(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151734
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】半導体遮断回路
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20220929BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20220929BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20220929BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01H33/59 D
H01H9/54 E
H03K17/687 A
H02H3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041195
(22)【出願日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2021052655
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構,航空機用先進システム実用化プロジェクト/次世代電動推進システム研究開発の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】岩田 明彦
【テーマコード(参考)】
5G004
5G028
5G034
5J055
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB03
5G004BA04
5G004CA01
5G004DA03
5G004DA04
5G004EA01
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5G034AA04
5J055BX16
5J055CX07
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5J055EY01
5J055EY05
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】軽量性に優れる半導体遮断回路を提供する。
【解決手段】半導体遮断回路1は、直流電源に接続される共通バスkp、knから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路kp1~kp3、kn1~kn3と、複数の配電経路kp1~kp3、kn1~kn3のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部Sp1~Sp3、Sn1~Sn3と、コンデンサCap、Canと、第1ダイオードブリッジDp1、Dn1と、第2ダイオードブリッジDp21~Dp23、Dn21~Dn23とを有するエネルギー吸収部10p、10nと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続される共通バスから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路と、
前記複数の配電経路のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部と、
前記共通バスと、前記複数のスイッチ部のそれぞれの負荷側の配電経路との間に接続されたコンデンサと、前記共通バスと前記コンデンサとの間に設けられた第1ダイオードブリッジと、前記コンデンサと前記複数のスイッチ部それぞれの負荷側の配電経路との間に設けられた複数の第2ダイオードブリッジとを有するエネルギー吸収部と、を備えた半導体遮断回路。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体遮断回路であって、
前記共通バスは、バイポーラ直流電源に接続され、グランドに対してプラス側の直流電圧が印加されるプラス側バスと、グランドに対してマイナス側の直流電圧が印加されるマイナス側バスを含み、
前記複数の配電経路は、前記プラス側バスから分配される複数のプラス側配電経路と、前記マイナス側バスから分配される複数のマイナス側配電経路を含み、
前記スイッチ部は、前記複数のプラス側配電経路のそれぞれに設けられた複数のプラス側スイッチ部と、前記複数のマイナス側配電経路のそれぞれに設けられた複数のマイナス側スイッチ部とを含み、
前記エネルギー吸収部は、前記プラス側バスと前記複数のプラス側スイッチ部の負荷側の配電経路との間に接続されたプラス側エネルギー吸収部と、前記マイナス側バスと前記複数のマイナス側スイッチ部の負荷側の配電経路との間に接続されたマイナス側エネルギー吸収部とを含み、
前記プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧は、前記プラス側バスと前記マイナス側バスの間の電圧の第1分圧で構成され、
前記マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧は、前記プラス側バスと前記マイナス側バスの間の電圧の第2分圧で構成される、半導体遮断回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体遮断回路であって、
前記スイッチ部に流れる電流に応じて、前記スイッチ部を遮断する遮断制御部をさらに備えた、半導体遮断回路。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体遮断回路であって、
前記負荷に流れる電流に応じて、前記スイッチ部の導通及び遮断を切り替えることで、前記負荷の電流を制御する負荷電流制御部をさらに備えた、半導体遮断回路。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体遮断回路であって、
前記負荷電流制御部は、前記負荷の電流の制御中に前記エネルギー吸収部の前記コンデンサの電圧が所定値以上になった場合に、制御を停止し、前記スイッチ部を遮断する、半導体遮断回路。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体遮断回路であって、
前記プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧を構成する前記第1分圧は可変であり、
前記マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧を構成する前記第2分圧は可変である、半導体遮断回路。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体遮断回路を備えるDCグリッドシステムであって、
第1直流電源及び第2直流電源と、
前記第1直流電源に接続される第1共通バス及び前記第2直流電源に接続される第2共通バスと、
前記第1共通バスに接続される第1半導体遮断回路、及び前記第2共通バスに接続される第2半導体遮断回路と、
前記第1半導体遮断回路が有する複数の配電経路にそれぞれ接続される複数の第1負荷、及び前記第2半導体遮断回路が有する複数の配電経路にそれぞれ接続される複数の第2負荷と、
前記第1共通バスと前記第2共通バスの間に設けられた冗長用切替器と、を備え、
前記第1半導体遮断回路及び前記第2半導体遮断回路は、請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体遮断回路である、DCグリッドシステム。
【請求項8】
直流電源に接続される共通バスから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路と、
前記複数の配電経路のそれぞれに設けられたリアクトル群と、
前記複数の配電経路のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部と、
前記複数のスイッチ部に並列に接続され、前記複数のスイッチ部の少なくとも1つが遮断した場合の短絡エネルギーを吸収するエネルギー吸収部と、を備え、
前記複数の配電経路のうち少なくとも1つに設けられたリアクトルは、他の配電経路に設けられたリアクトルとコアを共有している、半導体遮断回路。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体遮断回路であって、
前記複数の配電経路の各々に設けられたリアクトルは、直列方向に分割されており、各配電経路の分割された複数の分割リアクトルのうち少なくとも2つは、それぞれにおいて、他の配電経路の分割リアクトルとコアを共有し、
前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルは、他の配電経路で短絡が生じた場合に前記複数の分割リアクトルの少なくとも2つにおいて誘導される起電力の極性が異なるよう巻線方向が施された、半導体遮断回路。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体遮断回路であって、
前記共通バスに接続される前記複数の配電経路の数がn(nは、2~8のうちいずれかの整数)であり、
前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルの数mは、
n=2の場合は、m=2、
n=3又は4の場合は、m=4、
n=5~8の場合は、m=8であり、
n=2の場合は、前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルは、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=2の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施され、
n=3又は4の場合は、4本の配電経路それぞれに4つの分割リアクトルが接続された構成であって、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=4の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成における3又は4本の配電経路の分割リアクトルで、前記複数の配電経路の分割リアクトルが構成され、
n=5~8の場合は、8本の配電経路それぞれに8つの分割リアクトルが接続された構成であって、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=8の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成における、5~8本のいずれかの本数の配電経路の分割リアクトルで、前記複数の配電経路の分割リアクトルが構成される、半導体遮断回路。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体遮断回路であって、
n本の前記配電経路のうち少なくとも2本の配電経路の各々におけるm個の分割リアクトルのうち最も前記共通バスに近い位置の分割リアクトルが、他の配電経路の分割リアクトルと共通化されるか、又は、省略される、半導体遮断回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子で構成されたスイッチを含む半導体遮断回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動航空機のDCグリッドは一部の機器が故障した場合でも、残った健全な機器で運航継続ができるよう、事故点を速やかに切り離し、接続切替ができるように構成されている。そのため、電動航空機においては、事故電流を限流しつつ素早く切り離すDC回路ブレーカは重要なパーツと位置付けられる。例えば、下記非特許文献1の
図86には、冗長切替システムの構成が記載されている。この構成では、72個のDC回路ブレーカが用いられている。
【0003】
下記非特許文献2の
図1では、マルチターミナルな配電構成として、複数のSSPC (Solid State Power Controller)を経由して各負荷にDC電力を供給する配電構成が提案されている。SSPCは、負荷電流が所定の値を超えると半導体素子を遮断し、配線のインダクタのエネルギーを処理しつつ電流をゼロに導く動作となる。下記非特許文献3の
図2には、SiCパワー半導体デバイスを用いたSSCB(Solid-state circuit breaker)の構成が記載されている。このSSCBは、双方向に直列接続された半導体素子に、エネルギー吸収用のアバランシェダイオードが並列に接続された構成となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Michael Armstrong, “Stability, Transient ReSponse, Control, and Safety of a High-Power Electric Grid for Turboelectric Propulsion of Aircraft”, (米) NASA/CR-2013-217865, January 1, 2013, Figure 76.
【非特許文献2】A. Barrado, et al. “Behavioural Modeling of Solid State Power Controllers (SSPC) for Distributed Power Systems”, (米) 10.1109/APEC.2009.4802897, IEEE, 21 March, 2009, Figure 1.
