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特開2022-151981螺子の緩み検知方法及び検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151981
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】螺子の緩み検知方法及び検知システム
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16B31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054565
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康宏
(57)【要約】
【課題】簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法を提供する。
【解決手段】構造物に金属製の螺子11を締結する際に、螺子11と構造物(レール締結ばね4、タイプレート2)との間に、互いに導通していない一対の導線20の端子20aを挟み、締結時の押圧力によって端子20aを導通させて、螺子11の1個と一対の導線20とで構成される電気抵抗部を含む電気回路を形成し、前記電気回路の抵抗値を監視し、前記抵抗値が異常に増大したときに螺子11が緩んだと判定する、螺子の緩み検知方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に金属製の螺子を締結する際に、
前記螺子と前記構造物との間に、互いに導通していない一対の導線の端子を挟み、
前記締結時の押圧力によって前記端子を導通させて、前記螺子の1個と前記一対の導線とで構成される電気抵抗部を含む電気回路を形成し、
前記電気回路の抵抗値を監視し、
前記抵抗値が異常に増大したときに前記螺子が緩んだと判定する、螺子の緩み検知方法。
【請求項2】
前記螺子が緩んだときに、前記一対の導線の端子の少なくとも一方が、前記構造物と前記螺子の間から外れるように応力を付与した状態で、前記螺子を締結する、請求項1に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項3】
前記一対の導線の少なくとも一方に、張力が小さくなると短くなる応力付与部材を接続し、前記応力付与部材に張力をかけて前記応力を付与した状態とする、請求項2に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項4】
前記一対の導線の少なくとも一方に、形状記憶性を有する形状記憶部材を接続し、前記形状記憶部材を変形させて前記応力を付与した状態とする、請求項2に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項5】
前記螺子が複数個存在し、前記電気抵抗部の複数個を直列に接続して前記電気回路を形成し、
前記抵抗値が異常に増大したときに前記複数個の螺子の少なくとも1つが緩んだと判定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の螺子の緩み検知方法。
【請求項6】
構造物に締結した金属製の螺子と、
前記螺子と接続した一対の導線と、
前記螺子の1個と前記一対の導線とで構成される電気抵抗部を含む電気回路の抵抗値を測定する電気抵抗測定装置とを有し、
前記一対の導線の端子は、前記構造物と前記螺子との間に挟まれ、前記締結時の押圧力によって導通している、螺子の緩み検知システム。
【請求項7】
前記螺子が複数個存在し、前記電気回路は複数の前記電気抵抗部を直列に接続した状態で含む、請求項6に記載の螺子の緩み検知システム。
【請求項8】
さらに、前記抵抗値の測定結果を発信する発信装置を有する、請求項6又は7に記載の螺子の緩み検知システム。
【請求項9】
さらに、前記電気抵抗測定装置及び発信装置に電力を供給する発電機を有する、請求項8に記載の螺子の緩み検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に締結した螺子の緩みを検知する方法、及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に締結したボルトや雄ネジ等の螺子が緩んでいないかどうかの確認は、目視や打音検査により行われることが一般的であった。
目視や打音検査による確認では作業者が螺子の近傍で作業する必要があるため、場所によって困難を伴う場合がある。
