IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特開2022-151812鉛-酸電池用の鉛丹をベースとするコア-シェル粒子
<>
  • 特開-鉛-酸電池用の鉛丹をベースとするコア-シェル粒子 図1
  • 特開-鉛-酸電池用の鉛丹をベースとするコア-シェル粒子 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151812
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】鉛-酸電池用の鉛丹をベースとするコア-シェル粒子
(51)【国際特許分類】
   C01G 21/02 20060101AFI20220929BHJP
   H01M 4/20 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 4/14 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 4/56 20060101ALI20220929BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C01G21/02
H01M4/20 Z
H01M4/14 Q
H01M4/56
C01G23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047125
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】21164480
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エスケン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グラグラ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ブーサー
(72)【発明者】
【氏名】ミカ キルヒゲスナー
(72)【発明者】
【氏名】イアン クライン
【テーマコード(参考)】
4G047
5H050
【Fターム(参考)】
4G047CA02
4G047CA04
4G047CB04
4G047CC03
4G047CD03
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA09
5H050CA06
5H050CB15
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】コア-シェル粒子、そのようなコア-シェル粒子を製造する方法及び鉛-酸電池におけるそれらの使用に関する。
【解決手段】本発明のコア-シェル粒子は、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムでコーティングされた鉛丹をベースとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛丹を含有するコアと、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムを含有するシェルとを含む、コア-シェル粒子。
【請求項2】
前記鉛丹が、PbO 25重量%~32重量%を含有する、請求項1に記載のコア-シェル粒子。
【請求項3】
前記粒子が、5μm以下の平均粒子サイズd50を有する、請求項1又は2に記載のコア-シェル粒子。
【請求項4】
前記粒子が、2.3g/m~3.0g/mのタンプ密度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子。
【請求項5】
前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムの平均アグリゲート粒子サイズd50が、TEM分析により決定して、10nm~150nmである、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子。
【請求項6】
前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムの含有率が、前記コア-シェル粒子の全重量の0.1%~10%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子。
【請求項7】
前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムのBET表面積が、5m/g~200m/gであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子。
【請求項8】
四塩基性硫酸鉛(4PbO×PbSO)を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子。
【請求項9】
前記コア-シェル粒子の全重量の0.1%~10%の四塩基性硫酸鉛を含む、請求項8に記載のコア-シェル粒子。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子を製造する方法であって、
鉛丹及び熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムを、乾式混合にかけることを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
乾式混合を、電気混合ユニットによって鉛丹1kgあたり0.05kW~1.5kWの比電力で実施することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池用のペースト組成物。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池用の電極。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池。
【請求項15】