【非特許文献3】J.Hayes. et al. “Bidirectional, SiC module-based solid-state circuit breakers for 270 Vdc MEA/AEA systems”, 2016 IEEE 4th Workshop on Wide Bandgap Power Devices and Applications, (米) 10.1109/WiPDA.2016.7799912, IEEE, 29 December, 2016, Figure 2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、上記のSSPCの構成でマルチターミナルな配電系を構成する場合、以下の課題があることを見出している。まず、配電系の冗長構成のためSSCBの数が多くなる。全てのSSCBに独立のアバランシェダイオードおよびその他のエネルギー吸収部を備える必要がある。そのため、装置容量が増加し、重量が大きくなる。次に、上記のSSCBの構成では、遮断時のエネルギーを吸収する時間はアバランシェダイオードの電圧の大きさで決まる。そのため、状況に応じて遮断の速度を変えることができない。例えば、負荷が軽いときに、遮断の速度を遅くして、遮断よりも限流に重きをおくといった調整はできない。さらに、上記のSSCBの技術思想は、あくまでも電流の遮断であるため、限流器を外部に備える必要がある。又は、限流用のリアクトルを外部に接続する必要がある。その結果、重量が大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、軽量性に優れる半導体遮断回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における半導体遮断回路は、直流電源に接続される共通バスから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路と、前記複数の配電経路のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部と、前記共通バスと、前記複数のスイッチ部のそれぞれの負荷側の配電経路との間に接続されたコンデンサと、前記共通バスと前記コンデンサとの間に設けられた第1ダイオードブリッジと、前記コンデンサと前記複数のスイッチ部それぞれの負荷側の配電経路との間に設けられた複数の第2ダイオードブリッジとを有するエネルギー吸収部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量性に優れる半導体遮断回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における半導体遮断回路の構成例を示す図。
【
図2】事故時の負荷電流と、スイッチ部両端電圧の変化の一例を示す図。
【
図3】遮断速度と初期充電電圧との関係を説明するための図。
【
図4】
図1に示すスイッチ部とエネルギー吸収回路の部分の詳細な構成例を示す図
【
図5】制御される負荷電流及びスイッチ部両端電圧の例を示す図。
【
図6】制御される負荷電流及びスイッチ部両端電圧の他の例を示す図。
【
図8】本実施形態におけるDCグリッドシステムの構成例を示す図。
【
図9】本実施形態における半導体遮断回路の構成の変形例を示す図。
【
図10】配電経路が2本(n=2)の場合のリアクトル群の構成例を示す図。
【
図11】
図10に示すリアクトル群の構成において、短絡故障が生じた場合の故障箇所の負荷電流と、健全箇所の負荷電流のシミュレーション結果を示すグラフ。
【
図12】配電経路が4本(n=4)の場合のリアクトル群の構成例を示す図。
【
図13】配電経路が8本(n=8)の場合のリアクトル群の構成例を示す図。
【
図14】
図13に示す分割リアクトルの構成の変形例を示す図。
【
図15】
図13に示す分割リアクトルの構成の他の変形例を示す図。
【
図16】
図15に示す分割リアクトルの構成における負荷電流のシミュレーション結果を示すグラフ。
【
図17】本実施形態における半導体遮断回路の構成の他の変形例を示す図。
【
図18】本実施形態における半導体遮断回路の構成の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態における半導体遮断回路は、直流電源に接続される共通バスから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路と、前記複数の配電経路のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部と、前記共通バスと、前記複数のスイッチ部のそれぞれの負荷側の配電経路との間に接続されたコンデンサと、前記共通バスと前記コンデンサとの間に設けられた第1ダイオードブリッジと、前記コンデンサと前記複数のスイッチ部それぞれの負荷側の配電経路との間に設けられた複数の第2ダイオードブリッジとを有するエネルギー吸収部と、を備える。
【0011】
上記構成では、複数のスイッチ部の共通バス側(上流側)は、共通の第1ダイオードブリッジを介してコンデンサへ接続される。複数のスイッチ部の負荷側(下流側)は、それぞれ、別々の第2ダイオードブリッジを介してコンデンサに接続される。複数の配電経路のうち1つで事故電流が検出された場合、その配電経路のスイッチ部を遮断することにより、事故電流を、第1ダイオードブリッジに通してコンデンサに迂回させることができる。事故電流は、コンデンサを充電しながら複数の第2ダイオードブリッジのうちの遮断されたスイッチに接続される第2ダイオードブリッジを通り負荷に流れる。この充電によりエネルギーがコンデンサに吸収されるため、事故電流は減衰する。これにより、限流及び遮断が可能になる。この構成によれば、複数の配電経路のうち1つの負荷で事故が起きても、他の配電経路とは独立して、コンデンサでエネルギーが吸収される。すなわち、複数のスイッチ部は、1つのエネルギー吸収回路を共有する。この構成は、複数のスイッチ部の各々にエネルギー吸収回路を設ける構成に比べて軽量になる。また、エネルギー吸収回路はコンデンサにより構成される。そのため、コンデンサの電圧を調整することで、事故電流の減衰の速度を調整できる。すなわち、遮断速度が調整できる。このように、上記構成によれば、軽量性に優れ、且つ、遮断速度の調整ができる半導体遮断回路が得られる。
【0012】
スイッチ部は、例えば、半導体スイッチ素子により構成される双方向スイッチとすることができる。半導体スイッチ素子には、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IGCT(Integrated gate-commutated thyristor)、又は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等を用いることができる。例えば、2つの半導体トランジスタのソース同士を接続したものをスイッチ部とすることができる。
【0013】
スイッチ部は、半導体スイッチ素子及び前記半導体スイッチ素子に並列に接続された機械式スイッチを有してもよい。これにより、スイッチ部の導通時の導通損失を抑えることができる。この構成において、スイッチ部を遮断する時には、機械式スイッチを遮断した後に半導体スイッチ素子を遮断してもよい。すなわち、まず機械式スイッチを遮断し半導体スイッチ素子を導通した状態にして電流を半導体スイッチに転流した後に、半導体スイッチ素子を遮断することができる。これにより、機械式スイッチのアーク発生を抑えることができる。
【0014】
コンデンサは、例えば、DCバスが接続される直流電源、又はその他の直流電源により予め所定電圧に充電することができる。例えば、直流電源の分圧又は、直流電源の電圧を変換した電圧によりコンデンサが予め充電されるよう構成されてもよい。
【0015】
前記共通バスは、バイポーラ直流電源に接続され、グランドに対してプラス側の直流電圧が印加されるプラス側バスと、グランドに対してマイナス側の直流電圧が印加されるマイナス側バスを含んでもよい。前記複数の配電経路は、前記プラス側バスから分配される複数のプラス側配電経路と、前記マイナス側バスから分配される複数のマイナス側配電経路を含んでもよい。前記スイッチ部は、前記複数のプラス側配電経路のそれぞれに設けられた複数のプラス側スイッチ部と、前記複数のマイナス側配電経路のそれぞれに設けられた複数のマイナス側スイッチ部とを含んでもよい。前記エネルギー吸収部は、前記プラス側バスと前記複数のプラス側スイッチ部の負荷側の配電経路との間に接続されたプラス側エネルギー吸収部と、前記マイナス側バスと前記複数のマイナス側スイッチ部の負荷側の配電経路との間に接続されたマイナス側エネルギー吸収部とを含んでもよい。前記プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧は、前記プラス側バスと前記マイナス側バスの間の電圧の第1分圧で構成されてもよい。前記マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧は、前記プラス側バスと前記マイナス側バスの間の電圧の第2分圧で構成されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、バイポーラ構成において、複数のプラス側配電経路が1つのプラス側エネルギー吸回路を共有し、複数のマイナス側配電経路が1つのマイナス側エネルギー吸収回路を共有する。これにより、エネルギー吸収部を小さくできるので、軽量化が可能になる。さらに、プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧は、バイポーラ電源のプラス側電圧とマイナス側電圧の間の電圧の分圧となる。これにより、プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧の調整範囲が広くなる。同様に、マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧の調整範囲も広くなる。そのため、遮断速度の調整可能域が広くなる。