【0003】
特許文献1には、締結したボルトとナットの緩みを検知する方法として、ナットの側面に導通片を固着し、ナットが緩んで回転すると前記導通片と接触して導通する接点を、前記ナットの近傍に配置し、導通の発生を検出して緩みを検知する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-13919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、ナットの締め込み位置の近傍に接点を設ける際にナット以外のものとは電気絶縁する必要があり、ナットと接点との距離も比較的近いため、接点を設置する作業が煩雑になりやすい。
本発明は、簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法及び検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] 構造物に金属製の螺子を締結する際に、前記螺子と前記構造物との間に、互いに導通していない一対の導線の端子を挟み、前記締結時の押圧力によって前記端子を導通させて、前記螺子の1個と前記一対の導線とで構成される電気抵抗部を含む電気回路を形成し、前記電気回路の抵抗値を監視し、前記抵抗値が異常に増大したときに前記螺子が緩んだと判定する、螺子の緩み検知方法。
[2] 前記螺子が緩んだときに、前記一対の導線の端子の少なくとも一方が、前記構造物と前記螺子の間から外れるように応力を付与した状態で、前記螺子を締結する、[1]の螺子の緩み検知方法。
[3] 前記一対の導線の少なくとも一方に、張力が小さくなると短くなる応力付与部材を接続し、前記応力付与部材に張力をかけて前記応力を付与した状態とする、[2]の螺子の緩み検知方法。
[4] 前記一対の導線の少なくとも一方に、形状記憶性を有する形状記憶部材を接続し、前記形状記憶部材を変形させて前記応力を付与した状態とする、[2]の緩み検知方法。
[5] 前記螺子が複数個存在し、前記電気抵抗部の複数個を直列に接続して前記電気回路を形成し、前記抵抗値が異常に増大したときに前記複数個の螺子の少なくとも1つが緩んだと判定する、[1]~[4]のいずれかの螺子の緩み検知方法。
【0007】
[6] 構造物に締結した金属製の螺子と、前記螺子と接続した一対の導線と、前記螺子の1個と前記一対の導線とで構成される電気抵抗部を含む電気回路の抵抗値を測定する電気抵抗測定装置とを有し、前記一対の導線の端子は、前記構造物と前記螺子との間に挟まれ、前記締結時の押圧力によって導通している、螺子の緩み検知システム。
[7] 前記螺子が複数個存在し、前記電気回路は複数の前記電気抵抗部を直列に接続した状態で含む、[6]の螺子の緩み検知システム。
[8] さらに、前記抵抗値の測定結果を発信する発信装置を有する、[6]又は[7]の螺子の緩み検知システム。
[9] さらに、前記電気抵抗測定装置及び発信装置に電力を供給する発電機を有する、[8]の螺子の緩み検知システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な作業で設置できる螺子の緩み検知方法、及び検知システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示す平面図である。
図2図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の要部拡大図である。
図4】導線の接続状態の一例を模式的に示す概略図である。
図5】第2の実施形態を示す平面図である。
図6図5の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「螺子」は、ねじ山をもった部品の総称であり、ボルト、ナット、ナットを組まないで用いる雄ねじ等が例示できる。
構造物としては、鉄道の軌道を構成する構造物、鉄道に付設された構造物、鉄橋を構成する構造物、鉄塔を構成する構造物、道路に付設された構造物などの土木構造物が例示できる。
土木構造物に用いられる螺子は、例えば、鉄道用途としては、タイプレート固定用ねじ釘、レール締結用ばねのねじ、分岐用レールの固定ボルト、継ぎ目板固定用ねじ、転轍機の固定用ねじ、保線用歩行板の固定用ねじ、鉄道架線用柱の固定用ねじ、鉄道の防音壁固定用ねじが挙げられる。
その他に、鉄橋固定用ボルト、鉄塔組み立て固定用ねじ、道路の防音壁固定用ねじ、電柱トランス架台固定用ボルト等が例示できる。
本発明における螺子は金属製である。金属の具体例としては鉄製、ステンレス製、真鍮製、チタン製、アルミ製などが挙げられる。