鉛-酸電池における請求項1から9までのいずれか1項に記載のコア-シェル粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フュームド金属酸化物でコーティングされた鉛丹をベースとするコア-シェル粒子、それらの製造方法及び鉛-酸電池における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉛-酸電池(LAB)は、正極、PbOを含有する充電された活物質と、負極、希硫酸電解液中に浸漬された海綿状Pbを含有する充電された活物質とを含有する。これらの電極は、該電解液内のイオンの輸送を保証する、例えばリーフタイプ又はエンベロープタイプのセパレータにより、電気的に分離される。その多孔質セパレータ材料は、あらゆる直接接触、ひいては、該電極の短絡を防止する。そのような電極は、典型的には導電性格子をベースとしており、かつ酸化鉛(類)及び硫酸鉛(類)を含有するペーストを該格子に塗り込むことにより製造される。このペースト化プロセス後に、ペースト化された、いわゆる「グリーン」極板は、硬化プロセス及び、この後に、化成プロセスを経る必要がある。
【0003】
従来のペーストは、酸化鉛、硫酸、水、及び添加剤、例えば繊維、及び負極活物質の場合に、エキスパンダ混合物を含有する。その正極ペーストは、鉛丹、より酸化された鉛粉(leady oxide)も含有することができ、より早くかつより効率的な化成プロセスを保証することができる。正極活物質(PAM)に使用される正極ペーストは、通常、希硫酸及び水を粉末状鉛及び酸化鉛(類)の混合物に添加することにより製造される。混合中の化学反応の結果として、該鉛粉の一部は、最初に塩基性硫酸鉛に変換され、生じる正極ペーストは、鉛、鉛粉、及び少量の硫酸鉛の不均質混合物を含む。
【0004】
正極活物質の重大な特性のうちの1つが、いわゆる活物質利用率である。後者は、極板の電気容量を与える活物質材料のパーセンテージを示す。極板容量は、その放電率及び試験条件に依存している。したがって、基準容量が電池工業において使用される。本研究については、我々は、C5容量を基準として使用した。
【0005】
該電解液は、該正極活物質中の充放電反応に関与しているので、活物質の比較的高い多孔度が、活物質の内層中への電解液侵入を可能にし、かつ高い比容量を達成するのに必要とされる。水圧入により決定される多孔度は、該電極活物質の電解液取込み量を入手するための1つの関連パラメーターである。該水圧入法により決定される少なくとも40%の多孔度は、該活物質を最適化するのに望ましい。該水圧入の他に、水銀での圧入が調査される。該水銀圧入は、全多孔度に対する異なる孔径の寄与を調査することを可能にする。
【0006】
鉛-酸電池の多孔度及び容量を増加させるために異なるアプローチが開発されている。
【0007】
このように、多様な添加剤、例えば繊維、シリカ、又は金属酸化物は、LABのペーストに添加して、それらの性能を改善することができる。シリカ及び金属酸化物は、いわゆるエキスパンダ又は細孔形成添加剤として通常使用され、該電極ペーストの利用できる活性表面積を増加させることを目指しており、これは該鉛電池の総容量を増加させることができる。
【0008】
ロシア国特許発明第2611879号明細書(RU 2611879 C2)には、酸化鉛を含む電池ペースト用のエキスパンダとしてのルチル型のTiOの使用が開示されている。そのような酸化鉛ペーストを製造する方法は、水、硫酸、酸化鉛、繊維、シリカ、二酸化チタン、及び硫酸アルミニウムの湿式混合を含む。
【0009】
中国特許出願公開第107863521号明細書(CN 107863521 A)には、酸化鉛を粉砕すること及び硫酸バリウム、リグニン、二酸化チタン、フミン酸、及び炭素繊維の水性分散液を添加すること、この湿った混合物を10~12分間撹拌すること及び硫酸を添加することを含む、湿式混合法による鉛-酸電池用のペーストの製造が開示されている。酸化鉛粒子の平均粒子サイズは、75~78%の酸化度で4~6μmである。TiO粒子の性質は開示されていない。TiO粒子サイズは、20~30nmの範囲内であると報告されている。
【0010】
中国特許出願公開第102931399号明細書(CN 102931399 A)には、70~75重量%の鉛、2~6重量%の酸化アルミニウム、0.05~0.1重量%の導電性繊維、5~8重量%の硫酸、9.1~0.6重量%の酸化アンチモン、0.005~0.01重量%のシリカ、0.005~0.01重量%の硫酸マグネシウム、0.005~0.01重量%の硫酸カリウム、酸化鉛、及び水を含む、鉛-酸電池用のカソードペーストが開示されている。このカソードペーストの製造方法も、その成分の正確な役割も、開示されていない。
【0011】
国際公開第2004/059772号(WO 2004/059772 A2)に記載されている、3μm未満の平均粒子サイズを有する四塩基性硫酸鉛(4PbO×PbSO、4BS)及びシリカ微粒子を含有する添加剤は、該鉛電極の電気化学的化成を容易にし、かつ特にパワフルな鉛蓄電池の製造をもたらす。
【0012】
鉛丹(Pb、式2PbO×PbOとも記載される)は、該正極ペースト配合物に添加されてよく、これは化成の効率及び該正極活物質の構造を改善し、その際に初期容量などの初期特性における鉛電池の性能の実質的な改善をもたらす。例えば、米国特許第4986317号明細書(US 4986317 A)及び米国特許第5252105号明細書(US5252105A)には、鉛丹を用いる鉛-酸電池用の電極の製造方法が記載されている。
【0013】
該(正極及び負極)電池ペーストにおいて使用される添加剤は、該ペーストの粘度に影響を与えうる。比較的高い密度を有するが、しかし比較的低い粘度を有する電池ペーストは、ペースト化プロセスの生産量を増加させるのに有益である。安定なペースト粘度は、より安定なペースト化厚を経時的に実現することに関してプロセス安定性をさらに増大させることを可能にする。これら全ての効果は、該鉛-酸電池の製造コストを低下させることを可能にする。そのようなペーストを使用することは、鉛支持要素、例えば鉛格子の表面上への該ペーストのより早くかつより均質な塗り込みにより、連続及び不連続の双方の製造ラインの最大スループットを増加させることをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ロシア国特許発明第2611879号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107863521号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第102931399号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/059772号
【特許文献5】米国特許第4986317号明細書
【特許文献6】米国特許第5252105号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1697260号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1083151号明細書
