(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151757
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】逆相乳化重合用の乳化剤組成物及び高分子凝集剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 23/34 20220101AFI20220929BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09K23/34
B01D21/01 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043880
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021048853
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 恵
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直也
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA10
4D015CA10
4D015CA11
4D015DB02
4D015DB15
4D015DC03
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
(57)【要約】
【課題】乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立できる乳化剤組成物を提供する。
【解決手段】3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上エステル結合してなる化合物を含み、前記化合物のHLB値が5~12である逆相乳化重合用の乳化剤組成物。3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上エステル結合してなる化合物を含み、
前記化合物のHLB値が5~12である逆相乳化重合用の乳化剤組成物。
【請求項2】
前記3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物である請求項1に記載の逆相乳化重合用の乳化剤組成物。
【請求項3】
前記3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、3価以上のポリオールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる化合物である請求項1または2に記載の逆相乳化重合用の乳化剤組成物。
【請求項4】
前記3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物は、炭素数3~6のポリオールのアルキレンオキサイド付加物である請求項1~3のいずれか1項に記載の逆相乳化重合用の乳化剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化剤組成物を用いて、逆相乳化重合法により高分子凝集剤を製造する高分子凝集剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆相乳化重合用の乳化剤組成物及び高分子凝集剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子凝集剤の製造方法としては、逆相懸濁重合法(例えば特許文献1を参照)及び逆相乳化重合法等が知られている。これらの方法のうち逆相乳化重合法は、低粘性の固形分として高分子量の水親和性重合体を製造できるという利点を有する。
一般的な逆相乳化重合法では、重合性モノマー、水及び必要に応じ架橋剤等を含む水相に、乳化剤及び疎水性分散媒等を含む油相を加えることにより油中水型エマルションを形成する工程、当該油中水型エマルションに重合開始剤を使用して、重合性モノマーを重合しポリマーエマルションを形成する工程並びにポリマーエマルションに転相剤を添加する工程を、この順で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆相乳化重合法で用いられる乳化剤は、重合性モノマーを重合する前の工程では、油相中への重合性モノマーの乳化を可能とすることで重合後に得られるポリマーエマルションに安定性を与え、重合工程においては、沈降抵抗性、経時的粘度変化及び早期逆転を抑制することで、ポリマーエマルションに安定性を与える。
一般的な逆相乳化重合においては、油中水型エマルションを形成しやすい(逆相乳化性に優れる)という観点からHLB値が低い乳化剤(例えばHLB値が2~7の乳化剤、「低HLBの乳化剤」ともいう)が適しているが、低HLBの乳化剤を用いた場合、転相性が悪いため、転相剤の添加量を多くする必要が生じうる。転相剤(通常は、親水性の高い界面活性剤)の割合が増加すると、ポリマーエマルションの安定性が低下したり、粘度が許容範囲を超えて上昇することがある。
一方、従来のHLB値が高い乳化剤(例えばHLB値が8以上の乳化剤、「高HLBの乳化剤」ともいう)は低HLBの乳化剤よりも逆相乳化性が劣っているため、使用量を増やすか、あるいは低HLBの乳化剤を併用する必要が生じうる。高HLBの乳化剤の増量及び高HLBの乳化剤と低HLBの乳化剤との併用等により、乳化剤の総使用量が多くなると、高分子凝集剤の純度が低くなるため品質低下等を招来するおそれがあり、環境負荷がかかる懸念もある。
本発明の課題は、乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立できる乳化剤組成物および当該乳化剤組成物を用いた高分子凝集剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上エステル結合してなる化合物を含み、前記化合物のHLB値が5~12である逆相乳化重合用の乳化剤組成物及び、前記乳化剤組成物を用いて、逆相乳化重合法により高分子凝集剤を製造する高分子凝集剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立できる逆相乳化重合用の乳化剤組成物および当該乳化剤組成物を用いた高分子凝集剤の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[乳化剤組成物]
本発明の乳化剤組成物は、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上エステル結合してなる化合物を含む。前記化合物は乳化剤として機能する化合物である。
以下において、「3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物」を「化合物(A)」または「(A)成分」とよぶことがある。化合物(A)は一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0008】
3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物(A)における、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物(a1)としては、3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)、糖類のアルキレンオキサイド付加物(a1-2)等が挙げられる。
【0009】
3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)における、3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、炭素数3~36のアルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物などが挙げられる。3価以上の脂肪族多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリンおよびジペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの脂肪族多価アルコールとしては、3価~7価の多価アルコールが好ましく、4価~6価の多価アルコールがより好ましい。
【0010】
