IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フィラー配列フィルム 図1
  • 特開-フィラー配列フィルム 図2
  • 特開-フィラー配列フィルム 図3
  • 特開-フィラー配列フィルム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151822
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】フィラー配列フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20220929BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20220929BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
C08L101/12
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047654
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021054424
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】野田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】白岩 俊紀
【テーマコード(参考)】
4J002
5E051
【Fターム(参考)】
4J002BE06W
4J002CD05W
4J002CD20X
4J002CH08X
4J002DA086
4J002FD116
4J002GQ00
5E051CA03
(57)【要約】
【課題】μLEDの電極等の微小な第1物品と透明ディスプレイ用基板等の第2物品とをフィラー配列フィルムを用いて接続することにより得られる、第1物品と第2物品の接続構造体の透明性を向上させる。
【解決手段】
絶縁接着層10にフィラー2が配置されているフィラー配列フィルム1Aであって、フィラーの高密度領域4が間隔をあけて規則的に配列しており、各高密度領域4に、フィラー2の偏在領域3が複数個形成されている。フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率が40%以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁接着層にフィラーが配置されているフィラー配列フィルムであって、
フィラーの高密度領域が間隔をあけて規則的に配列しており、
各高密度領域にフィラーの偏在領域が複数個形成されており、
フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率が40%以上であるフィラー配列フィルム。
【請求項2】
高密度領域が1辺10μm~1000μmの矩形である請求項1記載のフィラー配列フィルム。
【請求項3】
高密度領域内のフィラーの偏在領域におけるフィラーの個数密度が50000個/mm2以上である請求項1又は2記載のフィラー配列フィルム。
【請求項4】
高密度領域内のフィラーの偏在領域におけるフィラーの個数密度が500000個/mm2以上である請求項3記載のフィラー配列フィルム。
【請求項5】
高密度領域間のフィラーの個数密度が1000個/mm2以下である請求項1~4のいずれかに記載のフィラー配列フィルム。
【請求項6】
高密度領域内の偏在領域間のフィラーの個数が偏在領域のフィラーの個数の50%以下である請求項1~5のいずれかに記載のフィラー配列フィルム。
【請求項7】
フィラーの偏在領域におけるフィラーの面積占有率が5%以上である請求項1~6のいずれかに記載のフィラー配列フィルム。
【請求項8】
偏在領域においてフィラーが、正方格子、長方格子又は六方格子に配列している請求項1~7のいずれかに記載のフィラー配列フィルム。
【請求項9】
高密度領域間の可視光透過率が50%以上である請求項1~8のいずれかに記載のフィラー配列フィルム。
【請求項10】
複数の第1物品が第2物品上で配列した状態で、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部とを、絶縁性樹脂層にフィラーが配列したフィラー配列フィルムを介して加熱又は加圧することにより接続する接続方法であって、
フィラー配列フィルムとして、
絶縁接着層にフィラーの高密度領域が間隔をあけて規則的に配列しており、
各高密度領域にフィラーの偏在領域が複数個形成されており、
フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率が40%以上であるフィラー配列フィルムを使用する接続方法。
【請求項11】
個々の高密度領域の輪郭形状の面積が、第1物品の平面視面積の0.1倍以上1.5倍以下である請求項10記載の接続方法。
【請求項12】
個々の偏在領域の面積が、第1物品の接続部の平面視面積の0.5倍以上1.8倍以下である請求項10記載の接続方法。
【請求項13】
絶縁性樹脂層の厚みがフィラーの平均粒子径の3倍以下である請求項10~12のいずれかに記載の接続方法。
【請求項14】
第1物品がμLEDであり、第2物品が透明ディスプレイ用基板である請求項10~13のいずれかに記載の接続方法。
