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特開2022-151793マルチコンポーネント物理シミュレーションにおける較正モデルの現場構築
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  • 特開-マルチコンポーネント物理シミュレーションにおける較正モデルの現場構築 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151793
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】マルチコンポーネント物理シミュレーションにおける較正モデルの現場構築
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20220929BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20220929BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20220929BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20220929BHJP
【FI】
G06N20/00
G06N3/02
G06F30/10 200
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022046457
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】17/210,804
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519084700
【氏名又は名称】ダッソー システムズ シムリア コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラオ,カウストゥブ
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC01
5B146DJ11
5B146DL01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】選択されたコンポーネントの物理計算モデルから較正モデルを生成するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】方法は、選択されたコンポーネントの仮想実験のためのセットアップを受信し、入力パラメータを定義し、較正モデルによってモデル化される出力パラメータを選択し、定義した入力パラメータに対して、可変入力パラメータの事前定義された範囲の値において、仮想実験を実行し、仮想実験からの結果データを記録し、これを用いて較正モデルを生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物理計算モデル化コンポーネントから選択されたコンポーネントの較正モデルを生成するためのシステムであって、
プロセッサと、非一時的命令を記憶するように構成されたメモリと、を備え、前記命令は、前記プロセッサによって実行された場合、
前記選択されたコンポーネントの対応する物理計算モデルを用いる、前記選択されたコンポーネントの仮想実験のためのセットアップを受信するステップと、
前記仮想実験のための複数の入力パラメータを定義するステップと、
前記複数の入力パラメータから可変入力パラメータを選択するステップと、
前記較正モデルによってモデル化される出力パラメータを識別するステップと、
前記定義した入力パラメータに対して、前記可変入力パラメータの事前定義された範囲の値において、前記仮想実験を実行するステップと、
前記仮想実験からの結果データを記録するステップと、
前記仮想実験からの前記結果データに基づいて前記較正モデルを生成するステップと、
を実行し、
前記仮想実験を実行することは一連のパスを実行することを更に含み、前記パスの各々は、前記事前定義された値範囲における前記可変入力パラメータの複数の入力値のうち1つに対応し、前記結果データは、前記一連のパスの各パスに対する前記出力パラメータの出力値を含み、前記較正モデルは前記結果データの関数表現を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサによって前記記憶された非一時的命令を実行することは、
前記選択されたコンポーネントの界面境界を識別するステップと、
前記界面境界に対応する応答曲面を生成するステップと、
前記応答曲面上の複数のポイントを出力ポイントとして識別するステップと、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記較正モデルを生成することは、
前記界面境界の離散的表現を連続表現に変換するステップと、
前記連続表現のモデル化関数を提供するステップと、
を更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記記録された結果データは、前記一連のパスの各パスに対する前記複数の出力ポイントの各々の出力値を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記仮想実験は、前記選択されたコンポーネントの前記物理計算モデルのための前記試験セットアップを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記較正モデルは、前記仮想実験に従った様々な入力パラメータに対する前記コンポーネントの応答の関数表現を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記仮想実験からの前記記録された結果データを前記較正モデルにコンパイルすることは、各出力ポイントについて仮想実験パスに対応する前記出力値をアレイに記憶するステップを更に含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記仮想実験からの前記記録された結果データを前記較正モデルにコンパイルすることは、各出力ポイントについて仮想実験パスに対応する各出力値を多項式曲線にフィッティングするステップを更に含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
出力パラメータ、入力パラメータ、及び前記可変入力パラメータの事前定義された値範囲から成る群のうち少なくとも1つの低減に対応する較正モデルデータの低減サブセットを選択するステップと、
