IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特開2022-151808アミン系熱潜在性触媒を有する方法、ポリウレタン組成物及びポリウレタン製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151808
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アミン系熱潜在性触媒を有する方法、ポリウレタン組成物及びポリウレタン製品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20220929BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/09 020
C08G18/22
C08G18/00 H
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047083
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】63/165,286
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン ジョウン スー
(72)【発明者】
【氏名】カリル ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC08
4J034CD04
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG23
4J034DQ04
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034DQ28
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KD02
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA08
4J034NA09
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA09
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン製品を製造する方法、及びポリウレタン組成物及び該方法の製造物。
【解決手段】本方法は、少なくとも1種の第三級アミン塩を含む触媒組成物を製造すること、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種の第三級アミンとの接触生成物であり、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールからなる群から選択される;及び少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、該触媒組成物とを反応させて、ポリウレタン製品を形成させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の第三級アミン塩を含む触媒組成物を製造する工程、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種の第三級アミンとの接触生成物であり、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールからなる群から選択される;及びb)少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、前記触媒組成物とを反応させて、ポリウレタン製品を形成する工程を含む、方法。
【請求項2】
c)前記ポリウレタン製品の層を基材上に形成させること;及びd)前記ポリウレタン製品を100~180℃の温度に加熱して、前記ポリウレタン製品を硬化させ、かつ前記基材に結合されたポリウレタン層を形成させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸、ネオデカン酸、及びトール油脂肪酸からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のカルボン酸が、芳香族カルボン酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒組成物がさらに、カルボン酸のジメチルイミダゾール塩又はカルボン酸のジメチルシクロヘキサミン塩を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒組成物がさらに、少なくとも1種の三量体触媒を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の少なくとも1種の三量体触媒が、ピバル酸アンモニウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)がさらに、前記の少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、前記触媒組成物とを発泡剤の存在下で反応させることを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡剤が、空気を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリウレタン製品が、ポリウレタンエラストマーである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリウレタン製品が、機械発泡ポリウレタンフォームである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、室温付近で極めて長い潜在性状態であるが、しかし高めた温度でのスナップキュアが求められるポリウレタン製品を製造する方法及びポリウレタン組成物及び該方法の製造物である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン製品、例えば機械発泡ポリウレタンフォーム又はポリウレタンエラストマーは、カーペットバッキング、ガスケット及びインソールの製造において使用される。ある種の機械発泡ポリウレタンフォーム及びポリウレタンエラストマーは、他のポリウレタン用途に比較して、それらの独特な加工要件のために特定の反応性プロファイルが求められる。そのポットライフ又はパドル時間(puddle time)は、ポットライフが数分である他のポリウレタン用途に比較して、室温で10分にわたって、極めて長いことが必要である。該フォーム又はエラストマーも、熱にさらされる際に急速に硬化することが必要である。したがって、極めて熱潜在性の触媒が必要とされる。
【0003】
機械発泡ポリウレタンフォーム又はポリウレタンエラストマー用途において使用するのに最も普通の触媒は、ニッケルアセチルアセトネート又はNi(acac)である。しかしながら、Ni(acac)は、望ましくない環境、健康及び安全(EHS)プロファイルを有し、かつ発がん物質として同定されている。したがって、これらのフォーム用途におけるNiを置き換えることが望ましい。他の金属錯体、例えばスズ、鉄及び銅は作用しうるが、しかし今まで実現できたアミン系触媒はない。したがって、多様な温度でNi(acac)に匹敵しうるプロファイルを証明できるアミン系触媒の需要がある。
【0004】
米国特許第6140381号明細書(US 6,140,381)は、遅延作用型アルキル置換有機スズ触媒組成物を用いてポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【0005】
米国特許第8062709号明細書(US 8,062,709)は、金属アセチルアセトネート及び硫黄含有有機スズ触媒を用いてポリウレタンフォームを製造する方法に関する。該開示において使用される金属アセチルアセトネートの例は、ニッケルアセチルアセトネートを含む。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0225158号明細書(US 20170225158A1)は、銅系触媒を用いてポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6140381号明細書
【特許文献2】米国特許第8062709号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0225158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記のような従来技術の問題点を解決することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリウレタン製品を製造する方法、及びポリウレタン組成物及び該方法の製造物を提供する。該方法は、少なくとも1種の第三級アミン塩を含む触媒組成物を製造すること、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種の第三級アミンとの接触生成物であり、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールからなる群から選択される;及び少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、該触媒組成物とを反応させて、ポリウレタン製品を形成させることを含む。
【0010】
例示的な実施態様において、該方法はさらに、該ポリウレタン製品の層を基材上に形成させること;及び該ポリウレタン製品を100~180℃の温度に加熱して、該ポリウレタン製品を硬化させ、かつ該基材に結合されたポリウレタン層を形成させることを含む。
【0011】
例示的な実施態様において、該方法は、カルボン酸のN-ヒドロキシエチルピペリジン塩を含む。
【0012】
別の例示的な実施態様において、該方法は、カルボン酸のトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール塩を含む。
【0013】
別の例示的な実施態様において、該方法はさらに、カルボン酸のジメチルイミダゾール塩又はカルボン酸のジメチルシクロヘキサミン塩をさらに含む触媒組成物を含む。
【0014】
さらに例示的な実施態様において、該方法はさらに、三量体触媒をさらに含む触媒組成物を含む。
【0015】
