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  • 特開-油入変圧器 図1
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  • 特開-油入変圧器 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152034
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】油入変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/12 20060101AFI20221004BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20221004BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01F27/12 Z
H01F30/10 S
H01F27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054649
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河村 大成
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】杉田 亮佑
【テーマコード(参考)】
5E050
5E059
【Fターム(参考)】
5E050CA10
5E059BB15
5E059BB23
(57)【要約】
【課題】
巻線の熱劣化の差異を抑制する油入変圧器を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、巻線を上下分割し、その隙間から絶縁油を導入することに加え、箇所毎で耐熱クラスの異なる絶縁紙を使い分ける。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心と巻線の組立体をタンク内に収納し、絶縁油を入れてなる油入変圧器であって、
前記巻線は、
上部の巻線部と下部の巻線部とを有する油入変圧器。
【請求項2】
請求項1に記載の油入変圧器において、
前記上部の巻線部と前記下部の巻線部との間に、隙間を有する油入変圧器。
【請求項3】
請求項1に記載の油入変圧器において、
前記上部の巻線の間に配置された第1の絶縁紙と、前記下部の巻線の間に配置された第2の絶縁紙とを有し、
前記第1の絶縁紙は、前記第2の絶縁紙よりも耐熱クラスの高い絶縁紙である油入変圧器。
【請求項4】
請求項1に記載の油入変圧器において、
外側の前記巻線の間に配置された第3の絶縁紙と、内側の前記巻線の間に配置された第4の絶縁紙とを有し、
前記第4の絶縁紙は、前記第3の絶縁紙よりも耐熱クラスの高い絶縁紙である油入変圧器。
【請求項5】
請求項1に記載の油入変圧器の前記鉄心の構成は、
三脚巻鉄心であり、
三脚のうち外側の二脚を構成する前記巻線の間に配置された第5の絶縁紙と、
三脚のうち中央部の一脚を構成する前記巻線の間に配置された第6の絶縁紙とを有し、
前記第6の絶縁紙は、前記第5の絶縁紙よりも耐熱クラスの高い絶縁紙である油入変圧器。
【請求項6】
請求項1に記載の油入変圧器において、
前記巻線は、
上から下に3以上の巻線群で構成され、
前記巻線群のうち、上側にある第1の巻線群に配置される第7の絶縁紙は、
下側にある第2の巻線群に配置される第8の絶縁紙よりも耐熱クラスの高い絶縁紙である油入変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の高周波トランスでは、1次巻線、2次巻線ともにカプトンテープで被覆してあり、1次巻線が内側、2次巻線が外側という配置となっている。2次巻線の内側に1次巻線が挿入されていて、巻線が隣接する部分に厚みのあるノーメックスシートを挟んで絶縁距離を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-174958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配電用変圧器の巻線は電力損失により発熱し、巻線はその熱をタンク内部の絶縁油循環により冷却する。温度が高くなった絶縁油は密度が低くなり上部へ移動し、冷却された絶縁油は密度が高くなりタンク下部へ移動し、巻線内に引き込まれ、巻線から熱を奪い上部に移動する。巻線はこの上下を循環する絶縁油の温度分布と同様な熱分布をもつ。