【0017】
上記半導体遮断回路は、前記スイッチ部に流れる電流に応じて、前記スイッチ部を遮断する遮断制御部をさらに備えてもよい。これにより、例えば、負荷の短絡等により、スイッチ部の電流が所定範囲を越えた場合に、電流を遮断することができる。
【0018】
上記半導体遮断回路は、前記負荷に流れる電流に応じて、前記スイッチ部の導通及び遮断を切り替えることで、前記負荷の電流を制御する負荷電流制御部をさらに備えてもよい。これにより、例えば、負荷の電流が所定範囲になるよう制御できる。例えば、事故により電流が上昇しようとする場合に、限流して電流が所定範囲を超えないよう制御することができる。
【0019】
前記負荷電流制御部は、前記負荷の電流の制御中に前記エネルギー吸収部の前記コンデンサの電圧が所定値以上になった場合に、制御を停止し、前記スイッチ部を遮断してもよい。コンデンサが所定値以上になった場合に、コンデンサのエネルギー吸収による電流の制御を停止し、遮断することで、コンデンサの過充電を防ぐことができる。
【0020】
前記プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧を構成する前記第1分圧は可変であってもよい。前記マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの電圧を構成する前記第2分圧は可変であってもよい。これにより、プラス側エネルギー吸収部及びマイナス側エネルギー吸収部による遮断速度を変えることができる。例えば、前記プラス側エネルギー吸収部のコンデンサの両端に並列に接続される分圧抵抗を可変とすることで、第1分圧を可変にできる。同様に、前記マイナス側エネルギー吸収部のコンデンサの両端に並列に接続される分圧抵抗を可変とすることで、第2分圧を可変にできる。
【0021】
上記の半導体遮断回路を備えるDC配電システムも、本発明の実施形態に含まれる。DC配電システムは、直流電源と、前記直流電源に接続される共通バスと、前記共通バスに接続される前記半導体遮断回路と、を備える。
【0022】
上記の半導体遮断回路を備えるDCグリッドシステムも、本発明の実施形態に含まれる。本実施形態におけるDCグリッドシステムは、第1直流電源及び第2直流電源と、前記第1直流電源に接続される第1共通バス及び前記第2直流電源に接続される第2共通バスと、前記第1共通バスに接続される第1半導体遮断回路、及び前記第2共通バスに接続される第2半導体遮断回路と、前記第1半導体遮断回路が有する複数の配電経路にそれぞれ接続される複数の第1負荷、及び前記第2半導体遮断回路が有する複数の配電経路にそれぞれ接続される複数の第2負荷と、前記第1共通バスと前記第2共通バスの間に設けられた冗長用切替器と、を備える。前記第1半導体遮断回路及び前記第2半導体遮断回路は、上記の半導体遮断回路である。
【0023】
本発明の実施形態における半導体遮断回路は、直流電源に接続される共通バスから分配された直流電流を複数の負荷へそれぞれ伝送する複数の配電経路と、前記複数の配電経路のそれぞれに設けられたリアクトル群と、前記複数の配電経路のそれぞれに設けられ、半導体素子で構成された複数のスイッチ部と、前記複数のスイッチ部に並列に接続され、前記複数のスイッチ部の少なくとも1つが遮断した場合の短絡エネルギーを吸収するエネルギー吸収部と、を備える。前記複数の配電経路のうち少なくとも1つに設けられたリアクトルは、他の配電経路に設けられたリアクトルとコアを共有している。
【0024】
上記構成では、複数のスイッチ部の少なくとも1つが遮断した場合、エネルギー吸収部が、遮断された配電経路のリアクトルのエネルギーを吸収する。そのため、限流及び遮断が可能になる。複数の配電経路に設けられたリアクトル群は、コアを互いに共有する。これにより、コアの量を減らし、リアクトルを軽量化できる。結果として、軽量性に優れた半導体遮断回路が得られる。
【0025】
前記エネルギー吸収部は、前記複数のスイッチ部に並列に接続されたコンデンサ又は電圧クランプ素子と、前記コンデンサ又は電圧クランプ素子と前記共通バスの間に設けられた第1ダイオードブリッジと、前記コンデンサ又は電圧クランプ素子と前記複数のスイッチ部のそれぞれの負荷側の配電経路との間に設けられた第2ダイオードブリッジとを含んでもよい。
【0026】
この構成によれば、複数の配電経路のうち1つの負荷で事故が起きても、他の配電経路とは独立して、コンデンサ又は電圧クランプ素子でエネルギーが吸収される。すなわち、複数のスイッチ部は、1つのエネルギー吸収回路を共有する。この構成は、複数のスイッチ部の各々にエネルギー吸収回路を設ける構成に比べて軽量になる。
【0027】
前記複数の配電経路の各々に設けられたリアクトルは、直列方向に分割されており、各配電経路の分割された複数の分割リアクトルのうち少なくとも2つは、それぞれにおいて、他の配電経路の分割リアクトルとコアを共有してもよい。前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルは、他の配電経路で短絡が生じた場合に前記複数の分割リアクトルの少なくとも2つにおいて誘導される起電力の極性が異なるよう巻線方向が施されてもよい。
【0028】
この構成において、各配電経路における少なくとも2つの分割リアクトルは、それぞれ、異なるコアを他の配電経路の分割リアクトルと共有する。複数の配電経路の1つにおいてスイッチ部が切断されて短絡が生じると、短絡した配電経路の分割リアクトルと、その分割リアクトルとコアを共有する他の配電経路の分割リアクトルに起電力が誘導される。この起電力の極性は、分割リアクトルの巻線方向によって決まる。上記構成では、複数の配電経路のいずれか1つで短絡が生じた場合に、他の全ての配電経路において、短絡配電経路の複数の分割リアクトルとそれぞれコアを共有する複数の分割リアクトルのうち少なくとも2つの極性が異なるよう各分割リアクトルの巻線方向が施される。そのため、複数の配電経路のそれぞれにおいては、少なくとも2つの分割リアクトルで、短絡により互いに逆向きの起電力が誘導される。これにより、短絡が生じていない他の配電経路において、他の配電経路の短絡による電圧の変動が抑えられる。そのため、他の配電経路における負荷電流及び負荷電圧の変動も抑えられる。すなわち、複数の配電経路のリアクトル群がコアを共有することによる短絡配電経路が他の配電経路へ与える影響度合いを低減することができる。
【0029】
リアクトルの巻線方向は、リアクトルすなわちインダクタの巻線をコアに巻く向きである。巻線方向は、コアの軸方向から見て右巻き方向、及び左巻き方向の2つの方向のうちいずれかとなる。巻線方向が逆になると、リアクトルの自己誘導起電力の極性が逆になる(すなわち逆相になる)。例えば、巻き数及びコアが同じで、巻線方向が互いに逆の2つのリアクトルが直列に接続された線路に電流が流れると、2つのリアクトルの誘導される起電力は互いに打ち消し合う。この場合、誘導される起電力の総和は実質的に0となる。
【0030】
前記半導体遮断回路において、前記共通バスに接続される前記複数の配電経路の数がn(nは、2~8のうちいずれかの整数)であってもよい。
前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルの数mは、
n=2の場合は、m=2、
n=3又は4の場合は、m=4、
n=5~8の場合は、m=8としてもよい。
n=2の場合、前記複数の配電経路の各々における複数の分割リアクトルは、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=2の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施されてもよい。
n=3又は4の場合は、4本の配電経路それぞれに4つの分割リアクトルが接続された構成であって、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=4の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成における3又は4本の配電経路の分割リアクトルで、前記複数の配電経路の分割リアクトルが構成されてもよい。
n=5~8の場合は、8本の配電経路それぞれに8つの分割リアクトルが接続された構成であって、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=8の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成における、5~8本のいずれかの本数の配電経路の分割リアクトルで、前記複数の配電経路の分割リアクトルが構成されてもよい。
【0031】
上記構成により、複数の配電経路の1つにおいてスイッチ部が切断されて短絡が生じた場合、他の配電経路のそれぞれにおける複数の分割リアクトルに誘導される起電力が互いに打ち消し合う。そのため、複数の配電経路のリアクトル群がコアを共有することによる短絡配電経路が他の配電経路へ与える影響度合いをより低減することができる。
【0032】
