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特開2022-151840エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法
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  • 特開-エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151840
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20220929BHJP
   B29C 48/86 20190101ALI20220929BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220929BHJP
【FI】
C08F210/02
B29C48/86
B29C48/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048508
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037948
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ソン サン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ワン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ド ヨン
【テーマコード(参考)】
4F207
4J100
【Fターム(参考)】
4F207AA04
4F207AA20
4F207AR06
4F207AR11
4F207KA01
4F207KA17
4F207KM05
4F207KM15
4J100AA02P
4J100AJ02Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA42
4J100DA43
4J100DA47
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA47
4J100GB05
4J100GB12
4J100GB18
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】本発明は、エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法に関する。
【解決手段】本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、製造された共重合体の吐出温度を200~300℃になるように制御して共重合体ストランドを吐出することで、ストランドのネックイン現象を最小化することができ、作業性、加工性および成形性に優れ、溶融指数(Melting index、MI)の調節が容易であるという効果がある。また、前記製造方法により製造されたエチレン-アクリル酸共重合体は、高い溶融強度を有するという効果がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンモノマーおよびアクリル酸コモノマーを共重合してエチレン-アクリル酸共重合体を製造する重合ステップと、
前記エチレン-アクリル酸共重合体を吐出してストランドを取得する吐出ステップとを含み、
前記吐出ステップにおいて、ストランドの吐出温度が200~300℃になるように制御されることを特徴とする、エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記吐出ステップにおいて、ストランドの滞留時間が5~60秒である、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記吐出ステップにおいて、吐出されるストランド内のカルボキシル基が脱水反応して無水物構造を形成する、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ストランドは、アクリル酸の含量が1~30重量%である、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記ストランドは、質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が4.5~15である、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記重合ステップにおいて、重合温度および重合圧力は、それぞれ、150~350℃および1,000~5,000barである、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記重合ステップにおいて、重合は、ラジカル開始剤および希釈溶媒を含む開始剤混合溶液により行われ、
前記希釈溶媒は、Isopar-Hである、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、溶融強度(Melt tension)(Gottfert Rheotens、160℃、ASTM D1238-E)が120~200mNである、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、溶融指数(Melt index)(190℃/2.16kg、ASTM D 1238)が5~15である、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、ネックイン(draw down速度440feet/min)が3.3inch以下である、請求項1に記載のエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-アクリル酸共重合体の製造方法に関し、詳細には、ネックイン(Neck-in)現象を最小化し、作業性および加工性が向上したエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-アクリル酸共重合体(ethylene-acrylic acid copolymer、EAA)は、高付加化学製品として様々な分野において使用され、機能性接着樹脂として、例えば、牛乳パック、洗剤のアルミニウム箔などの薄い包装材用接着剤として主に使用されてきた。