以下の実施形態では、鉄道用途の螺子を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0011】
<第1の実施形態>
図1、2は、第1の実施形態の螺子の緩み検知方法(以下、単に「検知方法」ともいう。)に好適な螺子の緩み検知システム(以下、単に「検知システム」ともいう。)を示す概略図である。図1は上方から見た平面図、図2はII-II線に沿う断面図、図3図1の要部拡大図である。
なお、以下の図は、その構成をわかりやすく説明するための模式図であり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合もある。
【0012】
図中符号1は枕木である。枕木1の上面にタイプレート2が存在し、タイプレート2上にレール3が存在する。レール締結ばね4は、レール3の底部上面をタイプレート2に向かう方向に押圧してレール3を固定する。
本実施形態における検知対象の螺子11は、タイプレート2を枕木1の上面に固定するタイプレート固定用ねじ釘、及びレール締結ばね4をタイプレート2に固定するレール締結ばね固定用ねじである。
【0013】
枕木1の材質は、硬質発泡ウレタン樹脂をガラス長繊維で強化したガラス繊維補強ウレタン発泡体が好ましい。例えばエスロンネオランバーFFU(登録商標、積水化学工業株式会社製)からなる。本実施形態において、枕木1の各寸法は、厚さ150mm、幅230mm、長さ4000mmである。
【0014】
図中符号22は、導線20を一次被覆層で被覆した被覆導線21を、2本並列して二次被覆層で一括的に被覆した一括被覆線である。すなわち、一括被覆線22は互いに導通していない一対の導線20を有する。図3において、二次被覆層は図示していない。
導線20の材質は特に限定されない。例えば、銅、鉄、アルミニウム等が挙げられる。
一括被覆線22の一方の端部には、各導線20の端子20aが存在する。本実施形態において、端子20aは剥き出しになった導線20の先端部分である。端子20aは、導線20の先端部分ではなく剥き出しになった導線20の途中の部分でもよく、導線20と電気的に接続した金属片でもよい。
【0015】
本実施形態において、導線20は形状記憶性を有する形状記憶部材と接続している。
本明細書において形状記憶性を有するとは、力を加えて変形させた後、力をはなすと元の形状に戻る性質を意味する。いわゆる形状記憶合金や形状記憶樹脂のように弾性領域外でも元の形状に戻る性質でもよく、ばねのように弾性領域内で元の形状に戻る性質でもよい。
導線20が形状記憶部材と接続している態様としては、導線20を被覆する一次被覆層が形状記憶樹脂である態様、被覆導線21を被覆する二次被覆層が形状記憶樹脂である態様、一括被覆線22に形状記憶部材を貼り付けた態様等が例示できる。二次被覆層を有さない場合、被覆導線21に形状記憶部材を貼り付けた態様でもよい。
【0016】
螺子11を構造物(レール締結ばね4、タイプレート2)に締結する際に、螺子11と構造物との間に一対の導線20の端子20aを挟み、締結時の押圧力によってこれらを導通させる。
例えば、一括被覆線22の一方の端部において二次被覆層を除去して被覆導線21を露出させ、さらに、被覆導線21の先端部分の一次被覆層を除去して導線20を剥き出しにして端子20aとする。
端子20aどうしを導通させる方法は、例えば、ねじやバネで締め込む方法が好ましい。端子20aをねじで締め込む方法は、具体的に、端子とねじの頭が直接接するように締め込む方法、ワッシャで端子を締め込む方法、ワッシャを複数枚挟んで、ワッシャの間に端子を挟む方法などである。端子20aをバネで締め込む方法は、具体的に、ねじの頭の下に皿ばね、板ばね、線ばね等を挟み込んで、そのばねにより端子を締め込む方法などである。
図3の例において、2つの端子20aの間には座金(図示略)が存在する。
【0017】
一括被覆線22の他方の端部は、一対の導線20が電気抵抗測定装置40に電気的に接続する。
本実施形態において、電気抵抗測定装置40は枕木1上に存在する。電気抵抗測定装置40は例えばデジタル式電気抵抗測定器である。1つの枕木1上において、電気抵抗測定装置40は一対のレール3の外側及び内側の計4箇所に存在する。
電気抵抗測定装置40は、デジタル式電気抵抗測定器のほかに、測定結果を発信する発信装置、電気抵抗測定器及び発信装置に電力を供給する発電機を1つのユニットとして備える。
発電機の種類や仕様は特に限定されない。例えば、太陽電池、振動発電器等を使用できる。必要に応じて、直流又は交流に変換する装置、電力を調整する装置を備える。
