(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152078
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】バルブ健全性診断システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20221004BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20221004BHJP
G01M 13/003 20190101ALI20221004BHJP
【FI】
G05B23/02 R
F16K51/00 F
G01M13/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054708
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 史明
(72)【発明者】
【氏名】籠浦 守
【テーマコード(参考)】
2G024
3C223
3H066
【Fターム(参考)】
2G024AA15
2G024BA27
2G024CA04
2G024CA16
2G024CA17
2G024FA06
2G024FA15
3C223AA01
3C223BA01
3C223CC01
3C223EB02
3C223FF35
3C223GG03
3C223HH03
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】複数のプラントのバルブの健全性指標を比較することを可能にする。
【解決手段】バルブ健全性診断システムは、診断対象のバルブの仕様情報を取得するバルブ仕様情報取得部1と、バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として記憶する基準バルブ健全性指標記憶部4と、診断対象のバルブの動作データを取得するバルブデータ取得部2と、診断対象のバルブの動作データから健全性指標を算出する健全性指標算出部3と、診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの基準バルブ健全性指標を基準バルブ健全性指標記憶部4から取得する基準バルブ健全性指標抽出部5と、診断対象のバルブの健全性指標と基準バルブ健全性指標とを比較して診断対象のバルブの健全性を判定する診断判定部6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象のバルブの仕様情報を取得するように構成されたバルブ仕様情報取得部と、
バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として予め記憶するように構成された基準バルブ健全性指標記憶部と、
前記診断対象のバルブの動作データを取得するように構成されたバルブデータ取得部と、
前記診断対象のバルブの動作データから健全性指標を算出するように構成された健全性指標算出部と、
前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されている場合に、この基準バルブ健全性指標を取得するように構成された基準バルブ健全性指標抽出部と、
前記健全性指標算出部によって算出された前記診断対象のバルブの健全性指標と前記基準バルブ健全性指標抽出部によって取得された前記基準バルブ健全性指標とを比較することにより、前記診断対象のバルブの健全性を判定するように構成された診断判定部とを備えることを特徴とするバルブ健全性診断システム。
【請求項2】
請求項1記載のバルブ健全性診断システムにおいて、
前記診断判定部の判定結果を出力するように構成された判定結果出力部をさらに備えることを特徴とするバルブ健全性診断システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のバルブ健全性診断システムにおいて、
前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録するように構成された基準バルブ健全性指標登録部をさらに備えることを特徴とするバルブ健全性診断システム。
【請求項4】
請求項3記載のバルブ健全性診断システムにおいて、
前記基準バルブ健全性指標登録部は、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、ユーザからの登録の指示に従って、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録することを特徴とするバルブ健全性診断システム。
【請求項5】
診断対象のバルブの仕様情報を取得する第1のステップと、
前記診断対象のバルブの動作データを取得する第2のステップと、
前記診断対象のバルブの動作データから健全性指標を算出する第3のステップと、
バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として予め記憶する基準バルブ健全性指標記憶部を参照し、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されている場合に、この基準バルブ健全性指標を取得する第4のステップと、
前記第3のステップで算出した前記診断対象のバルブの健全性指標と前記第4のステップで取得した前記基準バルブ健全性指標とを比較することにより、前記診断対象のバルブの健全性を判定する第5のステップとを含むことを特徴とするバルブ健全性診断方法。
【請求項6】
請求項5記載のバルブ健全性診断方法において、
前記第5のステップの判定結果を出力する第6のステップをさらに含むことを特徴とするバルブ健全性診断方法。
【請求項7】
請求項5または6記載のバルブ健全性診断方法において、
前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録する第7のステップをさらに含むことを特徴とするバルブ健全性診断方法。
【請求項8】
請求項7記載のバルブ健全性診断方法において、
