでは、フローチャネルが逆さにされ、したがって、例えば時計回りで見て導体チャネルの後ろに、すなわち導体チャネルの右側に配置される。その結果、フローチャネルが一方の側から他方の側に移行する(そして例えば再び戻る)経路、又は両側に交互に延びるフローチャネルの経路が得られる。
【0010】
溝形状バリエーションは、フローチャネルが導体チャネルの径方向上又は径方向下に配置されるという点で異なることも可能であり、好ましい。その結果、フローチャネルが上から下に移行する(そして例えば再び戻る)経路が得られる。フローチャネルのそのような経路は、径方向で交互の経路と呼ばれることもある。
【0011】
すべての実施形態において、フローチャネルは、時計回りで見て導体チャネルの前又は後ろの両方に延び、それと同時に導体チャネルの径方向上又は径方向下にも延びることが特に好ましく、有利である。したがって、好ましくは、全体としてフローチャネルの螺旋状又は螺旋形の経路が得られる。特に、フローチャネルは、導体チャネルの周りで螺旋状に蛇行している。すべての実施形態において、回転方向は、時計回りでも反時計回りでもよい。したがって、右回りの螺旋(時計回りの回転を有するフローチャネルの経路)を提供することも、左回りの螺旋(反時計回りの回転を有するフローチャネルの経路)を提供することも可能である。このとき、全体として、例えば、フローチャネルが左側から下方向に移行し、次いで右側に、さらには上方向に移行して、再び左側に戻る経路などが得られる。別の例では、フローチャネルが右側から下方向に移行し、次いで左側に、さらには上方向に移行して、再び右側に戻る経路などを提供することができる。そのような実施形態は、特に効果的に且つ同時に簡単に流れ断面の閉塞を防ぐことができるようにし、それと同時に、非常に有利な冷却剤の流れを提供することができるようにする。
【0012】
好ましい有利な実施形態では、導体チャネルは、収容溝の壁によって(軸方向に延びる)少なくとも2つの側面で境界を画される。特に、ここでは、フローチャネルは、収容溝の壁によって(軸方向に延びる)少なくとも2つの側面で境界を画される。ここでは、導体チャネルとフローチャネルとが(軸方向に延びる)少なくとも2つの側面で互いに隣接することが好ましい。特に、溝形状バリエーションは、導体チャネルとフローチャネルとが互いに隣接するチャネルの側面に関して異なる。追加として又は代替として、溝形状バリエーションが、導体チャネル及びフローチャネルが収容溝の壁によって境界を画される側面に関して異なることを企図することができる。特に、溝形状バリエーションは、収容溝の壁に当接する導体要素の側面に関して異なる。特に、導体要素は、溝形状バリエーションに応じて、収容溝の壁の異なる部分に当接する。
【0013】
好ましくは、収容溝内でフローチャネルが各場合に導体チャネル(及び好ましくはまた、そこに収容することができる導体要素)の周りで螺旋状に延びるように、異なる溝形状バリエーションを有する積層コアユニットが軸方向で整列される。異なる溝形状バリエーションを有する積層コアユニットは、好ましくは、導体要素が、少なくとも1つの異なる側面で交互に収容溝の壁と当接するように軸方向で整列される。
【0014】
すべての実施形態において、隣接する積層コアユニットが異なる溝形状バリエーションを有することが特に好ましい。
【0015】
好ましくは、少なくとも2つの積層コアユニットが互いに対して180°回転されて積層コア構成に設置されることによって、少なくとも2つの溝形状バリエーションのうちの少なくとも2つが形成される。ここで、積層コアユニットは、特に、少なくとも収容溝に関して幾何学的に同一の形状である。積層コアユニットは同一でもよい。異なる積層コアユニットを用意又は製造する必要がないため、そのような回転により、変化する溝形状を特に簡単に実装することができるようになる。特に、そのような回転に関する軸は、電気機械の回転軸に対して横方向、及び/又は固定子デバイスの長手方向軸若しくは軸方向の広がりに対して横方向である。
【0016】
積層コアユニットを180°回転させることにより、時計回りで見て(又は径方向内側から径方向外側への視線方向に関して)、収容溝のフローチャネルが上記収容溝の導体チャネルの前に配置されるか後ろに配置されるかを設定することができることが好ましく、有利である。回転により、フローチャネルは、特に導体チャネルの一方の長手方向側から他方の長手方向側に変わる。
【0017】
少なくとも2つの幾何学的に異なる構成の積層コアユニットが積層コア構成に設置されることによって、少なくとも2つの溝形状バリエーションのうちの少なくとも2つが形成されることも同様に好ましく、有利である。ここで特に、積層コアユニットは、それらの収容溝に関して異なる。特に、積層コアユニットは、回転されるか否かに関係なく互いに異なる。特に、そのような積層コアユニットの収容溝は、回転によって幾何学的に一致し得ない。
【0018】