【0003】
このようなエチレン-アクリル酸共重合体は、製造工程において高い圧力施設を必要とし、高い酸度で製品を生産しなければならないなど、高い技術力を要する。例えば、エチレンモノマーとカルボン酸モノマーの共重合は、高圧フリーラジカル共重合システムを用いており、具体的には、オートクレーブ反応器または管型反応器により行われる。
【0004】
エチレン-アクリル酸共重合体接着剤は、優れた作業性および加工性は言うまでもなく、高い接着特性とともに、特に高い溶融強度(Melt tension)が求められる。具体的には、重合体を製造する際、作業性、加工性および成形性の低下が引き起こされ得るが、エチレン-アクリル酸共重合体を製造する場合、特に、ネックイン現象が大きな問題になり得る。ネックイン現象は、モノマーを重合させて製造されるストランドまたはフィルムを吐出する時に、吐出物の側端部に収縮が発生して、ダイ幅と吐出物幅との差が発生し、作業性、加工性および成形性の低下を引き起こす。また、一般的に、エチレンモノマーと他のコモノマーが重合されたエチレン系共重合体を製造する際、高い溶融強度(Melt tension)が求められる場合、特に、より高い溶融強度が求められる条件では、現実的に、コモノマーの代わりに他のコモノマーを使用する方法程度しか解決手段がなかった。したがって、従来までは、エチレン-アクリル酸共重合体の溶融強度を増加させるための特別な解決策が提示されていない。
【0005】
このように、エチレン-アクリル酸共重合体を製造する際、溶融強度の向上、作業性、加工性および成形性の向上には限界が明らかに存在していた。したがって、本発明では、溶融強度が高く、作業性、加工性および成形性が向上したエチレン-アクリル酸共重合体を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1861878号(2018.05.21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ネックイン現象を最小化することができ、作業性、加工性および成形性に優れたエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、高い溶融強度を有するエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、溶融指数(Melting index、MI)の調節が容易なエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、エチレンモノマーおよびアクリル酸コモノマーを共重合してエチレン-アクリル酸共重合体を製造する重合ステップと、前記エチレン-アクリル酸共重合体を吐出してストランドを取得する吐出ステップとを含み、前記吐出ステップにおいて、ストランドの吐出温度が200~300℃になるように制御されることを特徴とする。
【0011】
本発明の一例において、前記吐出ステップにおいて、ストランドの滞留時間が5~60秒であることができる。
【0012】
本発明の一例において、前記吐出ステップにおいて、吐出されるストランド内のカルボキシル基が脱水反応して無水物構造を形成することができる。
【0013】
本発明の一例において、前記ストランドは、アクリル酸の含量が1~30重量%であることができる。
【0014】
本発明の一例において、前記ストランドは、質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が4.5~15であることができる。
【0015】
本発明の一例において、前記重合ステップにおいて、重合温度および重合圧力は、それぞれ、150~350℃および1,000~5,000barであることができる。
【0016】
本発明の一例において、前記重合ステップにおいて、重合は、ラジカル開始剤および希釈溶媒を含む開始剤混合溶液により行われることができ、前記希釈溶媒は、Isopar-Hであることができる。
【0017】
本発明の一例において、前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、溶融強度(Melt tension)(Gottfert Rheotens、160℃、ASTM D1238-E)が120~200mNであることができる。
【0018】
本発明の一例において、前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、溶融指数(Melt index)(190℃/2.16kg、ASTM D 1238)が5~15であることができる。
【0019】
本発明の一例において、前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドは、ネックイン(draw down速度440feet/min)が3.3inch以下であることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、製造される共重合体成形品のネックイン現象を最小化することができ、作業性、加工性および成形性に優れるという効果がある。
【0021】
