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特開2022-15198硬度含有水の処理方法及び硬度含有水の処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015198
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】硬度含有水の処理方法及び硬度含有水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20220114BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20220114BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20220114BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20220114BHJP
   B01J 47/14 20170101ALI20220114BHJP
【FI】
C02F1/42 B
C02F1/42 A
B01J39/07
B01J49/53
B01J47/02
B01J47/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117883
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
(72)【発明者】
【氏名】中野 徹
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA02
4D025AB19
4D025BA10
4D025BB02
4D025CA04
4D025CA05
4D025CA10
(57)【要約】
【課題】高い塩分濃度を有する硬度含有水の処理において、イオン交換樹脂の再生処理を適切なタイミングで行うことを可能となる硬度含有水の処理方法を提供する。
【解決手段】本開示は、塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水の処理方法であって、前記硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する測定工程と、前記硬度含有水を、カチオン交換樹脂を用いて軟化処理する軟化処理工程と、前記カチオン交換樹脂の再生時期を決定する決定工程と、前記再生時期に基づいて、前記カチオン交換樹脂の再生処理を行う再生工程と、を備え、前記決定工程では、前記測定工程により測定された水質に基づいて、前記再生時期を決定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水の処理方法であって、
前記硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する測定工程と、
前記硬度含有水を、カチオン交換樹脂を用いて軟化処理する軟化処理工程と、
前記カチオン交換樹脂の再生時期を決定する決定工程と、
前記再生時期に基づいて、前記カチオン交換樹脂の再生処理を行う再生工程と、を備え、
前記決定工程では、前記測定工程により測定された水質に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする硬度含有水の処理方法。
【請求項2】
前記決定工程では、前記塩分濃度に関連する水質の規定値、前記水質の規定値における前記カチオン交換樹脂の貫流容量の規定値、及び前記測定工程により測定された水質に基づいて、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする請求項1に記載の硬度含有水の処理方法。
【請求項3】
前記決定工程では、前記カチオン交換樹脂の貫流容量と前記塩分濃度に関連する水質との関係式を用いて、前記測定工程により測定された水質から、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする請求項1に記載の硬度含有水の処理方法。
【請求項4】
前記塩分濃度に関連する水質は、前記硬度含有水の電気伝導率を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の硬度含有水の処理方法。
【請求項5】
前記カチオン交換樹脂は、弱酸性カチオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の硬度含有水の処理方法。
【請求項6】
前記弱酸性カチオン交換樹脂は、Na型であることを特徴とする請求項5に記載の硬度含有水の処理方法。
【請求項7】
塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水の処理装置であって、
前記硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する測定部と、
前記硬度含有水を、カチオン交換樹脂を用いて軟化処理する軟化処理部と、
前記カチオン交換樹脂の再生時期を決定する決定部と、
前記再生時期に基づいて、前記カチオン交換樹脂の再生処理を行う再生部と、を備え、