さらに例示的な実施態様において、該方法はさらに、前記の少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、該触媒組成物とを発泡剤の存在下で反応させることを含む。
【0016】
例示的な実施態様において、該ポリウレタン製品は、ポリウレタンエラストマーである。
【0017】
別の例示的な実施態様において、該ポリウレタン製品は、ポリウレタンフォームである。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、好ましい実施態様の以下のより詳細な説明から明らかになる。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、a)少なくとも1種の第三級アミン塩を含む触媒組成物を製造する工程、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種の第三級アミンとの接触生成物(contact product)であり、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールからなる群から選択される;及びb)少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、該触媒組成物とを反応させて、ポリウレタン製品を形成させる工程を含む方法を提供する。
【0020】
好ましい実施態様において、方法はさらに、c)該ポリウレタン製品の層を基材上に形成させること;及びd)該ポリウレタン製品を100~180℃の温度に加熱して、該ポリウレタン製品を硬化させ、かつ該基材に結合されたポリウレタン層を形成させることを含む。
【0021】
本発明の第三級アミン塩は、少なくとも1種の第三級アミンを少なくとも1種のカルボン酸と接触させることにより、形成することができる。本発明の代表的な第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン(NHEP)及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TDMAMP)を含む。
【0022】
該第三級アミン塩を形成するのに使用することができる代表的なカルボン酸は、2-エチルヘキサン酸(2-EHA)、オクタン酸(OA)、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸を含むが、しかしこれらに限定されない、C8、C9及びC10カルボン酸;トール油脂肪酸(TOFA)を含むが、しかしこれに限定されない、ポリマー酸;及びDABCO(登録商標)BA100を含むが、しかしこれに限定されない、芳香族カルボン酸を含む。
【0023】
好ましい実施態様において、前記の少なくとも1種のカルボン酸は、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸、ネオデカン酸及びトール油脂肪酸からなる群から選択される。
【0024】
別の好ましい実施態様において、前記の少なくとも1種のカルボン酸は、芳香族カルボン酸である。さらに好ましい実施態様において、該芳香族カルボン酸は、{(R(R(Ar)[(CH(COH)]}の構造を有し、式中、R=Hであり;R=C1~4アルキル、OH、-CO-R又は-CONHR又は-COM、ここでR=C1~4アルキル、-(CO)-H、ここでm=1~10及びM=Li、Na、Kであり;Ar=置換C(フェニル)又はC10(ナフタレン)環であり;n=0~6であり;C6芳香環についてはx=0~5及びy=0~5及びz=1~3であるか又はC10芳香族ナフタレン環についてはx=0~9及びy=0~9及びz=1~3である。
【0025】
さらに好ましい実施態様において、前記の少なくとも1種のカルボン酸は、芳香族カルボン酸DABCO(登録商標)BA100である。
【0026】
三量体触媒
本発明の一態様において、該触媒組成物は、少なくとも1種の三量体触媒(trimer catalyst)を含む。前記の少なくとも1種の三量体触媒は、バックエンド硬化を改善するのに特に有用である。したがって、好ましい一実施態様において、該三量体触媒は、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩との組合せで使用され、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、カルボン酸のN-ヒドロキシエチルピペリジン塩及びカルボン酸のトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール塩からなる群から選択される。別の好ましい実施態様において、該三量体触媒は、a)前記の少なくとも1種の第三級アミン塩、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、カルボン酸のN-ヒドロキシエチルピペリジン塩及びカルボン酸のトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール塩からなる群から選択される、及びb)カルボン酸のジメチルイミダゾール塩又はカルボン酸のジメチルシクロヘキサミン塩からなる群から選択される、付加的なアミン塩との組合せで使用される。