【0005】
油入変圧器内の上記したような一連の冷却システムの中で、巻線上部と巻線下部の温度は常に差があり、巻線上部は巻線下部に比べて常に高い温度で運転され、熱劣化が早く起こる。また、内側巻線(低圧)は外側巻線(高圧)に比べ、絶縁油に接する面積が小さく、温度が高いため熱劣化が早く起こる。
【0006】
特許文献1では、巻線間の絶縁距離を保つことについては考慮しているが、油入変圧器における巻線の熱劣化の差異を抑制することについては配慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、巻線の熱劣化の差異を抑制する油入変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、巻線を上下分割し、その隙間から絶縁油を導入することに加え、箇所毎で耐熱クラスの異なる絶縁紙を使い分ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線の熱劣化の差異を抑制する油入変圧器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における巻線と鉄心の外観図。
図2】比較例における巻線と鉄心の外観図。
図3】実施例1における巻線と絶縁紙を説明する図。
図4】実施例2における巻線と絶縁紙を説明する図。
図5】実施例3における巻線と絶縁紙を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【実施例0012】
図1は、実施例1における、鉄心と巻線とを有する鉄心-巻線組立体を斜めから見た外観図である。鉄心は、外鉄心1と、内鉄心2とからなる。本実施例ではコイル(巻線)は、上部巻線4と下部巻線5とから構成される。図2は、比較例における鉄心-巻線組立体を斜めから見た外観図である。比較例では、巻線3は、上部巻線4と下部巻線5とに分かれてはいない。
【0013】
本実施例が適用される三相三脚構造の油入変圧器のタンク内部には、絶縁油と、図1に示す鉄心-巻線組立体が収納される。図1ではタンクと絶縁油は図示を省略している。
【0014】
鉄心-巻線組立体は、鉄心(外鉄心1および内鉄心2)の複数の脚部に、図1では、左から、それぞれ三相(U相、V相、W相)のコイル(上部巻線4および下部巻線5)が設けられている。なお、コイルは一次巻線部と二次巻線部で構成されている。
【0015】
本実施例では、巻線3を高さ方向に分割し、上部巻線4と下部巻線5の間に形成された隙間(分割された部位)から上部巻線4に油を取り込み、冷却する。ただし、上部巻線4と下部巻線5とは巻線は電気的に接続している。
【0016】
上部巻線4と下部巻線5の間に形成された隙間内に、絶縁油を侵入させ、上部巻線4から発生する熱を冷却する。よって、比較例の図2の構成に比べて巻線の熱劣化の差異を抑制する。
【0017】
図3は、実施例1における巻線と絶縁紙を説明する図である。図3(a)は、図1において下部巻線5を水平方向に切断した際の、下部巻線5内の絶縁紙6の配置を示す図である。図3(b)は、図1において上部巻線4を水平方向に切断した際の、上部巻線4の絶縁紙7の配置を示す図である。
【0018】
図3では、温度が高い上部巻線4には、下部巻線5よりも高いグレードの耐熱クラスの絶縁紙7を巻いて、上部巻線4の間に絶縁紙7が配置されるようにする。
【0019】
実施例1によれば、温度が高い上部巻線のみの過度な熱劣化を抑えることができる。また、コストの高い耐熱クラスの高い絶縁紙は下部巻線には使用しないで上部巻線にのみ使用することで、コストを抑えて巻線の熱劣化の差異を抑制する。また、耐熱クラスの高い絶縁紙を上部巻線に使用することで、冷却フィン等の冷却面積を小さくすることができるので、タンクを小型化でき、よって巻線の熱劣化の差異を抑制するとともに、油入変圧器の製造コストを抑制できるとともに、コンパクトな油入変圧器を実現できる。
【実施例0020】
図4は、実施例2における巻線と絶縁紙を説明する図である。図4では、巻線は、内側巻線9と、内側巻線9の外周側で絶縁油に面する側である外側巻線8とからなる。
