(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152039
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】配管カバー部材及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
A47B 77/06 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A47B77/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054654
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】間辺 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 仁郎
【テーマコード(参考)】
3B260
【Fターム(参考)】
3B260FA02
(57)【要約】
【課題】キッチンキャビネットのシンク用給排水管の異なる配管位置に対応して取り付けることができる配管カバー部材を提供する。
【解決手段】配管カバー部材は、床面に設置されるキャビネット本体と当該キャビネット本体の上面に据え付けられるシンクとを有するキッチンキャビネットの内部に前記キャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材であって、折り曲げ加工によりキッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成して折り曲げられる板状部材を備え、その板状部材は、床面上からシンクに延びる給排水管が段形状における段上面部と床面との間に形成される空間を通るように設置され、その板状部材は、折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が給排水管の床面上の配管位置に応じて変更可能に折り曲げられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるキャビネット本体と当該キャビネット本体の上面に据え付けられるシンクとを有するキッチンキャビネットの内部に前記キャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材において、
折り曲げ加工により前記キッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成して折り曲げられる板状部材を備え、
前記板状部材は、前記床面上から前記シンクに延びる給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に形成される空間を通るように設置され、
前記板状部材は、前記折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が前記給排水管の前記床面上の配管位置に応じて変更可能に折り曲げられることを特徴とする配管カバー部材。
【請求項2】
前記板状部材は、前記折り曲げ加工により、前記給排水管が前記床面を貫通する位置より前記手前側で折り曲げられることを特徴とする請求項1に記載の配管カバー部材。
【請求項3】
前記板状部材は、その前記段形状における段下面部の手前側端部が前記キャビネット本体の前記底面板の端面と当接し、その前記段上面部の奥側端部が前記キャッビネット本体の前記背面板に当接するように取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管カバー部材。
【請求項4】
前記板状部材の前記手前側端部が垂直に折り曲げられて、前記底面板の端面と当接する手前側当接面が形成され、前記板状部材の前記奥側端部が垂直に折り曲げられて、前記背面板の内面と当接する奥側当接面が形成されることを特徴とする請求項3に記載の配管カバー部材。
【請求項5】
前記板状部材は、プラスチックダンボールであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の配管カバー部材。
【請求項6】
前記キッチンキャビネットは、前記キャビネット本体と連結して床面に設置される別のキャビネット本体を有し、
前記板状部材は、前記床面上に延びる前記給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に形成される空間を通るように設置されて、前記別のキャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の配管カバー部材。
【請求項7】
