(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152037
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
G01R33/02 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054652
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】悪七 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC07
2G017AD55
2G017BA09
2G017CB01
(57)【要約】
【課題】微弱な磁界を磁場源から離れた位置で検出可能な磁気センサを提供する。
【解決手段】磁気センサ1は、集磁面11a,21aが互いに反対側を向くよう配置された磁性体10,20と、磁性体10,20間を通る磁束を検出する磁気検出部30とを備える。これにより、磁性体10の集磁面11aから集磁した磁束が磁気検出部30を介して磁性体20の集磁面21aを通ることから、空間に広がる磁界を効率良く集磁することができる。これにより、磁場源からの距離が離れていても、磁場の一様性が高い条件で集磁することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集磁面が互いに反対側を向くよう配置された第1及び第2の磁性体と、
前記第1及び第2の磁性体間を通る磁束を検出する磁気検出部と、を備えることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記第1の磁性体の前記集磁面と前記第2の磁性体の前記集磁面が互いに平行であることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記集磁面は、第1の方向及び前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延在し、
前記第1及び第2の磁性体は、前記磁気検出部と磁気結合する磁気結合部と、前記磁気結合部から前記第1の方向に延在し、前記集磁面を構成する集磁部とをそれぞれ含むことを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第1及び第2の磁性体の前記集磁部は、前記磁気結合部から前記第1の方向の両側に延在することを特徴とする請求項3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1及び第2の磁性体の前記集磁部は、前記磁気結合部から前記第2の方向に延在する部分を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサに関し、特に、微弱な磁界を磁場源から離れた位置から検出可能な磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、棒状の磁性体を用いてセンサチップに磁束を集めることにより検出感度を高めた磁気センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気センサは、集磁体を磁場源に近づけることによって測定を行う必要があり、微弱な磁界を磁場源から離れた位置で検出することは容易ではなかった。
【0005】
したがって、本発明は、微弱な磁界を磁場源から離れた位置で検出可能な磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気センサは、集磁面が互いに反対側を向くよう配置された第1及び第2の磁性体と、第1及び第2の磁性体間を通る磁束を検出する磁気検出部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の磁性体の集磁面から集磁した磁束が磁気検出部を介して第2の磁性体の集磁面を通ることから、空間に広がる磁界を効率良く集磁することができる。これにより、磁場源からの距離が離れていても、磁場の一様性が高い条件で集磁することが可能となる。
【0008】
本発明において、第1の磁性体の集磁面と第2の磁性体の集磁面が互いに平行であっても構わない。これによれば、第1及び第2の磁性体の集磁面を磁束に対して垂直とすることにより、微弱な磁界を感度良く検出することが可能となる。
【0009】
この場合、集磁面は、第1の方向及び第1の方向に対して垂直な第2の方向に延在し、第1及び第2の磁性体は、磁気検出部と磁気結合する磁気結合部と、磁気結合部から第1の方向に延在し、集磁面を構成する集磁部とをそれぞれ含むものであっても構わない。これによれば、集磁部のサイズを調整することによって集磁効率を調整することが可能となる。さらにこの場合、第1及び第2の磁性体の集磁部は、磁気結合部から第1の方向の両側に延在していても構わない。これによれば、集磁効率をより高めることが可能となる。また、第1及び第2の磁性体の集磁部は、磁気結合部から第2の方向に延在する部分を有していても構わない。この場合も、集磁効率をより高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、微弱な磁界を磁場源から離れた位置で検出可能な磁気センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の構造を説明するための模式図であり、(a)はxy平面図、(b)はyz平面図である。