3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)における、アルキレンオキサイド(以下「AO」ともいう)としては、炭素数2~4のAO[エチレンオキサイド(EO)、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド(PO)及び1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド(BO)等]等が挙げられる。AOは1種のみであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。AOとしては、炭素数2~3のものが好ましくEOを含むものがより好ましく、EOおよびPOを含むものがさらに好ましい。
【0011】
3価以上の脂肪族多価アルコール1モルに対するAOの付加モル数としては、好ましくは5~45モル、より好ましくは10~40モルである。AO付加モル数が小さすぎるとHLB値が小さくなりすぎて転相性に悪影響を及ぼすことがあり、AO付加モル数が大きすぎるとHLB値が大きくなりすぎて逆相乳化性に悪影響を及ぼすことがあるが、上記の好適範囲内であると、このような影響を受けず、転相性と逆相乳化性とを両立できる。
【0012】
糖類のアルキレンオキサイド付加物(a1-2)における、糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、およびメチルグルコシド等が挙げられる。
糖類のアルキレンオキサイド付加物(a1-2)における、AOとしては上記(a1-1)で説明したものと同様のものがあげられる。AOとして好ましいものおよび付加モル数の好適範囲は上記(a1-1)と同様である。
【0013】
3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物(a1)としては、炭素数3~6のポリオールのアルキレンオキサイド付加物および3価以上のポリオールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる化合物が好ましい。また、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物(a1)としては、3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)が好ましく、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物がより好ましく、ソルビトールのAO付加物およびソルビタンのAO付加物がさらに好ましい。
【0014】
3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数12~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物(A)における脂肪族カルボン酸(a2)としては、例えば炭素数12~22(カルボニル基の炭素を含む)の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
炭素数12~22の脂肪族モノカルボン酸としては、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサン酸(アラキジン酸)、およびドコサン酸(ベヘン酸)等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
【0015】
脂肪族カルボン酸(a2)としては炭素数16~22(カルボニル基の炭素を含む)の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素数16~18の脂肪族モノカルボン酸がより好ましく、炭素数16~18の不飽和脂肪族モノカルボン酸がさらに好ましく、オレイン酸およびリノール酸が特に好ましい。
【0016】
化合物(A)は、逆相乳化性と転相性との両立の観点から、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、炭素数16~22の脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなるエステルであることが好ましい。
【0017】
化合物(A)において、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に結合している、3分子以上の脂肪族カルボン酸は同一のもの(1種類)であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に結合している、3分子以上の脂肪族カルボン酸は同一のもの(1種類)であることが好ましい。
【0018】
化合物(A)は3価以上のポリオールが有する3つ以上の水酸基に、それぞれ結合した(ポリ)アルキレンオキシ基に脂肪族カルボン酸がエステル結合した構造を含む。当該構造において、3価以上のポリオールは、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物を構成する3価以上のポリオールに対応し、(ポリ)アルキレンオキシ基は、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物を構成するアルキレンオキサイドに対応し、脂肪族カルボン酸は、化合物(A)を構成する炭素数12~22の脂肪族カルボン酸に対応する。(ポリ)アルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基が1つ)及び/又はポリアルキレンオキシ基(アルキレンオキシ基が2つ以上)を意味する。上記構造において、3価以上のポリオールが有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基の数は、逆相乳化性と転相性とを両立できるという観点から、1.5~15が好ましく、1.5~10がより好ましく、2.5~10がさらに好ましい。
【0019】
化合物(A)として好ましいものは、ソルビトールのEO10~40モル付加物のトリオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンソルビトールトリオレイン酸エステル)、ソルビトールのEO・PO(合計10~40モル)付加物のトリオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビトールトリオレイン酸エステル)、ソルビトールのEO10~40モル付加物のテトラオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレイン酸エステル)、ソルビトールのEO・PO(合計10~45モル)付加物のテトラオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビトールテトラオレイン酸エステル)、ソルビトールのEO10~40モル付加物のヘキサオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレイン酸エステル)及びソルビトールのEO・PO(合計10~40モル)付加物のヘキサオレイン酸エステル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンソルビトールヘキサオレイン酸エステル)などがあげられる。これらは1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。本明細書において、例えば「ソルビトールのEO10モル付加物のトリオレイン酸エステル」とは、ソルビトールのEO10モル付加物1分子に3分子のオレイン酸(脂肪族カルボン酸)が結合してなるエステルを意味する。
【0020】
本発明において、化合物(A)のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は5~12である。化合物(A)のHLB値が5~12であることにより、乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立できる。化合物(A)のHLB値が、5未満であると、転相性が不充分なものとなり、HLB値が12を超えると、逆相乳化性が不充分なものとなる。化合物(A)のHLB値は、好ましくは5.5~11.5である。
【0021】
