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特開2022-151770NOxエミッションを変換する排気後処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151770
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】NOxエミッションを変換する排気後処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20220929BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20220929BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20220929BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20220929BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F01N3/24 L ZAB
F01N3/08 B ZHV
F01N13/08 E
F01N13/18
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022045045
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】21164781.3
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ワルストロム,ゲルト‐オーヴェ
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004AA03
3G004AA05
3G004AA09
3G004BA06
3G004DA01
3G004EA04
3G091AA02
3G091AA04
3G091AA10
3G091AA14
3G091AA18
3G091AB05
3G091BA04
3G091BA14
3G091CA03
3G091CA17
3G091CA27
3G091EA17
3G091EA18
3G091FC07
3G091HB01
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148CC32
4D148CC47
4D148CC52
4D148CC61
4D148CD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気発熱要素による排気の加熱、及び蒸発部材による改善された蒸発によって、排気エミッションを高い効率で除去する改善された排気後処理装置が提供する。
【解決手段】本発明は、NOxエミッションを変換する排気後処理装置(20)に関する。SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタ(34)と、SCR触媒の上流に配置されて、噴射された液体還元剤を加熱する加熱装置(38)であって、電気発熱要素(40)及びこれによって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材(42,43)を備えた加熱装置と、を備えている。加熱装置は、組み付け状態において、蒸発部材が流体導管内に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するように、流体に対して取り外し可能に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気の流体通路(26,226)を提供する流体導管(21,221)と、
前記流体導管内又はその下流に配置されたSCR触媒(32)と、
前記SCR触媒の上流に配置されて、前記SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタ(34)と、
前記SCR触媒の上流に配置されて、前記噴射された液体還元剤を加熱する加熱装置(38,138,238,338)であって、電気発熱要素(40,140)、及び前記電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材(42,43,142,143)を備え、組み付け状態において、前記蒸発部材が前記流体導管内に配置され、前記噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に前記蒸発部材と接触するように、前記流体導管に対して取り外し可能に配置された加熱装置と、
を備えた、NOxエミッションを変換する排気後処理装置(20,200)。
【請求項2】
前記流体導管(21,221)は、前記インジェクタ(34)の上流に配置された第1の導管フランジ(21A,221A)を備え、
前記加熱装置(38,138,238)は、第1の加熱装置フランジ(39A,139A,239A)を備え、
組み付け状態において、前記第1の導管フランジが前記第1の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結され、
前記加熱装置は、少なくとも前記第1の導管フランジが前記第1の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結されることによって、前記流体導管に対して取り外し可能に配置された、
請求項1に記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項3】
前記流体導管(21,221)は、前記第1の導管フランジ(21A,221A)の上流に配置された第2の導管フランジ(21B,221B)を更に備え、
前記加熱装置(38,138,238)は、前記第1の加熱装置フランジ(39A,139A,239A)とは反対側に配置された第2の加熱装置フランジ(39B,139B,239B)を更に備え、
組み付け状態において、前記第2の導管フランジが前記第2の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結され、
前記第1の導管フランジが前記第1の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結されるとともに、前記第2の導管フランジが前記第2の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結されることによって、前記加熱装置が前記流体導管に対して取り外し可能に配置された、
請求項2に記載の排気後処理装置(20)。
【請求項4】
前記蒸発部材(42,43,142)は、組み付け状態において、前記加熱装置(38,138,238)から前記第1の導管フランジ(21A,221A)を横切って前記流体導管(21,221)内へと延びるように配置された、
請求項1又は2に記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項5】
前記加熱装置(38,138,238)は、前記第1の加熱装置フランジ(39A,139A,239A)まで延びる加熱導管(39,139,239)を備え、
前記電気発熱要素(40)が前記加熱導管(39,239)に配置されるか、又は前記電気発熱要素(140)が前記加熱導管(139)から延びるか、若しくは前記第1の加熱装置フランジ(139A)から外方へと延びるように配置された、
請求項2~4のいずれか1つに記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項6】
前記加熱導管(239)は、導管屈曲部(21)を備えた、
請求項5に記載の排気後処理装置(220)。
【請求項7】
前記蒸発部材(42,43,142)は、前記インジェクタ(34)と対面するように配置された還元剤衝突面を有するプレート(42,43,142)を備えた、
請求項1~6のいずれか1つに記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項8】
前記プレートは、第1の長手方向延設部を有する第1のプレート(42)であり、
前記蒸発部材は、前記第1の長手方向延設部とは異なる第2の長手方向延設部を有する第2のプレート(43)を更に備えた、
請求項7に記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項9】
前記蒸発部材(342)は、排気の旋回運動を引き起こすように構成された、
請求項1~8のいずれか1つに記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項10】
前記加熱装置(38,138,238)は、使用中、前記噴射された液体還元剤が前記電気発熱要素(40,140)と接触しないように配置された、
請求項1~9のいずれか1つに記載の排気後処理装置(20,220)。
【請求項11】
排気の流体通路(26,226)を提供する流体導管(21,221)と、前記流体導管の下流に配置されたSCR触媒(32)と、前記SCR触媒の上流に配置されて、前記SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタ(34)と、を備えた、NOxエミッションを変換する排気後処理装置(20,220)の加熱装置(38,138,238,338)であって、
