(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015177
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】加熱体接触測定器具
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20220114BHJP
G01B 5/28 20060101ALI20220114BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20220114BHJP
F24C 3/02 20060101ALI20220114BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01B5/00 B
G01B5/28 101
H05B3/00 310D
F24C3/02 H
F24C3/12 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117859
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸平
【テーマコード(参考)】
2F062
3K058
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA08
2F062AA55
2F062BC80
2F062EE01
2F062EE04
2F062EE12
2F062EE62
2F062FF03
2F062GG18
2F062GG38
2F062GG64
2F062GG71
2F062HH05
2F062HH32
3K058AA42
3K058BA07
3K058CA12
3K058CA22
(57)【要約】
【課題】非接触式の測定器と比べ安価で、被測定物表面の粗さや空気揺らぎの影響を受けない接触式にて、高精度な測定点の相対変化を取得できる測定器具を提供することである。
【解決手段】加熱された被測定物へ接触子を接触させ、被測定物の表面における任意の基準点からの相対的な高さ方向の変位量を測定する測定器具であって、少なくとも、接触子と、接触子を被測定物表面と同じ温度に制御する温調機構とを備える加熱部と、加熱部から伝わる熱を遮断し放熱する断熱材及び冷却機構を有する放熱部と、前記被測定物に前記接触子が接触することによる高さ方向の変位量を測定する測定部と、を備える加熱体接触測定器具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された被測定物へ接触子を接触させ、被測定物の表面における任意の基準点からの相対的な高さ方向の変位量を測定する測定器具であって、少なくとも、
接触子と、接触子を被測定物表面と同じ温度に制御する温調機構とを備える加熱部と、
加熱部から伝わる熱を遮断し放熱する断熱材及び冷却機構を有する放熱部と、
前記被測定物に前記接触子が接触することによる高さ方向の変位量を測定する測定部と、を備えることを特徴とする加熱体接触測定器具。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱体接触測定器具であって、
前記加熱部は、接触子の周囲を覆って熱を遮断し反射するリフレクタと断熱材を備え、
かつ断熱材を介して放熱部へ接続されていることを特徴とする加熱体接触測定器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱体接触測定器具であって、
前記放熱部は、前記加熱部から伝達される熱を放熱する放熱板による冷却機構と、リフレクタとを備えることを特徴とする加熱体接触測定器具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の加熱体接触測定器具であって、
前記測定部は、前記接触子から伝わる高さ方向の変位量を変位検出機構に伝達する変位伝達機構と、
前記加熱部と放熱部の重量を支持する重量支持部と、
前記変位伝達機構により伝達された高さ方向の変位量を測定する機構を有する変位検出機構と、
を備えることを特徴とする加熱体接触測定器具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の加熱体接触測定器具であって、
前記加熱部は、接触子の温度を測定する温度センサと、加熱用のヒーターと、加熱された接触子の温度を温度センサによってフィードバックし、設定した温度で安定制御するための温度調節機構と、を備えることを特徴とする加熱体接触測定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱中のホットプレート表面の平面度を測定する器具における、高温となる被測定物に対して接触式の測定器を使用した際の、熱による測定器故障や、構成部品の熱膨張による測定値への影響を軽減する、加熱体接触測定器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱された被測定物の形状を接触式の測定器を用いて測定する場合がある(特許文献1)。しかしこの場合には、接触部分から熱が伝達され、温度変化による測定誤差を生じたり、測定器本体の動作保証温度を超えた状態となるおそれがあった。
そのため、加熱物の表面を測定する場合には、レーザー式検出センサを用いるなどの非接触式の測定器を使用することが一般的である。(特許文献2)
【0003】