【
図2】
図2(a)は、磁気センサ1を用いた磁界の検出方法を説明するための模式図であり、
図2(b)はその拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための略斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための略斜視図である。
【
図5】
図5は、磁気検出部30を構成するセンサチップと磁性体10,20を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【
図6】
図6は、磁気検出部30を構成するセンサチップの略平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施形態による磁気センサ3の構造を説明するための略斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施形態による磁気センサ4の構造を説明するための略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の構造を説明するための模式図であり、(a)はxy平面図、(b)はyz平面図である。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、磁性体10,20と磁気検出部30とを備えている。磁性体10,20は、フェライトなどの高透磁率材料によって構成され、検出対象となる磁界を集磁する集磁部11,21と、磁気検出部30と磁気結合し、集磁した磁束を磁気検出部30に印加する磁気結合部12,22をそれぞれ有している。
【0015】
集磁部11はyz平面を構成する集磁面11aとその反対側に位置する裏面11bを有し、集磁部12はyz平面を構成する集磁面21aとその反対側に位置する裏面21bを有する。集磁面11a,21aは互いに反対側を向き、裏面11b,21bは互いに向かい合っている。このように、集磁面11a,21aは互いに平行である。磁気検出部30は、磁性体10の磁気結合部12と磁性体20の磁気結合部22の間においてx方向に挟まれるように配置され、これにより磁性体10の磁気結合部12と磁性体20の磁気結合部22の間を通る磁束の向き及び強度を検出する。
【0016】
図2(a)は、磁気センサ1を用いた磁界の検出方法を説明するための模式図であり、
図2(b)はその拡大図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態による磁気センサ1は、磁場源Aから離れた位置で磁束φを検出する。磁場源Aから離れた位置においては、磁場源Aの近傍と比べて磁束密度は低いものの、磁場の一様性が高い。このような一様性の高い磁束φを集磁面11a,21aを用いて集磁し、集磁した磁束φを磁気検出部30に印加する。これにより、磁場源Aから離れた空間に広がる磁界を効率良く検出することが可能となる。
【0018】
このように、本実施形態による磁気センサ1は、互いに反対側を向いた集磁面11a,21aを用いて空間に広がる磁界を集磁していることから、例えば、障害物の存在により磁場源Aに近接させることが困難な場合であっても、微弱な磁界を磁場源Aから離れた位置で検出することが可能となる。
【0019】
<第2の実施形態>
図3及び
図4は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の構造を説明するための略斜視図である。
【0020】
図3及び
図4に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、磁気検出部30としてセンサチップが用いられているとともに、センサチップを搭載する基板40と、基板40及び磁性体20を支持する支持体50を備えている点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
基板40はxz面を主面とし、その主面に磁気検出部30を構成するセンサチップと、磁性体10の磁気結合部12及び磁性体20の磁気結合部22a,22bが載置される。磁性体20は、磁気結合部22a,22bが2つに分割されている。支持体50はxy面を主面とし、主面に基板40及び磁性体20が支持される。
【0022】
図5は、磁気検出部30を構成するセンサチップと磁性体10,20を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【0023】
図5に示すように、磁気検出部30を構成するセンサチップは、yz面を構成する素子形成面31及び裏面32と、xy面を構成する側面33,34と、xz面を構成する側面35,36とを有している。センサチップの素子形成面31上には、後述する感磁素子及び磁性体層M1~M3が形成されている。センサチップの側面36は、基板40と向かい合う面である。
【0024】
磁性体10の磁気結合部12を構成する部分はx方向を長手方向とする棒状体であり、そのx方向における一端は、磁性体層M1の一部を覆うよう素子形成面31のz方向における略中央部に位置決めされている。磁性体20は、x方向に延在する領域23を有している。領域23のセンサチップ側における端部は、2つに分割されてx方向に延在し、さらに互いに向かい合うようz方向に折れ曲がる形状を有している。z方向に折れ曲がった部分は、磁性体20の磁気結合部22a,22bを構成する。磁気結合部22a,22bは、それぞれ磁性体層M2,M3の一部を覆う。
