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特開2022-151958車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造
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  • 特開-車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151958
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16D66/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054530
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】木原 真一
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058BA60
3J058CA43
3J058CA47
3J058DB02
3J058DB12
3J058DB13
3J058DB29
3J058DD05
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】摩擦パッドに荷重を掛けることなく、ウエアインジケータを簡便、且つ、確実に摩擦パッドに取り付ける。
【解決手段】摩擦パッド6の裏板6aに貫通孔11を形成する。ウエアインジケータ12は、中間湾曲部12aの両側にクリップ部12bと検知片12dを備える。クリップ部12bは、中間湾曲部12aからディスクロータ側に延出する第1延出片12eと、第1延出片12eから第1折曲部12fを介して貫通孔11に向けて延出する第2延出片12gと、第2延出片12gから第2折曲部12hを介して貫通孔11に沿って反ディスクロータ側に延出する挿入片12iと、反ディスクロータ側に突出した挿入片12iを折り返して、先端12kを裏板6aの反ディスクロータ側面6fに当接させる抜止め片12mと、挿入片12iの一部を切り起こして先端12nを貫通孔11のパッド外側面11bに当接させるガタ付き防止片12pとを有する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクロータの側面に摺接するライニングと、該ライニングをディスクロータ側面に貼着する裏板とからなる摩擦パッドに、前記ライニングの摩耗量を検知して警告するウエアインジケータを取り付ける車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造において、
前記裏板に、該裏板のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とに貫通し、前記ウエアインジケータを装着する貫通孔を形成し、
前記ウエアインジケータは、帯状の金属板を折曲して形成され、前記金属板の中間位置を湾曲状に折り返し、前記裏板の反ディスクロータ側に配置される中間湾曲部と、該中間湾曲部の一端側からディスクロータ側に延出し、前記貫通孔に係着されるクリップ部と、前記中間湾曲部の他端側からディスクロータ側に直線状に延出し、前記ライニングが摩耗限界に達した際に、先端が前記ディスクロータの側面に摺接する検知片とを備え、
前記クリップ部は、前記中間湾曲部の一端側から前記裏板の側端面に沿ってディスクロータ側に延出する第1延出片と、該第1延出片から第1折曲部を介して前記裏板のディスクロータ側面に沿って前記貫通孔に向けて延出する第2延出片と、該第2延出片から第2折曲部を介して前記貫通孔のパッド内側面に沿って、反ディスクロータ側に延出する挿入片と、前記貫通孔の反ディスクロータ側に突出した前記挿入片を湾曲状に折り返して、先端を前記裏板の反ディスクロータ側面に当接させる抜止め片と、前記挿入片の一部を切り起こして先端を前記貫通孔のパッド外側面に当接させるガタ付き防止片とを有していることを特徴とする車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造。
【請求項2】
前記第1折曲部は、前記裏板の側端面の外側に向けて凸となる円弧状に形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造。
【請求項3】
前記抜止め片の折返し部に、抜き穴が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造。
【請求項4】
前記中間湾曲部は、前記検知片からクリップ部方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら前記第1延出片に接続する傾斜部とで形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造。
【請求項5】