電気発熱要素(40,140)と、前記電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材(42,43,142)と、を備え、
前記加熱装置は、組み付け状態において、前記蒸発部材が前記流体導管内に配置され、前記噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に前記蒸発部材と接触するように、前記流体導管に対して取り外し可能に連結された、
加熱装置(38,138,238,338)。
【請求項12】
第1の加熱装置フランジ(39A,139A,239A)と、
前記第1の加熱装置フランジ(39A,139A,239A)とは反対側に配置された第2の加熱装置フランジ(39B,139B,239B)と、
を更に備え、
前記第1の加熱装置フランジが、前記流体導管の第1の導管フランジに対して全周に亘って連結され、
前記第2の加熱装置フランジが、前記流体導管の第2の導管フランジに対して全周に亘って連結された、
請求項11に記載の加熱装置(38,138,238,338)。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1つに記載の排気後処理装置(20,220)、又は請求項11若しくは12に記載の加熱装置(38,138,238,338)を備えた車両(1)。
【請求項14】
NOxエミッションを変換する排気後処理装置の流体導管に対して加熱装置を組み付け及び/又は取り外す方法であって、
前記排気後処理装置は、排気の流体通路を提供する流体導管と、前記流体導管内又はその下流に配置されたSCR触媒と、前記SCR触媒の上流に配置されて、前記SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタと、を備え、前記加熱装置は、電気発熱要素と、前記電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材と、を備え、前記加熱装置が、前記流体導管に対して取り外し可能に連結され、前記加熱装置が前記SCR触媒の上流に配置され、前記蒸発部材が前記流体導管内に配置され、前記噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に前記蒸発部材と接触するように、前記流体導管に対して前記加熱装置を組み付けるステップ(S10)、及び/又は
前記流体導管から前記加熱装置を取り外すステップ(S20)、
を含む、方法。
【請求項15】
前記流体導管は、前記インジェクタの上流に配置された第1の導管フランジを備え、
前記加熱装置は、第1の加熱装置フランジを備え、
前記流体導管に対して前記加熱装置を組み付けるステップ(S10)は、前記第1の加熱装置フランジに対して前記第1の導管フランジを全周に亘って連結するステップ(S12)を含み、及び/又は
前記取り外すステップ(S20)は、前記第1の加熱装置フランジから前記第1の導管フランジを切り離すステップ(S22)を含む、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxエミッションを変換する排気後処理装置に関する。本発明はまた、排気後処理装置の加熱装置、排気後処理装置又は加熱装置を備えた車両、並びに排気後処理装置の流体導管に対して加熱装置を組み付け及び/又は取り外す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、一般的に、車両を推進するエンジンを備えている。このエンジンは、例えば、内燃機関の液体燃料若しくは気体燃料、又は電気機械の電力などの様々な手段によって動作させることができる。また、車両が内燃機関及び電気機械の両方によって推進される、ハイブリッドの解決策が存在する。
【0003】
エンジンがディーゼルエンジンなどの内燃機関である場合、車両には、エンジンからのエミッションを処理する排気後処理システムEATSが備えられていることが一般的である。ディーゼルエンジンのEATSは、一般的に、ディーゼル酸化触媒DOC、ディーゼルパティキュレートフィルタDPF、及びSCR触媒を含んでいる。尿素やアンモニアを含む物質などの還元剤は、SCR触媒の上流に噴射されて、NOxとも呼ばれる窒素酸化物を、触媒を用いて、二価窒素N2及び水、場合によっては二酸化炭素CO2(還元剤の選択に依存する)へと変換するのを促進する。浄化された排気、又は少なくともエミッションが減少された排気は、その後、車両のテールパイプを通って、EATS及び車両から排出される。同様なエミッションをもたらすディーゼルエンジンとしての他のタイプのエンジンは、同一又は同様なEATSを利用することができる。
【0004】
政府規制は、車両の燃費を向上させる絶え間のない要求とともに、EATSのより効果的な動作の必要性を伴う。例えば、EATSは、排気温度が低い場合であっても、急速に加熱しなければならず、非常に低い負荷でも高い変換効率を持っていなければならない。厳しいCO2要求を満たす非常に効率的なエンジンの必要性はまた、SCR触媒の上流に噴射される大量の還元剤を必要とする、排気温度の低下、及びエンジンからのより多くのNOx排出という結果につながる。また、還元剤として尿素を使用した場合、尿素は、加熱されて蒸発してアンモニアに加水分解される必要がある。温度が低いと、EATSの効果を低下させる結晶及び付着物を生成する大きなリスクがある。
【0005】
電気発熱要素を使用して排気を加熱することで、低温の排気を相殺して、関連する不都合を軽減することができる。しかしながら、EATSへの電気発熱要素の追加は、システムの複雑さを増加し、及び/又は故障の対象となり、メンテナンスや交換が必要なリスクがある構成部品を追加することとなる。EATSにおける構成部品の故障は、多くの場合、損失の大きい車両のダウンタイムで、時間がかかるサービスを必要とする。また、構成部品の交換や完成品のEATS完成品の交換につながる構成部品の故障は、環境にとっても良くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上述した欠点を軽減することを目的とする改善されたEATSが、産業において必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、既知の排気後処理システムに関して、上述の欠点を少なくとも部分的に軽減して、改善された排気後処理装置を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、NOxエミッションを変換する排気後処理装置が提供される。排気後処理装置は、
排気の流体通路を提供する流体導管と、
流体導管内又はその下流に配置されたSCR触媒と、
SCR触媒の上流に配置されて、SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタと、
SCR触媒の上流に配置されて、噴射された液体還元剤を加熱する加熱装置であって、電気発熱要素、及び電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材を備え、組み付け状態で、蒸発部材が流体導管内に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するように、流体導管に対して取り外し可能に配置された加熱装置と、
を備えている。
【0009】
従って、排気温度が低いという欠点は、電気発熱要素、及び液体還元剤の蒸発を促進させる蒸発部材によって軽減される一方、流体導管内の構成部品にアクセスするために加熱装置が流体導管から容易に簡単に取り外し可能となる。その結果、少なくとも電気発熱要素及び蒸発部材は、例えば、メンテナンスや交換のためにアクセスできるようになる。即ち、加熱装置は、流体導管から取り外し可能であり、加熱装置内の構成部品は、例えば、メンテナンスや交換のためにアクセス可能になる。本発明は、排気後処理装置の性能を向上しつつ、加熱装置の構成部品に容易にアクセス可能な簡単な構成の組み合わせを提供する。従って、流体導管に対して加熱装置が取り外し可能に配置されるので、加熱装置がさらに複雑になることを抑制しつつ、少なくとも、電気発熱要素による排気の加熱、及び蒸発部材による改善された蒸発によって、排気エミッションを高い効率で除去する改善された排気後処理装置が提供される。
【0010】
加熱装置が流体導管に対して取り外し可能に配置されるので、加熱装置は、組み付け状態において、加熱装置が流体導管内に配置されるか、流体導管の統合された一部を形成するか、又は流体導管に直接流体連通するように配置可能である。また、加熱装置は、取り外し状態において、加熱装置が流体導管から取り外されるか、又は分離されるように配置可能である。排気後処理装置の使用中、即ち、NOxエミッションを変換する排気後処理装置が使用されている場合、加熱装置は、組み付け状態で配置されている。取り外し状態は、例えば、加熱装置やその任意の構成部品のメンテナンス中に使用することができる。
