(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151813
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】人工板を作製する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/64 20060101AFI20220929BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220929BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220929BHJP
A63B 67/04 20060101ALI20220929BHJP
A63D 15/00 20060101ALI20220929BHJP
A47B 96/20 20060101ALI20220929BHJP
B27N 3/04 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C08G18/64 092
C08G18/08 038
C08G18/76 057
A63B67/04 A
A63D15/00 D
A47B96/20 Z
A47B96/20 C
B27N3/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022047170
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】202110316570.1
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】21176652.2
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオジュン グー
(72)【発明者】
【氏名】リーチャン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ワン
【テーマコード(参考)】
2B260
4J034
【Fターム(参考)】
2B260AA12
2B260BA01
2B260BA07
2B260BA15
2B260BA19
2B260CB01
2B260CD06
2B260CD30
2B260DA05
2B260DB21
2B260DC02
2B260DD02
2B260EA05
2B260EB08
2B260EC20
4J034EA09
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034MA24
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC08
4J034RA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギーを節約し、持続可能な発展を実現することができる、人工板の作製方法、該方法により作製された人工板、及びその使用を提供する。
【解決手段】人工板を作製する方法は、繊維と、ポリウレタンフォーム粒子と、成分A)イソシアネートを含む反応系とを混合することによって人工板を作製することを含み、前記ポリウレタンフォーム粒子の絶対乾燥重量が、繊維とポリウレタンフォーム粒子との総絶対乾燥重量に対して、3重量%~80重量%、好ましくは4重量%~75重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、特に好ましくは5重量%~60重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工板を作製する方法であって、繊維と、ポリウレタンフォーム粒子と、成分A)イソシアネートを含む反応系とを混合することによって人工板を作製することを含み、
前記ポリウレタンフォーム粒子の絶対乾燥重量が、繊維とポリウレタンフォーム粒子との総絶対乾燥重量に対して、3重量%~80重量%、好ましくは4重量%~75重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、特に好ましくは5重量%~60重量%である、方法。
【請求項2】
前記ポリウレタンフォームが、再生ポリウレタンフォーム、好ましくは再生ポリウレタン硬質フォーム、ポリウレタン軟質フォーム、ポリウレタン半硬質フォーム、又はこれらの組合せ、より好ましくは再生ポリウレタン硬質フォームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分A)イソシアネートの含有量が、繊維とポリウレタンフォーム粒子との総絶対乾燥重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維が、植物繊維の総絶対乾燥重量に対して、3重量%~40重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは3重量%~25重量%の含水率を有する植物繊維から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記人工板の24時間吸水後の厚み膨張率が11%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下(GB/T17657-2013を参照する試験方法)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォーム粒子を含む人工板の24時間吸水後の厚み膨張率が、前記ポリウレタンフォーム粒子を含まない人工板の厚み膨張率と比較して、20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上(GB/T17657-2013を参照する試験方法)低減されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