上記構成において、n=2の場合に、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=2の分割リアクトルに生じる起電力の総和が実質的にゼロになるよう巻線方向が施されてもよい。ここで、起電力の総和が実質的にゼロとは、遮断回路の機能として無視できる程度に微小な起電力が生じている場合も含むものとする。
【0033】
複数の配電経路における分割リアクトルの巻線方向の配置は、巻線方向を1又は-1でとして、配電経路の数n×各配電経路の分割リアクトルの数mの行列で表すことができる。この行列は、各行は各配電経路に相当し、各列は、1つのコアを共有する分割リアクトルに相当する。
【0034】
n=2の場合の巻線方向の行列(2×2行列)をアマダ―ル行列の定義に従い4×4の行列に拡大した行列は、n=4本の配電経路のいずれかにおいて、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=4の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成を示す。n=3又は4の場合は、この4×4の構成のうち、3又は4本の配電経路における分割リアクトルの巻線方向の配置(すなわち、3×4又は4×4の構成)を採用することができる。
【0035】
n=4の場合の巻線方向の行列(4×4行列)をアマダ―ル行列の定義に従い8×8の行列に拡大した行列は、n=8本の配電経路のいずれかにおいて、他の配電経路で短絡が生じた場合にm=8の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向が施された構成を示す。n=5~8のいずれかの場合は、この8×8の構成のうち、5~8本のいずれかの配電経路における分割リアクトルの巻線方向の配置(すなわち、5×8、6×8、7×8又は8×8のいずれかの構成)を採用することができる。
【0036】
n本の前記配電経路のうち少なくとも本の配電経路の各々におけるm個の分割リアクトルのうち最も前記共通バスに近い位置の分割リアクトルが、他の配電経路の分割リアクトルと共通化されるか、又は、省略されてもよい。これにより、リアクトル群をより軽量化できる。
【0037】
(構成例)
図1は、本発明の実施形態における半導体遮断回路の構成例を示す図である。
図1に示す半導体遮断回路1は、バイポーラ構成の直流電源と、複数の負荷との間に設けられる。直流電源は、グランドに対してプラスの電圧+VDCと、グランドに対してマイナス側の電圧-VDCをそれぞれ独立した配線から供給する。半導体遮断回路1は、直流電源のプラス側配線及びマイナス側配線のそれぞれから分岐した複数の配電経路の各々について互いに独立して、限流及び遮断をするように構成される。例えば、複数の配電経路の1つに接続される負荷における短絡等の事故により過電流、すなわち事故電流が発生した場合に、半導体遮断回路は、事故電流が発生した配電経路のみを限流又は遮断する。
【0038】
図1に示す例では、半導体遮断回路1は、直流電源のプラス側電圧の配線であるプラス側共通バスkp(以下、単に共通バスkpと称する)に接続された複数のプラス側配電経路kp1~kp3(以下単に、配電経路kp1~kp3と称する)を備える。複数の配電経路kp1~kp3のそれぞれに負荷が接続される。複数の配電経路kp1~kp3のそれぞれにおいて、共通バスkpと負荷との間に、プラス側スイッチ部Sp1~Sp3(以下、単にスイッチ部Sp1~Sp3と称する)が設けられる。スイッチ部Sp1~Sp3は、半導体スイッチ素子により構成される双方向スイッチである。複数のスイッチ部Sp1~Sp3のそれぞれは、各配電経路kp1~kp3に設けられたセンサbp1~bp3(電流センサ)で検出された電流に応じてオン/オフすなわち導通/遮断が制御される。
【0039】
半導体遮断回路1は、直流電源のマイナス側電圧の配線であるマイナス側共通バスknに接続された複数のマイナス側配電経路kn1~kn3(以下、単に配電経路kn1~kn3と称する)を備える。複数の配電経路kn1~kn3のそれぞれに負荷が接続される。複数の配電経路kn1~kn3のそれぞれにおいて、共通バスknと負荷との間に、マイナス側スイッチ部Sn1~Sn3(以下、単にスイッチ部Sn1~Sn3と称する)が設けられる。スイッチ部Sn1~Sn3は、半導体スイッチ素子により構成される双方向スイッチである。複数のスイッチ部Sn1~Sp3のそれぞれ
図9は、各配電経路kn1~kn3に設けられたセンサbn1~bn3で検出された電流に応じてオン/オフすなわち導通/遮断が制御される。
【0040】
共通バスkpと、スイッチ部Sp1~Sp3の負荷側の配電経路kp1~kp3との間に、プラス側エネルギー吸収部10p(以下、単にエネルギー吸収部10pと称する。)が接続される。エネルギー吸収部10pは、エネルギー吸収回路として1つのコンデンサCapを有する。コンデンサCapは、スイッチ部Sp1~Sp3に対して並列に接続される。共通バスkpとコンデンサCapの間に第1ダイオードブリッジDp1が設けられる。第1ダイオードブリッジDp1は、直列に接続された2つのダイオードを含むアームで構成される。第1ダイオードブリッジDp1のアームのカソードがコンデンサCapの一方電極に、アノードがコンデンサCapの他方電極に接続される。第1ダイオードブリッジDp1のアームを構成する2つのダイオードの間のノードが、共通バスkpに接続される。コンデンサCapと複数の配電経路kp1~kp3の夫々との間には、第2ダイオードブリッジDp21~Dp23が接続される。第2ダイオードブリッジDp21~Dp23は、直列に接続された2つのダイオードを含むアームで構成される。第2ダイオードブリッジDp21~Dp23のそれぞれのアームのカソードがコンデンサCapの一方電極に、アノードがコンデンサCapの他方電極に接続される。第2ダイオードブリッジDp21~Dp23のそれぞれのアームを構成する2つのダイオードの間のノードが、スイッチ部Sp1~Sp3の負荷側の配電経路kp1~kp3にそれぞれ接続される。なお、
図1に示す例では、第1ダイオードブリッジDp1及び第2ダイオードブリッジDp21~Dp23はいずれもハーフブリッジ回路で構成される。
【0041】
エネルギー吸収部10pは、スイッチ部Sp1~Sp3の迂回経路を形成する。エネルギー吸収部10pは、迂回経路を、共通バスkpから第1ダイオードブリッジを経由してエネルギー吸収回路である入り口(すなわち、コンデンサCapの一方電極)に導き、エネルギー吸収回路の出口(すなわちコンデンサCapの他方電極)から各第2ダイオードブリッジを経由して各配電径路kp1~kp3のスイッチ部Sp1~Sp3の下流側に接続する。この構成により、複数の配電経路kp1~kp3のうちいずれの負荷で事故が起きても、コンデンサCapでエネルギーを独立に吸収することができる。エネルギー吸収部10pは、複数の配電経路kp1~kp3の共通吸収回路である。
【0042】
図1に示す例では、コンデンサCapには、バイポーラ電源のプラス電圧+VDCとマイナス電圧-VDCの間の電圧の分圧が印加されるよう構成されている。この分圧は、コンデンサCapと並列に接続される分圧抵抗である第1抵抗Rp1と、第1抵抗Rp1とマイナス側共通バスknとの間に接続された分圧抵抗である第2抵抗Rp2の抵抗比により決まる。この構成により、コンデンサCapの電圧Vcap0を、共通バスkpの電圧+VDC以上の電圧に充電可能である。
【0043】
マイナス側共通バスknと、マイナス側スイッチ部Sn1~Sn3の負荷側の配電経路kn1~kn3との間に、マイナス側エネルギー吸収部10nが接続される。マイナス側エネルギー吸収部10nは、プラス側エネルギー吸収部10pと同様に構成することができる。すなわち、マイナス側エネルギー吸収部10nは、第1ダイオードブリッジDn1、コンデンサCan、及び第2ダイオードブリッジDn21~Dn23を有する。
【0044】
複数のスイッチ部Sp1~Sp3のうちいずれかの配電経路kp1~kp3において、負荷電流、すなわちセンサbp1~bp3で検出される電流が所定の値を超えると、その配電経路のスイッチ部が遮断される。スイッチ部が遮断された配電経路の電流は、エネルギー吸収部10pに流れる。これにより、スイッチ部が遮断された配電経路における配線のインダクタのエネルギーは、コンデンサCapで吸収され、配電経路の電流が減衰しゼロに導かれる。
図1では、配電経路kp1~kp3の配線のインダクタ(リアクトル)Lp1~Lp3を図示している。すなわち、エネルギー吸収部10pは、スイッチ部Sp1~Sp3のいずれかをオフした場合の、スイッチ部で遮断された配電経路のインダクタンスのエネルギーを吸収する。マイナス側エネルギー吸収部10nも同様である。このように、半導体遮断回路1は、複数の配電経路で、エネルギー吸収部を共通化できるため、軽量性に優れている。なお、マイナス側のスイッチ部Sn1~Sn3及びエネルギー吸収部10nの構成及び動作も同様である。
【0045】
例えば、配電経路kp1の負荷で事故が起きた場合、センサbp1が事故電流を検出し、スイッチ部Sp1がオフとなる。これにより、事故電流がエネルギー吸収部10pに迂回する。エネルギー吸収部10pでは、事故電流が、共通バスkpから入り、予め所定電圧VCap0が充電されたコンデンサCapをさらに充電しながら出力側の第2ダイオードブリッジDp21を経由して負荷に戻される(
図1の矢印Y1参照)。その結果、コンデンサCapにエネルギーが充電されるこことなる。事故電流は、減衰を開始し、所定の時間後にはゼロとなる。事故電流がゼロになった後、例えば、事故電流が検出された配電経路kp1のコンタクタがオフすなわち遮断されてもよい。これにより、事故が起きた負荷が、電力供給系統から切り離される。
