(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151747
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】調整されるべき摩擦を推定及び調整し、ハンドルトルクのヒステリシスを制御する方法、及び対応するパワーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220929BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022042683
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】2102976
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボドワン ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ラーミニー ピエール
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232DA15
3D232DA63
3D232DC21
3D232DD08
3D232EB11
3D232EC22
3D333CB02
3D333CB20
3D333CB21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パワーステアリングシステムにおいて調整されるべき摩擦を決定するか、又はパワーステアリングシステムのハンドルに適用されたハンドルトルクのヒステリシスを修正する方法を提供する。
【解決手段】パワーステアリングシステムの一部の速度vの測定、及び/又はハンドルトルクT3の測定によって、速度vを決定し、修正されたLuGreモデルに基づいて調整されるべき摩擦Fを決定し、修正されたLuGreモデルはシステムの状態の関数として調整されるべき摩擦Fを決定し、状態の時間微分はシステムの状態、速度v、第1のゲイン及びクーロン摩擦の関数として決定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリングシステム(1)において調整されるべき摩擦(F)を決定する方法(100)であって、
前記パワーステアリングシステムの一部の速度(v)の測定、及び/又は前記パワーステアリングシステム(1)のハンドル(3)に適用されるハンドルトルク(T3)の測定によって、速度(v)を決定するステップと、
修正されたLuGreモデル(LM)に基づいて調整されるべき前記摩擦(F)を決定するステップとを備え、
前記修正されたLuGreモデル(LM)は前記システムの状態(z)の関数として調整されるべき前記摩擦(F)を決定し、前記状態(z)の時間微分(
)は前記システムの前記状態(z)、前記速度(v)、第1のゲイン(σ0)、第2のゲイン(β)、及びクーロン摩擦(F
c)の関数として、
の形式の式に従って決定され、
ここで、
であり、
ここで、sign(z)は量zの符号であり、sign(v)は量vの符号であり、
であり、かつ
である場合、
である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法(100)において、
前記クーロン摩擦Fc及び/又は前記第1のゲインσ0及び/又は前記第2のゲインβは、車両の前後速度、前記車両の横方向加速度、前記車両のヨーレート、ハンドル角又はパワーステアリングモータ角、ハンドル速度又はパワーステアリングモータ速度、前記パワーステアリングシステムの温度、外部温度、ハンドルトルク、モータトルクのうちの1つ又は複数の変数に従って変化する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法(100)において、
前記速度を決定する前記ステップは、補助モータ(12)の角速度センサ(24)による第1の速度(v1)の測定と、前記ハンドルトルク(T3)の測定による第2の速度(v2)の推定とを含み、前記ハンドルトルクの前記測定はトルクセンサ(14)によって実行され、決定された前記速度(v)は前記第1の速度(v1)と前記第2の速度(v2)との合計である方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(100)において、