また、本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、共重合体の溶融指数(Melting index、MI)の調節が容易であるという効果があり、エチレン-アクリル酸共重合体が高い溶融強度を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造工程図を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0024】
本明細書に記載されている図面は、当業者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示する図面に限定されず、他の形態に具体化されることもでき、前記図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されることがある。
【0025】
本明細書で使用されている技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面にて本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0026】
本明細書で使用されている数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、このうち限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0027】
本明細書で言及されている「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げられていない要素、材料または工程を排除しない。
【0028】
本明細書で使用されている用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むものと解釈することができる。
【0029】
本明細書で特別な言及なしに使用されている%の単位は、特別な定義がない限り、重量%を意味する。
【0030】
本明細書で言及されている「ネックイン」は、製造品においてダイ幅と吐出物幅との差を意味し得る。他の定義がない限り、「ネックイン」の値は、250lbs/時の押出速度、600°Fの温度で24inchにデックリングされた30inch幅のダイを備え、25mmのダイのギャップを有する3.5inchの直径、30:1L/Dブラック-クラウソン(Black-Clawson)押出コーティング装置を使用して、1ミリーコーティング厚さを生成する引取速度440フィート/分で測定されたものであることができる。
【0031】
本明細書で言及されている「ドローダウン」(draw down)は、溶融重合体がダイから破壊される引取速度またはエッジ不安定性が示される速度を意味する。
【0032】
本明細書で言及されている溶融強度(Melt tension)(Melt Strength)は、ASTM D1238-Eに記載のような標準プラストメータのダイを通過する時に、融点以上で破壊速度以前に溶融強度が安定な水準に逹する引取速度で溶融押出物を引っ張るために必要な力を意味し得る。このような溶融強度は、センチ-ニュートン(cN)またはミリ-ニュートン(mN)の単位として表記することができ、他の定義がない限り、ゴットフェルト・レオテンス(Gottfert Rheotens)によって測定されたものであることができる。具体的な一例として、溶融強度は、160℃で吐出されるストランドがRheotens 装置の歯車にかかるようにした後、11.2mm/sの最初の線速度から2.4mm/secの加速度で歯車の回転速度を増加させながらストランドにかかる力が収束する時に測定される値であることができる。
【0033】
従来までは、エチレン-アクリル酸共重合体(Ethylene-acrylic acid copolymer)を製造する際に、ネックイン現象によって作業性、加工性および成形性が低下しており、接着特性および溶融強度(Melt tension)が低く、従来までは、このための解決策として、現実的な手段として、アクリル酸コモノマーの代わりに他種のコモノマーを使用する程度しかなかった。したがって、本発明では、従来に比べて接着特性および溶融強度が高く、作業性、加工性および成形性が向上したエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0034】
このための手段として、本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、エチレンモノマー(Ethylene monomer)およびアクリル酸コモノマー(Acrylic acid monomer)を共重合してエチレン-アクリル酸共重合体を製造する重合ステップと、前記エチレン-アクリル酸共重合体を吐出してストランド(Strand)を取得する吐出ステップとを含み、この際、前記吐出ステップにおいて、ストランドの吐出温度範囲が、200~300℃、好ましくは250~300℃、より好ましくは270~300℃になるように制御されることを特徴とする。
【0035】
上述の吐出温度範囲でストランドの温度が制御されない場合、従来のように、ネックイン現象が大きく発生し、作業性、加工性および成形性が低下し、溶融強度(Melt tension)が低下するだけでなく、要求溶融指数(Melting index、MI)への調節が容易でないという問題が発生する。具体的には、重合ステップの反応器内で各モノマーが重合反応して製造されたエチレン-アクリル酸共重合体が吐出装置に移送され、吐出装置のダイ(Die)を介して吐出される。この際、吐出時に上述の吐出温度範囲を満たさない場合、従来のように、ネックイン現象が大きく発生し、作業性、加工性および成形性が低下し、溶融強度が低下するだけでなく、要求溶融指数への調節が容易でないという問題が発生する。吐出時に、300℃を超える温度でストランドが滞留する場合、熱分解(Thermal degradation)反応が起こり、重合体骨格(Polymer backbone)が切れることによって溶融強度が弱化し得る。