【0046】
図2は、負荷で事故が発生した時の配電経路の負荷電流と、その配電経路のスイッチ部の両端の電圧の変化の一例を示す図である。
図2に示すように、スイッチ部が遮断されるとエネルギー吸収部により、エネルギーの吸収が開始され、その後、電流が減衰してゼロになる。スイッチ部が遮断されると、エネルギー吸収部に電流が流れ、スイッチ部の両端の電圧は、主にコンデンサCapの電圧となる。エネルギー吸収部でエネルギーが吸収されて電流がゼロになると、スイッチ部の両端の電圧は、電源の電圧であるVDCとなる。
【0047】
図3に示すように、エネルギー吸収部10pのコンデンサCapの初期充電電圧Vcap0が大きければ、エネルギーの吸収速度が早くなる。このように、事故電流の遮断に要する時間、すなわち遮断速度は、コンデンサCapの初期充電電圧Vcap0によって変化する。
図1に示す例では、コンデンサCapの初期充電電圧Vcap0は、バイポーラ電源のプラス側電圧+VDCとマイナス側電圧-VDCの間の電圧の分圧によって構成される。分圧を決める第1抵抗Rp1及び第2抵抗Rp2を可変とすることで、コンデンサCapの初期充電電圧Vcap0を可変にできる。
図1に示す例では、プラス側のエネルギー吸収部10pのコンデンサCapの充電回路の一方端は、マイナス側共通バスkn(-VDC)に接続され、他方端は、プラス側共通バスkp(+VDC)に接続されている。そのため、コンデンサCapは、バス電圧以上の電圧で初期充電が可能である。
【0048】
図1に示す例では、第1抵抗の第2抵抗に対する比率、すなわちRp1/Rp2の値を小さくすると、エネルギー吸収部10pのエネルギーの吸収速度が遅くなる。Rp1/Rp2の値を大きくすると、エネルギーの吸収速度が速くなる。マイナス側でも同様に、Rn1/Rn2の値を小さくすると、エネルギー吸収部10nのエネルギーの吸収速度が遅くなり、Rp1/Rp2の値を大きくすると、エネルギーの吸収速度が速くなる。
【0049】
マイナス側エネルギー吸収部10nのコンデンサCanも、同様に、バイポーラ電源のプラス側電圧+VDCとマイナス側電圧-VDCの間の電圧の分圧によって構成される。分圧を決める第1抵抗Rn1及び第2抵抗Rn2を可変とすることで、コンデンサCanの初期充電電圧Vcan0を可変にできる。
【0050】
図4は、
図1に示すスイッチ部Sp1~Sp3とエネルギー吸収部10pの部分の詳細な構成例を示す図である。
図4に示す例では、スイッチ部Sp1~Sp3の各々は、半導体スイッチ素子を有する。半導体スイッチ素子は、直列に接続された2つの半導体トランジスタを有する。2つの半導体トランジスタのソース同士が接続される。2つの半導体トランジスタの各々には、逆流防止のためのダイオードが並列に接続される。2つの半導体トランジスタのゲートの電圧を制御することにより、スイッチ部Sp1~Sp3のオン/オフが制御される。半導体トランジスタは、例えば、IGBT、IGCT、又は、MOS-FET等であってもよい。また、半導体トランジスタの半導体として、例えば、Si又はSiC等が用いられてもよい。
【0051】
スイッチ部Sp1~Sp3の各々のオン/オフは、コントローラCp1~Cp3によって制御される。コントローラCp1~Cp3は、センサbp1~bp3で検出される電流に応じてスイッチ部Sp1~Sp3のオン/オフを制御する。センサbp1~bp3で検出される電流は、負荷電流であり、スイッチ部Sp1~Sp3を流れる電流でもある。
【0052】
図4の例では、コントローラCp1~Cp3の各々は、遮断制御部及び負荷電流制御部を含む。各遮断制御部は、各スイッチ部に流れる電流に応じて、各スイッチ部を遮断する。遮断制御部は、例えば、各センサで検出される電流が所定の値を超えるとそのセンサが接続された配電経路のスイッチ部をオンからオフに切り替えることができる。これにより、各配電経路の事故電流の限流及び/又は遮断ができる。
【0053】
各負荷電流制御部は、各配電経路の負荷に流れる電流に応じて、各スイッチ部の導通及び遮断を切り替えることで、各負荷の電流を制御する。例えば、負荷電流制御部は、各負荷の電流が0以上の目標値となるように、負荷の電流に応じてスイッチ部の切り替え動作を繰り返す。ここで、スイッチ部Sp1の負荷電流制御部の構成例を説明するが、他のスイッチ部Sp2、Sp3の負荷電流制御部も同様に構成できる。負荷電流制御部は、例えば、スイッチ部Sp1をオン及びオフすることで、負荷電流が目標値となるよう制御する。制御においては、センサbp1の検出値と目標値とを比較し、比較結果に基づいてスイッチ部Sp1のオン又はオフに制御する。
【0054】
図5は、負荷電流制御部により制御される負荷電流及びスイッチ部の両端の電圧の例を示す図である。
図5に示す例では、負荷電流の目標値として上限Tuと下限Tdが設定される。スイッチ部Sp1がオンの時に負荷電流が上限Tuに達し、負荷電流≧Tuとなった場合、負荷電流制御部は、スイッチ部Sp1をオンからオフに切り替える。スイッチ部Sp1がオフの時に負荷電流が下限Tdに達し、負荷電流≦Tdとなった場合、負荷電流制御部は、スイッチ部Sp1を、オフからオンに切り替える。負荷電流制御部が、この制御を繰り返すことで、負荷電流は、上限Tuと下限Tdの間に維持される。これにより、例えば、事故電流を限流することが可能になる。すなわち、負荷電流制御部は、限流制御が可能である。
【0055】
このように、本実施形態の半導体遮断回路1は、スイッチ部Sp1~Sp3のオン/オフの制御により、限流が可能に構成される。そのため、例えば、限流のためのリアクトル等の限流器をさらに備える必要がない。その結果、軽量化がより容易になる。
【0056】
図6は、負荷電流制御部により制御される負荷電流及びスイッチ部の両端の電圧の他の例を示す図である。負荷電流制御部により、スイッチ部Sp1がオフに制御される期間では、コンデンサCapが充電される。そのため、負荷電流制御部がスイッチ部Sp1のオン/オフを繰り返すと、コンデンサCapの電圧が徐々に増加していく。そこで、
図6に示すように、負荷電流制御部は、負荷電流の制御中にコンデンサCapの電圧が所定値(
図6の例では、閾値Th2)以上になった場合に、制御を停止し、スイッチ部Sp1を遮断してもよい。これにより、コンデンサCapの電圧Vcapが徐々に増加して所定値を超えたら、継続不可能と判断し、負荷電流制御を停止し、遮断に導くことができる。閾値Th2は、コンデンサCapの充電上限より低い値とすることができる。
【0057】
スイッチ部Sp1~Sp3の制御は、遮断制御部による遮断制御か、又は、負荷電流制御部による電流制御(例えば、限流)のいずれかとすることができる。コントローラCp1~Cp3は、遮断制御及び電流制御(限流)を切り替える制御をしてもよい。例えば、負荷の状況に応じて、スイッチ部Sp1~Sp3の制御を、遮断制御とするか、又は、電流制御(例えば限流)とするかを切り替えることができる。
【0058】
例えば、負荷電流が大きい傾向にあるシステム稼働状況では、事故電流を速やかに遮断することが好ましい。このような状況では、事故電流発生時のスイッチ部Sp1~Sp3の制御を遮断制御とすることができる。この場合、事故電流発生時に遮断制御部によりスイッチ部が遮断される。これに対して、負荷電流が小さい傾向にあるシステム稼働状況では、遮断するより限流して動作を継続することが好ましい場合がある。このような状況では、事故電流発生時のスイッチ部Sp1~Sp3の制御を電流制御(例えば限流)とすることができる。この場合、事故電流発生時に、負荷電流制御部のスイッチ部の制御による負荷電流制御(例えば、限流)が行われる。
【0059】
スイッチ部Sp1~Sp3の制御の遮断/電流制御(限流)の切り替えは、例えば、コントローラCp1~Cp3がシステムからの指令に従って行うことができる。すなわち、システムにおける負荷の稼働条件に応じて、事故電流発生時のスイッチ部Sp1~Sp3の動作を、遮断とするか、負荷電流制御(例えば限流)とするかが切り替えられてもよい。
【0060】
半導体遮断回路1は、事故電流発生時に遮断制御部がスイッチ部を遮断する場合と、事故電流発生時に負荷電流制御部が負荷電流を制御する場合とで、コンデンサCapの初期充電電圧Vcap0が異なるように調整することができる。例えば、初期充電電圧Vcap0が、遮断制御時より負荷電流制御時の方が小さくなるように、調整されてもよい。例えば、限流したい条件では、予めRp1/Rp2の値を小さく設定しておくことで、エネルギー吸収部10pにおけるエネルギーの吸収速度が遅くなる。そのため、限流制御がやりやすくなる。
【0061】
上記の
図4に示すスイッチ部Sp1~Sp3の構成及びその制御は、マイナス側のスイッチ部Sn1~Sn3にも同様に適用することができる。なお、本実施形態の半導体遮断回路は、バイポーラ構成でない直流電源にも適用できる。例えば、
図4において、エネルギー吸収部10pのコンデンサCapの初期充電のための電圧は、バイポーラ電源の電圧に限られず、バイポーラ構成でない直流電源の電圧を用いてもよい。この場合、コンデンサCapの初期充電電圧Vcap0は、例えば、共通バスの直流電源の電圧の分圧としてもよい。又は、直流電源とは別に、コンデンサCapの初期充電のための電源が設けられてもよい。
【0062】
図7は、スイッチ部Sp1の変形例を示す図である。
図7に示す例では、スイッチ部Sp1は、半導体スイッチ素子Sp11と、機械式スイッチSp12が並列に接続された構成を有する。半導体スイッチ素子Sp11は、
図4に示す構成と同様に、ソース同士を接続した半導体トランジスタで構成される双方スイッチである。機械式スイッチSp12は、物理的に線の接続と非接続(離間)を切り替えるスイッチである。なお、スイッチ部Sp1以外のスイッチ部Sp2、Sp3、Sn1~Sn3も、変形例として