調整されるべき前記摩擦(F)は中間摩擦率(w)から決定され(150)、前記中間摩擦率(w)は前記修正されたLuGreモデル(LM)及び前記速度(v)に基づいて決定され、調整されるべき前記摩擦(F)は、前記中間摩擦率(w)と、推定された動摩擦(FRI)と所望の動摩擦(FRC)との間の差との積を計算するステップ(150)に従って決定され、前記推定された動摩擦(FRI)は少なくとも前記中間摩擦率(w)から推定される方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法(100)において、
前記第2の速度(v2)の推定は、
前記ハンドル(3)と電動パワーステアリング(1)のラック(6)との間の前記ハンドルトルク(T3)を測定するように構成された前記トルクセンサ(14)を用いて前記ハンドルトルク(T3)を測定するステップと、
前記ハンドルトルク(T3)の測定値を時間微分するステップと、
前記時間微分に剛性係数を乗じて、トルク速度と呼ばれる前記第2の速度(v2)を求めるステップとを備える方法。
【請求項6】
パワーステアリングシステム(1)において調整されるべき摩擦(F)を調整する方法(200)であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(100)を用いて、調整されるべき前記摩擦(F)を推定するステップと、
補助モータ(12)を制御して、前のステップで推定された調整されるべき前記摩擦(F)を調整する目標ハンドルトルク(Cc)を適用するステップとを備える方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法(200)において、
前記補助モータ(12)を制御するステップは、
調整されるべき前記摩擦(F)の推定値と、移動を妨げる力の集合(RFE)を表すラック力又は「ラック力推定値」の推定値(RFE)との差から目標ハンドルトルク(Cc)を決定するステップ(E5)と、
前記目標ハンドルトルク(Cc)と前記測定されたハンドルトルク(T3)とに基づいて前記補助モータ(12)を閉ループ制御(BF)するステップ(E6)とを備える方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法に従って決定された摩擦を第1の目標ハンドルトルクに加えることによって目標ハンドルトルク(Cc)のヒステリシスを修正することによってハンドルトルク(T3)のヒステリシスを制御する方法であって、
請求項1~5のいずれかに記載の方法(100)を用いて、調整されるべき前記摩擦(F)を決定するステップと、
前記第1の目標ハンドルトルク(Cc)に前記調整されるべき摩擦(F)を加えて前記目標ハンドルトルク(Cc)を決定し、前記第1の目標ハンドルトルクは前記ハンドルの角度から決定されるステップと、
前記目標ハンドルトルク(Cc)と前記測定されたハンドルトルク(T3)とに基づいて補助モータ(12)を閉ループ制御(BF)するステップとを備える方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の調整されるべき摩擦(F)を決定する方法(100)を実施するか、請求項6に記載の摩擦(F)を調整する方法(200)を実施するか、又は請求項8に記載の方法を実施するように構成されたパワーステアリングシステム(1)。
【請求項10】
請求項9に記載のパワーステアリングシステム(1)を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリングシステムの分野、特にハンドルにおける摩擦を調整し、運転者の感覚を改善するための方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
パワーステアリングシステムの部品間の機械的摩擦の、運転者の感覚への衝撃を軽減するために、LuGreモデルに基づいて摩擦を推定することによって調整することが知られている。さらに、この方法の適用により、一定のコーナリングで時々非常に顕著となるトルクの損失、及び道路の表面状態に対する高すぎる感度という欠点が明らかになった。補償される摩擦の量が重要であるほど、これらの欠点はすべてより重大になる。
【0003】
したがって、本発明の目的は、これらの問題のすべて又は一部に対する解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、パワーステアリングシステムにおいて調整されるべき摩擦Fを決定する方法に関し、この方法は、前記パワーステアリングシステムの一部の速度vの測定、及び/又は前記パワーステアリングシステムのハンドルに適用されるハンドルトルクの測定によって、速度vを決定するステップと、