【特許文献9】国際公開第2006/067127号
【特許文献10】国際公開第2005/061385号
【特許文献11】独国特許出願公開第102019135155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
鉛-酸電池技術は、相当に長い間公知であるけれども、全性能、特にそのような電池の容量を増加させ、かつその製造コストを低下させる新しい方法を開発する、さらなる需要がある。多様なタイプの現在適用されるLABにおいて、確立された製造基準を変更することなく、かつその性能を改善しつつ使用することができる、鉛-酸電池における使用のための新しい添加剤が必要とされる。
【0016】
使用される添加剤は、該極板の硬化中の該四塩基性硫酸鉛結晶(4BS)の形成を妨げるべきではない。硬化された活物質の細孔構造は、該添加剤を使用することにより劣化すべきではない。最適には、使用される添加剤は、全多孔度と、約1μmの直径を有する細孔の比率とを増加させるべきである。この構造変化は、該活物質の急速な化成を促進する。通常、活物質の多孔度を増加させることは、該活物質の重量あたりの該電極板の増加した比容量をもたらす。
【0017】
本発明により扱われる別の技術的課題は、高密度を有する電極ペーストの粘度を低下させる添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の対象は、鉛丹を含有するコアと、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムを含有するシェルとを含む、コア-シェル粒子である。
【0019】
本発明者は予期しないことに、鉛-酸電池における添加剤として使用されるそのようなコア-シェル粒子が、該正極活物質の増加した利用率及び活物質ペースト化及び極板製造方法のより低くかつより安定な粘度をもたらしたことを見出した。
【0020】
鉛丹
用語「鉛丹」は、本発明に関連して、PbOよりも酸化された部類の鉛粉をいう。実用上の理由のために、該鉛丹化合物は、いわゆる名目上のPbO含有率により典型的に特徴付けられる。しかしながら、鉛丹はPbOとPbOとの混合物ではなく、かつ名目上のPbO含有率は酸化当量を与えている。本発明に関連して、該鉛丹が、25重量%の最小値及び32重量%までのPbOを含有することが好ましい。こうして、本発明の粒子中の鉛丹は好ましくは、PbO 25重量%~32重量%を含有する。純PbO(半導体ではない)を純PbOと混合することは、多少の欠点をまねきうることが見出された。
【0021】
該鉛丹の数平均粒子サイズd50は、決定的に重要であり、かつ好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm未満であり、より好ましくは約1μm~3μmの範囲内が殊に有利である。該鉛丹の数平均粒子サイズd50が約1μm~3μmである場合が殊に好都合である。該数平均粒子サイズd50は、ISO 13320:2009に従ってレーザー回折粒子サイズ分析により決定することができる。
【0022】
本発明のコア-シェル粒子中に含有される鉛丹は好ましくは、約1.5m/g以下、殊に約1.3m/g以下、より好ましくは約1.3m/g~0.9m/g、及び殊に約1.3m/g~0.5m/gのBET比表面積を有する。該BET表面積は、DIN 9277:2014-01に従って、ブルナウアー-エメット-テラー法に従う窒素吸着によって決定することができる。
【0023】
二酸化チタン及び酸化アルミニウム
本発明のコア-シェル粒子は、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムを含有するシェルを含む。
【0024】
用語「熱分解法により製造された」は、本発明に関連して、酸化物が、「フュームド(fumed)」法として公知でもある、熱分解法による方法により製造されることを意味する。このように、用語「熱分解法により製造された」及び「フュームド」は、互いに交換可能な同義語として使用される。
【0025】
そのような「熱分解法(による)」又は「フュームド」プロセスは、対応する金属前駆物質を酸水素炎中で火炎加水分解又は火炎酸化において反応させて金属酸化物を形成することを包含する。この反応は最初に、高分散した略球状の金属酸化物一次粒子を形成させ、該粒子は該反応のさらなる過程で合体して、アグリゲートを形成する。該アグリゲートは、ついでアグロメレートへと集積しうる。原則としてエネルギーの導入により比較的に容易に該アグリゲートへ分離することができるアグロメレートとは対照的に、該アグリゲートは、仮にあったとしても、エネルギーの強力な導入によってのみ、さらに破壊される。前記金属酸化物粉末は、適した粉砕により、部分的に破壊され、かつ本発明に有利なナノメートル(nm)範囲の粒子へ変換され得る。
【0026】
例えば、フュームド二酸化チタンの製造は、欧州特許出願公開第1697260号明細書(EP 1697260 A1)にさらに記載されている。
【0027】
熱分解法酸化アルミニウムの製造は、例えば欧州特許出願公開第1083151号明細書(EP 1083151 A1)、国際公開第2006/067127号(WO 2006067127 A1)、国際公開第2005/061385号(WO2005061385 A2)に、さらに記載されている。
【0028】
熱分解法により、殊に火炎加水分解法により製造された二酸化チタン及び酸化アルミニウム粉末は、チタン又はアルミニウムハロゲン化物、好ましくはTiCl又はAlClから出発して製造することができる。そのような金属ハロゲン化物又は他の金属前駆物質は蒸発することができ、かつ生じる蒸気は、単独で又はキャリヤーガス、例えば、窒素と一緒に、混合ユニット中でバーナー内で他のガス、すなわち、空気、酸素、窒素、及び水素と混合される。該ガスは、密閉した燃焼室内で火炎中で互いに反応して、対応する金属酸化物及び廃ガスを生成する。ついで、熱い廃ガス及び該金属酸化物は、熱交換器ユニット中で冷却され、該廃ガスは、該金属酸化物から分離され、かつ得られた金属酸化物に付着しているあらゆるハロゲン化物残渣は、湿らせた空気での熱処理により除去される。
【0029】
フュームド二酸化チタン又は酸化アルミニウムを製造するのに適した火炎噴霧熱分解(FSP)法は、以下の工程を含んでいてよい:
1)金属前駆物質を含有する溶液を、例えば空気又は不活性ガスによって、好ましくは多成分ノズルを用いて、噴霧し、かつ