【0025】
図6は磁気検出部30を構成するセンサチップの略平面図であり、
図7は
図6のB-B線に沿った略断面図である。
【0026】
図6及び
図7に示すように、センサチップの素子形成面31には、4つの感磁素子R1~R4が形成されている。感磁素子R1~R4は、磁束の向きによって電気抵抗が変化する素子であれば特に限定されず、例えばMR素子などを用いることができる。感磁素子R1~R4の固定磁化方向は、互いに同じ向き(例えばz方向におけるプラス側)に揃えられている。感磁素子R1~R4は絶縁層37で覆われており、絶縁層37の表面には、パーマロイなどからなる磁性体層M1~M3が形成されている。磁性体層M1~M3は絶縁層38で覆われている。そして、磁性体層M1~M3のうち、y方向における一方側(
図7における上側)に位置する部分を磁性体層M11,M21,M31と定義し、y方向における他方側(
図7における下側)に位置する部分を磁性体層M12,M22,M32と定義した場合、平面視で(x方向から見て)、感磁素子R1は磁性体層M11と磁性体層M21の間に位置し、感磁素子R2は磁性体層M12と磁性体層M22の間に位置し、感磁素子R3は磁性体層M11と磁性体層M31の間に位置し、感磁素子R4は磁性体層M12と磁性体層M32の間に位置している。これにより、磁気ギャップG1~G4を通過する磁界が感磁素子R1~R4に印加される。ここで、感磁素子R1,R2に印加される磁界の向きと、感磁素子R3,R4に印加される磁界の向きは、互いに180°異なることから、感磁素子R1~R4をブリッジ接続することにより、磁性体10を介して印加される磁束の向き及び強度を検出することができる。
【0027】
但し、本発明において、各感磁素子R1~R4を2つの磁性体層間に配置することは必須でなく、2つの磁性体層からなる磁気ギャップG1~G4の近傍、つまり、磁気ギャップG1~G4によって形成される磁路上に各感磁素子R1~R4が配置されていれば足りる。また、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4の幅よりも広い必要はなく、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4よりも狭くても構わない。
【0028】
図6及び
図7において、符号12で示す領域は磁性体10の磁気結合部12によって覆われる領域を示し、符号22a,22bで示す領域は磁性体20の磁気結合部22a,22bによって覆われる領域を示している。
図6及び
図7に示すように、磁性体10の磁気結合部12は磁性体層M1を覆い、磁性体20の磁気結合部22a,22bは磁性体層M2,M3を覆う。
【0029】
このような構成により、磁性体10の集磁面11aを介して集磁した磁束は、磁性体層M1~M3を介して磁性体20の集磁面21aへと通る。そして、磁性体層M1~M3によって構成される磁気ギャップG1~G4に感磁素子R1~R4が配置されることから、磁場源Aから離れた空間に広がる磁界を効率良く検出することが可能となる。
【0030】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態による磁気センサ3の構造を説明するための略斜視図である。
【0031】
図8に示すように、第3の実施形態による磁気センサ3は、磁性体10,20の集磁部11,21が磁気結合部12,22からy方向の両側に延在する点において、第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。その他の基本的な構成は第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
図8に示す磁気センサ2が例示するように、磁性体10,20の集磁部11,21をy方向の両側に延在させれば、集磁面11a,21aの面積が増大することから、磁場源Aから離れた空間に広がる磁界をより高感度に検出することが可能となる。
【0033】
<第4の実施形態>
図9は、本発明の第4の実施形態による磁気センサ4の構造を説明するための略斜視図である。
【0034】
図9に示すように、第4の実施形態による磁気センサ4は、磁性体10,20の集磁部11,21が磁気結合部12,22からy方向だけでなく、z方向にも延在する点において、第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。その他の基本的な構成は第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
図9に示す磁気センサ4が例示するように、磁性体10,20の集磁部11,21のz方向における幅を拡大すれば、集磁面11a,21aの面積が増大することから、磁場源Aから離れた空間に広がる磁界をより高感度に検出することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1~4 磁気センサ
10,20 磁性体
11,21 集磁部
11a,21a 集磁面
11b,21b 裏面
12,22,22a,22b 磁気結合部
23 領域
30 磁気検出部
31 素子形成面
32 裏面
33~36 側面
37,38 絶縁層
40 基板
50 支持体
A 磁場源
G1~G4 磁気ギャップ
M1~M3,M11,M21,M31,M12,M22,M32 磁性体層
R1~R4 感磁素子
φ 磁束