【0036】
このように、本発明では、エチレン-アクリル酸共重合体の製造時に、ストランドの吐出温度が上述の温度範囲に制御されることで、ネックイン現象の最小化、作業性、加工性および成形性の向上、接着特性の向上、溶融強度の向上などの様々な効果を奏する。詳細には、ストランドの吐出温度が上述の温度範囲に制御される場合、ストランド、すなわち、重合体内のカルボキシル基が吐出ステップで脱水反応して無水物構造を形成する。このような上述の温度範囲に吐出温度が制御されることで、重合ステップで製造された共重合体は、吐出ステップで無水物構造を含有し、これにより接着力などの物性と、溶融強度などの作業性に関する物性が著しく向上する。特に、従来のように、より高い溶融強度が求められる条件では、ネックイン現象を改善することができないという限界があったが、本発明では、単純に吐出温度を制御する簡単な方法により、高い溶融強度を有するとともに、ネックイン現象を大幅に改善することができるという効果がある。したがって、本発明による共重合体の製造方法は、エチレン-アクリル酸共重合体の製造において、高い溶融強度と低いネックイン現象により技術的に非常に有用な方法である。
【0037】
上述のように、本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、前記吐出ステップにおいて、ストランド内のカルボキシル基が脱水反応して無水物構造を形成するようにすることで、吐出されて取得されるストランドが無水物構造単位を含み、溶融強度が著しく向上する。
【0038】
この際、前記吐出ステップにおいて、吐出時にストランドの滞留時間は、上述の効果を奏することができるほどに重合体内に無水物の単位構造が適切な量に形成されることができる程度であればよく、好ましくは5~60秒、より好ましくは10~50秒、さらに好ましくは15~40秒、さらに好ましくは15~30秒の範囲であることが好ましい。吐出時にストランドの滞留時間が上述の範囲を満たす場合、ストランド内のカルボキシル基が無水物構造を適切に形成して、高い溶融強度を実現し、且つネックイン現象を最小化することができる。
【0039】
このように、本発明では、エチレン-アクリル酸共重合体の製造中に、吐出ステップにおいて、ストランドが吐出される時に吐出温度を制御して無水物構造単位が形成されるようにすることで、高い溶融強度およびネックイン現象の最小化を実現することができる。これに対し、アクリル酸コモノマーを使用しないエチレン系共重合体の場合、カルボキシル基を有しないため、無水物構造単位の形成が不可能であり、そのため、高い溶融強度を有することができないことは言うまでもなく、ネックイン現象が最小化しない。
【0040】
前記吐出ステップにおいて、吐出されて取得されるストランドの無水物構造単位の含有量は、吐出温度および滞留時間などの調節により制御されることができ、上述の効果を奏することができる程度であればよい。好ましい一例として、前記ストランドの共重合体内の総無水物構造単位数:総カルボキシル基構造単位数の比が、0.0001~0.1:1、好ましくは0.0005~0.05:1であることが好ましい。
【0041】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体、すなわち、前記吐出ステップを経て製造されるストランド内に含有されたアクリル酸の含量は、特に制限されるものではないが、共重合体の全重量に対して、アクリル酸の含量が、1~30重量%、好ましくは3~25重量%、より好ましくは5~20重量%であることが好ましい。
【0042】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体、すなわち、前記吐出ステップを経て製造されるストランドの重量平均分子量は、特に制限されるものではなく、一例として、30,000~200,000g/mol、具体的には30,000~150,000g/mol、より具体的には70,000~130,000g/molであることができる。また、前記吐出ステップを経て製造されるストランドの分子量分布(Polydispersity index、PI)は、特に制限されるものではないが、一例として、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は、4.5~15、好ましくは5~10であることができる。しかし、これは好ましい一例として説明されたものであって、本発明がこれに制限して解釈されるものではない。
【0043】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体、すなわち、前記吐出ステップで吐出されて取得されるストランドは、溶融強度(Melt tension)(Gottfert Rheotens、160℃、ASTM D1238-E)が120mN以上、具体的には120~200mN、より好ましくは130mN以上、具体的には130~200mNであり、高い溶融強度を有することができる。
【0044】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体、すなわち、前記吐出ステップで吐出されて取得されるストランドは、溶融指数(Melt index)(190℃/2.16kg、ASTM D 1238)が5~15、具体的には9~15であることができる。
【0045】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体、すなわち、前記吐出ステップで吐出されて取得されるストランドは、ネックイン(draw down速度440feet/min)が3.3inch以下、好ましくは3.0inch以下であり、ダイ幅と吐出物幅との差が著しく低く、成形性および加工性に優れるという効果がある。