2)燃焼ガス、好ましくは水素及び/又はメタン、及び空気と混合し、かつ
3)該混合物を、ケーシングにより取り囲まれた反応室内の火炎中で焼成させ、
4)熱いガス及び固体生成物を冷却し、ついで該固体生成物を該ガスから除去する。
【0030】
熱分解法により製造された二酸化チタン、及び酸化アルミニウムは、透過型電子顕微鏡法(TEM)により決定して、好ましくは5~100nm、より好ましくは10~90nm、よりいっそう好ましくは20~80nmの一次粒子の数平均直径d50を有するアグリゲーションされた一次粒子の形である。この数平均直径d50は、TEMにより分析される少なくとも500個の粒子の平均サイズを計算することにより、決定することができる。
【0031】
本発明のコア-シェル粒子の製造において使用される、前記の熱分解法により製造された二酸化チタン及び前記の熱分解法により製造された酸化アルミニウムのアグリゲートの平均直径d50は、通常約10nm~1000nmであり、該アグロメレートの平均直径d50は、通常1μm~2μmである。これらの平均数値d50は、適した分散液中、例えば、水性分散液中で、静的光散乱(SLS)法により決定することができる。該アグロメレート及び部分的に該アグリゲートは、例えば、該粒子の粉砕又は超音波処理により破壊されて、より小さな粒子サイズを有する粒子を生じることができる。
【0032】
該フュームド金属酸化物のアグロメレート及びアグリゲート粒子サイズも、該コア-シェル粒子の形成中に低下されうる。
【0033】
本発明によれば、該コア-シェル粒子中の該二酸化チタン及び/又は該酸化アルミニウムの数平均アグリゲート粒子サイズd50は、TEM分析により決定して、好ましくは10nm~150nm、より好ましくは20nm~130nm、よりいっそう好ましくは30~120nmである。
【0034】
前記の熱分解法により製造された二酸化チタン及び比較的狭い粒子サイズ分布は好ましくは、本発明のコア-シェル粒子中に存在する前記の熱分解法により製造された酸化アルミニウムを特徴付ける。これは、鉛丹の表面上で高品質の金属酸化物層を実現することを助ける。
【0035】
これらの金属酸化物の粒子サイズ分布の狭さは、スパンの値=(d90-d10)/d50により特徴付けることができる。
【0036】
該二酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムの粒子のスパン(d90-d10)/d50は、該粒子5重量%と、水中ピロリン酸ナトリウムの0.5g/L溶液95重量%とからなる混合物の25℃での超音波処理60s後の静的光散乱(SLS)により決定して、好ましくは0.4~1.2、より好ましくは0.5~1.1、よりいっそう好ましくは0.6~1.0である。
【0037】
d値d10、d50、及びd90は、与えられた試料の累積粒径分布を特徴付けるのに普通に使用される。例えば、該d10直径は、試料の体積の10%がd10よりも小さい粒子からなる直径であり、該d50は、試料の体積の50%がd50よりも小さい粒子からなる直径である。該d50は、「体積中位径」としても公知である、それというのも、該試料を体積で等分するからである;該d90は、試料の体積の90%がd90よりも小さい粒子からなる直径である。
【0038】
前記の熱分解法により製造された二酸化チタン及び酸化アルミニウムは、好ましくは事実上親水性であり、すなわちこれらは、熱分解法によるプロセスによるそれらの合成後に、全く疎水性試薬、例えばシランによりさらに処理されない。こうして、該粒子は通常、少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%の純度を有する。これらの元素のAl又はTi金属以外の全ての割合の和は、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満である。塩化物の含有率は、該金属酸化物粉末の質量を基準として、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.01~0.3重量%である。炭素の割合は、該金属酸化物粉末の質量を基準として、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.005重量%~0.2重量%、よりいっそう好ましくは0.01重量%~0.1重量%である。
【0039】
本発明のコア-シェル粒子中の該二酸化チタン及び/又は該酸化アルミニウムのBET表面積は、好ましくは5m/g~200m/g、より好ましくは20m/g~160m/g、より好ましくは30m/g~140m/gである。特に好ましくは、該フュームド酸化アルミニウムのBET表面積は、60m/g~140m/gの範囲内であり、かつ該二酸化チタンのBET表面積は、30m/g~80m/gの範囲内である。該BET表面積は、DIN 9277:2014-01に従って、ブルナウアー-エメット-テラー法に従う窒素吸着により決定することができる。
【0040】
適したフュームド酸化アルミニウムは、例えば、Evonik Industries AGにより製造される商品名Aeroxide(登録商標) Alu 130、Aeroxide(登録商標) Alu C、Aeroxide(登録商標) Alu 65で入手可能なもの又はCabot Corporationにより製造されるSpectrAl(登録商標) 100、SpectrAl(登録商標) 51、SpectrAl(登録商標) 81、SpectrAl(登録商標) PC401で入手可能なものである。
【0041】
適したフュームド二酸化チタンは、例えば、Evonik Industries AGにより製造される商品名Aeroxide(登録商標) TiO2 P25で入手可能であるものである。
【0042】
コア-シェル粒子
本発明による、コア-シェル粒子は、鉛丹を含有するコアと、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムを含有するシェルとを含む。
【0043】
該コア-シェル粒子中のフュームド二酸化チタン及び/又は該酸化アルミニウムの含有率は、該コア-シェル粒子の全重量の好ましくは0.1%~10%、より好ましくは0.5%~8%、よりいっそう好ましくは1.0%~6%、よりいっそう好ましくは2.0%~5.0%である。
【0044】
本発明のコア-シェル粒子は好ましくはさらに、四塩基性硫酸鉛(4PbO×PbSO)を含む。
【0045】