【0027】
好ましい実施態様において、前記の少なくとも1種の三量体触媒は、ピバル酸アンモニウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される。
【0028】
該三量体触媒の使用レベルは、極めて低く維持しなければならない(配合物の<0.5質量%)。該配合物の1質量%で使用される場合には、従来の三量体触媒は、室温で30秒未満で硬化させる。しかしながら、使用レベルが0.5質量以下に低下される場合に、この混合物は加工できる。
【0029】
ポリイソシアネート
該ポリウレタン製品形成方法において有用であるポリイソシアネートは好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート(PDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート異性体(MDI)、水素化MDI及び1,5-ナフタレンジイソシアネートを含むが、しかしこれらに限定されない。例えば、2,4-TDI、2,6-TDI、及びそれらの混合物は、本発明において容易に使用することができる。ポリイソシアネートの好ましい例は、トルエンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート及びそれらの異性体を含む。本発明の別の態様において、ポリイソシアネートとポリエーテル又はポリエステルポリオールとの部分的に予備反応された混合物を含む、ポリイソシアネートのプレポリマーが適している。さらに別の態様において、該ポリイソシアネートは、MDIを含むか、又は本質的にMDI又はMDI類の混合物からなる。
【0030】
本発明のポリウレタン製品を製造する製造物、組成物、及び方法は、多くのタイプのポリウレタン製品、例えば機械発泡ポリウレタンフォーム又はポリウレタンエラストマーを製造するのに使用することができる。本発明の方法において、該イソシアネート成分は、化学量論比で又は化学量論比付近で該触媒組成物と組み合わされる。一実施態様において、該化学量論比は、イソシアネート指数に基づく。該イソシアネート指数は、使用されるポリイソシアネートの実際の量を、その反応混合物中の全ての活性水素と反応するのに必要とされるポリイソシアネートの理論的に必要とされる化学量論量で割って、100を掛けたものである。本発明のためには、イソシアネート指数は、次の式により表される:イソシアネート指数=(Eq NCO/活性水素のEq)×100、ここで、Eq NCOは、該ポリイソシアネート中のNCO官能基の数であり、かつ活性水素のEqは、活性水素原子の当量数である。
【0031】
約80~約120のイソシアネート指数で製造されるポリウレタン製品は、本発明の範囲内である。
【0032】
ポリオール
本発明のポリウレタン製品を形成することにおいて前記のポリイソシアネートと共に使用するための活性水素含有化合物は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する有機化合物のいずれか、例えば、ポリオール等であってよい。該反応混合物のポリオール成分は、少なくとも主ポリオール又は「ベース」ポリオールを含む。ポリウレタン製品形成方法において典型的に使用されるベースポリオールは好ましくは、ポリアルキレンエーテル及びポリエステルポリオールを含む。該ポリアルキレンエーテルポリオールは、ジオール及びトリオールを含めた多価化合物に由来する末端ヒドロキシル基を有するポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、例えばポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)ポリマー及びコポリマーを含む。これらの多価化合物は好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリトリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、及び糖類、例えばスクロース及び同様の低分子量ポリオールを含むが、しかしこれらに限定されない。
【0033】
アミンポリエーテルポリオールは、本発明において使用することができる。これらは、アミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、又はトリエタノールアミン等が、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応される際に製造することができる。本発明の別の態様において、単一の高分子量ポリエーテルポリオール、又は高分子量ポリエーテルポリオールの混合物、例えば異なる多官能性材料及び/又は異なる分子量又は異なる化学組成の材料の混合物を使用することができる。
【0034】
本発明のさらに別の態様において、ポリエステルポリオールが、ジカルボン酸が過剰のジオールと反応される際に製造されるものを含めて、使用することができる。限定されない例は、アジピン酸又はフタル酸又は無水フタル酸をエチレングリコール又はブタンジオールと反応させることを含む。本発明において有用なポリオールは、ラクトンを過剰のジオールと反応させる、例えば、カプロラクトンをプロピレングリコールと反応させることにより、製造することができる。さらなる態様において、活性水素含有化合物、例えばポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、及びそれらの組合せは、本発明において有用である。