本発明において、HLB値とは親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式(1)から求められる(「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「界面活性剤入門」、212-213頁、2007年三洋化成工業刊、等参照)。
HLB値=10×(無機性/有機性) (1)
式(1)中、括弧内は有機化合物の無機性と有機性との比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0022】
化合物(A)は、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物(3価以上のポリオールの3つ以上の水酸基にそれぞれ(ポリ)アルキレンオキシ基が結合してなる化合物)と、脂肪族カルボン酸とを用いてエステル化反応を行うことにより、製造することができる。
化合物(A)の製造方法において用いる3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物としては、上述の3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物(a1)で説明した化合物と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
化合物(A)の製造方法において用いる脂肪族カルボン酸としては上述の脂肪族カルボン酸(a2)で説明した化合物と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
【0023】
乳化剤組成物は、化合物(A)以外に、化合物(A)以外の乳化剤[化合物(B)という]を含みうる。
化合物(B)としては、例えば、高級アルコール(炭素数10~30)のアルキレンオキサイド付加物(B1)、3価以上のポリオールに脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B2)及び3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B3)等が挙げられる。以下において、「3価以上のポリオールに脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B2)」を化合物(B2)、「3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B3)」を「化合物(B3)」ともいう。
【0024】
高級アルコールのAO付加物(B1)における、高級アルコールとしては、デシルアルコール、ドデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコノール(ステアリルアルコール)、シス-9-オクタデセン-1-オール(オレイルアルコール)、イコシルアルコール及びドコサノール(ベヘニルアルコール)などがあげられる。
高級アルコールのAO付加物(B1)における、AOとしては上記(a1-1)で説明したものと同様のものがあげられ、AOの付加モル数は、高級アルコール1モルに対し、1~20であることが好ましい。
高級アルコールのAO付加物(B1)としては、オレイルアルコールのAO付加物が好ましい。
【0025】
3価以上のポリオールに脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B2)における、3価以上のポリオールとしては、3価以上の脂肪族多価アルコール及び糖類等があげられる。3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、上記3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)における3価以上の脂肪族多価アルコールと同様のものがあげられる。糖類としては、上記糖類のアルキレンオキサイド付加物(a1-2)における糖類と同様のものがあげられる。
【0026】
化合物(B2)における脂肪族カルボン酸としては、上記化合物(A)における脂肪族カルボン酸(a2)と同様のものがあげられる。
【0027】
化合物(B2)としては、ソルビタンのモノオレイン酸エステルやグリセロールモノオレート(グリセリンのモノオレイン酸エステル)が好ましい。
【0028】
3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に脂肪族カルボン酸が1分子または2分子結合してなる化合物(B3)における、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物としては、3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(b3-1)、糖類のアルキレンオキサイド付加物(b3-2)等があげられる。
【0029】
3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(b3-1)における3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、上記3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(a1-1)における3価以上の脂肪族多価アルコールと同様のものがあげられる。
3価以上の脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(b3-1)における、AOとしては上記(a1-1)で説明したものと同様のものがあげられ、AOの付加モル数は、脂肪族多価アルコール1モルに対し、好ましくは5~40モルである。
【0030】
糖類のアルキレンオキサイド付加物(b3-2)における糖類としては、上記糖類のアルキレンオキサイド付加物(a1-2)における糖類と同様のものがあげられる。糖類のアルキレンオキサイド付加物(b3-2)における、AOとしては上記(a1-1)で説明したものと同様のものがあげられる。
【0031】
化合物(B3)における脂肪族カルボン酸としては、上記化合物(A)における脂肪族カルボン酸(a2)と同様のものがあげられる。
【0032】
化合物(B3)としては、ソルビタンのEO付加物のモノオレイン酸エステル(EO付加モル数は1~30モル)が好ましい。
【0033】
化合物(B)としては、化合物(B2)および化合物(B3)が好ましく、グリセリンのモノオレイン酸エステル、ソルビタンのモノオレイン酸エステル及びソルビタンのEO付加物のモノオレイン酸エステル(EO付加モル数1~30モル)がより好ましい。これらは1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0034】
乳化剤組成物中の化合物(A)の含有割合は、当該組成物を用いて逆相乳化重合法により高分子凝集剤を製造する際の逆相乳化性と転相性とを両立することができるという観点から、乳化剤組成物の重量に基づき、10重量%~100重量%であることが好ましく、20重量%~100重量%であることがより好ましい。
【0035】
乳化剤組成物中の化合物(B)の含有割合は、乳化剤組成物の重量に基づき、0重量%~90重量%であることが好ましく、0重量%~80重量%であることがより好ましい。
【0036】
本発明の乳化剤組成物のHLB値は、特に限定されない。乳化剤組成物のHLB値は、高分子凝集剤を製造する際の逆相乳化性と転相性とを両立することができるという観点から、好ましくは6~12、より好ましくは7~12である。
【0037】
乳化剤組成物のHLB値は、使用する乳化剤(化合物(A)および化合物(B)など)の種類および配合量を調整することにより調整することができる。二種類以上の乳化剤を用いて乳化剤組成物を調製する場合、乳化剤組成物のHLB値は加重平均により算出することができる。例えば、乳化剤として、HLB値がh1の化合物(A)をM1重量部とHLB値がh2の化合物(B)をM2重量部含む乳化剤組成物のHLB値は下記式により算出できる。
乳化剤組成物のHLB値=(h1×M1+h2×M2)/(M1+M2)
【0038】
本発明の乳化剤組成物は、油中水型エマルションを形成しやすく(逆相乳化性に優れる)、かつ、転相性が良好であるので、乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立することができるという効果を有する。したがって、逆相乳化重合により高分子凝集剤を製造する際に、油中水型エマルションを形成する工程における乳化剤として有用である。
【0039】
[高分子凝集剤の製造方法]