前記較正モデルから、前記較正モデルデータの前記低減サブセットに関連付けられていないデータを除去するステップと、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数の物理計算モデル化コンポーネントから選択されたコンポーネントの較正モデルを生成するための方法であって、
前記選択されたコンポーネントの対応する物理計算モデルを用いる前記選択されたコンポーネントの仮想実験のためのセットアップを受信するステップと、
前記仮想実験のための複数の入力パラメータを定義するステップと、
前記複数の入力パラメータから可変入力パラメータを選択するステップと、
前記較正モデルによってモデル化される出力パラメータを識別するステップと、
前記定義した入力パラメータに対して、前記可変入力パラメータの事前定義された範囲の値において、前記仮想実験を実行するステップと、
前記仮想実験からの結果データを記録するステップと、
前記仮想実験からの前記結果データに基づいて前記較正モデルを生成するステップと、
を含み、前記仮想実験を実行することは一連のパスを実行することを更に含み、前記パスの各々は、前記事前定義された値範囲における前記可変入力パラメータの複数の入力値のうち1つに対応し、前記結果データは、前記一連のパスの各パスに対する前記出力パラメータの出力値を含み、前記較正モデルは前記結果データの関数表現を含む、方法。
【請求項11】
前記選択されたコンポーネントの界面境界を識別するステップと、
前記界面境界に対応する応答曲面を生成するステップと、
前記応答曲面上の複数のポイントを出力ポイントとして識別するステップと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正モデルを生成することは、
前記界面境界の離散的表現を連続表現に変換するステップと、
前記連続表現のモデル化関数を提供するステップと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記記録された結果データは、前記一連のパスの各パスに対する前記複数の出力ポイントの各々の出力値を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択されたコンポーネントの前記物理計算モデルを前記較正モデルで置き換えるステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記仮想実験は、前記選択されたコンポーネントの前記物理計算モデルのための前記試験セットアップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記較正モデルは、前記仮想実験に従った様々な入力パラメータに対する前記コンポーネントの応答の関数表現を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記仮想実験からの前記記録された結果データを前記較正モデルにコンパイルすることは、各出力ポイントについて仮想実験パスに対応する前記出力値をアレイに記憶するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記仮想実験からの前記記録された結果データを前記較正モデルにコンパイルすることは、各出力ポイントについて仮想実験パスに対応する各出力値を多項式曲線にフィッテイングするステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
出力パラメータ、入力パラメータ、及び前記可変入力パラメータの事前定義された値範囲から成る群のうち少なくとも1つの低減に対応する較正モデルデータの低減サブセットを選択するステップと、
前記較正モデルから、前記較正モデルデータの前記低減サブセットに関連付けられていないデータを除去するステップと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシステムシミュレーションに関し、より具体的には、物理的コンポーネントの特徴をモデル化することに関する。
【背景技術】
【0002】
システムのシミュレーションは、例えば物理計算法(physics computation methodology)を用いて複数のシステムコンポーネントが個別にシミュレーションされる環境を含み得、そこでは、シミュレーションされた各コンポーネントが実行される。例えばシミュレーションは、個々のシステムコンポーネントの各々の熱的挙動をシミュレーションする物理計算モデルを用いてシステムの熱的挙動をモデル化することを含み得る。各コンポーネントは他のコンポーネントのうち1つ以上と複雑に相互作用し得るので、システムのシミュレーションは極めて資源集約的であると共に時間がかかる可能性がある。従って、この業界では、システムシミュレーションのためコンポーネントを効率的にモデル化するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施形態は、マルチコンポーネント物理シミュレーションにおける較正モデルの現場構築(in-situ formulation)を提供する。簡潔に述べると、本発明は、選択されたコンポーネントの物理計算モデルから較正モデルを生成することを対象とする。選択されたコンポーネントの仮想実験(virtual experiment)のためのセットアップを受信し、入力パラメータを定義する。較正モデルによってモデル化する出力パラメータを選択する。仮想実験は、定義された入力パラメータに対して、可変入力パラメータの事前定義された範囲の値において実行される。仮想実験からの結果データを記録し、これを用いて較正モデルを生成する。
【0004】
本発明の他のシステム、方法、及び特徴は、以下の図面及び詳細な説明を検討することで、当業者に明らかであるか又は明らかとなるであろう。本記載に含まれる全てのそのような追加のシステム、方法、及び特徴は、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付図面は、本発明の更なる理解を得るために含まれ、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。図面におけるコンポーネントは、必ずしも一定の縮尺通りに描かれているわけではなく、本発明の原理を明確に図示する際には強調されている。図面は記載と共に本発明の実施形態を例示し、本発明の原理を説明するように機能する。
【0006】
図1A】複数のシミュレーションされたシステムコンポーネントを用いるシステムのシミュレーションを図示する概略図である。
図1B】2つのシミュレーションされたシステムコンポーネントを対応する較正モデルで置き換えた図1Aのシステムのシミュレーションを図示する概略図である。
図2】コンポーネントの現場較正モデルを生成するための方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
図3】仮想実験を実行する図2のブロックの一例の概略図である。