発信装置の仕様は特に限定されない。例えば無線発信機である。電話回線、有線を用いて発信してもよい。
【0018】
本実施形態において、1本のレール3の外側に3個の螺子11が存在する。3本の一括被覆線22の一方の端部を3個の螺子11にそれぞれ接続し、これらを直列に接続して1つの電気抵抗測定装置40に接続する。すなわち、1個の螺子11と一対の導線20とで構成される3個の電気抵抗部を直列に接続して電気回路を形成する。
複数の電気抵抗部を直列に接続する方法として、例えば図4に示すように、複数本の一括被覆線22(図4では22a~22e)を直列に接続したケーブル25を用いることができる。ケーブル25を構成する一括被覆線22の数(図4の例では5本)より、螺子11の数が少ない場合は、使用しない一括被覆線22の導線20を予め短絡させておく。
例えば、ケーブル25を構成する一括被覆線22a~22eのうち、3本の一括被覆線22a、22b、22cを3個の螺子11にそれぞれ接続し、残りの22d、22eは導線20を短絡させ、ケーブル25の両端を電気抵抗測定装置40に接続する。
【0019】
本実施形態では、螺子11を締結した状態でこのような電気回路を形成し、電気抵抗測定装置40で抵抗値を測定し、監視する。
一対の導線20の端子20aは、締結時の押圧力によって導通しているため、螺子11が緩むと接触抵抗が大きくなり、電気抵抗測定装置40で測定する抵抗値が異常に増大する。
本発明において、抵抗値が異常に増大するとは、抵抗値の測定誤差を超える増大が生じ、増大した抵抗値が再び低下しないことを意味する。例えば、電気回路が断線した状態になると抵抗値は無限大となる。
【0020】
本実施形態において、導線20は形状記憶性を有する形状記憶部材と接続しており、螺子11が緩んだときに、端子20aが螺子11と構造物(レール締結ばね4、タイプレート2)との間から外れるように、形状記憶部材を変形させて応力を付与した状態で端子20aを締め込む。
螺子11が緩んで形状記憶部材が元の形状に戻ることによって、端子20aが螺子11と構造物との間から外れると、電気抵抗測定装置40で測定する抵抗値は無限大となる。この抵抗値の異常な増大を検出したときに螺子11が緩んだと判定する方法で、螺子11の緩みを検出できる。
1個の螺子11と一対の導線20とで構成される複数個の電気抵抗部を直列に接続した電気回路において、抵抗値が無限大となったときは、複数個の螺子11の少なくとも1つが緩んだと判定する。
【0021】
電気抵抗測定装置40で抵抗値を監視する方法は、特に限定されない。例えば、常時、抵抗値を測定してもよく、タイマーを付設して、決まった期間や決まった日時にのみ測定してもよい。決まった日時とは、例えば1日1回、決まった時間に測定してもよい。また、例えば毎週月曜日の午前0時から1回だけ測定するなど、測定の間隔日数と時間と測定の回数を設定してもよい。
電気抵抗測定装置40で抵抗値を測定した結果を、発信機で発信する方法は特に限定されない。例えば、測定した抵抗値を常時発信し続けてもよく、タイマーを用いて測定した時のみ測定値を発信してもよく、抵抗値の増大(電気回路の断線を含む)を検出したときのみ発信してもよい。
【0022】
本実施形態によれば、電気抵抗測定装置40で測定する抵抗値を監視する方法で、簡易に、効率良く螺子11の緩みを点検できる。
また、抵抗値の測定結果を自動的に発信できるため、保守点検を開始する前に異常箇所を知ることができ、簡易に点検することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態の検知システムを示す概略構成図であり、上方から見た平面図である。図6図5の要部拡大図である。前出の図と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する(以下、同様。)。
第1の実施形態では、3個の螺子11にそれぞれ接続する3対の導線20として3本の一括被覆線22を用いたが、本実施形態では、3個の螺子11に対して4本の被覆導線21(21a、21b、21c、21d)を用いる。1本の被覆導線21は1本の導電20を有する。
