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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152053
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】着用具および冷却システム
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20221004BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054678
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】506393422
【氏名又は名称】ハイドサイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】吉井 秀雄
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC18
3B011AC21
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】外気との通気性が抑制された衣服を着用する場合であっても衣服内の環境を快適にすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、外気との通気性が抑制された防護服100内に着用する着用具10であって、防護服100内で空気を対流させるための送風デバイス50を、防護服100内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持することができる前側保持部12を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気との通気性が抑制された衣服内に着用する着用具であって、
前記衣服内で空気を対流させるための送風デバイスを、前記衣服内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持することができる保持部を備えることを特徴とする着用具。
【請求項2】
着用者の左右の肩にそれぞれ配置される右側肩部および左側肩部を備え、
前記保持部は、前記右側肩部および前記左側肩部により吊り下げられることを特徴とする請求項1に記載の着用具。
【請求項3】
前記保持部は、
前記右側肩部および前記左側肩部により着用者の前側に吊り下げられ、第1の送風デバイスを着用者の前側で着脱可能に保持することができる前側保持部であることを特徴とする請求項2に記載の着用具。
【請求項4】
前記保持部は、更に、
前記右側肩部および前記左側肩部により着用者の後側に吊り下げられ、第2の送風デバイスを着用者の後側で着脱可能に保持することができる後側保持部であることを特徴とする請求項3に記載の着用具。
【請求項5】
前記保持部は、更に、
前記前側保持部および前記後側保持部により着用者の右側に吊り下げられ、第3の送風デバイスを着用者の右側で着脱可能に保持することができる右側保持部と、
前記前側保持部および前記後側保持部により着用者の左側に吊り下げられ、第4の送風デバイスを着用者の左側で着脱可能に保持することができる左側保持部であることを特徴とする請求項4に記載の着用具。
【請求項6】
前記右側保持部は、前記前側保持部および前記後側保持部の少なくとも何れか一方との間で連結部を介して離脱可能に連結され、
前記左側保持部は、前記前側保持部および前記後側保持部の少なくとも何れか一方との間で連結部を介して離脱可能に連結されていることを特徴とする請求項5に記載の着用具。
【請求項7】
前記連結部は、第1の連結部材と、第2の連結部材とを有し、
前記第1の連結部材と前記第2の連結部材とが係合することで連結され、係合された状態では相対的に回動可能であることを特徴とする請求項6に記載の着用具。
【請求項8】
外気との通気性が抑制された衣服内に着用する着用具と、前記衣服内で空気を対流させるための送風デバイスと、を備える冷却システムであって、
前記着用具は、