図4】仮想実験からの記録結果を較正モデルにコンパイルする図2のブロックの一例の概略図である。
図5】物理計算シミュレーションが図4の較正モデルに問い合わせを行った場合に較正モデルが生成するモデル化応答を示す概略図である。
図6】仮想実験における未加工データセットの構造及び構成を示す概略図である。
図7】多孔板のための仮想実験セットアップの一例を示す概略図である。
図8A】コンパクトなヒートシンクのための仮想実験セットアップの一例を示す図である。
図8B図8Aの側面図を示す図である。
図9】本発明の機能を実行するためのシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の定義は、本明細書に開示されている実施形態の特徴に適用される用語を解釈するために有用であり、本開示内で要素を定義することだけを意図している。
【0008】
本開示で用いられる場合、「較正モデル」という言葉は、現実世界の物理的コンポーネントの環境の仮想シミュレーションにおいて現実世界の物理的コンポーネントの挙動を表す仮想オブジェクトを示し得る。較正モデルは、モデル化された挙動に基づいて1つ以上の入力値を受信すると共に1つ以上の出力値を生成するため多次元界面境界を有する。1つ以上の出力値は、環境シミュレーション時にリアルタイムで厳密反復計算を実行する必要なく生成される。
【0009】
本開示内で用いられる場合、システムコンポーネントの「物理計算モデル」は、コンポーネントの基本的な物理的特性に基づいてシステムコンポーネントの挙動をモデル化する導出された数式に基づくコンピュータベースのシミュレーションである。物理計算モデルは、コンポーネントの構造的特徴(寸法や材料等)を規定するパラメータを受信し、実行された場合、モデルが様々な動作条件及び/又は環境条件に対してどのように応答するかに従った計算を用いて出力を生成する。
【0010】
本開示内で用いられる場合、「仮想実験」は概して、システムコンポーネントの物理計算モデルを用いた試験セットアップの実行を指す。仮想実験の間、様々な入力値を用いて試験を実行及び再実行して、指定された出力の対応する出力応答を記録することができる。本明細書では、異なる入力に対応する試験の各実行を「パス(pass)」と呼ぶ。
【0011】
本開示内で用いられる場合、「応答曲面」は、限定された範囲を有するn次元入力の連続的な変動に対して連続的な出力値を与えるn次元連続曲面を指す。応答曲面は、ある範囲の離散的なn次元入力パラメータ及び対応する出力パラメータから構成される。
【0012】
本開示内で用いられる場合、「機能モックアップユニット(FMU:functional mock-up unit)」は、システムレベルシミュレーションで用いられる手法を指す。システム内の各機能ブロックは、システムのコンポーネントの動作を単独で表現しようと試みる。この簡略化された機能表現は特定の入力を受け入れ、これらの入力は評価されていくつかの出力を提供する。FMUからの出力は、別のFMUに入力として供給されるか、又はシステムの所望の出力の1つとなる。なお、機能ブロック間に物理計算は存在せず、各システムコンポーネントの機能モデル化は単独でモデル化され、FMU手法は、相互作用しているシステムコンポーネントの複雑な非線形効果を有効に捕らえることができない。要約すると、FMUシミュレーションは主として、他のモデルと相互作用する簡略化モデルから成る。
【0013】
本開示内で用いられる場合、「低次元化モデル(ROM:reduced order model)」は、複雑なシステムの簡略化表現である。この簡略化モデルは、システムレベルシミュレーションを支援するためFMUで用いることができる。
【0014】
本開示内で用いられる場合、「実験計画法(DOE:design of Experiment)」は、指定された範囲内の入力パラメータの有効な組み合わせについて、制御された実験(シミュレーション又はリアル)が実行される技法を指す。最終的にシステムに対する各パラメータの効果の分析を支援するために、各実験の変形(variant)の結果が観察される。
【0015】
これより、添付図面に例が示されている本発明の実施形態を詳細に参照する。可能な限り、図面では同一の参照番号が用いられ、その説明は同一又は同様の部分を指す。
【0016】
図1Aに示されているように、システム100のシミュレーションは、物理計算法を用いて複数のシステムコンポーネントが個別にシミュレーションされる環境を含み得る。シミュレーション中に、各モデル化コンポーネント121~125のシミュレーションが実行される。例えばシミュレーションは、5つのシステムコンポーネント121~125の各々の熱的挙動をシミュレーションする物理計算モデルを用いることによって、システム100の熱的挙動をモデル化することを含み得る。ここで、シミュレーションは入力110を受信すると共に出力150を生成する。各コンポーネント121~125は他のコンポーネントのうち1つ以上と複雑に相互作用し得るので、システム100のシミュレーションは極めて資源集約的であると共に時間がかかる可能性がある。
【0017】
図1Bに示されているように、各コンポーネント121~125について物理計算モデルを実行するのではなく、1つ以上のコンポーネントの物理計算モデルは較正モデルに置き換えられている。例えば、第2の物理計算モデル122は第1の較正モデル132で置き換えられ、第4の物理計算モデル124は第2の較正モデル134で置き換えられている。図1Bの較正モデル132、134は、図1Aの中にある各物理計算モデル122、124に対するブラックボックス置換として動作して、システムシミュレーション100の実行時に同一の入力を受信すると共に同一の出力を提供する。各較正モデル132、134は、対応する物理計算モデル122、124に比べて、例えば少なくとも一桁、資源集約性が低い。
【0018】
一般に、2つのタイプのユーザが較正モデル132、134と相互作用する。本開示内で用いられる場合、「開発者」は、較正モデル132、134の知識ベースを開発するユーザであり、知識ベースは、較正モデル132、134によって組み込まれた対応するコンポーネントの実験結果のライブラリから成る。「使用者」は、物理計算の代わりに用いられる較正モデル132、134を使用するユーザである。場合によっては、「使用者」又は「開発者」のいずれかが適切であることを示すため、本明細書で「ユーザ」が使用され得ることに留意するべきである。
【0019】
本開示内で用いられる場合、「モデル化出力」は、コンポーネントの物理計算モデルに基づく仮想実験中にコンポーネント表面上の複数の位置で指定入力パラメータに対する応答がすでに追跡及び記録されているコンポーネントの識別されたパラメータを指す。仮想実験中、コンポーネントの物理計算モデルは入力を受信し、識別されたパラメータに対する出力値を生成して追跡する。コンポーネントの較正モデルは、その後のシステム試験においてモデルの対応する物理計算モデルを代替し、受信した入力に応答してモデル化出力を生成する。