修正されたLuGreモデルに基づいて調整されるべき前記摩擦を決定するステップとを備え、
前記修正されたLuGreモデルが前記システムの状態zの関数として調整されるべき前記摩擦を決定し、前記システムの前記状態zの時間微分
は、前記速度v、第1のゲインσ
0、第2のゲインβ、及びクーロン摩擦F
cの前記状態の関数として
の形式の式に従って決定され、
ここで、
であり、
ここで、sign(z)は量zの符号であり、sign(v)は量vの符号であり、
ここで、
であり、かつ
である場合、
である。
【0005】
これらの条件によれば、係数βの値は、特に係数βの値が1に近い場合に、一定のコーナリングにおけるトルクの損失が摩擦の調整後にあまり顕著とならず、また、摩擦の調整後に道路の表面状態に対する感度があまり強くならないように、調整することができる。
【0006】
一実施形態によれば、本発明は、単独で、又は技術的に許容される組合せで、以下の特徴の1つ又はそれ以上を含む。
【0007】
一実施形態によれば、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって決定される。
【0008】
一実施形態によれば、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって決定される。
【0009】
ここで、σ1は、マイクロ減衰を表す第2のゲインである。
【0010】
一実施形態によれば、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって決定される。
【0011】
ここで、σ2は、粘度係数を表す第3のゲインである。
【0012】
一実施形態によれば、前記速度は、前記パワーステアリングシステムの補助モータの角速度である。
【0013】
一実施形態によれば、前記速度は、前記補助モータの角速度センサによって測定される。
【0014】
一実施形態によれば、前記速度は、前記ハンドルの角速度センサによって測定される。
【0015】
一実施形態によれば、前記速度は、2つの部分間の相対速度である。
【0016】
一実施形態によれば、クーロン摩擦Fc及び/又は前記第1のゲインσ0及び/又は前記第2のゲインβは、以下の変数、すなわち、車両の前後速度、車両の横方向加速度、車両のヨーレート、ハンドル角又はパワーステアリングモータ角、ハンドル又はパワーステアリングモータの速度、パワーステアリングシステムの温度、外部温度、ハンドルトルク、モータトルクのうちの1つ又は複数に従って変化する。
【0017】
一実施形態によれば、前記速度を決定する前記ステップは、補助モータの角速度センサによる第1の速度v1の測定と、前記ハンドルトルクの測定による第2の速度の推定とを含み、前記ハンドルトルクの前記測定はトルクセンサによって実行され、決定された前記速度は前記第1の速度と前記第2の速度との合計である。
【0018】
これらの条件によれば、前記第1の速度と前記第2の速度との合計は、前記第2の速度によって前記ハンドルにかかる運転者の低い圧力と、第1の速度によって転動面から上がってラックを直接付勢する低い圧力との両方を考慮することを可能にする。
【0019】
一実施形態によれば、調整されるべき摩擦Fは中間摩擦率から決定され、前記中間摩擦率wは前記修正されたLuGreモデル及び前記速度vに基づいて決定され、調整されるべき摩擦Fは、前記中間摩擦率と、推定された動摩擦と所望の動摩擦との間の差との積を計算するステップに従って決定され、前記推定された動摩擦は少なくとも前記中間摩擦率から推定される。
【0020】
一実施形態によれば、前記所望の動摩擦は、発展段階中に定義されたマッピングから決定される。
【0021】
一実施形態によれば、前記第2の速度の推定は、
前記ハンドルと電動パワーステアリングのラックとの間の前記ハンドルトルクを測定するように構成された前記トルクセンサを用いて前記ハンドルトルクを測定するステップと、
前記ハンドルトルクの測定値を時間微分するステップと、
前記時間微分に剛性係数を乗じて、トルク速度と呼ばれる前記第2の速度を求めるステップとを備える。
【0022】