【請求項15】
複数の第1物品が第2物品上で配列した状態で、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部とがフィラーを介して接続されている接続構造体であって、
フィラーが第1物品の配列に対応して高密度領域を形成しており、
高密度領域内でフィラーが第1物品の接続部に対応して偏在している接続構造体。
【請求項16】
接続構造体において第1物品及び第2物品が接続されていない部分の可視光透過率が50%以上である請求項15記載の接続構造体。
【請求項17】
第1物品がμLEDであり、第2物品が透明ディスプレイ用基板である請求項15又は16記載の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーが樹脂層に配列しているフィラー配列フィルム、フィラー配列フィルムを用いて微小な第1物品を基板等の第2物品に接続する方法、及びその方法により得られた接続構造体に関する。ここで微小な第1物品としては、例えばミニLED、μLED等の微小な発光素子を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
微小な発光素子であるμLEDを基板上に配列してなるμLEDディスプレイは、液晶ディスプレイに必要とされるバックライトを省略できることによりディスプレイを薄膜化することができ、広色域化、高精細化、省電力化も実現することのできるディスプレイとして期待されており、さらに透明ディスプレイ用途としても期待されている。光源として使用する場合も、同様である。従来よりも軽量薄型化できるため、携帯性等の性能向上が期待できる。近年活発化している、所謂「テレワーク」から鑑みても、ディスプレイへの種々の要請は高まっており、これらに応えることが期待されている。
【0003】
μLEDを配列したディスプレイの作製方法として、特許文献1にはキャリア基板上に形成した赤、青、緑のμLEDアレイを移送ヘッドでピックアップし、ディスプレイ基板等の転写先基板に配置し、ハンダ層の溶着によりμLEDアレイと転写先基板とを接合し、次いでその上にITO等で接触線を形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ウエハ上に形成されたμLEDを基板に配置し、水素添加エポキシ化合物等を用いた接着剤成分中に導電粒子を分散させた異方性導電フィルムを使用して基板と接続し、ウエハをリフトオフする方法が記載されている。特許文献2に記載の異方性導電フィルムを使用する方法によればμLEDを用いたディスプレイを簡便に得ることができる。
【0005】
特許文献3には、平面視における導電粒子の面積占有率が35%以下の導電粒子配列層を有する異方性導電フィルムを用いてICチップとFPCを接続するにあたり、導電粒子の捕捉効率を上げるためにパルスヒータ式ボンダーを使用し、1段階目にICチップとFPCとを異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に押し込むことで、電極を導電粒子配列層に近づける仮固定を行い、2段階目に本圧着を行うという2段階方式の接続方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-500562号公報
【特許文献2】特開2017-157724号公報
【特許文献3】特開2019-216097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスプレイの高精細化のためにμLEDのサイズが小さくなり、それに伴いLED電極のサイズも小さくなると、絶縁材料中に導電粒子を単に混合した異方性導電フィルムを用いた場合には、個々のμLEDの電極に確実に導電粒子を捕捉させることが困難となる。
【0008】
これに対し、粒径の小さい導電粒子を使用し、異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度を上げることが考えられる。
【0009】
しかしながら、粒径の小さい導電粒子を高い個数密度で異方性導電フィルムの全面に配置するとショートリスクが高まり、また光が透過しにくくなるといった設計への悪影響も懸念される。そのため、そのような異方性導電フィルムを用いてμLEDを透明ディスプレイ用基板に接続しても歩留まりの悪化が懸念されるとともに、設計自由度の高い透明ディスプレイを得ることはできない。
【0010】
そこで本発明の課題は、フィラー配列フィルムを用いて、μLED等の微小な第1物品と透明ディスプレイ用基板等の第2物品とを接続することにより、第1物品と第2物品の接続構造体として透明なものを得ることを可能とするフィラー配列フィルムを提供すること、及びそのようなフィラー配列フィルムを用いて得られた、第1物品と第2物品との接続構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、導電粒子等のフィラーが絶縁性樹脂層に配列したフィラー配列フィルムを用いてμLEDの電極等の微小な第1物品の接続部を透明ディスプレイ用基板の電極等の第2物品の接続部に接続する場合に、フィラー配列フィルムにおけるフィラーが、第1物品の配列に対応して規則的に配列した高密度領域を形成しており、高密度領域内ではフィラーが第