【0020】
本発明の実施形態は、物理的特徴に起因して既存のモデルを持っていないコンポーネントについて、シミュレーション環境で用いるため較正モデルを現場で構築する方法を対象とする。この方法の例示的な実施形態では、開発者が手作業で生成したコンポーネントのためのシミュレーションされた実験セットアップが、シミュレーションのパラメータを決定するための入力として提供される。次いで使用者は、所望の入力の範囲と、各入力に対して測定する出力パラメータを選択する。実施形態によって生成される較正モデルは、物理シミュレーションに統合することができる。
【0021】
これに対して、システムレベルシミュレーションではFMUが使用され得るが、物理計算は存在せず、モデルは他のモデルと相互作用するだけである。例として、発電所のFMU表現について検討する。発電所内の多くのコンポーネントは、特定の温度を超えないように温度調節を必要とする。1つのそのようなコンポーネントのFMU表現について、FMUモデルに基づき、その温度が100℃に到達すると評価された場合を考える。これは、発電所内の冷却システムのFMU表現に供給されるFMUの出力の1つである。この入力を受信した冷却剤FMUは、特定の必要な冷却剤流量を評価し、次いでこれを達成するため冷却剤制御弁を調節する。これらの機能ブロックの動作を表現するため用いられるFMUモデルは低次元化モデルであり、物理シミュレーションと統合されない。しかしながら、仮に新しいコンポーネント(誘導弁)を追加する必要があり、これが冷却剤流を中断/変化させ、この新しいコンポーネントの最適な配置位置を知る必要がある場合、物理計算が必要となる。FMUモデルはこのような変化を説明することができない。FMUとは異なり、本明細書の実施形態によって記載される較正モデルは、物理シミュレーションと統合され得る。実施形態は、コンポーネントを効果的にモデル化する手続きレシピを提供することによって、特定クラスのコンポーネントに関する開発者の専門知識をカプセル化/獲得するための方法を提供する。これは、ライブラリに保存できる仮想実験セットアップを生成することにより実行される。例えば開発者は、コンポーネント(例えばヒートシンク)の有効熱伝導率を抽出するように仮想実験を設計することができる。シミュレーションされたコンポーネントを用いて仮想実験を実行すると、様々な動作条件、環境条件、幾何学的形状条件の範囲でモデル化コンポーネントの挙動をモデル化する較正モデル応答曲面に組み込まれた結果が生成される。
【0022】
実施形態において、開発者は、新しいタイプのコンポーネント(例えば、ヒートシンク、ファン、プレート、パイプ等でない新しいタイプの二次的電子冷却(e-cooling)コンポーネント)のための知識ベースを生成する。開発者に対して、実施形態は、様々な入力パラメータ(以下で定義される)に対するコンポーネントの応答を制御されたやり方で観察するための試験場(仮想実験)を提供する。仮想実験によって、使用者は、コンポーネントの製造者により提供されたデータを物理計算と統合することができる(製造者によって限定的な実験が実行される)。仮想実験は、外部のFMUタイプのシステム又はいくつかのパラメータのいくつかの関数従属性(functional dependence)のような、外部パラメータにリンクすることができる。
【0023】
開発者は、あるクラスのコンポーネント(例えばコンポーネントタイプ:ヒートシンク)に対するそのような試験場のライブラリを開発し、実験セットアップを保存することができる。保存された実験セットアップは、将来のVE(仮想実験)のテンプレートとして用いることができ、使用の際には例えば測定対象の数量のように重要なパラメータが定義される。コンポーネント及びそれらの入力パラメータ範囲の従来の変動又は典型的な変動のため、開発者は較正モデルのライブラリも保存することができる。カスタムコンポーネント又は非標準的コンポーネントについて、ユーザは次いであるクラスのコンポーネント(ヒートシンク)の較正モデルを取得し、較正モデルのアーカイブを増大する。従ってユーザは、開発者又は使用者が生成した実験セットアップを再使用のため保存し、また、較正モデルも保存する。
【0024】
極めて特殊なコンポーネントが必要であり、そのようなアイテムのため較正モデルが生成されていない可能性のある状況では、使用者は、保存された仮想実験セットアップを現場で使用し、入力パラメータ変動のサブセットを実行し、限定された範囲の較正モデルを生成して、システム物理シミュレーションに統合することができる。
【0025】
仮想実験の目的は、様々な入力パラメータに対するコンポーネントの単独の応答を制御されたやり方で獲得することである。コンポーネントは数種類の応答を示し得るが、典型的に仮想実験は、モデル化されているソリューションに対するコンポーネントの効果に関連した応答を獲得することを目指している。例えば、多孔板は上昇温度で加熱され得るが、仮想実験は圧力低下に対する板の応答だけを獲得することができる。
【0026】
図2は、コンポーネントの現場較正モデルを生成するための方法の例示的な実施形態のフローチャート200である。フローチャート内のプロセス記述又はブロックは、プロセス内の特定の論理機能を実施するための1つ以上の命令を含むモジュール、セグメント、コードの部分、又はステップを表現するものとして理解されることに留意するべきであり、本発明の当業者には理解されるであろうが、関与する機能性に応じて、図示又は検討されるものとは異なる順序で、例えば実質的に同時に又は逆の順序で機能が実行され得る代替的な実施も本発明の範囲内に含まれる。
【0027】
ブロック210で示されるように、使用者は、選択されたコンポーネントの仮想実験セットアップ、例えば開発者によって生成されたコンポーネントの仮想実験セットアップを受信する。ブロック220で示されるように、使用者は、仮想実験の入力パラメータセットを定義する。入力パラメータの例には、いくつかのパラメータの中でも特に、動作パラメータ、環境パラメータ、及び幾何学的形状パラメータが含まれる。ファンコンポーネントのVEの状況では、例示的な動作パラメータは、ファンの毎分回転数(RPM:rotation per minute)及びファン入力に対するファン通気孔開口角を含み得る。例示的な幾何学的形状パラメータは、とりわけ、ファンの羽根の前進角、ファンの羽根の数、及びハブの半径を含み得る。例示的な環境パラメータは、とりわけ、周囲空気流、周囲温度、及び圧力を含み得る。コンポーネントを受け取り、仮想実験を選択したとき、仮想実験を実行するシステムによって、例えば幾何学的形状パラメータ及び閉鎖界面境界のような入力及び/又はその範囲のいくつかの態様を推定することができる。ユーザは次いで、それらの変動範囲を設定することによってこれらのパラメータを含めること、又は無視することを決定すればよい。