具体的には、図6に示すように、4本の被覆導線21a、21b、21c、21dのうち、2本の被覆導線21b、21cは両端部に導線20の端子20aが存在する。残りの2本21a、21dは少なくとも一方の端部に導線20の端子20aが存在する。これらと3個の螺子11(第1~3の螺子11a~11c)及び電気抵抗測定装置40を、図6に示すように直列に接続する。この構成において、両端部に端子20aが存在する被覆導線21bの導電20は、第1の螺子11aに接続する導線と第2の螺子11bに接続する導線を兼ねる。同様に、被覆導線21cの導電20は、第2の螺子11aに接続する導線と第3の螺子11bに接続する導線を兼ねる。螺子11と構造物との間に、端子20aを締め込む方法は第1の実施形態と同様である。
【0024】
また、第1の実施形態では、導線20が形状記憶性を有する形状記憶部材と接続しているが、本実施形態では導線20に、張力が小さくなると短くなる応力付与部材として、ゼンマイばね30を接続する。
ゼンマイばね30は、渦巻き状に巻いた紐状又は帯状の弾性部材31を備える。ゼンマイばね30から引き出した弾性部材31を被覆導線21a、21b、21cにそれぞれ接続し、各被覆導線21の先端部である端子20aが螺子11から遠ざかる方向に張力をかけた状態で、ゼンマイばね30を枕木1の上面に固定する。すなわち、すなわち螺子11が緩んだときに、導線の端子20aが、構造物(レール締結ばね4、タイプレート2)と螺子11の間から外れるように応力を付与した状態とする。
【0025】
被覆導線21a、21b、21cと弾性部材31とは、直接接続してもよく、線状部材32を介して接続してもよい。
線状部材32の材質は特に限定されない。金属、ゴム、プラスチック、ガラス、化学繊維等が例示できる。
線状部材32の形状は特に限定されない。断面が円形でもよく、断面が偏平な帯状でもよく、中空形状でもよい。
線状部材32の大きさは、直径又は短軸径が10mm以下であることが好ましく、5mm以下がより好ましい。直径又は短軸径の下限は充分な強度が得られる範囲であればよい。本実施形態では、線状部材32として直径0.7mmのナイロン製糸を用いる。
【0026】
ゼンマイばね30を枕木1の上面に固定する方法は特に限定されない。例えば、ねじやボルトにより固定する方法、接着剤により固定する方法が挙げられる。枕木1の近傍に埋めてもよい。
【0027】
螺子11を緩みがないように締結した初期状態において、螺子11からゼンマイばね30までの距離は、例えば200~800mmが好ましく、200~500mmがより好ましい。上記範囲の下限値未満であると、ばねで導線の位置を移動させて回路を不通にする目的なのに対して、移動距離が小さくて、導線が回路の一部分に接触して不通にならない可能性があり、上限値を超えると枕木上に配置することが難しい場合がある。本実施形態では約300mmである。
【0028】
なお、本実施形態においては、張力が小さくなると短くなる応力付与部材として、ゼンマイばね30を用いたが、これに限らない。例えば、ゼンマイばね、コイルばね等の構造的に弾性挙動を示す部材、及びゴム等の素材が弾性挙動を示す部材が挙げられる。
また、3本の被覆導線21a、21b、21cのそれぞれに弾性部材31を接続したが、各螺子11に接続する一対の被覆導線の少なくとも一方に接続すればよい。両方に接続してもよい。
例えば、第1の螺子11aに接続する被覆導線21a、21bの少なくとも一方に、弾性部材31を接続する。第2の螺子11bに接続する被覆導線21b、21cの少なくとも一方に、弾性部材31を接続する。第3の螺子11cに接続する被覆導線21c、21dの少なくとも一方に、弾性部材31を接続する。
被覆導線21に代えて導線20を用いてもよいが、短絡を防止しやすい点で被覆層を有することが好ましい。
導線20又は被覆導線21と、応力付与部材とを1つのユニットに付設してもよい。
【0029】
なお、上記の実施形態では複数個の螺子11について、1個の螺子11と一対の導線20とで構成される複数個の電気抵抗部を、直列に接続した電気回路の抵抗値を測定したが、複数個の電気抵抗部の抵抗値をそれぞれ測定してもよい。1個の電気抵抗部ごとに抵抗値を測定すると、緩みが生じた螺子11を個別に特定できる。
また、上記の実施形態では、電気抵抗器と発信装置と発電機を1つのユニットとしたが、それぞれが別体であってもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 枕木
2 タイプレート
3 レール
4 レール締結ばね
11 螺子
11a 第1の螺子
11b 第2の螺子
11c 第3の螺子
20 導線
20a 端子
21、21a、21b、21c、21d 被覆導線
22 一括被覆線
25 ケーブル
30 ゼンマイばね(応力付与部材)
31 弾性部材
32 線状部材
40 電気抵抗測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6