前記決定部は、前記測定部により測定された水質に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする硬度含有水の処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記塩分濃度に関連する水質の規定値、前記水質の規定値における前記カチオン交換樹脂の貫流容量の規定値、及び前記測定部により測定された水質に基づいて、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする請求項7に記載の硬度含有水の処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、前記カチオン交換樹脂の貫流容量と前記塩分濃度に関連する水質との関係式を用いて、前記測定部により測定された水質から、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする請求項8に記載の硬度含有水の処理装置。
【請求項10】
前記塩分濃度に関連する水質は、前記硬度含有水の電気伝導率を含む請求項7~9のいずれか1項に記載の硬度含有水の処理装置。
【請求項11】
前記カチオン交換樹脂は、弱酸性カチオン交換樹脂であることを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の硬度含有水の処理装置。
【請求項12】
前記弱酸性カチオン交換樹脂は、Na型であることを特徴とする請求項11に記載の硬度含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度含有水の処理方法及び硬度含有水の処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場内で使用した水を再生利用すると共に、工場から外部に排出される水をゼロにするZLD(Zero Liquid Discharge)が注目されている。特に、新興国の急速な工業化に伴い、水資源環境の保全が求められており、水資源の確保や水質汚染の対策として、水の使用に対する管理強化が重要になってきている。
【0003】
ZLDの一環として、逆浸透膜を用いて工場排水を浄化して、工場用水等として再利用することがある。そして、逆浸透膜を安定運転するために、イオン交換樹脂を用いた軟化処理を前処理として行うことがあるが、適切な運転管理をしないと、イオン交換樹脂から硬度成分が漏出して、後段の逆浸透膜でスケールトラブルが生じる場合がある。
【0004】
一般的なイオン交換樹脂の運転管理方法として、予め設定されたタイマーによってイオン交換樹脂の再生処理を行う方法がある。また、例えば、特許文献1のように、入口の水質を測定し、総イオン負荷量を計算して再生すべきイオン交換樹脂組成を計算する方法や、特許文献2のように、除去対象イオン濃度によって、イオン交換樹脂の再生処理のタイミングを設定する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3226971号公報
【特許文献2】特許第6256143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、塩分濃度の高い水処理にイオン交換樹脂を用いる場合、従来の方法では、塩分の影響により、イオン交換樹脂の再生処理を適切なタイミングで行うことができず、イオン交換樹脂から硬度成分が漏出する場合がある。
【0007】
そこで、本開示では、高い塩分濃度を有する硬度含有水の処理において、イオン交換樹脂の再生処理を適切なタイミングで行うことを可能となる硬度含有水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水の処理方法であって、前記硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する測定工程と、前記硬度含有水を、カチオン交換樹脂を用いて軟化処理する軟化処理工程と、前記カチオン交換樹脂の再生時期を決定する決定工程と、前記再生時期に基づいて、前記カチオン交換樹脂の再生処理を行う再生工程と、を備え、前記決定工程では、前記測定工程により測定された水質に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする。
【0009】
また、前記硬度含有水の処理方法において、前記決定工程では、前記塩分濃度に関連する水質の規定値、前記水質の規定値における前記カチオン交換樹脂の貫流容量の規定値、及び前記測定工程により測定された水質に基づいて、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することが好ましい。
【0010】
また、前記硬度含有水の処理方法において、前記決定工程では、前記カチオン交換樹脂の貫流容量と前記塩分濃度に関連する水質との関係式を用いて、前記測定工程により測定された水質から、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することが好ましい。
【0011】