【0028】
ブロック230で示されるように、ある範囲の値において試験を行うため1つ以上の入力パラメータを選択することができる。例えば仮想実験は、ある範囲のファンRPM値で繰り返されるようにセットアップすることができる。ブロック240で示されるように、1つ以上の出力変数を識別する。出力変数の値はVEの間に記録される。例えば、多孔板をモデル化するVEでは、識別されるモデル化出力変数は板の厚さを介した圧力低下とすることができる。ヒートシンクの場合、モデル化出力変数はヒートシンクの有効熱伝導率とすることができる。ブロック250で示されるように、選択されたコンポーネントの界面境界を識別する。界面境界は、物理シミュレーションにおけるコンポーネント設置面積とするか、又は必要に応じてユーザにより指定することができる。出力変数値は、コンポーネント界面境界上の複数のポイントで記録される。典型的には、コンポーネントのCAD形状が、シミュレーション環境へインポートされたときに自動的に検出される。
【0029】
ブロック260で示されるように、仮想実験を実行する。VEを繰り返して、可変範囲で識別された入力パラメータに対する出力を記録することができる。VEの実行については、以下で図3を参照して更に詳しく説明する。ブロック270で示されるように、VEの結果は、例えば、1つ以上の内挿技法(多項式、AI、回帰の使用等)によって未加工データを組み合わせることで界面境界(応答曲面)の離散的表現を連続表現に変換し、モデル化関数M=[m1,m2,...]を与えることにより、較正モデルにコンパイルされる。これについては以下で図4を参照して更に詳しく記載する。
【0030】
一般にVEの実行は当業者には既知であるが、ここでは、多孔板の具体例について、反復及び離散化数値スキームを用いてシミュレーションを解くDOEエンジンによる具体的な実行例が提供され、図3に示されている。代替的な実施形態は他のやり方でVEを実行することができ、例えば、メッシュレス法又は物理情報に基づくニューラルネット(Physics informed neural net)を用いて物理学を解くのとは対照的に、AIベースの手法及び/又は反復及び離散化数値スキームを用いて物理方程式を解くことができる。DOE方法を用いて一連の仮想実験を実行することで、入力パラメータの各変形に対して物理計算シミュレーションが実行される。上記のように、開発者は、ここでは多孔板である選択されたコンポーネントの実験用のテンプレート310を提供する。実験の入力パラメータ320を設定することにより、テンプレート310を特定の仮想実験315に合わせることができる。ここで、各シミュレーション変形は「i」の添え字が付いており、入力パラメータセット[Ei,Oi,Gi,Di]で特徴付けられる。Ei、Oi、Gi、Di、及びRiはそれぞれ、環境パラメータ、動作パラメータ、幾何学的形状パラメータ、及び外部依存性パラメータのi番目の変形を示す。これらのパラメータの各々は入力のセット/アレイである。例えば、環境パラメータEiはアレイEi=[e1i,e2i,...]を表し、パラメータOi、Gi、及びDiについても同様である。
【0031】
VEの範囲が定義された後、DOEエンジン(プログラム)325は、各シミュレーション変形の特定の入力パラメータを記録しながら、いくつかの物理計算シミュレーションを開始する。これらのシミュレーションは、分散型でもしくはシリアルに実行され得るか、又は当業者に良く知られているコンピュータリソース獲得アルゴリズムに基づいて実行され得る。計算段階に入る前、各シミュレーション変形に対して以下が行われる。DOEプログラムは、入力パラメータの特定の変動を反映するため、環境パラメータ、動作パラメータ、外部パラメータ、及び幾何学的形状パラメータを更新する。DOEプログラムは、例えば、援用により全体が本願に含まれる米国特許出願第16/874,977号に記載されているように、CAD形状を離散化して適切に分散した計算ポイントを生成する。例えば、計算ポイントの分散は典型的に、業界標準の予めロードされた発見的問題解決法に従う。ここで、選択されたコンポーネントを表す界面境界は、例えばセグメント化表面メッシュとして離散化されている。DOEは、各反復(順列330のリストに対応する)において物理計算を実行する。ここで、DOEプログラムは、この時点で離散的である界面境界に沿った全ての計算ポイント(k)で、例えば圧力P(k)及び/又は温度T(k)のような出力変数R’i(k)を監視し記録する。
【0032】
場合によっては、モデル化されているコンポーネントに基づいて、VEの出力を何らかのトポロジエンティティ(S)上で統計的に低減させて新しい出力セットRi(S)を生成することができる。例えば、表面(S)上の平均圧力=Pavg(S)である。特定の入力パラメータ及びそれにより得られる出力パラメータは、未加工データアレイ390内のセットとしてメモリに記録される。未加工データ390の各要素は、シミュレーション実行及びそれに対応する記録された出力の特定の変形[Ei,Oi,Gi,Di:Ri]に対応する。ここで、Ei、Oi、Gi、Di、及びRiはそれぞれ、環境パラメータ、動作パラメータ、幾何学的形状パラメータ、外部パラメータ、及び結果/出力パラメータのi番目の変形である。一群の未加工データ要素がDOEの出力である。
【0033】
上述した例において、DOEはVEテンプレートを受信し出力パラメータを生成するための媒体であるが、他の技法を用いて入力パラメータの様々な順列を横断し、結果として出力パラメータを取得する、すなわち未加工データを取得することも可能である。例えば、人工知能(AI)ベースの技法(物理情報に基づくニューラルネット)は、様々な入力パラメータに対するコンピュータの応答を計算する及び/又は予測する。例えばDOEは、入力のありとあらゆる組み合わせについて物理計算シミュレーションを実行し、得られた出力変数を記録することができるが、AI手法は、入力パラメータ組み合わせのサブセットについて物理計算を実行し、その後、残りの組み合わせ又は密接に関連している組み合わせについてRiを予測することができる。
【0034】
図4は、VEから得られた未加工データの較正モデルへの変換を示す概略図である。通常、所与のコンポーネントクラスに対して特定のモデル化関数又は方法が存在する。これを決定するのは、コンポーネントの機能と、それがVEのシミュレーションにどのように影響を及ぼすかである。ここで、モデル化関数をMと呼ぶ。関数Mは、離散化空間における空間座標(x,y,z)又は(k)、入力パラメータセット[E、G、O、D]、及び出力パラメータ[R]に依存する。
【0035】