1物品の接続部に対応して偏在領域を形成していると、接続に関与しない不要なフィラーを極力低減することができ、また接続時の樹脂流動がフィラーの高密度領域同士の間を通り、高密度領域内には影響しにくくなるのでフィラーが第1物品の接続部と第2物品の接続部との間に確実に捕捉され、フィルム面方向で隣り合う接続部同士がフィラーで不用に繋がるショートを防止でき、かつ第1物品がμLED等の発光素子である場合には、フィラーが高密度領域に集中していることにより、発光素子からの光が高密度領域以外の部分を高い透過率で透過するので、発光素子を実装した発光装置の発光効率が向上することを想到し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、絶縁接着層にフィラーが配置されているフィラー配列フィルムであって、
フィラーの高密度領域が間隔をあけて規則的に配列しており、
各高密度領域にフィラーの偏在領域が複数個形成されており、
フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率が40%以上であるフィラー配列フィルムを提供する。
【0013】
また本発明は、複数の第1物品が第2物品上で配列した状態で、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部とを、絶縁性樹脂層にフィラーが配列したフィラー配列フィルムを介して加熱又は加圧することにより接続する接続方法であって、
フィラー配列フィルムとして、
絶縁接着層にフィラーの高密度領域が間隔をあけて規則的に配列しており、
各高密度領域にフィラーの偏在領域が複数個形成されており、
フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率が40%以上であるフィラー配列フィルムを使用する接続方法を提供する。
【0014】
さらに本発明は、複数の第1物品が第2物品上で配列した状態で、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部とがフィラーを介して接続されている接続構造体であって、
フィラーが第1物品の配列に対応して高密度領域を形成しており、
高密度領域内でフィラーが第1物品の接続部に対応して偏在している接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフィラー配列フィルムを使用すると、μLEDの電極等の微小な第1物品の接続部を透明ディスプレイ用基板の電極等の第2物品の接続部に、フィラー配列フィルムを介して加熱又は加圧することにより接続する場合に、第1物品の接続部と第2物品の接続部の間に確実に1個以上のフィラーが捕捉され、かつフィルム面方向で隣り合う接続部同士、即ち第1物品の接続部同士、又は第2物品の接続部同士の間でフィラーが繋がるリスクが低い。よって、μLED等の電子部品を基板に接続する場合のショートのリスクを低減させることができる。
【0016】
また、第1物品がμLED等の発光素子である場合には、発光素子の配列に対応してフィラーの高密度領域が配列しているので、発光素子からの光の出射がフィラーで妨げられ難い。よって、発光素子を実装した発光装置の発光効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例のフィラー配列フィルム1Aにおけるフィラーの配置図である。
図2図2は、実施例のフィラー配列フィルム1Aにおけるフィラーの配置と、フィラー配列フィルム1Aで接続する物品の接続部との対応図である。
図3図3は、実施例のフィラー配列フィルム1Aの断面図である。
図4図4は、実施例のフィラー配列フィルム1Bにおけるフィラーの配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0019】
(フィラー配置)
図1は、本発明の一実施例のフィラー配列フィルム1Aにおけるフィラーの配置図である。このフィラー配列フィルムは、フィラー2として導電粒子を絶縁性樹脂層10に配列させたものである。フィラー配列フィルムは異方性導電フィルムとして用いても良く、導電フィルムとして用いても良い。
【0020】
本発明のフィラー配列フィルムは、複数の第1物品が第2物品上で配列した状態で第1物品と第2物品とをフィラー配列フィルムを介して加熱又は加圧することにより、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部とを接続するものであり、この接続状態において、個々の第1物品の接続部と第2物品の接続部との間にフィラーが挟持され、第1物品と第2物品の対向面同士が絶縁性樹脂層で接着されるようにするものである。このフィラー配列フィルムは、平均の可視光透過率が40%以上であるため、第1物品をμLED、その電極を第1物品の接続部、第2物品をμLED用の配線回路が形成された透明ディスプレイ用基板、その電極を第2物品の接続部とした場合に、第1物品と第2物品とを異方導電性接続する異方性導電フィルムとして使用することができる。なお、本発明のフィラー配列フィルムは微小な部品の接続に使用するため、接続前に供する前にフィラー配列フィルムを通してミクロな物品を十分に視認できることが必要である。
【0021】
