(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151807
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】粉体塗装ノズル
(51)【国際特許分類】
B05C 7/02 20060101AFI20220929BHJP
B05C 19/06 20060101ALI20220929BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20220929BHJP
B05B 13/06 20060101ALI20220929BHJP
B05B 5/12 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B05C7/02
B05C19/06
B05B1/14 Z
B05B13/06
B05B5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046994
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021049209
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】明渡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】安東 尚紀
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
4F035
4F042
【Fターム(参考)】
4F033AA02
4F033BA05
4F033DA02
4F033EA01
4F033EA02
4F033LA12
4F033NA01
4F034AA01
4F034CA04
4F034CA22
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4F034DA13
4F035AA03
4F035CE01
4F035CE05
4F035CF00
4F042AA25
4F042AB03
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB01
4F042CB19
4F042DF07
4F042DF11
4F042DF32
4F042EA04
4F042EA20
4F042EA23
4F042EC01
4F042EC04
(57)【要約】
【課題】より均一に粉体塗料を吐出可能な粉体塗装ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の粉体塗装ノズル1は、管体の内面に対して進行方向X1に沿って相対移動しながら、管体の内面に向けて粉体塗料を吐出するための粉体塗装ノズル1であって、粉体塗装ノズル1が、進行方向X1に向かって傾斜する複数の吐出口12、13を備えることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の内面に対して進行方向に沿って相対移動しながら、前記管体の内面に向けて粉体塗料を吐出するための粉体塗装ノズルであって、
前記粉体塗装ノズルが、前記進行方向に向かって傾斜する複数の吐出口を備える、
粉体塗装ノズル。
【請求項2】
前記複数の吐出口のそれぞれが、前記進行方向に対する角度が互いに異なる前記粉体塗料の吐出角度を有する、
請求項1記載の粉体塗装ノズル。
【請求項3】
前記複数の吐出口のそれぞれが、前記進行方向に沿って並んで設けられる、
請求項1記載の粉体塗装ノズル。
【請求項4】
前記粉体塗装ノズルが、互いに反対の進行方向に向かってそれぞれが傾斜して前記粉体塗料を吐出する複数の粉体塗装ノズルを含み、
前記複数の粉体塗装ノズルは、前記複数の粉体塗装ノズルのそれぞれにより吐出される前記粉体塗料が到達する前記管体の内面上の領域の少なくとも一部同士が互いにオーバーラップするように配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体塗装ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗装ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
上下水などの流体を流すために、たとえばダクタイル鋳鉄管などの管体が用いられる。管体の内面は、その内面を保護するために、粉体塗料を用いて塗装が施される。管体は、効率的に塗装が施されることはもちろんのこと、内面をより確実に保護するために、塗膜が均一に形成されることが求められる。
【0003】
たとえば、ダクタイル鋳鉄管は、他のダクタイル鋳鉄管を受け入れ可能な受口と、受口と連通する直管部とを備えている。ダクタイル鋳鉄管は、受口で他のダクタイル鋳鉄管を受け入れることで、他のダクタイル鋳鉄管に連結される。ダクタイル鋳鉄管の受口の内面には、連結部分での流体の漏出や他のダクタイル鋳鉄管の抜け出しを抑制するために、ゴム輪やロックリングなどが設けられるが、そのゴム輪やロックリングなどを設けるための凹凸が形成されている。したがって、ダクタイル鋳鉄管は、受口の内面の凹凸が直管部の内面の凹凸よりも大きくなるように形成されている。
【0004】
上述したようなダクタイル鋳鉄管において、粉体塗料を吹き付けることにより内面を塗装する場合、凹凸の大きい受口の内面において、塗膜を均一の厚さで形成することが難しいという問題がある。特に、受口は、他のダクタイル鋳鉄管を受け入れるために、施される塗膜の厚さの寸法公差も厳しく制限される。したがって、たとえば特許文献1に開示された塗装装置では、粉体塗料の吐出方向を管軸方向に対して傾斜させることにより、凹凸の大きな受口の内面に均一な塗膜を形成することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の塗装装置では、粉体塗料の吐出ノズルが、粉体塗料の供給チューブの延びる方向に対して傾斜して供給チューブに接続されている。この場合、粉体塗料は、供給チューブと吐出ノズルとの間の傾斜した接続部分において、径方向の外側を多く通ることになり、管軸方向で均一に粉体塗料を吐出することができない。したがって、特許文献1の塗装装置では、ダクタイル鋳鉄管の受口のように凹凸の大きな表面を均一に塗装することができない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、より均一に粉体塗料を吐出可能な粉体塗装ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粉体塗装ノズルは、管体の内面に対して進行方向に沿って相対移動しながら、前記管体の内面に向けて粉体塗料を吐出するための粉体塗装ノズルであって、前記粉体塗装ノズルが、前記進行方向に向かって傾斜する複数の吐出口を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記複数の吐出口のそれぞれが、前記進行方向に対する角度が互いに異なる前記粉体塗料の吐出角度を有することが好ましい。
【0010】
また、前記複数の吐出口のそれぞれが、前記進行方向に沿って並んで設けられることが好ましい。
【0011】
また、前記粉体塗装ノズルが、互いに反対の進行方向に向かってそれぞれが傾斜して前記粉体塗料を吐出する複数の粉体塗装ノズルを含み、前記複数の粉体塗装ノズルは、前記複数の粉体塗装ノズルのそれぞれにより吐出される前記粉体塗料が到達する前記管体の内面上の領域の少なくとも一部同士が互いにオーバーラップするように配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より均一に粉体塗料を吐出可能な粉体塗装ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルが適用される例示的な管体の断面図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルが組み込まれて使用される例示的な塗装装置を示す模式図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルが組み込まれて使用される例示的な塗装装置において第1の吐出部(粉体塗装ノズル)から粉体塗料が吐出される状態を模式的に示す図であり、(a)は、第1の吐出部が第1の方向に相対移動しながら粉体塗料を吐出している状態を示し、(b)は、第1の吐出部が第2の方向に相対移動しながら粉体塗料を吐出している状態を示す。
【
図4】
図3に示された第1の吐出部の変形例を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る粉体塗装ノズルの概略図であり、(a)は、流入口ならびに第1および第2の吐出口が見えるように描かれた正面図であり、(b)は、流入口ならびに第1の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図であり、(c)は、流入口ならびに第2の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る粉体塗装ノズルの概略図であり、(a)は、流入口ならびに第1および第2の吐出口が見えるように描かれた正面図であり、(b)は、流入口ならびに第1の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図であり、(c)は、流入口ならびに第2の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る粉体塗装ノズルの概略図であり、(a)は、流入口ならびに第1、第2および第3の吐出口が見えるように描かれた正面図であり、(b)は、流入口ならびに第1、第2および第3の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る粉体塗装ノズルの概略図であり、(a)は、流入口ならびに第1、第2および第3の吐出口が見えるように描かれた正面図であり、(b)は、流入口ならびに第1、第2および第3の吐出口が見えるように描かれた一方側の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルを説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の粉体塗装ノズルは、以下の実施形態に限定されることはない。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルは、管体の内面を粉体塗料で塗装するために用いられる。粉体塗装ノズルが適用可能な管体としては、公知のダクタイル鋳鉄管などの鋳鉄管が例示される。しかし、粉体塗装ノズルが適用可能な管体は、以下で説明する管体Pの構造を有するものであれば、特に限定されることはなく、他の材料で形成された管体であっても構わない。また、粉体塗装ノズルは、管体以外の塗装対象に適用することも可能である。
【0016】
管体Pは、
図1に示されるように、管軸X方向の両端が開口した筒状に形成され、その内部を上下水などの流体が流れる流路として機能する。管体Pは、他の管体Pと連結されることで、より長い流路を形成する。管体Pは、図示された例では、管軸Xが略直線状に延びる略円筒状に形成されている。しかし、管体Pは、その内部を流体が流れることができれば、その形状は特に限定されることはなく、管軸Xが湾曲していてもよいし、略角筒状など他の形の筒状に形成されていてもよい。
【0017】
管体Pは、
図1に示されるように、第1の管部Aおよび第2の管部Bを備えている。以下で詳しく述べるように、第1の管部Aの内面は、第2の管部Bの内面と比べて相対的に大きな凹凸を有している。本実施形態の粉体塗装ノズルは、管体P内の、このように凹凸の大きな内面部分に対して好適に適用することができる。図示された管体Pについて詳しく説明すると、管体Pは、管軸X方向の一端に設けられた受口P1と、管軸X方向の他端に設けられた挿口P2と、受口P1と挿口P2との間で管軸X方向に沿って延びる直管部P3とを備えている。図示された例では、受口P1が、第1の管部Aを構成し、挿口P2および直管部P3が、第2の管部Bを構成している。
【0018】
受口P1は、筒状に形成され、その内部に他の管体Pの挿口P2を受容する部位である。管体Pの受口P1が他の管体Pの挿口P2を受容することで、管体Pと他の管体Pとが連結される。受口P1は、他の管体Pの挿口P2を受容するために、挿口P2の外形よりも大きな内部空間を有するように形成されている。図示された例では、受口P1は、管軸X方向に沿って延びる略円筒状に形成され、挿口P2の外径よりも大きな内径を有している。受口P1の管軸X方向の一端には、他の管体Pの挿口P2が挿入される開口部P12が設けられ、受口P1の管軸X方向の他端には、直管部P3との境界を画定する段部P13が設けられている。受口P1の他端に段部P13が設けられることで、他の管体Pの挿口P2が受口P1の内部に受容されているときに、挿口P2が段部P13を越えて直管部P3内に侵入することが規制される。
【0019】
受口P1の内面P11は、
図1に示されるように、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31と比べて相対的に大きな凹凸を有している。ここで、相対的に凹凸が大きいとは、たとえば、比較対象と比べて、凸部分と凹部分との高さの差が大きいことをいう。図示された例では、受口P1の内面P11には、管体P、P同士の連結部分において流体が外部に漏出するのを抑制するゴム輪(図示せず)や、管体Pから他の管体Pが抜け出ることを抑制するロックリング(図示せず)を設けるために、内面P11の周方向に連続して、内面P11から管軸Xに向かって突出した複数の凸部P14と、複数の凸部P14の間に形成された複数の凹部P15とが設けられている。ゴム輪やロックリングは、凹部P15に嵌合することで、受口P1の内面P11に取り付けられる。受口P1は、内面P11に設けられるゴム輪およびロックリングを介して、他の管体Pの挿口P2と嵌合する。