本発明の高分子凝集剤の製造方法は、本発明の乳化剤組成物を用いて逆相乳化重合法により高分子凝集剤を製造する方法である。
【0040】
本発明の高分子凝集剤の製造方法としては、例えば、重合性モノマー及び水等を含む水相に、本発明の乳化剤組成物及び疎水性分散媒等を含む油相を加えることにより油中水型エマルションを形成する工程(工程1)、当該油中水型エマルションに重合開始剤を使用して、重合性モノマーを重合しポリマーエマルションを形成する工程(工程2)並びにポリマーエマルションに転相剤を添加する工程(工程3)を含む方法が挙げられる。以下、当該製造方法について説明する。
【0041】
[工程1]
工程1は、重合性モノマー及び水等を含む水相に、乳化剤組成物及び疎水性分散媒等を含む油相を加えることにより油中水型エマルションを形成する工程である。
【0042】
(水相)
水相に含まれる重合性モノマーとしては、例えば水溶性カチオンモノマー(w1)、水溶性アニオンモノマー(w2)および水溶性ノニオンモノマー(w3)等があげられる。これらのモノマーは一種のみを用いてもよいし二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、水溶性とは、水に対する溶解度が1g以上/水100g(20℃)であることを意味する。
【0043】
水溶性カチオンモノマー(w1)としては、窒素原子含有(メタ)アクリレートの塩(w11)及び窒素原子含有(メタ)アクリルアミドの塩(w12)等があげられる。本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
【0044】
窒素原子含有(メタ)アクリレートの塩(w11)における、窒素原子含有(メタ)アクリレートとしては、例えば炭素数5~8の窒素原子含有(メタ)アクリレートなどがあげられる。炭素数5~8の窒素原子含有(メタ)アクリレートの具体例としては、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピルメタアクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノエチルアクリレートなどがあげられる。
窒素原子含有(メタ)アクリレートの塩(w11)における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸及び硝酸等)の塩、有機酸(メタンスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸および塩化メチルなど)の塩等があげられる。
【0045】
窒素原子含有(メタ)アクリルアミドの塩(w12)における、窒素原子含有メタ(メタ)アクリルアミドとしては、例えば炭素数5~8の窒素原子含有メタ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。炭素数5~8の窒素原子含有メタ(メタ)アクリルアミドの具体例としては、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびアミノブチル(メタ)アクリルアミド等があげられる。
窒素原子含有(メタ)アクリルアミドの塩(w12)における塩としては、上記窒素原子含有(メタ)アクリレートの塩(w11)における塩と同様のものが挙げられる。
【0046】
水溶性カチオンモノマー(w1)のうち、凝集性能および共重合性の観点から、好ましいのは窒素原子含有(メタ)アクリレートの塩(w11)であり、より好ましいのはアミノエチル(メタ)アクリレートの塩及びアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩、とくに好ましいのはアミノエチル(メタ)アクリレートの塩である。さらに、これらの塩のうち好ましいのは塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩である。
【0047】
水溶性アニオンモノマー(w2)としてはアクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、これらの塩(アルカリ金属塩)およびこれらの混合物などが挙げられる。
これらのうち、高分子凝集剤の凝集性能および重合性の観点から、好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩、さらに好ましくはアクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩である。
【0048】
水溶性ノニオンモノマー(w3)としては(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(C1~3)(メタ)アクリルアミド[N-メチルおよびイソプロピル(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。これらのうち高分子凝集剤の凝集性能および重合性の観点から好ましいのはアクリルアミドおよびN-メチルアクリルアミド、さらに好ましくはアクリルアミドである。
【0049】
重合性モノマーには、上記水溶性カチオンモノマー(w1)、水溶性アニオンモノマー(w2)及び水溶性ノニオンモノマー(w3)以外の、他の水溶性不飽和モノマー(w4)を含有させることができる。他の水溶性不飽和モノマー(w4)としては例えば、特開2018-130652号公報に記載の水溶性不飽和モノマー等(上記(w1)~(w3)を除く)が挙げられる。
また、重合性モノマーには、上記水溶性不飽和モノマー(w1)~(w4)以外に、水不溶性不飽和モノマーを含有させてもよい。このような水不溶性不飽和モノマーとしては、特開2018-130652号公報に記載の水不溶性不飽和モノマーが挙げられる。
【0050】
重合性モノマーは例えば以下の架橋性モノマーを含んでいてもよい。架橋性モノマーとは、重合性不飽和基および/または反応性エポキシ基の合計が2個またはそれ以上(好ましくは2~8個)のモノマーを意味する。このような架橋性モノマーとしては例えば、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド[メチレンビス(メタ)アクリルアミド]及び特開2014-64988号公報に記載の架橋性モノマーなどがあげられる。架橋性モノマーとしてはメチレンビスアクリルアミドが好ましい。
【0051】
モノマー溶液(水相)中の重合性モノマー濃度(重量%)は、好ましくは30重量%~90重量%、より好ましくは40重量%~85重量%である。当該重合性モノマー濃度は、重合性モノマーの組成(種類)及び後述の重合開始剤の種類により適宜調整しうる。
【0052】
(油相)
油相には本発明の乳化剤組成物とともに疎水性分散媒が含まれる。疎水性分散媒とは、水に対する溶解度(20℃)が1g未満/水100gである分散媒を意味する。
【0053】
疎水性分散媒としては、炭化水素{炭素数5~12の直鎖脂肪族炭化水素[例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン及びn-デカンなど]、分岐を有する脂肪族炭化水素[例えばイソパラフィン(例えばENEOS(株)製の「アイソゾール400」等)、炭素数5~12の脂環含有炭化水素[例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン及びデカリン等]、ならびに炭素数6~12の芳香環含有炭化水素[例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等]}等、ケトン{炭素数3~10の脂肪族ケトン[例えばメチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等]、炭素数5~10の脂環含有ケトン[例えばシクロペンタノン及びシクロヘキサノン等]ならびに炭素数8~13の芳香環含有ケトン[例えばアセトフェノン及びベンゾフェノン等]等}、エーテル{炭素数4~8の脂肪族エーテル[例えばジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテル等]、炭素数4~18の環状エーテル[例えばテトラヒドロピラン等]ならびに炭素数7~12の芳香環含有エーテル[例えばアニソール等]等}、エステル{炭素数3~10の脂肪族エステル[例えば酢酸n-ブチル及び酢酸イソブチル等]、炭素数7~12の脂環含有エステル[例えば酢酸シクロヘキシル及びシクロヘキサンカルボン酸メチル等]ならびに炭素数8~13の芳香環含有エステル[例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n-ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート及びジ-n-ブチルフタレート等]等}が挙げられる。