【0046】
本発明によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造方法は、前記吐出ステップの後に、ペレット化ステップをさらに含むことができる。吐出ステップで得られたストランドを、成形、加工などの工程における使用に適するように切断するペレット化ステップをさらに経ることで、所定の大きさのペレット(Pellet)として取得されることができる。
【0047】
上述の効果は、前記吐出ステップの前に前記重合ステップを経ることによって実現され、前記重合ステップは、エチレン-アクリル酸共重合体の一般的な重合方法により行われることができる。好ましくは、前記重合ステップは、高温および高圧条件で行われる重合手段が用いられることが好ましく、以下、高温および高圧重合手段について具体的に説明する。
【0048】
本発明の一例による前記重合ステップは、1次圧縮機120を介して1次圧縮されたエチレンモノマーおよびアクリル酸コモノマーを含有する単量体および極性溶媒を含む混合物を高圧圧縮機140で2次圧縮して形成される圧縮物を反応器200に供給する供給部100と、前記反応器200から排出される排出物から分離された未反応残留物をフィルタリングして前記1次圧縮機120または前記高圧圧縮機140の前端に供給する循環部とを含む重合装置により行われることができる。ここで、「排出物」は、エチレン-アクリル酸共重合体の製造工程において、反応器200の内部でエチレン-アクリル酸重合反応を経た後、排出されたものであり、エチレン共重合体と未反応残留物を含むことができる。また、「未反応残留物」は、エチレン-アクリル酸共重合体の製造工程において、エチレン-アクリル酸共重合体以外の残りの物質であり、具体的には、未反応エチレンモノマー、未反応アクリル酸コモノマー、溶媒、開始剤、その他の添加剤などを含むことができる。
【0049】
具体的には、前記供給部100は、第1供給部110および第2供給部130を含むことができ、前記第1供給部110は、エチレンモノマーを供給し、前記第2供給部は、アクリル酸コモノマーを供給する。反応物の供給過程について説明すると、前記第1供給部110から供給されるエチレンモノマーを、1次圧縮機120を介して圧縮して1次圧縮物が生成され、前記第2供給部130から供給されるアクリル酸コモノマーおよび前記1次圧縮物を含む混合物が2次圧縮機である高圧圧縮機140で2次圧縮されて2次圧縮物が生成される。生成された2次圧縮物は、反応器200に供給され、前記2次圧縮物内のエチレンモノマーとアクリル酸コモノマーは、反応器200で共重合され、エチレン-アクリル酸共重合体が合成される。
【0050】
すなわち、前記重合ステップにおいて、高圧圧縮機140によって圧縮されたモノマー、コモノマーおよび溶媒を含む圧縮物が供給ライン10を介して反応器200に供給される反応物供給ステップと、前記反応器200内で圧縮物が反応する反応ステップとが行われることができる。このように、前記供給部100を介して単量体および溶媒が高圧圧縮機140に供給されることで、高圧圧縮機140のプラッギングの生成を防止する。
【0051】
また、前記重合ステップにおいて、前記反応器200から排出された排出物が高圧分離機310によってフィルタリングされて分離された未反応残留物が高圧循環ライン30を介して前記高圧圧縮機140の前端に供給される第1循環ステップと、前記高圧分離機310からフィルタリングされたものを低圧分離機320によって2次フィルタリングされて分離された未反応残留物が低圧循環ライン20を介して前記1次圧縮機120の前端に供給される第2循環ステップとがさらに行われることができる。このようなステップは、前記循環部を介して行われることができ、前記供給部100から高圧圧縮機140で圧縮された圧縮物が前記循環部を介して未反応の単量体および溶媒が高圧圧縮機140または1次圧縮機120の前端に再供給される。したがって、重合反応の全般にわたり、上述の効果を奏するとともに、高い効率でエチレン-アクリル酸共重合体を製造することができる。
【0052】
具体的には、前記第1循環ステップにおいて、未反応残留物を濾過して分離することができるフィルタ部400が備えられて、外部に不純物を排出することができ、未反応残留物以外の不純物も濾過および分離して除去することができる。また、フィルタ部400内の過量の不純物によるプラッギング時に追加のラインが設置され得ることはいうまでもない。
【0053】
また、前記第2循環ステップにおいて、1次フィルタリングされた未反応残留物が分離された排出物を2次フィルタリングして分離された残余未反応残留物を前記1次圧縮機120に供給することができる。すなわち、前記重合ステップは、前記循環部で未反応残留物が除去された排出物を2次フィルタリングして分離された残余未反応残留物を1次圧縮機120の前端に供給するステップをさらに含むことができる。したがって、エチレンモノマーを供給する1次圧縮機120の前端まで溶媒を伝達することができることから、重合装置の全体にわたり溶媒が移送され、プラッギング生成の抑制および製造装置の内部に残留する各種の異物を除去することができる。
【0054】
前記溶媒は、エチレンモノマーとアクリル酸コモノマーの共重合反応が起こるようにする媒質であればよく、例えば、低沸点極性溶媒であることができる。具体的な一例として、前記溶媒は、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、アセトン(acetone)、エチルアセテート(ethyl acetate)、プロピルアセテート(propyl acetate)、ブチルアセテート(butyl acetate)、2-メトキシエタノール(2-methoxyethanol)および2-エトキシエタノール(2-ethoxyethanol)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本発明はこれに制限して解釈されるものではない。