【0035】
上記に記載されたベースポリオールに加えて、又はそれらの代わりに、「コポリマーポリオール」と普通呼ばれる材料が、本発明による使用のためのポリオール成分中に含まれていてよい。コポリマーポリオールは、ポリウレタンフォームにおいて、その変形抵抗を増加させるのに、例えばその耐荷重特性を改善するのに、使用されてよい。その耐荷重要件に依存して、コポリマーポリオールは、全ポリオール含有率の約0~約80質量%を含んでいてよい。
【0036】
コポリマーポリオールの例は、グラフトポリオール及びポリ尿素変性ポリオールを含むが、しかしこれらに限定されず、これらの双方とも、当該技術分野において公知であり、かつ商業的に入手可能である。
【0037】
グラフトポリオールは、ビニルモノマー、典型的にスチレン及びアクリロニトリルを出発ポリオール中で共重合させることにより製造される。該出発ポリオールは、典型的にグリセリン開始トリオールであり、かつエチレンオキシドで典型的に末端キャップされる(第一級ヒドロキシル基約80~85%)。該コポリマーの一部は、該出発ポリオールの一部にグラフトする。該グラフトポリオールも、スチレン及びアクリロニトリルのホモポリマーと未変性の出発ポリオールとを含有する。該グラフトポリオールのスチレン/アクリロニトリル固形分は典型的に、5質量%~45質量%の範囲にあるが、しかし当該技術分野において公知のあらゆる種類のグラフトポリオールが使用されうる。
【0038】
ポリ尿素変性ポリオールは、出発ポリオールの存在下でのジアミン及びジイソシアネートの反応により形成され、その際にその生成物はポリ尿素分散液を含有する。使用にも適しているポリ尿素変性ポリオールの変型は、ポリイソシアネート重付加(PIPA)ポリオールであり、これらはポリオール中のイソシアネートとアルカノールアミンとのin situ反応により形成される。
【0039】
該ポリオールは、約5~約600、約100~約600及び一部の場合に約50~約100のOH価及び約2~約8、約3~約6及び一部の場合に約4~約6の官能価を有することができる。
【0040】
ポリオールの量は、約0pphp~約100pphp、約10pphp~約90pphp及び一部の場合に約20pphp~約80pphpの範囲にあることができる。
【0041】
発泡剤
該ポリウレタンフォーム製品、及び本発明の範囲内のポリウレタンフォーム製品を製造する方法に従って、適した発泡剤は好ましくは、空気を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0042】
好ましい実施態様において、該方法はさらに、前記の少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、該触媒組成物とを発泡剤の存在下で反応させることを含む。
【0043】
さらに好ましい実施態様において、該発泡剤は、空気を含む。
【0044】
その他の添加剤
ポリウレタン製品の製造中又は該ポリウレタン製品の最終用途の適用のための要件に応じて、多様な添加剤を、該ポリウレタン製品配合物において使用して、特異的な性質に合わせることができる。これらは好ましくは、気泡安定剤(cell stabilizers)、難燃剤、鎖延長剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、充填剤、顔料、又は任意のその組合せを含むが、しかしこれらに限定されない。当該技術分野において公知である他の混合物又は材料が、該製品配合物中に含まれていてよく、かつ本発明の範囲内であることが理解される。
【0045】
気泡安定剤は、界面活性剤、例えばオルガノポリシロキサンを含む。ケイ素界面活性剤は、該製品配合物中で、約0.5~約10pphp、約0.6~約9pphp、約0.7~約8pphp、約0.8~約7pphp、約0.9~約6pphp、約1~約5pphp、又は約1.1~約4pphpの量で存在することができる。有用な難燃剤は、ハロゲン化有機リン化合物及び非ハロゲン化化合物を含む。ハロゲン化難燃剤の限定されない例は、トリクロロプロピルホスフェート(TCPP)である。例えば、トリエチルホスフェートエステル(TEP)及びジメチルメチルホスホネート(DMMP)は、非ハロゲン化難燃剤である。その最終用途の製品の適用に応じて、難燃剤は、該製品配合物中で、0~約50pphp、0~約40pphp、0~約30pphp、又は0~約20pphpの量で存在することができる。別の態様において、該難燃剤は、0~約15pphp、0~約10pphp、0~約7pphp、又は0~約5pphp存在する。鎖延長剤、例えばエチレングリコール及びブタンジオールは、本発明において使用することもできる。例えば、エチレングリコールは、該配合物中に本発明のカルボキシレート塩触媒用の希釈剤又は溶剤として存在することもできる。
【0046】
以下は、本発明の好ましい項目のリストである:
項目1. a)少なくとも1種の第三級アミン塩を含む触媒組成物を製造する工程、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミン塩は、少なくとも1種のカルボン酸と少なくとも1種の第三級アミンとの接触生成物であり、ここで、前記の少なくとも1種の第三級アミンは、N-ヒドロキシエチルピペリジン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールからなる群から選択される;及びb)少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、前記触媒組成物とを反応させて、ポリウレタン製品を形成させる工程を含む、方法。
項目2. c)前記ポリウレタン製品の層を基材上に形成させること;及びd)前記ポリウレタン製品を100~180℃の温度に加熱して、前記ポリウレタン製品を硬化させ、かつ前記基材に結合されたポリウレタン層を形成させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
項目3. 前記の少なくとも1種のカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸、ネオデカン酸、及びトール油脂肪酸からなる群から選択される、項目1又は2に記載の方法。
項目4. 前記の少なくとも1種のカルボン酸が、芳香族カルボン酸である、項目1又は2に記載の方法。
項目5. 前記触媒組成物がさらに、カルボン酸のジメチルイミダゾール塩又はカルボン酸のジメチルシクロヘキサミン塩を含む、項目1~4のいずれかに記載の方法。
項目6. 前記触媒組成物がさらに、少なくとも1種の三量体触媒を含む、項目1~5のいずれかに記載の方法。
項目7. 前記の少なくとも1種の三量体触媒が、ピバル酸アンモニウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される、項目6に記載の方法。
項目8. 工程b)がさらに、前記の少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオールと、前記触媒組成物とを発泡剤の存在下で反応させることを含む、項目1~7のいずれかに記載の方法。
項目9. 前記発泡剤が、空気を含む、項目8に記載の方法。
項目10. 前記ポリウレタン製品が、ポリウレタンエラストマーである、項目1~7のいずれかに記載の方法。
項目11. 前記ポリウレタン製品が、機械発泡ポリウレタンフォームである、項目1~9のいずれかに記載の方法。
【実施例0047】
これらの例は、本発明のある態様を実証するために提供され、かつ本明細書に添付された請求の範囲に記載の範囲を限定するものではない。
【0048】
例1
酸ブロック第三級アミン触媒が添加されている典型的なポリウレタン配合物を使用して、当該技術分野において公知の方法に従って組成物が製造されうる。本発明によるポリウレタン配合物において使用されるポリイソシアネートの量は限定されないが、典型的には、当業者に公知の範囲内である。例示的な範囲は表に与えられており、「NCO指数」(イソシアネート指数)を参照して示される。当該技術分野において公知であるように、該NCO指数は、イソシアネートの当量数を、活性水素の総当量数で割って、100を掛けたものとして定義される。該NCO指数は、以下の式により表される。
NCO指数=[NCO/(OH+NH)]×100
【0049】
第1表
【表1】
【0050】
上記の第1表は、異なる触媒の性能を評価するのに使用される典型的なポリウレタン配合物Aを示す。全ての成分を、スピードミキサーカップ中へ装入し、約2500rpmで1分間遠心混合した。パドル時間を測定する室温評価のために、ブルックフィールド粘度計を、経時的な粘度上昇を記録するのに使用した。混合物が50000cPに達した点を、反応開始時間として選択した。
【0051】
高めた温度での硬化を決定するために、該混合物を、小さなアルミニウム皿中へ注ぎ入れ、その試験に応じて、100℃又は120℃で加熱された乾燥器中へ入れた。糸引きゲル時間(string-gel time)を決定するために、木製舌圧子を、加熱下でウレタン片を軽く叩くのに使用し;糸を引いた時間を、糸引きゲル時間として記録した。該ウレタン部分と接触させた後に材料が該舌圧子上に残らなかった時点を、タックフリータイムとして記録した。
【0052】
120℃での硬化をチェックする際に、該材料を、該乾燥器中に温度で10分間置き、かつ完了した材料を、定性的な評価のために手袋をはめた指で優しく押した。該材料が十分に硬い場合に、ショアA硬さ測定を、デュロメーターを用いてパック(puck)の平らな領域上で行った。
【0053】
例2
多様な酸ブロック触媒組成物の65℃及び100℃での反応性及びそれらと、工業により幅広く使用される標準的な触媒であるNi(acac)との比較が測定されており、かつ第2表に示される。
【0054】
第2表
【表2】
【0055】
ポリウレタンフォームに普通に使用される酸ブロックアミン触媒、例えば酸ブロックジアザビシクロウンデセン(DBU)が、不適切であることが見出された、それというのも、それらは、反応部位が利用可能になった際の反応が急速すぎる傾向があったからである。酸ブロック第三級アミン触媒、例えば酸ブロックNHEPは、より容易にデブロックすることが見出された。