ここで、フィラー配列フィルムの可視光透過率は、可視光透過率測定装置を用いて計測される可視光(波長400~700nm)の平均透過率である。可視光透過率はフィルムの硬化後の状態で測定している。この平均透過率は、例えば面積10mm×10mmの透過率を計測すればよい。
【0022】
このように可視光透過率は10×10mmの範囲で測定することができる。10×10mmの領域をランダムに5箇所、好ましくは10箇所以上を測定し、その平均から可視光透過率を算出することができる。
【0023】
これとは別に、可視光透過率の測定領域を、同領域における導電粒子の個数密度が、平均の個数密度に対して±10%程度の範囲内になるようにして可視光透過率を測定してもよい。このようにすれば、基板の一面にμLEDが配置されている場合に、接続に必要な導電粒子が偏在しているか否かの確認が容易になり、接続に使用するフィルムの適否が判定し易くなる。また、基板に貼り付けるフィルムに、不要な導電粒子が存在しているかの適否にも用いることができるため、接続構造体の生産性にも寄与できる。また、接続構造体の設計についても制約が少なくなる、といった利便性の向上にも寄与する。10×10mmの範囲は、一面ではなくとも複数個のμLEDが配置された範囲(接続領域)ともなりえるが、このサイズと同等もしくはそれ以上の大きさにフィルムを切り分けて使用する場合などを想定しても、上述のように可視光透過率を算出することは、生産性など寄与できると考えられる。
【0024】
図2に示すように、本実施例のフィラー配列フィルム1Aを用いて接続する各μLED20は2つの電極21を有し、ウエハ22に格子状に規則的に配列している。
【0025】
μLED20の外形とサイズについては、例えば、外形が矩形の場合、その長辺は200μm以下、又は150μm未満、又は50μm未満、又は20μm未満である。より具体的には、例えば10μm×20μm、7μm×14μm、5μm×5μmの矩形をあげることができる。なお、μLEDの外形は矩形に限られず、例えば菱形でもよい。
【0026】
また、電極21の外形とサイズとしては、特に限定されないが、μLEDが小さい場合には、長辺5μm~50μm、短辺3μm~40μmの矩形をあげることができ、一つのμLED20における電極21同士の間隔Ls は使用方法によって適宜選択できる。下限は載置工程の利便性から好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。上限は特に制限はない。μLEDやミニLEDよりも大きく単独で用いる素子の場合には3000μm以下でもよい。ディスプレイ用途の場合には1000μm以下でもよく、500μm以下でもよく、150μm以下でもよく、20μm以下でもよい。
【0027】
フィラー配列フィルム1Aでは、フィラー2の高密度領域4がμLED(第1物品)20の外形に対応して形成され、μLEDの配列に対応して間隔をあけて規則的に配列している。各高密度領域4内では、フィラー2がμLED(第1物品)20の個々の電極(接続部)21に対応した位置に偏在することで偏在領域3を形成している。偏在領域3や高密度領域4は、フィラー2の集合体の外形として認識することができる。
【0028】
ここで、偏在領域3がμLED20の電極21に対応した位置に配置されているとは、所定の配列状態にある複数のμLEDとフィラー配列フィルムとをアライメントした場合に、平面視において個々のμLED20の電極21と偏在領域3が重なり、かつ個々のμLED20の電極21間のスペースと偏在領域3間のスペースとが重なることをいい、好ましくは偏在領域3内に電極21が位置すること、又は偏在領域3を構成する導電粒子2の1個以上が電極21と重なることをいう。
【0029】
また、高密度領域4がμLED20の配列に対応して配列しているとは、上述のアライメントにより平面視において各μLED20と高密度領域4とが重なり、かつ各μLED間のスペースと高密度領域4間のスペースとが重なることをいい、好ましくは各μLED20について、高密度領域4を構成する導電粒子2のうち該μLED20の外形から外れた導電粒子2の面積の合計がμLED20の外形の面積の50%以内であること、より好ましくは各μLED20の外形内に高密度領域4を構成する全ての導電粒子2が位置することをいう。
【0030】
高密度領域4の面積、即ち高密度領域4を構成する導電粒子2のうち外周部の導電粒子2に外接する高密度領域の輪郭形状の面積は、例えば1辺が10μm~1000μmの矩形とすることができるが、対応するμLED20の外形に対して以下の比率を満たせることが望まれる。即ち、高密度領域4の輪郭形状の面積とμLED20の外形の平面視面積の比の下限を小さくすれば、μLED20外形内に導電粒子2が収まり易くなる。この比は、電極で導電粒子を捕捉しやくするため0.1倍以上が好ましく、0.2倍以上がより好ましく、0.5倍以上がさらに好ましい。一方、上限を大きくすれば、電極に捕捉される導電粒子が不足する懸念は回避できるが、透明性や美観を損なう虞があるため、1.5倍以下が好ましく、1.3倍以下がより好ましく、1.2倍以下がさらに好ましい。
【0031】
また、高密度領域4がμLEDの配列に対応して配列しているとは、高密度領域4の配列方向及び配列ピッチがμLEDの配列方向及び配列ピッチと等しいことをいう。
【0032】