前記第7のステップは、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、ユーザからの登録の指示に従って、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録するステップを含むことを特徴とするバルブ健全性診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの健全性を診断するバルブ健全性診断システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルブの健全性を診断するシステムの例として特許文献1に開示された技術がある。特許文献1に開示された技術では、プロセスプラント内のバルブのデータを収集してバルブの全体的な健全性パラメータ値を決定し、複数のバルブの全体的な健全性パラメータ値を比較することにより診断対象のバルブの相対的な健全性指標を決定し、健全性指標に基づいてバルブの健全性を診断するようにしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、同一のプロセスプラント内でバルブの動作結果を比較している。複数のプラントで作動しているバルブの動作結果を比較することで、より信頼度のある健全性診断が可能となるが、特許文献1に開示された技術では、同一のプロセスプラント内でバルブの動作結果を比較することしかできず、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数のプラントのバルブの健全性指標を比較することが可能なバルブ健全性診断システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバルブ健全性診断システムは、診断対象のバルブの仕様情報を取得するように構成されたバルブ仕様情報取得部と、バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として予め記憶するように構成された基準バルブ健全性指標記憶部と、前記診断対象のバルブの動作データを取得するように構成されたバルブデータ取得部と、前記診断対象のバルブの動作データから健全性指標を算出するように構成された健全性指標算出部と、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されている場合に、この基準バルブ健全性指標を取得するように構成された基準バルブ健全性指標抽出部と、前記健全性指標算出部によって算出された前記診断対象のバルブの健全性指標と前記基準バルブ健全性指標抽出部によって取得された前記基準バルブ健全性指標とを比較することにより、前記診断対象のバルブの健全性を判定するように構成された診断判定部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のバルブ健全性診断システムの1構成例は、前記診断判定部の判定結果を出力するように構成された判定結果出力部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバルブ健全性診断システムの1構成例は、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録するように構成された基準バルブ健全性指標登録部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバルブ健全性診断システムの1構成例において、前記基準バルブ健全性指標登録部は、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、ユーザからの登録の指示に従って、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のバルブ健全性診断方法は、診断対象のバルブの仕様情報を取得する第1のステップと、前記診断対象のバルブの動作データを取得する第2のステップと、前記診断対象のバルブの動作データから健全性指標を算出する第3のステップと、バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として予め記憶する基準バルブ健全性指標記憶部を参照し、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されている場合に、この基準バルブ健全性指標を取得する第4のステップと、前記第3のステップで算出した前記診断対象のバルブの健全性指標と前記第4のステップで取得した前記基準バルブ健全性指標とを比較することにより、前記診断対象のバルブの健全性を判定する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のバルブ健全性診断方法の1構成例は、前記第5のステップの判定結果を出力する第6のステップをさらに含むことを特徴とするものである。
また、本発明のバルブ健全性診断方法の1構成例は、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録する第7のステップをさらに含むことを特徴とするものである。
また、本発明のバルブ健全性診断方法の1構成例において、前記第7のステップは、前記診断対象のバルブの仕様と略一致する仕様のバルブの前記基準バルブ健全性指標が前記基準バルブ健全性指標記憶部に記憶されていない場合に、ユーザからの登録の指示に従って、前記診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として、前記診断対象のバルブの仕様情報と共に前記基準バルブ健全性指標記憶部に登録するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、仕様が略一致する複数のバルブの健全性指標を比較するので、同一のプロセスプラント内に限らず、類似した仕様で稼動している、複数のプラントのバルブの健全性指標を比較することができ、より信頼度のあるバルブの健全性診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムと他のシステムとの接続例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムの診断判定部による判定例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係るバルブ健全性診断システムの構成を示すブロック図である。バルブ健全性診断システム100は、バルブ仕様情報取得部1と、バルブデータ取得部2と、健全性指標算出部3と、基準バルブ健全性指標記憶部4と、基準バルブ健全性指標抽出部5と、診断判定部6と、バルブ仕様情報提示部7と、健全性指標提示部8と、判定結果出力部9と、基準バルブ健全性指標登録部10とを備えている。