これらのうち、製造時の取り扱い性の観点から、好ましいのは脂肪族炭化水素、脂環含有炭化水素、脂肪族エステル及び脂環含有エステルであり、より好ましいのはn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、イソパラフィンおよび酢酸シクロヘキシルである。
【0054】
(油中水型エマルション)
重合性モノマー及び水等を含む水相に、疎水性分散媒体および本発明の乳化剤組成物を含む油相を加え、必要に応じ混合することにより、油中水型エマルションを形成する。水相へ油相を加える方法は、一括投入または滴下であってもよい。水相と油相とを混合する方法および条件は、水相に含まれる成分および油相に含まれる成分などを考慮して設定しうる。
【0055】
疎水性分散媒の使用量は、エマルション(重合前及び重合後のエマルションの双方)の安定性の観点からモノマー溶液(水相)の全重量100重量部に対して、好ましくは20重量部以上、より好ましくは25重量部以上であり、生産性の観点から好ましくは1000重量部以下、より好ましくは400重量部以下、さらに好ましくは100重量部以下である。
【0056】
化合物(A)の使用量の下限値は、逆相乳化性と転相性との両立の観点から、疎水性分散媒100重量部に対して、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上である。化合物(A)の使用量の上限値は、高分子凝集剤中の乳化剤成分が増量することに起因する品質低下等を抑制するという観点から、疎水性分散媒100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。化合物(A)を含む乳化剤組成物を用いた場合、従来の高HLB(HLB値が8以上)の乳化剤を使用した場合よりも少量で、逆相乳化性と転相性との両立という特徴を発現することができるので、高分子凝集剤における乳化剤成分の割合が増えることに起因する品質低下等を抑制できる。
【0057】
(工程2)
工程2は、油中水型エマルションに重合開始剤を使用して、重合性モノマーを重合しポリマーエマルションを形成する工程である。工程2を行うことにより重合性モノマーが重合してなる重合体を含むポリマーエマルションが得られる。ポリマーエマルションに含まれる重合体は高分子凝集剤としての機能を奏する重合体である。
【0058】
重合開始剤としては、例えば、油溶性のアゾ化合物[アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]、および油溶性の過酸化物[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]などのラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0059】
重合開始剤の使用量は、重合性モノマー100重量部に対し、好ましくは0.001~2重量部、より好ましくは0.005~1重量%である。
【0060】
重合温度および重合時間は、重合性モノマーの組成、および重合開始剤の種類等によって適宜調整することができる。例えば重合温度は20~90℃(好ましくは20℃~80℃)、重合時間は1~12時間(好ましくは1~10時間)とすることができる。
【0061】
(工程3)
工程3は、ポリマーエマルションに転相剤を添加する工程である。
【0062】
転相剤としては、親水性の高い界面活性剤[例えば、HLB値が9~20のもの]、特許第2676483号公報及び特開平9-208802号公報に記載のカチオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤などがあげられ、具体例としてはポリオキシアルキレンラウリルエーテル(例えば、三洋化成工業(株)製「エマルミンHL-100」)などがあげられる。これらは一種のみ、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
転相剤の使用量は、ポリマーエマルションの安定性および良好な転相性の観点から、ポリマーエマルション100重量部に対し、好ましくは0.001~5重量部、より好ましくは0.005~1重量部である。
【0064】
本発明の製造方法により得られる高分子凝集剤の形態は、油中水型エマルションであることが好ましい。高分子凝集剤における水相の割合は、高分子凝集剤の重量に基づき、好ましくは7~83重量%、さらに好ましくは44~79重量%である。
また高分子凝集剤における疎水性分散媒の割合は、高分子凝集剤の重量に基づき、好ましくは15~88重量%、より好ましくは18~49重量%である。
【0065】
工程3を行った後に得られるものを、そのまま高分子凝集剤としてもよいし、水や他の成分(上記の水相及び油相に含まれる成分以外の成分)などを添加したものを高分子凝集剤としてもよい。
【0066】
本発明の製造方法により製造した高分子凝集剤は、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物を含む。当該化合物は本発明の乳化剤組成物に含まれる化合物(A)由来の化合物である。
【0067】
高分子凝集剤中の3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物の含有割合は、高分子凝集剤としての品質の維持及び環境負荷の抑制の観点から、高分子凝集剤の重量に基づき、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~7重量%である。
【0068】
本発明の製造方法により製造した高分子凝集剤は、3価以上のポリオールのAO付加物1分子に脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物とともに、高分子凝集剤としての機能を奏する重合体を含む。
【0069】
高分子凝集剤が含みうる他の成分としては、例えば、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤などがあげられる。これらの添加剤を含有させる方法としては特に限定はなく、高分子凝集剤とこれらの添加剤を、常温または加熱下、撹拌混合する方法等が挙げられる。上記添加剤の使用量は、高分子凝集剤の使用用途や他の成分を考慮し、適宜設定することができる。
【0070】
本発明の製造方法により製造した高分子凝集剤は、例えば、下水等の汚泥、建設発生土、工場廃水の処理で生じた有機性汚泥、無機性汚泥の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができる。高分子凝集剤の使用方法は、汚泥や排水などと、本発明の高分子凝集剤とを混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法などにより用いることができる。
【0071】
本発明の製造方法により製造した高分子凝集剤の、上記用途以外の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられる。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に示さない限り、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0073】
[製造例1:ソルビトールのEO30モル付加物のテトラオレイン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール56部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド408部を2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO30モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO30モル付加物587部、オレイン酸441部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO30モル付加物のテトラオレイン酸エステル[化合物(A-1)]を得た。化合物(A-1)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は5.0である。化合物(A-1)はソルビトールのEO30モル付加物1分子にオレイン酸が4分子結合してなる化合物である。
