IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福島県の特許一覧

特開2022-151788対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法
<>
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図1
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図2
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図3
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図4
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図5
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図6
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図7
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図8
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図9
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図10
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図11
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図12
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図13
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図14
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図15
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図16
  • 特開-対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151788
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/02 20060101AFI20220929BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01B21/02 Z
G01S13/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046337
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021051236
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391041062
【氏名又は名称】福島県
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】濱尾 和秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勝吏
【テーマコード(参考)】
2F069
5J070
【Fターム(参考)】
2F069AA31
2F069AA66
2F069DD15
2F069DD19
2F069GG04
2F069GG07
2F069GG08
2F069HH09
2F069JJ04
2F069NN13
2F069QQ05
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC11
5J070AD15
5J070BD08
(57)【要約】
【課題】三次元深度推定画像に容易に絶対値寸法を値付けすることができる対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法を提供する。
【解決手段】単眼カメラ11により対象物を撮影し、得られた情報から三次元深度推定画像算出手段12により対象物の三次元深度推定画像を算出する。また、同じ対象物にレーダー13により電波を照射してその反射波を測定し、得られた情報に基づき三次元イメージング手段14により、対象物の三次元イメージング画像である占有グリッドマップを作成する。絶対値寸法値付け手段15により、得られた三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とに基づいて、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮影する単眼カメラと、
前記単眼カメラにより得られた情報から前記対象物の三次元深度推定画像を算出する三次元深度推定画像算出手段と、
前記対象物に電波を照射してその反射波を測定するレーダーと、
前記レーダーにより得られた情報に基づき前記対象物の三次元イメージング画像を作成する三次元イメージング手段と、
前記三次元深度推定画像算出手段により得られた前記三次元深度推定画像と、前記三次元イメージング手段により得られた前記三次元イメージング画像とに基づいて、前記三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする絶対値寸法値付け手段と
を備えたことを特徴とする対象物寸法値付け装置。
【請求項2】
前記絶対値寸法値付け手段は、
前記三次元深度推定画像と前記三次元イメージング画像とについて類似度を計算し、位置合わせをする位置合わせ手段と、
前記位置合わせ手段により位置合わせをした前記三次元深度推定画像に前記三次元イメージング画像に基づいて絶対値寸法を値付けする値付け手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項3】
前記位置合わせ手段は、前記三次元深度推定画像及び前記三次元イメージング画像について、それぞれ、Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像の稜線、又は、所定位置のX-Z平面画像の稜線を比較形状として算出し、前記各比較形状の類似度を計算して位置合わせをすることを特徴とする請求項2記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項4】
前記三次元イメージング手段は、前記三次元イメージング画像として、前記レーダーにより得られた情報に基づき、複数のボクセルに分割した三次元空間において、前記対象物が存在するボクセルを占有グリッドとして表示した占有グリッドマップを作成する占有グリッドマップ作成手段を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項5】