本発明はまた、パワーステアリングシステムにおいて調整されるべき摩擦を調整するか、又は前記パワーステアリングシステムのハンドルに適用されるハンドルトルクのヒステリシスを修正する方法にも関し、前記方法は、
上記の実施方法のいずれかに係る方法を用いて、調整されるべき前記摩擦を推定するステップと、
補助モータを制御して、前のステップで推定された調整されるべき前記摩擦を調整する目標ハンドルトルクを適用するステップとを備える。
【0023】
一実施形態によれば、前記補助モータを制御するステップは、
調整されるべき前記摩擦の推定値と、移動を妨げる力の集合を表すラック力又は「ラック力推定値」の推定値との差から目標ハンドルトルクを決定するステップと、
前記目標ハンドルトルクと前記測定されたハンドルトルクとに基づいて前記補助モータを閉ループ制御するステップとを備える。
【0024】
一実施形態によれば、前記目標ハンドルトルクはマッピングとも呼ばれる対応表から決定され、それは、調整されるべき摩擦の推定値とラック力推定値との差の値の集合と、目標ハンドルトルクの対応する値の集合との間の対応を確立する。
【0025】
これらの条件によれば、ラック力推定値のヒステリシスは、前記目標トルクの発生レベルにおけるヒステリシスにも影響を及ぼす制御された所望のヒステリシスを提示するであろう。
【0026】
本発明はまた、上述の一実施形態による、本発明による方法に従って決定された摩擦を第1の目標ハンドルトルクに加えることによって目標ハンドルトルクのヒステリシスを修正することによってハンドルトルクのヒステリシスを制御する方法に関し、前記方法は、
上記の実施形態の1つに従って、本発明に従って調整されるべき摩擦を決定する方法を使用して、調整されるべき摩擦を決定するステップと、
前記第1の目標ハンドルトルクに前記調整されるべき摩擦を加えて前記目標ハンドルトルクを決定し、前記第1の目標ハンドルトルクは前記ハンドルの角度から決定されるステップと、
前記目標ハンドルトルクと前記測定されたハンドルトルクとに基づいて前記補助モータを閉ループ制御するステップとを備える。
【0027】
一実施形態によれば、前記目標ハンドルトルクは、前記ハンドルの角度間の差の値の集合と前記目標ハンドルトルクの対応する値の集合との間の対応を確立する対応テーブル又はマッピングから決定される。
【0028】
また、本発明は上述の実施形態の1つに従って、調整されるべき摩擦を決定する方法を実施するか、又は上述の実施形態の1つに従って、摩擦を調整する方法を実施するか、又は上述の実施方法の1つに従って、目標ハンドルトルクのヒステリシスを修正することによってハンドルトルクのヒステリシスを制御する方法を実施するように構成されたパワーステアリングシステムに関する。
【0029】
また、本発明は、上述の実施形態のうちの1つに従って、本発明に係る方法のうちの1つを実施するように構成されたパワーステアリングシステムを備える車両に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
その良好な理解のために、本発明の実施例及び/又は実施形態は、本発明に係る装置及び/又は方法の実施例又は実施形態をそれぞれ非限定的な例として表す添付の図面を参照して説明される。図面中の同じ参照符号は、同様の要素又はその機能が同様である要素を示す。
【
図1】本発明を適用したステアリング装置の概略図であり
【
図2】本発明を適用したパワーステアリングシステムの状態に応じたアルファ関数の値の曲線のグラフ表現である。
【
図3】本発明の実施例に係る摩擦の推定方法の代表図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る摩擦の調整方法の代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明の推定方法及び調整方法を実施することを可能にするパワーステアリングを備えるステアリング装置が示されている。それ自体公知の方法で、かつ
図1に見られるように、前記パワーステアリング装置1は、前記ハンドル3上に《ハンドルトルク》T3と呼ばれる力を加えることによって、運転者が前記パワーステアリング装置1を操縦するのを可能にするハンドル3を備えている。前記ハンドル3は好ましくはステアリングコラム4に取り付けられ、車両2上で回転するように案内され、ステアリングピニオン5によって、ステアリングラック6上で噛み合う。ステアリングラック6は、前記車両2に固定されたステアリングケーシング7内で平行移動するように案内される。