【0055】
エチレンモノマー、アクリル酸コモノマーおよび溶媒の混合比は、上述の範囲のアクリル酸の含量を有するエチレン-アクリル酸共重合体が製造されることができるように適切に制御されることができ、例えば、エチレンモノマー100重量部に対して、アクリル酸コモノマー1~20重量部、溶媒1~20重量部、具体的には、アクリル酸コモノマー3~10重量部、溶媒3~10重量部であることができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本発明はこれに制限して解釈されるものではない。
【0056】
前記重合ステップにおいて、重合は、開始剤による重合、例えば、フリーラジカル重合であり得ることから、前記反応器200に供給される圧縮物は、開始剤、具体的には、ラジカル開始剤をさらに含むことが好ましく、ラジカル開始剤の下で、各モノマー同士が反応して重合が行われることができる。好ましい一例として、前記重合は、ラジカル開始剤および希釈溶媒を含む開始剤混合溶液により行われることが好ましい。前記開始剤の使用含量は、ラジカル重合反応を開始する程度であればよく、例えば、全モノマー100重量部に対して0.001~1重量部使用されることができる。また、希釈溶媒の使用含量も適切に調節されることができ、例えば、開始剤1重量部に対して希釈溶媒が5~1,000重量部希釈されて使用されることができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本発明はこれに制限して解釈されるものではない。
【0057】
具体的な一例として、前記ラジカル開始剤の種類は、エチレンモノマーとアクリル酸コモノマーは、ラジカル重合が行われるようにすることができるものであればよく、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステルおよびペルオキシケタールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むペルオキシ系有機過酸化物が例として挙げられる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本発明はこれに制限して解釈されるものではない。
【0058】
前記希釈溶媒は、公知の開始剤希釈溶媒が使用されることができ、例えば、パラフィン系溶媒、より好ましくは、パラフィン系溶媒のうちIsopar-Hが希釈溶媒として使用されることが均一な共重合体を製造することができ、分子量の減少などの品質低下を防止することができ、製造される全ストランドの優れた溶融強度などの値が一定な製品を提供することができる。
【0059】
本発明の一例において、前記反応器200に供給される圧縮物は、連鎖移動剤(Chain transfer agent)をさらに含むことができる。非制限的な一例として、連鎖移動剤は、脂肪族およびオレフィン系炭化水素、例えば、6個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの化合物;アセトン、ジエチルケトン、ジアミルケトンなどのケトン系化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド系化合物;およびメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系化合物;などが使用されることができる。連鎖移動剤が使用される場合、連鎖移動剤の使用含量は、特に制限されず、例えば、全モノマー100重量部に対して0.1~20重量部使用されることができる。しかし、これは、好ましい一例として説明されたものであって、本発明はこれに制限して解釈されるものではない。
【0060】
上述のように、前記重合ステップは、圧縮機および/または温度制御による高温および高圧条件で行われることが好ましく、具体的な一例として、重合温度および重合圧力は、それぞれ、150~350℃および1,000~5,000bar、好ましくは200~300℃および1,200~3、000barの重合条件で行われることが、上述の効果をさらによく奏することができる面でさらに好ましい。
【0061】
前記重合ステップで使用される反応器200は、重合反応のための公知の反応器が使用されればよく、例えば、オートクレーブ(Autoclave)などの回分式(Batch reactor)反応器、連続撹拌反応器(Continuous stirred tank reactor、CSTR)、管型(Tubular reactor)反応器などの様々なものなどが使用されることができる。
【0062】
図1には本発明の一実施形態によるエチレン-アクリル酸共重合体の製造工程図が図示されており、以下、図1を参照して、前記重合ステップの重合工程について具体的に説明する。
【0063】
図1を参照すると、前記重合ステップを行うために、エチレン-アクリル酸共重合体の製造のための重合装置が使用されることができ、前記重合装置は、第1供給部110から供給を受けたエチレンを1次圧縮する1次圧縮機120と、1次圧縮されたエチレン、第2供給部130から供給を受けたカルボン酸を含有する共単量体および極性溶媒を含む混合物を2次圧縮する高圧圧縮機140と、高圧圧縮機140から圧縮された圧縮物を反応器200に供給する供給ライン10と、反応器200から排出される排出物を1次フィルタリングして未反応残留物を分離する高圧分離機310と、高圧分離機310から分離された未反応残留物を高圧圧縮機140の前端に供給する高圧循環ライン30とを含むことができる。
【0064】