前記絶対値寸法値付け手段は、前記三次元深度推定画像において、前記三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について、前記2点の離散点の寸法差を基に、前記三次元深度推定画像におけるZ方向の画素位置に値付けする補足手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項6】
前記対象物からの音を検出する複数のマイクロフォンを一体化したマイクロフォンシステムと、
前記マイクロフォンシステムにより得られた情報から音源強度レベルを算出する音源強度レベル算出手段と、
前記音源強度レベル算出手段により得られた前記音源強度レベルと、前記三次元深度推定画像算出手段により得られた前記三次元深度推定画像と、前記三次元イメージング手段により得られた前記三次元イメージング画像とに基づいて、求めたい位置の音源の音響パワーレベルを算出する音響パワーレベル算出手段と
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項7】
長手形状を有し、移動対象物として前記単眼カメラ及び前記レーダーのうちの少なくとも一方を移動させるための移動部材と、
前記移動部材を支持すると共に、前記移動部材の移動を案内するための貫通されたV字状又は湾曲形状の案内孔が設けられた支持部材と、
前記支持部材に対して回動可能に配設され、前記移動部材の長手方向の基端側を長手方向に移動可能に保持すると共に、前記移動部材の長手方向に延在された貫通孔を有し、前記支持部材に対して回動することにより前記移動部材の延在方向を変化させる回動部材と、
前記移動部材に対して長手方向の基端側に配設され、前記移動部材から前記貫通孔及び前記案内孔を貫通して、前記支持部材の前記移動部材と反対側に突出された棒状の案内棒と、
前記移動部材の長手方向の先端側に回動可能に配設され、前記移動対象物を載置すると共に、直線状の切り込みを有し、この切込みに沿って移動可能な突起部が設けられた載置台と、
前記突起部と前記案内棒とを連結する連結部材とを備え、
前記案内孔は、前記案内棒を中央部に位置させたときに、両端部に比べて中央部が前記移動部材の長手方向の基端側に位置している
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の対象物寸法値付け装置。
【請求項8】
単眼カメラにより対象物を撮影して得られた情報から前記対象物の三次元深度推定画像を算出する三次元深度推定画像算出手順と、
前記対象物にレーダーにより電波を照射してその反射波を測定し、得られた情報に基づき前記対象物の三次元イメージング画像を作成する三次元イメージング手順と、
前記三次元深度推定画像算出手順により得られた前記三次元深度推定画像と、前記三次元イメージング手順により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、前記三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする絶対値寸法値付け手順と
を含むことを特徴とする対象物寸法値付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単眼カメラにより得られた情報から算出した三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、プラント設備点検、ビルメンテナンス、橋梁の支承点検、及び、天井の雨漏り点検等、狭隘部における点検作業が多数行われている。狭隘部においては、例えば、直接的な目視による点検の他、ファイバースコープやビデオスコープが用いられている。二眼カメラのビデオスコープを用いれば、三次元画像を得ることができるが、対象物に4cm程度まで近づかないと画像を得ることができないので、ある程度離れた位置から対象物の全体を見たい場合には適していない。
【0003】
一方、単眼カメラを用いれば、対象物から1m程度離れた位置からでも画像を得ることができる。また、単眼カメラにより得られた画像についても、例えば、Visual-SLAM、又は、CNNs、FCNs等のAI(人工知能)を用いることにより、対象物の三次元深度推定画像を得ることができる。しかし、単眼カメラで得られた三次元深度推定画像は、相対値的な寸法は持つものの絶対的な寸法は分からないという問題があった。よって、三次元深度推定画像に絶対値寸法値付けする必要があった。
【0004】
なお、特許文献1には、入力画像について、予め学習された、深度を推定するための深度推定モデルに基づいて入力画像の各画素の深度を推定し、入力画像中の、実空間上の寸法が既知な部分の寸法情報の入力を受け付け、推定された、寸法情報の部分に対応する画素の各々の深度と、寸法情報とを用いて、推定された入力画像の各画素の深度を修正することが記載されている。しかし、特許文献1では、実空間上の寸法が既知な部分が必要であるので、例えば、ブロックゲージなどを置いて一緒に写し、校正する必要があり、手間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-132477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、三次元深度推定画像に容易に絶対値寸法を値付けすることができる対象物寸法値付け装置及び対象物寸法値付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象物寸法値付け装置は、対象物を撮影する単眼カメラと、単眼カメラにより得られた情報から対象物の三次元深度推定画像を算出する三次元深度推定画像算出手段と、対象物に電波を照射してその反射波を測定するレーダーと、レーダーにより得られた情報に基づき対象物の三次元イメージング画像を作成する三次元イメージング手段と、三次元深度推定画像算出手段により得られた三次元深度推定画像と、三次元イメージング手段により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする絶対値寸法値付け手段とを備えたものである。
【0008】
本発明の対象物寸法値付け方法は、単眼カメラにより対象物を撮影して得られた情報から対象物の三次元深度推定画像を算出する三次元深度推定画像算出手順と、対象物にレーダーにより電波を照射してその反射波を測定し、得られた情報に基づき対象物の三次元イメージング画像を作成する三次元イメージング手順と、三次元深度推定画像算出手順により得られた三次元深度推定画像と、三次元イメージング手順により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする絶対値寸法値付け手順とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三次元イメージング画像により三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けするようにしたので、実空間上の寸法を示すブロックゲージなどを置く必要がなく、画像処理等により容易に値付けすることができる。