【0011】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材が流体導管内に配置されて、使用中、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が蒸発部材と接触するようになる。換言すると、蒸発部材が流体導管内に配置されて、使用中、蒸発部材が噴射された液体還元剤の少なくとも一部を受けるようになる。つまり、蒸発部材は、組み付け状態において、噴射された液体還元剤を受けるように配置されている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、インジェクタ及び加熱装置は、使用中、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が蒸発部材と接触するように配置されている。蒸発部材が還元剤の蒸発を改善し、これによって、還元剤の結晶化及び内部への付着のリスクを少なくとも部分的に減少させることに留意されたい。また、還元剤は、アンモニアに加水分解することができる。インジェクタによって噴射される還元剤は、明確に述べられなくても、本明細書の全体を通して液体還元剤である。液体還元剤の少なくとも一部は、加熱された排気からの熱によって蒸発することができ、液体還元剤の少なくとも一部は、液体として蒸発部材に到達することができる。
【0012】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、加熱装置に対して取り外し可能に配置されている。
【0013】
従って、加熱装置が流体導管から取り外されると、蒸発部材を加熱装置から取り外すことができ、例えば、メンテナンスや交換の対象とすることができる。同様に、加熱装置及び/又は蒸発部材に対して電気発熱要素を取り外し可能に配置することができる。従って、電気発熱要素を取り外して、例えば、メンテナンスや交換の対象とすることができる。
【0014】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、SCR触媒は、例えば、インジェクタと比較して流体導管の下流などの流体導管内に配置されている。その代わりに、SCR触媒は、流体導管の下流に配置されている。例えば、流体導管は、SCR触媒に入って終了するか、又はSCR触媒に入ってから出てもよい。
【0015】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置の電気発熱要素は、組み付け状態において、インジェクタの上流に配置されている。従って、電気発熱要素によって加熱された排気は、噴射された還元剤と出会う前に加熱することができる。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材の少なくとも一部は、加熱装置の組み付け状態において、インジェクタと平行に配置されている。その結果、噴射された還元剤は、蒸発部材と容易に接触する。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、組み付け状態において、インジェクタは、加熱装置とSCR触媒との間に配置されている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、インジェクタは、流体導管内に還元剤を噴射するように配置されている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、組み付け状態において、インジェクタは、蒸発部材と対面する流体導管内に配置されている。従って、インジェクタは、蒸発部材からある程度の距離に配置されているが、蒸発部材と接触する還元剤を依然として噴射可能である。
【0016】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、噴射された還元剤を、蒸発部材を介して直接的に加熱するとともに、電気発熱要素を、通過する排気を介して間接的に加熱するように構成されている。従って、加熱された排気は、噴射された還元剤を加熱した後、電気発熱要素を通過する。
【0017】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、直接接触することによって、蒸発部材を加熱するように構成されている。従って、電気発熱要素から蒸発部材へと熱を伝達することができる。例えば、蒸発部材は、電気発熱要素と一体化された構造体を備えている。少なくとも1つの代替的かつ例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、蒸発部材を非接触で加熱するように構成されている。従って、排気又は空気を介して、電気発熱要素から蒸発部材へと熱を対流で伝達することができる。
【0018】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、流体導管は、インジェクタの上流に配置された第1の導管フランジを備え、加熱装置は、第1の加熱装置フランジを備え、組み付け状態において、第1の導管フランジが第1の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結されている。加熱装置は、少なくとも第1の導管フランジが第1の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結されることによって、流体導管に対して取り外し可能に配置されている。
【0019】
その結果、流体導管に対して加熱装置を取り外し可能に配置する、単純であるが効果的な手段が提供される。例えば、第1の導管フランジは、流体導管の端部がフランジであってもよく、従って、加熱装置は、第1の導管フランジ及び第1の加熱装置フランジによって流体導管のそのような端部に取り外し可能に配置、又は取り外し可能に連結することができる。従って、使用中、排気は、加熱装置を介して流体導管に入っていく。換言すると、第1の導管フランジが、第1の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結されるか、又は第1の導管フランジが、第1の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結されるように構成されている。
【0020】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、流体導管は、第1の導管フランジの上流に配置された第2の導管フランジを更に備えている。加熱装置は、第1の加熱装置フランジとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジを更に備え、組み付け状態において、第2の導管フランジが第2の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結されている。加熱装置は、第1の導管フランジが第1の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結され、かつ第2の導管フランジが第2の加熱装置フランジに対して取り外し可能に連結されることで、流体導管に対して取り外し可能に配置されている。
【0021】
その結果、流体導管に対して加熱装置を取り外し可能に配置する、さらに他の単純であるが効果的な手段が提供される。従って、加熱装置は、流体導管に対して連結されたとき、流体通路の一部を形成することができる。つまり、加熱装置は、流体導管に対して取り外し可能に配置されている。従って、流体導管は、第1の導管フランジの下流にある第1の導管部と、第2の導管フランジの上流にある第2の導管部と、を備えていてもよい。その結果、加熱装置が流体導管内に取り外し可能に配置されて、第1の導管部を第2の導管部に流体連通させる。従って、加熱装置が流体導管から取り外されると、流体導管が2つの異なる導管部、即ち、第1の導管部と第2の導管部とに分割される。第2の導管部は、第2の導管フランジから上流に延びる上流導管部とも呼ぶことができ、第1の導管部は、第1の導管フランジから下流に延びる下流導管部とも呼ぶことができる。従って、使用中、排気は、上流導管部へと入り込んで、加熱装置を介して下流導管部に供給される。換言すると、第2の導管フランジは、第2の加熱装置フランジに対して全周に亘って連結されるか、又は第2の導管フランジは、第2の加熱装置フランジに対して全周に亘って結合するように構成されている。下流導管部は、フレキシブルパイプを備えていてもよい。上流導管部は、ターボチャージャの出力部に流体連結、又はそこに含まれていてもよい。
【0022】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、インジェクタは、第1の導管フランジの直下、例えば、第1の導管フランジの1~20cm内に配置されている。この距離は、インジェクタと第1の導管フランジとの間の流れの経路の距離である。
【0023】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、組み付け状態において、加熱装置から第1の導管フランジを横切って流体導管内へと延びるように配置されている。
【0024】
その結果、蒸発部材は、組み付け状態において、流体導管内に配置されて噴射された液体還元剤を受け、これによって、液体還元剤を加熱及び蒸発することができる。例えば、組み付け状態において、蒸発部材は、第1の加熱装置フランジから延びるか、又は第1の加熱装置フランジを横切って延び、かつ第1の導管フランジを更に横切って延びていてもよい。換言すると、蒸発部材は、第1の加熱装置フランジから延びるか、又はこれを横切って延びるように構成されていてもよい。