成分A)イソシアネートが、
A1)成分A)の総重量に対して、3.0重量%~20重量%、好ましくは5.0重量%~20重量%、より好ましくは7.0重量%~20重量%、特に好ましくは8.0重量%~18重量%の2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、
A2)成分A)の総重量に対して26重量%~48重量%の多環式高分子イソシアネートと、
を含み、
前記成分A)イソシアネートの25℃における粘度が50mPa・s~160mPa・s、好ましくは60mPa・s~150mPa・s(GB/T 12009.3-2009を参照する試験方法)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、導入速度1.2kg/分~25kg/分、好ましくは1.5kg/分~20kg/分(質量流量計による測定を参照する試験方法)で反応系を型に導入する工程を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
成分A)イソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを、成分A)の総重量に対して、41重量%以下、好ましくは20重量%~41重量%、特に好ましくは28重量%~37重量%の含有量で含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
成分A)イソシアネートが、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを成分A)の総重量に対して、30重量%以下、好ましくは1重量%~25重量%の含有量で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の人工板を作製する方法により作製された人工板。
【請求項12】
前記人工板の24時間吸水後の厚み膨張率が11%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下(GB/T17657-2013を参照する試験方法)である、請求項11に記載の人工板。
【請求項13】
24時間吸水後の前記ポリウレタンフォーム粒子を含む人工板の厚み膨張率が、前記ポリウレタンフォーム粒子を含まない同一の人工板の厚み膨張率と比較して、20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上(GB/T17657-2013を参照する試験方法)低減されている、請求項11又は12に記載の人工板。
【請求項14】
前記人工板の密度が480kg/m3~1400kg/m3、好ましくは500kg/m3~860kg/m3(GB/T17657-2013を参照する試験方法)である、請求項11~13のいずれか一項に記載の人工板。
【請求項15】
ワードローブ、事務用の机及び椅子、ベッドボード、ソファ、食器棚、バスルームキャビネット、ビリヤード台並びに卓球台から選択される、請求項11~14のいずれか一項に記載の人工板を含む人工板製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工板を作製する方法、該方法により作製された人工板、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人工板の作製において、植物繊維はこの業界で原料として一般的に使用され、高分子イソシアネート、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル及びリグニンが接着剤として使用される。しかしながら、植物繊維で作られた人工板は、経年劣化、部分的又は全体的な変形を起こしやすく、利用効果が低く、耐用年数が短くなる。頑丈で耐久性のあるホルムアルデヒドフリーの高品質人工板を製造する方法は、業界で緊急に解決すべき課題である。さらに、ポリウレタンフォームは広く用いられているが、使用後の廃棄が困難な固形廃棄物となり、汚染を引き起こしやすい。廃棄物をいかにして価値のあるものにするかも、この業界で解決すべき課題である。
【0003】
特許文献1は、イソシアネートと、グラフトポリオールと、リグノセルロースとから人工板を作製することを開示しており、グラフトポリオールは、イソシアネート反応性成分を含む連続相と、ポリマー粒子を含む不連続相とを含む(ポリマー粒子は、SAN、尿素、又はポリウレタンであり得る)。
【0004】
特許文献2で言及される接着剤系は、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールを含むポリオールと、粗イソシアネートと、少量の発泡剤とを含む。
【0005】
特許文献3は、パネル構造中に3層を有する構造パネルを開示し、コア層は、再生ポリウレタン、断熱フォーム、ポリイソシアヌレートフォーム等である。2つの表層は、リサイクルされたエネルギー吸収パネルである。他の材料としては、複合樹脂、布、接着剤、ガラス繊維及びプラスチックが挙げられる。カーペット繊維、木粉及び古紙をフィラーとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第104960064号
【特許文献2】米国特許第6841023号