【0056】
酸のタイプは、該アミンとの相互作用の強さを規定する。スルホン酸(例えば、パラ-トルエンスルホン酸又はメチルスルホン酸)のような、強い相互作用は、アミンとの、それらが容易にデブロックしない強い相互作用を有する。これは、該触媒が不活性であるべきより低い温度で十分であるが、しかし硬化温度(>100℃)のもとで、該触媒は、活性であるべきである。該スルホン酸は、この温度範囲でデブロックせず、該触媒を不活性にする。カルボン酸(例えば、C8酸、ポリマー酸、及び芳香族カルボン酸)は、この温度範囲でデブロックし、該触媒を活性にする。
【0057】
例3
より活性なアミンの酸ブロックされた変型との組合せでの多様な酸ブロック触媒組成物の反応性及びそれらと、工業により幅広く使用される標準的な触媒であるNi(acac)との比較が測定されており、第3表に示される。
【0058】
第3表
【表3】
【0059】
室温での反応の相殺が、少しより早く(60分のNi(acac)活性開始に比較して約20分)行われるが、依然として、典型的には該混合物を高せん断ミキサー下で3~5分間発泡させ、ついで基材上へ塗り広げることを包含する手での発泡実験にかけるには、十分に長い。
【0060】
改善された硬化は、該NHEP塩をジメチルイミダゾール(DMI)又はジメチルシクロヘキサミン(DMCHA)の塩と等しい割合でブレンドする際に確かめられ、かつ糸引きゲル時間及びタックフリータイムは該Ni(acac)に匹敵した。
【0061】
例4
第4表は、異なる三量体触媒あり又はなしでの多様な酸ブロック触媒組成物の性能及びそれらと、工業により幅広く使用される標準的な触媒であるNi(acac)との比較を示す。
【0062】
第4表
【表4】
【0063】
第4表は、前記の酸ブロックピバル酸アンモニウム錯体及び酸ブロック酢酸カリウム錯体が、より高温での良好な硬化と共に適切な潜在性を提供したことを示す。しかしながら、該三量体触媒単独では、パドル寿命(puddle life)を短縮する傾向があり、かつ室温で約15~20分後に概して活性であった。
【0064】
該三量体触媒を、前記の酸ブロック潜在性アミンとブレンドすることは、>100℃での硬化も維持しながら、そのパドル寿命にわたってより良好な制御を可能にした。これは単に、十分に潜在性のアミン、例えばNHEP及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TDMAMP)で作用した。より効率的な触媒を、これ(すなわちPC9)を試すために試験した際に、これは作用しなかった、それというのも、室温での活性が問題になったからである。
【0065】
例5
手での発泡操作を、ディソルバーディスク、直径=6cmを備えたディソルバー、VMA-GetzmanからのDispermat(登録商標)LC75モデルを使用して実施した。このためには、最初に、適切な比のポリオール、安定剤、触媒及び任意に炭酸カルシウムを1000mlプラスチックビーカー中へ量り入れ、かつ約500rpmで3分間撹拌して、均質混合物を得た。イソシアネートをついで添加し、該混合物を2200rpmで10分間発泡させた。ここでは、該ディソルバーディスクが、常に該混合物中へ十分に浸漬されて、適切な渦が形成されることに気をつけた。このようにして発泡した反応混合物の密度を、該フォーム安定剤の有効性のための評価基準として使用した。発泡した反応混合物を、ついで、コーティングされたはく離紙上へ、2mmの丸形ドクターブレードを備えたTQCからのAB3220型のフィルム延伸装置を使用して塗装し、かつ120℃で10分間硬化させた。
【0066】
例6
機械発泡操作を、2つの別個の偏心スパイラルホッパーポンプを備えた全自動実験室用フォーム発生器、Hansa-MixerからのPico-Mix XL型を使用して実施した。このためには、最初に、ポリオール、安定剤、触媒及び任意に炭酸カルシウムの予備混合物(バッチサイズ約5kg)を製造し、ついで該フォーム発生器の2つのホッパーポンプのうち一方に充填した。他方のホッパーポンプを、該イソシアネート成分で充填した。該発泡実験のために、ポリオール予備混合物及びイソシアネートを、該フォーム発生器のミキシングヘッド中へ同時に注入し、空気の同時の導入によりその中で発泡させた。該ミキシングヘッドを、全ての実験においてここでは850rpmで操作した。双方のホッパーポンプの流量を連続的に調整して、ポリオール及びイソシアネートを、該ミキシングヘッド中へ適切な比で(それぞれの配合物のNCO指数に相当)注入し、その全質量流量は約5~8kg/hであった(選択される配合、その充填剤含有率等に依存する)。該ミキシングヘッド中への空気流を、200及び400g/lのフォーム密度が発泡後に得られるように選択した。発泡した反応混合物を、ついで、コーティングされたはく離紙上へ、実験室用コーティングテーブル/乾燥機、Mathis AGからのLabcoater LTE-Sを使用して塗装し(層厚約6mm)、かつ120℃で10分間硬化させた。
【0067】
第5表は、異なる三量体触媒あり又はなしでの多様な酸ブロック触媒組成物の性能及びそれらと、工業により幅広く使用される標準的な触媒であるNi(acac)との比較を示す。
【0068】
第5表
【表5】