1つの有利な実施形態では、溝形状バリエーションに応じて、収容溝のフローチャネルは、径方向で上記収容溝の導体チャネルの内側に、又は径方向で外側に配置されることが企図される。特に、径方向内側から径方向外側へのフローチャネルの交互の経路は、そのような異なる溝形状バリエーションを有する積層コアユニットが軸方向で整列されることによって実現される。
【0019】
すべての実施形態において、溝形状バリエーションのグループが少なくとも4つの異なる溝形状バリエーションを含むことが好ましく、有利である。特に、溝形状バリエーションは、少なくとも2つの幾何学的に異なる構成の積層コアユニットが積層コア構成に設置されることによって、及び異なる構成の積層コアユニットがさらに少なくともまた180°回転されて積層コア構成に設置されることによって形成される。これにより、特に、収容溝が、積層コア構成を通るそれらの経路に沿って、それぞれ少なくとも4つの異なる溝形状バリエーションを有することが実現される。特に、少なくとも4つの異なる溝形状バリエーションが積層コア構成に存在する。積層コア構成は、好ましくは、4つの異なる溝形状バリエーションのうちの少なくとも1つをそれぞれ有する複数(例えば少なくとも8個又は少なくとも12個以上)の積層コアユニットを備える。
【0020】
好ましくは、互いに180°回転されて設置された積層コアユニットは、対として軸方向で隣接して配置される。好ましくは、幾何学的に異なる構成の積層コアユニットは、対として軸方向で隣接して配置される。ここで、特に、幾何学的に異なる構成の積層コアユニットの間に、各場合に、180°回転された1つの積層コアユニットが配置される。
【0021】
積層コア構成において、少なくとも4つの異なる溝形状バリエーションが繰り返しの順序で整列されることが特に好ましい。
【0022】
例えば、第1の幾何学的形状を有する積層コアユニットの後に、180°回転された同じ(第1の)幾何学的形状の積層コアユニットが続く。その後に、例えば、第2の幾何学的形状を有する積層コアユニットが続く。その後に、特に、180°回転された同じ(第2の)幾何学的形状の積層コアユニットが続く。好ましくはこの順序が繰り返され、第1の幾何学的形状を有する積層コアユニットが再び続く。
【0023】
4つの異なる溝形状バリエーションが、互いに組み合わさって、導体要素を積層コア構成に沿って計4方向で嵌合式に固定することが可能であり、有利である。特に、導体要素は、導体チャネルに対して、時計回りで(又は径方向内側から径方向外側への視線方向に関して)前後に、並びに径方向上及び径方向下に、嵌合式に固定される。ここで、導体要素は、収容溝の壁及び/又は隣接する導体要素に支持されることがある。
【0024】
フローチャネルが、各場合に、異なる溝形状バリエーションを有する軸方向で隣接する4つの積層コアユニットにわたって、導体チャネルの周りで少なくとも1回の螺旋状の回転を行うことが好ましい。特に、隣接する4つの溝形状バリエーションは、互いに組み合わさって、フローチャネルの螺旋状の回転をもたらす。
【0025】
本出願人は、本発明による固定子デバイスを備えた電気機械を特許請求する権利を留保する。そのような電気機械も、上記の目的を特に有利に達成する。電気機械は、特に電気自動車又はハイブリッド車のドライブトレイン用に提供される。電気機械は、固定子デバイスに対して回転可能な少なくとも1つの回転子、及び/又はさらなる電気機械構成要素を備えることがある。
【0026】
本発明の文脈において、「軸方向」及び「径方向」という用語は、特に電気機械の回転軸及び/又は長手方向軸に関する。「径方向外側」という用語は、「ヨーク側」と呼ばれることもあり、「径方向内側」という用語は、「ヘッド側」と呼ばれることもある。
【0027】
フローチャネルは、特に、収容溝内での導体要素の位置によって画定される。特に、フローチャネルは、導体要素によって占められていない収容溝内の自由空間に(のみ)対応する。特に、導体チャネルは、導体要素によって占められている収容溝内の空間に対応する。固定子デバイスは、少なくとも1つの導体要素、好ましくは複数の導体要素を有する少なくとも1つの固定子巻線を備えることがある。
【0028】
特に、積層コアユニットは、それぞれ複数の積層を備える。本発明の文脈において、積層コア構成は、特に、一体であり例えば単一部片の積層コアユニットから組み立てられたものも意味すると理解すべきである。溝形状バリエーションは、特に、収容溝に関する溝部の溝形状に関して異なる。特に、溝形状は、収容溝の断面幾何形状に関する。
【0029】
特に、収容溝は、少なくともいくつかの区域で、積層コア構成を通って軸方向に延びる。特に、導体チャネル又は導体要素は、少なくともいくつかの区域で、積層コア構成を通って、好ましくは収容溝を通って軸方向に延びる。特に、導体チャネル、特にまたフローチャネルも、少なくともいくつかの区域で導体要素に沿って延びる。特に、導体チャネルは、導体要素と平行に延びる。
【0030】
特に、フローチャネルと導体チャネルとは互いに隣接し、特に導体要素も隣接する。特に、フローチャネルは、(特に互いに隣接する)2つの側面のみで導体チャネルに隣接する。特に、導体チャネルは、(特に互いに隣接する)2つの側面のみでフローチャネルに隣接する。