床面に設置されるキャビネット本体と当該キャビネット本体の上面に据え付けられるシンクとを有するキッチンキャビネットの内部に前記キャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材の取付方法において、
板状部材を折り曲げ加工して、当該板状部材に前記キッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成する形成工程と、
前記板状部材を、前記床面上から前記シンクに延びる給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に設けられる空間を通るように取り付ける取付工程とを有し、
前記形成工程では、折り曲げ加工によって前記板状部材の折り曲げられる部位が前記給排水管の前記床面上の配管位置に応じて変更されることを特徴とする配管カバー部材の取付方法。
【請求項8】
前記板状部材は、前記折り曲げ加工により、前記給排水管が前記床面を貫通する位置より前記手前側で折り曲げられることを特徴とする請求項7に記載の配管カバー部材の取付方法。
【請求項9】
前記板状部材は、その前記段形状における段下面部の手前側端部が前記キャビネット本体の前記底面板の端面と当接し、その前記段上面部の奥側端部が前記キャッビネット本体の前記背面板に当接するように取り付けられることを特徴とする請求項7又は8に記載の配管カバー部材の取付方法。
【請求項10】
前記板状部材の前記手前側端部が垂直に折り曲げられて、前記底面板の端面と当接する手前側当接面が形成され、前記板状部材の前記奥側端部が垂直に折り曲げられて、前記背面板の内面と当接する奥側当接面が形成されることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の配管カバー部材の取付方法。
【請求項11】
前記板状部材は、プラスチックダンボールであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の配管カバー部材の取付方法。
【請求項12】
前記キッチンキャビネットは、前記キャビネット本体と連結して床面に設置される別のキャビネット本体を有し、
前記板状部材は、前記床面上に延びる前記給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に形成される空間を通るように設置されて、前記別のキャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置されることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の配管カバー部材の取付方法。
【請求項13】
既設のキッチンキャビネットを取り外す工程と、
当該既設のキッチンキャビネットが取り外された床面上に延びる給排水管の配管位置を露出される工程と、
前記給排水管の配管位置に応じて、板状部材を折り曲げ加工して請求項1乃至5のいずれかに記載の配管カバー部材を作成する工程と、
前記既設のキッチンキャビネットが取り外された位置に新規のキッチンキャビネットを設置する工程と、
前記新規のキッチンキャビネットの背面と底面とをつなぐように前記配管カバー部材を取り付ける工程とを備えることを特徴とするキッチンキャビネットの設置方法。
【請求項14】
天井面及び壁面に接して取り付けられる吊戸棚の内部に前記吊戸棚の天面板と背面板にわたって配置される梁カバー部材において、
折り曲げ加工により前記吊戸棚の手前側と奥側で当該奥側が低くなる段形状を形成して折り曲げられる板状部材を備え、
前記板状部材は、前記天井面及び前記壁面から張り出して前記天井面及び前記壁面に沿って延びる梁が前記段形状における段下面部と前記天井面との間に形成される空間を通るように設置され、
前記板状部材は、前記折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が前記梁の前記天井面及びからの張り出し位置に応じて変更可能に折り曲げられることを特徴とする梁カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に設置されるキッチンキャビネットのシンク下内部でキャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シンクを備えたキッチンキャビネットにおいては、シンク用の給排水管は、キッチンキャビネット内に導入し、この給排水管をキッチンキャビネット下方に挿通し、さらにキッチンキャビネット底部から床下に導出する。
【0003】
この場合、キッチンキャビネットのシンク下内部を給排水管が通るため、シンク下内部の収納空間と給排水管の配設空間とを画するため、給排水管をカバーするための繋ぎ部材(配管カバー部材)がキッチンキャビネットの底部奥側に配設することが従来より提案されている(特許文献1乃至7)。