前記送風デバイスを、前記衣服内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持することができる保持部を備えることを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気との通気性が抑制された衣服内に着用する着用具および冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外気との通気性が抑制された衣服として防護服が知られている。防護服は、化学薬品・放射能・ウイルス・血液・体液、粉塵等から身を守るために、着用者の全身を覆い外気との通気性を遮断することを目的としている。したがって、一般的に快適と感じる外気温であったとしても防護服を着用した場合には、防護服内の温度が上昇しやすい上に、着用者の発汗による蒸れが生じるために湿度も上昇しやすい。そのため、防護服を着用する着用者は、熱中症を誘発してしまったり、特に生理的に不快と感じたりしてしまう。増して、外気温度が高いときに防護服を着用した場合には、着用者は更に劣悪な環境で作業することになってしまう。このようなことから、本来であれば防護服を着用しなればならない作業、あるいは、着用することが好ましい作業であっても、着用者は防護服を正しく着用しない、あるいは、着用自体しない虞がある。
【0003】
特許文献1には、衣服の後見頃に衣服内に空気を供給するファンが取り付けられた空調衣服が開示されている。特許文献1の空調衣服は、ファンにより外気を強制的に衣服内に供給することで、服地と身体又は下着との間の空間において空気が身体の表面に沿って流通するようになり、着用者の汗が気化する。このとき、熱が身体から奪われるため、着用者の身体を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/061088号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された空調衣服は外気を衣服内に供給する構造であることから、外気との通気性を遮断することを目的とした防護服等の外気との通気性が抑制された衣服には用いることができないという問題がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、外気との通気性が抑制された衣服を着用する場合であっても衣服内の環境を快適にすることができる着用具および冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外気との通気性が抑制された衣服内に着用する着用具であって、前記衣服内で空気を対流させるための送風デバイスを、前記衣服内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持することができる保持部を備えることを特徴とする。
本発明は、外気との通気性が抑制された衣服内に着用する着用具と、前記衣服内で空気を対流させるための送風デバイスと、を備える冷却システムであって、前記着用具は、前記送風デバイスを、前記衣服内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持することができる保持部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外気との通気性が抑制された衣服を着用する場合であっても衣服内の環境を快適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の防護服の構成の一例を示す正面図である。
図2】第1実施形態の着用具の構成の一例を示す正面図である。
図3】第1実施形態の着用具の構成の一例を示す背面図である。
図4】第1実施形態の着用具の構成の一例を示す側面図である。
図5】第1実施形態の着用具の断面図である。
図6】前側連結部の構成の一例を示す図である。
図7】第1実施形態の着用具の断面図である。
図8】送風デバイスの構成の一例を示す図である。
図9】第2実施形態の着用具の構成の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態の着用具および冷却システムについて図面を参照して説明する。本実施形態の冷却システムは、後述する着用具10と、後述する送風デバイス50とを備える。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る着用具10について図1図8を参照して説明する。ここでは、着用者は外気と通気性が抑制された衣服の一例として防護服100内に着用具10を着用するものとする。
【0010】
図1は、着用者が着用具10の上に防護服100を着用した状態の一例を示す正面図である。
図1に示す防護服100は、化学防護服であって、酸、アルカリ、有機薬品、その他の気体、液体または粒子状の有害物質を取り扱う作業に従事するときに、化学物質の透過および浸透の防止を目的として着用される。また、図1に示す防護服100は、身体の全部又は大部分を防護する全身化学防護服である。ただし、防護服100は、化学防護服に限られず、バイオハザード対策用防護服、熱と火炎に対する防護服、切創・突き刺しに対する防護服、放射性物質による汚染に対する防護服、電気に対する防護服、寒冷に対する防護服、その他の防護服であってもよい。