【0013】
図2は本実施例のバルブ健全性診断システム100と他のシステムとの接続例を示す図である。本実施例のバルブ健全性診断システム100とプラント管理システム200-1~200-3などの他のシステムとの間は、例えばHART(Highway Addressable Remote Transducer)通信やファウンデーションフィールドバス(Foundation Fieldbus)によって互いに通信できるようになっている。
【0014】
各プラント管理システム200-1~200-3は、それぞれ多数のバルブ201を管理しており、各バルブ201の仕様情報を記憶し、また各バルブ201の動作のデータを収集する。
【0015】
図3は本実施例のバルブ健全性診断システム100の動作を説明するフローチャートである。
まず、バルブ仕様情報取得部1は、プラント管理システム200-1~200-3から診断対象のバルブ201の仕様の情報を収集する(
図3ステップS100)。仕様の情報としては、例えばバルブ201の形式(グローブバルブ、ボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ等)、口径、使用するプロセス流体、使用圧力、使用温度、コントロール制御方法(比例制御、ON/OFF制御)の情報などがある。
バルブ仕様情報提示部7は、診断対象のバルブ201の仕様情報を表示する(
図3ステップS101)。
【0016】
バルブデータ取得部2は、プラント管理システム200-1~200-3から診断対象のバルブ201の動作データを取得する(
図3ステップS102)。
動作データとしては、例えば開度設定値、実開度値、EPM(電空変換器)駆動信号、バルブを制御するポジショナの内部温度、操作器の出力空気圧などがある。周知のとおり、ポジショナは、制御指令値(設定開度)に応じた駆動信号をEPMに出力し、EPMは、駆動信号を空気圧に変換して操作器に出力し、操作器がバルブを駆動する。
【0017】
次に、健全性指標算出部3は、バルブデータ取得部2によって収集された診断対象のバルブ201の動作データから健全性指標を算出する(
図3ステップS103)。健全性指標としては、例えばスティックスリップ指標、開度設定値と実開度値との偏差、摺動距離積算値、弁軸の最大作動速度、ゼロ点開度差などがある。
【0018】
健全性指標算出部3は、一定時間ごとに測定された実開度値の差分から弁軸速度を算出し、弁軸速度の絶対値の平均値である第1の状態量Xと、弁軸速度の二乗平均の平方根である第2の状態量Yとを算出し、第2の状態量Yを第1の状態量Xで割った値をスティックスリップ指標として算出する。このようなスティックスリップ指標の算出方法は、例えば特許第3254624号広報に開示されている。
【0019】
摺動距離積算値は、弁軸の動作距離量の積算値である。弁軸の動作距離量は、実開度値から算出できる。弁軸の作動速度は、一定時間あたりの実開度値の差分から算出できる。ゼロ点開度差は、バルブのゼロ点調整時のゼロ点と全閉時の実際のゼロ点との開度差である。
【0020】
なお、本実施例では、バルブ健全性診断システム100の内部にバルブデータ取得部2と健全性指標算出部3とを設ける例で説明しているが、これに限るものではなく、プラント管理システム200-1~200-3側にバルブデータ取得部2と健全性指標算出部3とがある構成でもよい。このような構成の例としては、バルブを制御するポジショナがバルブの動作データを収集して健全性指標を算出する例がある。
【0021】
健全性指標提示部8は、健全性指標算出部3によって算出された診断対象のバルブ201の健全性指標を表示する(
図3ステップS104)。健全性指標は、一定時間毎に算出されるので、例えば健全性指標が時系列にグラフ表示されることになる。
【0022】
次に、基準バルブ健全性指標記憶部4は、バルブの仕様毎に正常な動作状態のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として予め記憶している。この基準バルブ健全性指標の登録方法については後述する。
【0023】
基準バルブ健全性指標抽出部5は、バルブ仕様情報取得部1がステップS100で収集した情報が示す診断対象のバルブ201の仕様と略一致するバルブ仕様の基準バルブ健全性指標が基準バルブ健全性指標記憶部4に記憶されているかどうかを判定する(
図3ステップS105)。上記のとおり、バルブの仕様の情報としては、形式、口径、プロセス流体、使用圧力、使用温度、コントロール制御方法の情報などがある。仕様が略一致するかどうかを判定するため、プロセス流体、使用圧力、使用温度、コントロール制御方法について仕様が略一致とみなせる範囲の規定をバルブのタイプ(形式、口径)別に予め定めておくようにすればよい。
【0024】
基準バルブ健全性指標抽出部5は、診断対象のバルブ201の仕様と略一致するバルブ仕様の基準バルブ健全性指標が基準バルブ健全性指標記憶部4に記憶されている場合(ステップS105においてYES)、この基準バルブ健全性指標を基準バルブ健全性指標記憶部4から取得する(
図3ステップS106)。
【0025】
次に、診断判定部6は、健全性指標算出部3によって算出された診断対象のバルブ201の健全性指標と基準バルブ健全性指標抽出部5によって取得された基準バルブ健全性指標との間に違いがあるかどうかを判定する(