本発明のコア-シェル粒子における該四塩基性硫酸鉛の存在は、その電極ペースト式電極の硬化中に定義されたサイズを有する四塩基性硫酸鉛結晶の形成を可能にし、これは、該鉛-酸電池の増加した容量及び寿命を達成するのに有益である。この添加剤の使用は、例えば国際公開第2004/059772号(WO 2004/059772 A2)にさらに開示されている。
【0046】
添加剤として四塩基性硫酸鉛結晶を使用することは、より狭い孔径分布及び約1μm~2μmの細孔の高い割合を有する活物質をもたらすことが見出された。約1μm~2μmの細孔の高い割合を有するそのような狭い孔径分布は、最適な電極/電解液相互作用に有利である。
【0047】
該コア-シェル粒子中の四塩基性硫酸鉛の量は、該粒子の0.1重量%~10重量%、より好ましくは1.0重量%~8重量%、より好ましくは2.0重量%~6重量%であってよい。
【0048】
使用される四塩基性硫酸鉛の平均粒子サイズは、好ましくは約1.5μm未満である。約0.2~0.9μmの範囲は、殊に有利であることが見出された。0.2μm未満の値は、全く経済的な利点をもたらさないだろう。平均粒子サイズが増大するにつれて、添加剤の量が増加されなければならず、上限値の超過は、経済的な理由のためにここでは回避されるべきである。
【0049】
四塩基性硫酸鉛は、水性媒体中、殊に脱塩水中で好ましくは湿式粉砕され、その際に、該粉砕は、該四塩基性硫酸鉛の平均粒子サイズが約3μm未満になるまで続けられる。
【0050】
四塩基性硫酸鉛(4BS)は鉛丹と、フュームド二酸化チタン及び/又はフュームド酸化アルミニウムとの生じた混合物をコーティングする前に、混合することができる。4BSで変性されたそのような鉛丹粒子の製造は、乾式又は湿式混合プロセスにおいて実施することができる。水中の4BSの分散液を鉛丹と混合して、湿式プロセスにおいて四塩基性硫酸鉛を鉛丹粒子中に均一に分布させることができる。
【0051】
本発明のコア-シェル粒子のタンプ密度は、使用される鉛丹よりも通常低い。これは、該コア-シェル粒子の独特の表面構造を反映する。
【0052】
本発明による、コア-シェル粒子は、好ましくは、3.3g/m未満、より好ましくは3.1g/m以下、より好ましくは2.2g/m~3.1g/m、より好ましくは2.3g/m~3.0g/m、より好ましくは2.4g/m~2.9g/m、より好ましくは2.5g/m~2.8g/mのタンプ密度を有する。
【0053】
多様な粉状又は粗粒子の粒状の材料のタンプ密度(tamped density)(「タップ密度(tapped density)」とも呼ばれる)は、DIN EN ISO 787-11:1995 “General methods of test for pigments and extenders -- Part 11: Determination of tamped volume and apparent density after tamping”に従って決定することができる。これは、撹拌及びタンピング後の床の見掛け密度を測定することを包含する。
【0054】
該コア-シェル粒子を製造する方法
本発明はさらに、本発明によるコア-シェル粒子を製造する方法を提供し、ここで、鉛丹及び熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムが、乾式混合にかけられる。
【0055】
乾式混合は、液体が該混合プロセス中に本質的に添加されない又は使用されない、すなわち例えば、実質的に乾燥した粉末が一緒に混合されることを意味すると理解される。しかしながら、痕跡量の水分又は水以外の一部の液体が混合される供給原料中に存在すること又はこれらが結晶水を含むことが可能である。好ましくは、該鉛丹及び前記の熱分解法により製造された金属酸化物の混合物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の水及び/又は他の液体を含有する。
【0056】
本発明の乾式混合プロセスは、例えば、金属酸化物を含有する分散液を使用する湿式混合を包含する混合プロセスに対して、一部の重要な利益を有する。そのような湿式混合プロセスは必然的に、該混合プロセスが完了した後に蒸発させなければならない溶剤の使用を包含する。このように、本発明の乾式混合プロセスは、該湿式混合プロセスよりも単純かつより経済的である。他方では、本発明の乾式混合プロセスも、該鉛丹の表面上の前記の熱分解法により製造された金属酸化物粒子のより良好な分布を提供することが、驚くべきことに見出された。
【0057】
乾式混合は、好ましくは、本発明の方法において、電気混合ユニットによって、該鉛丹1kgあたり0.02kW~2.0kW、より好ましくは0.05kW~1.5kW、より好ましくは0.1kW~1.0kW、より好ましくは0.15kW~0.6kWの比電力で実施される。
【0058】
用語「電気混合ユニット」は、本発明に関連して、電気エネルギーによって操作されるあらゆる混合装置に関する。
【0059】
電力は、単位時間あたりの、電気エネルギーが電気回路により変換される比率である。用語「比電力」は、本発明に関連して、該鉛丹1kgあたりの、該混合プロセス中に該電気混合ユニットにより供給される電力に関する。
【0060】
適用される比電力が、該鉛丹1kgあたり0.02kW未満である場合には、これは、前記の熱分解法により製造された金属酸化物の不均質な分布をまねき、これは、本発明のコア-シェル粒子のコア材料(鉛丹)に堅固に結合され得ない。
【0061】
該鉛丹1kgあたり2.0kWを上回る比電力は、該混合プロセス中のより高いエネルギー消費をまねく。そのうえ、目標のコア-シェル粒子を強力すぎる混合により破壊するリスクがある。
【0062】
該混合ユニットの公称電力は、幅広い範囲、例えば、0.1kW~1000kWの範囲内にわたっていてよい。例えば、0.1~5kWの公称電力を有する実験室規模での混合ユニット又は10~1000kWの公称電力を有する生産規模用の混合ユニットを使用することが可能である。該公称電力は、該混合ユニットの銘板の、最大絶対電力である。
【0063】
該混合ユニットの体積が幅広い範囲、例えば、0.1L~2.5mの範囲にわたることが同様に可能である。このように、0.1~10Lの体積を有する実験室規模での混合ユニット又は0.1~2.5mの体積を有する生産規模用の混合ユニットを使用することが可能である。
【0064】
用語「混合ユニットの体積」は、本発明に関連して、混合されうる物質を入れることができる、該電気混合ユニットのチャンバの最大体積をいう。
【0065】