【0011】
防護服100は、上衣101a(上半身に着る部分)と下衣101b(下半身に着る部分)とが一体で構成され、上衣101aにはフード102が設けられる。また、防護服100は、外気との通気性が遮断できるように例えば、ポリエチレン、不織布等を複数、積層した上で表裏面をポリマーコーティングしたような素材が用いられる。また、防護服100は、衣服の上に着用することを想定しているために着用者の身長に対してフィットする大きさよりも非常に余裕のある大きさに設定されている。
【0012】
図2は、本実施形態の着用具10を着用した状態の一例を示す正面図である。図3は、本実施形態の着用具10を着用した状態の一例を示す背面図である。図4は、本実施形態の着用具10を着用した状態の一例を示す側面図である。
着用具10は、防護服100内にあって、かつアンダーウェアの上に着用される。着用具10は、右側肩部11a、左側肩部11b、前側保持部12、後側保持部15、右側保持部18a、左側保持部18b、前側連結部19、後側連結部25を備える。
【0013】
右側肩部11a、左側肩部11bは、前側保持部12および後側保持部15を吊り下げた状態に支持するための部位である。右側肩部11a、左側肩部11bは略帯状であって、着用者の左右の肩にそれぞれ配置される。具体的には、右側肩部11aは、着用者の右側の胸上部から右肩を介して右側の背中上部までに亘って体表面に倣うように配置される。また、左側肩部11bは、着用者の左側の胸上部から左肩を介して左側の背中上部までに亘って体表面に倣うように配置される。
【0014】
右側肩部11a、左側肩部11bは、体表面に倣うように撓むことができる素材が用いられる。また、右側肩部11a、左側肩部11bは、厚手である一方で厚み方向および厚み方向に交差する方向に空気が通気する通気性がある素材が用いられる。本実施形態の素材は、透かして裏側のものを視認でき、無負荷時で厚みが例えば15mm~25mmであって厚み方向に加圧する負荷時で厚みが5mm以下に圧縮可能である。具体的には、右側肩部11a、左側肩部11bはメッシュ状のニットであることが好ましく、例えばラッセル生地やダブルラッセル生地を用いることができる。このように右側肩部11a、左側肩部11bに厚手の生地を用いることで、肩周辺の体表面と防護服100との間に空間が形成され、防護服100が体に密着するのを抑制したり、防護服100内の対流を可能にしたりすることができる。また、右側肩部11a、左側肩部11bに通気性のある生地を用いることで、防護服100内の対流を右側肩部11a、左側肩部11b内でも継続させて、右側肩部11a、左側肩部11bによって対流を遮断されないようにすることができる。なお、右側肩部11a、左側肩部11bのそれぞれ幅方向の両端はバインダーにより始末処理されている。
【0015】
前側保持部12は、着用者の前側、具体的には着用者の胸の位置に送風デバイス50を着脱可能に保持する部位である。前側保持部12は、送風デバイス50を着用者の周囲に着脱可能に保持する保持部の一例に対応する。図2に示すように、前側保持部12は、右側肩部11aの前端および左側肩部11bの前端に左右両側の中間生地13a、13bを介して吊り下げられることで、着用者の胸に配置される。前側保持部12は、左右の中間生地13a、13bの間に配置される。中間生地13a、13bは、前側保持部12が体表面にフィットするように布帛であることが好ましい。ただし、中間生地13a、13bを省略して、右側肩部11aの前端および左側肩部11bの前端に前側保持部12を直接、吊り下げてもよい。
【0016】
前側保持部12は、略矩形のポケット状であって、内部に送風デバイス50を収容することにより送風デバイス50を保持する。
図5は、図2に示すI-I線断面図であり、前側保持部12および後側保持部15の断面を示している。
前側保持部12は、体側に近い内側生地14aと体から離れた外側生地14bとが前後に位置し、両生地の上端を除く左右両端および下端が縫製等により結合されることで構成される。したがって、前側保持部12は、上方に左右方向に長い開口を有するために、開口を通して、送風デバイス50を着脱させることができる。送風デバイス50は、内側生地14aと外側生地14bとの間に挟まれた状態で保持される。
【0017】