【0020】
挿口P2は、他の管体Pの受口P1の内部に受容される部位である。管体Pの挿口P2が他の管体Pの受口P1に受容されることで、管体Pと他の管体Pとが連結される。挿口P2は、筒状に形成され、その内部が直管部P3の内部と連通している。図示された例では、挿口P2は、管軸X方向に沿って延びる略円筒状に形成され、直管部P3の内径と略同一の内径を有し、受口P1の内径よりも小さな内径を有している。挿口P2は、受口P1の内面P11と比べて相対的に小さな凹凸の内面P21を有している。図示された例では、挿口P2の内面P21は、直管部P3の内面P31とほぼ同程度の平滑度を有し、受口P1の内面P11と比べて平滑に形成されている。
【0021】
挿口P2の一端側は、直管部P3と連通し、挿口P2の他端側には、開口部P22が設けられている。挿口P2の外面には、管体Pが他の管体Pから抜け出すのを抑制する突起P23が設けられている。挿口P2の突起P23は、管体Pと他の管体Pとが連結されているときに、他の管体Pから管体Pが抜け出そうとすると他の管体Pの受口P1の内面P11に設けられたロックリング(図示せず)に当接して、管体Pが他の管体Pから抜け出すのを抑制する。
【0022】
直管部P3は、管体Pの本体部分を構成し、受口P1と挿口P2との間でその内部を流体が流れるように構成される。直管部P3は、
図1に示されるように、筒状に形成され、一端側で受口P1と連通し、他端側で挿口P2と連通している。図示された例では、直管部P3は、管軸X方向に沿って延びる略円筒状に形成され、挿口P2の内径と略同一の内径を有し、受口P1の内径よりも小さな内径を有している。直管部P3は、受口P1の内面P11と比べて相対的に小さな凹凸の内面P31を有している。図示された例では、直管部P3の内面P31は、挿口P2の内面P21とほぼ同程度の平滑度を有し、受口P1の内面P11と比べて平滑に形成されている。
【0023】
つぎに、
図2を参照して、本発明のいくつかの実施形態に係る粉体塗装ノズルが適用される塗装装置PDを説明する。ただし、以下の塗装装置PDは一例であり、本発明の粉体塗装ノズルは、塗装装置PD以外の公知の塗装装置に適用されてもよい。
【0024】
塗装装置PDは、
図2に示されるように、管体Pを相対回転させる回転装置Rと、粉体塗料を吐出する吐出装置Dとを備えている。塗装装置PDは、回転装置Rにより管体Pを相対回転させながら、吐出装置Dにより管体Pの内面に向けて粉体塗料を吐出することにより、管体Pの内面を塗装する。なお、塗装装置PDは、管体Pの内面に付着した粉体塗料をその内面上で硬化させるように、管体Pを予め加熱するためのガス炉や電気炉などの加熱装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0025】
回転装置Rは、管体Pを支持するとともに、管体Pを管軸X周りに相対回転させる。回転装置Rは、
図2に示されるように、管体Pを管軸X周りに相対回転させるための回転ローラR1と、回転ローラR1を回転可能に支持する支持台R2と、回転ローラR1を回転させるモーターなどの駆動装置(図示せず)とを備えている。回転装置Rは、吐出装置Dにより管体Pの内面に向けて粉体塗料を吐出する間、管体Pを管軸X周りで所定範囲(たとえば全周)に亘って回転させる。それによって、塗装装置PDでは、管体Pの内面を内周面に沿った所定範囲(たとえば全長)に亘って粉体塗料により塗装することができる。回転装置Rにより管体Pを回転させる速度は、特に限定されることはなく、必要とする塗装膜厚などに応じて適宜設定することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、塗装装置PDは、回転装置Rにより管体Pを管軸X周りに回転させることにより、管体Pの内周面に沿って粉体塗料で塗装するように構成されている。しかし、塗装装置PDは、必ずしも回転装置Rを備えていなくてもよく、管体Pの内周面に沿って粉体塗料で塗装するという目的のために、たとえば、後述する吐出装置Dに設けられた吐出部が管軸X周りに回転するように構成されていてもよいし、吐出部が管体Pの内面の周方向の所定範囲に粉体塗料を吐出するように構成されていてもよい。
【0027】
吐出装置Dは、管体Pの内面を塗装するために、管体Pの内側から管体Pの内面に向かって粉体塗料を吐出する。吐出装置Dは、
図2に示されるように、互いに異なる粉体塗料を吐出する第1の吐出装置D1および第2の吐出装置D2を備えている。第1の吐出装置D1および第2の吐出装置D2はそれぞれ、第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2を吐出するように構成されている。ただし、吐出装置Dは、必ずしも2つの吐出装置を備えていなくてもよく、たとえば1つの吐出装置で第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2を交替で吐出するように構成されていてもよいし、第1の吐出装置D1および第2の吐出装置D2で同じ粉体塗料を吐出するように構成されていてもよい。
【0028】
第1の吐出装置D1は、管体Pの受口P1の内面P11(第1の管部Aの内面)を第1の粉体塗料Dp1により塗装するために用いられる。その目的のために、第1の吐出装置D1は、管体Pの受口P1の内側から受口P1の内面P11に向けて第1の粉体塗料Dp1を吐出するように構成される。第1の吐出装置D1は、
図2に示されるように、受口P1の内面P11に向けて第1の粉体塗料Dp1を吐出する第1の吐出部D11(粉体塗装ノズル)と、第1の吐出部D11に第1の粉体塗料Dp1を供給するランスなどの第1の粉体塗料供給管D12と、管軸X方向に沿って第1の吐出部D11を受口P1の管軸X方向の所定範囲(たとえば開口部P12から段部P13までの全長)に亘って相対移動させる第1の駆動装置D13と、第1の粉体塗料Dp1を収容し、第1の粉体塗料Dp1を第1の粉体塗料供給管D12および第1の吐出部D11に供給する第1の粉体塗料供給装置D14とを備えている。第1の吐出装置D1は、第1の駆動装置D13によって第1の吐出部D11が受口P1の管軸X方向の所定範囲に亘って相対移動させられることにより、受口P1の内面P11を管軸X方向の所定範囲に亘って第1の粉体塗料Dp1により塗装することができる。ただし、第1の吐出装置D1は、管体Pの受口P1の内面P11を第2の粉体塗料Dp2により塗装するために用いられてもよいし、第1および第2の粉体塗料Dp1、Dp2のいずれかで管体Pの挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31(第2の管部Bの内面)を塗装するために用いられてもよい。
【0029】
第1の吐出装置D1は、
図3(a)、(b)に示されるように、第1の粉体塗料Dp1を吐出する第1の吐出部D11を、管軸X方向に沿って受口P1から挿口P2に向かう第1の方向X1(
図3(a)、たとえば「往路」ともいう)と、管軸X方向に沿って挿口P2から受口P1に向かう第2の方向X2(
図3(b)、たとえば「復路」ともいう)との両方に、受口P1の内面P11に対して相対移動させるように構成されていてもよい。この場合、第1の吐出装置D1は、第1の吐出部D11を第1の方向X1に相対移動させながら、第1の吐出部D11から第1の方向X1に対して第1の吐出角度θ1で第1の粉体塗料Dp1を吐出するように構成され得る。また、第1の吐出装置D1は、第1の吐出部D11を第2の方向X2に相対移動させながら、第1の吐出部D11から第2の方向X2に対して第2の吐出角度θ2で第1の粉体塗料Dp1を吐出するように構成され得る。第1の吐出装置D1は、往路と復路で同一場所を塗装してもよいし(往復塗装)、往路と復路で別の場所を塗装してもよい(往路塗装、復路塗装)。なお、第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2は、第1の吐出部D11から吐出される第1の粉体塗料Dp1の広がりの略中心の角度である。
【0030】
第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2は、少なくとも第1の粉体塗料Dp1が受口P1の内面P11に向かって進むように設定されていればよく、特に限定されることはないが、その両方が鋭角であることが好ましい。第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2の両方が鋭角であることにより、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11を均一に塗装することができる。これは、たとえば第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2を鈍角とすると(第1の吐出部D11の進行方向に対して反対側に吐出すると)、第1の粉体塗料Dp1の吐出速度から第1の吐出部D11の移動速度が差し引かれて、第1の粉体塗料Dp1の吹き付け角度が受口P1の内面P11に垂直な方向に近くなってしまうが、第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2の両方を鋭角とすることで、より確実に、受口P1の内面P11に垂直な方向から傾斜した方向に沿って第1の粉体塗料Dp1を吹き付けることができるので、受口P1の内面P11の凹凸の角部に第1の粉体塗料Dp1が容易に入り込むことができることによるものと考えられる。
【0031】
第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2は、受口P1の内面P11を均一に塗装するために鋭角であればよく、特に限定されることはないが、第1の吐出角度θ1が第2の吐出角度θ2よりも大きくなるように角度が設定されることが好ましい。第1の吐出角度θ1が第2の吐出角度θ2よりも大きいことにより、受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。これは、受口P1の内面P11に存在する凹部P15の第1の方向X1側の側壁と第2の方向X2側の側壁とで傾斜に違いがあり、この傾斜の違いに吐出角度θ1、θ2の違いが対応するようになり、第1の粉体塗料Dp1が凹凸の角部に入り込むことができることによるものと考えられる。
【0032】
第1の吐出角度θ1は、受口P1の内面P11をより均一に塗装するために第2の吐出角度θ2よりも大きくなるように設定されていればよく、特に限定されることはないが、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、50~80°の範囲内であることが好ましく、60~70°の範囲内であることがより好ましく、60~65°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1は、第1の吐出角度θ1を中心として第1の広がり角度α1で広がるように、第1の吐出部D11から吐出されてもよい。第1の広がり角度α1は、特に限定されることはないが、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、後述する第2の広がり角度α2よりも小さいことが好ましく、10~30°の範囲内であることがより好ましく、15~25°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0033】
第2の吐出角度θ2は、受口P1の内面P11をより均一に塗装するために第1の吐出角度θ1よりも小さくなるように設定されていればよく、特に限定されることはないが、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、40~70°の範囲内であることが好ましく、45~60°の範囲内であることがより好ましく、50~55°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1は、第2の吐出角度θ2を中心として第2の広がり角度α2で広がるように、第1の吐出部D11から吐出されてもよい。第2の広がり角度α2は、特に限定されることはないが、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、第1の広がり角度α1よりも大きいことが好ましく、30~50°の範囲内であることがより好ましく、40~50°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0034】
第1の吐出装置D1は、
図3(a)、(b)に示された例では、1つの第1の吐出部D11で、進行方向X1、X2に応じて吐出角度および/または広がり角度を変更することができるように示されている。しかし、第1の吐出装置D1は、吐出角度および/または広がり角度の異なる複数の吐出部を備え、複数の吐出部を進行方向X1、X2に応じて使い分けてもよい。つまり、第1の吐出部D11(粉体塗装ノズル)は、