【0031】
本発明による方法は、固定子デバイスの製造のために使用される。特に、この方法は、上述した固定子デバイスをこの方法に従って製造することができるように構成される。ここで、積層コアユニットは軸方向で整列され、軸方向に延びる回転軸の周りで回転することによって、個々の積層コアユニットの軸方向溝部が、互いに最大限の重なりの特に少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%の重なりを有するように、互いに対して向きを定められる。最大限の重なりが提供されることが特に好ましい。また、個々の積層コアユニットの軸方向溝部が互いに対してオフセットを有し、このオフセットが、特に最小限のオフセットから最大で25%、好ましくは最大で10%ずれることも可能である。最小限のオフセットが提供されることが特に好ましい。特に、積層コアユニットは、収容溝に沿って、最大限の溝断面通過面積の少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、及び/又は最大の収容溝通路(又は最大の溝開口部)が存在するように、互いに対して向きを定められている。特に、個々の積層コアユニットの溝部は、それらの軸方向断面開口部に関して互いに面一の位置合わせで向きを定められている。
【0032】
次いで、導体要素が収容溝に配置される。次いで、積層コアユニットは、軸方向に延びる回転軸の周りで回転することによって、個々の積層コアユニットの軸方向溝部が互いに対してオフセットを有するように互いに対して向きを定められ、このオフセットにより、導体要素が(特にクランプによって)収容溝内に固定される。次いで、好ましくは、積層コアユニットは、さらなる軸方向回転に対して固定される。特に、固定は、嵌合及び/又は摩擦係合及び/又は接着の形態で実現される。特に、本発明による固定子デバイスは、この方法に従って製造することができるように構成される。
【0033】
本発明のさらなる利点は、添付図面を参照して以下で述べる例示的実施形態から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】斜め下からの部分斜視図での、本発明による固定子デバイスの非常に概略的な図である。
図2図1による固定子デバイスの第1の溝形状バリエーションの非常に概略的な詳細図である。
図3図1による固定子デバイスの第2の溝形状バリエーションの非常に概略的な詳細図である。
図4図1による固定子デバイスの第3の溝形状バリエーションの非常に概略的な詳細図である。
図5図1による固定子デバイスの第4の溝形状バリエーションの非常に概略的な詳細図である。
図6】斜め前からの斜視図での、本発明による固定子デバイスの非常に概略的な図であり、流れプロファイルが描かれている図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、電気機械10(本明細書ではより詳細に示さない)用の本発明による固定子デバイス1を詳細に示す。ここで、固定子デバイス1は、本発明による方法に従って製造されている。電気機械10は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車のドライブトレイン用の電気モータとして構成することができる。
【0036】
ここで、固定子デバイス1は、軸方向で整列された複数の積層コアユニット12を有する積層コア構成2を備える。ここでの積層コアユニット12の数は例示にすぎず、機械10に関する設計仕様に応じて、より多くてもより少なくてもよい。積層コアユニット12は、個別の積層又はプレートから構成されていても、一体の形態でもよい。ここで、積層コアユニット12はそれぞれ、収容溝3の軸方向溝部33を提供する。
【0037】
ここで、固定子デバイス1は、複数の電気導体要素4を有する固定子巻線11を備え、電気導体要素4は、互いに接触し、例えば銅ピンの形態である。ここで、導体要素4は、グループを成して収容溝3内に延びている。収容溝3は、積層コア構成2を通って軸方向に延び、積層コア構成2の円周にわたって(均一に)分散されて離間されるように配置される。
【0038】
固定子デバイス1の特に効果的な冷却を可能にするために、この場合、導体要素4が直接冷却される。このために、冷却剤は、各収容溝3内に延びるフローチャネル23を通って流れる。フローチャネル23は、ここでは、収容溝3内の導体要素4の位置によって画定される。ここで、フローチャネル23は、導体要素4によって占められていない収容溝3内の自由空間に対応する。意図通りに導体要素4によって占められている収容溝3内の空間は、導体チャネル13として画定される。したがって、ここで、収容溝3は、導体チャネル13とフローチャネル23とに分割される。
【0039】
収容溝3は、導体チャネル13及びフローチャネル23を壁43で取り囲む。ここで、壁43は、積層コア構成2の径方向内側で途切れる。したがって、固定子デバイス1の製造中に、導体要素4を収容溝3に特に簡単に設置することができる。しかし、周縁で閉じた壁43を用いた実施形態も可能である。