図7に示す構成とすることができる。
【0063】
機械式スイッチSp12は、例えば、コントローラCp1からの制御信号に従ってオン/オフが切り替わる。半導体スイッチ素子Sp11と機械式スイッチSp12は連動してオン/オフが切り替えられる。スイッチ部Sp1が導通(オン)状態のときは、半導体スイッチ素子Sp11及び機械式スイッチSp12の両方が導通(オン)状態となり、スイッチ部Sp1が遮断(オフ)状態のときは、半導体スイッチ素子Sp11及び機械式スイッチSp12の両方が遮断(オフ)状態となる。通常時において、スイッチ部Sp1が導通のときは、機械式スイッチSp12がオン(導通)状態なので、半導体スイッチ素子Sp11のみの場合に比べて、導通損失が低減できる。
【0064】
スイッチ部Sp1をオンからオフに切り替える際には、機械式スイッチSp12を半導体スイッチ素子Sp11よりも早くオフにすることができる。すなわち、半導体スイッチ素子Sp11をオフに切り替えるタイミングを、機械式スイッチSp12をオフに切り替えるタイミングより遅らせることができる。この場合、まず機械式スイッチSp12をオフにして、電流を半導体スイッチ素子Sp11に転流した後、半導体スイッチ素子Sp11をオフにすることができる。これにより、機械式スイッチのアーク発生を抑えることができる。
【0065】
上記構成において、スイッチ部Sp1~Sp3、Sn1~Sn3の切断後の動作については、特に限定されないが、例えば、負荷における事故が復旧した後に、遮断していたスイッチ部をオフからオンに切り替えることができる。この際に、上記の負荷電流制御部が。スイッチ部のオン及びオフにより負荷電流を制御してもよい。これにより、初期の限流が可能になる。例えば、スイッチ部をオンにした直後の過電流を抑えることができる。
【0066】
(システム構成例)
図8は、本実施形態におけるDCグリッドシステムの構成例を示す図である。
図8に示すDCグリッドシステムは、第1電力供給部P1と第2電力供給部P2を有する。第1電力供給部P1と第2電力供給部P2は、それぞれ独立して直流電力を供給する。第1電力供給部P1は、第1共通バスka1を介して複数の負荷F1に接続される。第2電力供給部P2は、第2共通バスka2を介して複数の負荷F2に接続される。すなわち、
図8に示すDCグリッドシステムは、マルチターミナルの構成を有する。第1電力供給部P1から複数の負荷F1へそれぞれ直流電力を供給する複数の配電経路に第1半導体遮断回路1-1が設けられる。第2電力供給部P2から複数の負荷F2へそれぞれ直流電力を供給する複数の配電経路に第2半導体遮断回路1-2が設けられる。第1半導体遮断回路1-1及び第2半導体遮断回路1-2の各々の構成は、例えば、
図4に示す構成とすることができる。
【0067】
第1共通バスka1と第2共通バスka2の間には、冗長用切替器3が接続される。冗長用切替器3は、第1共通バスka1と第2共通バスka2の間の導通/遮断を切り替える。冗長用切替器3が導通した場合、第1電力供給部P1が、複数の負荷F1と複数の負荷F2の両方に接続され、且つ、第2電力供給部P2が、複数の負荷F2と、複数の負荷F1の両方に電力を接続される。これにより、第1電力供給部P1又は第2電力供給部P2のいずれか一方が故障しても、残った他方により、複数の負荷F1と複数の負荷F2の両方に電力供給が可能になる。
【0068】
第1半導体遮断回路1-1、及び第2半導体遮断回路1-2(以下、特に区別しない場合は、半導体遮断回路1-1、1-2を称する)は、複数の負荷F1、F2のうちいずれか1つで事故(例えば、短絡)が発生した場合に、事故電流を遮断又は限流し、残った他の負荷への正常な電力供給を維持することができる。半導体遮断回路1-1、1-2が事故電流を遮断するか、又は、事故電流を限流しつつも電流を維持するかは、DCグリッドシステムの稼働状況に応じて制御されてもよい。
【0069】
第1電力供給部P1及び第2電力供給部P2は、バイポーラ構成であり、プラス側電圧+Eとマイナス側電圧-Eをそれぞれ別の経路で供給する。第1共通バスka1及び第2共通バスka2は、いずれも、プラス側電圧の線、マイナス側電圧の線、及びグランドの線を有する。複数の負荷F1、F2のそれぞれには、プラス側電圧及びマイナス側電圧の両方が供給される。複数の負荷F1、F2のそれぞれには、プラス側電圧の線、マイナス側電圧の線、及びグランドの線が接続される。半導体遮断回路1-1、1-2は、上記のように、複数のプラス側配電経路に共通のエネルギー吸収部10pと、複数のマイナス側配電経路に供給のエネルギー吸収部10nを備える。このように、エネルギー吸収部を複数の配線で共通化することで、軽量化が可能になる。
【0070】
図8に示す例では、第1電力供給部P1は、一例として、第1エンジンe1と、第1エンジンe1の駆動力により発電する第1発電機g1と、第1発電機g1で発電された電力を直流に変換する第1変換器t1と、第1変換器t1で変換された電力による充電並びに放電による直流電力の供給をする第1電池b1と、第1電池b1と第1共通バスka1の間に設けられ、事故電流の限流又は遮断を行う第1限流/遮断器r1とを有する。第2電力供給部P2も、同様に、第2エンジンe2、第2発電機g2、第2変換器t2、第2電池b2、及び、第2限流/遮断器r2を有する。複数の負荷F1、F2のそれぞれは、例えば、配電経路を介して供給される直流電圧を交流に変換するインバータと、インバータにより制御されるモータとを有する。
【0071】
図8に示すDCグリッドシステムは、一例として、電動航空機に適用することができる。電動航空機に適用されたDCグリッドシステムは、負荷又は電力供給部で事故が発生した場合でも、第1及び第2限流/遮断器r1、r2、冗長用切替器3、及び、半導体遮断回路1-1、1-2、により、事故点を速やかに切り離す、及び/又は接続切替えが可能である。これにより、残った健全な機器で運航継続が可能になる。半導体遮断回路1-1、1-2は、事故電流を限流しつつ素早く切り離すDC回路ブレーカとして機能する。半導体遮断回路1-1、1-2は、冗長構成のため、多数設けられる。上記のとおり複数の半導体遮断回路1-1、1-2は、軽量性に優れているため、システム全体の軽量化への寄与度が高い。
【0072】
また、半導体遮断回路1-1、1-2は、上記のように、エネルギー吸収部10p、10nにおけるコンデンサCap、Canの初期充電電圧Vcap0、Vcan0を、抵抗分圧で可変にできる。これにより、DCグリッドシステムの状況に応じて事故電流のエネルギー吸収の速度を調整できる。例えば、離陸の時のように負荷電流が大きい際には、初期充電電圧Vcap0、Vcap0を大きくしておくことができる。これにより、電流の上限に余裕がない状況において、事故電流を速やかに遮断できる。一方、巡航のように負荷電流が小さい場合は、初期充電電圧Vcap0、Vcap0を小さくし、限流しやすいように設定する。これにより、事故電流を限流しつつ、電流を遮断せず、動作を継続することが容易になる。
【0073】
(構成の変形例)
図9は、本実施形態における半導体遮断回路の構成の変形例を示す図である。
図9に示す半導体遮断回路1は、
図1の例と同様に、バイポーラ構成の直流電源と、複数の負荷との間に設けられる。また、半導体遮断回路1は、直流電源のプラス側配線及びマイナス側配線のそれぞれから分岐した複数の配電経路kp1~kp4、kn1~kn4の各々について互いに独立して、限流及び遮断をするように構成される。プラス側スイッチ部Sp1~Sp3(以下、単にスイッチ部Sp1~Sp3と称する)、マイナス側スイッチ部Sn1~Sn3(以下、単にスイッチ部Sn1~Sn3と称する)、及び、センサbp1~bp4、bn1~bn4は、
図1と同様に構成することができる。また、スイッチ部Sp1~Sp4、Sn1~Sn4の構成及び動作は、
図1に示す例と同様にすることができる。
【0074】
図9の例では、配電経路kp1~kp4のそれぞれにプラス側リアクトルLp1~Lp4(以下、単に、リアクトルLp1~Lp4と称する)が設けられる。配電経路kn1~kn4のそれぞれにマイナス側リアクトルLn1~Ln4(以下、単に、リアクトルLn1~Ln4と称する)が設けられる。リアクトルLp1~Lp4のうち少なくとも1つは、他のプラス側配電経路に設けられたプラス側リアクトルとコアを共有している。リアクトルLn1~Ln4のうち少なくとも1つは、他のマイナス側配電経路に設けられたマイナス側リアクトルとコアを共有している。リアクトルLp1~Lp4、Ln1~Ln4の構成の詳細は後述する。
【0075】
配電経路kp1~kp4のそれぞれのスイッチ部Sp1~Sp4には、共通のエネルギー吸収回路であるコンデンサCapが並列に接続される。配電経路kp1~kp4のそれぞれの上流側とコンデンサCapの間に、第1ダイオードブリッジDp11~Dp14がそれぞれ設けられる。配電経路kp1~kp4のそれぞれの下流側とコンデンサCapの間に、第2ダイオードブリッジDp21~Dp24がそれぞれ設けられる。第1ダイオードブリッジDp11~Dp14のそれぞれは、
図1に示す第1ダイオードブリッジDp1と同様に構成することができる。
【0076】
エネルギー吸収部10pは、スイッチ部Sp1~Sp4それぞれの迂回経路を形成する。迂回経路は、第1ダイオードブリッジDp11~Dp12、コンデンサCap、及び第2ダイオードブリッジDp21~Dp24を通る経路となる。この構成により、複数の配電経路kp1~kp4のうちいずれの負荷で事故が起きても、コンデンサCapでエネルギーを独立に吸収することができる。