好ましくは、本発明による、方法において、強制ミキサーは、高速の混合器具を有するインテンシブミキサーの形で使用される。5~30m/s、より好ましくは10~25m/sの該混合器具の速度が、最良の結果を与えることが見出された。用語「混合器具」は、本発明に関連して、運動、例えば回転、振とう等をすることができ、ひいては該混合ユニットの内容物を混合する、該混合ユニットにおけるあらゆる物体をいう。そのような混合器具の例は、多様な形のスターラーである。本発明の方法に好適な商業的に入手可能な混合ユニットは、例えば、ヘンシェルミキサー又はEirichミキサーである。
【0066】
本発明の混合プロセスの期間は、好ましくは0.1~120分、より好ましくは0.2~60分、極めて好ましくは0.5~20分である。
【0067】
該混合に続いて、生じたコア-シェル粒子の熱処理することができる。そのような処理は、前記の熱分解法により製造された金属酸化物の、該鉛丹粒子への結合を改善しうる。しかしながら、この処理は、本発明による方法に必要ではない、それというのも、この方法において、前記の熱分解法により製造された金属酸化物は、十分な強度で該鉛丹粒子に付着するからである。したがって、本発明による方法の好ましい実施態様は、該混合後に全く熱処理を含まない。
【0068】
該コア-シェル粒子を含む鉛電池成分
本発明はさらに、本発明のコア-シェル粒子を含む鉛-酸電池用のペースト組成物を提供する。
【0069】
本発明に関連して用語「ペースト組成物」は、用語「正極活物質」又は「PAM」と同義である。
【0070】
該コア-シェル粒子とは別に、該ペースト組成物は通常、酸化鉛(II)PbO、硫酸HSO、水、及び他の添加剤、例えば短く切断した繊維、フュームドシリカを含む。
【0071】
該ペースト組成物中の本発明のコア-シェル粒子の量は、好ましくは5重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~35重量%、より好ましくは15重量%~30重量%である。該ペースト組成物中のPbOの量は、好ましくは30重量%~90重量%、より好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~70重量%である。硫酸(98%HSO)は、該ペースト組成物の2重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~17重量%、より好ましくは5重量%~15重量を含んでいてよい。他の添加剤、例えば短く切断した繊維又はフュームドシリカの全量は、5重量%まで含みうる。該ペースト組成物中の水の量は、25重量%まで、より好ましくは20重量%以下、よりいっそう好ましくは15重量%以下であってよい。
【0072】
本発明のペースト組成物は、LAB用の従来のペースト組成物に比較して増加した多孔度を有する。
【0073】
2つの方法が、該ペースト組成物の多孔度の適切な尺度となりうる:PENOXにより定義される試験方法PM 600(PM 600、2018年04月13日付、後者は、電池工業による試験手順に従う)に従う水圧入法及びDIN ISO 15901-1:2019に従う水銀圧入法。
【0074】
本発明のペースト組成物の多孔度は、DIN ISO 15901-1:2019に従う水銀圧入法により決定して、好ましくは0.20cm/g未満、より好ましくは0.10cm/g~0.18cm/g、より好ましくは0.11cm/g~0.15cm/g、より好ましくは0.12cm/g~0.14cm/gである。
【0075】
本発明のペースト組成物の平均孔径は、DIN ISO 15901-1:2019に従う水銀圧入法により決定して、好ましくは10μm未満、好ましくは0.5μm~8μm、より好ましくは0.8μm~6μm、より好ましくは0.9μm~4.0μm、より好ましくは1.0μm~2.0μmである。
【0076】
PENOX手順PM 600に従う水圧入法により決定される、本発明のペースト組成物の多孔度は、好ましくは40%を上回り、より好ましくは40%~60%、より好ましくは40%~50%である。
【0077】
該水多孔度は、硬化された活物質の全多孔度に優先的に近い。後者は、該水銀圧入法により測定される。
【0078】
本発明のペースト組成物は、鉛電極、例えば、該鉛-酸電池における電流伝導体として役立つ鉛格子をコーティングするのに使用されうる。その硬化段階において、コーティングされた電極は、通常、高湿度環境中での穏やかな加熱に暴露される。該硬化プロセスは、該ペーストを、該鉛電極に付着する硫酸鉛の混合物に変化させる。ついで、該電池の初充電(「化成」と呼ばれる)中に、該電極上の硬化されたペーストが、電気化学的活性材料(該「活物質」)へ変換される。
【0079】
本発明はさらに、本発明のコア-シェル粒子を含む鉛-酸電池用の電極を提供する。本発明の電極は、任意の適した形、例えば平板電極又は管状極板電極で存在していてよい。
【0080】
本発明はさらに、本発明による、コア-シェル粒子を含む鉛-酸電池を提供する。
【0081】
本発明のコア-シェル粒子は、該鉛-酸電池の電極中に好ましくは存在する。そのような電極は、通常、例えば有孔ポリ塩化ビニル製の、適したセパレータにより互いに分離される。そのような鉛-酸電池の電解液は通常、完全充電された状態で1.25~1.29g/mの密度を有する希硫酸を含有する。
【0082】
本発明はまた、鉛-酸電池における、特に該鉛-酸電池の電極における、本発明のコア-シェル粒子の使用を提供する。
【0083】
本発明による、コア-シェル粒子が、該正極活性組成物において添加剤として使用され、かつ鉛蓄電池の製造における個別化された及び個別化されていない極板の硬化及び乾燥前に添加されることが好ましい。殊に有利に、該極板の硬化は、スタックで、水平に、垂直に、又は吊り下げて、蒸気の作用下で約60℃を上回る温度で、殊に約70~85℃の温度で、約1~2時間以内で行われる。良好な結果は、該極板の硬化がスタックで、水平に、垂直に、又は吊り下げて、バッチチャンバ中で、又は蒸気の作用下で、約70℃未満の温度で及び12~24時間以内で実施される場合にも達成される。
【0084】
該極板は、連続的な硬化及び乾燥操作において硬化させることもできる。殊に良好な結果は、該極板の硬化が、スタックで、水平に、垂直に、又は吊り下げて、連続的な硬化及び乾燥操作において蒸気の作用下で約70~85℃で約1時間以内で実施される場合に達成される。上記の連続的な硬化及び乾燥操作において、該硬化及び乾燥が、上昇する温度での多段階乾燥において作用されることが殊に好ましい。上昇する温度での該乾燥が約50℃で開始し、かつ約85℃に上昇しながら、約1~4時間にわたって、殊に約2~3時間にわたって実施されることが殊に有利であることが見出された。