図4に示されるように、互いに反対の進行方向X1、X2に向かってそれぞれが傾斜して粉体塗料(たとえば、第1の粉体塗料Dp1)を吐出する複数の粉体塗装ノズルD111、D112を含んでいてもよい。その場合、複数の粉体塗装ノズルD111、D112は、複数の粉体塗装ノズルD111、D112のそれぞれにより吐出される粉体塗料が到達する管体Pの内面(たとえば、管体Pの受口P1の内面P11)上の領域PR1、PR2の少なくとも一部同士が互いにオーバーラップするように配置されることが好ましい。これにより、進行方向X1、X2に応じて、使用する粉体塗装ノズルD111、D112を切り替える前後で、管体Pの内面のほぼ同じ領域を塗装することができる。したがって、進行方向X1、X2に沿って塗装膜厚を略均一にするために、進行方向X1、X2に応じて粉体塗装ノズルD111、D112を切り替える前後で、粉体塗装ノズルD111、D112の相対移動位置を調整する必要がなくなる(または、必要性が軽減される)。これにより、往復塗装のプロセスを簡略化することができる。
【0035】
図4に示された例で具体的に説明すると、第1の吐出部D11(粉体塗装ノズル)は、第1の粉体塗装ノズルD111(たとえば、後述する粉体塗装ノズル1、3など)および第2の粉体塗装ノズルD112(たとえば、後述する粉体塗装ノズル2、4など)を含んでいる。第1および第2の粉体塗装ノズルD111、D112はそれぞれ、
図3(a)に関連して述べた第1の吐出部D11および
図3(b)に関連して述べた第1の吐出部D11に対応している。第1の粉体塗装ノズルD111は、管体Pの内面(たとえば、管体Pの受口P1の内面P11)に対して進行方向X1、X2のうちの第1の方向X1に沿って相対移動しながら、第1の方向X1に対して鋭角である第1の吐出角度θ1で、管体Pの内面に向けて粉体塗料(たとえば、第1の粉体塗料Dp1)を吐出するように構成されている。さらに、第1の粉体塗装ノズルD111は、第1の吐出角度θ1を中心として第1の広がり角度α1で粉体塗料が広がるように、粉体塗料を吐出するように構成されている。また、第2の粉体塗装ノズルD112は、管体Pの内面(たとえば、管体Pの受口P1の内面P11)に対して進行方向X1、X2のうちの第2の方向X2に沿って相対移動しながら、第2の方向X2に対して鋭角である第2の吐出角度θ2で、管体Pの内面に向けて粉体塗料(たとえば、第1の粉体塗料Dp1)を吐出するように構成されている。さらに、第2の粉体塗装ノズルD112は、第2の吐出角度θ2を中心として第2の広がり角度α2で粉体塗料が広がるように、粉体塗料を吐出するように構成されている。なお、第1の吐出部D11は、
図4に示された例では2つの粉体塗装ノズルD111、D112を含んでいるが、3つ以上の粉体塗装ノズルを含んでいてもよい。
【0036】
第1の粉体塗装ノズルD111および第2の粉体塗装ノズルD112は、互いに対する相対位置を略一定に保ちながら、管体Pの内面に対して進行方向X1、X2に沿って相対移動するように構成されている。本実施形態では、第1の粉体塗装ノズルD111および第2の粉体塗装ノズルD112は、互いに対して固定されることで、管体Pの内面に対して相対移動する間、互いに対する相対位置を略一定に保っている。ただし、第1の粉体塗装ノズルD111および第2の粉体塗装ノズルD112は、少なくとも管体Pの内面に対して相対移動する際に相対位置が略一定に保たれていればよく、たとえば、互いに対して分離され、同じ速度で相対移動するように構成されていてもよい。
【0037】
第1の粉体塗装ノズルD111および第2の粉体塗装ノズルD112は、
図4に示されるように、進行方向X1、X2に沿って相対移動する間の任意の相対移動位置において、第1の粉体塗装ノズルD111によって吐出される粉体塗料が到達する管体Pの内面上の第1の領域PR1と、第2の粉体塗装ノズルD112によって吐出される粉体塗料が到達する管体Pの内面上の第2の領域PR2とが互いに少なくも一部でオーバーラップするように、配置される。したがって、第1の方向X1および第2の方向X2の両方で塗装を行う場合(往復塗装)において、第1の方向X1で塗装するとき(往路塗装)と第2の方向X2で塗装するとき(復路塗装)との間で、第1の粉体塗装ノズルD111と第2の粉体塗装ノズルD112とを切り替える前後で、管体Pの内面上のほぼ同じ領域を塗装することができる。したがって、進行方向X1、X2に沿って塗装膜厚を略均一にするために、第1の粉体塗装ノズルD111と第2の粉体塗装ノズルD112とを切り替える前後で、第1および第2の粉体塗装ノズルD111、D112の進行方向X1、X2の相対移動位置を調整する必要がない(または、必要性が軽減される)。これにより、往復塗装のプロセスを簡略化することができる。
【0038】
第1の領域PR1および第2の領域PR2は、少なくとも一部同士が管体Pの内面上で互いにオーバーラップしていればよく、そのオーバーラップ領域の全体に対する割合は特に限定されない。たとえば、第1の粉体塗装ノズルD111と第2の粉体塗装ノズルD112とを切り替える前後で、出来る限り管体Pの内面上の同じ領域を塗装するという目的のために、第1および第2の領域PR1、PR2のいずれか一方が、第1および第2の領域PR1、PR2の他方に含まれることが好ましい(
図4に示された例では、第1の領域PR1が第2の領域PR2に含まれる)。また、第1の領域PR1の一部と第2の領域PR2の一部とが互いにオーバーラップしている場合には、上記と同様の観点から、第1および第2の領域PR1、PR2のそれぞれの面積に対する、第1および第2の領域PR1、PR2のそれぞれにおけるオーバーラップ領域の面積の割合が、7/10以上が好ましく、8/10以上が好ましく、9/10以上がよりさらに好ましい。
【0039】
なお、第1の吐出装置D1は、第1の駆動装置D13により第1の吐出部D11を管軸X方向に沿って相対移動させることで、受口P1の内面P11の管軸X方向の所定範囲に亘って第1の粉体塗料Dp1を吐出するように構成されている。しかし、第1の吐出装置D1は、必ずしも第1の吐出部D11を管軸X方向に沿って移動させるように構成されていなくてもよく、管軸X方向の所定範囲に亘って第1の粉体塗料Dp1を吐出するという目的のために、たとえば、第1の吐出部D11の管軸X方向の位置を固定しておいて管体Pを管軸X方向に沿って移動させてもよいし、管軸X方向の所定範囲に亘って延びるように吐出部が設けられていてもよい。
【0040】
第1の吐出装置D1は、第1の粉体塗料Dp1を帯電させて、受口P1の内面P11を静電粉体塗装するために、たとえば摩擦帯電塗装装置などの公知の静電塗装装置(図示せず)が設けられていてもよい。静電塗装装置は、たとえば、第1の粉体塗料Dp1を帯電させるための帯電装置(たとえば塗装ガン)を備える。第1の粉体塗料Dp1は、帯電装置によって帯電されて、静電力によって受口P1の内面P11に付着される。第1の吐出装置D1は、第1の粉体塗料Dp1により静電粉体塗装を行なうことで、受口P1の内面P11をより効率よく、また、より均一に塗装することができる。
【0041】
第2の吐出装置D2は、管体Pの挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31(第2の管部Bの内面)を第2の粉体塗料Dp2により塗装するために用いられる。その目的のために、第2の吐出装置D2は、管体Pの挿口P2および直管部P3の内側から挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向けて第2の粉体塗料Dp2を吐出するように構成される。第2の吐出装置D2は、
図2に示されるように、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向けて第2の粉体塗料Dp2を吐出する第2の吐出部D21(粉体塗装ノズル)と、第2の吐出部D21に第2の粉体塗料Dp2を供給するランスなどの第2の粉体塗料供給管D22と、管軸X方向に沿って第2の吐出部D21を挿口P2および直管部P3の管軸X方向の所定範囲(たとえば開口部P22から段部P13までの全長)に亘って相対移動させる第2の駆動装置D23と、第2の粉体塗料Dp2を収容し、第2の粉体塗料Dp2を第2の粉体塗料供給管D22および第2の吐出部D21に供給する第2の粉体塗料供給装置D24とを備えている。第2の吐出装置D2は、第2の駆動装置D23によって第2の吐出部D21が挿口P2および直管部P3の管軸X方向の所定範囲に亘って相対移動させられることにより、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を管軸X方向の所定範囲に亘って第2の粉体塗料Dp2により塗装することができる。ただし、第2の吐出装置D2は、管体Pの挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第1の粉体塗料Dp1により塗装するために用いられてもよいし、第1および第2の粉体塗料Dp1、Dp2のいずれかで管体Pの受口P1の内面P11(第1の管部Aの内面)を塗装するために用いられてもよい。
【0042】
第2の吐出装置D2は、第1の吐出装置D1と同様に、第2の粉体塗料Dp2を吐出する第2の吐出部D21を、管軸X方向に沿って受口P1から挿口P2に向かう第1の方向X1(
図2を参照)と、管軸X方向に沿って挿口P2から受口P1に向かう第2の方向X2(
図2を参照)との両方のそれぞれに、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に対して相対移動させるように構成されていてもよい。この場合、第2の吐出装置D2は、第2の吐出部D21を第1の方向X1および第2の方向X2のそれぞれに相対移動させながら、第2の吐出部D21から第2の粉体塗料Dp2を吐出するように構成され得る。第2の吐出装置D2は、往路(第1の方向X1)と復路(第2の方向X2)で同一場所を塗装してもよいし(往復塗装)、往路と復路で別の場所を塗装してもよい(往路塗装、復路塗装)。第2の吐出部D21から第2の粉体塗料Dp2を吐出する吐出角度や広がり角度は、第2の粉体塗料Dp2によって挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を塗装することができれば、特に限定されることはなく、第1の吐出装置D1における吐出角度や広がり角度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2の吐出部D21は、第1の吐出部D11と同様に、互いに反対の進行方向X1、X2に向かってそれぞれが傾斜して第2の粉体塗料Dp2を吐出するとともに、吐出される第2の粉体塗料Dp2が到達する管体Pの内面上の領域が互いにオーバーラップするように配置された複数の粉体塗装ノズルを備えていてもよい。
【0043】
なお、第2の吐出装置D2は、第2の駆動装置D23により第2の吐出部D21を管軸X方向に沿って移動させることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の管軸X方向の所定範囲に亘って第2の粉体塗料Dp2を吐出するように構成されている。しかし、第2の吐出装置D2は、必ずしも第2の吐出部D21を管軸X方向に沿って移動させるように構成されていなくてもよく、管軸X方向の所定範囲に亘って第2の粉体塗料Dp2を吐出するという目的のために、たとえば、第2の吐出部D21の管軸X方向の位置を固定しておいて管体Pを管軸X方向に沿って移動させてもよいし、管軸X方向の所定範囲に亘って延びるように粉体塗装ノズルが設けられていてもよい。
【0044】
ここで、粉体塗料とは、粉末状の塗料のことを意味し、より具体的には、塗料中に有機溶剤や水を含まず、塗膜形成成分のみからなる粉末状の塗料を意味する。ここで使用される第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2としては、特に限定されることはなく、たとえば、管体Pの内面に付着したあとに、熱により硬化する性質を有する公知のエポキシ樹脂粉体塗料を用いることができる。第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2は、特に限定されることはなく、互いに同じ材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料で形成されていてもよい。
【0045】
たとえば、エポキシ樹脂粉体塗料は、常温で固形のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂用の硬化剤、さらに必要に応じて各種顔料、添加剤などを含有する。
【0046】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、複素環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。その中でも、安全性の観点から、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンから合成されるビスフェノールF型エポキシ樹脂が好適に採用される。
【0047】
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させる性質を有していれば、特に限定されることはないが、アミン系化合物、アミド系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、酸無水物、フェノール樹脂およびその誘導体などが挙げられる。その中でも、塗膜の防食性、可撓性、密着性および強度の観点から、アニリンを主体とした変性芳香族アミンアダクト、エチレンジアミンとベンゾニトリルを主体としたイミダゾール・イミダゾリン化合物、ヒドラジンと二塩基を主体としたヒドラジド、トリメリット酸とエチレングリコールを主体とした酸無水物が好適に採用される。