また、前記硬度含有水の処理方法において、前記塩分濃度に関連する水質は、前記硬度含有水の電気伝導率を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記硬度含有水の処理方法において、前記カチオン交換樹脂は、弱酸性カチオン交換樹脂であることが好ましい。
【0013】
また、前記硬度含有水の処理方法において、前記弱酸性カチオン交換樹脂は、Na型であることが好ましい。
【0014】
また、本開示は、塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水の処理装置であって、前記硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する測定部と、前記硬度含有水を、カチオン交換樹脂を用いて軟化処理する軟化処理部と、前記カチオン交換樹脂の再生時期を決定する決定部と、前記再生時期に基づいて、前記カチオン交換樹脂の再生処理を行う再生部と、を備え、前記決定部は、前記測定部により測定された水質に基づいて、前記再生時期を決定することを特徴とする。
【0015】
また、前記硬度含有水の処理装置において、前記決定部は、前記塩分濃度に関連する水質の規定値、前記水質の規定値における前記カチオン交換樹脂の貫流容量の規定値、及び前記測定部により測定された水質に基づいて、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することが好ましい。
【0016】
また、前記硬度含有水の処理装置において、前記決定部は、前記カチオン交換樹脂の貫流容量と前記塩分濃度に関連する水質との関係式を用いて、前記測定部により測定された水質から、前記カチオン交換樹脂の貫流容量を算出し、当該貫流容量から算出される軟化処理工程の時間に基づいて、前記再生時期を決定することが好ましい。
【0017】
また、前記硬度含有水の処理装置において、前記塩分濃度に関連する水質は、前記硬度含有水の電気伝導率を含むことが好ましい。
【0018】
また、前記硬度含有水の処理装置において、前記カチオン交換樹脂は、弱酸性カチオン交換樹脂であることが好ましい。
【0019】
また、前記硬度含有水の処理装置において、前記弱酸性カチオン交換樹脂は、Na型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、高い塩分濃度を有する硬度含有水の処理において、イオン交換樹脂の再生処理を適切なタイミングで行うことを可能となる硬度含有水の処理方法及び処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る処理装置の一例を示す模式図である。
図2】実施形態に係る処理装置に用いられる制御装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図3】硬度含有水の電気伝導率とカチオン交換樹脂の貫流容量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る処理装置の一例を示す模式図である。本実施形態に係る処理装置1は、塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水を処理する装置である。硬度含有水は、硬度成分及び塩分を含む。硬度成分は、水処理の分野で知られているものであり、典型的には、Ca2+およびMg2+に代表される2価カチオンである。塩分は、塩化ナトリウムである。以下、塩分濃度5000mg/L以上の硬度含有水を単に硬度含有水と称する。
【0024】
図1に示す処理装置1は、カチオン交換樹脂を有する軟化処理装置2、再生処理装置3、制御装置4、水質計測器5を含んで構成される。
【0025】
図1に示す軟化処理装置2は、カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔10、バルブ12a,12b、配管14a,14bを有する。配管14aには、水質計測器5、バルブ12aが設置され、配管14bには、バルブ12bが設置されている。配管14aは、カチオン交換塔10の入口に接続され、配管14bは、カチオン交換塔10の出口に接続されている。
【0026】
硬度含有水を軟化処理する際には、硬度含有水は、自重で又はポンプを使って、配管14aを通じて、カチオン交換塔10に下降流で通水される。これにより、硬度含有水は、カチオン交換塔10内のカチオン交換樹脂と接触して、硬度含有水中の硬度成分(例えば、Ca2+、Mg2+等)が除去される(軟化処理工程)。軟化処理された水(処理水)は、カチオン交換塔10から配管14bを通って、系外に排出される。
【0027】
硬度含有水は、カチオン交換塔10に上向流で通水されてもよいが、例えば、硬度成分を効率的に除去する点で、カチオン交換塔10に下向流で通水されることが望ましい。
【0028】
カチオン交換樹脂は、塩分除去を抑えて、効率的に硬度成分を除去することができる点で、弱酸性カチオン交換樹脂を用いることが好ましく、Na型の弱酸性カチオン交換樹脂を用いることがより好ましい。
【0029】
図1に示す再生処理装置3は、再生剤を貯留するタンク16、バルブ12c,12d、配管14c,14dを有する。配管14cにはバルブ12cが設置され、配管14dにはバルブ12dが設置されている。配管14cの一端はタンク16の入口に接続され、他端は、カチオン交換塔10の出口に接続されている。配管14dはカチオン交換塔10の入口に接続されている。