前記中間湾曲部は、前記第1延出片から検知片方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら前記検知片に接続する傾斜部とで形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造に関し、詳しくは、摩擦パッドのライニングが摩耗限界まで摩耗したことを警告するウエアインジケータを、摩擦パッドの裏板に取り付ける車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦パッドのライニングが摩耗限界まで摩耗したことを警告するウエアインジケータでは、帯状の金属片を折曲して形成したものがあり、ライニングが規定量摩耗した際に、ウエアインジケータの先端がディスクロータと摺接して警告音を発生させるものがあった。このウエアインジケータの取付構造としては、摩擦パッドの裏板にカシメ用のボス部を突設するとともに、ウエアインジケータに、ボス部に挿通させる挿通孔を形成し、該挿通孔をボス部に挿通させた後、ボス部を潰すことで、ウエアインジケータを裏板にカシメて固定させるものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4-31346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、ボス部にウエアインジケータに形成した挿通孔を挿通させた後、ボス部を潰すことでウエアインジケータをカシメて固定させることから、ウエアインジケータの取り付けに手間が掛かっていた。また、カシメ時に掛かる荷重により、摩擦パッドに傷みが発生したり、取り付け不良が発生したりする虞があった。
【0005】
そこで本発明は、摩擦パッドに荷重を掛けることなく、ウエアインジケータを簡便、且つ、確実に摩擦パッドに取り付けることができる車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造は、ディスクロータの側面に摺接するライニングと、該ライニングをディスクロータ側面に貼着する裏板とからなる摩擦パッドに、前記ライニングの摩耗量を検知して警告するウエアインジケータを取り付ける車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造において、前記裏板に、該裏板のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とに貫通し、前記ウエアインジケータを装着する貫通孔を形成し、前記ウエアインジケータは、帯状の金属板を折曲して形成され、前記金属板の中間位置を湾曲状に折り返し、前記裏板の反ディスクロータ側に配置される中間湾曲部と、該中間湾曲部の一端側からディスクロータ側に延出し、前記貫通孔に係着されるクリップ部と、前記中間湾曲部の他端側からディスクロータ側に直線状に延出し、前記ライニングが摩耗限界に達した際に、先端が前記ディスクロータの側面に摺接する検知片とを備え、前記クリップ部は、前記中間湾曲部の一端側から前記裏板の側端面に沿ってディスクロータ側に延出する第1延出片と、該第1延出片から第1折曲部を介して前記裏板のディスクロータ側面に沿って前記貫通孔に向けて延出する第2延出片と、該第2延出片から第2折曲部を介して前記貫通孔のパッド内側面に沿って、反ディスクロータ側に延出する挿入片と、前記貫通孔の反ディスクロータ側に突出した前記挿入片を湾曲状に折り返して、先端を前記裏板の反ディスクロータ側面に当接させる抜止め片と、前記挿入片の一部を切り起こして先端を前記貫通孔のパッド外側面に当接させるガタ付き防止片とを有していることを特徴としている。
【0007】
また、前記第1折曲部は、前記裏板の側端面の外側に向けて凸となる円弧状に形成されると好ましい。
【0008】
さらに、前記抜止め片の折返し部に、抜き穴が形成されていると好適である。
【0009】
また、前記中間湾曲部は、前記検知片からクリップ部方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら前記第1延出片に接続する傾斜部とで形成されると良い。
【0010】
さらに、前記中間湾曲部は、前記第1延出片から検知片方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら前記検知片に接続する傾斜部とで形成されると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造によれば、ウエアインジケータは、摩擦パッドの裏板に形成された貫通孔にクリップ部の挿入片を挿入することにより、摩擦パッドに、簡便に組み付けることができる。また、ウエアインジケータをカシメにより固定する従来の取付構造に比べ、ウエアインジケータの取り付け時に摩擦パッドに荷重が掛かることがないことから、摩擦パッドの傷みや取り付け不良が発生する虞がない。
【0012】
さらに、第1折曲部を、裏板の側端面の外側に向けて凸となる円弧状に形成したことにより、第1折曲部が裏板の角部に当接して乗り上げることを防止できる。
【0013】