【0074】
[製造例2:ソルビトールのEO42モルPO2モル付加物のテトラオレイン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール39部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド400部とプロピレンオキサイド25部をあらかじめ混合したものを2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO42モルPO2モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO42モルPO2モル付加物670部、オレイン酸353部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO42モルPO2モル付加物のテトラオレイン酸エステル[化合物(A-2)]を得た。化合物(A-2)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基)の数は7.3である。化合物(A-2)はソルビトールのEO42モルPO2モル付加物1分子にオレイン酸が4分子結合してなる化合物である。
【0075】
[製造例3:ソルビトールのEO15モル付加物のテトラオレイン酸エステルの製造]
(1)撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール100部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド364部を2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO15付加物を得た。
(2)撹拌翼を備えた反応槽に、(1)で製造したソルビトールのEO15モル付加物443部、オレイン酸595部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO15モルモル付加物のテトラオレイン酸エステル[化合物(A-3)]を得た。化合物(A-3)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は2.5である。化合物(A-3)はソルビトールのEO15モル付加物1分子にオレイン酸が4分子結合してなる化合物である。
【0076】
[製造例4:ソルビトールのEO15モル付加物のヘキサオレイン酸エステルの製造]
撹拌翼を備えた反応槽に、製造例3(1)で製造したソルビトールのEO15モル付加物347部、オレイン酸698部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を130℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO15モル付加物のヘキサオレイン酸エステル[化合物(A-4)]を得た。化合物(A-4)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は2.5である。化合物(A-4)はソルビトールのEO15モル付加物1分子にオレイン酸が6分子結合してなる化合物である。
【0077】
[製造例5:ソルビトールのEO19モルPO1モル付加物のトリリノール酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール78部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド361部とプロピレンオキサイド25部をあらかじめ混合したものを2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO19モルPO1モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO19モルPO1モル付加物578部、リノール酸451部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO19モルPO1モル付加物のトリリノール酸エステル[化合物(A-5)]を得た。化合物(A-5)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基)の数は3.3である。化合物(A-5)はソルビトールのEO19モルPO1モル付加物1分子にリノール酸が3分子結合してなる化合物である。
【0078】
[製造例6:ジグリセリンのEO13付加物のテトラリノール酸エステルの製造]
撹拌翼を備えた反応槽に、ジグリセリンのEO13モル付加物[坂本薬品工業(株)製、SC-E750]413部、リノール酸627部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を130℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ジグリセリンのEO13付加物のテトラリノール酸エステル[化合物(A-6)]を得た。化合物(A-6)における、ポリオール(ジグリセリン:4価)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は3.3である。化合物(A-6)はジグリセリンのEO13モル付加物1分子にリノール酸が4分子結合してなる化合物である。
【0079】
[製造例7:グリセリンのEO5モル付加物のトリラウリン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にグリセリン137部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド327部を2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、グリセリンのEO5モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、グリセリンのEO5モル付加物363部、ラウリン酸700部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、グリセリンのEO5モル付加物のトリラウリン酸エステル[化合物(A-7)]を得た。化合物(A-7)における、ポリオール(グリセリン)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は1.7である。化合物(A-7)はグリセリンのEO5モル付加物1分子にラウリン酸が3分子結合してなる化合物である。
【0080】
[製造例8:グリセリンのEO42モルPO3モル付加物のトリベヘン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にグリセリン20部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド406部とプロピレンオキサイド38部をあらかじめ混合したものを2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、グリセリンのEO42モルPO3モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、グリセリンのEO42モルPO3モル付加物686部、ベヘン酸332部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、グリセリンのEO42モルPO3モル付加物のトリベヘン酸エステル[化合物(A-8)]を得た。化合物(A-8)における、ポリオール(グリセリン)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基)の数は15.0である。化合物(A-8)はグリセリンのEO42モルPO3モル付加物1分子にベヘン酸が3分子結合してなる化合物である。
【0081】