【0025】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、第1の加熱装置フランジまで延びる加熱導管を備え、電気発熱要素が加熱導管に配置されるか、又は電気発熱要素が加熱導管から延びるか、若しくは第1の加熱装置フランジから外部に延びるように配置されている。
【0026】
従って、組み付け状態において、加熱導管は、上流導管部から下流導管部へと延びるか、又は排気を単純に受けて、排気を流体導管へとさらにガイドする。加熱導管内に電気発熱要素を配置することで、例えば、電気発熱要素の全体が加熱導管内に配置されるようになり、電気発熱要素がインジェクタから離れた距離に配置され、かつ流体導管への還元剤の噴射位置までの距離に配置されるとき、噴射された還元剤が電気発熱要素に到達するリスクが少なくなる。加熱導管から第1の加熱装置フランジを横切って延びるように電気発熱要素を配置するか、又は第1の加熱装置から延びるように電気発熱要素を配置することで、電気発熱要素は、還元剤の噴射位置にさらに近づき、加えられた熱をよりよく利用することができる。しかしながら、電気発熱要素が加熱導管から第1の加熱装置フランジを横切って延びる実施形態については、液体還元剤と電気発熱要素との直接接触を回避することが望ましいので、電気発熱要素は、例えば、蒸発要素によって覆われることが望ましく、及び/又は還元剤が電気発熱要素から離れるように噴射されることが望ましい。
【0027】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、組み付け状態において、電気発熱要素は、加熱導管から第1の加熱装置フランジを横切って延び、かつ第1の導管フランジを横切って流体導管内へと延びている。
【0028】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱導管は、第2の加熱装置フランジから第1の加熱装置フランジへと延びている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱導管は、流体導管の一部を形成する。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱導管は、上流導管部を下流導管部に流体連通している。
【0029】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱導管は、導管屈曲部を備えている。
【0030】
その結果、加熱導管を通って流れる排気は、その混合を促進することができ、排気の加熱を改善することができる。また、加熱導管内に電気発熱要素を設けることで、加熱導管が導管屈曲部を備え、電気発熱要素を噴射された還元剤からよりよく保護することができる。さらに、加熱装置は、上流導管部を下流導管部に連結することができる一方、導管屈曲部は、流体導管の屈曲部又は湾曲部を提供する。
【0031】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、インジェクタに対面するように配置された、還元剤衝突面を有するプレートを備えている。
【0032】
即ち、組み付け状態において、プレートは、そのプレートの一面、要するに、還元剤衝突面がインジェクタに対面するか、又は還元剤を噴射するように構成されたインジェクタのオリフィスに対面するように配置することができる。その結果、噴射された還元剤は、簡単であるが効果的な方法で、蒸発部材と接触することができる。プレートが蒸発プレートであり、従って、電気発熱要素によって加熱されることを理解されたい。
【0033】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、プレートは、第1の長手方向延設部を有する第1のプレートであり、蒸発部材は、第1の長手方向延設部とは異なる、第2の長手方向延設部を有する第2のプレートを更に備えている。
【0034】
一般的に、第2のプレートは、インジェクタに少なくとも部分的に対面するように配置された還元剤衝突面を備えている。従って、第1のプレート及び第2のプレートは、階段状に配置されてもよく、噴射された還元剤を共に効果的に蒸発させてもよい。例えば、第1のプレートは、インジェクタに対する第2のプレートの配置と比較して、インジェクタのより近くに配置してもよい。その結果、噴射された液体還元剤の大部分は、比較的近くにある第1のプレートと接触することができる。第1のプレートによってスリップした液体還元剤は、その後、インジェクタからさらに比較的遠くに配置されている第2のプレートと接触することができる。その結果、蒸発部材の合計還元剤衝突面を増やすことができる。
【0035】
長手方向延設部は、一般的に、加熱装置の長手方向における延設部である。使用中、排気は、一般的に、加熱装置の長手方向に流れる。
【0036】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、プレートとして定義されるか、又は1つ以上のプレートとして定義される。従って、蒸発部材は、1つのプレートを構成するか、又は複数のプレートを構成することができる。ここで、複数とは、1より大きいことである。
【0037】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、排気の旋回運動を引き起こすように構成されている。
【0038】
その結果、蒸発部材を通過して流れる排気は、混合を促進することができ、排気の加熱を改善することができる。例えば、蒸発部材は、排気の旋回運動を生成するように構成された屈曲構造体を備えている。屈曲構造体は、例えば、第1のプレート、及び/又は第2のプレートに含まれていてもよい。例えば、第1のプレート、及び/又は第2のプレートは、長手方向において少なくとも部分的にねじられるように配置されていてもよい。
【0039】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、使用中、噴射された液体還元剤が電気発熱要素と接触しないように配置されている。
【0040】
例えば、電気発熱要素は、噴射された液体還元剤が到達できない距離で、インジェクタの上流に配置されている。他の例によれば、電気発熱要素は、(例えば、上述した導管屈曲部を備えている加熱通路において、)屈曲部の背面に配置されている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、電気発熱要素を覆っているか、又はこれを保護している。従って、蒸発部材、例えば、第1のプレート、及び/又は第2のプレートは、液体還元剤が電気発熱要素に到達する代わりにシールドに衝突するように、電気発熱要素のシールドとして機能することができる。
【0041】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、流体導管は第1の流体導管、SCR触媒は第1のSCR触媒、インジェクタは第1のインジェクタ、加熱装置は第1の加熱装置である。排気後処理装置は、
第1のSCR触媒の下流に配置された第2のSCR触媒と、
第2の流体導管及び第2のSCR触媒の上流に配置されて、第2のSCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成された第2のインジェクタと、
第2のSCR触媒の上流に配置されて、第2のインジェクタから噴射された還元剤を加熱する第2の加熱装置であって、第2の電気発熱要素、及び第2の電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの第2の蒸発部材を備え、第2の加熱装置が、組み付け状態において、第2の蒸発部材が流体導管内に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するように、第2の流体導管に対して取り外し可能に配置された第2の加熱装置と、
を更に備えている。
【0042】
第1の加熱装置、第1の流体導管、第1のインジェクタ、及び第1のSCR触媒と関連して説明した実施形態は、第2の加熱装置、第2の流体導管、第2のインジェクタ、及び第2のSCR触媒に対して同様に適用可能であり、ここでは再度説明しない。
【0043】
本発明の第2の態様によれば、NOxエミッションを変換する排気後処理装置の加熱装置が提供される。排気後処理装置は、排気の流体通路を提供する流体導管と、流体導管内又はその下流に配置されたSCR触媒と、SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタと、を備え、インジェクタがSCR触媒の上流に配置されている。加熱装置は、電気発熱要素と、電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材と、を備えている。加熱装置は、流体導管に対して取り外し可能に配置されており、組み付け状態において、蒸発部材が流体導管に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するようになっている。
【0044】
本発明の第2の態様の効果及び特徴は、少なくとも加熱装置との関連において、本発明の第1の態様に関して上述したものと大部分が類似している。本発明の第1の態様に関連して説明した実施形態は、少なくとも加熱装置との関連において、本発明の第2の態様と大部分両立することができる。従って、電気加熱装置は、SCR触媒の上流、かつインジェクタの上流の少なくとも一部の流体導管に対して取り外し可能に配置することができる。