また、抜止め片の折返し部に抜き穴を形成したことにより、ウエアインジケータの取り付け時に抜止め片を良好に弾性変形させながら挿入片を貫通孔に挿入させることができる。
【0014】
さらに、中間湾曲部を、検知片からクリップ部方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら第1延出片に接続する傾斜部とで形成することにより、湾曲部が摩擦パッドの内側に向けて突出することから、ライニングが摩耗して摩擦パッドがディスクロータに近づいた際に、湾曲部が摩擦パッドの外側に配置される部材、例えば、キャリパブラケット等に干渉する虞がない。
【0015】
また、中間湾曲部を、第1延出片から検知片方向に突出しながら湾曲する湾曲部と、該湾曲部から傾斜しながら検知片に接続する傾斜部とで形成することにより、ウエアインジケータを貫通孔に組み付ける際に、湾曲部が裏板の側端面に干渉することがなく、挿入片を貫通孔の軸線方向に挿入させやすくなることから、取り付け性の向上を図ることができ、機械での自動組付にも良好に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1形態例を示す車両用ディスクブレーキの正面図である。
図2】同じく車両用ディスクブレーキの一部断面背面図である。
図3】同じく車両用ディスクブレーキの一部断面平面図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】本発明の第1形態例を示すウエアインジケータを2方向から見た斜視図である。
図6】同じくウエアインジケータと摩擦パッドの説明図である。
図7】同じくウエアインジケータを摩擦パッドに装着する工程を示す説明図である。
図8】本発明の第2形態例を示すウエアインジケータと摩擦パッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至図7は本発明の車両用ディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造の第1形態例を示す図で、矢印Aは、車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0018】
車両用ディスクブレーキ1は、車輪と一体に回転するディスクロータ2と、該ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3のキャリパ支持腕3a,3aに一対のスライドピン4,4を介してディスク軸方向へ移動可能に支持されるキャリパボディ5と、該キャリパボディ5の作用部5aと反作用部5bとの内側で、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド6,6とからなっている。
【0019】
キャリパボディ5は、ディスクロータ2の両側に配設される作用部5a及び反作用部5bと、これらをディスクロータ2の外縁を跨いで連結するブリッジ部5cとからなっていて、作用部5aには、ディスクロータ2側を開口したシリンダ孔5dが、反作用部5bには反力爪5eがそれぞれ設けられている。シリンダ孔5dには、有底円筒状のピストン7が収容され、ピストン7は、シリンダ孔底部の液圧室8に供給される圧液によって、シリンダ孔5dをディスクロータ方向へ移動するようになっている。また、作用部5aの側部には、車体取付け腕5f,5fが突設されており、各車体取付け腕5fの先端には、それぞれ上述のスライドピン4が取付ボルト9にて固定されている。
【0020】
キャリパブラケット3は、ディスクロータ2の一側部で車体に取り付けられる車体取付部3cのディスク回入側とディスク回出側とに前記キャリパ支持腕3a,3aが突設されている。キャリパ支持腕3a,3aは、車体取付部3cのディスク半径方向外側から、ブリッジ部5cの両側を挟みながらディスクロータ2の他側部側に突出し、ディスクロータ2の他側部で、反作用部5bの側壁に沿ってディスク中心方向へ延びる形状となっている。また、キャリパ支持腕3a,3aの先端部は、タイロッド3bにて連結されていて、制動トルクの掛かる双方のキャリパ支持腕3a,3aの剛性力を高めている。
【0021】
各キャリパ支持腕3aには、上述のスライドピン4を収容するガイド孔が穿設され、また、双方のキャリパ支持腕3a,3aには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う4つのパッドガイド溝3dが設けられている。各パッドガイド溝3dは、ディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fと、これら両側面3e,3fを結ぶトルク受け面3gとを有するコ字状に形成されている。また、パッドガイド溝3d,3dのディスク半径方向外側には、パッドリテーナ取付部3h,3hが設けられている。
【0022】