しかし、高精度な測定が可能な非接触型の測定器は高額であるため高コストになり、さらに被測定物からの放射熱による測定器本体の温度上昇対策が必要となる。また、レーザー等の光を用いる方式においては、被測定物表面の粗さの影響に加えて表面近傍の空気揺らぎの影響が無視できず、それに対する対策が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-159480号公報
【特許文献2】特開2017-172998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、非接触式の測定器と比べ安価で、被測定物表面の粗さや空気揺らぎの影響を受けない接触式にて、高精度な測定点の相対変化を取得できる測定器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る加熱体接触測定器具は、以下のような手段を有する。
【0007】
本発明に係る加熱体接触測定器具は、
加熱された被測定物へ接触子を接触させ、被測定物の表面における任意の基準点からの相対的な高さ方向の変位量を測定する測定器具であって、少なくとも、
接触子と、接触子を被測定物表面と同じ温度に制御する温調機構とを備える加熱部と、
加熱部から伝わる熱を遮断し放熱する断熱材及び冷却機構を有する放熱部と、
前記被測定物に前記接触子が接触することによる高さ方向の変位量を測定する測定部と、を備える事を特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る加熱体接触測定器具において、
前記加熱部は、接触子の周囲を覆って熱を遮断し反射するリフレクタと断熱材を備え、かつ断熱材を介して放熱部へ接続されているものであってもよい。
【0009】
また、本発明に係る加熱体接触測定器具において、
前記放熱部は、前記加熱部から伝達される熱を放熱する放熱板による冷却機構と、リフレクタとを備えるものであってもよい。
【0010】
また、本発明に係る加熱体接触測定器具において、
前記測定部は、前記接触子から伝わる高さ方向の変位量を変位検出機構に伝達する変位伝達機構と、前記加熱部と放熱部の重量を支持する重量支持部と、
前記変位伝達機構により伝達された高さ方向の変位量を測定する機構を有する変位検出機構と、を備えるものであってもよい。
【0011】
また、本発明に係る加熱体接触測定器具において、
前記加熱部は、接触子の温度を測定する温度センサと、加熱用のヒーターと、加熱された接触子の温度を温度センサによってフィードバックし、設定した温度で安定制御するための温度調節機構と、を備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加熱体接触測定器具は、接触式のため安価であり、加熱された被測定物に対して、形状を測定するために使用する測定器へ熱の影響を与えることなく、任意の測定点を基準とした、被測定物表面上の相対的な高さの差を精度よく測定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る、加熱体接触測定器具の構成を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の加熱体接触測定器具における測定時の動作を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態に係る、加熱体接触測定器具の詳細を図面に基づいて説明する。ただし、図面は本発明を説明するための一例として示した模式的なものであり、それらの構成、および各部材の寸法や寸法の比率などはこれらに限定するものではない。
【0015】
図1は、本発明の加熱体接触測定器具の構成例を示す概略図である。
図1に示した加熱体接触測定器具は、加熱部100と、放熱部200と、測定部300から構成されている。この加熱体接触測定器具は、加熱部100が備える接触子101を加熱された被測定物1へ接触させて、その被測定物表面の任意の基準点からの相対的な高さ方向の変化を測定する測定器具である。
【0016】
接触子101は被測定物1に直接接触する部分であり、被測定物1が加熱体である場合には、加熱温度に対して測定に支障のない耐熱性や強度を備える材質や形状が選択される。
加熱部100は、接触子101に接続した温度センサ102とヒーター103を有しており、これらを用いた温度制御によって、接触子101を被測定物1と同等の温度にて安定させる温調機構を備えている。
【0017】
さらに、加熱部100は、外気の影響を軽減する為に熱を遮断し反射するリフレクタ104を備えており、このリフレクタ104はヒーター103の周囲を覆うようにして設けられている。加熱部100は、測定部300への熱伝達を抑制する為に、断熱材105を介して放熱部200へ接続している。
【0018】
放熱部200は、冷却機構201と断熱材202およびリフレクタ203を備えており、これらによって、加熱部100から伝達される熱を放出し、測定部300への熱伝達を抑えるための断熱・放熱機能を備えている。
【0019】
冷却機構201は、例えばヒートシンク等の放熱板や空冷式、水冷式の冷却機構などの
公知手段を用いることができるが、加熱部100が前述の温調機構により一定の温度に保たれて測定部300への熱伝達を抑制できる方式であれば、この限りではない。
【0020】
測定部300は、変位伝達機構301と、重量支持部302と、変位検出機構303とで構成され、被測定物001に接触した接触子101の高さ方向の変位量を測定する機能を備えている。