【0032】
好ましくは、前記ステアリングラック6の端部が各々、ステアードホイール10、11(それぞれ、左側のホイール10及び右側のホイール11)のステアリングナックルに接続されたステアリングタイロッド8、9に接続されており、これにより、ラック6の平行移動における長手方向の変位によって、ステアードホイールの操舵角(ヨー角)を修正することが可能になる。ステアードホイール10、11はさらに好ましくは駆動輪であってもよい。
【0033】
また、パワーステアリング装置1は、前記パワーステアリング装置1の操縦を補助するように構成されたモータ12を備える。モータ12は好ましくは2つの動作方向を有する電気モータであり、好ましくは、《ブラシレス》タイプの回転電気モータである。
【0034】
パワーステアリング装置1は、ハンドルトルクT3を測定するために、例えばステアリングコラム4上のパワーステアリング装置1内に特別に配置されたハンドルトルクセンサ14を更に有し、前記ハンドルトルクセンサ14が使用する測定技術にかかわらず、本当にもっぱらハンドルトルクT3の測定値を提供することを主目的とする。さらに、パワーステアリング装置1は、エンジン12の回転速度を測定することを目的としたエンジン速度センサ24を備えている。
【0035】
最後に、パワーステアリング装置1は、センサ14、24からのデータに基づいて推定方法及び調整方法を実施するように構成された演算制御部20も備える。
【0036】
図3に図示するように、実施形態に係る、調整されるべき摩擦を推定する方法100は、車両パワーステアリングシステム1の電動モータ12の速度センサ24によって第1の速度v1を測定するステップを含む。推定方法100は、第2の速度v2を決定するステップを含み、それは、ハンドルトルクT3を測定するサブステップと、微分ゲインが適用されるハンドルトルクT3の測定値の時間微分のサブステップとを含む。推定方法は、参照符号Σによって表される第1及び第2の速度v1、v2の和vを計算するステップを含む。次に、ハンドル速度と呼ばれる速度vが得られる。ボックスLMによって表される推定方法100における次のステップは、単純化された一次元(1質量)ステアリングモデルと、修正されたLuGreモデルLMによる摩擦とをシミュレートすることで構成され、その唯一の入力速度は前のステップで得られたハンドル速度vである。こうして、パワーステアリング1によって調整されるべき摩擦の推定値が得られる。
【0037】
これらの条件によれば、第1の速度と第2の速度との合計は、第2の速度によってハンドルにかかる運転者の低い圧力と、第1の速度によって転動面から上がってラックを直接付勢する低い圧力との両方を考慮することを可能にする。
【0038】
前記修正されたLuGreモデルLMは、システムの状態の関数として調整されるべき摩擦Fを決定することを可能にし、前記状態zの時間微分
は、前記状態z、前記速度v、第1のゲインσ
0、及びクーロン摩擦F
cの関数として、
の形式の式に従って決定され、
ここで、
であり、
ここで、sign(z)は量zの符号であり、sign(v)は量vの符号であり、
ここで、
であり、かつ
である場合、
である。
【0039】
図2は、前記状態zの関数として、前記関数α(z)の展開を図表を用いて示し、特に特定値-z
max、-z
ba、z
ba、及びz
maxを示す。
【0040】
これらの条件によれば、係数βの値は、特に係数βの値が1に近い場合に、一定のコーナリングにおけるトルクの損失が摩擦の調整後にあまり顕著とならず、また、摩擦の調整後に道路の表面状態に対する感度があまり強くならないように、調整することができる。
【0041】
特に、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって決定される。
【0042】
詳しくは、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって直接決定される。
【0043】
ここで、σ1は、マイクロ減衰を表す第2のゲインである。
【0044】
さらに詳しくは、調整されるべき摩擦Fは、状態zの関数として、
の式によって決定される。
【0045】
ここでは、σ2は、粘度係数を表す第3のゲインである。
【0046】
特定の例によれば、前記速度vは、前の例に従って第1の速度と第2の速度との合計とする代わりに、前記補助モータ12の角速度センサによって測定される、前記パワーステアリングシステム1の前記補助モータ12の角速度とすることができる。