【特許文献3】国際公開第200708442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の開示にもかかわらず、市場では高品質で耐久性のある人工板を作製する方法が依然として緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、人工板を作製する方法であって、繊維と、ポリウレタンフォーム粒子と、成分A)イソシアネートを含む反応系とを混合することによって人工板を作製することを含み、
ポリウレタンフォーム粒子の絶対乾燥重量が、繊維とポリウレタンフォーム粒子との総絶対乾燥重量に対して、3重量%~80重量%、好ましくは4重量%~75重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、特に好ましくは5重量%~60重量%である、方法を提供する。
【0009】
好ましくは、ポリウレタンフォーム粒子は、再生ポリウレタンフォーム、好ましくは再生ポリウレタン硬質フォーム、ポリウレタン軟質フォーム、ポリウレタン半硬質フォーム、又はこれらの組合せ、より好ましくは再生ポリウレタン硬質フォームを含む。
【0010】
好ましくは、成分A)イソシアネートの含有量は、繊維とポリウレタンフォーム粒子との総絶対乾燥重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%である。
【0011】
好ましくは、繊維は、植物繊維の総絶対乾燥重量に対して、7重量%~40重量%、好ましくは7重量%~30重量%、より好ましくは7重量%~25重量%の含水率を有する植物繊維から選択される。
【0012】
好ましくは、人工板の24時間吸水後の厚み膨張率は、11%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下(試験方法:GB/T17657-2013)である。
【0013】
好ましくは、ポリウレタンフォーム粒子を含む人工板の24時間吸水後の厚み膨張率は、ポリウレタンフォーム粒子を含まない人工板の厚み膨張率と比較して、20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上(試験方法:GB/T17657-2013)低減されている。具体的には、ポリウレタンフォーム粒子を含む人工板の24時間吸水後の厚み膨張率がxであり、ポリウレタンフォーム粒子を含まない人工板の厚み膨張率がyである場合、24時間吸水後の厚み膨張率の低下値は(y-x)/y%である。
【0014】
好ましくは、成分A)イソシアネートは、
A1)成分A)の総重量に対して、3.0重量%~20重量%、好ましくは5.0重量%~20重量%、より好ましくは7.0重量%~20重量%、特に好ましくは8.0重量%~18重量%の2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、
A2)成分A)の総重量に対して26重量%~48重量%の多環式高分子イソシアネートと、
を含み、
成分A)イソシアネートの粘度は50mPa・s~160mPa・s(25℃)、好ましくは60mPa・s~150mPa・s(25℃)(試験方法:GB/T 12009.3-2009)である。
【0015】
好ましくは、上記方法は、導入速度1.2kg/分~25kg/分、好ましくは1.5kg/分~20kg/分(質量流量計による測定を参照する試験方法)で反応系を型に導入する工程を含む。
【0016】
好ましくは、成分A)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを、成分A)の総重量に対して、41重量%以下、好ましくは20重量%~41重量%、特に好ましくは28重量%~37重量%の含有量で更に含む。
【0017】
好ましくは、成分A)は、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを成分A)の総重量に対して、30重量%以下、好ましくは1重量%~25重量%の含有量で更に含む。
【0018】
好ましくは、上記方法により製造された人工板の収率は、7m3/時間以上、好ましくは10m3/時間以上、より好ましくは12m3/時間以上(体積計算方法を参照する試験方法)である。
【0019】
本発明の反応系は、ポリオール又は触媒等の他の添加剤を含んでもよい。また、ポリオール又は他の添加剤を含まなくてもよい。本発明の反応系は、ポリオールを含まないことが好ましい。本発明の反応系は、他の添加剤を含まないことが好ましい。意外なことに、ポリオール又は他の添加剤を加えることなく、高品質で吸水後の厚さ膨張率が低い審美的で耐久性のある人工板を製造できることがわかった。本発明の方法は、プロセスを簡素化し、原料を節約するだけでなく、廃棄物を価値のあるものに変え、汚染を減らし、より環境にやさしいものである。
【0020】
本発明の別の態様は、本発明の人工板を作製する上述の方法により作製された人工板を提供する。
【0021】
好ましくは、人工板の24時間吸水後の厚み膨張率は11%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下(試験方法:GB/T17657-2013)である。
【0022】
好ましくは、24時間吸水後のポリウレタンフォーム粒子を含む人工板の厚み膨張率は、ポリウレタンフォーム粒子を含まない人工板の厚み膨張率と比較して、20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上(試験方法:GB/T17657-2013)低減されている。
【0023】
好ましくは、人工板の密度は、480kg/m3~1400kg/m3、好ましくは500kg/m3~860kg/m3(GB/T17657-2013を参照する試験方法)である。