【0045】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、第1の加熱装置フランジと、第1の加熱装置フランジとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジと、を備えている。第1の加熱装置フランジは、流体導管の第1の導管フランジに対して全周に亘って連結され、第2の加熱装置フランジは、流体導管の第2の導管フランジに対して全周に亘って連結されている。
【0046】
流体導管の第1の導管フランジ及び第2の導管フランジは、本発明の第1の態様を参照して説明済である。その結果、加熱装置は、流体導管に対して取り外し可能に配置することができる。従って、加熱装置は、組み付け状態において、第1の加熱装置フランジが流体導管の第1の導管フランジに対して全周に亘って連結され、かつ第2の加熱装置フランジが流体導管の第2の導管フランジに対して全周に亘って連結されるように、流体導管に対して配置可能である。また、第1の加熱装置フランジは、流体導管の第1の導管フランジに対して取り外し可能に連結され、第2の加熱装置フランジは、流体導管の第2の導管フランジに対して取り外し可能に連結され、これによって、加熱装置が流体導管に対して取り外し状態で配置可能である。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、NOxエミッションを変換する排気後処理装置の加熱装置が提供される。加熱装置は、電気発熱要素と、電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材と、を備えている。加熱装置は、排気後処理装置の流体導管に対して取り外し可能に連結されるように構成されている。
【0048】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、第1の加熱装置フランジを備えている。
【0049】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、第1の加熱装置フランジとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジを更に備えている。
【0050】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、加熱装置は、第1の加熱装置フランジと第2の加熱装置フランジとの間で延びる加熱導管を更に備えている。電気発熱要素は、加熱導管内に配置されているか、又は電気発熱要素は、加熱導管から延びるように配置されているか、若しくは第1の加熱装置フランジから外方へと延びるように配置されている。
【0051】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、第1の加熱装置フランジから外方へと延びているか、又は加熱導管から第1の加熱装置フランジを横切って延びている。換言すると、蒸発部材は、第1の加熱装置フランジから外方に延びるように配置されてもよく、又は第1の加熱装置フランジを横切って外方に延びるように配置されていてもよい。
【0052】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、平坦面を有するプレートを備えている。例えば、このプレートは、第1の加熱装置フランジから外方へと延びていてもよく、又は加熱導管から第1の加熱装置フランジを横切って延びていてもよい。
【0053】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、プレートは、第1の長手方向延設部を有する第1のプレートであり、蒸発部材は、第1の長手方向延設部とは異なる第2の長手方向延設部を有する第2のプレートを更に備えている。一般的に、第2のプレートは、平坦面を備えている。第1の長手方向延設部は、第2の長手方向延設部よりも小さくすることができる。従って、第1のプレート及び第2のプレートは、階段状に配置することができる。長手方向延設部は、一般的に、加熱装置の半径方向を横切る、加熱装置若しくは加熱導管の長手方向における延設部であるか、又は加熱導管の長手方向における延設部であってもよい。従って、第1のプレート及び/又は第2のプレート、並びにそれらのそれぞれの平坦面は、長手方向に大部分延びることができる。
【0054】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、蒸発部材は、電気発熱要素に対して取り外し可能に配置されている。
【0055】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様に記載の排気後処理装置、又は本発明の第2の態様若しくは第3の態様に記載の加熱装置を備えた車両が提供される。
【0056】
本発明の第4の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様及び第2の態様に関連して上述したものと大部分類似している。本発明の第1の態様に関連して説明した実施形態は、本発明の第4の態様と大部分両立できる。
【0057】
本発明の第5の態様によれば、NOxエミッションを変換する排気後処理装置の流体導管に対して加熱装置を組み付け及び/又は取り外す方法が提供される。排気後処理装置は、排気の流体通路を提供する流体導管と、流体導管内又は流体導管の下流に配置されたSCR触媒と、SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタと、を備えている。インジェクタは、SCR触媒の上流に配置されている。加熱装置は、電気発熱要素と、電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材と、を備えている。加熱装置は、流体導管に対して取り外し可能に連結されている。この方法は、
加熱装置がSCR触媒の上流に配置され、かつ蒸発部材が流体導管内に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するように、流体導管に対して加熱装置を組み付けること、及び/又は
流体導管から加熱装置を取り外すこと、
を含んでいる。
【0058】
その結果、加熱装置を流体導管に容易に連結することができ、及び/又は加熱装置を流体導管から容易に取り外すことができる。従って、加熱装置は、流体導管に対して組み付けることができ、これを使用して電気発熱要素によって排気が低温であるという欠点を軽減するとともに、蒸発部材が還元剤の蒸発を改善することができる。また、加熱装置は、その中の構成部品にアクセスするために、容易に取り外すことができる。その結果、少なくとも電気発熱要素及び蒸発部材は、例えば、メンテナンスや交換のためにアクセスできるようになる。即ち、加熱装置は、流体導管から取り外すことができ、その中の構成部品は、例えば、メンテナンスや交換のためにアクセスできるようになる。本発明は、加熱装置を組み付けた後に排気後処理装置の性能を向上させつつ、加熱装置を取り外した後に加熱装置の構成部品に容易にアクセスできる簡単な構成の組み合わせを提供する。従って、加熱装置が流体導管に対して取り外し可能に配置されて、組み付け及び取り外しの対象とすることができるので、加熱装置をさらに複雑にすることを低減しつつ、少なくとも、電気発熱要素によって排気を加熱し、かつ蒸発部材によって蒸発を改善することにより、排気エミッションを高い効率で除去する改善された排気後処理装置が提供される。
【0059】
本発明の第5の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述したものと大部分類似している。本発明の第1の態様に関連して説明した実施形態、即ち、少なくとも排気後処理装置に関連して説明した実施形態は、本発明の第5の態様と大部分両立することができる。
【0060】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、この方法は、本発明の第1の態様に従って、排気後処理装置で実行される。
【0061】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、流体導管は、インジェクタの上流に配置された第1の導管フランジを備え、加熱装置は、第1の加熱装置フランジを備えている。流体導管に対して加熱装置を組み付けるステップは、第1の加熱装置フランジに対して第1の導管フランジを全周に亘って連結することを含み、及び/又は取り外すステップは、第1の加熱装置フランジから第1の導管フランジを切り離すことを含んでいる。
【0062】
その結果、流体導管に対して加熱装置を組み付け及び取り外す簡単でより効果的な手段が提供される。例えば、第1の導管フランジは、流体導管の端部におけるフランジであってもよく、従って、加熱装置は、第1の導管フランジ及び第1の加熱装置フランジによって、流体導管のそのような端部に対して組み付け、取り外し可能に配置、又は取り外し可能に連結することができる。従って、使用中、排気は、加熱装置を介して流体導管に入り込む。