【0004】
繋ぎ部材(配管カバー部材)は、一般的には、シンク下内部の給排水管の配管位置をカバーするために、キッチンキャビネットの底面奥側に段を形成する断面L字状の部材であり、キッチンキャビネットの背面板と底面板とをつなぐようにして取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-192130号公報
【特許文献2】特開2000-106961号公報
【特許文献3】特開2001-046161号公報
【特許文献4】特開2004-143545号公報
【特許文献5】特開2010-284386号公報
【特許文献6】特開2014-064786号公報
【特許文献7】特開2016-221015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
住居リフォームにおいて、既設のキッチンキャビネットを新規のキッチンキャビネットに入れ替えるキッチンリフォームを行う場合、シンクとつながる給排水管のシンク下内部の配管位置に応じて、その配管位置をカバーする配管カバー部材を用意する必要がある。
【0007】
図16は、キッチンキャビネットのシンク下の給排水管の配管位置の例を上面から見た模式的な図である。キッチンキャビネットのシンク下に延びる給排水管(給水管、給湯管、排水管を総称する)が貫通する床面の孔の位置が示される。給排水管の配管位置(特に、給排水管が床下から床面に通ずる孔の位置)は、各住戸のキッチンレイアウトや配管設計に応じてさまざまな仕様となっており、一例として図示されるように、壁又はキッチンキャビネットの背面位置からの距離が住戸毎に異なっていることが多々ある。
図16(a)では、給排水管の配管位置は壁側(奥側)に比較的近い位置であり、
図16(b)では、
図16(a)と比較して壁側より離れて手前側にずれて給排水管が配管される。リフォームでのキッチンキャビネットの設置現場では、既設のキッチンキャビネットを取り外して解体するまで、リフォーム住戸における正確な配管位置を把握することはできないため、リフォーム前の配管位置の事前確認は困難であり、リフォーム当日の現場にて初めて配管位置の確認が行われることもある。
【0008】
リフォーム現場にて給排水管のさまざまな配管位置に対応するために、例えば、配管位置のあらゆるパターンに合わせたサイズ、形状の配管カバー部材をあらかじめ用意することは、現実的ではなく、コスト負担も大きくなる。また、配管位置のさまざまなパターンすべてを包含するように、シンク下の空間を最大に占有する配管カバー部材を用意する場合、それによってシンク下の収納空間の容積が相対的に小さくなり、また収納空間として利用できないデッドスペースが生じるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、キッチンキャビネットのシンク用給排水管の異なる配管位置に対応して取り付けることができる配管カバー部材及びその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の配管カバー部材は、床面に設置されるキャビネット本体と当該キャビネット本体の上面に据え付けられるシンクとを有するキッチンキャビネットの内部に前記キャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材であって、折り曲げ加工により前記キッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成して折り曲げられる板状部材を備え、前記板状部材は、前記床面上から前記シンクに延びる給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に形成される空間を通るように設置され、前記板状部材は、前記折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が前記給排水管の前記床面上の配管位置に応じて変更可能に折り曲げられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の配管部材の取付方法は、床面に設置されるキャビネット本体と当該キャビネット本体の上面に据え付けられるシンクとを有するキッチンキャビネットの内部に前記キャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される配管カバー部材の取付方法であって、板状部材を折り曲げ加工して、当該板状部材に前記キッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成する形成工程と、前記板状部材を、前記床面上から前記シンクに延びる給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に設けられる空間を通るように取り付ける取付工程とを有し、前記形成工程では、折り曲げ加工によって前記板状部材の折り曲げられる部位が前記給排水管の前記床面上の配管位置に応じて変更されることを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