【0077】
また、
図1の例と同様に、コンデンサCapには、バイポーラ電源のプラス電圧+VDCとマイナス電圧-VDCの間の電圧の分圧が印加されるよう構成されている。この分圧を決めるため分圧抵抗として、第1抵抗Rp1がコンデンサCapと並列に接続され、第1抵抗Rp1とマイナス側共通バスknとの間に接続された第2抵抗Rp2が接続される。
【0078】
マイナス側エネルギー吸収部10nは、プラス側エネルギー吸収部10pと同様に構成することができる。すなわち、マイナス側エネルギー吸収部10nは、第1ダイオードブリッジDn11~Dn14、コンデンサCan、及び第2ダイオードブリッジDn21~Dn23を有する。
【0079】
(リアクトル群の構成例)
次に、リアクトル群の構成例を説明する。
図9の例では、プラス側及びマイナス側のそれぞれにおいて、共通バスに接続される配電経路の数は、一例として4本であるが、これに限定されず、2本以上の任意の本数であってもよい。ここでは、配電経路の数が2~8本の場合の例を説明する。配電経路のリアクトル群の構成は、プラス側とマイナス側とで同様にできるため、以下の説明では、配電経路を、プラス側、マイナス側を区別せず、配電経路k1、k2、k3・・・knとする。
【0080】
図10は、配電経路が2本(n=2)の場合のリアクトル群の構成例を示す図である。
図10の例では、2本の配電経路k1、k2のそれぞれにおいて、リアクトルが直列方向に複数に分割される。すなわち、複数の分割リアクトルが直列に接続される。配電経路k1、k2のそれぞれにおいて、複数の分割リアクトルの励磁インダクタンスは同じである。複数の分割リアクトルは、それぞれ、互いに別々のコアを有する。各分割リアクトルは、他の配電経路の分割リアクトルとコアを共有する。コアは磁性体である。各配電経路における複数の分割リアクトルにおいて、コアの材料及びサイズ、並びに巻数は同じとすることとが好ましい。
図10では、配電経路k1の分割リアクトルL11と配電経路k2の分割リアクトルL21がコアJ1を共有し、配電経路k1の分割リアクトルL12と配電経路k2の分割リアクトルL22がコアJ2を共有する。4つの分割リアクトルL11、L12、L21、L22の励磁インダクタンスは同じであることが好ましい。
【0081】
図10の例では、配電経路k1の分割リアクトルL11の巻線方向R11と分割リアクトルL12の巻線方向R12は、同じである。配電経路k2の分割リアクトルL21の巻線方向R21と分割リアクトルL22の巻線方向R22は、逆である。すなわち、分割リアクトルL21とL22は、互いに逆相になるように接続される。これにより、配電経路k1、k2のうち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路の複数の分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向を施すことができる。
図10では、巻線方向を黒丸の位置で示している。黒丸が右に付されたリアクトルと左に付されたリアクトルは、巻線方向が互いに逆である。
【0082】
例えば、
図10の構成において、配電経路k1の負荷側で短絡故障が生じると、配電経路k1の分割リアクトルL11、L12の両端に、直流電源の電圧Eが印加される。この時、L11、L12とそれぞれコアを共有しているL21、L22にも誘導起電力が発生する。この場合、L21、L22の両端に印加されるV2は、下記式のようにV2=0となる。
V2=(E/2)・(R11・R21)+(E/2)・(R12・R22)
=(E/2)・{1・1+1・(-1)}
=0
ここで、コアを共有する分割リアクトル間の結合係数M=1とし、巻線方向Rの値は、左巻きを1、その逆の右巻きを(-1)とする。
図10の行列R2は、
図10に示す各分割リアクトルL11、L12、L21、L22の巻線方向R11、R12、R21、R22の配置を行列で表したものである。
【0083】
図10の例では、配電経路k1の短絡により、配電経路k2の分割リアクトルL21、L22に誘導される起電力は、互いに打ち消し合って、総和の実質的に0になる。また、配電経路k2が短絡した場合も、配電経路k1の分割リアクトルL11、L12に誘導される起電力は、互いに打ち消し合う。このように、配電経路の数n=2、分割リアクトルの数m=2の場合、L11とL21でコアJ1を共有し、L12とL22でコアを共有し、L11とL12の巻線方向を同じとし、L21とL22の巻線方向を逆にすることで、いずれかの配電経路で短絡が生じても、他の配電経路に影響を及ぼさないようにすることができる。また、コアを共有することでコア量を低減できる。
【0084】
図11は、
図10に示すリアクトル群の構成において、配電経路k1の負荷側で短絡故障が生じた場合の故障箇所の負荷電流と、健全箇所の負荷電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11に示す結果では、故障箇所の負荷電流は、直流電源による電流の5倍以内に抑えられており、限流リアクトルの電流抑制効果が確認できる。また、健全箇所の負荷電流の変動はほとんど見られない。
【0085】
図12は、配電経路が4本(n=4)の場合のリアクトル群の構成例を示す図である。
図12の例では、4本の配電経路k1~k4のそれぞれにおいて、リアクトルが直列方向に複数(m=4)に分割される。すなわち、複数(m=4)の分割リアクトルが直列に接続される。配電経路k1~k4のそれぞれにおいて、複数の分割リアクトルの励磁インダクタンスは同じである。1つの配電経路の複数の分割リアクトルは、それぞれ、互いに別々のコアを有する。各分割リアクトルは、他の配電経路の分割リアクトルとコアを共有する。
図12では、配電経路k1~k4の分割リアクトルL11~L41がコアJ1を共有し、L12~L42がコアJ2を、L13~L43がコアJ3を、L14~L44がコアJ4を、それぞれ共有する。16個の分割リアクトルL11~L44の励磁インダクタンスは同じとすることが好ましい。
【0086】
図12の例では、図の下段に示す行列R4で示される分割リアクトルの巻線方向となるように、4×4の分割リアクトルの巻線方向が施される。これにより、配電経路k1~k4のうち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路のそれぞれにおける4つの分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向を施すことができる。例えば、配電経路k1の負荷側で短絡が生じてL11~L14の両端に電圧Eが印加された場合、配電経路k4のL41、L42、L43、L44に印加される電圧の総和V4は、下記式のようにV4=0となる。
V4=(E/4)・(R11・R41)+(E/4)・(R12・R42)+(E/4)・(R13・R43)+(E/4)・(R14・R44)
=(E/4)・{1・1+1・(-1)+1・(-1)+1・1}
=0
【0087】
発明者は、n=2、m=2の場合の巻線方向の配置を示す行列R2(
図10参照)がアダマール行列であることに着目し、アダマール行列の下記の性質を用いて、2×2の行列R2を、4×4のアダマール行列に拡張した行列R4を、n=4、m=4の場合の巻線方向の配置に採用することに想到した。この行列R4を採用することで、4本の配電経路k1~k4うち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路のそれぞれにおける4つの分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向を施すことができる。
【0088】
アダマール行列をHとすれば、下記式が成り立つ。
H・Ht=kI
上記式において、kは正方行列のサイズであり、Iは単位行列である。
Hがアダマール行列である場合、下記の行列もアダマール行列となる。
【0089】
【0090】
このアダマール行列の定義に従って、2×2の行列R2を、4×4のアダマール行列に拡大したものが、
図12の行列R4である。
【0091】
図12は、m=4の場合の分割リアクトルの構成例である。m=3の場合は、
図12に示す4×4のうち3本の配電経路の分割リアクトルの巻線配置とすることができる。例えば、破線B3で示す範囲の3本の配電経路k1~k3の分割リアクトルの巻線配置をm=3本の配電経路のリアクトル群に施すことができる。この場合も、3本のうち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路のそれぞれにおいて分割リアクトルの誘導起電力が打ち消し合うように構成できる。すなわち、m=3の場合は、n=4、m=4の4×4の分割リアクトルの巻線方向の配置であって、1つの配電経路で短絡が生じた場合に他の配電経路のそれぞれの分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合う配置のうち、任意の3本の配電経路の分割リアクトルの配置を、3本の配電経路の分割リアクトルの配置とすることができる。
【0092】
図13は、配電経路が8本(n=8)の場合のリアクトル群の構成例を示す図である。
図13の例では、8本の配電経路k1~k8のそれぞれにおいて、リアクトルが直列方向に複数(m=8)に分割される。配電経路k1~k8のそれぞれにおいて、複数の分割リアクトルの励磁インダクタンスは同じである。1つの配電経路の複数の分割リアクトルは、それぞれ、互いに別々のコアを有する。各分割リアクトルは、他の配電経路の分割リアクトルとコアを共有する。8×8=64個の分割リアクトルL11~L88の励磁インダクタンスは同じとすることが好ましい。