【0010】
また、三次元深度推定画像及び三次元イメージング画像について、それぞれ、Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像の稜線、又は、所定位置のX-Z平面画像の稜線を比較形状として算出し、各比較形状の類似度を計算して位置合わせをするようにすれば、容易に位置合わせをすることができ、高い精度で値付けすることができる。
【0011】
更に、三次元イメージング画像として、対象物の占有グリッドマップを作成するようにすれば、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像との類似度を容易に算出することができる。
【0012】
加えて、三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について、2点の離散点の寸法差を基に、三次元深度推定画像におけるZ方向の画素位置に値付けするようにすれば、レーダーから得られる距離の分解能を超える絶対値寸法を正確に値付けすることができる。
【0013】
更にまた、マイクロフォンシステムにより得られた情報から音源強度レベルを算出し、得られた音源強度レベルと、三次元深度推定画像算出手段により得られた三次元深度推定画像、及び、三次元イメージング手段により得られた三次元イメージング画像とを組み合わせることにより、音源の位置を特定し、音源までの距離を算出することができるので、音響パワーレベルを算出することができる。よって、得られた音響パワーレベルにより、測定位置に依存しない発生音の指標を得ることができる。
【0014】
加えてまた、移動対象物を移動させるための移動部材と、移動部材を支持すると共に、移動部材の移動を案内するための貫通されたV字状又は湾曲形状の案内孔が設けられた支持部材と、支持部材に対して回動可能に配設され、移動部材を長手方向に移動可能に保持すると共に、移動部材の長手方向に延在された貫通孔をする回動部材と、移動部材に対して配設され、貫通孔及び案内孔を貫通する案内棒と、移動部材に対して回動可能に配設され、移動対象物を載置すると共に、直線状の切込みに沿って移動可能な突起部が設けられた載置台と、突起部と案内棒とを連結する連結部材とを備え、案内孔は、案内棒を中央部に位置させたときに、両端部に比べて中央部が移動部材の長手方向の基端側に位置するようにしたので、案内棒を案内孔に沿って移動させることにより、回動部材が回動し、それに伴い、移動部材が回動しつつ長手方向の先端側に移動し、移動対象物を移動させることができる。また、案内棒と連結された突起部が切込みに沿って移動し、載置台が回動して、移動対象物の向きが調整される。これにより、移動対象物を平行移動させることができ、容易に値付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る対象物寸法値付け装置の機能的な構成を表すブロック図である。
図2図1に示した三次元深度推定画像算出手段により算出した対象物の三次元深度推定画像を概念的に表した図である。
図3図1に示したレーダーから対象物に電波を照射した状態を概念的に表した図である。
図4図1に示した三次元イメージング手段において用いるレーダーからの情報の範囲を表す図である。
図5図1に示したレーダーから得られた情報による占有グリッドを説明する図である。
図6図1に示した三次元イメージング手段により作成した占有グリッドマップを表す図である。
図7図1に示したずれ補正手段における縦方向に移動させた場合のずれ補正を説明する図である。
図8図1に示したずれ補正手段における横方向に移動させた場合のずれ補正を説明する図である。
図9図1に示した位置合わせ手段において三次元深度推定画像から算出するY軸方向の上方から見た平面画像の稜線を説明する図である。
図10図1に示した位置合わせ手段において三次元イメージング画像から算出するY軸方向の上方から見た平面画像の稜線を説明する図である。
図11図1に示した補足手段における離散点の間に存在する値付けされていない画素に対する値付けを説明する図である。
図12】三次元深度推定画像算出手段、三次元イメージング手段、及び、絶対値寸法値付け手段のハードウェア構成の一例を表す図である。
図13】対象物寸法値付け方法における手順を表す流れ図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係る対象物寸法値付け装置の機能的な構成を表すブロック図である。
図15図14に示した音源強度レベル算出手段により算出した音源強度レベルを三次元深度推定画像の手前に重ねて概念的に表した図である。
図16】本発明の第3の実施の形態に係る対象物寸法値付け装置の平行移動治具の構成を表す図である。
図17図16に示した平行移動治具の一部を分解して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る対象物寸法値付け装置10の機能的な構成を表すブロック図である。この対象物寸法値付け装置10は、対象物Mを撮影する単眼カメラ11と、単眼カメラ11により得られた情報から対象物Mの三次元深度推定画像を算出する三次元深度推定画像算出手段12と、単眼カメラ11により撮影した同一の対象物Mに電波を照射してその反射波を測定するレーダー13と、レーダー13により得られた情報に基づき対象物Mの三次元イメージング画像を作成する三次元イメージング手段14を備えている。
【0018】
三次元深度推定画像算出手段12は、例えば、コンピュータにより構成されており、プログラムを実行することにより、単眼カメラ11により得られた情報、例えば、単眼カメラにより撮影された画像から、対象物Mの三次元深度推定画像を算出するように構成されている。対象物Mの三次元深度推定画像は、公知の深度推定技術を用いて算出することができる。例えば、Visual-SLAM(Simultaneous Localization and Mapping;自己位置推定)、又は、CNNs(Convolutional Neural Networks;畳み込みニューラルネットワーク)、FCNs(Fully Convolutional Networks;完全畳み込みニューラルネットワーク)等のAI(人工知能)を用いることにより算出することができる。
【0019】
図2に、三次元深度推定画像算出手段12により算出した対象物Mの三次元深度推定画像を概念的に表した一例を示す。なお、図2は、対象物Mが背面壁Wに設けられている画像であり、対象物Mにはグレーを付して表している。得られた三次元深度推定画像は、絶対値寸法を持たない相対値による画像となる。
【0020】