内側生地14a、外側生地14bは、厚手である一方で厚み方向および厚み方向に交差する方向に空気が通気する通気性がある素材であって、上述した右側肩部11a、左側肩部11bと同じ素材が用いられる。具体的には、内側生地14a、外側生地14bはメッシュ状のニットであることが好ましく、例えばラッセル生地やダブルラッセル生地を用いることができる。このように内側生地14a、外側生地14bに厚手の生地を用いることで、胸周辺の体表面と防護服100との間に空間が形成され、防護服100が体に密着するのを抑制したり、防護服100内の対流を可能にしたりすることができる。また、内側生地14a、外側生地14bに厚手の生地を用いることで、変形した状態を維持することができる。具体的には、前側保持部12が送風デバイス50を保持した場合には、外側生地14bが送風デバイス50によって外側に押されることで、前側保持部12の開口の前後幅W(あるいは開口面積)が送風デバイス50を保持していないときの前後幅(あるいは開口面積)よりも広くなるように変形し、広い状態を維持することができる。また、内側生地14aに通気性のある生地を用いることで、後述するように送風デバイス50により内側生地14a内の空気も吸気することができることから、体表面近くでの空気の対流を可能することができる。また、内側生地14a、外側生地14bに通気性のある生地を用いることで、防護服100内の対流を内側生地14a、外側生地14b内でも継続させて、内側生地14a、外側生地14bによって対流を遮断されないようにすることができる。なお、内側生地14a、外側生地14bのそれぞれ上端は異なるバインダーにより始末処理されている。また、内側生地14a、外側生地14bの下端同士が同じバインダーにより始末処理されることで結合されている。
【0018】
後側保持部15は、着用者の後側、具体的には着用者の背中の位置に送風デバイス50および保冷剤60の少なくとも何れか一方を着脱可能に保持する部位である。後側保持部15は、送風デバイス50を着用者の周囲に着脱可能に保持する保持部の一例に対応する。図4に示すように、後側保持部15は、右側肩部11aの後端および左側肩部11bの後端に左右両側の中間生地16a、16bを介して吊り下げられることで、着用者の背中に配置される。後側保持部15は、左右の中間生地16a、16bの間に配置される。中間生地16a、16bは、後側保持部15が体表面にフィットするように布帛であることが好ましい。ただし、中間生地16a、16bを省略して、右側肩部11aの後端および左側肩部11bの後端に後側保持部15を直接、吊り下げてもよい。
【0019】
後側保持部15は、略矩形のポケット状であって、内部に送風デバイス50を収容することにより送風デバイス50を保持したり、保冷剤60を収容することにより保冷剤60を保持したりすることができる。後側保持部15は、送風デバイス50よりも外形寸法が大きい保冷剤60を収容できるように、横幅および高さが前側保持部12よりも大きい。本実施形態では後側保持部15が、保冷剤60を保持する場合について説明するが、送風デバイス50を保持してもよく、保冷剤60と送風デバイス50の両方を保持してもよい。なお、保冷剤60は、水や高吸水性樹脂等が扁平で直方体状の容器に充填され、冷凍された状態を長時間維持することができる。
【0020】
図5に示すように、後側保持部15は、体側に近い内側生地17aと体から離れた外側生地17bとが前後に位置し、両生地の上端を除く左右両端および下端が縫製等により結合されることで構成される。したがって、後側保持部15は、上方に左右方向に沿って長い開口を有するために、開口を通して、保冷剤60を着脱させることができる。保冷剤60は、内側生地17aと外側生地17bとの間に挟まれた状態で保持される。
内側生地17a、外側生地17bは、上述した前側保持部12の内側生地14a、外側生地14bと同じ素材が用いられる。したがって、後側保持部15でも、防護服100が体に密着するのを抑制したり、防護服100内の対流を可能にしたり、体表面近くでの空気の対流を可能したりすることができる。また、後側保持部15でも、開口の前後幅(あるいは開口面積)を広い状態に維持したり、対流を遮断されないようにしたりすることができる。
【0021】
右側保持部18aは、着用者の右側、具体的には着用者の右脇の位置に送風デバイス50および保冷剤60の少なくとも何れか一方を着脱可能に保持する部位である。左側保持部18bは、着用者の左側、具体的には着用者の左脇の位置に送風デバイス50および保冷剤60の少なくとも何れか一方を着脱可能に保持する部位である。右側保持部18a、左側保持部18bは、送風デバイス50を着用者の周囲に着脱可能に保持する保持部の一例に対応する。ここで、右側保持部18aと左側保持部18bは左右対称な構成であることから、以下では右側保持部18aについて説明する。