【0093】
図13の例では、図の下段に示す行列R8で示される分割リアクトルの巻線方向となるように、8×8の分割リアクトルの巻線方向が施される。これにより、配電経路k1~k8のうち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路のそれぞれにおける8つの分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合うように巻線方向を施すことができる。上記のアダマール行列の定義に従って、4×4の行列R4を、8×8のアダマール行列に拡大したものが、
図13の行列R8である。
【0094】
図13は、m=8の場合の分割リアクトルの構成例である。m=7の場合は、
図13に示す8×8のうち7本の配電経路の分割リアクトルの巻線配置とすることができる。例えば、破線B7で示す範囲の7本の配電経路k1~k7の分割リアクトルの巻線配置をm=7本の配電経路のリアクトル群に施すことができる。同様に、m=6の場合は、
図13の8×8の構成のうち、任意の6本の配電経路の分割リアクトルの巻線配置(例えば、破線B6の範囲の構成)を、m=5は、8×8の構成のうち、任意の5本の配電経路の分割リアクトルの巻線配置(例えば、破線B5の範囲の構成)を、分割リアクトルの巻線方向の配置として採用することができる。これらの場合も、複数本のうち1本の配電経路で短絡が生じた場合に、他の配電経路のそれぞれにおいて分割リアクトルの誘導起電力が打ち消し合うように構成できる。
【0095】
すなわち、m=5、6又は7の場合は、n=8、m=8の8×8の分割リアクトルの巻線方向の配置であって、1つの配電経路で短絡が生じた場合に他の配電経路のそれぞれの分割リアクトルに生じる起電力が互いに打ち消し合う配置のうち、任意の5、6又は7本の配電経路の分割リアクトルの配置を、これら配電経路の分割リアクトルの配置とすることができる。
【0096】
図14は、
図13に示す分割リアクトルの構成の変形例を示す図である。
図14の例では、n=8本の配電経路k1~k8の各々における8個の分割リアクトルのうち1列目の分割リアクトルが、他の配電経路の分割リアクトルと共通化される。すなわち、複数の配電経路1k~18は、1列目の分割リアクトルL11Cを共有している。具体的には、配電経路k1~k8の各々におけるm-1個の分割リアクトルは、共通バスに接続される1つの分割リアクトルL11Cに直列に接続されている。
【0097】
図13に示す8×8の構成において、1列目の分割リアクトル(L11、L21、L31、L41、L51、L61、L71、L81)の磁束結合インダクタは、常時の起磁力が配電経路数n×定常電流Iとなる。一方で、2列目以降の列(2~8列目)の分割リアクトルは、磁束結合インダクタは、常時の起磁力は、互いに打ち消されて実質的にゼロになる。そのため、故障短絡が発生した場合、1列目の分割リアクトルの磁束結合インダクタは、常時電流の磁束kIに、故障短絡電流の磁束が重畳されることになる。そのため、1列目の分割リアクトルが共有するコアJ1は、大型であることが好ましい。発明者は、この状況を鑑みて、
図14に示すように、複数の配電経路1k~8kの1列目の分割リアクトルを共通単巻化することに想到した。
図13に示すように、1列目の分割リアクトルL11~L81は、巻線方向及び巻き数は同じであるため、配電経路1k~8kの1列目の分割リアクトルL11~L81の両端の電位は実質同一となる。そのため、これらをまとめて1つの共通の単巻の分割リアクトルで構成することができる。単巻化することにより、各巻線の結合係数のアンバランスを考慮する必要がなく、分割リアクトル間のギャップ部から漏れる磁束分の窓面積の増加を抑えることができる。その結果、リアクトルのさらなる小型化及び軽量化が可能になる。
【0098】
なお、配電経路の数が、n=8本以外の場合であっても、1列目の分割リアクトルを共通化することができる。例えば、
図10に示す1列目の分割リアクトルL11、L21、又は
図12に示す一例目の分割リアクトルL11~L41を共通単巻化して、1つの分割リアクトルで構成してもよい。また、1列目の分割リアクトルの一部を共通単巻化してもよい。
【0099】
図15は、
図13に示す分割リアクトルの構成の他の変形例を示す図である。
図15の例では、n=8本の配電経路k1~k8の各々における8個の分割リアクトルのうち1列目の分割リアクトルが、省略されている。これにより、さらなる軽量化が可能になる。この場合、配電経路k1~k8のうち1本で短絡故障が生じた場合、他の配電経路のそれぞれにおいて、7個の分割リアクトルに誘導させる起電力が打ち消し合うが、1/7分の誘導起電力が残留することになる。この残留起電力による健全箇所の電圧を揺れが許容範囲になるシステムに、この1列目の分割リアクトルを省略した構成のリアクトル群を適用できる。
【0100】
図16は、
図15に示す分割リアクトルの構成における負荷電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図16に示す結果では、故障箇所の負荷電流の変動と同じ期間に、健全箇所の電流に10%程度の変動が見られる。これは、1列目の分割リアクトルを省略したことになる誘導起電力の残留によるものと考えられる。特に限定されないが、例えば、故障短絡発生時の健全箇所の負荷電流又は負荷電圧の変動として、20%以内が許容されるシステムに、この1列目の分割リアクトルを省略した構成のリアクトル群を適用できる。
【0101】
図16は、m=8の場合に、1列目の分割リアクトルを省略する例である。m=8以外の場合、例えば、m=4の場合でも、1列目の分割リアクトルを省略してもよい。m個の分割リアクトルのうち1列目を省略すると、(1/m)分の誘導起電力が残留することになる。そのため、mが小さい場合は、1列目を省略し、インダクタンス値を低減した共通単巻化した分割リアクトルを1列目に追加してもよい。これにより、残留する誘導起電力を小さくすることができる。
【0102】
以上、m=2~8の場合の分割リアクトルの構成例を説明したが、m=9以上の場合も、上記例と同様に、アダマール行列の定義に従って、8×8の行列R8を拡大した行列で示される巻線方向の配置を採用することで、分割リアクトルを構成することができる。
【0103】
図17は、本実施形態における半導体遮断回路の構成の他の変形例を示す図である。
図17に示す構成は、
図9に示す構成においてエネルギー吸収部10p、10nのコンデンサを、電圧クランプ素子Crp、Crnに置き換えた構成である。また、
図17の構成では、コンデンサの電圧を調整する分割抵抗はない。このように、エネルギー吸収部10p、10nにおけるエネルギー吸収回路として、コンデンサの代わりに電圧クランプ素子を用いてもよい。電圧クランプ素子は、一例として、バリスタ、ツェナーダイオード、又は、その他半導体を用いた電圧クランプ回路によって構成される。この場合であっても、コアを共有するリアクトル群とエネルギー吸収部10p、10nとの組み合わせによる、軽量化が可能である。なお、
図17の例において、スイッチ部Sp1~Sp4、Sn1~Sn4の構成及び動作は、
図1又は
図9と同様にすることができる。
【0104】
図9及び
図17の構成例では、第1ダイオードブリッジDp11~Dp14、Dn11~Dn14は、配電経路ごとに設けられる。この変形例として、例えば、
図1に示すように、複数の配電経路で1つの第1ダイオードブリッジを共有してもよい。この場合、配電経路と第1ダイオードブリッジとの接続点とスイッチ部との間に、リアクトル群が接続されてもよい。また、リアクトル群が接続される位置は、
図9、
図17に示すように、共通バスとスイッチ部との間の各配電経路に限られない。例えば、
図1に示すように、コンタクタと負荷の間に、リアクトル群が接続されてもよい。
【0105】
また、エネルギー吸収部10p、10nの構成は、上記例に限られない。エネルギー吸収部は、ダイオードブリッジを用いない構成であってもよい。
図18は、エネルギー吸収部の変形例を示す図である。
図18に示す例では、複数の配電経路のスイッチ部Sp1~Sp4、Sn1~Sn4のそれぞれに対して、エネルギー吸収回路Vp11~Vp14、Vn11~Vn14が並列に接続される。エネルギー吸収回路は、例えば、電圧クランプ素子とすることができる。
【0106】
上記の
図9、
図17又は
図18に例示されるリアクトル群を備える半導体遮断回路は、
図8に示すDCグリッドシステムの半導体遮断回路に用いることができる。
図8における第1半導体遮断回路1-1及び第2半導体遮断回路1-2の各々の構成は、例えば、
図9、
図17又は
図18に示す構成とすることができる。
【0107】
上記構成のリアクトル群自体も、本発明の実施形態の1つである。例えば、上記のコアを共有する構成のリアクトル群は、半導体遮断回路の他にも、複数の配電経路のそれぞれにリアクトルを接続する構成を含む回路又はシステムに適用することができる。
【0108】
(他の変形例)
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、
図1に示す例では、各スイッチ部Sp1~Sp3、Sn1~Sn3と、負荷との間に、コンタクタが設けられるが、このコンタクタは省略してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1:半導体遮断回路、ka1、ka2、kp、kn:共通バス、Sp1~Sp3:スイッチ部、10p、10n:エネルギー吸収部、Dp1:第1ダイオードブリッジ、Dp21~Dp23:第2ダイオードブリッジ、Cap:コンデンサ