【0063】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、流体導管は、第1の導管フランジの上流に配置された第2の導管フランジを更に備えている。加熱装置は、第1の加熱装置フランジとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジを更に備えている。流体導管に対して加熱装置を組み付けるステップは、第1の加熱装置フランジに対して第1の導管フランジを全周に亘って連結することと、第2の加熱装置フランジに対して第2の導管フランジを全周に亘って連結することを含み、及び/又は取り外すステップは、第1の加熱装置フランジから第1の導管フランジを切り離すことと、第2の加熱装置フランジから第2の導管フランジを切り離すことを含んでいる。
【0064】
その結果、流体導管に対して加熱装置を組み付け及び取り外すさらに他の簡単で効果的な手段が提供される。従って、加熱装置は、組み付けられるときに流体導管に連結されると、流体通路の一部を形成することができる。つまり、加熱装置は、流体導管に組み付けられるか、又は流体導管に取り外し可能に配置されている。従って、流体導管は、第1の導管フランジの下流にある第1の導管部と、第2の導管フランジの上流にある第2の導管部と、を備えていてもよい。その結果、加熱装置は、流体導管に対して組み付けられるか、又は流体導管に取り外し可能に配置されて、第1の導管部を第2の導管部に流体連通する。従って、加熱装置が取り外されたとき、即ち、これが流体導管から取り外されると、流体導管は、2つの別の部分に分割、即ち、第1の導管部及び第2の導管部に分割される。
【0065】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、組み付けるステップは、加熱装置から第1の導管フランジを横切って流体導管内へと延びるように蒸発部材を配置することを含んでいる。
【0066】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、排気後処理装置は、ディーゼルパティキュレートフィルタDPFであるエミッション低減モジュール、即ち、排気からディーゼル排気微粒子やスートなどの微粒子を取り除くように構成されたエミッション低減モジュール、及び/又は一酸化炭素及び炭化水素を二酸化炭素に変換するように配置及び構成されたディーゼル酸化触媒DOCを更に備えている。従って、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エミッション低減モジュールは、DPF及びDOCの組み合わせ、例えば、DOCがDPFの上流に配置されている。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エミッション低減モジュールはDPFである。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、エミッション低減モジュールはDOCである。エミッション低減モジュールは、例えば、加熱装置の上流に配置することができる。
【0067】
電気発熱要素は、電気によって加熱されるように構成された発熱要素であることを理解されたい。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、ラティス、グレーティング、コイル又はプレートを介して導かれた電気によって加熱されるように構成された、ラティス、グレーティング、コイル又はプレートを備えている。電気発熱要素は、他の形状、例えば、平坦若しくは湾曲した発熱薄膜の形状であってもよく、異なるタイプの発熱要素、例えば、抵抗発泡体の発熱要素を備えていてもよい。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、正温度係数PTCベースの要素である。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、誘導加熱に基づいており、誘導加熱要素と呼ぶことができる。
【0068】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、還元剤は、無水アンモニア、アンモニア水、尿素、水性尿素及びディーゼル排気流体の少なくとも1つである。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、還元剤は、尿素又は液体尿素である。従って、電気発熱要素は、加熱された排気及び蒸発部材を介して、蒸発に必要な熱を持つ還元剤を提供し、可能であれば、還元剤をアンモニアに加水分解することができる。電気発熱要素の動作電力に基づいて、加熱された排気は、SCR触媒を更に温めることができる。
【0069】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、電気発熱要素の下流、かつSCR触媒の上流の温度を180℃より高く維持するように構成されている。その結果、噴射された還元剤を原因とする汚損は、軽減又は取り除くことさえできる。例えば、電気発熱要素は、電気発熱要素の下流、かつSCR触媒の上流の流体通路を流れる排気温度を180℃より高く維持するように構成されている。この温度は、例えば、特定の距離に亘る平均温度として測定される。電気発熱要素は、上記の温度を180℃~300℃の間に維持するように構成されていてもよい。付加的に又は代替的に、電気発熱要素は、SCR触媒の温度を180℃~300℃の間に維持するように構成されている。
【0070】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、電気発熱要素の上流の温度が180℃未満であることを測定されたことに応答して、排気の加熱を開始するように制御されている。電気発熱要素は、電気発熱要素の上流の温度が200℃を超えたことを測定されたことに応答して、又は電気発熱要素の下流(かつ、例えば、SCR触媒の上流)の温度が300℃を超えたことを測定されたことに応答して、排気の加熱を終了するように更に制御されていてもよい。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、SCR触媒の温度が200℃未満又は180℃未満であることが測定されたことに応答して、排気の加熱を開始するように制御されている。
【0071】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素は、少なくとも噴射された還元剤の温度に基づいて、電気発熱要素の下流、かつSCR触媒の上流の温度に適合するように構成されている。その結果、還元剤の温度は、電気発熱要素の制御に含まれることができる。
【0072】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素の動作電力は、300W~15000Wの間、又は1000W~15000Wの間である。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気発熱要素の動作電圧は、12V、24V又は48Vである。
【0073】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、排気後処理装置は、排気中のNOx濃度を制御する目的で、NOx、温度及び圧力などの様々な排気パラメータの関数として、排気の流体通路への還元剤の導入を制御するように構成されたコントローラを備えている。排気パラメータは、排気後処理装置の様々な位置にある様々なセンサによって測定することができる。例えば、NOxセンサは、排気後処理装置の入口及び出口に配置、又はこれに隣接して配置することができる。温度センサ、及び/又は圧力センサは、電気発熱要素又はSCR触媒の前後に配置することができる。
【0074】
SCR触媒は、一般的に、触媒を用いて、窒素酸化物NOxを二価窒素N2及び水、並びに/又は二酸化炭素CO2に変換するように構成されている。使用中、噴射された還元剤(又はその結果として生じるアンモニア)は、触媒上で反応する。
【0075】
本発明の第5の態様で説明した方法ステップの順序は、本開示で説明したものに限定されない。1つ又はいくつかのステップは、本発明の範囲から逸脱することなく明確に述べない限り、場所を変え、又は異なる順序で起こることができる。しかしながら、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、この方法ステップは、本発明の第5の態様において説明した順序で実行される。
【0076】
本開示のさらなる利点及び特徴は、以下の説明及び添付図面に開示及び説明されている。
【0077】
添付図面を参照して、以下、例として挙げられる本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明の例示的な実施形態に従う排気後処理装置を備えた車両の概略的な側面図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に従う排気後処理装置の概略的な断面図である。
図3A】本発明の例示的な実施形態に適用可能な、加熱装置が流体導管に対してどのように取り外し可能に配置され、かつどのように組み付け/取り外されるかを概略的に示す図である。
図3B】本発明の例示的な実施形態に適用可能な、加熱装置が流体導管に対してどのように取り外し可能に配置され、かつどのように組み付け/取り外されるかを概略的に示す図である。