【0022】
図4に示すように、右側保持部18aは、前側保持部12の右側下端(より具体的には中間生地13aの下端)および後側保持部15の右側下端(より具体的には中間生地16aの下端)に、それぞれ前側連結部19および後側連結部25を介して吊り下げられることで、着用者の右脇に配置される。
【0023】
図6は、前側連結部19の構成の一例を示す図である。図6(a)は前側連結部19の連結前の状態を示す図であり、図6(b)は前側連結部19の連結後の状態を示す図である。
前側連結部19は、右側保持部18aを前側保持部12(中間生地13a)に連結するための部位である。前側連結部19は、右側保持部18aに紐部材24aを介して接続された一方側(オス側)の連結部材20aと、前側保持部12に紐部材24bを介して接続された他方側(メス側)の連結部材20bとを有する。
【0024】
図6(a)に示すように、一方側の連結部材20aは、係合部としての略円板状の突起部21を有する。突起部21は、手で押圧することで板厚方向に撓み、手を離すと元に復帰するような弾性力を有する。他方側の連結部材20bは、突起部21が挿入される隙間を介在して重なり合う一対の板部22a、22bと、一方の板部22aに突起部21が係合される被係合部として略円形の孔部23とを有する。一方側の連結部材20aの突起部21を他方側の連結部材20bの一対の板部22a、22bの隙間に挿入して、突起部21が孔部23に嵌り込むことで、突起部21が孔部23に係合して、一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとが連結する。
【0025】
図6(b)に示すように、突起部21が孔部23に係合した状態では、突起部21が孔部23内で中心点Oを中心にして回動可能である。したがって、一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとは相対的に回動することができる。このように、一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとが回動することで、着用者の体型に応じて自動的に右側保持部18aの位置が調整される。例えば、胸板の薄い着用者の場合には一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとが略直線状に連結される一方、胸板の厚い着用者の場合には一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとが角度を有するように自動的に回動した状態で連結されて着用者の窮屈感を抑制することができる。
【0026】
また、紐部材24a、24bは、例えば、略帯状あるいは略テープ状の伸縮可能なゴムを用いることができる。紐部材24a、24bが伸縮可能であることにより右側保持部18aを体表面近くに配置することができる。また、紐部材24aは、一方側の連結部材20aとの間で紐部材24aの長さが調整可能であり、着用者の体型や好みに応じて長さを調整することができる。
一方側の連結部材20aの突起部21を孔部23を通して手で押圧した状態のまま一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとを引き離すことで一方側の連結部材20aと他方側の連結部材20bとの連結を解除することができる。したがって、右側保持部18aは、前側連結部19を介して前側保持部12に連結された状態から離脱可能である。
なお、後側連結部25は、前側連結部19と同様に、一方側の連結部材20aと、他方側の連結部材20bとを有する構成であり、説明を省略する。
【0027】
右側保持部18aは、略矩形のポケット状であって、内部に送風デバイス50を収容することにより送風デバイス50を保持したり、保冷剤60を収容することにより保冷剤60を保持したりすることができる。右側保持部18aは、送風デバイス50よりも外形寸法が大きい保冷剤60を収容できるように、横幅および高さが前側保持部12よりも大きい。本実施形態では右側保持部18aが、送風デバイス50および保冷剤60を保持する場合について説明するが、送風デバイス50および保冷剤60の何れかを保持してもよい。
【0028】
図7は、図4に示すII-II線断面図であり、右側保持部18aの断面を示している。