【0030】
カチオン交換樹脂の再生処理を行う際には、タンク16内の再生剤は、例えば、ポンプを使って、配管14cを通じて、カチオン交換塔10に上向流で通水される。これにより、再生剤は、カチオン交換塔10内のカチオン交換樹脂と接触して、カチオン交換樹脂に吸着された硬度成分がカチオン交換樹脂から除去される(再生工程)。再生処理された水(排水)は、カチオン交換塔10から配管14dを通って、系外に排出される。
【0031】
再生剤は、カチオン交換塔10に下向流で通水されてもよいが、再生処理を効率的に行う点で、カチオン交換塔10に上向流で通水されることが望ましい。
【0032】
再生剤は、カチオン交換樹脂の種類にもよるが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩酸、硫酸等が挙げられる。
【0033】
水質計測器5は、カチオン交換塔10に供給される硬度含有水に対して、塩分濃度に関連する水質を測定する。塩分濃度に関連する水質とは、塩分濃度そのもの、或いは塩分濃度の増減に応じて増減する成分濃度(ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度)や物性値である。塩分濃度の増減に対応して増減する物性値としては、硬度含有水の電気伝導率、TDS、比重等が挙げられる。水質計測器5により測定される塩分濃度に関連する水質としては、例えば、短い時間間隔で連続的に測定できる点で、硬度含有水の電気伝導率であることが好ましい。
【0034】
制御装置4は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ROM等に記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行して、処理装置1の動作を制御する。制御装置4は、例えば、水質計測器5と電気的に接続され、水質計測器5により測定された塩分濃度に関連する水質データを取得することができる。また、制御装置4は、例えば、バルブ(12a~12d)と電気的に接続され、バルブ(12a~12d)の開閉を行い、カチオン交換塔10への硬度含有水の供給・停止、カチオン交換塔10への再生剤の供給・停止をコントロールすることができる。
【0035】
図2は、本実施形態に係る処理装置に用いられる制御装置の機能ブロックの一例を示す図である。図2に示すように、制御装置4は、機能ブロックとして、記憶部18、決定部20、軟化処理工程制御部22、再生工程制御部24を有する。
【0036】
決定部20は、水質計測器5により測定された塩分濃度に関連する水質に基づいて、カチオン交換樹脂の再生時期を決定する。記憶部18は、カチオン交換樹脂の再生時期を決定する際に必要なデータ等を記憶する。軟化処理工程制御部22は、カチオン交換樹脂の再生時期がくるまで、硬度含有水がカチオン交換塔10に供給され、軟化処理工程が実施されるように、バルブ(12a~12d)の開閉等を制御する。再生工程制御部24は、カチオン交換樹脂の再生時期がきたら、再生剤がカチオン交換塔10に供給され、再生工程が実施されるように、バルブ(12a~12d)の開閉等を制御する。
【0037】
図3は、硬度含有水の塩分濃度とカチオン交換樹脂の貫流容量との関係を示す図である。図3には、カチオン交換樹脂に、硬度成分濃度は同じであるが塩分濃度が異なる複数の硬度含有水を通水して、カチオン交換樹脂の貫流容量を測定し、各硬度含有水の塩分濃度(mg/L)を横軸、各硬度含有水について測定されたカチオン交換樹脂の貫流容量(eq/L-R)を縦軸としてプロットし、プロットした各点から求めた近似直線A~Cを示している。図3に示す近似直線A~Cは、性能の異なる3種類のカチオン交換樹脂A~Cについてそれぞれ求めた近似直線である。なお、貫流容量は以下の式(1)により求められる。
貫流容量(eq/L-R)=(硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L))×(貫流点までの通水量(L))÷(カチオン交換樹脂量(L)) ・・・(1)
貫流点とは、硬度含有水をカチオン交換樹脂に通水した時、処理水中の漏出した硬度成分の濃度が所定値(例えば、1.0mg/L)に達した点である。
【0038】
硬度含有水の塩分濃度とカチオン交換樹脂の貫流容量の相関関係は、図3に示すように直線(一次関数)で表される関係にあり、カチオン交換樹脂に通水する硬度含有水の塩分濃度が高くなるほど、カチオン交換樹脂の貫流容量は低下し、カチオン交換樹脂に通水する硬度含有水の塩分濃度が低くなるほど、カチオン交換樹脂の貫流容量は増加する。なお、図3に示す直線A~Cは、性能の異なるカチオン交換樹脂A~Cによるものであるが、これらの直線における硬度含有水の塩分濃度に対するカチオン交換樹脂の貫流容量の傾きは、ほぼ同じである。上記傾きは、カチオン交換樹脂の種類にもよるが、例えば、-1.0×10-5~-2.0×10-5の範囲であり、望ましくは-1.5×10-5~-2.0×10-5の範囲である。
【0039】