【0021】
変位伝達機構301は、例えばボールが内蔵されたガイドブッシュや、エアーの吹き出しによるガイドブッシュ、リニアガイドを用いた直動ガイド機構や、ラックギアとピニオンギアを使用した回転運動への変換や、リンク機構を使用した変位量の増幅・減衰機構などの公知手段を用いることができるが、前記加熱部100と放熱部200からこの変位伝達機構301を通じて、測定部300が備える変位検出機構303で変位量を測定する動作が可能であれば、この限りではない。
【0022】
重量支持部302は、前記接触子101が被測定物101にかける力を制御するための機構であり、例えば圧縮バネや定張力バネ・カウンターウェイトなどの公知手段を用いることができるが、被測定物001への接触時の圧力を小さくできる構造であれば、この限りではない。
【0023】
変位検出機構303は、例えば前記変位伝達機構301に測定面を設け、てこ式のダイヤルゲージやスピンドル式のダイヤルゲージ、または非接触式の光学を用いた測定器や超音波による測定器、渦電流を用いた測定器などを用いた物や、前記変位伝達機構301によって回転運動に変換した変位をロータリーエンコーダやポテンションメータによって変位を測定するもの等の公知手段を用いることができるが、接触子101から伝達した高さ方向の変位量を測定可能な変位検出機構であれば、この限りではない。
【0024】
図2は、本発明の加熱体接触測定器具を用いて、加熱された被測定物1の表面内における高さ方向への変位量測定を行う際の動作を示す概略図である。
【0025】
図2では、被測定物の表面に凹凸があり、その上に本発明に係る加熱体接触測定器具が水平方向へ移動する様子を模式的に示している。
加熱体接触測定器具は、門型ガイド機構400に加熱体接触測定器具を取り付けることで、ガイドレール405に沿って移動できるようになっている。
【0026】
加熱体接触測定器具が移動する際、接触子101に着目すると、
図2の左側で被測定物1に接触している点を測定基準点402として、ここから器具移動方向401が示す方向に沿って中央の測定点403へと移動し、さらに右側の測定点404へと移動している。
【0027】
このとき、測定点403は測定基準点402より高い位置にあり、測定点404は測定基準点402より低い位置にある。この位置の高低の変位量が、測定部300において測定される。なお、被測定物1の測定基準点402の位置は適宜任意に定めてよい。
【0028】
このように、本発明の加熱体接触測定器具は、加熱された被測定物1の表面の任意な測定位置に移動可能な門型ガイド機構400により支持され、加熱部100が備える接触子101を加熱された被測定物1と同等の温度へ温度調節を行い、任意の測定点を基準として、異なる測定点へ移動させ、同様に接触させることで相対的な差分を測定する機能を備えている。
【0029】
門型ガイド機構400は、例えばシャフトやリニアガイドの機械要素部品を用いたガイド機構や、空気による浮上を使用したガイド機構などが用いられるが、移動可能な範囲内
における任意の位置毎の高さ方向の変動量がガイド機構側の事前の精度測定によって明らかとなっていれば、その限りではない。
【実施例0030】
本発明に係る実施例について、具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1においては、被測定物1として加熱されたホットプレートを加熱体接触測定器具の下部に設置し、加熱体接触測定器具による表面測定を行った。
【0032】
変位検出機構303には、変位伝達機構301と接続する測定面として平面部を設け、その平面部に接触させるテコ式のダイヤルゲージを使用し、変位伝達機構部301にはエア浮上式のガイドブッシュを使用し、冷却機構201にはヒートシンクを用いた放熱板を使用した。
【0033】
評価方法としては、ホットプレートを100℃に加熱し、加熱体接触測定器具が備える接触子101も同じく100℃となるように温調を行い、この状態で加熱体接触治具をホットプレート表面へ接触させ、時間経過による温度変化や熱変形に伴う測定値の変動がないことを確認した。
【0034】
この結果、本実施の形態に係る加熱体接触測定器具は、加熱された被測定物と、接触子部分の温度差を小さくし、時間経過・温度変化による被測定物と、測定器への熱影響を抑制することができ、一般的な接触式の測定器と同等の寸法測定が可能であることが確認できた。
【0035】
(実施例2)
被測定物1の材料によっては接触子101が表面へ接触した場合、被測定物1と加熱体接触測定器具側との温度差、あるいはそれらの温度変化が発生し、それに伴う被測定物1の熱膨張によって正確な測定ができない場合がある。
【0036】
そこで実施例2においては、接触子101が備える温度センサ102によって変化した温度を検出し、設定した温度で安定させるよう、接触子101の温度を、温度センサ102によってフィードバックし、設定した温度で安定制御するための温度調節機構を加熱部100内に付加し、さらに、温度が安定したことを知らせる機能を備えた。
これにより、温度変化の影響を受けない測定が可能となった。
本発明に係る加熱体接触測定器具によれば、加熱された被測定物表面の平坦度を測定する場合において、高温となった面内の平坦度の測定や、加熱前後の表面凹凸形状の寸法変化を高精度にとらえることで、加熱工程を要する加工機などの加工精度向上や状態把握のために活用することができる。