右側保持部18aは、体側に近い内側生地26aと体から離れた外側生地26bとが左右に位置し、両生地の間に仕切用生地26cが位置している。内側生地26a、外側生地26bおよび仕切用生地26cは、上端を除く前後両端および下端が縫製等により結合されることで構成される。したがって、右側保持部18aは、内側生地26aと仕切用生地26cとの間で上方に前後方向に沿って長い開口を有し、開口を通して、送風デバイス50を着脱させることができる。送風デバイス50は、内側生地26aと仕切用生地26cとの間に挟まれた状態で保持される。また、右側保持部18aは、仕切用生地26cと外側生地26bの間で上方に前後方向に沿って長い開口を有し、開口を通して、保冷剤60を着脱させることができる。保冷剤60は、仕切用生地26cと外側生地26bとの間に挟まれた状態で保持される。
【0029】
内側生地26a、外側生地26bは、上述した前側保持部12の内側生地14a、外側生地14bと同じ素材が用いられる。したがって、右側保持部18aでも、防護服100が体に密着するのを抑制したり、防護服100内の対流を可能にしたり、体表面近くでの空気の対流を可能したりすることができる。また、右側保持部18aでも、開口の左右幅(あるいは開口面積)を広い状態に維持したり、対流を遮断されないようにしたりすることができる。なお、仕切用生地26cは、内側生地26a、外側生地26bと同様に通気性を有するが、内側生地26a、外側生地26bよりも厚みが薄い素材が用いられる。
【0030】
次に、送風デバイス50について図8を参照して説明する。
図8は、送風デバイス50の一例を示す斜視図である。図8(a)は送風デバイス50を一方側から見た斜視図であり、図8(b)は送風デバイス50を他方側から見た斜視図である。
送風デバイス50は、防護服100内で空気を対流させるために送風する。送風デバイス50は、筐体51と、ファン52と、スイッチ部57とを有する。
【0031】
筐体51は、ファン52、モータおよび乾電池(あるいはバッテリパック)をはじめとする送風デバイス50の各種部品を収容する外装である。筐体51は、扁平状であって、ファン52の回転軸Oの軸方向に沿って見て略矩形状である。筐体51は、第1の側面に円形状に開口するメイン吸気口53と、第1の側面と隣り合う両側面に矩形状に開口するサブ吸気口54a、54bと、第1の側面と隣り合う一面に開口する排気口55とを有する。排気口55は、ファン52の回転軸Oの軸方向に対して直交する方向であって、図8に示す上方向に開口する。より詳細には、排気口55は、上方向に対してややメイン吸気口53側に偏った斜めに開口する。また、筐体51は、メイン吸気口53が開口する第1の側面にルーフ部56を有する。ルーフ部56は、第1の側面から外側に離れた位置に支持される。また、ルーフ部56は、ファン52の回転軸Oの軸方向に沿って見て、円形状であって、メイン吸気口53と重なり合う。更に、ルーフ部56は、外側面が緩やかな球面状に形成される。
【0032】
ファン52は、乾電池から供給される電力を用いてモータが駆動することで回転する。ファン52は、遠心ファンが用いられる。ファン52が回転することで、メイン吸気口53およびサブ吸気口54a、54bから筐体51内に吸気して排気口55を通して筐体51外に排気される。このように、送風デバイス50はファン52が回転することで筐体51外に空気が排気されることで送風する。
スイッチ部57は、筐体51の側面に設けられる。使用者がスイッチ部57を押すことで、モータの駆動および停止を指示することができる。具体的には、使用者がスイッチ部57を押す毎にモータの回転が弱、中、強、停止の順に切り替わり、送風デバイス50の送風レベルを任意に設定することができる。
【0033】
次に、冷却システムの作用について図5および図7を参照して説明する。
まず、着用者は着用具10を着用する。次に、着用者は、着用具10の前側保持部12に送風デバイス50を保持させ、後側保持部15に保冷剤60を保持させ、右側保持部18aおよび左側保持部18bにそれぞれ送風デバイス50と保冷剤60とを保持させる。このとき、着用者は送風デバイス50のスイッチ部57を予め操作して送風デバイス50の送風レベルを好みのレベルに設定しておく。
【0034】
なお、着用者は着用具10を着用する前に各保持部12、15、18a、18bに送風デバイス50、保冷剤60を保持させておき、その後に着用具10を着用してもよい。また、着用者が着用具10を着用する場合、前側連結部19の連結および後側連結部25の連結を解除した状態で着用してもよく、前側連結部19および後側連結部25のうち少なくとも何れか一方を連結したままの状態で着用してもよい。