例えば、前記板状部材は、前記折り曲げ加工により、前記給排水管が前記床面を貫通する位置より前記手前側で折り曲げられる。また、好ましくは、前記板状部材は、その前記段形状における段下面部の手前側端部が前記キッチンキャビネットの前記底面板の端面と当接し、その前記段上面部の奥側端部が前記キッチンキャッビネットの前記背面板に当接するように取り付けられる。その場合、前記板状部材の前記手前側端部が垂直に折り曲げられて、前記底面板の端面と当接する手前側当接面が形成され、前記板状部材の前記奥側端部が垂直に折り曲げられて、前記背面板の内面と当接する奥側当接面が形成されるようにしてもよい。また、前記板状部材は例えばプラスチックダンボールである。また、前記キッチンキャビネットがキャビネット本体と連結して床面に設置される別のキャビネット本体を有する場合、前記板状部材は、前記床面上に延びる前記給排水管が前記段形状における段上面部と前記床面との間に形成される空間を通るように設置されて、前記別のキャビネット本体の底面板と背面板にわたって配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配管カバー部材及びその取付方法によれば、キッチンキャビネットのリフォーム現場において、シンクにつながる給排水管の配管位置に応じて、板状部材の折り曲げ部位を臨機応変に変更することができ、現場対応力が向上するとともに、キャビネット本体内部の収納空間を最大となるように配管カバー部材を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】キッチンキャビネットのシンクを上面から見た平面図である。
【
図2】キッチンキャビネット本体の内部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態における配管カバー部材の構成するための板状部材を示す外観斜視図である。
【
図4】板状部材を折り曲げて形成された本発明の実施の形態における配管カバー部材の形状例を示す図である。
【
図5】
図1のキッチンキャビネットのA-A線断面図であって、第1の配管位置に対応する配管カバー部材が取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】
図5にかかる配管カバー部材を模式的に示す斜視図である。
【
図7】配管カバー部材30の別の固定方法を示す図である。
【
図8】
図1のキッチンキャビネットのA-A線断面図であって、第2の配管位置に対応する配管カバー部材30が取り付けられた状態を示す図である。
【
図9】
図7にかかる配管カバー部材を模式的に示す斜視図である。
【
図10】第3の配管位置を示すキッチンキャビネットの上面図である。
【
図11】
図10のキッチンキャビネットのB-B線断面図であって、第3の配管位置に対応する配管カバー部材30が取り付けられた状態を示す概略断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態における配管カバー部材30が取り付けられるキッチンキャビネットの設置方法の処理フローチャートである。
【
図13】折り曲げ加工可能な板状部3の形状例を示す斜視図である。
【
図14】梁が張り出した位置に設置される吊戸棚60を例示する図である。
【
図15】梁をカバーして吊戸棚内部に配置される梁カバー部材としての配管カバー部材30を示す断面図である。
【
図16】キッチンキャビネットのシンク下の給排水管の配管位置の例を上面から見た模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の実施の形態について、具体的な図に基づいて説明する。
【0016】
図1は、キッチンキャビネットのシンクを上面から見た平面図である。シンク12は、キャビネット本体10の上面に据え付けられ、シンク12には、シンク下から延びる給水管が接続する水洗カラン11が配置され、シンク12の底面には、シンク下に延びる排水管と接続する排水孔14が設けられる。キャビネット本体10は、扉や引き出し面を含む前面板10a、左側板10b、右側板10c、背面板10d及び底面板10e(
図2参照)を有して箱型を形成する調理作業台である。
【0017】
図2は、
図1のキャビネット本体10の面構成を示す斜視図である。