一度、ユーザによって指定された入力パラメータ範囲で全ての未加工データセット390(図3)が生成されたら、以下のステップが実行される。場合によっては、入力パラメータの特定の変形のシミュレーションは収束しないか又は不正確な結果を生成している可能性がある。これは例えば、米国特許第10,303,825号(援用により全体が本願に含まれる)に記載されているように、シミュレーションの収束プロットから決定することができる。そのような間違った結果は破棄され、この後に記載されるステップには組み込まれない。そのような間違ったシミュレーション実行の検出は、仮想実験セットアップの欠点を識別するために有用であり、従ってシミュレーションを改善するためユーザ(又は何らかの自動化発見的アルゴリズム)に対する有用なフィードバックとなり得ることに留意するべきである。
【0036】
フィルタリングされた未加工データセットRi(S)390を用いて、多項式曲線フィッティング、回帰分析、AI技法、又はこれら及び他の既存の技法の組み合わせのようないくつかの技法によって応答曲面420を再構成する。これらの技法は、離散的なデータポイントセット(Ei、Oi、Gi、Di:Ri)を連続的な形態(E、O、G、D:R)に変換する。データを連続的に表現することは有利であり得る。その理由は、未加工データ(Ei、Oi、Gi、Di)の実行生成のため使用される入力セットに属さない入力(Ej、Oj、Gj、Dj)について、予測結果Rjが得られるからである。このため、連続的な表現すなわち応答曲面420(図4)はモデル化に好適である。モデル化関数M(E、O、G、D、R(k))は、コンポーネントのタイプ及び機能に基づく。連続的な表現を用いて、コンポーネントのモデル化応答を生成する。
【0037】
図5は、物理計算シミュレーション510が応答430を生成するための問い合わせを較正モデルに対して行った場合に較正モデル410が生成するモデル化応答430を示す。物理計算シミュレーション510は入力パラメータセット[Ej,Oj,Gj,Dj]を提供し、応答曲面420を用いてそのような入力セットから生じる適切な出力パラメータ[Rj]を予測し、較正モデル410はモデル化応答Mj430をシミュレーションに提供する。例示的な実施形態は、実験セットアップのライブラリ、様々なクラスのコンポーネントタイプ(板、ファン、ヒートシンク、ヒートパイプ等)向けに設計されたモデル化関数、及び、コンポーネントクラスの1つもしくはいくつかの較正モデルの保存を可能とする別のライブラリを保存するワークフローを生成することができる。
【0038】
図6は、仮想実験315における未加工データセット390の構造及び構成を示す。例示の目的のため、図6は、入力パラメータセット[Ei,Gi,Oi,Di]を有するシミュレーション変形(i)を示す。前述した例のように、Ei、Gi、Oi、Diの各々はパラメータのアレイであり、例えば、Ei=[e1i,e2i,...,eni]である。環境パラメータEiのアレイの一例は、周囲圧力Pi、周囲温度Ti、周囲空気流速Viとすることができ、従って、Ei=[Pi,Ti,Vi]である。コンポーネント境界(「離散的界面境界」)が識別されている。例えば、CAD形状を含む適用例では、設置面積/界面境界を自動的に検出するか又はユーザにより指定することができる。シミュレーションが離散化される場合、境界界面も同様にkの計算ポイントのセットに離散化される。
【0039】
仮想実験315(図3)では、離散化界面境界420に沿った計算ポイントで、(例えば物理情報に基づくニューラルネットによって)物理特性を計算/予測し、出力パラメータを生成する。出力パラメータ[R’i(k)]が生成される。ここで、一重引用符「’」は各計算ポイントに存在するデータを示す。
【0040】
入力パラメータと同様、出力パラメータセットはアレイである。例えば[R’i(k)]は、界面境界の各k計算格子点における温度、圧力、又は種部分のセットとすることができる。従って、[R’i(k)]=[T’i(k),P’i(k),phi’i(k)]である。出力パラメータ[R’i(k)]を、何らかのトポグラフィエンティティSに沿って統計的に低減させて、[Ri(S)]を生成する。例えば、圧力及び/又は温度パラメータは、平面(S1、S2、...Sx)に沿って表面で平均化して、[[Ri(S1)],[Ri(S2)],...,[Ri(Sx)]=[[Ti(S1),Pi(S1)],[Ti(S2),Pi(S2)],...,[Ti(Sx),Pi(Sx)]を生成することができる。
【0041】
別の例では、二乗平均平方根オペレータ(Sxに対する全てのkについて、Ti(Sx)=RMS(T’i(k)))を用いて温度を統計的に低減させる一方で、圧力を単に表面で平均化することができる(Pi(Sx)=Average(P’i(Sx))。しかしながら、いくつかのモデルでは、そのような動作を実行する必要はない。入力パラメータ[Ei,Gi,Oi,Di]及び出力パラメータ[Ri]は、未加工データ390を表すアレイに記憶される。
【0042】
上述した実施形態の入力と出力に関して、開発者は、関連する入力パラメータとそれらの範囲及び解像度を決定する。例えばファンでは、RPMの動作範囲は100~2000RPMまで10rmpずつ変動し得る。コンポーネントのパラメータの範囲は典型的に、コンポーネントが動作することが予想される予想条件に従って設定される。開発者は、コンポーネントの効果をどのようにモデル化するかを選択する。例えば熱フィンは、有効伝導率としてモデル化することができるが、代替的に有効熱伝達係数としてモデル化することも可能である。モデル化の選択に従って、界面境界に沿って適切な変数が測定される。開発者は、様々に変化する環境条件、動作条件、及び幾何学的形状条件下にあるコンポーネントを含む物理計算に統合できる較正モデルが得られるように、仮想実験を設計する。入力セットは、あるコンポーネントクラスのために仮想実験セットアップを準備するよう機能する。例えば上記の入力は、一般に熱フィンをモデル化するための実験セットアップに対応し得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、上述した入力は、各クラスのコンポーネントに所定の仮想実験セットを提供するソフトウェアプロバイダによって、ある程度自動化することができる。電子冷却ワークフローの状況では、例えば、使用者が各クラスのコンポーネントの事前定義された仮想実験を選択できるように、プログラムを構成することができる。
【0044】
例えば、開発者は「ヒートシンクのための較正実験」を選択し、ヒートシンククラスのコンポーネントのための仮想セットアップを選択し、次いでパラメータ範囲内のヒートシンクのCAD形状を忠実度と共に提供することができる。次いで、熱フィンの設置面積を決定することができる。測定された出力パラメータは、環境変数及び動作変数と同様、設置面積境界における測定のためすでに予めセットアップされている。幾何学的形状変数はCAD形状に基づいて決定できる。ここで、使用者は動作範囲を決定し、どの幾何学的形状パラメータが関連するかを決定する。上述の例は電子冷却ワークフローのみを対象としたが、実施形態はそのように限定されず、仮想実験は他のタイプのワークフローのためにも予めロードされ得る。