着用者は着用具10を着用した後、着用具10の上から防護服100を着用することで、防護服100内は外気との通気性が遮断される。また、着用具10は厚手の素材が用いられていることから、防護服100が体に密着するのを抑制し、体表面と防護服100との間に空間が形成される。
【0035】
図5に示すように、前側保持部12は送風デバイス50を内側生地14aと外側生地14bとの間で、ルーフ部56が内側生地14aに接し、排気口55が前側保持部12の開口側に位置するように保持する。送風デバイス50は、ルーフ部56を有することでメイン吸気口53が内側生地14aによって塞がれることを防止する。送風デバイス50はメイン吸気口53から吸気することで、矢印A1に示す空気の流れが生じる。内側生地14aは通気性がある素材であるために、内側生地14a内の空気も吸気することができることから、体表面近くでの空気の対流が生じる。また、外側生地14bは通気性がある素材であるために、矢印A1に示す空気を前側保持部12外からも取り込むことができる。送風デバイス50は排気口55から排気することで、矢印A2に示すように前側保持部12の上方の開口を通って着用者の首周辺に向かって送風する。したがって、防護服100内には対流が発生して、着用者の汗を気化させることができ、着用者を冷却させることができる。特に、首には、太い血管が通り、また、リンパの集まる部分であるために、着用者の首周辺に向かって送風することで、効果的に冷却することができる。
【0036】
また、後側保持部15は、保冷剤60を内側生地17aと外側生地17bとの間で保持する。したがって、保冷剤60によって着用者の背中周辺を冷却することができる。また、内側生地17aと外側生地17bは、通気性がある素材であるために、防護服100内を対流する空気は内側生地17aあるいは外側生地17bを透過して保冷剤60に接するために、保冷剤60は防護服100内で対流する空気を冷却することができる。
【0037】
また、図7に示すように、右側保持部18aは送風デバイス50を内側生地26aと仕切用生地26cとの間で、ルーフ部56が内側生地26aに接し、排気口55が右側保持部18aの開口側に位置するように保持する。送風デバイス50は、ルーフ部56を有することでメイン吸気口53が内側生地26aによって塞がれることを防止する。送風デバイス50はメイン吸気口53から吸気することで、矢印A3に示す空気の流れが生じる。内側生地26aは通気性がある素材であるために、内側生地26a内の空気も吸気することができることから、体表面近くでの空気の対流が生じる。また、外側生地26bおよび仕切用生地26cは通気性がある素材であるために、矢印A3に示す空気を右側保持部18a外からも取り込むことができる。送風デバイス50は排気口55から排気することで、矢印A4に示すように右側保持部18aの上方の開口を通って着用者の脇下周辺に向かって送風する。したがって、防護服100内には対流が発生して、着用者の汗を気化させることができ、着用者を冷却させることができる。特に、脇下には、太い血管が通り、また、リンパの集まる部分であるために、着用者の脇下周辺に向かって送風することで、効果的に冷却することができる。
【0038】
また、右側保持部18aは、保冷剤60を仕切用生地26cと外側生地26bとの間で保持する。したがって、保冷剤60によって着用者の脇周辺を冷却することができる。また、内側生地26a、外側生地26bおよび仕切用生地26cは、通気性がある素材であるために、防護服100内を対流する空気は内側生地26a、外側生地26bあるいは仕切用生地26cを透過して保冷剤60に接するために、保冷剤60は防護服100内で対流する空気を冷却することができる。
【0039】
以上、本実施形態の着用具10は、防護服100内で空気を対流させるための送風デバイス50を、防護服100内であってかつ着用者の周囲に着脱可能に保持する保持部12、15、18a、18bを備えている。したがって、外気との通気性が抑制された防護服100を着用する場合であっても、防護服100内で空気を対流させ、着用者の汗を気化させて着用者を冷却させることができることから、防護服100内の環境を快適にすることができる。
また、本実施形態の着用具10は、着用者の左右の肩にそれぞれ配置される右側肩部11aおよび左側肩部11bを備え、前側保持部12および後側保持部15は、右側肩部11aおよび左側肩部11bにより吊り下げられる。このように、前側保持部12および後側保持部15は、右側肩部11aおよび左側肩部11bにより吊り下げられることで安定して送風デバイス50を保持することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る着用具70について図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態の着用具70を着用した状態の一例を示す正面図である。なお、第1の実施形態の着用具10と同様の構成は、同一符号を付して適宜、説明を省略する。