図3ステップS107)。
【0026】
診断判定部6は、診断対象のバルブ201の健全性指標が基準バルブ健全性指標の範囲内の場合(ステップS107においてNO)、診断対象のバルブ201を健全なバルブと判定する(
図3ステップS108)。また、診断判定部6は、診断対象のバルブ201の健全性指標が基準バルブ健全性指標の範囲外の場合(ステップS107においてYES)、診断対象のバルブ201に異常が発生していると判定する(
図3ステップS109)。
【0027】
上記のように、健全性指標として、例えばスティックスリップ指標、開度設定値と実開度値との偏差、摺動距離積算値、弁軸の最大作動速度、ゼロ点開度差など複数種類の健全性指標がある場合、健全性指標の種類毎にステップS107の比較を行い、診断対象のバルブ201の少なくとも1種類の健全性指標が基準バルブ健全性指標の範囲外の場合に、診断対象のバルブ201に異常が発生していると判定すればよい。
【0028】
判定結果出力部9は、診断判定部6の判定結果を出力する(
図3ステップS110)。出力方法としては、判定結果の表示、または判定結果を示す情報の外部への送信などがある。
【0029】
図4は診断判定部6による判定例を説明する図である。ここでは、A,C,Dのバルブの健全性指標の時系列データが基準バルブ健全性指標として登録されているものとする。各バルブの仕様は異なる。また、横軸の時間は、例えば診断開始時を基準とする相対的な時間であって、バルブによって横軸の時刻は異なる。
【0030】
ここで、バルブDと略一致する仕様のバルブBの健全性指標のデータが
図4のように得られたとする。バルブBの健全性指標は、バルブDの健全性指標の範囲を逸脱しているので、バルブBに異常が発生していると判定される。
【0031】
一方、診断対象のバルブ201の仕様と略一致するバルブ仕様の基準バルブ健全性指標が基準バルブ健全性指標記憶部4に記憶されていない場合(ステップS105においてNO)、基準バルブ健全性指標登録部10は、健全性指標算出部3によって算出された診断対象のバルブ201の健全性指標を基準バルブ健全性指標として登録するか否かをバルブ健全性診断システム100のユーザに問い合わせる(
図3ステップS111)。
【0032】
ユーザは、例えば表示された仕様情報と健全性指標のデータとを見て、診断対象のバルブ201が正常らしいと判断した場合、基準バルブ健全性指標として登録することを指示する。
【0033】
基準バルブ健全性指標登録部10は、ユーザから登録の指示があった場合(ステップS111においてYES)、診断対象のバルブ201の健全性指標を基準バルブ健全性指標として、診断対象のバルブ201の仕様情報と共に基準バルブ健全性指標記憶部4に登録する(
図3ステップS112)。
バルブ健全性診断システム100は、以上のような
図3の処理を一定時間毎に行う。
【0034】
以上のように、本実施例では、仕様が略一致する複数のバルブの健全性指標を比較し、基準バルブ健全性指標から逸脱したバルブを異常動作のバルブと判定するので、同一のプロセスプラント内に限らず、類似した仕様で稼動している、複数のプラントのバルブの健全性指標を比較することができ、より信頼度のあるバルブの健全性診断が可能となる。
【0035】
なお、診断の度に診断対象のバルブの仕様情報を収集する必要はない。例えば各バルブに固有の識別番号(バルブID)が割り当てられている場合には、バルブIDとバルブの仕様情報とを一度取得して基準バルブ健全性指標記憶部4に登録しておけば、以後はバルブIDを取得するだけで診断対象のバルブを識別することができ、診断対象のバルブの仕様情報を基準バルブ健全性指標記憶部4から取得することができる。
【0036】
また、本実施例では、診断対象のバルブの仕様と略一致するバルブ仕様の基準バルブ健全性指標が基準バルブ健全性指標記憶部4に記憶されていない場合のみ、ユーザからの指示に従って診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として基準バルブ健全性指標記憶部4に登録しているが、ステップS108で健全と判定したバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として登録してもよい。
【0037】
例えばステップS108で診断対象のバルブが健全なバルブと判定された場合、基準バルブ健全性指標登録部10は、診断対象のバルブの健全性指標を基準バルブ健全性指標として登録するか否かをユーザに問い合わせ、ユーザから登録の指示があった場合に、診断対象のバルブの健全性指標をこのバルブの仕様情報と共に基準バルブ健全性指標記憶部4に追加登録する。これにより、同一もしくは略一致する仕様の基準バルブ健全性指標のサンプルデータ数を増やすことができる。
【0038】
本実施例で説明したバルブ健全性診断システムはクラウドコンピューティングで実現することも可能であり、少なくともCPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図5に示す。
【0039】
コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インタフェース装置(I/F)302とを備えている。I/F302には、バルブ仕様情報提示部7、健全性指標提示部8および判定結果出力部9のハードウェアや、プラント管理システム200-1~200-3等が接続される。本発明のバルブ健全性診断方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、バルブの健全性を診断する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…バルブ仕様情報取得部、2…バルブデータ取得部、3…健全性指標算出部、4…基準バルブ健全性指標記憶部、5…基準バルブ健全性指標抽出部、6…診断判定部、7…バルブ仕様情報提示部、8…健全性指標提示部、9…判定結果出力部、10…基準バルブ健全性指標登録部、100…バルブ健全性診断システム、200-1~200-3…プラント管理システム、201…バルブ。