[製造例9:ソルビトールのEO19モルBO1モル付加物のトリステアリン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール77部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド356部とブチレンオキサイド31部をあらかじめ混合したものを2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO19モルBO1モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO19モルBO1モル付加物577部、ステアリン酸452部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO19モルBO1モル付加物のトリステアリン酸エステル[化合物(A-9)]を得た。化合物(A-9)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基とブチレンオキシ基)の数は3.3である。化合物(A-9)はソルビトールのEO19モルBO1モル付加物1分子にステアリン酸が3分子結合してなる化合物である。
【0082】
[製造例10:ソルビトールのEO17モル付加物のジオレイン酸エステルの製造]
撹拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ボンベ、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中にソルビトール91部、水酸化カリウム0.5部を加え撹拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド373部を2時間かけて逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで1時間撹拌した。その後、キョーワード600(協和化学製)20部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、ソルビトールのEO17モル付加物を得た。
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO17モル付加物637部、オレイン酸387部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO17モル付加物のジオレイン酸エステル[化合物(A’-1)]を得た。化合物(A’-1)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は2.8である。化合物(A’-1)はソルビトールのEO17モル付加物1分子にオレイン酸が2分子結合してなる化合物である。
【0083】
[製造例11:ソルビトールのEO30モル付加物のトリラウリン酸エステルの製造]
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO30モル付加物733部、ラウリン酸293部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO30モル付加物のトリラウリン酸エステル[化合物(A’-2)]を得た。化合物(A’-2)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は5.0である。化合物(A’-2)はソルビトールのEO30モル付加物1分子にラウリン酸が3分子結合してなる化合物である。
【0084】
[製造例12:ソルビトールのEO15モル付加物のペンタカプリン酸エステルの製造]
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO15モル付加物522部、デカン酸534部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO15モル付加物のペンタカプリン酸エステル[化合物(A’-3)]を得た。化合物(A’-3)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は2.5である。化合物(A’-3)はソルビトールのEO15モル付加物1分子にカプリン酸(デカン酸)が5分子結合してなる化合物である。
【0085】
[製造例13:ソルビトールのEO15モル付加物のトリリグノセリン酸エステルの製造]
撹拌翼を備えた反応槽に、ソルビトールのEO15モル付加物445部、リグノセリン酸584部、パラトルエンスルホン酸4部、ジ亜リン酸2部を、室温で仕込み、撹拌翼を200rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を120℃まで昇温した。系内を減圧にし水を留去しながらエステル化を行い、ソルビトールのEO15モル付加物のトリリグノセリン酸エステル[化合物(A’-4)]を得た。化合物(A’-4)における、ポリオール(ソルビトール)が有する水酸基1つあたりのアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の数は2.5である。化合物(A’-4)はソルビトールのEO15モル付加物1分子にリグノセリン酸が3分子結合してなる化合物である。
【0086】
表1に記載の乳化剤は以下の通りである。
化合物(A-1):製造例1で製造したソルビトールのEO30モル付加物のテトラオレイン酸エステル
化合物(A-2):製造例2で製造したソルビトールのEO42モルPO2モル付加物のテトラオレイン酸エステル
化合物(A-3):製造例3で製造したソルビトールのEO15モル付加物のテトラオレイン酸エステル
化合物(A-4):製造例4で製造したソルビトールのEO15モル付加物のヘキサオレイン酸エステル
化合物(A-5):製造例5で製造したソルビトールのEO19モルPO1モル付加物のトリリノール酸エステル
化合物(A-6):製造例6で製造したジグリセリンのEO13付加物のテトラリノール酸エステル
化合物(A-7):製造例7で製造したグリセリンのEO5モル付加物のトリラウリン酸エステル
化合物(A-8):製造例8で製造したグリセリンのEO42モルPO3モル付加物のトリベヘン酸エステル
化合物(A-9):製造例9で製造したソルビトールのEO19モルBO1モル付加物のトリステアリン酸エステル
化合物(A’-1):製造例10で製造したソルビトールのEO17モル付加物のジオレイン酸エステル
化合物(A’-2):製造例11で製造したソルビトールのEO30モル付加物のトリラウリン酸エステル
化合物(A’-3):製造例12で製造したソルビトールのEO15モル付加物のペンタカプリン酸エステル
化合物(A’-4):製造例13で製造したソルビトールのEO15モル付加物のトリリグノセリン酸エステル
化合物(B-1):グリセロールモノオレイン酸エステル[花王(株)製、花王レオドールMO-60]
化合物(B-2):ソルビタンEO20モル付加物のモノオレイン酸エステル[三洋化成工業(株)製、イオネットT-80V]
化合物(B-3):ソルビタンのモノオレイン酸エステル[三洋化成工業(株)製、イオネットS-80]
化合物(B-4):ソルビタンのモノヤシ油脂肪酸エステル[三洋化成工業(株)製、イオネットS-20]
【0087】
表1には、乳化剤(化合物)の種類とともに、化合物(A-1)~(A-9)および化合物(A’-1)~(A’-4)については、その構造(ポリオールの種類、AOの種類及び付加モル数、カルボン酸の種類と結合分子数)、HLB値および添加量(部)を示した。化合物(A’-1)~(A’-4)は、本発明における化合物(A)ではないが、化合物(A)に代えて用いているため、化合物(A)の欄に記載した。
表1において、化合物(B-1)~(B-4)についてはHLB値及び添加量(部)を示し、乳化剤組成物についてはHLB値および乳化剤添加量の合計量(部)を示した。
【0088】
[実施例1]
容器に、50%のアクリルアミド水溶液197.1部、79%のジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩511部、イオン交換水23.3部及びメチレンビスアクリルアミド0.006部を、室温(20~25℃)で仕込み、モノマー溶液(水相)を調製した。別の容器に、疎水性分散媒としてイソパラフィン253部、製造例1で得られた化合物(A-1)15部を仕込み、油相を調製した。前記水相に油相を全量加え、ホモミキサーで8000rpmの回転数で2分間攪拌し、モノマーエマルション(油中水型エマルション)を得た。得られたモノマーエマルションの乳化性を後述の方法により評価した。