レーダー13は、電波を対象物Mに向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物Mの位置情報(距離や角度)、及び、対象物Mとの相対速度を検出するものである。レーダー13としては、波長が24GHz~140GHz帯のミリ波を用いるミリ波レーダーが好ましい。帯域幅が広いほど距離分解能が高い計測が可能であるからである。レーダー13は、対象物Mに対し、単眼カメラ11と同一方向に配置することが好ましい。後述する絶対値寸法値付け手段15において、単眼カメラ11により得られた情報から算出した三次元深度推定画像と、レーダー13により得られた情報から作成した三次元イメージング画像との位置合わせを容易にすることができるからである。なお、レーダー13を単眼カメラ11と同一方向に配置せず、単眼カメラ11からの三次元推定画像と、レーダー13からの三次元イメージング画像をそれぞれ個別に得ても、両画像の位置合わせをすることは可能である。
【0021】
図3に、レーダー13から対象物Mに電波を照射した状態を概念的に示す。なお、図3では、対象物Mにグレーを付して表している。レーダー13からの電波は、扇状に広がって対象物Mに照射され、照射部の形状は楕円形となる。すなわち、電波は、直交する2方向において、一方向の広がりが広く、他方向に広がりが狭い扁平円錐状に広がる。図3は水平偏波を記している。なお、照射場所や対象物Mに応じて、垂直偏波としてもよい。
【0022】
レーダー13は、例えば、方位方向の距離が得られる二次元レーダーを用い、縦方向及び横方向に移動させながら、又は、中心軸を基に上下方向及び左右方向に回転させながら(振りながら)検出することが好ましい。移動または回転させることにより、レーダー13にアンテナ数の少ないものを用いることができるので、小型化及び安価とすることができるからである。レーダー13の移動または回転は、機械的に行うようにしてもよく、手動で行うようにしてもよい。手動にすれば、装置を小型化でき、狭隘部に適用することができるので好ましい。また、手で移動させるようにすれば、回転では影となって捉えられない部分も計測することができるので好ましい。なお、例えば、レーダー13及び単眼カメラ11を支持棒(図示せず)に固定し、支持棒を縦方向及び横方向にスライドさせる機構を設けるようにすれば、機械的に移動させても狭隘部に適用することができるので好ましい。
【0023】
三次元イメージング手段14は、例えば、コンピュータにより構成されており、プログラムを実行することにより、レーダー13により得られた情報に基づき対象物Mの三次元イメージング画像を作成するように構成されている。三次元イメージング手段14は、例えば、レーダー13により得られた情報のうち中心から0.25radより狭い範囲(すなわち中心の0.5radの範囲)の情報を用いることが好ましい。図4に、三次元イメージング手段14において用いるレーダー13からの情報の範囲を示す。電波はレーダー13から扇状に広がるので極座標となり、直交座標への変換が必要であるが、中心から0.25radより狭い範囲であれば、座標変換せずに直交座標の値とみなして処理することができるからである。なお、電波の広がりが広い方向においては、120°の範囲の情報が得られるので、中心から0.25radより狭い範囲の情報を抽出して用いる。
【0024】
また、三次元イメージング手段14は、例えば、三次元イメージング画像として、レーダー13により得られた情報に基づき占有グリッドマップを作成する占有グリッドマップ作成手段14aを有していることが好ましい。占有グリッドマップは、三次元空間を直方体又は立方体の複数のボクセルに分割し、対象物が存在するボクセルを占有グリッドNとして表示したものである。レーダー13から得られる情報は、例えば、図5に示したように、距離分解能、方位分解能、及び、仰俯角の幅(アンテナ半値角)を1つの頂点から出る3辺とする直方体又は立方体の集合からなる占有グリッドNと考えることができる。よって、レーダー13を縦方向及び横方向に移動させ、又は、中心軸を基に上下方向及び左右方向に回転させて、占有グリッドNをつないでいくことにより、三次元の占有グリッドマップを得ることができる。図6に、三次元イメージング手段14により作成した占有グリッドマップの一例を示す。図6(A)は、グリッド線と共に占有グリッドNを表したものであり、占有グリッドNにはグレーを付して表している。図6(B)は、占有グリッドNのみを取り出して表したものである。
【0025】
なお、レーダー13を手で移動させる場合には、縦方向及び横方向にずれ(ゆらぎ)が生じてしまうので、ずれを補正するずれ補正手段14bを有していることが好ましい。ずれ補正手段14bは、例えば、次のようにしてずれ補正を行うように構成することができる。
【0026】
図7は、縦方向にレーダー13を移動させた時のずれ補正を説明するものである。図7において、一点鎖線はY軸の仮想垂直線であり、黒星印はレーダー13のスキャタポイントである。図7では、上から下に向かい縦方向にレーター13を移動させた場合を示している。前後方向(すなわち距離方向)におけるずれは、例えば、同じ物標までの距離がレーダー13の移動後に変わった場合、t-1(秒)と同じ物標が同じ距離となるように全体を補正する。また、横方向(すなわち方位方向)のずれは、例えば、同じ物標の方位方向の位置がレーダー13の移動後に変わった場合、t-1(秒)と同じ物標が同じ方位位置となるように全体を補正する。なお、ずれ補正において、同じ物標というのは、t-1(秒)とほぼ同じ距離、方位方向で得られる物標とする。tは現サンブリング(計測)時である。複数の物標は、距離に応じたずれ補正を行う。
【0027】
また、レーダー13のエレベーション方向の分解能(半値幅)(これを参照領域と定義する)も考慮することが好ましい。レーダー13のエレベーション分解能により、レーダー13を半値幅以上動かさないと新たな点が得られない。手動の場合、ゆらぎにより、距離座標はY軸の直線上(仮想垂直線上と言う)に距離値が得られないことが想定されるが、遠い物標は方位角が変わりにくいので仮想垂直線からのずれは少なく、近い物標は方位角が変わりやすいので仮想垂直線からのずれが大きくなる。よって、遠い物標と近い物標で、仮想垂直線からのそれぞれの位置ずれの程度値からY軸方向の補正行う。
【0028】
図8は、横方向にレーダー13を移動させた時のずれ補正を説明するものである。図8において、一点鎖線はX軸の仮想水平線であり、黒星印はレーダー13のスキャタポイントである。図8では、紙面に向かい右から左に横方向にレーター13を移動させた場合を示している。横方向の移動においては、公知のマッチング技術、例えば、ICP法、NDT(Normal Distribution Transform)法、尤度関数、コサイン類似度、又は、ポーズグラフ最適化(PGO)を用いて、占有グリッドが一致するように補正してつないでいくことが好ましい。これにより、同じ物標と思われる部分(参照領域又は計測窓で相関が強い部分)が連結される。計測窓は、公知のマッチング技術でマッチング対象とするセル範囲の事を言う。その際、距離が異なる場合には、t-1(秒)の距離に全体を合わせることが好ましい。なお、縦移動時と同様に、横方向移動距離は、ドップラー量から得ることができる。
【0029】
また、横方向に移動させた時のずれ補正は、他の方法で行うように構成してもよい。例えば、Visual-SLAM等のカメラ姿勢推定と同様の考え方で、レーダー13が必ずしも平行移動できていなくても、対象物は静止する同一剛体であるので、反射強度によりレーダー13の位置と姿勢を推定(エゴモーション、自己位置推定)するようにしてもよい。また、ポーズグラフ最適化(PGO)により、単眼カメラ11を水平、垂直、前後に移動させ、その時の単眼カメラ11座標を基に、レーダー13の座標を計算するようにしてもよい。