図2では、シンク12及び前面板10aの図示は省略され、キャビネット本体10の面構成が示される。箱体を形成して床面に設置されるキャビネット本体10において、底面板10eは、その奥方向端部が背面板10dが立設する奥行き位置まで延設されていない比較的短い板体であり、また、背面板10dも、その下端部が底面板10eの載置面の高さ位置まで下がらない比較的短い長さの板体で形成され、これら短い背面板10d及び底面板10eにより、キャビネット本体10の奥方向底部には、開口部分18が形成される。
【0018】
本発明の実施の形態における配管カバー部材は、この開口部分18を塞いで背面板10dと底面板10eとをつなぐように配置される部材であって、開口部分18を通る給排水管を覆うための空間を形成する。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態における配管カバー部材構成するための板状部材3を示す外観斜視図であり、
図4は、板状部材を折り曲げて形成された本発明の実施の形態における配管カバー部材30の形状例を示す図である。
【0020】
配管カバー部材30は、一枚の折り曲げ可能な板状部材3で形成される。板状部材3は、例えば木材、合成樹脂、金属(アルミニウムなど)の可撓性を有する折り曲げ可能な素材で形成される。特に、板状部材3について、例えばポリプロピレン製のいわゆるプラスチックダンボールを用いることができる。
【0021】
キッチンリフォームの際に新規のキッチンキャビネットの設置を行う現場で、設置作業員が、既設のキッチンキャビネットを取り外した後に、床面から延びる給排水用の配管を露出させて、その配管位置を確認する。そして、設置作業員により、板状部材3はその配管位置に応じて、平板状の板状部材3を折り曲げられて、段形状を有する配管カバー部材30が作成される。板状部材3は、折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が給排水管の配管位置に応じて変更可能に折り曲げられる。
【0022】
配管カバー部材30の段形状は、奥行方向に向かって延びる水平な段下面部30a、それから上方向に折れ曲がって高さを作る垂直面部30b、さらにそれから水平に延びる段上面部30cによって形成される。
【0023】
好ましくは、段下面部30aの手前側端部は、底面板10eの端面と当接する手前側当接面30dとなるよう折り曲げ加工されて垂直面を形成し、また、段上面部30cの奥側端部は、背面板10dの内面と当接する奥側当接面30eとなるよう折り曲げ加工されて垂直面を形成する。
図4では、手前側当接面30d及び奥側当接面30eは、上向きに折り曲げられた垂直面が例示されるが、下向きに折り曲げられて垂直面を形成する構成でもよい。
【0024】
図5は、
図1のキッチンキャビネットのA-A線断面図であって、第1の配管位置に対応する配管カバー部材30が取り付けられた状態を示す概略断面図である。また、
図6は、
図5にかかる配管カバー部材30を模式的に示す斜視図である。
図5及び
図6では、説明のために、排水管20の配管位置を例に、配管カバー部材の構造・形状について例示するが、互いに近接する給水管(給湯管も含む)と排水管の両方をカバーするように配管カバー部材30は作成される。
【0025】
配管カバー部材30は、排水管20が床下から床面42の孔44を貫通する位置から床面42上に沿って延びる通路のための空間46を確保するように、排水管20が床面を貫通する位置より手前側で折り曲げられて段形状に形成され、床面42に沿って延びる排水管20をカバーするように取り付けられる。
【0026】
図5及び
図6に示される例では、排水管20が貫通する床面42の孔44が、キャビネット本体10の比較的手前側(前面板10a側)に設けられているため、板状部材3は、比較的長い水平面となる段上面部30cが形成されるように折り曲げられて配管カバー部材30を作成する。
【0027】
配管カバー部材30の手前側当接面30dを底面板10eの端面に嵌合するように当接させ、奥側当接面30eは背面板10dの内面と当接させて、配管カバー部材30を取り付ける。配管カバー部材30の可撓性を利用して、手前側当接面30dと奥側当接面30eは両側でそれぞれ底面板10eと背面板10dとを押圧するように嵌め込むことで、ネジやボルトなどの固定手段を用いることなく簡易に配管カバー部材30を固定することができる。
【0028】
図7は、配管カバー部材30の別の固定方法を示す図である。上述したように、配管カバー部材30の段下面部30aの手前側端部及び段上面部30cの奥側端部を折り曲げ加工せずに、代わりに、底面板10eと背面板10dに溝部(凹部又は切り欠き部)40を設け、段下面部30aの手前側端部及び段上面部30cの奥側端部それぞれを対応する溝部40に差し込むようにして、配管カバー部材30を底面板10eと背面板10dとに固定するようにしてもよい。溝部40は、配管カバー部材30のサイズに合わせて、リフォーム現場にて現地加工に作成することができる。