各摩擦パッド6は、裏板6aと、裏板6aの一側面に貼着されるライニング6cとで構成され、裏板6aの両側部に耳片6b,6bが突設されている。耳片6b,6bは、双方の側端面6d,6dを、ディスク半径方向外側の突出長さが、ディスク半径方向内側の突出長さよりも短くなる段付き形状に形成され、双方のパッドガイド溝3d,3dに、それぞれパッドリテーナ10を介して支承される。さらに、ディスク回出側の耳片6bのディスク半径方向外側に貫通孔11が形成され、該貫通孔11に、ライニング6cが摩耗限界まで摩耗した際に、ディスクロータ2と摺接して警告音を発生させるウエアインジケータ12が取り付けられる。
【0023】
ウエアインジケータ12は、貫通孔11のディスク径方向の長さL1よりも僅かに短い板幅L2を有した帯状の金属板を折曲して形成され、金属板の中間位置を湾曲状に折り返して、裏板6aの反ディスクロータ側に配置される中間湾曲部12aと、中間湾曲部12aの一端側からディスクロータ側に延出し、貫通孔11のディスクロータ側の開口から挿入され、貫通孔11に係着されるクリップ部12bと、中間湾曲部12aの他端側からディスクロータ側に直線状に延出し、ライニング6cが摩耗限界に達した際に、先端12cがディスクロータ2の側面に摺接する検知片12dとを備えている。
【0024】
クリップ部12bは、中間湾曲部12aの一端側から耳片6bの側端面6dに沿ってディスクロータ側に直線状に延出する第1延出片12eと、該第1延出片12eから第1折曲部12fを介して耳片6bのディスクロータ側面6eに沿って、貫通孔11に向けて延出する第2延出片12gと、該第2延出片12gから第2折曲部12hを介して貫通孔11のパッド内側面11aに沿って、反ディスクロータ側に延出する挿入片12iと、貫通孔11の反ディスクロータ側に突出した挿入片12iを、折返し部12jを介して湾曲状に折り返して、先端12kを耳片6bの反ディスクロータ側面6fに当接させる抜止め片12mと、挿入片12iの一部を切り起こし、先端12nを貫通孔11のパッド外側面11bに当接させるガタ付き防止片12pとを有している。
【0025】
また、第1折曲部12fは、側端面6dの外側に向けて凸となる円弧状に形成され、さらに、折返し部12jは、幅方向中央部に、抜き穴12qが形成されている。また、中間湾曲部12aは、検知片12dからクリップ部方向に突出しながら湾曲する湾曲部12rと、湾曲部12rから傾斜しながら第1延出片12eに接続する傾斜部12sとで形成されている。
【0026】
次に、このように形成されたウエアインジケータ12を摩擦パッド6に装着する工程を図7(A)~(D)に基づいて説明する。図7(A)~(C)は、ウエアインジケータの装着工程を示す平面断面図、図7(D)は、図7(C)を背面側(裏板側)から見た図である。まず、図7(A)に示されるように、耳片6bのディスクロータ側に、中間湾曲部12aと折返し部12jとを耳片6bに向けてウエアインジケータ12を配置する。次に、図7(B)に示されるように、クリップ部12bをライニング側に傾けた状態で、折返し部12jを貫通孔11に当接させ、折返し部12jを弾性変形させながら、挿入片12iをディスク軸方向に向けながら貫通孔に挿通させる。なお、この時、曲率半径の小さい湾曲部12rを備えたウエアインジケータ12では、クリップ部12bをライニング側に傾けることなく、挿入片12iを貫通孔11に挿通させることができる。
【0027】
次いで、図7(C),(D)に示されるように、第2延出片12gを耳片6bのディスクロータ側面6eに当接させるとともに、第1延出片12eと挿入片12iとをディスク軸方向に向ける。さらに、挿入片12iを貫通孔11のパッド内側面11aに当接させ、ガタ付き防止片12pの先端12nを貫通孔11のパッド外側面11bに当接させるとともに、抜止め片12mの先端12kを耳片6bの反ディスクロータ側面6fに当接させる。また、第1延出片12eを耳片6bの側端面6dに当接させるとともに、中間湾曲部12aを裏板6aの反ディスクロータ側に配置させ、検知片12dを、パッドガイド溝3dのトルク受け面3gと、耳片6bの側端面6dとの間に形成された空間部を通過させ、先端12cを耳片6bのディスクロータ側面6eよりもディスクロータ側に突出させる。
【0028】
貫通孔11に組み付けられたウエアインジケータ12は、挿入片12iが貫通孔11のパッド内側面11aに当接し、ガタ付き防止片12pの先端12nが貫通孔11のパッド外側面11bに当接するとともに、第1延出片12eが耳片6bの側端面6dに当接することにより、ディスク周方向のガタ付きが抑制される。また、第2延出片12gを耳片6bのディスクロータ側面6eに当接させ、抜止め片12mの先端12kが、耳片6bの反ディスクロータ側面6fに当接することにより、ディスク軸方向のガタ付きが抑制される。さらに、ウエアインジケータ12の板幅L2が、貫通孔11のディスク径方向の長さL1よりも僅かに短く形成されていることから、挿入片12iと貫通孔11との当接により、ウエアインジケータ12のディスク径方向のガタ付きが抑制される。
【0029】