【0030】
対象物寸法値付け装置10は、更に、三次元深度推定画像算出手段12により得られた三次元深度推定画像と、三次元イメージング手段14により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする絶対値寸法値付け手段15を備えている。絶対値寸法値付け手段15は、例えば、コンピュータにより構成されており、プログラムを実行することにより、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けするように構成されている。
【0031】
絶対値寸法値付け手段15は、例えば、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とについて類似度を計算し、位置合わせをする位置合わせ手段15aと、位置合わせ手段15aにより位置合わせをした三次元深度推定画像に三次元イメージング画像に基づいて絶対値寸法を値付けする値付け手段15bとを有していることが好ましい。
【0032】
位置合わせ手段15aは、例えば、三次元深度推定画像及び三次元イメージング画像について、それぞれ、Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像の稜線、又は、所定位置のX-Z平面画像の稜線を比較形状として算出し、各比較形状の類似度を計算して位置合わせをするように構成されていることが好ましい。特徴部分を比較形状として抽出することにより、容易に類似度を計算することができるからである。Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像というのは、Y軸方向の上方あるいは下方から見たいわゆる平面図の平面画像を意味し、所定位置のX-Z平面画像というのは、Y軸の所定位置における断面の平面画像を意味している。
【0033】
図9に、三次元深度推定画像についてY軸方向の上方から見た平面画像を示す。図9では、対象物Mの部分に梨地を付して表し、稜線を太破線で表している。図10に、三次元イメージング画像についてY軸方向の上方から見た平面画像を示す。図10(A)は、グリッド線と共に占有グリッドNを表したものであり、占有グリッドNにはグレーを付して表している。図10(B)は、占有グリッドNを取り出して稜線と共に表したものであり、占有グリッドNの部分には梨地を付して表し、稜線は太破線で表している。
【0034】
三次元深度推定画像における稜線は、例えば、単眼カメラ11の側において対象物Mの境界線をX軸方向に順に結んだものである。例えば、複数の対象物Mが存在し、単眼カメラ11から見て各対象物Mが重なっている場合には各対象物を結合し1つとして稜線を引くことが好ましく、複数の対象物Mが離れて位置する場合には各対象物Mの間にそれらを結ぶ線を引いてもよく、また、結ぶ線を引かなくてもよい。なお、図9では、離れて位置する各対象物Mの間に線を引いた場合を示している。三次元イメージング画像における稜線は、例えば、レーダー13の側において各占有グリッドNの境界線をX軸方向に順に結んだものである。例えば、複数の占有グリッドNが存在し、各占有グリッドNが隣接して存在している場合には各占有グリッドNを結合し1つとして稜線を引くことが好ましく、レーダー13から見て各占有グリッドNがZ方向に間隔を開けて重なっている場合には最もレーダー13側の占有グリッドNに稜線を引き、複数の占有グリッドNがX方向において隣接しZ方向に離れて存在する場合には各占有グリッドNの間にそれらを結ぶ線を引いてもよく、また、結ぶ線を引かなくてもよい。なお、図10では、Z方向に離れて存在する各占有グリッドNの間に線を引いた場合を示している。
【0035】
位置合わせ手段15aは、例えば、図9及び図10に示した三次元深度推定画像及び三次元イメージング画像の各稜線について、類似度を計算し、位置合わせを行うように構成されている。類似度は、例えば、公知のマッチング技術、例えば、ICP法、NDT法、尤度関数、コサイン類似度、又は、ポーズグラフ最適化(PGO)を用いて算出することができる。位置合わせ手段15aでは、例えば、類似度が所定値よりも高い場合に一致していると判断し、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とを位置合わせするように構成されている。
【0036】
値付け手段15bは、例えば、位置合わせにより三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とが一致している箇所について、三次元深度推定画像に、三次元イメージング画像の絶対値寸法を値付けするように構成されている。
【0037】
絶対値寸法値付け手段15は、また、例えば、三次元深度推定画像において、三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について値付けする補足手段15cを有していることが好ましい。三次元深度推定画像に対する値付けは、レーダー13の距離分解能以上は得ることができず、三次元イメージング画像により値付けられた点は、レーダー13の距離分解能による離散点となる。そのため、値付けられた2点の離散点の間には、値付けられていないZ値の画素が存在している場合があるからである。
【0038】
図11は、補足手段15cにおける離散点の間に存在する値付けされていない画素に対する値付けを説明するものである。図11では、傾斜面を有する対象物Mを示している。レーダー13は、傾斜面においては反射が得にくく測距できない場合が多いので、占有グリッドマップにおいても傾斜面の部分は空となる。すなわち、図11(A)において、梨地で示した面M1,M2は占有グリッドNが得られるので距離を得られるが、傾斜面の部分は占有グリッドNが得られず、距離が得られない。値付けられていないZ値の画素に対する値付けは、三次元イメージング画像に基づき値付けられた1点の値に基づいて算出することも可能であるが、三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の寸法差を基に算出することが好ましい。カメラレンズの歪などからZ方向の画素値は線形ではない場合が想定されるので、2点間の距離差を用いることにより正確に値付けをすることができるからである。すなわち、補足手段15cは、距離が得られた2点の離散点の寸法差を基に、2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について、三次元深度推定画像におけるZ方向の画素位置に値付けするように構成されることが好ましい。
【0039】
図11を用いて更に具体的に説明する。例えば、レーダー13により得られた梨地で示した面M1の距離(Z値)が80cm、梨地で示した面M2の距離(Z値)が100cmであるとすると、2点の離散点の寸法差は20cmであり、測距できなかった傾斜面の部分については、図11(B)において矢印で示したように、三次元深度推定画像から面M1、面M2との位置関係に関する相対値が得られるので、その相対値に応じてZ方向の画素位置を値付けすることができる。