【0024】
意外なことに、特定の含有量の本発明のポリウレタンフォームを含む人工板を作製する方法によって作製された人工板は、物性に関する要件を満たすことができるだけでなく、吸水後のそれらの厚さ膨張速度を予想外に減少させることができることから、人工板製品はより審美的であり、耐久性があり、取り扱い及び移動が容易で、より広い範囲の用途に対応できることがわかった。特に、再生ポリウレタンフォームを含む人工板は、リサイクルが困難なポリウレタンフォームの適用分野を開拓することで、廃棄物を簡単にコスト効率よく価値のあるものに変えるだけでなく、人的資源及び材料資源を節約し、さらに省エネルギー、排出削減、環境保護、及び人類の持続可能な発展に貢献する。
【0025】
当業者は、接着剤又は他の原料として使用されるイソシアネートが、通常、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の異性体を含有することを知っている。実験室用途であろうと工業生産であろうと、イソシアネート中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は通常非常に高く、場合によっては50重量%を超え、その反応性を保証する。全ての異性体の中で、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートは最も低い活性を有する。例えば、国際公開第2007/087987号は次のように示している。「ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマーの中では、4,4’-異性体及び2,4’-異性体が合成に起因して支配的である。2,2’-異性体は少量存在し、基本的に工業的価値はなく、また、より低い程度に形成される」。これは、純粋な2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを工業的に使用することができず、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するイソシアネートは、通常、反応が非常に遅いという欠点を有するため、反応が不完全であるという事実に部分的によるものである。
【0026】
しかしながら、イソシアネートの合成において種々の異性体が必然的に形成される。したがって、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートは廃棄物として焼却処分されることが多く、大きな廃棄物及び環境汚染の原因となっている。しかしながら、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートは、それらの活性が高いため高価である。
【0027】
実験を重ねた結果、意外なことに、一定の粘度を有するイソシアネートを含み、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを適切な含有量で含む反応系を用いることで、ホルムアルデヒドフリーの品質に優れた人工板を製造できるだけでなく、収率及び生産効率も向上できることがわかった。さらに、触媒なしで安定した反応速度を確保することができ、プロセスを最適化し、資源を節約することができる。さらに、従来技術で通常多量に使用される高価な4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又は高分子イソシアネートの量が、その分低減され、コストが削減され、経済的で環境にやさしいものとなる。
【0028】
この業界で人工板の作製に使用されるイソシアネート接着剤の粘度は通常170mPa・s~230mPa・s(25℃)であり、幾つかの特殊変性イソシアネートの粘度は更に高い。同じ温度で、イソシアネートの組成はイソシアネートの粘度を決定し、それが次にイソシアネートの移動抵抗を決定する。人工板の作製中、接着剤を導入するにはポンプが必要であり、ポンプシステムは通常、一定の正常で安全な作動圧力を有する。複合人工板の生産効率を向上させる必要がある場合、イソシアネートの塗布部分を変えずにイソシアネートの量を増加させ、これはイソシアネートに対するポンプの送達量を増加させること、すなわちポンプの運転パラメータを増加させることを必要とする。イソシアネートの送達量の増加は、ポンプシステムの負荷の増加をもたらし、作動圧力が増加する。安全な作動圧力を超えると、機器は容易に損傷される。
【0029】
ポンプシステムの負荷は、反応系中に特定のイソシアネートを含む等の特性を有する本発明による人工板を作製する方法において低減することができる。ポンプシステムは、高回転速度及び高出力でも正常で安全な作動圧力の範囲で動作することができ、それによって複合人工板の生産効率を安全で効果的に改善する。
【0030】
さらに、従来技術におけるイソシアネート接着剤は、ミキサーの内壁に付着することが多く、洗浄を困難にし、機器の機能及び寿命に影響を与える。意外なことに、本発明のイソシアネート成分は、壁付着現象を大幅に低減、又は更には排除し、関連機器の洗浄及び耐久性のある使用を容易にすることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態
以下、本発明の態様について詳細に説明する。
【0032】
人工板を作製するための反応系の成分及び原料
ポリイソシアネート成分