【0047】
別の例によれば、前記速度は、前記パワーステアリングシステム1の2つの部分の間の相対速度である。
【0048】
実施例によれば、方法100によれば、パワーステアリング1の中間摩擦率wの推定値を得ることができ、この推定値から、例えば、
図4を参照して、後述するステップ150に従って、調整されるべき摩擦の推定値が計算される。
【0049】
調整されるべき摩擦Fは、中間摩擦率wと、推定された動摩擦FRIと所望の動摩擦FRCとの間の差E3との積の計算E4を含むステップ150に従って、中間摩擦率wから決定され、前記推定された動摩擦FRIは、ステップE1の間に、少なくとも前記中間摩擦率wから推定され、前記所望の動摩擦FRCは、ステップE2の間に、例えば、発展段階中に調整されたマッピングから得られる。
【0050】
前記推定された動摩擦は例えば、以下の特許文献FR3070957B1、又はFR3095515A1、又はFR3018917B1のうちの1つに記載された方法のうちの1つに従って推定される。
【0051】
図4に示すように、本発明はまた、パワーステアリングシステム1において調整されるべき摩擦Fを調整するか、又は前記パワーステアリングシステム1のハンドル3に適用されるハンドルトルクT3のヒステリシスを修正する方法200にも関し、前記方法は、
上述した実施形態の1つに係る方法100を用いて、調整されるべき摩擦Fを推定するステップと、
前記補助モータ12を制御して、前のステップで推定された調整されるべき前記摩擦Fを補償する目標ハンドルトルクCcを適用するステップとを備える。
【0052】
特に、前記補助モータ12を制御するステップは、
調整されるべき前記摩擦Fの推定値と、移動を妨げる力の集合を表すラック力又は「ラック力推定値」の推定値RFEとの差から目標ハンドルトルクCcを決定するステップE5と、
前記目標ハンドルトルクCcと前記測定されたハンドルトルクT3とに基づいて前記補助モータ12を閉ループBF制御するステップE6とを備える。
【0053】
一例によれば、前記目標ハンドルトルクはマッピングとも呼ばれる対応表から決定され、それは、調整されるべき摩擦Fの推定値とラック力の推定値RFEとの差の値の集合と、目標ハンドルトルクCcの対応する値の集合との間の対応を確立する。
【0054】
これらの条件によれば、ラック力推定値のヒステリシスは制御された所望のヒステリシスを提示することになり、これはまた、目標トルクの発生レベルでのヒステリシスに影響を与えることになる。
【0055】
例えば、電動パワーステアリングは400Nの摩擦で300Nの感覚が望まれ、摩擦推定器FRIはステアリングが400Nであることを識別し、所望の摩擦値入力は300Nとなる。したがって、差は100Nであり、移動を妨げるすべての力の決定された推定値は400Nであり、それから100Nを差し引いて、摩擦が300Nの所望の値に対応するようにする。
【0056】
本発明はまた、上述の実施形態の1つによる、本発明による方法に従って決定された摩擦を加えることによって目標ハンドルトルクCcのヒステリシスを修正することによってハンドルトルクT3のヒステリシスを制御する方法にも関し、前記方法は、
請求項1~4のいずれかに記載の方法を用いて、調整されるべき摩擦Fを決定するステップと、
ハンドルの角度から決定された第1の目標ハンドルトルクCcに調整されるべき摩擦Fを加えて前記目標ハンドルトルクCcを決定するステップと、
前記目標ハンドルトルクCcと前記測定されたハンドルトルクT3とに基づいて前記補助モータ12を閉ループBF制御するステップとを備える。
【0057】
一例によれば、前記目標ハンドルトルクは、ここでは前記ハンドルの角度間の差の値の集合と前記目標ハンドルトルクCcの対応する値の集合との間の対応を確立する対応テーブル又はマッピングから決定される。
【0058】
本発明はまた、調整されるべき摩擦Fを決定する本発明に係る方法100を実施するか、又は調整されるべき摩擦Fを調整する本発明に係る方法200を実施するか、又は目標ハンドルトルクCcのヒステリシスを修正することによってハンドルトルクT3のヒステリシスを制御する本発明に係る方法を実施するように構成されたパワーステアリングシステムに関する。
【0059】
本発明はまた、本発明による方法100を実施して、調整されるべき摩擦を調整するように構成されたパワーステアリングシステムを装備した車両に関する。
【外国語明細書】