上述のようにフィラー配列フィルム1Aの導電粒子の偏在領域3はμLED20の電極21に対応し、高密度領域4はμLED20の外形に対応しているので、高密度領域4間の最近接距離(即ち、或る高密度領域を構成する導電粒子と、その高密度領域に最も近接した高密度領域を構成する導電粒子との距離)をL1とし、個々の高密度領域内における偏在領域3間の最近接距離(即ち、個々の高密度領域4内において、或る偏在領域を構成する導電粒子と、その偏在領域に最も近接した偏在領域を構成する導電粒子との距離)をL2とし、偏在領域3内の導電粒子2間の最近接距離をL3とした場合に、
L1>L2>L3
となることが好ましい。
【0033】
ウエハ22に配列した複数のμLED20と基板とをフィラー配列フィルム1Aを介して加熱加圧することにより接続する場合のフィラー配列フィルム1Aの絶縁性樹脂層10の樹脂流動が高密度領域4内の導電粒子2の配置に影響しにくくする点から、L1やL2は、当該μLEDの外形や配列ピッチ、電極間距離などに応じて適宜定める。
【0034】
また、フィラー配列フィルム1Aの偏在領域3とμLED20の電極21と基板の電極とのアライメントに±10%程度のズレを許容する点から、偏在領域3の面積、即ち、偏在領域3を構成する導電粒子2のうち外周部のフィラーに外接する輪郭形状の面積は、対応するμLED20の電極21の平面視面積の0.5倍以上1.8倍以下であってもよく、1.0倍以上1.2倍以下とすることが好ましい。この範囲であれば、導電粒子数が過不足なく存在するため捕捉とショートも両立でき、また良好な捕捉状態を得られ易く確認もしやすい。
【0035】
本発明において一つの高密度領域4には、一つの第1物品が有する接続部の個数に応じた個数で偏在領域3を存在させることができ、特に3個以下を存在させることができ、本実施例では2個の偏在領域3を存在させている。
【0036】
偏在領域3内での導電粒子間の最近接距離L3と導電粒子2の平均粒子径Dとの関係については、これらの比L3/Dの下限が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、上限については好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0037】
偏在領域3における導電粒子2の配置は、ランダムとしても規則的配置としてもよいが、各電極21における導電粒子の捕捉性を向上させる点から、導電粒子が所定ピッチで所定方向に配置されている配列軸を1以上有する平面格子パターンが好ましく、例えば、斜方格子、六方格子、正方格子、長方格子、平行体格子などが挙げられる。また、平面格子パターンの異なる領域があってもよい。
【0038】
(フィラーの個数密度)
フィラー配列フィルム1Aの偏在領域3におけるフィラーの密度部分は、フィラー配列フィルム1Aを接続する対象物によって応じて設計される。フィラー配列フィルムが異方性導電フィルムの場合、異方性導電フィルムによって微小な部品を安定して接続できるようにするため、またショートリスクを回避するため、導電粒子のイレギュラーな配置または凝集は少ないことが望ましい。特に、導電粒子の粒子径が3μm未満では偏在領域3における導電粒子のイレギュラーな配置または凝集が少ないことが望ましい。
【0039】
偏在領域3におけるフィラーの個数密度は、フィラー配列フィルム1Aを接続する対象物によって応じて設計される。一例として、50000個/mm2以上が好ましく、500000個/mm2以上がより好ましい。一方、高密度領域4同士の間におけるフィラーの個数密度は、1000個/mm2以下が好ましく、実質的にゼロであることがより好ましい。したがって、フィラーの個数密度を偏在領域3で高くしても、高密度領域4同士の間の可視光透過率は大凡40%以上とすることができ、フィラー配列フィルム全体としての可視光透過性を40%以上、好ましくは50%以上とすることができる。
【0040】
なお、フィラー配列フィルム1AがμLED等の第1物品と透明ディスプレイ用基板等の第2物品との接続に供された場合に、高密度領域4は第1物品と第2物品で挟持される領域となるため、第1物品と第2物品の接続後の光透過性を向上させる上で、高密度領域4内の偏在領域3同士の間の個数密度は必ずしもゼロでなくてもよい。例えば、図4に示すフィラー配列フィルム1Bのように、高密度領域4内の2つの偏在領域3の間にフィラー2が存在していてもよい。接続に関与しない不要なフィラーを低減させるため、一つの高密度領域4内において偏在領域3同士の間のフィラーの個数は偏在領域3のフィラーの個数の50%以下が好ましく20%以下がより好ましい。
【0041】
フィラーの偏在領域3におけるフィラー面積占有率は、フィラー配列フィルムで接続する対象物のレイアウトの自由度を保てるように定めることができ、5%以上であってもよく、8%以上が好ましく、8%以上85%以下がより好ましい。
【0042】
フィラー面積占有率は、本実施例では導電粒子面積占有率の意味であり、フィラー配列フィルムの偏在領域3の平面視における導電粒子の個数密度(個/mm2)×導電粒子1個の平面視面積の平均(mm2/個)×100で求められる。
【0043】
なお、導電粒子の個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社)や、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)等)により観察画像を計測して求めてもよい。フィラー配列フィルム上で観察された個数を計測する。フィラー配列フィルムを著しく小さい個片にする場合は、個片化前の状態で測定した個数密度で測定する。