【0040】
図12は、三次元深度推定画像算出手段12、三次元イメージング手段14、及び、絶対値寸法値付け手段15のハードウェア構成の一例を表すものである。三次元深度推定画像算出手段12、三次元イメージング手段14、及び、絶対値寸法値付け手段15は、例えば、CPU(Center Processing Unit)16Aと、ROM(Read Only Memory)16Bと、RAM(Random Access Memory)16Cと、HDD(ハードディスクドライブ)16Dと、操作インターフェース(操作I/F)16Eとを有している。CPU16Aは、ROM16Bに記録されている各種プログラム、又は、HDD16DからRAM16Cにロードされた各種プログラムに従って各種の処理を実行するものである。RAM16Cには、CPU16Aが各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶されている。HDD16Dには、各種データが記憶されている。
【0041】
この対象物寸法値付け装置10は、例えば、次のようにして対象物Mの寸法を値付けることができる。図13は、対象物Mの寸法値付け手順を表す流れ図である。
【0042】
まず、例えば、単眼カメラ11により対象物Mを撮影し、三次元深度推定画像算出手段12により、単眼カメラ11で得られた情報から対象物Mの三次元深度推定画像を算出する(ステップS110;三次元深度推定画像算出手順)。
【0043】
また、例えば、同じ対象物Mにレーダー13により電波を照射して反射波を測定し、得られた情報から、三次元イメージング手段14により、三次元イメージング画像を作成する(ステップS120;三次元イメージング手順)。その際、レーダー13は、縦方向及び横方向に移動させながら、又は、中心軸を基に上下方向及び左右方向に回転させながら測定することが好ましい。三次元イメージング画像の作成では、例えば、占有グリッドマップ作成手段14aにより、三次元イメージング画像として、占有グリッドマップを作成することが好ましい。また、例えば、レーダー13を手で移動させる場合には、ずれ補正手段14bにより、ずれを補正することが好ましい。
【0044】
次いで、例えば、絶対値寸法値付け手段15により、三次元深度推定画像算出手順(ステップS110)により得られた三次元深度推定画像と、三次元イメージング手順(ステップS120)により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする(ステップS130;絶対値寸法値付け手順)。
【0045】
絶対値寸法値付け手順(ステップS130)では、まず、例えば、位置合わせ手段15aにより、三次元深度推定画像及び三次元イメージング画像について、それぞれ、Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像の稜線、又は、所定位置のX-Z平面画像の稜線を比較形状として算出する(ステップS131;比較形状算出手順)。次いで、例えば、位置合わせ手段15aにより、算出した比較形状について類似度を計算し、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とを位置合わせする(ステップS132;位置合わせ手順)。
【0046】
続いて、例えば、値付け手順15bにより、三次元深度推定画像に位置合わせした三次元イメージング画像に基づいて絶対値寸法を値付けする(ステップS133;値付け手順)。次いで、例えば、補足手段15cにより、三次元深度推定画像において、三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について値付けすることが好ましい(ステップS134;補足手順)。具体的には、例えば、距離が得られた2点の離散点の寸法差を基に、2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について、三次元深度推定画像におけるZ方向の画素位置に値付けする。
【0047】
このように本実施の形態によれば、三次元イメージング画像により三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けするようにしたので、実空間上の寸法を示すブロックゲージなどを置く必要がなく、画像処理等により容易に値付けすることができる。
【0048】
また、三次元深度推定画像及び三次元イメージング画像について、それぞれ、Y軸方向の上方あるいは下方から見た平面画像の稜線、又は、所定位置のX-Z平面画像の稜線を比較形状として算出し、各比較形状の類似度を計算して位置合わせをするようにすれば、容易に位置合わせをすることができ、高い精度で値付けすることができる。
【0049】
更に、三次元イメージング画像として、対象物Mの占有グリッドマップを作成するようにすれば、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像との類似度を容易に算出することができる。
【0050】
加えて、三次元イメージング画像に基づき値付けられた2点の離散点の間に存在する値付けされていない画素について、2点の離散点の寸法差を基に、三次元深度推定画像におけるZ方向の画素位置に値付けするようにすれば、レーダー13から得られる距離の分解能を超える絶対値寸法を正確に値付けすることができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図14は、本発明の第2の実施の形態に係る対象物寸法値付け装置20の機能的な構成を表すブロック図である。この対象物寸法値付け装置20は、第1の実施の形態において説明した各構成要素に加えて、対象物Mからの音を検出するマイクロフォンシステム21と、マイクロフォンシステム21により得られた情報から音源強度レベルを算出する音源強度レベル算出手段22と、音源強度レベル算出手段22により得られた音源強度レベルに基づいて、求めたい位置の音源の音響パワーレベルを算出する音響パワーレベル算出手段23とを備えたことを除き、第1の実施の形態の対象物寸法値付け装置10と同様の構成を有している。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
マイクロフォンシステム21は、対象物Mからの音を検出する複数のマイクロフォンを一体化したものである。複数のマイクロフォンは、例えば、球状、平面状、半球面状、又は、螺旋状等の任意の形状に配置されて一体化されている。マイクロフォンシステム21は、例えば、単眼カメラ11又はレーダー13と一体化して配置することが好ましい。
【0053】