【0041】
本実施形態の着用具70は、前側保持部12の左右両側に補助保持部71a、71bを有する。補助保持部71a、71bは、着用者の前側に小型の保冷剤65を着脱可能に保持する部位である。補助保持部71a、71bは、右側肩部11a、左側肩部11bの前端にそれぞれ吊り下げられることで、着用者の前側に配置される。
補助保持部71a、71bは、略矩形のポケット状であって、内部に小型の保冷剤65を収容することにより小型の保冷剤65を保持することができる。補助保持部71a、71bは、前側保持部12と同様な構成であるが、小型の保冷剤65が収容できる程度の大きさであり、横幅および高さが前側保持部12よりも小さい。
補助保持部71a、71bによって保持される保冷剤65は、着用者の胸周辺を冷却したり、防護服100内で対流する空気を冷却したりすることができ、防護服100内の環境を更に快適にすることができる。
【0042】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上述した実施形態では、外気と通気性が抑制された衣服が防護服100である場合について説明したが、この場合に限られず、例えば、上衣101aと下衣101bとが一体で構成された服、例えば作業用つなぎや、つなぎ以外の上衣であってもよい。
上述した実施形態では、着用具10、70は上半身に着用する場合について説明したが、この場合に限られず、下肢に着用可能に変更してもよい。
【0043】
上述した実施形態では、着用具10は、前側保持部12、後側保持部15、右側保持部18aおよび左側保持部18bを備える場合について説明したが、この場合に限られない。着用具10は、前側保持部12、後側保持部15、右側保持部18aおよび左側保持部18bの少なくとも何れか一つを備えていてもよい。なお、着用具10が右側保持部18aおよび左側保持部18bを備えない場合には、右側の前側連結部19と右側の後側連結部25とを着用者の右脇で連結し、左側の前側連結部19と左側の後側連結部25とを着用者の左脇で連結することで、前側保持部12および後側保持部15のふらつきを抑制することができる。
【0044】
上述した実施形態では、前側保持部12は、送風デバイス50を保持する場合について説明したが、送風デバイス50および保冷剤60、65の少なくとも何れかを保持するように構成してもよい。
上述した実施形態では、各保持部12、15、18a、18bがポケット状に形成され、内部に収容することで送風デバイス50を保持する場合について説明したが、この場合に限られず、他の方法で保持してもよい。
【0045】
上述した実施形態では、右側保持部18aは前側連結部19を介して前側保持部12に連結された状態から離脱可能であり、後側連結部25を介して後側保持部15に連結された状態から離脱可能であるが、この場合に限られず、前側保持部12および後側保持部15の少なくとも何れか一方との間で離脱可能であってもよく、離脱できなくてもよい。
上述した実施形態では、左側保持部18bは前側連結部19を介して前側保持部12に連結された状態から離脱可能であり、後側連結部25を介して後側保持部15に連結された状態から離脱可能であるが、この場合に限られず、前側保持部12および後側保持部15の少なくとも何れか一方との間で離脱可能であってもよく、離脱できなくてもよい。
【0046】
上述した実施形態では、送風デバイス50のファン52が遠心ファンである場合について説明したが、この場合に限られず、送風できればよく、プロペラファン、シロッコファン、ターボファン、斜琉ファン、ラインローラファンであってもよい。例えば、プロペラファンにした場合には、送風デバイス50の筐体51は、メイン吸気口53と対向する対向面に排気口を有し、内側生地側から吸気して外側生地に向かって排気したり、外側生地側から吸気して内側生地に向かって排気したりする構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、70:着用具 11a:右側肩部 11b:左側肩部 12:前側保持部 15:後側保持部 18a:右側保持部 18b:左側保持部 19:前側連結部 25:後側連結部 50:送風デバイス 60、65:保冷剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9