【0044】
(フィラー)
本実施例においてフィラーとする導電粒子2の粒子径は特に制限されないが、粒子径の下限は1μm以上であることが好ましい。粒子径の上限は、例えば、接続構造体における導電粒子の捕捉効率の観点から、例えば50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。電極のサイズによっては、導電粒子の粒子径は3μm未満、好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm以下が求められる場合がある。粒子径が1μm未満の場合、1μm以上の集合体として扱ってもよい。
【0045】
平均粒子径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA-3000:マルバーン社製)により測定した値とすることができる。この場合、粒子個数は1000個以上、好ましくは2000個以上であることが好ましい。
【0046】
また、導電粒子の種類としては、公知の異方導電性フィルムに用いられている導電粒子の中から適宜選択することができる。例えば、導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0047】
なお、本発明のフィラー配列フィルムにおいてフィラーとしては、当該フィラー配列フィルムの用途に応じて、無機系フィラー(金属粒子、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。
【0048】
例えば、フィラー配列フィルムを導電フィルム、異方性導電フィルムとして使用する場合、フィラーとして導電粒子を含有させる。フィラー配列フィルムの用途に応じて導電粒子以外のフィラーを使用してもよい。
【0049】
フィラー配列フィルムをμLED等の微小光学素子の発色の調整や、カラーディスプレイにおけるブラックスマトリクス等の用途に使用する場合、フィラーとして公知の色素、顔料、光散乱性粒子等を使用してもよい。フィラー配列フィルムの用途が光学フィルムや艶消しフィルムである場合、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。
【0050】
(フィラー配列フィルムの断面構造)
図3は、図1に示したフィラー配列フィルム1AのA-A断面図である。本実施例のフィラー配列フィルム1の偏在領域3では、導電粒子2が絶縁性樹脂層10に配列している。
【0051】
絶縁性樹脂層10は単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の樹脂層の積層体から構成されていてもよい。導電粒子2の端部の位置は、層の一方の面と略位置していることが好ましい。略一致とは、例えば、粒子径の±10%程度の誤差を含む。絶縁性樹脂層を複数の樹脂層の積層体とする場合、例えば、図3に示すように導電粒子2を保持する高粘度バインダー樹脂層11と、高粘度バインダー樹脂層11よりも低粘度の接着剤層12とすることができる。この高粘度バインダー樹脂層11と接着剤層12を構成する樹脂は、例えば、特許文献3に記載の絶縁性樹脂層を構成するバインダーや接着剤層と同様とすることができる。異なる層に異なるフィラーを配置させて積層してもよい。
【0052】
但し、フィラー配列フィルム1Aを第1物品と第2物品との接続に供した後の絶縁性樹脂層の透明性を向上させるため、絶縁性樹脂層10(高粘度バインダー樹脂層11、接着剤層12)には無機フィラーを極力添加しないことが好ましい。また、絶縁性樹脂層10にエポキシ樹脂を使用する場合には、共役二重結合をもたないエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0053】
また、絶縁性樹脂層10には必要に応じてゴム成分を添加することができる。ゴム成分を接続構造体の反りや歪みの防止のために配合してもよい。ゴム成分は、クッション性(衝撃吸収性)の高いエラストマーであれば特に限定されるものではなく、具体例として、例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)などを挙げることができる。
【0054】
絶縁性樹脂層10の層厚は、フィラー配列フィルム1を介してμLEDと基板とを加熱加圧することによりこれらを接続する場合に、絶縁性樹脂層に不用な樹脂流動が生じないようにし、また、フィラー配列フィルム1を巻装体とする場合の樹脂のはみ出しやブロキングを防止する点から、層厚の下限については導電粒子2の平均粒子径の0.6倍以上、好ましくは0.9倍以上、さらに好ましくは1倍以上であり、上限については3倍以下、好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下である。絶縁性樹脂層10の層厚が、導電粒子2の平均粒子径の0.6倍未満であると絶縁性樹脂層10から導電粒子2が露出してしまうので、フィラー配列フィルム1を用いてμLEDと基板とを接続する際に、フィラー配列フィルムとμLED又は基板との仮貼りがし難くなる。一方、3倍を超えると、μLEDと基板との接続時に過度に樹脂流動が生じ、樹脂流動により導電粒子2が流され、電極における導電粒子の捕捉性が低下する。