【0085】
本発明のコア-シェル粒子は、全てのタイプの現行の鉛-酸電池プラント技術及びルーチン方法操作において適用することができる。下流のスタックシステム及び全ての標準的な硬化及び乾燥室を有する現行のペースト化ラインが、変更せずに使用することができる。
【0086】
本発明のコア-シェル粒子添加剤の利点は、主に、硬化された鉛板が、より良好な電荷受容性を可能にし、かつより高い活物質利用率を示すことである。その化成プロセスは、よりエネルギー効率的である、それというのも、過充電エネルギー(後者は、硬化された活物質を完全に充電するのに必要とされる付加的なエネルギーを意味する)は、より低い過電圧を実現することにより低下される。付加的な多孔度及び硬化された活物質のBET表面積に応じて、該化成時間も減少されることができ、ひいては、該過充電はさらに低下される。
【0087】
付加的に、本発明のコア-シェル粒子の使用は、高密度の電極ペーストの粘度を低下させ、ひいては該混合プロセス及びさらに該ペーストのハンドリングを容易にする。このように、そのような高密度の電極ペーストを、電極格子上により早く及びより均一に分布させることができる。後者は、製造ラインのスループットを増加させることを可能にし、かつ鉛-酸電池用の質的により良好な電極を製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】例2により製造された本発明のコア-シェル粒子のSEM像を示す。
図2】鉛丹上にコーティングされたフュームドAl(例2)中のAl原子(白)のSEM-EDXマッピングの像を示す。
【実施例0089】
四塩基性硫酸塩5重量%で変性された鉛丹粉末の製造
四塩基性硫酸鉛シードで変性された鉛丹の製造は、独国特許出願公開第102019135155号明細書(DE102019135155A1)に記載されている。
【0090】
コア-シェル粒子の製造
例1
約3μmのd50及び3.3g/mのタンプ密度を有する、四塩基性硫酸塩5重量%で変性された鉛丹粉末3kgを、フュームド酸化アルミニウムAeroxide(登録商標) Alu 130粉末(製造者Evonik Industries AG)の対応する量(鉛丹の質量に対して4重量%)と、3段の星型撹拌機を備えた実験室用ミキサーEirich R01中で500rpmの回転速度(混合動力0.125kW)で混合した。得られた橙赤色の混合物は、目視でその出発材料よりもはるかにより流動性である。生じた生成物のタンプ密度は、約2.8g/mであった。
【0091】
例2
手順は、未変性鉛丹(PENOXにより製造)を使用し、回転速度が4000rpmであり、かつ回転時間が10分であることを除き、例1と同じであった。
【0092】
例3
手順は、回転速度及び時間がそれぞれ4000rpm(混合動力1kW)、及び10分であったことを除き、例1と同じであった。
【0093】
比較例1
鉛丹の添加なしでの酸化鉛(PbO)を、正極活物質を製造するのに使用した(下記参照)。
【0094】
比較例2
未変性鉛丹を、正極活物質を製造するのに使用した(下記参照)。
【0095】
該正極活物質(PAM)の製造:一般的な手順。
【0096】
2036.8gの酸化鉛(PbO、100%)(比較例1)又は酸化鉛(PbO、75重量%)と変性又は未変性の鉛丹(Pb、25重量%)との混合物(他の全ての例)を使用した。短く切断した繊維(5.1g)を供給し、ついで該成分を、500rpmの回転速度で向流原理を使用して乾式予備混合する。この場合に、全ての乾燥成分の乾燥混合物は、典型的に、その混合容器/パンが、ローター器具の撹拌ブレードと反対方向に回転している(向流原理)際に、より均質である。脱イオン水(229.1g)を、ついで、該材料を500rpmの一定速度で絶えず撹拌しながら添加した。該添加は、1.5分後に終了した。希硫酸(229.1g、d=1.40g/mL)を、約2分にわたって添加し、その間に該ペースト混合物の温度は、約25℃から50℃までに上昇した。該ペーストを、2分間撹拌し、ついで、該温度が45℃未満に低下するまで能動的に冷却した。
【0097】
正極板の製造及び硬化
該正極板を、重力鋳造された格子上への該正極活物質の手でのペースト化により製造した。定義された硬化プログラムに従って、製造された正極板を、人工気候室中で硬化させた。本研究において、全ての極板は、四塩基性構造に硬化されている。
【0098】
該硬化中に、該活物質は、数段階を経る。最初に、高温(85℃)及び2時間の期間で、その結晶成長が促進される。その後、該室中の湿度は約70%に低下されて、該活物質内部の遊離鉛を酸化して酸化鉛にすることを可能にする。該正極板の厚さに応じて、該酸化プロセスは、6時間までかかりうる。この後に、該極板を、1重量%未満の目標残留含水率に達するまで乾燥させた。
【0099】
硬化された極板の多孔度を、該水圧入法により及び加えて該高圧水銀圧入法により決定した。後者は、AutoPore IV 9500 2.03.00を使用している。
【0100】
硬化された極板は、その電気試験の前に化成プロセスを経る必要がある。該化成工程は、硬化された活物質構造を、化成された活物質構造へ変換するのに著しい影響を与える。したがって、該化成パラメーターは、一定に維持されていた。
【0101】
該正極板を用いる電気試験
2.5Ahの公称容量(C5)を有する正極板を、実施される測定の系列において試験した。そのセルは、正極板、該試験試料、及び2枚の負極板からなっていた。その容量を、25℃での1.28g/m(±0.05g/m)の電解液密度で決定した。極板の最終放電電圧を、5時間容量試験のために1.70Vで設定し、かつ0.5Aを該放電電流として使用した。その試験温度を、水浴により25℃で一定に維持した。
【0102】
その目的は、最初のサイクルにおける該正極活物質の容量を、使用される添加剤材料を通じて増加させることであった。さらに、その目標は、できる限り早く一定の動作容量に達することであった。このために、使用される活物質(単位:g)に対する達成された容量(単位:Ah)を、最初の充電/放電サイクルにおいて測定した(単位:Ah/g)。
【0103】
第1表は、Pbの添加なしのPbO(比較例1)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験の結果を示す。
【0104】
第1表:PbなしでのPbO(比較例1)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験。
【表1】
【0105】