図7に示す固定方法においても、ネジやボルトなどの固定手段を用いることなく、簡易な構造にて配管カバー部材を固定することができる。
【0029】
図8は、
図1のキッチンキャビネットのA-A線断面図であって、第2の配管位置に対応する配管カバー部材30が取り付けられた状態を示す図である。また、
図9は、
図8にかかる配管カバー部材を模式的に示す斜視図である。
図8及び
図9についても、上記同様に、説明のために、給排水管20の配管位置を例に、配管カバー部材の構造・形状について例示するが、互いに近接する給水管(給湯管も含む)と排水管の両方をカバーするように配管カバー部材30は作成される。また、配管カバー部材30は上記固定方法により固定される。
【0030】
図8及び
図9において、
図5及び
図6の例と同様に、配管カバー部材30は、排水管20が床下から床面42の孔を貫通する位置から床面上に沿って延びる空間46を確保するように、排水管20が床面を貫通する位置より手前側で折り曲げられて段形状に形成され、床面42に沿って延びる排水管20をカバーするように取り付けられる。
【0031】
図8及び
図9に示される例では、
図5及び
図6の例と比較して、排水管20が貫通する床面42の孔44が、キャビネット本体10の奥側に設けられているため、比較的短い水平長さの段上面部30c(相対的に段下面部30aの長さが長くなる)を有する段形状が形成されるように折り曲げて配管カバー部材30を作成する。
【0032】
これにより、シンク下の収納空間のより拡張した容積を確保することができ、収納空間として利用できないデッドスペースが生じることはなく、シンク下の空間を最大限に有効利用することができる。
【0033】
図10は、第3の配管位置を示すキッチンキャビネットの上面図である。また、
図11は、
図10のキッチンキャビネットのB-B線断面図であって、第3の配管位置に対応する配管カバー部材30が取り付けられた状態を示す概略断面図である。
図10に例示するキッチンキャビネットは、3つのキャビネット本体10-1、10-2、10-3を連結して構成され、天板10fが3つのキャビネット本体上にわたって載置され、キャビネット本体10-1にはシンク12が据え付けられ、キャビネット本体10-3には加熱調理台(ガスコンロ、IHクッキングヒータ等)16が設置されている。第3の配管位置は、いわゆる横引き配管に対応する配管位置であって、排水管20は、側壁面からキャビネット本体10-3の左側板10bを貫通して床面に沿ってキャビネット本体10-3、10-2、10-1の内部を側方向(間口方向)に延設されシンク12の下方位置から上方にさらに延びて排水孔14につながっている。
【0034】
排水管20が延設されているキャビネット本体10-1、10-2、10-3それぞれの内部領域における配管位置に応じてキャビネット本体ごとに個別に折り曲げ加工によりキッチンキャビネットの手前側と奥側で当該奥側が高くなる段形状を形成するように板状部材3を折り曲げて各キャビネット本体ごとの配管カバー部材30が作成される。各配管カバー部材30は、床面上に延びる排水管20が段形状における段上面部と床面との間に形成される空間を通るように設置されて、各キャビネット本体の底面板10eと背面板10dにわたって配置される。各キャビネット本体での配管位置に応じて、キャビネット本体ごとに配管カバー部材30の形状(折り曲げ部位の位置)を最適化することができる。
【0035】
図12は、本発明の実施の形態における配管カバー部材30が取り付けられるキッチンキャビネットの設置方法の処理フローチャートである。キッチンリフォームにおいて、新規のキッチンキャビネットに取り替えるリフォームを実施する際、作業員は、折り曲げ加工されていない一枚板状の板状部材3を用意し、リフォーム現場に搬入しておく。搬入された板状部材3は、設置寸法に合わせて、適宜切断などによりサイズ合わせる加工が施される。リフォーム現場にて、キッチンキャビネットのサイズ(特に、
図2の開口部18のサイズ)に左右されずにサイズ合わせ加工することができる。
【0036】
キッチンキャビネットの設置作業では、まず、既設のキッチンキャビネットを取り外し(S100)、給排水管の配管位置を露出させる(S102)。作業員は、給排水管の配置位置を確認し、リフォーム現場にて、その配管位置に応じて板状部材3を折り曲げ加工して段形状を形成して配管カバー部材30を作成する(S104)。また、当接面30d、30eの折り曲げ加工もリフォーム現場にて行われる。
【0037】
既設のキッチンキャビネットが取り外された位置に新規のキッチンキャビネットを設置し(S106)、給排水管の接続作業を行った後、配管カバー部材30を取り付ける(S108)。配管カバー部材30は、上述の通り、新規のキッチンキャビネットの背面板10dと底面板10eとの間に空間46を設けて両板にわたるように取り付けられる。