撹拌翼を備えた反応槽にモノマーエマルション全量を仕込み、撹拌翼を250rpmの回転数にて撹拌しながら、窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気し、同時に反応系を50℃まで昇温した。十分に窒素置換(溶存酸素濃度20ppb以下)したのち、ラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、和光純薬(株)製「V-50」)0.4部を加えた。その後1時間、50℃で撹拌を継続し逆相乳化重合させた。70℃まで昇温して1時間保持した後、室温まで冷却することにより、重合性モノマーが重合してなる重合体を含むポリマーエマルションを得た。得られたポリマーエマルションの一部を異物量の測定試験に供した。
ポリマーエマルション100部を600rpmの回転数にて攪拌しながら転相剤(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、三洋化成工業(株)製「エマルミンHL-100」)0.5部を加え、高分子凝集剤を得た。得られた高分子凝集剤について転相性を評価した。
各評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例2で得られた化合物(A-2)20部および化合物(B-1)10部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例
1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例3で得られた化合物(A-3)13部及び化合物(B-2)17部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例4で得られた化合物(A-4)15部及び化合物(B-2)15部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例5で得られた化合物(A-5)18部及び(B-3)12部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0093】
[実施例6]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(A-1)10部及び製造例6で得られた化合物(A-6)10部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例7]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例7で得られた化合物(A-7)45部及び(B-2)5部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例8]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例8で得られた化合物(A-8)4部及び(B-4)36部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0096】
[実施例9]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、製造例9で得られた化合物(A-9)8部及び(B-4)32部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(A’-1)30部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行ったところ、乳化せずモノマーエマルションが得られなかった。したがって、ポリマーエマルションの異物量および高分子凝集剤の転相性の評価を行うことができなかった。表1の異物発生量の評価結果及び転相性の評価結果の欄には、それぞれ「-」と記載した。
【0098】
[比較例2]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(A’-2)30部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行ったところ、乳化せずモノマーエマルションが得られなかった。したがって、ポリマーエマルションの異物量および高分子凝集剤の転相性の評価を行うことができなかった。表1の異物発生量の評価結果及び転相性の評価結果の欄には、それぞれ「-」と記載した。
【0099】
[比較例3]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(B-3)30部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0100】
[比較例4]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(B-3)18部及び化合物(B-2)12部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0101】
[比較例5]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(A’-3)30部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行ったところ、重合中に異物が多量に発生しポリマーエマルションが得られなかった。したがって、ポリマーエマルションの異物量および高分子凝集剤の転相性の評価を行うことができなかった。表1の異物発生量の評価結果及び転相性の評価結果の欄には、それぞれ「-」と記載した。
【0102】
[比較例6]
実施例1において、化合物(A-1)15部に代えて、化合物(A’-4)30部を用いたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、モノマーエマルション、ポリマーエマルション及び高分子凝集剤を製造し、実施例1と同様の方法により評価した。各評価結果を表1に示す。
【0103】
[モノマーエマルションの乳化性の評価]
各例のモノマーエマルションを室温(25℃)の環境下で10分静置し、目視観察した。モノマーエマルションの乳化性を、下記の基準により、評価した。
(評価基準)
A:相分離が認められない
B:相分離が認められる
【0104】
[ポリマーエマルション中の異物量の測定]
重合時にエマルションの安定性が悪いとエマルション粒子の凝集物(異物)が発生することがある。以下の方法により異物の発生量を測定した。
精秤した20gのポリマーエマルションを#100メッシュのステンレス製の金網で濾過し、金網に付着したエマルションを10質量%のソルビタンセスキオレートを溶解した炭化水素油で洗い流した。油分をペーパータオルで良く拭き取り、金網上の残渣の質量を測定した。質量の測定値を用いて、下記式(2)により異物量(質量%)を算出した。異物量(質量%)は少ないほうが重合安定性が良く、多いほうが重合安定性が悪い。
(残渣の質量/濾過に供したエマルション量)×100=異物量(質量%) (2)
【0105】
[転相性の評価]
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD-6HS-A、以下同じ。]に板状の塩ビ製の撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)1枚を撹拌棒に取り付け、21℃のイオン交換水500gを500mLのビーカーに取り、ジャーテスターにセットした。ジャーテスターを、回転数300rpmで撹拌しながら、安定した渦が生成することを確認し、下記式(3)により算出した重量(W)の高分子凝集剤を一気に添加し、渦が消失して水面が水平になるまでの時間(秒)を測定し、下記基準により評価を行った。当該時間は、短いほうが転相性に優れる。
重量W=(500g×0.5%)/重合体の濃度 (3)
式(3)における、重合体の濃度は、ポリマーエマルション中の重合体の濃度(重量%)であって、ポリマーエマルションの全重量に基づく、重合性モノマーが重合してなる重合体(実施例1の場合はアクリルアミドとジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩との重合体)の重量割合を意味する。
【0106】
【0107】
表1に示すように、3価以上のポリオールのアルキレンオキサイド付加物1分子に、脂肪族カルボン酸が3分子以上結合してなる化合物であって、HLB値が5~12である化合物を含む乳化剤組成物を用いた実施例によれば、逆相乳化性と転相性とを両立でき、異物発生量も少ない。したがって、本発明によれば、乳化剤の使用量を増やさなくても逆相乳化性と転相性とを両立できる乳化剤組成物を提供できる。