第2表は、Pb 25重量%(比較例2)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験の結果を示す。
【0106】
第2表:Pb 25重量%(比較例2)を含有するペーストを用いる充電/放電試験。
【表2】
【0107】
第3表は、フュームドAl 4重量%で4000rpmでコーティングされたPb 25重量%(例1)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験の結果を示す。
【0108】
第3表:フュームドAl 4重量%で4000rpmでコーティングされたPb 25重量%(例1)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験。
【表3】
【0109】
第4表は、フュームドAl 4重量%で4000rpmでコーティングされた(Pb+5重量%4PbO×PbSO)混合物25重量%(例2)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験の結果を示す。
【0110】
第4表:フュームドAl 4重量%で4000rpmでコーティングされた(Pb+5重量%4PbO×PbSO)混合物25重量%(例2)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験。
【表4】
【0111】
第5表は、フュームドAl 4重量%で500rpmでコーティングされた(Pb+5重量%4PbO×PbSO)混合物25重量%(例3)を含有するLABペーストを用いる充電/放電試験の結果を示す。
【0112】
第5表:フュームドAl 4重量%で500rpmでコーティングされた(Pb+5重量%4PbO×PbSO)混合物25重量%(例3)を含有するペーストを用いる充電/放電試験。
【表5】
【0113】
第6表は、第1表~第5表に示された比較例1~2及び例1~3の結果をまとめる。
【0114】
第6表は、調査されており、かつ構造パラメーター及び活物質利用率として表現される関連した比容量に関して特徴付けられている、正極活物質(PAM)の概要を提供する。該比容量は、C5容量として(25℃及びセルあたり1.70Vへの放電で)測定される容量のアンペア時(Ah)あたり必要とされるPAMの質量である。熱分解法酸化物の添加は、硬化された電極の構造に影響を与え、かつより良好な活物質利用率を生じ、すなわち、Ahあたり必要とされるPAM重量を減少させる。
【0115】
より良好な活物質利用率のための1つの原動力は、水圧入として測定される、増加された多孔度である。それにもかかわらず、単純な多孔度モデルは、完全な説明を与えない、それというのも、前記の細孔の直径、及び該孔径分布は、添加剤の使用によっても変化するからである。したがって、第6表は、該細孔の傾向を示す水銀圧入も提供する。例1~3におけるPAMの平均活物質利用率は、比較例1~2におけるよりも低く、コア-シェル粒子を使用することが、該電極活物質のより効率的な利用を可能にすることを示唆する。この効果は、該コア-シェル粒子の形成が4000rpmのより高い混合速度下で生じる場合に、より明白になる(例2~3)。
【0116】
別の重要な観察は、例1~3によるコア-シェル粒子を用いて製造されたペーストが、低下された可塑性/粘度によるペースト化し、かつハンドリングすることをより利用しやすいことであった。さらに、典型的に色の変化及び該ペーストの硬化を生じる、該正極活物質のエージングが、著しく低下される。該ペースト化プロセス及び該ペーストを該電極格子上へ塗り込むのに必要とされる混合及びハンドリングエネルギーは、著しく低下することができた。この効果は、該鉛丹粒子をコーティングするためにフュームド金属酸化物を使用することに帰着しうる。同じ乾式コーティングプロセスにおいて非フュームド金属酸化物を使用することが、ペースト粘度に関して劣った結果をまねくことが観察された。
【0117】
【表6】
【0118】
本発明の好ましい実施態様は以下のとおりである:
1. 鉛丹を含有するコアと、熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は熱分解法により製造された酸化アルミニウムを含有するシェルとを含む、コア-シェル粒子。
2. 前記鉛丹が、PbO 25重量%~32重量%を含有する、1.に記載のコア-シェル粒子。
3. 前記粒子が、5μm以下の平均粒子サイズd50を有する、1.又は2.に記載のコア-シェル粒子。
4. 前記粒子が、2.3g/m~3.0g/mのタンプ密度を有する、1.~3.に記載のコア-シェル粒子。
5. 前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムの平均アグリゲート粒子サイズd50が、TEM分析により決定して、10nm~150nmである、1.~4.に記載のコア-シェル粒子。
6. 前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムの含有率が、前記コア-シェル粒子の全重量の0.1%~10%である、1.~5.に記載のコア-シェル粒子。
7. 前記二酸化チタン及び/又は前記酸化アルミニウムのBET表面積が、5m/g~200m/gであることを特徴とする、1.~6.に記載のコア-シェル粒子。
8. 四塩基性硫酸鉛(4PbO×PbSO)を含む、1.~7.に記載のコア-シェル粒子。
9. 前記コア-シェル粒子の全重量の0.1%~10%の四塩基性硫酸鉛を含む、8.に記載のコア-シェル粒子。
10. 1.~9.のいずれかに記載のコア-シェル粒子を製造する方法であって、
鉛丹及び熱分解法により製造された二酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムを、乾式混合にかけることを特徴とする、前記方法。
11. 乾式混合を、電気混合ユニットによって鉛丹1kgあたり0.05kW~1.5kWの比電力で実施することを特徴とする、10.に記載の方法。
12. 1.~9.のいずれかに記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池用のペースト組成物。
13. 1.~9.のいずれかに記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池用の電極。
14. 1.~9.のいずれかに記載のコア-シェル粒子を含む、鉛-酸電池。
15. 鉛-酸電池における1.~9.のいずれかに記載のコア-シェル粒子の使用。
図1
図2