【0048】
顔料のうち着色顔料としては、たとえばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、黄色酸化鉄などが挙げられる。顔料のうち体質顔料としては、たとえば硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0049】
第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2は、たとえば第1の粉体塗料Dp1の平均粒径が第2の粉体塗料Dp2の平均粒径よりも小さくなるように調製されてもよい。すなわち、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11(第1の管部Aの内面)を塗装するために、相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1が用いられ、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31(第2の管部Bの内面)を塗装するために、相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2が用いられ得る。相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11の塗装に相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1を用いることで、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。これは、相対的に小さな第1の粉体塗料Dp1が吐出装置から吐出されたときに、第1の粉体塗料Dp1が比較的均一に分散されて、凹凸の角部まで入り込み易くなることによるものと考えられる。それに対して、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の塗装に相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2を用いることで、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を効率よく塗装することができる。これは、相対的に大きな第2の粉体塗料Dp2が吐出装置から吐出されたときに、第2の粉体塗料Dp2が比較的まっすぐに挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向かうため、管体Pの内部で浮遊したり、管体Pの両側の開口部P12、P22に向かって流れ出たりすることなどが抑制されて、歩留まり良く挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に付着することによるものと考えられる。
【0050】
なお、粉体塗料の「粒径」との用語は、通常用いられる用語の意味で用いられるが、たとえば、粉体塗料を構成する粒子をその粒子と同じ体積を有する球体と仮定したときの球体の直径を意味する。粉体塗料の平均粒径は、公知の粒子径測定装置により測定することができる。
【0051】
第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2の大きさは、特に限定されることはなく、塗装する管体Pの内面の凹凸の大きさに応じて適宜選択することができる。その中で、たとえば、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径は、20~50μmであることが好ましい。第1の粉体塗料Dp1の平均粒径を20μm以上とすることで、受口P1の内面P11をより効率よく塗装することができる。また、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径を50μm以下とすることで、受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。また、たとえば、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径は、70~80μmであることが好ましい。第2の粉体塗料Dp2の平均粒径を70μm以上とすることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31をより効率よく塗装することができる。また、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径を80μm以下とすることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31をより均一に塗装することができる。
【0052】
第1の粉体塗料Dp1は、管体Pの内面に付着したあとに、熱により硬化する性質を有していればよく、特に限定されることはないが、170℃におけるゲルタイムが90~250秒の範囲内になるように調製されることが好ましい。第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムが90秒以上であることにより、受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。これは、第1の粉体塗料Dp1が硬化するまでの時間が長くなることで、第1の粉体塗料Dp1が硬化するまでの間に第1の粉体塗料Dp1が受口P1の内面P11の凹凸の角部に入り込み易くなることによるものと考えられる。同様の観点から、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムは、135秒以上であることがより好ましく、180秒以上であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムが250秒以下であることにより、塗装効率が上がるとともに、塗膜の均一性が向上する。同様の観点から、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムは、235秒以下であることがより好ましく、220秒以下であることがよりさらに好ましい。
【0053】
第2の粉体塗料Dp2は、管体Pの内面に付着したあとに、熱により硬化する性質を有していればよく、特に限定されることはないが、170℃におけるゲルタイムが50~250秒の範囲内になるように調製されることが好ましい。第2の粉体塗料Dp2のゲルタイムが50~250秒の範囲内であることにより、塗装効率が上がるとともに、塗膜の均一性が向上する。同様の観点から、第2の粉体塗料Dp2のゲルタイムは、70~235秒以下であることがより好ましく、90~220秒以下であることがよりさらに好ましい。
【0054】
なお、ゲルタイムとは、一般的には、指定用量の粉体塗料が溶融後、指定条件の下で変形できなくなるまでの時間を意味する。ゲルタイムは、たとえば、170℃に加温したホットプレートに、粉体塗料を2gのせて溶融させ、このとき金属棒を使用して塗料の一部を10cm引き上げ、糸引き状態を確認し、塗料が糸を引かず10cm以下で切れるようになった時間とすることができる。また、ゲルタイムは、硬化剤の種類、量、エポキシ樹脂の重合度などによって制御することができる。
【0055】
以上に示したように、塗装装置PDでは、たとえば相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11の塗装に相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1を用い、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の塗装に相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2を用いることで、管体Pの内面をより効率よく、またより均一に内面を塗装することができる。さらに、上述のように粉体塗料の吐出角度を調整することによって、および/または、上述のように粉体塗料のゲルタイムを調整することによって、管体Pの内面をより効率よく、より均一に内面を塗装することができる。なお、管体Pの内面を効率よく、また均一に内面を塗装するという目的のためには、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径を第2の粉体塗料Dp2の平均粒径よりも小さくするということだけではなく、たとえば第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2の平均粒径の異同に関係なく、上述のように粉体塗料の吐出角度を調整することによって、および/または、上述のように粉体塗料のゲルタイムを調整することによって、管体Pの内面を効率よく、また均一に内面を塗装することができる。
【0056】
つぎに、
図5~
図8を参照して、本発明の第1~第4実施形態に係る粉体塗装ノズル1、2、3、4を説明する。
図5~
図8はそれぞれ、第1~第4実施形態に係る粉体塗装ノズル1、2、3、4のそれぞれを図示している。これらの実施形態の粉体塗装ノズル1、2、3、4は、上述した塗装装置PDの第1の吐出部D11および第2の吐出部D21として好適に用いることができ、特に、管体Pの相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11の塗装のための第1の吐出部D11として好適に用いることができる。ただし、本発明の粉体塗装ノズルは、上述した塗装装置PDに限定されることはなく、他の公知の粉体塗装装置にも適用可能である。
【0057】
第1~第4実施形態の粉体塗装ノズル1、2、3、4は、塗装対象に対して進行方向に沿って相対移動しながら、塗装対象に向けて粉体塗料を吐出するノズルである。ここで、「塗装対象」という用語は、粉体塗装ノズルが進行方向に沿って塗装対象に対して相対移動しながら塗装することが可能な塗装対象物のことを意味し、特に限定されることはなく、たとえば上述した管体P(たとえば公知のダクタイル鋳鉄管)の内面、特に管体Pの受口P1の内面P11が例示される。また、「進行方向」という用語は、塗装対象に対して相対移動する方向を意味し、特に限定されることはなく、たとえば管体Pの管軸X方向に沿った方向、特に管軸X方向に沿って受口P1から挿口P2に向かう第1の方向X1(
図3(a)参照)と、管軸X方向に沿って挿口P2から受口P1に向かう第2の方向X2(
図3(b)参照)とが例示される。また、「粉体塗料」という用語は、上述した粉体塗料と同義であり、特に限定されることはなく、たとえば第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2、特に第1の粉体塗料Dp1が例示される。また、「相対移動」という用語は、塗装対象に対して粉体塗装ノズルが移動することと、粉体塗装ノズルに対して塗装対象が移動することの両方を含む概念である。以下では、塗装対象を管体Pの受口P1の内面P11とし、進行方向を管軸X方向に沿った第1および第2の方向X1、X2とし、塗装対象に対して粉体塗装ノズルが移動するものとして、粉体塗装ノズル1、2、3、4を説明する。
【0058】
第1~第4実施形態の粉体塗装ノズル1、2、3、4はいずれも、
図5~
図8に示されるように、進行方向である第1および第2の方向X1、X2に向かって傾斜する複数の吐出口12、13、22、23、32、33、34、42、43、44を備えている。より具体的には、粉体塗装ノズル1、2、3、4はそれぞれ、粉体塗料が吐出される吐出方向と進行方向X1、X2との間の角度が鋭角であるように複数の吐出口12、13、22、23、32、33、34、42、43、44が設けられている。粉体塗装ノズル1、2、3、4は、吐出口12、13、22、23、32、33、34、42、43、44が進行方向X1、X2に向かって傾斜することで、上述したように、凹凸の大きな受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。そして、粉体塗装ノズル1、2、3、4は、進行方向X1、X2に向かって傾斜した吐出口12、13、22、23、32、33、34、42、43、44を複数有することにより、粉体塗料を分散して吐出することができるので、凹凸の大きな受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0059】
つぎに、
図5~
図8を参照しながら、第1~第4実施形態の粉体塗装ノズル1、2、3、4のそれぞれを説明する。第1実施形態の粉体塗装ノズル1は、管体Pの受口P1の内面P11に対して第1の方向X1に移動しながら、管体Pの受口P1の内面P11に向けて粉体塗料を吐出するために用いることができる(
図3(a)参照)。粉体塗装ノズル1は、
図5に示されるように、進行方向である第1の方向X1に向かって傾斜する複数の吐出口12、13を備えている。複数の吐出口12、13は、第1の方向X1に沿って粉体塗料を分散して吐出するように設けられている。その目的のために、複数の吐出口12、13のそれぞれは、第1の方向X1に対する角度が互いに異なる粉体塗料の吐出角度θ3、θ4を有している。粉体塗装ノズル1は、第1の方向X1に対する吐出角度θ3、θ4が互いに異なる複数の吐出口12、13を備えることで、第1の方向X1に沿ってより均一に粉体塗料を吐出することができる。たとえば、粉体塗装ノズルが1つの吐出口だけを備える場合、進行方向に向かって傾斜して設けられる吐出口内では、進行方向で粉体塗料が偏ってしまい、吐出する粉体塗料にムラが生じてしまう。それに対して、本実施形態では、粉体塗装ノズル1は、第1の方向X1に対する吐出角度θ3、θ4が互いに異なる複数の吐出口12、13を備えることで、複数の吐出口12、13が第1の方向X1に沿って粉体塗料を分散して吐出するので、第1の方向X1においてより均一に粉体塗料を吐出し、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0060】