図4の構成は、図1の上部巻線4および下部巻線5のいずれの構成であってもよい。
【0021】
また、外側巻線8は、高圧側である一次側に接続する一次巻線である。内側巻線9は、低圧側である二次側に接続する二次巻線である。
実施例1と同じ事項については、説明を省略する。
【0022】
図1に示される実施例1の構成においては、内側巻線9は、外側巻線8に囲われていて油への接する面積が少なく熱がこもりやすい。内側巻線9には、外側巻線8に使用する絶縁紙6よりも高いグレードの耐熱クラスの絶縁紙7を巻いて、内側巻線9の間に絶縁紙7が配置されるようにする。
【0023】
本実施例では、内側巻線9の間と外側巻線8の間には、それぞれ第4の絶縁紙7と第3の絶縁紙6が巻線に巻かれている。そして、内側巻線間に配置される第4の絶縁紙7は第3の絶縁紙6に比べて耐熱クラスの高い絶縁紙である。
【0024】
特許文献1では、ノーメックスシートに比べて耐熱クラスが高いカプトンテープを、一次巻線、二次巻線ともに被覆してあり、一次巻線は内側、二次巻線は外側に配置されている。よって、本実施例とは構成は異なる、また、特許文献1では、一次巻線と二次巻線の間に厚いノーメックスシートを配置することで、確実な絶縁距離を保つことができるが、内側巻線9と外側巻線8との巻線の熱劣化の差異を抑制することは特許文献1からは示唆されない。
【0025】
本実施例によれば、内側巻線9と外側巻線8の間の熱劣化の差異を抑制できる。
【実施例0026】
図5は、実施例3における巻線と絶縁紙を説明する図である。図5(a)は、図1の三相三脚構造の油入変圧器における外側の二脚(U相、W相)10を構成する巻線内の絶縁紙6の配置を示す図である。図5(b)は、図1における一脚11(V相)を構成する巻線内の絶縁紙7の配置を示す図である。実施例1もしくは実施例2と同じ事項については、説明を省略する。
【0027】
三脚巻鉄心の場合、外側に配置してある二脚10よりも中央に配置される一脚11は絶縁油に接する面積が小さく、外側の二脚10に比べ、熱がこもりやすい。中央に配置される一脚11を構成する巻線に、二脚10における絶縁紙6(第5の絶縁紙)に比べて耐熱クラスの高い絶縁紙7(第6の絶縁紙)を巻いて、一脚11を構成する巻線の間に絶縁紙7が配置されるようにする。
【0028】
上部巻線4、あるいは下部巻線5のいずれについても、温度に適した絶縁紙の耐熱クラスを選定して、巻線間に配置する。
【0029】
本実施例によれば、三相三脚構造の油入変圧器の外側の二脚における巻線と、中央に配置される一脚における巻線間の熱劣化の差異を抑制できる。
【実施例0030】
本実施例では、油入変圧器の巻線を高さ方向に3分割にし、2つの分割されたそれぞれの巻線を巻線群とよび、3つの巻線群からなる油入変圧器とする。
上部巻線と中部巻線と下部巻線の間に形成された2つの隙間(分割された部位)から巻線に油を取り込み、冷却する。ただし、上部巻線と中部巻線と下部巻線とは巻線は電気的に接続している。実施例1から実施例3までと同じ事項については、説明を省略する。
【0031】
本実施例は、図示は省略するが、上部巻線を構成する第1の巻線群に配置される第7の絶縁紙は、中部巻線もしくは下部巻線を構成する第2の巻線群に配置される第8の絶縁紙よりも耐熱クラスの高い絶縁紙を使用する。
【0032】
中部巻線も温度に応じて、上部巻線4または下部巻線5とは耐熱クラスの異なる絶縁紙を使い分ける。上部巻線4、あるいは下部巻線5についても、温度に適した絶縁紙の耐熱クラスを選定して、巻線間に配置する。
【0033】
本実施例では、巻線を上から下に向かって、上部巻線、中部巻線、下部巻線からなる3つの巻線群としたが、4以上の巻線群を有する油入変圧器であってもよい。
【0034】
本実施例によれば、油入変圧器の巻線を上下の方向に3以上の巻線群に分割する。実施例1に比べて、巻線群間に配置された油を取り込む隙間の数が、多くなり、巻線間の冷却効率の差異を少なくできるので、巻線の熱劣化の差異を抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…外鉄心、2…内鉄心、3…巻線、4…上部巻線、5…下部巻線、6…絶縁紙(耐熱クラス:低)、7…絶縁紙(耐熱クラス:高)、8…外側巻線、9…内側巻線、10…二脚(U脚巻線、W脚巻線)、11…一脚(V脚巻線)
図1
図2
図3
図4
図5