【0055】
また、粒子の配列までを踏まえた製造上の理由から、絶縁性樹脂層10の層厚は、下限については2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。上限については、層厚が大きくなりすぎると接続時のズレが生じやすくなることから、32μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。
【0056】
また、本発明の場合は、μLEDそのものが小さく、μLEDの大きさと導電粒子の大きさとは従来よりも近くなる。μLEDはズレ易くなることが懸念されるが、接続構造体としてはこのズレを回避していることが好ましい。こういった理由からも、絶縁性樹脂層10の厚みは上記の範囲内に収まることが求められる。
【0057】
(フィラー配列フィルムの製造方法)
フィラー配列フィルム1Aは、導電粒子を前述のように特定の配置とする以外は公知の異方性導電フィルムと同様に製造することができる。例えば、特許文献3に記載の異方性導電フィルムの製造方法と同様に、まず、導電粒子の配列パターンに応じた凹部が形成された型を用意し、その型に導電粒子2を充填し、その上に剥離フィルム上に形成した高粘度バインダー樹脂層11を貼り合わせて、導電粒子2を高粘度バインダー樹脂層11に押し込んで転着し、その転着面に接着剤層12を積層する。
【0058】
(フィラー配列フィルムを使用する接続方法)
フィラー配列フィルム1Aを用いて、複数のμLED20がウエハ22上で規則的に配列した状態でμLED20の電極と、基板の電極とを接続する方法は、まず、基板の電極上にフィラー配列フィルム1Aを位置合わせして貼着し、そのフィラー配列フィルム1Aと、ウエハ22上に配列したμLED20とを位置合わせして貼り合わせ、加熱加圧してμLED20の電極と基板の電極とを接続する。この場合、特許文献3に記載のように2段階方式で加熱加圧することにより接続してもよい。また、導電粒子が半田粒子等である場合に、リフローにより接続してもよい。
【0059】
この加熱加圧時に、フィラー配列フィルム1の絶縁性樹脂層は流動し、μLED20と基板との対向面の間隙に充填され、硬化することでμLED20と基板とを接着するが、このときの樹脂の流動性は、導電粒子が配置されていない高密度領域4同士の間で高く、高密度領域4内では高密度領域4同士の間に比して樹脂の流動性が低い。したがって、高密度領域4内においてμLEDの電極に対応して配置されている偏在領域3の導電粒子2は、高密度領域4同士の間の樹脂流動の影響を受けにくく、各μLED20の電極21が確実に導電粒子2を捕捉することが可能となる。
【0060】
さらに、高密度領域4内では、電極21の配置に対応して偏在領域3同士が距離L2をあけて配置されているので、一つのμLED内の電極21同士のショートの発生が抑制される。
【0061】
加えて、フィラー配列フィルム1において、高密度領域4同士の間には導電粒子2が実質的に存在しないため、基板にμLEDを接続した後にそのμLED20が発する光がこの間の導電粒子2で遮られない。したがって、フィルム全面に導電粒子が一様に存在しているフィラー配列フィルムを使用した場合に比して、μLEDを実装した発光装置の発光効率が向上する。
【0062】
なお、フィラー配列フィルムは個片形状にしてもよい。個片形状の大きさは、対象物に合わせて設計できるが、例えば1辺が5μm以上、150m以下とすることができる。このようにすることで、後述する色や光を調整する用途にも展開できることが期待できる。即ち、個片形状にしたフィルムで第1物品と第2物品とを接続してもよく、個片形状にしたフィルムを電極上のみに配置してもよい。個片化は、機械的方法、化学的方法、レーザーなどを用いて切り込みを設けるなどして形成できる。なお、切り込みは、基材に達するまで深くなくてもよく、ハーフカットでもよい。
【0063】
フィラー配列フィルムの仮貼りやフィルム転写及びμLEDの基板上への搭載は、スタンプ材やレーザーを用いた手法(レーザーリフトオフ法)といった公知の手法やそれを応用した手法を用いることができ(例えば、特開平9-124020号公報、特開2011-76808号公報、特許6636017号公報、特許6187665号公報等に記載の方法)、発明の効果が発揮できる手法であれば特に限定はされない。
【0064】
(接続構造体)
実施例のフィラー配列フィルム1Aを用いて上述の方法で接続されたμLED20と基板との接続構造体は、偏在領域3内のフィラー2がμLED20の電極21と基板の電極との接続箇所を構成している。実施例はμLEDを例に説明しているが、本発明において接続構造体はミニLEDであってもよい。
【0065】
上述のように接続時の樹脂流動の影響が高密度領域4内の導電粒子2の配置に影響しにくいため、接続前と同様に、接続後においても偏在領域が複数集合した高密度領域がμLEDの搭載位置に対応して存在し、高密度領域がμLEDの配列に対応して配列している。
【0066】
したがって、フィラー配列フィルムにμLED及び基板が接続されていない部分の接続構造体における可視光透過率は、フィラー配列フィルムの平均の可視光透過率40%よりも高く、好ましくは50%以上である。よって、この接続構造体の発光効率は、フィラー配列フィルムとして、この接続構造体の偏在領域3の導電粒子2の個数密度でフィルム全面に導電粒子が一様に存在しているものを使用した場合に比して著しく向上している。また、各電極における導電粒子の捕捉性も高く、ショートの発生割合も低下している。