例えば、マイクロフォンシステム21と単眼カメラ11とを一体化すれば、三次元深度推定画像を算出するために単眼カメラ11を移動させて対象物Mを撮影する際に、任意の位置においてマイクロフォンシステム21により受音した音を用いて音源強度レベルを算出することができ、その算出位置のカメラ座標を記憶することにより、三次元深度推定画像を表示させた際に、音源強度レベルを当該座標位置に重畳表示させることができるからである。カメラ座標は、例えば、単眼カメラ11の姿勢推定処理をするSVO(Fast Semi-Direct Monocular Visual Odometry)等の既存手法を用いて算出することができる。
【0054】
また、例えば、マイクロフォンシステム21とレーダー13とを一体化すれば、三次元イメージング画像を作成する際に、レーダー13の占有グリッドマップ位置で音源強度レベルを算出し、レーダー座標を音源強度レベル算出位置として記憶することにより、占有グリッドマップを表示させた際に、音源強度レベルを当該座標位置に重畳表示させることができるからである。
【0055】
音源強度レベル算出手段22は、マイクロフォンシステム21を移動させないで音の方位・仰角方向の音源強度レベルを計算するものである。音源強度レベルとは、複数のマイクロフォンで受音した音を処理して算出される複数マイクロフォンの合成音圧レベルの強度分布である。図15に、音源強度レベル算出手段22により算出した音源強度レベルを概念的に表した一例を示す。図15は、音源強度レベルを三次元深度推定画像算出手段12により算出した対象物Mの三次元深度推定画像の手前に重ねて表したものである。図15において、音源強度レベルは強度に応じて、強度が強くなるほど細かい梨地を付して示し、三次元深度推定画像は対象物Mにグレーを付して示している。なお、図15は、マイクロフォンシステム21と単眼カメラ11とを一体化し、音源強度レベルを算出したカメラ座標位置に音源強度レベルを重畳表示させた場合である。なお、音源強度レベルは、複数のカメラ位置、又は、レーダー13の複数の占有グリッドマップ位置で算出するようにしてもよい。
【0056】
音響パワーレベル算出手段23は、例えば、コンピュータにより構成されており、プログラムを実行することにより、音源強度レベル算出手段22により得られた音源強度レベルと、三次元深度推定画像算出手段12により得られた三次元深度推定画像と、三次元イメージング手段14により得られた三次元イメージング画像とに基づいて、求めたい位置の音源の音響パワーレベルを算出するように構成されている。具体的には、例えば、算出した音源強度レベルと、三次元深度推定画像、又は、三次元イメージング画像とを重ね合わせることにより、絶対値寸法値付け手段15により絶対値寸法を値付けした三次元深度推定画像における音源の位置を特定し、マイクロフォンシステム21と音源との距離を算出して、求めた音源までの距離とその音源の音圧レベルとから音響学理論に基づき音響パワーレベルを算出するように構成することができる。
【0057】
これにより、対象物Mから得られた音の音響パワーレベルが取得でき、測定位置に依存しない発生音の指標が得られることになり、騒音等の比較評価に用いることができるようになる。また、得られた音が異常音であるか否かの判別には、例えば、マハラノビス・タグチ法やVariational Autoencoder(VAE)を用いることができる。なお、音響パワーレベル算出手段23では、音源を点音源、線音源、面音源として算出する場合に、線音源、又は、面音源については、絶対値寸法値付け手段15から辺の長さを算出するようにしてもよい。
【0058】
この対象物寸法値付け装置20では、第1の実施の形態と同様にして対象物Mの寸法を値付けることができると共に、対象物Mから発生している音源の音響パワーレベルを算出することができる。具体的には、例えば、まず、マイクロフォンシステム21により対象物Mからの音を検出し、音源強度レベル算出手段22により、マイクロフォンシステム21で得られた情報から音源強度レベルを算出する。次いで、例えば、音響パワーレベル算出手段23により、音源強度レベルと、三次元深度推定画像、又は、三次元イメージング画像とを重ね合わせて、絶対値寸法を値付けした三次元深度推定画像における音源の位置を特定し、マイクロフォンシステム21と音源との距離を算出して、求めた音源までの距離とその音源の音圧レベルとから音響パワーレベルを算出する。
【0059】
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態において説明した効果に加えて、音源の音響パワーレベルを算出することができるので、得られた音響パワーレベルにより、測定位置に依存しない発生音の指標を得ることができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
本実施の形態に係る対象物寸法値付け装置は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態において説明した各構成要素に加えて、単眼カメラ11及びレーダー13のうちの少なくとも一方を平行移動させる平行移動治具30を備えたことを除き、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同様の構成を有している。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図16は、平行移動治具30の構成を表すものである。図17は、平行移動治具30の一部を分解して表すものである。平行移動治具30は、単眼カメラ11及びレーダー13のうちの少なくとも一方を移動対象物として平行移動させるためのものである。平行移動治具30を用いれば、容易に単眼カメラ11及びレーダー13を移動させることができ、容易に値付け作業を行うことができる。なお、単眼カメラ11又はレーダー13には、第2の実施の形態で説明したように、マイクロフォンシステム21が一体化されていてもよい。
【0062】
平行移動治具30は、移動対象物を移動させるための移動部材31と、移動部材31を支持する支持部材32と、支持部材32に対して回動可能に配設され、移動部材31を移動可能に保持する回動部材33と、移動部材31に対して配設され、移動部材31の移動を案内する棒状の案内棒34と、移動部材31に対して回動可能に配設され、移動対象物を載置する載置台35と、載置台35と案内棒34とを連結する連結部材36とを備えている。
【0063】
移動部材31は、例えば、一方向に延在された長手形状を有しており、長手方向の先端側において移動対象物を支持している。支持部材32は、例えば、平板状であり、移動部材31は支持部材32の一面側に配置され、支持部材32の一面に沿って移動するように構成されている。支持部材32は、例えば、一面が水平となるように配置される。支持部材32には、移動部材31の移動に対応して、移動部材31の移動を案内するための貫通されたV字状又は湾曲形状の案内孔32Aが設けられている。案内孔32Aには、案内棒34が貫通されている。案内孔32Aは、案内棒34を案内孔32Aの中央部に位置させたときに、両端部に比べて中央部が移動部材31の長手方向の基端側に位置するように設けられている。案内棒34を案内孔32Aに沿って移動させたときに、移動部材31が回動しつつ長手方向の先端側に移動して、移動部材31の先端側を直線状に移動させるためである。なお、支持部材32には、案内孔32Aに、dx=λ/4ずつの移動が分かるように引っ掛かりがだせるノッチ板を配設することが好ましい。λは用いるレーダー13の波長である。ノッチ板は、周波数に応じて交換できるように構成することが好ましい。