【0040】
ここで、積層コア構成2は、4つの異なる溝形状バリエーション5、15、25、35を有する。導体チャネル13及びフローチャネル23は、溝形状バリエーション5、15、25、35に応じて、収容溝3内での位置決めが異なる。
【0041】
ここで、積層コアユニット12は、各場合に溝形状バリエーション5、15、25、35のうちの1つに属す。整列配置をより良く示すために、図4では4つ溝形状バリエーション5、15、25、35に番号が付されている。それにより、4つの異なる溝形状バリエーション5、15、25、35が繰り返しの順序で整列されているのを明瞭に見ることができる。
【0042】
個々の溝形状バリエーション5、15、25、35は、図2~5により詳細に示されている。ここで、図2には、第1の溝形状バリエーション5が示されており、この場合、フローチャネル23は、径方向で右側(時計回りで見て導体チャネル13の前)に配置され、且つ径方向で収容溝3内の上部に配置されている。図3には、第2の溝形状バリエーション15が示されており、この場合、フローチャネル23は、径方向で左側(時計回りで見て導体チャネル13の後ろ)に配置され、且つ径方向で収容溝3内の上部に配置されている。
【0043】
ここでは、2つの溝形状バリエーション5、15は、同一の構成の積層コアユニット12によって実現される。第2の溝形状バリエーション15に関して、対応する積層コアユニット12は180°回転され、次いで積層コア構成2に整列される。
【0044】
図4は、第3の溝形状バリエーション25を示し、この場合、フローチャネル23は、ここでは径方向で左側に配置され、且つ径方向で収容溝3内の下部に配置されている。第4の溝形状バリエーション35が図5に示されている。ここでは、フローチャネル23は、径方向で右側に配置され、且つ径方向で収容溝3内の下部に配置されている。ここで、第3の溝形状バリエーション25と第4の溝形状バリエーション35も、幾何学的に同一の構成の積層コアユニット12によって実現され、そのうちの一方は、180°回転されて積層コア構成2に取り付けられている。
【0045】
上述した積層コアユニット12は、図1に示される整列配置において、それぞれ関連する導体チャネル13の周りでフローチャネル23の螺旋状経路を生じさせる。図6は、ここから生じる流れプロファイルを示す。より見やすくするために、固定子デバイス1のうち、導体要素4のみがここに示されている。導体チャネル13及びフローチャネル23を有する収容溝3(ここには図示せず)は、導体要素4に沿って延びている。描かれた流れプロファイルから、フローチャネル23が、導体チャネル13に収容された導体要素4の周りでどのように蛇行しているかを見ることができる。
【0046】
例示的な製造プロセス中、導体要素4の挿入前に、個々の積層コアユニット12は、積層コア構成2全体にわたって最大サイズの溝開口部又は最大限の溝面積を生じるように配置又は回転される。
【0047】
次いで、導体要素4が収容溝3に設置され、導体要素4が挿入された後、個々の積層コアユニット12が回転される。それにより、個々の導体要素4は収容溝3内に固定される。導体要素4は、積層コア壁に周方向で当接する。積層コアユニット12が導体要素4に当接し、それにより周方向の力が生じることにより、導体要素4は、それらの位置に明確に且つ確実に固定される。
【0048】
回転後のこの位置では、積層コアユニット12は互いに対して固定され、互いに対して元に戻るように回転することはできない。このために、固定子の後ろに溶接シームを設ける、ダボを軸方向に押し込む、積層コアユニット12を接着結合する、又は個々の積層コアユニット12を螺合することが考えられる。このようにして、組立てを単純化できることが保証され、設計により収容溝内での導体要素の傾きが(嵌合式に)防止される。
【0049】
本明細書で提案される発明により、所望の方向に向けられていない、例えば傾斜している導体要素4によるフローチャネル23の閉塞を効果的に防ぐことができる。ここで示されるような異なる溝形状バリエーション5、15、25、35の整列により、導体要素4は、積層コア構成2に沿って計4方向で嵌合式に固定される。ここで、フローチャネル23の流れ断面は確実に開いたまま保たれる。それぞれの溝形状バリエーション5、15、25、35を提供する個々の積層コアユニット12の使用により、収容溝3への導体要素4のそのような固定を、設計及び製造の面で特に簡単に実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 固定子デバイス
2 積層コア構成
3 収容溝
4 導体要素
5 溝形状バリエーション
10 機械
11 固定子巻線
12 積層コアユニット
13 導体チャネル
15 溝形状バリエーション
23 フローチャネル
25 溝形状バリエーション
33 溝部
35 溝形状バリエーション
43 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6