【0045】
上述の入力が与えられたら、界面境界において出力変数を自動的に測定し、入力パラメータの組み合わせに対する出力変数を測定及び/又は予測することができる。例えば、全ての入力パラメータ組み合わせに対する物理計算シミュレーションを実行することを含むDOE技法を採用できる。あるいは、AI技法は、入力パラメータのサブセットに対して測定された応答を観察することにより、特定の組み合わせの入力パラメータに対する出力変数を予測できる。相関、曲線フィッティング、応答曲面、及びその他の技法は、上記の情報を較正モデルとして獲得する。入力セット(実験セットアップ)は、将来適応させるため保存することができる。
【0046】
この結果として生じる較正モデルは、様々な入力パラメータに対するコンポーネントの応答の関数表現である。このように得られた較正モデルは、実行中の(live)物理計算シミュレーションに統合される。較正モデルは、界面境界を介して物理計算と相互作用する。較正モデルは、記憶された実験セットアップ(入力セット)の表現を含む。較正モデルは、例えば数のアレイとして記憶することができる。数のアレイは応答曲面を記憶し、この応答曲面を構成する各ポイントは、特定の入力パラメータ及び対応する測定された出力変数を表す。較正モデルは、応答曲面の離散的表現を記憶すると共に、応答曲面を連続表現に変換するためのレシピを、モデル化関数Mを生成するためのレシピと共に含む。
【0047】
較正モデルの関数表現は、仮想実験、モデル化、又はコンポーネントの詳細事項とは独立している。例えば、中間ポイントのために内挿される表形式データを有する較正モデルは、以下のような数のアレイとして記憶することができる。

1:V=1,d=0.5,t=0.01,ΔP1
2:V=1,d=0.8,t=0.01,ΔP2
3:V=2,d=0.5,t=0.01,ΔP3


従って、上記のアレイの各要素は、特定の入力セット及び測定された出力についての仮想実験実行を表す。この要素群は応答曲面の離散的表現である。ある特定の界面位置における具体的なシミュレーションでは、特定の入力パラメータはアレイに記憶されたポイント間にある。例えば、V=1.5、d=0.65、t=0.01では、これに最も近いデータポイントをΔPのために内挿することができる。従って、離散的表現は内挿関数と共に応答曲面の連続表現を提供する。なお、この例はこれらの相関を記憶する多数の手法のうち1つを記述するに過ぎないことに留意するべきである。
【0048】
あるいは、較正モデルは多項式曲線を介して相関を表すことができる。例えば、測定データを多項式によって曲線フィッティングすることができ、較正モデルは多項式係数(a0,a1,a2,...)を記憶する。
ΔP=a0+a12+a22+a32+a4Vd+a5Vt+...(式1)
較正モデルの連続表現をどのように表現し記憶するかについて、開発者及び使用者にいくつかの選択肢を与えることができる。
【0049】
図7は、多孔板のための仮想実験セットアップ710を記述する以下の例700を示す。ここでは、環境パラメータ(V)を受ける風洞内に多孔板幾何学的形状パラメータ(d、L、t)の完全なCAD表現が配置され、点線で表された面に沿って表面で平均化された圧力が測定される。いくつかのシミュレーションが実行され、各シミュレーションで(V、t、d、L)の一意の組み合わせが用いられる。各シミュレーションでは、これらの入力パラメータの関数として、板を介した圧力低下が測定される。これにより、応答曲面720における入力変数と測定された変数との間の相関が得られる。
【0050】
図8Aから図8Bは、ヒートシンク800のための仮想実験セットアップを記述する以下の例を示す。多孔板と同様、仮想実験はここで、押し出し矩形フィンヒートシンクの完全なCAD形状表現を風洞に配置する。ヒートシンクベース熱源、周囲空気温度、及び流入速度が、入力パラメータとして表される。
【0051】
前述した多孔板の実験と同様、ここで仮想実験は、表面境界(点線)に沿って圧力(P)、温度(T)、熱流速(H)を測定する。仮想実験は、ヒートシンク幾何学的形状と、局所効果から分離するため多少の周囲体積部分とを含む。様々な幾何学的形状パラメータ(簡略化のため、それらの一部のみを示す)には、フィン密度、フィン面積、形状、フィン面積が含まれる。動作パラメータは、フィン材料の熱伝導率、ヒートシンク熱源入力である。環境パラメータは、周囲温度、速度、フィンに対する速度の相対角(relative angle of the velocity)である。測定されるパラメータは、界面境界(点線)における熱流速、温度、圧力である。
【0052】
先に詳述した機能を実行するためのシステムはコンピュータとすることができ、その一例が図9の概略図に示されている。システム900は、プロセッサ902、記憶デバイス904、上述の機能を規定するソフトウェア908が記憶されているメモリ906、入出力(I/O)デバイス910(又は周辺装置)、及び、システム900内の通信を可能とするローカルバス又はローカルインタフェース912を含む。ローカルインタフェース912は、限定ではないが例として、当技術分野で既知の1つ以上のバス、又は他の有線もしくは無線の接続とすることができる。ローカルインタフェース912は、通信を可能とするため追加の要素を有することができ、それらは簡略化のため省略するが、例えばコントローラ、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、リピータ、及び受信器である。更に、ローカルインタフェース912は、上述したコンポーネント間で適切な通信を可能とするためのアドレス、制御、及び/又はデータ接続を含み得る。
【0053】
プロセッサ902は、特にメモリ906内に記憶されているソフトウェアを実行するためのハードウェアデバイスである。プロセッサ902は、特注もしくは市販のシングルコアもしくはマルチコアのプロセッサ、中央演算処理装置(CPU)、本システム900に関連付けられたいくつかのプロセッサ間の補助プロセッサ、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップもしくはチップセットの形態)、マクロプロセッサ、又は一般的にソフトウェア命令を実行するための任意のデバイスとすることができる。
【0054】
メモリ906は、揮発性メモリ要素(例えばランダムアクセスメモリ(RAM、例えばDRAM、SRAM、SDRAM等))及び不揮発性メモリ要素(例えばROM、ハードドライブ、テープ、CDROM等)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含むことができる。更にメモリ906は、電子、磁気、光、及び/又は他のタイプの記憶媒体を組み込むことができる。なお、メモリ906は、様々なコンポーネントが相互に遠隔に配置されるがプロセッサ902によってアクセス可能である分散型アーキテクチャを有し得る。