粉体塗装ノズル1は、本実施形態では、
図5に示されるように、粉体塗料が流入する流入口11と、粉体塗料を吐出する複数の吐出口12、13とを備えている。流入口11は、近位端11aから遠位端11bまで延びるように形成されている。流入口11は、近位端11aで、上述した塗装装置PDの第1の吐出装置D1の第1の粉体塗料供給管D12と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から第1の粉体塗料Dp1が供給される(
図2参照)。また、流入口11は、遠位端11bで複数の吐出口12、13と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から供給された第1の粉体塗料Dp1を複数の吐出口12、13に供給する。流入口11は、供給された粉体塗料を吐出口12、13に供給することできればよく、特に限定されることはないが、図示された例では、管軸X方向、すなわち第1の方向X1に沿って近位端11aから遠位端11bまで延び、その全長に亘って略一定の内径を有するように形成されている。
【0061】
複数の吐出口12、13はそれぞれ、
図5に示されるように、近位端12a、13aから遠位端12b、13bまで延びるように形成されている。複数の吐出口12、13は、近位端12a、13aで流入口11と連通し、流入口11から第1の粉体塗料Dp1が供給される。また、複数の吐出口12、13は、遠位端12b、13bで開口し、流入口11から供給された第1の粉体塗料Dp1を管体Pの受口P1の内面P11に向けて吐出する。複数の吐出口12、13は、1つの流入口11の遠位端11bから分岐して、互いに略等しい内径を有するように形成されている。これにより、複数の吐出口12、13は、略等しい吐出量で粉体塗料を吐出することができる。また、複数の吐出口12、13はそれぞれ、管軸X方向に沿って延びる流入口11に対して(吐出角度θ3、θ4で)傾斜して延びるように設けられている。このように流入口に対して吐出口が傾斜している場合、流入口と吐出口との接続部分の流路内で外回りする粉体塗料が多くなって、粉体塗料の吐出量が進行方向でムラが生じてしまう。しかし、本実施形態のように、異なる角度で傾斜する複数の吐出口12、13を備えることで、第1の方向X1における粉体塗料の吐出量のムラを抑え、より均一に粉体塗料を吐出することができる。それによって、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0062】
複数の吐出口12、13は、
図5に示されるように、第1の方向X1に対して第3の吐出角度θ3で粉体塗料を吐出する第1の吐出口12と、第1の方向X1に対して第4の吐出角度θ4で粉体塗料を吐出する第2の吐出口13とを含んでいる。第1および第2の吐出口12、13は、それぞれの吐出方向と第1の方向X1とに対して略垂直方向(
図5(a)内で左右方向)における流入口11の両側の端部から分岐するように設けられている。第3および第4の吐出角度θ3、θ4は、ともに鋭角であり、互いに異なるように設定されている。なお、粉体塗装ノズル1は、本実施形態では2つの吐出口12、13を備えているが、3つ以上の吐出口を備えていてもよい。
【0063】
第3および第4の吐出角度θ3、θ4は、特に限定されることはないが、後述する第5および第6の吐出角度θ5、θ6の平均値よりも大きい平均値を有することが好ましい。それにより、塗装装置PDの説明に関連して上で述べたように、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。第3および第4の吐出角度θ3、θ4は、第1および第2の吐出口12、13から吐出される粉体塗料の流れが第1の方向X1で互いにオーバーラップするような範囲で設定されることが好ましい。たとえば、第3の吐出角度θ3は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、50~70°の範囲内であることが好ましく、55~65°の範囲内であることがさらに好ましく、58~62°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第4の吐出角度θ4は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、60~80°の範囲内であることが好ましく、65~75°の範囲内であることがさらに好ましく、68~72°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0064】
第1実施形態の粉体塗装ノズル1は、
図4に関連して述べた第1の粉体塗装ノズルD111として、第2の粉体塗装ノズルD112として使用され得る第2および第4実施形態の粉体塗装ノズル2、4と組み合わせて使用することができる。
【0065】
第2実施形態の粉体塗装ノズル2は、管体Pの受口P1の内面P11に対して第2の方向X2に移動しながら、管体Pの受口P1の内面P11に向けて粉体塗料を吐出するために用いることができる(
図3(b)参照)。粉体塗装ノズル2は、
図6に示されるように、進行方向である第2の方向X2に向かって傾斜する複数の吐出口22、23を備えている。複数の吐出口22、23は、第2の方向X2に沿って粉体塗料を分散して吐出するように設けられている。その目的のために、複数の吐出口22、23のそれぞれは、第2の方向X2に対する角度が互いに異なる粉体塗料の吐出角度θ5、θ6を有している。粉体塗装ノズル2は、第2の方向X2に対する吐出角度θ5、θ6が互いに異なる複数の吐出口22、23を備えることで、第2の方向X2に沿ってより均一に粉体塗料を吐出することができる。たとえば、粉体塗装ノズルが1つの吐出口だけを備える場合、進行方向に向かって傾斜して設けられる吐出口内では、進行方向で粉体塗料が偏ってしまい、吐出する粉体塗料にムラが生じてしまう。それに対して、本実施形態では、粉体塗装ノズル2は、第2の方向X2に対する吐出角度θ5、θ6が互いに異なる複数の吐出口22、23を備えることで、複数の吐出口22、23が第2の方向X2に沿って粉体塗料を分散して吐出するので、第2の方向X2においてより均一に粉体塗料を吐出し、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0066】
粉体塗装ノズル2は、本実施形態では、
図6に示されるように、粉体塗料が流入する流入口21と、粉体塗料を吐出する複数の吐出口22、23とを備えている。流入口21は、近位端21aから遠位端21bまで延びるように形成されている。流入口21は、近位端21aで、上述した塗装装置PDの第1の吐出装置D1の第1の粉体塗料供給管D12と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から第1の粉体塗料Dp1が供給される(
図2参照)。また、流入口21は、遠位端21bで複数の吐出口22、23と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から供給された第1の粉体塗料Dp1を複数の吐出口22、23に供給する。流入口21は、供給された粉体塗料を吐出口22、23に供給することできればよく、特に限定されることはないが、図示された例では、管軸X方向、すなわち第2の方向X2に沿って近位端21aから遠位端21bまで延び、その全長に亘って略一定の内径を有するように形成されている。
【0067】
複数の吐出口22、23はそれぞれ、
図6に示されるように、近位端22a、23aから遠位端22b、23bまで延びるように形成されている。複数の吐出口22、23は、近位端22a、23aで流入口21と連通し、流入口21から第1の粉体塗料Dp1が供給される。また、複数の吐出口22、23は、遠位端22b、23bで開口し、流入口21から供給された第1の粉体塗料Dp1を管体Pの受口P1の内面P11に向けて吐出する。複数の吐出口22、23は、1つの流入口21の遠位端21bから分岐して、互いに略等しい内径を有するように形成されている。これにより、複数の吐出口22、23は、略等しい吐出量で粉体塗料を吐出することができる。また、複数の吐出口22、23はそれぞれ、管軸X方向に沿って延びる流入口21に対して(吐出角度θ5、θ6で)傾斜して延びるように設けられている。このように流入口に対して吐出口が傾斜している場合、流入口と吐出口との接続部分の流路内で外回りする粉体塗料が多くなって、粉体塗料の吐出量が進行方向でムラが生じてしまう。しかし、本実施形態のように、異なる角度で傾斜する複数の吐出口22、23を備えることで、第2の方向X2における粉体塗料の吐出量のムラを抑え、より均一に粉体塗料を吐出することができる。それによって、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0068】
複数の吐出口22、23は、
図6に示されるように、第2の方向X2に対して第5の吐出角度θ5で粉体塗料を吐出する第1の吐出口22と、第2の方向X2に対して第6の吐出角度θ6で粉体塗料を吐出する第2の吐出口23とを含んでいる。第1および第2の吐出口22、23は、それぞれの吐出方向と第2の方向X2とに対して略垂直方向(
図6(a)内で左右方向)における流入口21の両側の端部から分岐するように設けられている。第5および第6の吐出角度θ5、θ6は、ともに鋭角であり、互いに異なるように設定されている。なお、粉体塗装ノズル2は、本実施形態では2つの吐出口22、23を備えているが、3つ以上の吐出口を備えていてもよい。
【0069】
第5および第6の吐出角度θ5、θ6は、特に限定されることはないが、上述した第3および第4の吐出角度θ3、θ4の平均値よりも小さい平均値を有することが好ましい。それにより、塗装装置PDの説明に関連して上で述べたように、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。第5および第6の吐出角度θ5、θ6は、第1および第2の吐出口22、23から吐出される粉体塗料の流れが第2の方向X2において互いにオーバーラップするような範囲で設定されることが好ましい。たとえば、第5の吐出角度θ5は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、52~72°の範囲内であることが好ましく、57~67°の範囲内であることがさらに好ましく、60~64°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第6の吐出角度θ6は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、42~62°の範囲内であることが好ましく、47~57°の範囲内であることがさらに好ましく、50~54°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0070】
第2実施形態の粉体塗装ノズル2は、
図4に関連して述べた第2の粉体塗装ノズルD112として、第1の粉体塗装ノズルD111として使用され得る第1および第3実施形態の粉体塗装ノズル1、3と組み合わせて使用することができる。
【0071】
第3実施形態の粉体塗装ノズル3は、管体Pの受口P1の内面P11に対して第1の方向X1に移動しながら、管体Pの受口P1の内面P11に向けて粉体塗料を吐出するために用いることができる(
図3(a)参照)。粉体塗装ノズル3は、
図7に示されるように、進行方向である第1の方向X1に向かって傾斜する複数の吐出口32、33、34を備えている。複数の吐出口32、33、34は、第1の方向X1に沿って粉体塗料を分散して吐出するように設けられている。その目的のために、複数の吐出口32、33、34のそれぞれは、第1の方向X1に沿って並んで設けられている。複数の吐出口32、33、34のそれぞれの内径は、複数の吐出口32、33、34のそれぞれから吐出される粉体塗料の吐出量が略等しくなるように設定されることが好ましい。粉体塗装ノズル3は、粉体塗料の吐出量が略等しくなるように設定される吐出口32、33、34が第1の方向X1に沿って並んで配置されることにより、第1の方向X1に沿ってより均一に粉体塗料を吐出することができ、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。複数の吐出口32、33、34のそれぞれは、粉体塗料の吐出量が略等しくなるようにするために、互いに異なる内径を有していてもよい。
【0072】
粉体塗装ノズル3は、本実施形態では、
図7に示されるように、粉体塗料が流入する流入口31と、粉体塗料を吐出する複数の吐出口32、33、34とを備えている。流入口31は、近位端31aから遠位端31bまで延びるように形成されている。流入口31は、近位端31aで、上述した塗装装置PDの第1の吐出装置D1の第1の粉体塗料供給管D12と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から第1の粉体塗料Dp1が供給される(