図3では、硬度含有水の塩分濃度とカチオン交換樹脂の貫流容量との関係を示しているが、塩分濃度に関連する水質であれば、同じ傾向を示す。例えば、カチオン交換樹脂に通水する硬度含有水の電気伝導率(又はナトリウムイオン濃度や塩素イオン濃度等)が高くなるほど、カチオン交換樹脂の貫流容量は低下する。
【0040】
このように、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質が上昇すれば、カチオン交換樹脂の貫流容量は低下するので、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質の上昇に合わせて、カチオン交換樹脂の再生時期を早めないと(軟化処理工程の実施時間を短くしないと)、カチオン交換樹脂を通過した処理水中に多くの硬度成分が漏出してしまう。また、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質が低下すれば、カチオン交換樹脂の貫流容量は上昇するので、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質の低下に合わせて、カチオン交換樹脂の再生時期を長くすることで(軟化処理工程の実施時間を長くすることで)、再生剤の使用量を削減することができる。
【0041】
本実施形態では、制御装置4により、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質に基づいて、カチオン交換樹脂の再生時期を決定しているので、イオン交換樹脂の再生処理を適切なタイミングで行うことができる。以下、制御装置4による運転管理の具体例を説明する。
【0042】
<制御装置4による運転管理例1>
記憶部18には、予め、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質と軟化処理工程の実施時間との関係式が記憶されている。当該関係式は事前の試験により予め設定した式であり、例えば、以下のようにして設定される。
【0043】
塩分濃度が異なる複数の硬度含有水を通水して、カチオン交換樹脂の貫流容量を測定する。測定した各カチオン交換樹脂の貫流容量から軟化処理工程の実施時間を算出する(軟化処理工程の実施時間の算出の具体例については、制御装置4の運転管理例2を参照)。そして、各硬度含有水の塩分濃度(mg/L)を横軸、各硬度含有水について算出された軟化処理工程の実施時間(h)を縦軸としてプロットし、プロットした各点から近似直線を求める。求めた近似直線を表す式を、硬度含有水の塩分濃度に関連する水質と軟化処理工程の実施時間との関係式として、記憶部18に記憶する。なお、上記では、硬度含有水の塩分濃度を例にしているが、電気伝導率等の塩分濃度に関連する水質であればよい。
【0044】
決定部20は、水質計測器5により測定された硬度含有水の塩分濃度に関連する水質データを水質計測器5から取得する。そして、決定部20は、記憶部18から硬度含有水の塩分濃度に関連する水質と軟化処理工程の実施時間との関係式を読み出し、当該関係式に、水質計測器5から取得した硬度含有水の塩分濃度に関連する水質データを当てはめて、軟化処理工程の実施時間を算出し、カチオン交換樹脂の再生時期を決定する。軟化処理工程制御部22は、決定部20により算出した軟化処理工程の実施時間の間、軟化処理の処理工程が行われるように、バルブ(12a~12d)等を制御する。また、再生工程制御部24は、決定したカチオン交換樹脂の再生時期がきたら、再生工程が行われるように、バルブ(12a~12d)等を制御する。例えば、決定部20により算出した軟化処理工程の実施時間が5時間であるとすると、軟化処理工程制御部22は、5時間の間、バルブ12a,12bを開放させ、硬度含有水をカチオン交換塔10に通水させ、5時間後、バルブ12a,12bを閉じて、硬度含有水の通水を停止する制御を行う。そして、決定部20により決定したカチオン交換樹脂の再生時期は5時間後となるので、再生工程制御部24は、5時間経過後、バルブ12c,12dを開放させ、再生剤をカチオン交換塔10に通水させ、所定時間経過後、バルブ12c,12dを閉じて、再生剤の通水を停止する制御を行う。
【0045】
決定部20は、水質計測器5により定期的に測定された塩分濃度に関連する水質データを随時取得し、その都度、軟化処理工程の実施時間を算出し、カチオン交換樹脂の再生時期を決定することが望ましい。この場合、軟化処理工程制御部22及び再生工程制御部24は、決定部20により算出した最新の実施時間及び決定部20により決定した最新のカチオン交換樹脂の再生時期に基づいて、バルブ(12a~12d)等の制御を行う。但し、決定部20により算出した最新の実施時間が、軟化処理工程を実施している実際の時間を超えていた場合には、軟化処理工程制御部22は、直ちにバルブ12a,12bを閉じて、硬度含有水の通水を停止すると共に、再生工程制御部24は、バルブ12c,12dを開放して、再生剤の通水を開始する。
【0046】
<制御装置4の運転管理例2>