本発明の一例において、1次圧縮機120(primary compressor)、高圧圧縮機140(Hyper compressor)、反応器200(Autoclave Reactor)、高圧分離機310(High pressure separator、HPS)および低圧分離機320(Low pressure separator、LPS)は、従来公知のエチレン系重合体の製造装置を用いればよい。
【0065】
本発明の一様態において、高圧循環ライン30の後端に位置し、不純物をフィルタリングして除去することができるフィルタ部400がさらに備えられることができる。フィルタ部400で高圧循環ライン30を介して未反応モノマーおよび溶媒以外の残りの不純物が除去され、不純物が除去された未反応モノマーおよび溶媒を含む未反応残留物は、高圧圧縮機140の前端に移送される。
【0066】
本発明の一様態において、高圧分離機310で未反応残留物が分離した排出物を2次フィルタリングして残余未反応残留物を分離して形成されたエチレン-アクリル酸共重合体を排出する低圧分離機320と、低圧分離機320で分離された未反応残留物を1次圧縮機120の前端に供給する低圧循環ライン20とをさらに備えることができる。このような低圧分離機320および低圧循環ライン20は、未反応残留物をまた除去して、高純度のエチレン-アクリル酸共重合体の製造を可能にする。また、1次圧縮機120側にエチレンおよび極性溶媒が含まれた未反応残留物を供給することで、高い工程効率を有することができる。
【0067】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
図1に図示されているように、30℃の温度および200barの圧力、1次圧縮機で1次圧縮させたエチレンモノマーを3m/minの平均流量で2次圧縮機に供給しながら、アクリル酸コモノマーおよびエチルアセテートが10:1の重量比で混合された混合物を0.004m/minの平均流量で前記2次圧縮機に供給した。また、前記2次圧縮機に20℃の温度および200barの圧力で2次圧力を加えて圧縮物を形成した。前記2次圧縮機から供給される圧縮物と開始剤混合溶液を0.4m/minの平均流量で反応器に供給し、前記反応器の内部を250℃の温度および2,250barの圧力で調節し、重合反応を誘導した。この際、開始剤混合溶液として希釈溶媒(Isopar-H、Exxonmobil社製)に開始剤(tert-Butyl peroxyacetate)が10重量%希釈されたものが使用された。また、前記反応器から排出される排出物を1.3m/minの平均流量で高圧分離機に供給した。前記高圧分離機によって分離された未反応残留物は、循環ラインによって1.4m/minの平均流量で2次圧縮機に再供給され、高圧分離機によって未反応残留物が1次除去された排出物は、低圧分離機に供給され、2次的に未反応残留物が除去された。前記低圧分離機で除去された未反応残留物は、5.0m/minの平均流量で前記1次圧縮機に再供給され、前記低圧分離機で未反応残留物が除去されたアクリル酸の含量が9.7重量%であるエチレン-アクリル酸共重合体が生産された。
【0069】
次いで、前記エチレン-アクリル酸共重合体を吐出装置に移送し、前記吐出装置のダイからエチレン-アクリル酸共重合体を吐出してストランドを取得した。この際、装置周辺環境の温度は25℃であり、吐出時のストランドの温度および吐出時滞留時間がそれぞれ280℃および22秒を維持するように制御した。
【0070】
また、エチレン-アクリル酸共重合体ストランドのアクリル酸の含量、吐出時に制御された温度、吐出時の滞留時間、ストランドの溶融強度(Melt tension)、溶融指数(Melting index、MI)およびネックインを測定し、その値を下記の表1に示した。この際、溶融強度の値は、ASTM D1238-E規格に準じて試験し、具体的には、吐出装置の下端部にRheotens(gottfert社製)装備を取り付け、前記吐出装置から吐出されるストランドを前記装備の歯車に0.5mmの隔離距離でかけた後、最初の歯車の回転速度である11.2mm/secで2.4mm/secの所定の加速度で回転速度を増加させながらストランドにかかる力を測定し、ストランドにかかる力が収束する値として算出される。また、溶融指数は、ASTM D 1238規格に準じて試験し、具体的には、Melt Index tester(MI tester、gottfert社製)を用いて、共重合体を直径9.55mm、温度190℃のバレルに投入し、2.16kgの重りで押圧して直径2.095mmの毛細管(capillary)を通して10分間吐出される量を測定し、算出された。
【0071】
[実施例2]
実施例1で下記表1のアクリル酸の含量を満たすようにモノマーの流量を調節してアクリル酸の含量が8.0重量%であるエチレン-アクリル酸共重合体を製造した以外は、実施例1と同し方法でエチレン-アクリル酸共重合体ストランドを取得した。
【0072】
[実施例3]
実施例1で吐出時滞留時間が4秒になるようにした以外は、実施例1と同じ方法でエチレン-アクリル酸共重合体ストランドを取得した。
【0073】
[比較例1]
実施例1でストランドの温度を制御しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエチレン-アクリル酸共重合体ストランドを取得した。この時に制御されないストランドの温度は190℃であった。
【0074】
[比較例2]
実施例1でコモノマーとして、アクリル酸の代わりにメチルアクリレート(Methyl acrylate)を使用した以外は、実施例1と同じ方法でエチレン系共重合体ストランドを取得した。
【0075】
【表1】
【符号の説明】
【0076】
100 供給部
110 第1供給部
120 1次圧縮機
130 第2供給部
140 高圧圧縮機(2次圧縮機)
200 反応器
310 高圧分離機
320 低圧分離機
400 フィルタ
10 供給ライン
20 低圧循環ライン
30 高圧循環ライン
A エチレン-アクリル酸共重合体
B 不純物
図1