本発明の人工板を作製する方法において使用される反応系は、芳香族、脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート並びにそれらの組合せを含む任意の有機ポリイソシアネートを含み得る。ポリイソシアネートは、一般式R(NCO)nで表すことができ、式中、Rは2個~18個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基、6個~15個の炭素原子を含む芳香族炭化水素基、及び8個~15個の炭素原子を含む芳香脂肪族炭化水素基を表し、n=2~4である。
【0033】
使用可能なポリイソシアネートとしては、好ましくは、限定されるものではないが、ビニレンジイソシアネート、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカン-1,2-ジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ヘキサヒドロトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン-1,4-ジイソシアネート、過水素化ジフェニルメタン2,4-ジイソシアネート、過水素化ジフェニルメタン4,4-ジイソシアネート、フェニレン1,3-ジイソシアネート、フェニレン1,4-ジイソシアネート、スチルベン-1,4-ジイソシアネート、3,3-ジメチル4,4-ジフェニルジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)、トルエン-2,6-ジイソシアネート(2,6-TDI)、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート(2,4’-MDI)、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート(2,2’-MDI)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体及び/又はより多くの環を含むジフェニルメタンジイソシアネートホモログの混合物、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(高分子MDI)、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、それらの異性体、それらの及びそれらの異性体の任意の混合物が挙げられる。
【0034】
使用可能なポリイソシアネートとしては、カルボジイミド及びアロファネートで変性されたイソシアネートも挙げられ、好ましくは、限定されるものではないが、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、それらの異性体、それらの及びそれらの異性体の混合物が挙げられる。
【0035】
本発明において使用される場合、ポリイソシアネートは、イソシアネートの二量体、三量体、四量体、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、イソシアネート成分は、
A1)成分A)の総重量に対して、3.0重量%~20重量%、好ましくは5.0重量%~20重量%、より好ましくは7.0重量%~20重量%、特に好ましくは8.0重量%~18重量%の2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートと、
A2)成分A)の総重量に対して、26重量%~48重量%の多環式高分子イソシアネートと、
を含み、
成分A)イソシアネートの粘度が50mPa・s~160mPa・s、好ましくは60mPa・s~125mPa・sである。
【0037】
本発明の成分A)イソシアネートの粘度は、好ましくは50mPa・s~160mPa・s(25℃)、好ましくは60mPa・s~125mPa・s(25℃)である。
【0038】
好ましくは、成分A)イソシアネートの含有量は、繊維の総絶対乾燥重量に対して、1重量%~10重量%、好ましくは2.5重量%~7重量%である。
【0039】
好ましくは、成分A)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを、成分A)の総重量に対して、41重量%以下、好ましくは20重量%~41重量%、特に好ましくは28重量%~37重量%の含有量で更に含む。
【0040】
好ましくは、成分A)は、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを成分A)の総重量に対して、30重量%以下、好ましくは5重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~25重量%の含有量で更に含む。
【0041】
本発明の多環式高分子イソシアネートは、三環式又は多環式のイソシアネートポリマーを指し、ジイソシアネートのポリマーを含まない。本発明に用いられる多環式高分子イソシアネートの粘度は、従来技術で一般的に用いられる高分子イソシアネートの粘度よりも高い。しかしながら、意外なことに、本発明の他のイソシアネート成分と組み合わせることで、全体の粘度が低い反応系が得られ得ることがわかった。さらに、上述したように、本発明の人工板を作製する方法は、人工板の収率を大幅に増加させることができる。
【0042】
ポリオール成分
上述したように、本発明の反応系は、ポリオールを含んでもよい。使用可能なポリオールは、好ましくは、種々のポリエーテルポリオール及び/又はそれらの混合物から選択される。ポリエーテルポリオールの少なくとも1つは、グリセリン開始ポリオールである。ポリエーテルポリオールの官能価は2~4であり、そのヒドロキシル価は20~600、好ましくは50~500、特に好ましくは300~400である。
【0043】