記憶部18には、塩分濃度に関連する水質の規定値(以下、水質規定値と称する場合がある)と、水質規定値におけるカチオン交換樹脂の貫流容量の規定値(以下、貫流容量規定値と称する場合がある)が記憶されている。水質規定値は任意の値であり、貫流容量規定値は、水質規定値を満たす硬度含有水をカチオン交換樹脂に通水する事前試験において得られた値である。なお、図3に示すような塩分濃度に関連する水質とカチオン交換樹脂の貫流容量との近似直線から、貫流容量規定値を求めて、記憶部18に記憶させてもよい。図3に示す近似直線Aを例に説明すれば、塩分濃度10000mg/Lを水質規定値とすると、対応する貫流容量規定値は、2.3eq/L-Rとなる。
【0047】
また、記憶部18には、貫流容量を算出する式(上記の式(1)参照)、カチオン交換塔10に充填されるカチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)、軟化処理時における硬度含有水の流量(L/h)が記憶されている。なお、軟化処理中に、硬度含有水中の硬度成分当量が変動する場合があるので、軟化処理の際、定期的に硬度成分当量を測定し、記憶部18に記憶される硬度含有水中の硬度成分当量を更新してもよい。
【0048】
決定部20は、水質計測器5により測定された硬度含有水の塩分濃度に関連する水質データを水質計測器5から取得する。決定部20は、水質規定値に対する取得水質データの比率を求め、貫流容量規定値に当該比率をかけて、推定貫流容量を算出する。
推定貫流容量=(取得水質データ/水質規定値)×貫流容量規定値
なお、算出した推定貫流容量に所定の係数をかけて、補正してもよい。
【0049】
決定部20は、記憶部18から、貫流容量を算出する式、カチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)を読み出し、貫流容量を算出する式に、カチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)、及び算出した推定貫流容量を当てはめて、貫流点までの通水量(L)を算出する。また、決定部20は、記憶部18から、軟化処理工程における硬度含有水の流量(L/h)を読み出し、貫流点までの通水量(L)を硬度含有水の流量(L/h)で除して、貫流点までの時間を算出する。この貫流点までの時間が、軟化処理工程の実施時間となる。そして、軟化処理工程の実施時間から、カチオン交換樹脂の再生時期を決定する。軟化処理工程の実施時間に基づく軟化処理工程制御部22の制御、及びカチオン交換樹脂の再生時期に基づく再生工程制御部24による制御は前述の通りである。
【0050】
また、前述したように、決定部20は、水質計測器5により定期的に測定された塩分濃度のデータを随時取得し、その都度、軟化処理工程の実施時間を算出し、カチオン交換樹脂の再生時期を決定してもよい。
【0051】
<制御装置4の運転管理例3>
記憶部18には、予め、カチオン交換樹脂の貫流容量と塩分濃度に関連する水質との関係式が記憶されている。具体的には、図3に示す近似直線を表す式が記憶部18に記憶されている。また、記憶部18には、貫流容量を算出する式(上記の式(1)参照)、カチオン交換塔10に充填されるカチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)、軟化処理時における硬度含有水の流量(L/h)が記憶されている。なお、軟化処理中に、硬度含有水中の硬度成分当量が変動する場合があるので、軟化処理の際、定期的に硬度成分当量を測定し、記憶部18に記憶される硬度含有水中の硬度成分当量を更新してもよい。
【0052】
決定部20は、水質計測器5により測定された硬度含有水の塩分濃度に関連する水質データを水質計測器5から取得する。そして、決定部20は、記憶部18からカチオン交換樹脂の貫流容量と塩分濃度に関連する水質との関係式を読み出し、この関係式に、水質データを当てはめて、カチオン交換樹脂の貫流容量を算出する。
【0053】
決定部20は、記憶部18から、貫流容量を算出する式、カチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)を読み出し、貫流容量を算出する式に、カチオン交換樹脂量(L)、硬度含有水中の硬度成分当量(eq/L)、及び算出した貫流容量を当てはめて、貫流点までの通水量(L)を算出する。また、決定部20は、記憶部18から、軟化処理時における硬度含有水の流量(L/h)を読み出し、貫流点までの通水量(L)を硬度含有水の流量(L/h)で除して、貫流点までの時間を算出する。この貫流点までの時間が、軟化処理工程の実施時間となる。そして、軟化処理工程の実施時間から、カチオン交換樹脂の再生時期を決定する。軟化処理工程の実施時間に基づく軟化処理工程制御部22の制御、及びカチオン交換樹脂の再生時期に基づく再生工程制御部24による制御は前述の通りである。
【0054】
また、前述したように、決定部20は、水質計測器5により定期的に測定された塩分濃度のデータを随時取得し、その都度、軟化処理工程の実施時間を算出し、カチオン交換樹脂の再生時期を決定してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 処理装置、2 軟化処理装置、3 再生処理装置、4 制御装置、5 水質計測器、10 カチオン交換塔、12a~12d バルブ、14a~14d 配管、16 タンク、18 記憶部、20 決定部、22 軟化処理工程制御部、24 再生工程制御部。
図1
図2
図3