図4】本発明の例示的な実施形態に従う加熱装置の概略的な断面図である。
図5】本発明の例示的な実施形態に従う排気後処理装置の概略的な断面図である。
図6】本発明の例示的な実施形態に従う加熱装置のさらに他の概略的な断面図である。
図7】本発明の1つの例示的な実施形態に従う方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1を参照すると、本発明に開示される種類の排気後処理装置20、及び本発明に開示される種類の加熱装置38が有利である、ここでは大型トラック1として例示された車両1が示されている。しかしながら、排気後処理装置20,及び/又は加熱装置38は、バス、小型トラック、乗用車、船舶用途など、他のタイプの車両にも同様に実装することができる。図1の車両1は、ディーゼルエンジン10であるエンジン10を備えているが、車両1は、少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、電気機械(図示せず)を更に備えたハイブリッド車両であってもよい。ディーゼルエンジン10は、一般的には、燃料タンクに含まれたディーゼル燃料によって動作し、電気機械は、一般的に、例えば、バッテリや燃料電池など、少なくとも1つのエネルギー蓄積装置又は変換装置から供給される電力によって動作する。
【0080】
図1において、車両1は、少なくともディーゼルエンジン10から排出される排気を浄化する排気後処理装置20を更に備えている。排気後処理装置20は、図1の拡大図で最もよくわかるように、少なくとも、SCR触媒32と、SCR触媒32の上流に配置され、SCR触媒32にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタ34と、噴射された液体還元剤を加熱する加熱装置38と、を備えている。SCR触媒32は、触媒を用いて、NOxとも呼ばれる窒素酸化物を二価窒素N2、水及び/又は二酸化炭素に変換するように配置及び構成されている。還元剤、一般的には、無水アンモニア、アンモニア水、尿素、水性尿素又はディーゼル排気流体溶液は、インジェクタ34によってエンジンの排気に添加されて、SCR触媒32の触媒上に吸着される。
【0081】
図2には、図1の排気後処理装置20がより詳細に示されている。排気後処理装置20は、排気の流体通路26を提供する流体導管21を備えている。排気後処理装置20は、SCR触媒32への流体導管21の端部を例示する図2において、流体導管21の下流に配置されたSCR触媒32を更に備えている。また、SCR触媒32へとアンモニアを供給するために、排気後処理装置20は、SCR触媒32の上流に配置されて、上述したように、SCR触媒32へとアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタ34を備えている。還元剤は、例えば、尿素である。排気後処理装置20は、SCR触媒32の上流に配置されて、噴射された液体還元剤を加熱するように構成された加熱装置38を更に備えている。加熱装置38は、排気が通過して加熱される、ここではラティス又はグレーティング40として例示される電気発熱要素40と、第1のプレート42及び第2のプレート43の形態をとる2つの蒸発部材42,43と、を備えている。第1のプレート42及び第2のプレート43は、平坦なプレート42,43であり、かつ電気発熱要素40によって加熱されるように構成されている。図2において、第1のプレート42及び第2のプレート43は、電気発熱要素40と直接接触するように少なくとも部分的に配置され、これによって、電気発熱要素40によって伝導加熱することができる。
【0082】
図2から分かるように、第1のプレート42及び第2のプレート43は、流体導管21内に配置されて、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が、破線の矢印で示されるように、噴射時に第1のプレート42及び第2のプレート43と接触するようになっている。つまり、第1のプレート42及び第2のプレート43のそれぞれは、インジェクタ34に対面するように配置された還元剤衝突面を備えるか、又は液体還元剤が噴射されるインジェクタ43のオリフィスと少なくとも対面するように配置された還元剤衝突面を備えている。液体還元剤が第1のプレート42及び第2のプレート43と接触すると、液体還元剤が加熱されて蒸発し、排気によってSCR触媒32へと下流に更に運ばれる。
【0083】
図2から分かるように、第1のプレート42は、加熱装置38の長手方向Lに延びる第1の長手方向延設部を有し、第2のプレート43は、第1の長手方向延設部とは異なる、加熱装置38の長手方向Lに延びる第2の長手方向延設部を有している。つまり、第1のプレート42は、第2のプレート43と比較して短い。加熱装置38の長手方向Lは,組み付け状態において、流体導管21の長手方向と同じである。長手方向Lは、主たる流体の流れ方向に延びて、加熱装置38の半径方向を横切っている。
【0084】
また、図2において、第1のプレート42及び第2のプレート43は、インジェクタ34までの第2のプレート43の距離と比較して、第1のプレート42がインジェクタ34に対してより近づいて配置されるように、階段状に配置されている。その結果、噴射された液体還元剤の大部分は、比較的近くにある第1のプレート42と接触するようになり、第1のプレート42によってスリップされた液体還元剤が、その後、インジェクタ34から比較的に更に離れて配置された第2のプレート43と接触することができる。その結果、第1のプレート42及び第2のプレート43の合計還元剤衝突面が増加する。
【0085】
第1のプレート42及び第2のプレート43の一方のみが蒸発部材として使用されてもよく、又は2つのプレートより多くのプレートが使用されてもよいことに留意されたい。また、蒸発部材は、平坦なプレートとして形付けられる必要はなく、例えば、図6を参照して説明するように、他の形状及びサイズを有していてもよい。
【0086】
図2における加熱装置38は、流体導管21に対して取り外し可能に配置されている。従って、加熱装置38は、流体導管21から取り外されて、例えば、メンテナンスや構成部品の交換の対象となってもよい。これによって、流体導管21は、インジェクタ34の上流に配置された第1の導管フランジ21Aと、第1の導管フランジ21Aの上流に配置された第2の導管フランジ21Bと、を備えている。その結果、流体導管21は、2つの導管部、即ち、第1の導管部22又は下流導管部22と、第2の導管部23又は上流導管部23とに分割される。下流導管部22は、第1の導管フランジ21Aから、図2においてSCR触媒32まで下流に延び、上流導管部23は、第2の導管フランジ21Bから上流に延びている。
【0087】
同様に、加熱装置38は、第1の加熱装置フランジ39Aと、第1の加熱装置フランジ39Aとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジ39Bと、を備えている。加熱装置38は、例えば、ねじやクランプによって、第1の導管フランジ21Aが第1の加熱装置フランジ39Aに対して取り外し可能に連結されるとともに、例えば、ねじやクランプによって、第2の導管フランジ21Bが第2の加熱装置フランジ39Bに対して取り外し可能に連結されることで、流体導管21に対して取り外し可能に配置されている。従って、第1の加熱装置フランジ39Aから第1の導管フランジ21Aを切り離し、かつ第2の加熱装置フランジ39Bから第2の導管フランジ21Bを切り離すことによって、加熱装置38を取り外すことができるか、又は取り外し状態にすることができる。そのような状態は図3Aに見られ、そこでは、加熱装置38が流体導管21から分離され、かつ下流導管部23が上流導管部22から分離されている。そのような取り外し状態は、流体導管21への加熱装置38の取付中に、又は加熱装置38及び/又は流体導管のメンテナンス中に見られる。その後、加熱装置38は、図3Bに示すように、組み付け状態になる可能性がある。従って、加熱装置38が流体導管21に対して取り付けられた組み付け状態では、第1の導管フランジ21Aが第1の加熱装置フランジ39Aに対して全周に亘って連結され、かつ第2の導管フランジ21Bが第2の加熱装置フランジ39Bに対して全周に亘って連結されている。
【0088】
しかしながら、上流導管部23はなくてもよく、加熱装置38は、下流導管部22に対してのみ取り外し可能に配置されてもよいことに留意されたい。
【0089】
加熱装置38が上述したように流体導管21に対して組み付けられた図2に戻ると、加熱装置38は、第2の加熱装置フランジ39Bから第1の加熱装置フランジ39Aまで延びる加熱導管39を備えている。図2において、電気発熱要素40は、加熱導管39内に完全に配置されるなど、加熱導管39内に配置されている。即ち、電気発熱要素40は、加熱装置内に収容され、かつ加熱導管39内に完全に配置されている。従って、第1のプレート42及び第2のプレート43は、加熱装置38又は加熱導管39から第1の導管フランジ21Aを横切って流体導管21内へと延びるように配置されている。
【0090】