ポリエーテルポリオールは、既知のプロセスにより調製することができる。通常、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドとエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、トルエンジアミン、ソルビトール及びスクロースを混合することによって調製され、ここでは、グリセロール又はプロピレングリコールが開始剤として使用される。
【0044】
さらに、ポリエーテルポリオールは、触媒の存在下で、2個~4個の炭素原子のアルキレン基を含む少なくとも1つのオレフィンオキシドを、2個~8個、好ましくは、限定されるものではないが、3個~8個の活性水素原子を含む化合物又は他の反応性化合物と反応させることによっても調製することができる。
【0045】
触媒の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、又はナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド若しくはカリウムエトキシド、若しくはカリウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシドである。
【0046】
有用なオレフィンオキシドとしては、好ましくは、限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0047】
活性水素原子を含む有用な化合物としては、ポリヒドロキシ化合物、好ましくは、限定されるものではないが、水、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びこれらの任意の混合物、より好ましくは多価、特に3価又は多価アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びスクロースが挙げられる。活性水素原子を含む有用な化合物としては、好ましくは、限定されるものではないが、有機ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、フタル酸及びテレフタル酸、又は芳香族若しくは脂肪族置換ジアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン若しくはトルエンジアミンも挙げられる。
【0048】
触媒
本発明の反応系は、触媒を含み得る。任意の触媒としては、限定されるものではないが、アミン触媒及びアルカリ金属触媒が挙げられる。適切なアミン触媒は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレン-トリアミン、N,N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、又はこれらの混合物のうちの1つであり得る。
【0049】
本発明の反応系は、触媒を含まなくてもよい。実験を重ねた結果、意外なことに、一定の粘度を有するイソシアネートを含み、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを適切な含有量で含む反応系を用いることで、活性を高める触媒を用いることなく、すなわち触媒を用いずに、品質に優れたホルムアルデヒドフリーの人工板が得られ得ることがわかった。さらに、コストを節約し、プロセスを最適化することができる。加えて、人工板の収率及び生産効率も向上させることができる。
【0050】
繊維
本発明の繊維は、連続又は不連続なフィラメントで構成される物質を指す。本発明の繊維は、植物繊維であることが好ましい。植物繊維は、亜麻、ジュート、アポシナム(apocynum)等の植物の靭皮から得られるもの、又はサイザル、マニラ麻等の植物の葉から得られるものを含む、植物の種子、果実、茎、葉等から得られるものを指す。具体的には、植物繊維は、シナノキ(basswood)、カバノキ(birch)、フラキシヌス・マンジュリカ(fraxinus mandshurica)、ブナ材(beechwood)、エイサー・ピクタム(acer pictum)、ラワン(lauan)、又はそれらの任意の組合せ(雑木材又は混合木材とも呼ばれる)等の樹木、又は小麦わら、竹の茎、削りくず、綿の茎、バガス及びアシ等の他の植物に由来するものであり得る。
【0051】
ポリウレタンフォーム
任意の利用可能なポリウレタンフォームが本発明に適しており、好ましくはポリウレタン硬質フォーム又は半硬質フォームである。ポリウレタンフォーム粒子は、再生ポリウレタンフォームを含み、好ましくは再生ポリウレタン硬質フォーム、ポリウレタン軟質フォーム、ポリウレタン半硬質フォーム又はそれらの組合せ、より好ましくは再生ポリウレタン硬質フォームを含む。再生ポリウレタンフォームは、使用済みのポリウレタンフォームを指し、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、容器、断熱パイプ及び他の同様の機器において使用、交換又は廃棄されたポリウレタンフォームであり、これらは、ポリウレタン硬質フォーム、又はポリウレタン半硬質フォーム、又はポリウレタン軟質フォームであり得る。原理的には、本発明は、繊維を含まないポリウレタンフォームを100%使用してもよく、吸水後に最良の厚み膨張率をもたらす。しかしながら、ポリウレタンフォームを100%使用すると、その物性が特定の用途における要求を満たすことができない場合がある。ポリウレタンフォームを特定の含有量で含む本発明の方法は、物性及び吸水後の厚み膨張率の点で要件を満たす特に優れた品質の人工板を製造することができ、また簡単で効率的であり、廃ポリウレタンフォームをリサイクルすることができるため、非常に環境にやさしいものである。
【0052】