図2参照)。また、流入口31は、近位端31aから遠位端31bまでの流路中で、第1の方向X1に沿って並んだ複数の吐出口32、33、34と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から供給された第1の粉体塗料Dp1を複数の吐出口32、33、34に供給する。流入口31は、供給された粉体塗料を吐出口32、33、34に供給することできればよく、特に限定されることはないが、図示された例では、管軸X方向、すなわち第1の方向X1に沿って延び、近位端31aから遠位端31bに向かって内径が小さくなる(図示された例では連続的に小さくなる)ように形成されている。これにより、近位端31aから遠位端31bまでの各位置に到達する粉体塗料の量を近位端31aからの距離が長くなるに従って減少させることができる。たとえば、内径が一定である流入口の延びる方向に沿って複数の吐出口が分岐して設けられる場合、近位端側よりも遠位端側の吐出口の方が粉体塗料の供給量が多くなってしまう。しかし、本実施形態のように流入口31を、近位端31aからの距離が長くなるに従って、到達する粉体塗料の量が少なくなるように設定することで、より均一に近い量または略均一な量の粉体塗料を複数の吐出口32、33、34に供給することができる。
【0073】
複数の吐出口32、33、34はそれぞれ、
図7に示されるように、近位端32a、33a、34aから遠位端32b、33b、34bまで延びるように形成されている。複数の吐出口32、33、34は、近位端32a、33a、34aで流入口31と連通し、流入口31から第1の粉体塗料Dp1が供給される。また、複数の吐出口32、33、34は、遠位端32b、33b、34bで開口し、流入口31から供給された第1の粉体塗料Dp1を管体Pの受口P1の内面P11に向けて吐出する。複数の吐出口32、33、34は、第1の方向X1に沿って並ぶように、1つの流入口31から分岐して設けられる。流入口31の近位端31a側から遠位端31b側に向かって並んで配置された複数の吐出口32、33、34は、それぞれの吐出口32、33、34の内径が流入口31の近位端31a側から遠位端31b側に向かって小さくなるように形成されている。これにより、流入口31の近位端31aに近い吐出口ほど粉体塗料の許容受容量が大きくなり、逆に流入口31の遠位端31bに近い吐出口ほど粉体塗料の許容受容量が小さくなる。上述したように、流入口の延びる方向に沿って複数の吐出口が分岐して設けられる場合、近位端側よりも遠位端側の吐出口の方が粉体塗料の供給量が多くなってしまう。しかし、本実施形態のように流入口31の近位端31aに近いほど吐出口の内径を大きくし、流入口31の遠位端31bに近いほど吐出口の内径を小さくすることで、より均一に近いまたは略均一な量の粉体塗料を複数の吐出口32、33、34に供給することができる。それによって、第1の方向X1においてより均一に粉体塗料を吐出し、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0074】
複数の吐出口32、33、34は、
図7に示されるように、第1の方向X1に対して第7の吐出角度θ7で粉体塗料を吐出する第1の吐出口32と、第1の方向X1に対して第7の吐出角度θ7で粉体塗料を吐出する第2の吐出口33と、第1の方向X1に対して第7の吐出角度θ7で粉体塗料を吐出する第3の吐出口34とを含んでいる。第1、第2および第3の吐出口32、33、34は、第1の方向X1に沿って流入口31の遠位端31bから近位端31aに向かって順に並んで配置されている。第1、第2および第3の吐出口32、33、34は、互いに隣接する吐出口から吐出される粉体塗料の流れが第1の方向X1において互いにオーバーラップするような範囲で互いに近接して配置されることが好ましい。また、第1、第2および第3の吐出口32、33、34は、第2の吐出口33の内径が第1の吐出口32の内径よりも大きく、第3の吐出口34の内径が第2の吐出口33の内径よりも大きくなるように形成されている。第1、第2および第3の吐出口32、33、34のそれぞれの内径は、たとえば2mm、3mm、4mmに設定することができる。なお、複数の吐出口32、33、34は、本実施形態ではいずれも同じ鋭角である第7の吐出角度θ7を有しているが、互いに異なる吐出角度を有していてもよい。また、粉体塗装ノズル3は、本実施形態では3つの吐出口32、33、34を備えているが、2つまたは4つ以上の吐出口を備えていてもよい。
【0075】
第7の吐出角度θ7は、特に限定されることはないが、後述する第8の吐出角度θ8よりも大きいことが好ましい。それにより、塗装装置PDの説明に関連して上で述べたように、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。第7の吐出角度θ7は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、50~80°の範囲内であることが好ましく、60~70°の範囲内であることがより好ましく、60~65°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0076】
第3実施形態の粉体塗装ノズル3は、
図4に関連して述べた第1の粉体塗装ノズルD111として、第2の粉体塗装ノズルD112として使用され得る第2および第4実施形態の粉体塗装ノズル2、4と組み合わせて使用することができる。
【0077】
第4実施形態の粉体塗装ノズル4は、管体Pの受口P1の内面P11に対して第2の方向X2に移動しながら、管体Pの受口P1の内面P11に向けて粉体塗料を吐出するために用いることができる(
図3(b)参照)。粉体塗装ノズル4は、
図8に示されるように、進行方向である第2の方向X2に向かって傾斜する複数の吐出口42、43、44を備えている。複数の吐出口42、43、44は、第2の方向X2に沿って粉体塗料を分散して吐出するように設けられている。その目的のために、複数の吐出口42、43、44のそれぞれは、第2の方向X2に沿って並んで設けられている。複数の吐出口42、43、44のそれぞれの内径は、複数の吐出口42、43、44のそれぞれから吐出される粉体塗料の吐出量が略等しくなるように設定されることが好ましい。粉体塗装ノズル4は、粉体塗料の吐出量が略等しくなるように設定される吐出口42、43、44が第2の方向X2に沿って並んで配置されることにより、第2の方向X2に沿ってより均一に粉体塗料を吐出することができ、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。複数の吐出口42、43、44のそれぞれは、粉体塗料の吐出量が略等しくなるようにするために、互いに異なる内径を有していてもよい。
【0078】
粉体塗装ノズル4は、本実施形態では、
図8に示されるように、粉体塗料が流入する流入口41と、粉体塗料を吐出する複数の吐出口42、43、44とを備えている。流入口41は、近位端41aから遠位端41bまで延びるように形成されている。流入口41は、近位端41aで、上述した塗装装置PDの第1の吐出装置D1の第1の粉体塗料供給管D12と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から第1の粉体塗料Dp1が供給される(
図2参照)。また、流入口41は、近位端41aから遠位端41bまでの流路中で、第2の方向X2に沿って並んだ複数の吐出口42、43、44と連通し、第1の粉体塗料供給管D12から供給された第1の粉体塗料Dp1を複数の吐出口42、43、44に供給する。流入口41は、供給された粉体塗料を吐出口42、43、44に供給することできればよく、特に限定されることはないが、図示された例では、管軸X方向、すなわち第2の方向X2に沿って延び、近位端41aから遠位端41bに向かって内径が小さくなる(図示された例では連続的に小さくなる)ように形成されている。これにより、近位端41aから遠位端41bまでの各位置に到達する粉体塗料の量を近位端41aからの距離が長くなるに従って減少させることができる。たとえば、内径が一定である流入口の延びる方向に沿って複数の吐出口が分岐して設けられる場合、近位端側よりも遠位端側の吐出口の方が粉体塗料の供給量が多くなってしまう。しかし、本実施形態のように流入口41を、近位端41aからの距離が長くなるに従って、到達する粉体塗料の量が少なくなるように設定することで、より均一に近い量または略均一な量の粉体塗料を複数の吐出口42、43、44に供給することができる。
【0079】
複数の吐出口42、43、44はそれぞれ、
図8に示されるように、近位端42a、43a、44aから遠位端42b、43b、44bまで延びるように形成されている。複数の吐出口42、43、44は、近位端42a、43a、44aで流入口41と連通し、流入口41から第1の粉体塗料Dp1が供給される。また、複数の吐出口42、43、44は、遠位端42b、43b、44bで開口し、流入口41から供給された第1の粉体塗料Dp1を管体Pの受口P1の内面P11に向けて吐出する。複数の吐出口42、43、44は、第2の方向X2に沿って並ぶように、1つの流入口41から分岐して設けられる。流入口41の近位端41a側から遠位端41b側に向かって並んで配置された複数の吐出口42、43、44は、それぞれの吐出口42、43、44の内径が流入口41の近位端41a側から遠位端41b側に向かって小さくなるように形成されている。これにより、流入口41の近位端41aに近い吐出口ほど粉体塗料の許容受容量が大きくなり、逆に流入口41の遠位端41bに近い吐出口ほど粉体塗料の許容受容量が小さくなる。上述したように、流入口の延びる方向に沿って複数の吐出口が分岐して設けられる場合、近位端側よりも遠位端側の吐出口の方が粉体塗料の供給量が多くなってしまう。しかし、本実施形態のように流入口41の近位端41aに近いほど吐出口の内径を大きくし、流入口41の遠位端41bに近いほど吐出口の内径を小さくすることで、より均一に近いまたは略均一な量の粉体塗料を複数の吐出口42、43、44に供給することができる。それによって、第2の方向X2においてより均一に粉体塗料を吐出し、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0080】
複数の吐出口42、43、44は、
図8に示されるように、第2の方向X2に対して第8の吐出角度θ8で粉体塗料を吐出する第1の吐出口42と、第2の方向X2に対して第8の吐出角度θ8で粉体塗料を吐出する第2の吐出口43と、第2の方向X2に対して第8の吐出角度θ8で粉体塗料を吐出する第3の吐出口44とを含んでいる。第1、第2および第3の吐出口42、43、44は、第2の方向X2に沿って流入口41の遠位端41bから近位端41aに向かって順に並んで配置されている。第1、第2および第3の吐出口42、43、44は、互いに隣接する吐出口から吐出される粉体塗料の流れが第2の方向X2において互いにオーバーラップするような範囲で互いに近接して配置されることが好ましい。また、第1、第2および第3の吐出口42、43、44は、第2の吐出口43の内径が第1の吐出口42の内径よりも大きく、第3の吐出口44の内径が第2の吐出口43の内径よりも大きくなるように形成されている。第1、第2および第3の吐出口42、43、44のそれぞれの内径は、たとえば2mm、3mm、4mmに設定することができる。なお、複数の吐出口42、43、44は、本実施形態ではいずれも同じ鋭角である第8の吐出角度θ8を有しているが、互いに異なる吐出角度を有していてもよい。また、粉体塗装ノズル4は、本実施形態では3つの吐出口42、43、44を備えているが、2つまたは4つ以上の吐出口を備えていてもよい。
【0081】
第8の吐出角度θ8は、特に限定されることはないが、上述した第7の吐出角度θ7よりも小さいことが好ましい。それにより、塗装装置PDの説明に関連して上で述べたように、管体Pの受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。第8の吐出角度θ8は、管体Pの受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、40~70°の範囲内であることが好ましく、45~60°の範囲内であることがより好ましく、50~55°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0082】
第4実施形態の粉体塗装ノズル4は、
図4に関連して述べた第2の粉体塗装ノズルD112として、第1の粉体塗装ノズルD111として使用され得る第1および第3実施形態の粉体塗装ノズル1、3と組み合わせて使用することができる。
【0083】
つぎに、本発明の粉体塗装ノズルを用いた塗装方法について説明する。以下では、いくつかの実施形態の粉体塗装ノズルを上述した塗装装置PDの第1の吐出部D11として使用し、その塗装装置PDを用いて管体Pの内面を塗装する方法を例に挙げて塗装方法を説明する。しかし、本発明の塗装方法は、以下に示す効果と同様の効果を奏することが可能であれば、他の構造を有する塗装装置を用いて実施しても構わない。また、以下では複数の工程や手順の説明を行うが、説明の順とは異なる順で工程や手順が実施されてもよく、いくつかの工程や手順が同時に実施されてもよい。
【0084】
本実施形態の塗装方法は、
図2に示されるように、受口P1の内面P11(第1の管部Aの内面)を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程と、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31(第2の管部Bの内面)を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程とを含んでいる。
【0085】