上述のように形成された車両用ディスクブレーキ1は、運転者の制動操作によって、昇圧した作動液が液圧室8に供給されると、ピストン7がシリンダ孔5dを前進して、作用部5a側の摩擦パッド6をディスクロータ2の一側面に押圧する。次に、この反力によって、キャリパボディ5がスライドピン4,4に案内されながら、作用部5a方向へ移動し、反作用部5bに設けられた反力爪5eが反作用部側の摩擦パッド6をディスクロータ2の他側面へ押圧する。一方、制動を解除すると、ピストン7と反力爪5eとが初期位置へ後退する。さらに、摩擦パッド6のライニング6cが摩耗限界まで摩耗した際の制動時には、裏板6aとディスクロータ2とが近づくことから、ウエアインジケータ12の検知片12dの先端12cがディスクロータ2の側面に摺接して警告音を発生させ、ライニング6cの摩耗状態を運転者に知らせることができる。
【0030】
本形態例のウエアインジケータ取付構造は、上述のように形成されることにより、摩擦パッド6の裏板6aに形成された貫通孔11に、ウエアインジケータ12のクリップ部12bを係着することで、ウエアインジケータ12を摩擦パッド6に簡便、且つ、確実に取り付けることができる。また、ウエアインジケータ12をカシメにより固定する従来の取付構造に比べ、ウエアインジケータ12の取り付け時に摩擦パッド6に荷重が掛かることがないことから、摩擦パッド6の傷みや取り付け不良が発生する虞がない。
【0031】
さらに、ウエアインジケータ12の第1折曲部12fを、耳片6bの側端面6dの外側に向けて凸となる円弧状に形成したことにより、第1折曲部12fが耳片6bの角部に当接して乗り上げることを防止でき、ウエアインジケータ12を良好に組み付けることができる。また、抜止め片12mの折返し部12jに抜き穴12qを形成したことにより、取り付け時に抜止め片12mを良好に弾性変形させながら挿入片12iを貫通孔11に挿入させることができる。さらに、中間湾曲部12aを、検知片12dからクリップ部方向に突出しながら湾曲する湾曲部12rと、湾曲部12rから傾斜しながら第1延出片12eに接続する傾斜部12sとで形成することにより、ウエアインジケータ12を摩擦パッド6に組み付けた際に、湾曲部12rが摩擦パッド6の内側に向けて突出することから、ライニング6cが摩耗して摩擦パッド6がディスクロータに近づいた際に、湾曲部12rが摩擦パッド6の外側に配置されるキャリパブラケット3に干渉する虞がない。
【0032】
図8は、本発明の第2形態例を示す物で、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0033】
本形態例のウエアインジケータ13は、中間湾曲部13aが、第1延出片13bから検知片方向に突出しながら湾曲する湾曲部13cと、湾曲部13cから、漸次、検知片側に向けて傾斜して検知片12dに接続される傾斜部13dとで形成されている。これにより、ウエアインジケータ13を貫通孔11に組み付ける際に、湾曲部13cが耳片6bの側端面6dに干渉することがなく、挿入片12iを貫通孔11の軸線方向に挿入させやすくなることから、取り付け性の向上を図ることができ、機械での自動組付にも良好に対応させることができる。
【0034】
なお、本発明は上述の各形態例に限るものではなく、キャリパボディの構造は任意であり、ピストン対向型のキャリパボディを備えたディスクブレーキのウエアインジケータ取付構造にも適用することができる。また、ウエアインジケータは、裏板の耳片に組み付けられるものに限らず、ライニングを貼着していない裏板の端部側に貫通孔を形成し、該貫通孔に組み付けるものでもよい。さらに、ウエアインジケータは、第1折曲部を円弧状に形成しなくても良く、さらに、抜止め片の折返し部に、抜き穴を形成しなくても差し支えない。また、摩擦パッドの構造は任意であり、耳片を備えていないものや、ハンガーピンで吊持されるもの等でも差し支えない。
【符号の説明】
【0035】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、3a…キャリパ支持腕、3b…タイロッド、3c…車体取付部、3d…パッドガイド溝、3e…ディスク半径方向外側面、3f…ディスク半径方向内側面、3g…トルク受面、3h…パッドリテーナ取付部、4…スライドピン、5…キャリパボディ、5a…作用部、5b…反作用部、5c…ブリッジ部、5d…シリンダ孔、5e…反力爪、5f…車体取付け腕、6…摩擦パッド、6a…裏板、6b…耳片、6c…ライニング、6d…側端面、6e…ディスクロータ側面、6f…反ディスクロータ側面、7…ピストン、8…液圧室、9…取付ボルト、10…パッドリテーナ、11…貫通孔、11a…パッド内側面、11b…パッド外側面、12…ウエアインジケータ、12a…中間湾曲部、12b…クリップ部、12c…先端、12d…検知片、12e…第1延出片、12f…第1折曲部、12g…第2延出片、12h…第2折曲部、12i…挿入片、12j…折返し部、12k…先端、12m…抜止め片、12n…先端、12p…ガタ付き防止片、12q…抜き穴、12r…湾曲部、12s…傾斜部、13…ウエアインジケータ、13a…中間湾曲部、13b…第1延出片、13c…湾曲部、13d…傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8