特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における用語の定義が、当業者によって一般的に理解される意味と矛盾する場合、本明細書に記載の定義が適用されるものとする。
【0053】
特に明記しない限り、本明細書で使用される構成成分の量、反応条件等を表す全ての数字は、「約」という語句によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0054】
本明細書で使用される「及び/又は」という語句は、引用された要素の1つ又は全てを指す。
【0055】
本明細書で使用される「含む(include)」及び「含む(comprise)」という語句は、言及された要素単独の存在及び言及された要素に加えて言及されていない他の要素の存在を包含する。
【0056】
本発明における全ての百分率は、特に明記しない限り、重量百分率である。
【0057】
これより、例示を目的として実施例によって本発明を説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例0058】
試験項目及び試験方法の説明:
密度は、試験方法GB/T17657-2013に従って試験のためにサンプリングされた人工板の計算された密度を指す。
【0059】
収率は、単位時間(h、時間)あたりに製造された人工板の体積(m3、立方メートル)の累積値として計算される人工板の単位収率を指す。
【0060】
内部接合強度は、試験方法GB/T17657-2013による人工板の内部接合強度を指す。
【0061】
絶対乾燥重量とは、乾燥(例えば100℃以上に加熱)して水分を除去した後の物体(例えば、繊維)の重量を指す。
【0062】
吸水後の厚み膨張率は、一定量の人工板をサンプリングして一定期間(例えば、24時間)水に浸漬することにより、標準的な方法(本発明ではGB/T17657-2013を参照する)に従って測定される、水に浸漬する前の厚みに対する測定される吸水前後の厚み差の比を指す。
【0063】
粘度は、試験方法GB/T 12009.3-2009に従って測定される粘度を指す。
【0064】
原料の説明:
イソシアネート1:イソシアネート1の総重量に対して、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)を8.5重量%、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)を23.3重量%、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)を30.2重量%、多環式高分子イソシアネートを37.7重量%含み、粘度は80mPa・s(25℃)であり、Covestro Polymers(中国)Co., Ltd.から入手可能である。
イソシアネート2:Desmodur 1520 A 20は、0%の2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、54重量%の多環式高分子イソシアネートを含み、粘度は205mPa・s(25℃)であり、Covestro Polymers(中国) Co., Ltd.から入手可能である。
ポリウレタンフォーム:冷蔵庫ボックスからリサイクルされたポリウレタン硬質フォーム(Covestroから得られたポリウレタン原料)。
雑木材/混合木材繊維(含水率9%):Guangxi Sanwei Forest Products Industry Companyから入手可能。
ゴム材1(含水率3.6重量%):海南省の地元の農家から入手可能。
ゴム材2(含水率13.4重量%):海南省の地元農家から入手可能。
【0065】
実施例1:
混合木質繊維とポリウレタンフォーム粒子とを絶対乾燥重量換算で7:3の比で混合し、ミキサーに入れた。イソシアネート1(ここで、加えられたイソシアネートの量は、繊維及びポリウレタンフォームの絶対乾燥重量に対して6重量%であった)を、ポンプにより1.65bar~1.85barの圧力下で1.2kg/分~25kg/分の速度でミキサーに導入した。混合物を空気霧化スプレーに供した。混合塊を取り出し、上記と同じ速度で型に導入した。型を195℃に加熱し、ホットプレス時間は112秒であった。イソシアネートが硬化して人工板を得た。得られた人工板は厚さ8mmであった。試験データを表1及び表2に示した。
【0066】
比較例1:
混合木質繊維をミキサーに入れた。イソシアネート1(ここで、加えられたイソシアネートの量は、繊維の絶対乾燥重量に対して6重量%であった)を、ポンプにより1.65bar~1.85barの圧力下で1.2kg/分~25kg/分の速度でミキサーに導入した。混合物を空気霧化スプレーに供した。混合塊を取り出し、上記と同じ速度で型に導入した。型を195℃に加熱し、ホットプレス時間は112秒であった。イソシアネートが硬化して人工板を得た。得られた人工板は厚さ8mmであった。試験データを表1に示した。
【0067】
比較例1と実施例1との違いは、混合木質繊維のみをポリウレタンフォームなしで使用した点である。
【0068】
【0069】
【0070】
上の表1のデータのように、実施例1の人工板の吸水後の厚み膨張率は比較例1の吸水後の厚み膨張率よりも著しく低かったことがわかる。実施例1の密度及び他の物性も要件を満たし、品質も優れていた。
【0071】
本発明を本発明の目的のために上に詳細に説明したが、この詳細な説明は例示にすぎないことを理解されたい。特許請求の範囲によって規定される内容に加えて、当業者は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく種々の変更を加えることができる。