受口P1の内面P11を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程では、まず、管体Pが所定温度に加熱される。管体Pの加熱温度は、第1の粉体塗料Dp1が受口P1の内面P11に接触または付着した際に、伝達される熱を通じて、第1の粉体塗料Dp1が硬化する温度(たとえば、150℃以上)に設定される。本実施形態では、加熱装置により予め加熱された管体Pが回転装置Rに搭載される。ただし、管体Pは、少なくとも第1の粉体塗料Dp1が受口P1の内面P11に接触または付着した際に加熱されていればよく、たとえば管体Pが回転装置Rに搭載された後に加熱されてもよい。また、本工程における管体Pを加熱するタイミングは、後に詳しく述べる挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程における管体Pを加熱するタイミングと同じであってもよい。
【0086】
つぎに、第1の粉体塗料Dp1が、管体Pの受口P1の内面P11の周方向の所定範囲(たとえば全長)および管軸X方向の所定範囲(たとえば開口部P12から段部P13までの全長)に向けて吹き付けられる。本実施形態では、第1の粉体塗料Dp1は、第1の吐出装置D1により受口P1の内側から受口P1の内面P11に向けて吐出されることで、受口P1の内面P11に吹き付けられる。このとき管体Pは、予め所定の温度に加熱されているので、受口P1の内面P11に接触または付着した第1の粉体塗料Dp1は、伝達される熱を通じて受口P1の内面P11上で硬化し、受口P1の内面P11上に堆積される。第1の吐出装置D1により第1の粉体塗料Dp1が吐出される際に、回転装置Rにより管体Pが管軸X周りに相対回転させられることで、第1の粉体塗料Dp1は、受口P1の内面P11の周方向の所定範囲に亘って堆積される。また、第1の吐出装置D1の第1の吐出部D11が受口P1の管軸X方向に沿って相対移動させられることで、第1の粉体塗料Dp1は、受口P1の内面P11の管軸X方向の所定範囲に亘って堆積される。
【0087】
管体Pの受口P1の内面P11に向けて吐出する第1の粉体塗料Dp1の吐出速度や吐出量は、特に限定されることはなく、必要な塗膜の厚さに応じて適宜設定することができる。管体Pの相対回転速度および第1の吐出装置D1の第1の吐出部D11の相対移動速度もまた、特に限定されることはなく、必要な膜厚に応じて適宜設定することができる。
【0088】
受口P1の内面P11を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程は、
図3(a)、(b)に示されるように、第1の粉体塗料Dp1を吐出する第1の吐出部D11を、管軸X方向に沿って受口P1から挿口P2に向かう第1の方向X1に、受口P1の内面P11に対して相対移動させながら、第1の吐出部D11から第1の粉体塗料Dp1を第1の方向X1に対して第1の吐出角度θ1で吐出することと、第1の粉体塗料Dp1を吐出する第1の吐出部D11を、管軸X方向に沿って挿口P2から受口P1に向かう第2の方向X2に、受口P1の内面P11に対して相対移動させながら、第1の吐出部D11から第1の粉体塗料Dp1を第2の方向X2に対して第2の吐出角度θ2で吐出することとを含んでいてもよい。このとき、第1の方向X1に相対移動する第1の吐出部D11として上述した粉体塗装ノズル1、3を用いることで、および/または第2の方向X1に相対移動する第1の吐出部D11として上述した粉体塗装ノズル3、4を用いることで、受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。ここで、往路(第1の方向X1)と復路(第2の方向X2)で同一場所を塗装してもよいし(往復塗装)、往路と復路で別の場所を塗装してもよい(往路塗装、復路塗装)。往復塗装の場合、
図4に関連して述べたように、第1の吐出部D11が、第1の粉体塗料Dp1が到達する管体Pの内面上の領域PR1、PR2が互いにオーバーラップする複数の粉体塗装ノズルD111、D112を備えることで、往路と復路で複数の粉体塗装ノズルD111、D112を切り替える前後で、管体Pの内面のほぼ同じ領域を塗装することができる。したがって、進行方向X1、X2に沿って塗装膜厚を略均一にするために、複数の粉体塗装ノズルD111、D112を切り替える前後で、複数の粉体塗装ノズルD111、D112の相対移動位置を調整する必要がない(または、必要性が軽減される)。これにより、往復塗装におけるプロセスを簡略化できる。
【0089】
第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2は、上述したように、その両方が鋭角であることが好ましい。第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2の両方が鋭角であることにより、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。そして、第1の吐出角度θ1および第2の吐出角度θ2は、第1の吐出角度θ1が第2の吐出角度θ2よりも大きくなるように角度が設定されることが好ましい。第1の吐出角度θ1が第2の吐出角度θ2よりも大きいことにより、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。
【0090】
第1の吐出角度θ1は、上述したように、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、50~80°の範囲内であることが好ましく、60~70°の範囲内であることがより好ましく、60~65°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1を吐出するときの、第1の吐出角度θ1を中心とした第1の広がり角度α1は、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、第2の広がり角度α2よりも小さいことが好ましく、10~30°の範囲内であることがより好ましく、15~25°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0091】
第2の吐出角度θ2は、上述したように、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、40~70°の範囲内であることが好ましく、45~60°の範囲内であることがより好ましく、50~55°の範囲内であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1を吐出するときの、第2の吐出角度θ2を中心とした第2の広がり角度α2は、受口P1の内面P11をよりさらに均一に塗装するという観点から、第1の広がり角度α1よりも大きいことが好ましく、30~50°の範囲内であることがより好ましく、40~50°の範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0092】
なお、本実施形態では、管体Pを管軸X周りに回転し、第1の吐出装置D1の第1の吐出部D11を管軸X方向に沿って移動させることにより、第1の粉体塗料Dp1が、受口P1の内面P11の周方向および管軸X方向の所定範囲に亘って堆積される。しかし、本実施形態に限定されることはなく、第1の吐出装置D1の第1の吐出部D11を管軸X周りに回転し、管体Pを管軸X方向に沿って移動させるなどの他の方法により、受口P1の内面P11の周方向および管軸X方向の所定範囲に亘って第1の粉体塗料Dp1が堆積されてもよい。また、第1の粉体塗料Dp1は、受口P1の内面P11の少なくとも一部に堆積されればよく、たとえば、第1の粉体塗料Dp1が堆積される部分以外の部分において、第1の粉体塗料Dp1とは異なる他の粉体塗料が堆積されてもよい。
【0093】
最後に、管体Pが自然冷却などにより冷却されて、受口P1の内面P11の塗装が完了する。なお、本工程における管体Pを冷却するタイミングは、後に詳しく述べる挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程における管体Pを冷却するタイミングと同じであってもよい。
【0094】
ここで、上述したように、第1の粉体塗料Dp1および第2の粉体塗料Dp2は、たとえば第1の粉体塗料Dp1の平均粒径が第2の粉体塗料Dp2の平均粒径よりも小さくなるように調製されてもよい。すなわち、本実施形態の塗装方法では、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11(第1の管部Aの内面)を塗装するために、相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1が用いてもよい。相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11の塗装に相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1を用いることで、相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2を用いる場合と比べて、相対的に凹凸の大きな受口P1の内面P11を均一の厚さで塗装することができる。これは、相対的に小さな第1の粉体塗料Dp1が第1の吐出装置D1から吐出されたときに、第1の粉体塗料Dp1が比較的均一に分散されて、凹凸の角部まで入り込み易くなることによるものと考えられる。受口P1の内面P11が第1の粉体塗料Dp1により塗装されることで、形成される塗膜の厚さが均一となり、受口P1の内面P11を有効に保護することができる。また、受口P1は、別の管体Pの挿口P2と嵌合するために、挿口P2に対して受口P1の内径に高い寸法精度が求められる。受口P1の内面P11に形成される塗膜の厚さを均一とすることで、要求される高い寸法精度を満たすことができる。
【0095】
第1の粉体塗料Dp1の大きさは、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径が第2の粉体塗料Dp2の平均粒径よりも小さければ、特に限定されることはなく、受口P1の内面P11の凹凸の大きさに応じて適宜選択することができる。その中で、たとえば、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径は、20~50μmであることが好ましい。第1の粉体塗料Dp1の平均粒径を20μm以上とすることで、受口P1の内面P11をより効率よく塗装することができる。そのような観点から、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径は、34μm以上がより好ましく、38μm以上がよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径を50μm以下とすることで、受口P1の内面P11をより均一に塗装することができる。そのような観点から、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径は、46μm以下がより好ましく、42μm以下がよりさらに好ましい。
【0096】
第1の粉体塗料Dp1は、上述したように、特に限定されることはないが、170℃におけるゲルタイムが90~250秒の範囲内になるように調製されることが好ましい。第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムが90秒以上であることにより、受口P1の内面P11を均一に塗装することができる。同様の観点から、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムは、135秒以上であることがより好ましく、180秒以上であることがよりさらに好ましい。また、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムが250秒以下であることにより、塗装効率が上がるとともに、塗膜の均一性が向上する。同様の観点から、第1の粉体塗料Dp1のゲルタイムは、235秒以下であることがより好ましく、220秒以下であることがよりさらに好ましい。
【0097】
受口P1の内面P11を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程により形成される塗膜の厚さは、受口P1の内面P11を保護することができる厚さであればよく、特に限定されることはない。その中でも、塗膜の厚さを150μm以上とすることで、受口P1の内面P11をより確実に保護することができる。
【0098】
受口P1の内面P11を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程は、第1の粉体塗料Dp1を帯電させて、受口P1の内面P11を静電塗装することを含んでもよい。本実施形態では、第1の粉体塗料Dp1は、静電塗装装置の帯電装置が生成する高電圧(たとえば4万~8万ボルト)によってマイナスに帯電されて、静電力によって受口P1の内面P11に付着される。受口P1の内面P11の塗装に際して静電塗装を利用することにより、受口P1の内面P11をより効率よく、また、より均一に塗装することができる。
【0099】
挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程では、まず、管体Pが所定温度に加熱される。管体Pの加熱温度は、第2の粉体塗料Dp2が挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に接触または付着した際に、伝達される熱を通じて、第2の粉体塗料Dp2が硬化する温度(たとえば、150℃以上)に設定される。本実施形態では、加熱装置により予め加熱された管体Pが回転装置Rに搭載される。ただし、管体Pは、少なくとも第2の粉体塗料Dp2が挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に接触または付着した際に加熱されていればよく、たとえば管体Pが回転装置Rに搭載された後に加熱されてもよい。