【0055】
ソフトウェア908は、本発明に従ってシステム900が実行する機能を規定する。メモリ906内のソフトウェア908は1つ以上の別個のプログラムを含むことができ、それらのプログラムの各々は、後述するように、システム900の論理機能を実施するための実行可能命令が順序付けられたリストを含む。メモリ906は、オペレーティングシステム(O/S)920を含み得る。オペレーティングシステムは、基本的にシステム900内のプログラムの実行を制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。
【0056】
I/Oデバイス910は、限定ではないが例として、キーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォン等の入力デバイスを含み得る。更に、I/Oデバイス910は、限定ではないが例として、プリンタやディスプレイ等の出力デバイスも含み得る。最後に、I/Oデバイス910は、入力及び出力の双方を介して通信を行うデバイスも含み得る。これらのデバイスは、限定ではないが例として、変調器/復調器(別のデバイス、システム、又はネットワークにアクセスするためのモデム)、無線周波数(RF)又は他の送受信器、電話インタフェース、ブリッジ、ルータ、又は他のデバイスである。
【0057】
システム900が動作中である場合、プロセッサ902は、先に説明したように、メモリ906内に記憶されたソフトウェア908を実行し、メモリ906との間でデータの通信を行い、ソフトウェア908に従ってシステム900の動作を全体として制御するように構成されている。
【0058】
システム900の機能が動作中である場合、プロセッサ902は、メモリ906内に記憶されたソフトウェア908を実行し、メモリ906との間でデータの通信を行い、ソフトウェア908に従ってシステム900の動作を全体として制御するように構成されている。オペレーティングシステム920は、プロセッサ902により読み出され、場合によってはプロセッサ902内でバッファリングされ、次いで実行される。
【0059】
システム900がソフトウェア908において実施される場合、システム900を実施するための命令は、任意のコンピュータ関連のデバイス、システム、又は方法によって又はそれらと接続して用いるため任意のコンピュータ可読媒体上に記憶できることに留意するべきである。そのようなコンピュータ可読媒体は、いくつかの実施形態では、メモリ906及び記憶デバイス904の一方又は双方に対応し得る。本文書の文脈において、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ関連のデバイス、システム、又は方法によって又はそれらと接続して用いるためコンピュータプログラムを含むか又は記憶することができる電子、磁気、光、又は他の物理デバイスもしくは手段である。このシステムを実施するための命令は、プロセッサ又は他のそのような命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって又はそれらと接続して用いるため任意のコンピュータ可読媒体において具現化することができる。一例としてプロセッサ902に言及しているが、そのような命令実行システム、装置、又はデバイスは、いくつかの実施形態では、命令実行システム、装置、又はデバイスから命令をフェッチし、その命令を実行することができる任意のコンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、又は他のシステムとすればよい。本文書の文脈において、「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサ又は他のそのような命令実行システム、装置、もしくはデバイスによって又はそれらと接続して用いるためプログラムを記憶、通信、伝搬、又は転送することができる任意の手段とすることができる。
【0060】
そのようなコンピュータ可読媒体は、限定ではないが例として、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、デバイス、又は伝搬媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の更に具体的な例(非排他的なリスト)には、1つ以上のワイヤを有する電気接続(電子)、携帯型コンピュータディスケット(磁気)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(電子)、リードオンリメモリ(ROM)(電子)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM、EEPROM、又はフラッシュメモリ)(電子)、光ファイバ(光学)、及び、携帯型コンパクトディスクリードオンリメモリ(CDROM)(光学)が含まれる。なお、コンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙又はその他の適切な媒体とすることも可能であり、その場合プログラムは、例えば紙又はその他の媒体の光学スキャンによって電子的に捕獲され、次いで必要な場合にはコンパイル、解釈、又は他の適切な手法の処理が行われ、その後コンピュータメモリに記憶することができる。
【0061】
システム900がハードウェアで実施される代替的な実施形態では、それぞれ当技術分野で周知である以下の技術、すなわち、データ信号に対して論理機能を実施するため論理ゲートを有する1又は複数のディスクリート論理回路、適切な組み合わせ論理ゲートを有する特定用途向け集積回路(ASIC)、1又は複数のプログラマブルブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のような技術の任意のもの又は組み合わせによってシステム900を実施できる。
【0062】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の構造に様々な変更及び変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。前述のことに鑑み、本発明は、本発明の変更及び変形が以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に該当するならば、それらを包含することが意図される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【外国語明細書】