排気後処理装置20は、一般的に、以下のように動作する。ディーゼルエンジンからの(浄化対象の)排気が、上流導管部23を介して排気後処理装置20に入り込み、加熱装置38及び加熱導管39を通過し、その結果、排気が電気発熱要素38と出会って加熱される。図2に示すように、電気発熱要素38はラティス又はグレーティングであり、従って、排気がラティス又はグレーティングを通過するときに加熱されることとなる。電気発熱要素が異なる方法で配置されてもよいこと、例えば、電気発熱要素が加熱コイル又は加熱発泡体を含み、排気が加熱コイル又は加熱発泡体の加熱面を横切って流れることで加熱されてもよいことに留意されたい。加熱された排気は、流体通路26に沿って下流導管部22内へと入り、液体還元剤がインジェクタ34によって噴射される位置へと供給され続ける。従って、噴射された液体還元剤は、加熱された排気及び電気発熱要素40によって提供された熱と部分的に混合される。しかしながら、噴射された液体還元剤を蒸発させる過程を改善するために、液体還元剤が噴射されて第1のプレート42及び第2のプレート43と接触するように、インジェクタ及び蒸発部材(ここでは第1のプレート42及び第2のプレート43)が配置されている。第1のプレート42及び第2のプレート43が電気発熱要素40によって加熱されるので、十分な熱が液体還元剤を蒸発させるために提供され、場合によっては、液体還元剤がアンモニアへと加水分解される。その後、アンモニア及び排気が、NOxの触媒還元のためのSCR触媒32へと入り込み、その後、浄化された排気が、排気後処理装置20から排出されるか、又は下流のプロセスによって更に浄化される。
【0091】
図2の排気後処理装置20と少なくとも部分的に一致する排気後処理装置220を示す図5を参照すると、少なくともSCR触媒32及びインジェクタ34が同一又は類似である点で、同じ参照番号が使用されており、ここではその機能について再度説明しない。また、加熱装置238が、図2の加熱装置38とは異なるように配置されているが、その詳細については後述する。電気発熱要素40、並びに第1のプレート42及び第2のプレート43が同一又は類似である点で、同じ参照番号が使用されており、ここではその機能について再度説明しない。図2の実施形態と対応するように、排気後処理装置220は、排気の流体通路226を提供する流体導管221を備えている。SCR触媒32は、流体導管221の下流に配置されている。また、インジェクタ34及び加熱装置238は、SCR触媒32の上流に配置されている。
【0092】
加熱装置238は、原則的には図2の実施形態の加熱導管39に該当する加熱導管239を備えているが、図5の加熱導管239が導管屈曲部を備えているという相違点がある。換言すると、加熱導管239は、屈曲又は湾曲している。その結果、加熱導管239を通って流れる排気は、混合を促進させる対象となり、排気の加熱を改善することができる。図5の加熱装置238は、図2図3A及び図3Bの実施形態で説明したように、一般的に、第1の導管フランジ221A及び第2の導管フランジ221B、並びにこれらに対応する第1の加熱装置フランジ239A及び第2の加熱装置フランジ239Bによって、流体導管221に対して取り外し可能に配置されることに留意されたい。
【0093】
図4において、代替的な加熱装置138が示されている。加熱装置138は、例えば、図2の実施形態の流体導管21に配置することができ、原則として、図2の実施形態と同様に機能する。図4の実施形態において、加熱装置138は、加熱導管139と、これに対応する第1の加熱装置フランジ139A及び第2の加熱装置フランジ139Bと、を備えている。加熱装置138は、電気発熱要素140と、プレート142の形態をとる蒸発部材142と、を備えている。図4の電気発熱要素140は、加熱導管139から延びて、第1の加熱装置フランジ139Aから外方へと延びるように配置されている。図4の加熱装置138は、下方から見たものであり、従って、インジェクタ34と対面するように配置されたプレート142の還元剤衝突面は、観察者から離れた方向を向くように配置されている。つまり、電気発熱要素140は、プレート142の還元剤衝突面とは反対側の面上に配置され、従って、噴射された液体還元剤が、電気発熱要素140ではなくプレート142と接触するようになる。
【0094】
加熱装置338のさらに他の実施形態が図6に示されている。加熱装置338は、例えば、図2の実施形態の流体導管21に配置することができ、原則として、図2の実施形態と同様に機能する。図6の実施形態において、加熱装置338は、電気発熱要素(図示せず)と、加熱装置の加熱導管から外方に延びる、湾曲又は屈曲したプレート342の形態をとる蒸発部材342と、を備えている。湾曲したプレート342は、排気の旋回運動を引き起こすように構成されている。その結果、湾曲したプレート342を横切って流れる排気は、混合を促進する対象となり、排気の加熱を改善することができる。
【0095】
図2図5の実施形態に見られるように、加熱装置38,138,238は、使用中、噴射された液体還元剤が電気発熱要素40,140と接触しないように配置されている。例えば、図2及び図5に示すように、電気発熱要素40は、インジェクタ34の上流で加熱導管23,239の内部に完全に配置され、噴射された液体還元剤と電気発熱要素40との間に十分な距離をもたらす。他の例によれば、電気発熱要素140は、プレート142の形態をとる蒸発部材142によって、覆われるか保護されている。
【0096】
NOxエミッションを変換する排気後処理装置の流体導管に対して加熱装置を組み付け及び/又は取り外す方法は、ここでは、図7を参照して一般的に説明する。従って、排気後処理装置は、図2及び図5のものであってもよく、加熱装置は、図2図4~6のものであってもよい。このように、排気後処理装置は、排気の流体通路を提供する流体導管と、流体導管内又はその下流に配置されたSCR触媒と、SCR触媒の上流に配置されて、SCR触媒にアンモニアを供給する液体還元剤を噴射するように構成されたインジェクタと、を備えている。加熱装置は、一般的に、電気発熱要素と、電気発熱要素によって加熱されるように構成された少なくとも1つの蒸発部材と、を備え、流体導管に対して取り外し可能に連結されている。
【0097】
第1のステップS10では、加熱装置がSCR触媒の上流に配置されるように、流体導管に対して加熱装置が組み付けられるとともに、蒸発部材が流体導管内に配置され、噴射された液体還元剤の少なくとも一部が噴射時に蒸発部材と接触するようにする。
【0098】
図2の実施形態を参照して説明したように、流体導管は、インジェクタの上流に配置された第1の導管フランジを備えていてもよく、加熱装置は、第1の加熱装置フランジを備えていてもよい。従って、組み付けの第1のステップS10は、オプションとして、第1の加熱装置フランジに対して第1の導管フランジを全周に亘って連結する第1のサブステップS12を含んでいてもよい。また、早期に説明したように、流体導管は、第1の導管フランジの上流に配置された第2の導管フランジを更に備え、加熱装置は、第1の加熱装置フランジとは反対側に配置された第2の加熱装置フランジを更に備えていてもよい。従って、組み付けの第1のステップS10は、第1の加熱装置フランジに対して第1の導管フランジを全周に亘って連結する第1のサブステップS12と、第2の加熱装置フランジに対して第2の導管フランジを全周に亘って連結する第2のサブステップS14と、を含んでいてもよい。
【0099】
第1のステップS10、及びオプションのサブステップS12,S14のいずれかに続いて実行することができる第2のステップS20、又は第1のステップS10、及びオプションのサブステップS12,S14のいずれかの代わりに実行若しくはこれに先立って実行することができるステップ20において、加熱装置が流体導管から取り外される。第1のサブステップS12及び第2のサブステップS14に対応して、取り外しの第2のステップS20は、第1の加熱装置フランジから第1の導管フランジを切り離す第3のサブステップS22と、第2の加熱装置フランジから第2の導管フランジを切り離す第4のサブステップS24と、を含んでいてもよい。
【0100】
本発明は、上述及び図示の実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で、多くの変更及び修正がなし得ることを認識するであろう。例えば、電気発熱要素は、加熱装置のハウジングと一体化された電気接続を介して電力が供給されてもよい。例えば、電気発熱要素の動作電力は、300W~15000Wの間であってもよい。さらに、排気後処理装置を使用して、ディーゼルエンジンとは異なる他のエンジンの排気からNOxエミッションを変換するようにしてもよい。例えば、本排気後処理装置を使用して、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化加圧ガス)、DME(ジメチルエーテル)、及び/又はH2(水素)に基づく内燃機関の排気からNOxエミッションを変換するようにしてもよい。
【0101】
さらに、開示された実施形態の変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された本発明の概念を実行する当業者によって理解及び達成できる。特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞“a”又は“an”は複数を除外するものではない。特定の方法が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】