【0100】
つぎに、第2の粉体塗料Dp2が、管体Pの挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の周方向の所定範囲(たとえば全長)および管軸X方向の所定範囲(たとえば開口部P22から段部P13までの全長)に向けて吹き付けられる。本実施形態では、第2の粉体塗料Dp2は、第2の吐出装置D2により挿口P2および直管部P3の内側から挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向けて吐出されることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に吹き付けられる。このとき管体Pは、予め所定の温度に加熱されているので、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に接触または付着した第2の粉体塗料Dp2は、伝達される熱を通じて挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31上で硬化し、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31上に堆積される。第2の吐出装置D2により第2の粉体塗料Dp2が吐出される際に、回転装置Rにより管体Pが管軸X周りに相対回転させられることで、第2の粉体塗料Dp2は、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の周方向の所定範囲に亘って堆積される。また、第2の吐出装置D2の第2の吐出部D21が挿口P2および直管部P3の管軸X方向に沿って相対移動させられることで、第1の粉体塗料Dp1は、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の管軸X方向の所定範囲に亘って堆積される。
【0101】
管体Pの挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向けて吐出する第2の粉体塗料Dp2の吐出速度や吐出量は、特に限定されることはなく、必要な塗膜の厚さに応じて適宜設定することができる。管体Pの相対回転速度および第2の吐出装置D2の第2の吐出部D21の相対移動速度もまた、特に限定されることはなく、必要な膜厚に応じて適宜設定することができる。
【0102】
挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程は、受口P1の内面P11を第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程と同様に、第2の吐出部D21を第1の方向X1および第2の方向X2のそれぞれに相対移動させながら、第2の吐出部D21から第2の粉体塗料Dp2を吐出することを含んでいてもよい。このとき、第2の吐出部D21として、上述した粉体塗装ノズル1、2、3、4を用いてもよい。ここで、往路(第1の方向X1)と復路(第2の方向X2)で同一場所を塗装してもよいし(往復塗装)、往路と復路で別の場所を塗装してもよい(往路塗装、復路塗装)。また、第2の吐出部D21から第2の粉体塗料Dp2を吐出する吐出角度や広がり角度は、特に限定されることはなく、第1の吐出部D11から第1の粉体塗料Dp1を吐出する際における吐出角度や広がり角度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2の吐出部D21は、第1の吐出部D11と同様に、互いに反対の進行方向X1、X2に向かってそれぞれが傾斜して第2の粉体塗料Dp2を吐出するとともに、吐出される第2の粉体塗料Dp2が到達する管体Pの内面上の領域が互いにオーバーラップするように配置された複数の粉体塗装ノズルを備えていてもよい。その場合、往復塗装において往路と復路で複数の粉体塗装ノズルを切り替える前後で、管体Pの内面のほぼ同じ領域を塗装することができる。したがって、進行方向X1、X2に沿って塗装膜厚を略均一にするために、複数の粉体塗装ノズルを切り替える前後で、複数の粉体塗装ノズルの相対移動位置を調整する必要がない(または、必要性が軽減される)。これにより、往復塗装におけるプロセスを簡略化できる。
【0103】
なお、本実施形態では、管体Pを管軸X周りに回転し、第2の吐出装置D2の第2の吐出部D21を管軸X方向に沿って移動させることにより、第2の粉体塗料Dp2が、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の周方向および管軸X方向の所定範囲に亘って堆積される。しかし、本実施形態に限定されることはなく、第2の吐出装置D2の第2の吐出部D21を管軸X周りに回転し、管体Pを管軸X方向に沿って移動させるなどの他の方法により、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の周方向および管軸X方向の所定範囲に亘って第2の粉体塗料Dp2が堆積されてもよい。また、第2の粉体塗料Dp2は、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の少なくとも一部に堆積されればよく、たとえば、第2の粉体塗料Dp2が堆積される部分以外の部分において、第2の粉体塗料Dp2とは異なる他の粉体塗料が堆積されてもよい。
【0104】
最後に、管体Pが自然冷却などにより冷却されて、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の塗装が完了する。
【0105】
ここで、上述したように、第2の粉体塗料Dp2は、第1の粉体塗料Dp1の平均粒径よりも大きい平均粒径を有するように調製されてもよい。すなわち、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31(第2の管部Bの内面)を塗装するために、相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2が用いられてもよい。相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の塗装に相対的に大きな平均粒径の第2の粉体塗料Dp2を用いることで、相対的に小さな平均粒径の第1の粉体塗料Dp1を用いる場合と比べて、相対的に凹凸の小さな挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を効率よく塗装することができる。これは、相対的に大きな第2の粉体塗料Dp2が第2の吐出装置D2から吐出されたときに、第2の粉体塗料Dp2が比較的まっすぐに挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に向かうため、管体Pの内部で浮遊したり、管体Pの両側の開口部P12、P22に向かって流れ出たりすることなどが抑制されて、歩留まり良く挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31に付着することによるものと考えられる。
【0106】
第2の粉体塗料Dp2の大きさは、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径が第1の粉体塗料Dp1の平均粒径よりも大きければ、特に限定されることはなく、塗装する挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31の凹凸の大きさに応じて適宜選択することができる。その中で、たとえば、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径は、70~80μmであることが好ましい。第2の粉体塗料Dp2の平均粒径を70μm以上とすることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31をより効率よく塗装することができる。そのような観点から、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径は、72μm以上がより好ましく、74μm以上がよりさらに好ましい。また、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径を80μm以下とすることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31をより均一に塗装することができる。そのような観点から、第2の粉体塗料Dp2の平均粒径は、78μm以下がより好ましく、76μm以下がよりさらに好ましい。
【0107】
挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程により形成される塗膜の厚さは、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31を保護することができる厚さであればよく、特に限定されることはない。その中でも、塗膜の厚さを300μm以上とすることで、挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31をより確実に保護することができる。
【0108】
第2の粉体塗料Dp2は、上述したように、特に限定されることはないが、170℃におけるゲルタイムが50~250秒の範囲内になるように調製されることが好ましい。第2の粉体塗料Dp2のゲルタイムが50~250秒の範囲内であることにより、塗装効率が上がるとともに、塗膜の均一性が向上する。同様の観点から、第2の粉体塗料Dp2のゲルタイムは、70~235秒以下であることがより好ましく、90~220秒以下であることがよりさらに好ましい。
【0109】
以上に述べてきたように、本実施形態の塗装方法は、相対的に大きな凹凸を有する内面(受口P1の内面P11)を相対的に小さな平均粒子径の第1の粉体塗料Dp1により塗装する工程と、相対的に小さな凹凸を有する内面(挿口P2の内面P21および直管部P3の内面P31)を相対的に大きな平均粒子径の第2の粉体塗料Dp2により塗装する工程とを含んでいる。これにより、相対的に凹凸の大きさの異なる内面を有する2つの部位を備える管体Pにおいて、より簡単な方法で、効率よく、また均一に内面を塗装することができる。
【0110】
また、本実施形態の塗装方法では、付加的に、または代替的に、相対的に大きな凹凸を有する内面(受口P1の内面P11)を塗装する工程が、粉体塗料を吐出する吐出部を第1の方向X1に相対移動させながら、吐出部から粉体塗料を第1の方向X1に対して鋭角に吐出することと、粉体塗料を吐出する吐出部を第2の方向X2に相対移動させながら、吐出部から粉体塗料を第2の方向X2に対して鋭角に吐出することとを含んでいてもよい。これにより、相対的に凹凸の大きさの異なる内面を有する2つの部位を備える管体Pにおいて、より簡単な方法で、効率よく、また均一に内面を塗装することができる。特に、第1の方向X1に相対移動する吐出部として上述した粉体塗装ノズル1、3を用いることで、および/または第2の方向X2に相対移動する吐出部として上述した粉体塗装ノズル2、4を用いることで、相対的に大きな凹凸を有する内面(受口P1の内面P11)をより均一に塗装することができる。
【0111】
また、本実施形態の塗装方法では、付加的に、または代替的に、相対的に大きな凹凸を有する内面(受口P1の内面P11)を塗装するための粉体塗料が、170℃におけるゲルタイムが90~250秒の範囲内になるように調製されてもよい。これにより、相対的に凹凸の大きさの異なる内面を有する2つの部位を備える管体Pにおいて、より簡単な方法で、効率よく、また均一に内面を塗装することができる。
【符号の説明】
【0112】
1、2、3、4 粉体塗装ノズル
11、21、31、41 流入口
11a、21a、31a、41a 近位端
11b、21b、31b、41b 遠位端
12、22、32、42 第1の吐出口
12a、22a、32a、42a 近位端
12b、22b、32b、42b 遠位端
13、23、33、43 第2の吐出口
13a、23a、33a、43a 近位端
13b、23b、33b、43b 遠位端
34、44 第3の吐出口
34a、44a 近位端
34b、44b 遠位端
A 第1の管部
B 第2の管部
D 吐出装置
D1 第1の吐出装置
D11 第1の吐出部
D111 第1の粉体塗装ノズル
D112 第2の粉体塗装ノズル
D12 第1の粉体塗料供給管
D13 第1の駆動装置
D14 第1の粉体塗料供給装置
D2 第2の吐出装置
D21 第2の吐出部
D22 第2の粉体塗料供給管
D23 第2の駆動装置
D24 第2の粉体塗料供給装置
Dp1 第1の粉体塗料
Dp2 第2の粉体塗料
P 管体
P1 受口
P11 受口の内面
P12 開口部
P13 段部
P14 凸部
P15 凹部
P2 挿口
P21 挿口の内面
P22 開口部
P23 突起
P3 直管部
P31 直管部の内面
PD 塗装装置
PR1 第1の領域
PR2 第2の領域
R 回転装置
R1 回転ローラ
R2 支持台
X 管軸
X1 第1の方向(進行方向)
X2 第2の方向(進行方向)
α1 第1の広がり角度
α2 第2の広がり角度
θ1~θ8 第1~第8の吐出角度