【0067】
以上、本発明のフィラー配列フィルムを用いた接続方法とそれにより得られる接続構造体を、第1物品をμLEDとし、第2物品をμLED用の配線回路が形成された基板とし、フィラー配列フィルムのフィラーを導電粒子とする場合に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0068】
例えば、第1物品を光散乱フィルム、ブラックマトリックス層等とし、第2物品を透明基板(μLEDを搭載する基板)等とし、フィラーをシリカや黒色に着色した粒子等とすることで第1物品と第2物品の接続構造体の色味を調整してもよい。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
実施例1~4、比較例1~4
(異方性導電フィルムの作製)
表1の樹脂組成で樹脂を混合し、剥離フィルム上に塗布し、乾燥(60℃、3分)することにより接着フィルムを得た。
【0070】
【表1】
【0071】
一方、導電粒子(平均粒子径2.2μm又は3.2μm、0.2μmNiメッキ樹脂粒子、積水化学工業株式会社)が表2に示す配置となるように、特許第6187665号公報に記載の方法と同様にして導電粒子を充填する凹部を有する型を作製し、その凹部に導電粒子を充填し、表1の接着フィルムを被せ、その接着フィルムに導電粒子を押し込み、異方性導電フィルムを作製した。
【0072】
【表2】
【0073】
(異方性導電フィルムの評価)
実施例1~4及び比較例1~4の異方性導電フィルムを用いて粒子捕捉性、導通抵抗、絶縁性、可視光透過率を次のように評価した。結果を表2に示す。
【0074】
(i)粒子捕捉性
実施例1~4及び比較例1~4の異方性導電フィルムをITO/NdMoパターンガラスに貼り、その上に、μLEDに模した評価用ICチップを加熱圧着(到達温度150℃、加圧30Mpa、10秒)し、実装体を得た。この評価用ICチップは、バンプ10μm×10μmが2つ(バンプ間スペース7μm)で一組となったものが、1.5cm×1.5cmの範囲に略一面に30μmピッチで並べられた電極レイアウトを有する。
【0075】
この実装体の100個のバンプを観察することにより、バンプに捕捉されている導電粒子数を計測した。この計測数の100個のバンプにおける最低数により、以下の基準で評価した。
【0076】
A:5個以上
B:3~4個
C:1~2個
D:0個
【0077】
(ii)導通抵抗
上述の実装体の100個の導通抵抗を測定し、以下の基準で評価した。
A:30Ω未満
B:30Ω以上100Ω未満
C:100Ω以上300Ω未満
D:300Ω以上
【0078】
(iii)絶縁性
上述の実装体の100個のバンプ間スペースについて導通抵抗を測定し、107Ω以下をショートと判定した。このショート数により、以下の基準で評価した。
【0079】
A:ショート無し
B:ショート1個
C:ショート2個
D:ショート3個以上
【0080】
(iv)可視光透過率
実施例1~4及び比較例1~4の異方性導電フィルムの可視光透過率(400~700nm)を測定し、その平均の透過率(計測面積10mm×10mm)により、以下の基準で評価した。なお、透過率測定にはUV-2450((株)島津製作所製/JIS Z 8729)を使用した。この場合、可視光透過率の測定試料は、異方性導電フィルムを基板に貼り付けた状態で、200℃環境下で1分間放置し、硬化した状態のものとした。可視光透過率により接続構造体においてはみだした樹脂がどのように影響するかをみることができる。また、接続に使用する箇所に適した導電粒子の配置になっているかの判定や、接続構造体に使用する際に十分な透明性を確保されているかを確認することができる。
【0081】
A:50%以上
B:35%以上
C:20%以上
D:20%未満
【0082】
表2から、導電粒子をμチップまたはμLEDのバンプに偏在させた実施例の異方性導電フィルムを用いると、粒子捕捉性、導通抵抗、絶縁性、可視光透過率のいずれもB以上の優れた評価になることがわかる。
【0083】
これに対し、実施例1の偏在領域における導電粒子の個数密度と等しい個数密度でフィルム全体に導電粒子が均一に存在する比較例1では可視光透過率が劣っている。また、フィルム全体の個数密度が低い比較例2では可視光透過率がB評価であるが、粒子捕捉性及び導通抵抗が劣っている。比較例4ではフィルム全体における個数密度が実施例1の偏在領域における導電粒子の個数密度と等しいが、導電粒子がランダムに配置されているため、絶縁性及び可視光透過率の評価が著しく劣り、比較例4よりもフィルム全体における個数密度が低い比較例3では、導電粒子がランダムに配置されているために粒子捕捉性及び導通抵抗の評価が著しく劣っている。
【符号の説明】
【0084】
1A、1B フィラー配列フィルム
2 フィラー、導電粒子
3 偏在領域
4 高密度領域
10 絶縁性樹脂層
11 高粘度バインダー樹脂層
12 接着剤層
20 第1物品、μLED
21 電極
22 ウエハ
L1 高密度領域間の最近接距離
L2 偏在領域間の最近接距離
L3 偏在領域内のフィラー間の最近接距離
Ls μLEDの電極間距離
図1
図2
図3
図4