【0038】
図13は、折り曲げ加工可能な板状部3の形状例を示す斜視図である。
図13(a)に示すように、板状部材3は、表面、裏面のそれぞれに、所定間隔ごとの折り曲げ方向に延びる複数の折り曲げ用溝50があらかじめ設けられた平板であり、給排水管の配管位置に応じて、それをカバーする位置に対応する溝に沿って折り曲げられる。
【0039】
板状部材3は、
図13(b)、
図13(c)に示されるように、段ボール構造のような折り曲げ可能な断面構造を有する板状部材3で形成されてもよい。例えば、
図13(b)に示すように、段ボール構造の板状部材3は、表ライナ52と裏ライナ54とその間に設けられるトラス構造(波形)の中芯(中空層)56とを貼り合わせた3層断面構造の板状部材であり、または、
図13(c)に示すように、表ライナと裏ライナとその間に設けられるリブ状の中芯(中空層)58とを一体成型により形成する3層断面構造の板状部材である。ダンボール構造の板状部材3は、好ましくはいわゆるプラスチックダンボールであり、例えばハーフカット加工、Vカット加工、熱罫線加工、ヒータープレス加工などのさまざまな加工処理方法により折り曲げることができる。プラスチックダンボールは、任意の位置で折り曲げることができ、リフォーム現場での加工も容易であり、本発明の配管カバー部材30に特に適した素材である。
【0040】
板状部材3は、折り曲げ加工前は平板であるので、搬入・運搬の際の取り扱いも容易であり、運搬容量、運搬コストの抑制できる。また、現場ごとの仕様に合わせた配管カバー部材を個別に製作する必要がなく、配管カバー部材を工場で製造するコストを抑えることができる。
【0041】
図14及び
図15は、本実施の形態における配管カバー部材30を吊戸棚に使用する場合を例示する図であり、
図14は梁が張り出した位置に設置される吊戸棚60を例示する図、
図15は梁をカバーして吊戸棚内部に配置される梁カバー部材としての配管カバー部材30を示す断面図である。本実施の形態における配管カバー部材30は、キッチンキャビネット内部の配管隠し用の用途に限らず、通常、キッチンキャビネットの上部に天井面及び壁面に接して取り付けられる吊戸棚60の内部に梁カバー部材として配置することができる。
【0042】
図14に示すように、吊戸棚60は、扉や引き出し面を含む前面板60a、側壁面に接する左側板(図示せず)、右側板60c、背面板60d(
図15参照)、底面板60e及び天井面に接する上面板60f(
図15参照)及びを有して箱型に形成される収納棚である。側方向(間口方向)に沿って延びる梁70が天井面及び背壁面から張り出した位置に吊戸棚60が設置される場合、梁カバー部材としての配管カバー部材30は、吊戸棚60内部を間口方向に延びる梁をカバーするように配置される。
【0043】
梁カバー部材としての配管カバー部材30は、リフォーム現場において、既設の吊戸棚を取り外した後に梁の張り出し位置を確認し、その張り出し位置に応じて、リフォーム現場において、板状部材3を折り曲げ加工して作成される。板状部材3は、折り曲げ加工によって折り曲げられる部位が梁の張り出し位置に応じて変更可能に折り曲げられるものであって、折り曲げ加工により作成された梁カバー部材としての配管カバー部材30は、新たに設置された吊戸棚60の内部に配置される。具体的には、
図15に示すように、梁カバー部材としての配管カバー部材30は、折り曲げ加工により、吊戸棚60に配置した場合に、手前側と奥側で当該奥側が低くなる段形状を形成して折り曲げられ、梁70が段形状における段下面部30aと天井面との間に形成される空間を通るように、吊戸棚60の上面板60fと背面板60dにわたって配置される。上記実施の形態と同様に、梁カバー部材としての配管カバー部材30は、その可撓性を利用して、梁カバー部材としての配管カバー部材30の手前側当接面30dを吊戸棚60の底面板60eの端面に嵌合するように当接させ、奥側当接面30eは吊戸棚60の背面板60dの内面と当接させて取り付けられる。
【0044】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
3:板状部材、10:キャビネット本体、10a:前面板、10b:左側面板、10c:右側面板、10d:背面板、10e:底面板、11:水洗カラン、12:シンク、14:排水口、18:開口、20:排水管、30:配管カバー部材(梁カバー部材)、30a:段下面部、30b:垂直面部、30c:段上面部、30d:手前側当接面、30e:奥側当接面、40:溝部(凹部又は切り欠き部)、42:床面、44:孔、46:空間、50:折り曲げ用溝、52:表ライナ、54:裏ライナ、56:中芯、58:中芯、60:吊戸棚、70:梁