【0064】
回動部材33は、支持部材32に対して回動することにより移動部材31の延在方向を変化させるものである。回動部材33は、例えば、移動部材31と支持部材32との間に配置され、移動部材31の長手方向の基端側を長手方向に移動可能に保持している。具体的には、例えば、回動部材33の幅方向における両側には、移動部材31の側部を囲むようにコの字状の凹部33Aが形成されており、この凹部33Aにより移動部材31を長手方向に移動可能に保持している。また、回動部材33には、移動部材31の長手方向に延在するように貫通孔33Bが設けられている。貫通孔33Bには、案内棒34が貫通されている。案内棒34は、移動部材31に対して長手方向の基端側に配設されており、移動部材31から貫通孔33B及び案内孔32Aを貫通して、支持部材32の移動部材31と反対側に突出されている。すなわち、案内棒34を案内孔32Aに沿って移動させることにより、回動部材33の貫通孔33Bに沿って案内棒34が移動して回転部材33が回動し、それに伴って移動部材31の延在方向が変化すると共に、移動部材31は長手方向の先端側に移動するようになっている。
【0065】
載置台35は、例えば、移動部材31の長手方向の先端側に配設されている。載置台35は、例えば、案内棒34の側に直線状の切込み35Aを有している。切込み35Aは、貫通されていても、貫通されていなくてもよい。切込み35Aには、切込み35Aに沿って移動可能な突起部35Bが設けられている。突起部35Bは案内棒34と伸び縮みしないワイヤ等の連結部材36と連結されている。これにより、案内棒34を案内孔32Aに沿って移動させると、移動部材31の先端側が直線状に移動すると共に、突起部35Bが切込み35Aを移動して載置台35が回動し、載置台35に載置した移動対象物を平行移動させることができるようになっている。
【0066】
平行移動治具30は、また、支持部材32を垂直方向に移動させる垂直移動手段37を備えていることが好ましい。垂直移動手段37は、例えば、調節ねじ37Aの回転操作でラック37Bを垂直方向に移動させるように構成されている。調節ねじ37Aは、dy=λ/4の移動を示す目盛りを有し、目盛りは周波数に応じて交換できるように構成することが好ましい。λは用いるレーダー13の波長である。
【0067】
平行移動治具30は、更に、支持部材32と垂直移動手段37とを連結し、載置台35と垂直移動手段37との間を延長する延長手段38を備えていてもよい。対象物Mが狭い場所にある場合等に、単眼カメラ11及びレーダー13を対象物Mの近くに位置させることができるからである。延長手段38は、例えば、支持部材32を支持して垂直移動手段37と連結する延長支持部材38Aと、案内棒34と連結された動作レバー38Bと、案内孔32Aに対応して延長支持部材38Aに切込まれたV字状又は湾曲形状の動作穴38Cとを有している。延長支持部材38Aは、例えば、中空円柱状とすることが好ましい。動作レバー38Bを左右に動かしやすいからである。動作穴38Cは貫通されていても、貫通されていなくてもよい。また、延長手段38には、動作穴38C、dx=λ/4ずつの移動が分かるように引っ掛かりがだせるノッチ板を配設してもよい。λは用いるレーダー13の波長である。その場合、ノッチ板は、周波数に応じて交換できるように構成することが好ましい。
【0068】
なお、平行移動治具30は、手動だけでなく、電動により動作させるようにしてもよい。
【0069】
この平行移動治具30は、次のようにして動作させることができる。例えば、案内棒34を案内孔32Aに沿って左右に移動させると、回動部材33の貫通孔33Bに沿って案内棒34が移動して回転部材33が回動し、それに伴って移動部材31の延在方向が変化すると共に、移動部材31は長手方向の先端側に移動する。これにより、移動部材31の先端側は直線状に左右に移動する。また、案内棒34の移動に伴い、突起部35Bが切込み35Aに沿って移動し、それに応じて載置台35が回動して、移動部材31の延在方向が変化しても、載置台35の向きは一定となり、載置台35に載置した移動対象物が平行移動する。また、垂直移動手段37の調節ねじ37Aを回転させると、支持部材32が垂直方向に移動し、載置台35に載置した移動対象物が垂直方向に移動する。
【0070】
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において説明した効果に加えて、平行移動治具30を備えるようにしたので、単眼カメラ11及びレーダー13のうちの少なくとも一方を載置台35に載置することにより、容易に平行移動させることができ、容易に値付けを行うことができる。
【0071】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、絶対値寸法値付け手段15により三次元深度推定画像に絶対値寸法を値付けする際に、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とについて類似度を計算し、位置合わせをする場合について説明したが、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像とを重畳表示することにより位置合わせをするようにしてもよい。その際、三次元深度推定画像と三次元イメージング画像との大きさを合わせるために拡大・縮小を行う。また、占有グリッドマップを平滑化処理することにより高解像度化してもよく、また、三次元深度推定画像をブロック化処理してもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構造や形状は異なっていてもよい。更に、上述した構成要素を全て備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10,20…対象物寸法値付け装置、11…単眼カメラ、12…三次元深度推定画像算出手段、13…レーダー、14…三次元イメージング手段、13a…占有グリッドマップ作成手段、14b…ずれ補正手段、15…絶対値寸法値付け手段、15a…位置合わせ手段、15b…値付け手段、15c…補足手段、16A…CPU、16B…ROM、16C…RAM、16D…HDD、16E…操作インターフェース、M…対象物、N…占有グリッド、21…マイクロフォンシステム、22…音源強度レベル算出手段、23…音響パワーレベル算出手段、30…平行移動治具、31…移動部材、32…支持部材、32A…案内孔、33…回動部材、33A…凹部、33B…貫通孔、34…案内棒、35…載置台、35A…切込み、35B…突起部、36…連結部材、37…垂直移動手段、37A…調節ねじ、37B…ラック、38…延長手段、38A…延長支持部材、38B…動作レバー、38C…動作穴38C
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17