IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図1
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図2
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図3
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図4
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図5
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図6
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図7
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図8
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図9
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図10
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図11
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図12
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図13
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図14
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図15
  • 特開-内燃機関のCO2分離装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152088
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】内燃機関のCO2分離装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20221004BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20221004BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20221004BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20221004BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F01N3/08 A ZAB
F01N3/24 E
F01N3/24 G
F01N3/24 L
F01N3/02 101F
F01N3/02 101L
B01D53/92 240
B01D53/92 352
B01D53/04 220
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054727
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】小沢 英隆
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D012
【Fターム(参考)】
3G091AB08
3G091BA05
3G091BA13
3G091CA01
3G091CA26
3G091EA33
3G091GB02Y
3G091GB09Y
3G091HA37
3G091HA42
3G091HB02
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA01
4D002DA11
4D002DA45
4D002EA04
4D002EA08
4D002EA13
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB20
4D012BA01
4D012BA02
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD04
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CJ05
4D012CJ10
4D012CK03
4D012CK04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CO2を効率良く安定的に低減することができるコンパクトな、内燃機関のCO2分離装置を提供する。
【解決手段】内燃機関のCO2分離装置は、排気通路に設けられ排気中のCO2を吸着するための吸着ユニットと、前記吸着ユニットによって前記排気中の前記CO2を吸着させ、その後吸着されたCO2を脱離させる制御を行う制御手段と、を有し、前記吸着ユニットは、前記排気通路と連通する吸脱離経路と、前記吸脱離経路に導入された排気中のCO2を低温時に吸着させる吸着動作と、吸着されたCO2を高温時に脱離させる脱離動作とを行うCO2吸着材を備える吸脱離経路層と、前記CO2吸着材を加熱するための排気が導入される加熱経路を備える加熱経路層と、前記CO2吸着材を冷却するための外気が導入される冷却経路を備える冷却経路層と、を有すると共に、前記吸脱離経路層と前記加熱経路層と前記冷却経路層が一体化された構造を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ排気中のCO2を吸着するための吸着ユニットと、
前記吸着ユニットによって前記排気中の前記CO2を吸着させ、その後吸着されたCO2を脱離させる制御を行う制御手段と、を有し、
前記吸着ユニットは、前記排気通路と連通する吸脱離経路と、前記吸脱離経路に導入された排気中のCO2を低温時に吸着させる吸着動作と、吸着されたCO2を高温時に脱離させる脱離動作とを行うCO2吸着材を備える吸脱離経路層と、
前記CO2吸着材を加熱するための排気が導入される加熱経路を備える加熱経路層と、
前記CO2吸着材を冷却するための外気が導入される冷却経路を備える冷却経路層と、を有すると共に、前記吸脱離経路層と前記加熱経路層と前記冷却経路層が一体化された構造を有することを特徴とする内燃機関のCO2分離装置。
【請求項2】
前記吸着ユニットは、前記吸脱離経路層、前記加熱経路層、前記冷却経路層を夫々少なくとも1層以上有すると共に、前記吸脱離経路層、前記加熱経路層、前記冷却経路層が積層した状態で一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のCO2分離装置。
【請求項3】
前記吸脱離経路層を挟んで前記加熱経路層、前記冷却経路層が積層されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のCO2分離装置。
【請求項4】
前記冷却経路層が前記吸着ユニットの外側に露出するように積層されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関のCO2分離装置。
【請求項5】
前記吸着ユニットは、第1の吸着ユニットと第2の吸着ユニットとを有し、
前記内燃機関からの前記排気を前記第1の吸着ユニットに導入した後、前記第2の吸着ユニットに導入させる第1の排気通路と、
前記排気を前記第2の吸着ユニットに導入した後、前記第1の吸着ユニットに導入させる第2の排気通路と、
前記第1の排気通路と前記第2の排気通路を切り替える切り替え手段と、
前記制御手段は、前記切り替え手段によって前記第1の排気通路に切り替えられている際に、前記第1の吸着ユニットに排気を導入することによって、前記CO2吸着材に吸着されていたCO2を前記排気の熱により脱離すると共に、前記第2の吸着ユニットに外気を導入し、冷却することによって、前記排気中のCO2を吸着し、
前記切り替え手段によって前記第2の排気通路に切り替えられている際に、前記第2の吸着ユニットに排気を導入することによって、前記CO2吸着材に吸着されていたCO2を前記排気の熱により脱離すると共に、前記第1の吸着ユニットに外気を導入し、冷却することによって、前記排気中のCO2を吸着させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のCO2分離装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のCO2分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関の排ガスに含まれる二酸化炭素(以下CO2と略す。)は、地球温暖化の一因であるといわれており、排ガスからCO2を分離、回収し、自動車から排出されるCO2濃度を低減することが求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、内燃機関より排出された排気中のCO2を吸着するために2つの吸着材を有し、一方の吸着材によって排気中のCO2を吸着している間、他方の吸着材に水素を供給することによって混合ガスを生成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-164424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内燃機関の排ガスからCO2を分別回収するTSA(Temperature Swing Absorption)システムにおいては、熱交換器とCO2吸脱離部とは夫々大型で別々に配置されている。従ってCO2吸着システムの小型化、ひいては自動車等全体の小型化の妨げになっていた。
【0006】
そこで、本発明は、CO2を効率良く安定的に低減することができるコンパクトな、内燃機関を有するCO2分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)は、
内燃機関(ENG)の排気通路に設けられ排気中のCO2を吸着するための吸着ユニット(ユニットA、ユニットB)と、
前記吸着ユニットによって前記排気中の前記CO2を吸着させ、その後吸着されたCO2を脱離させる制御を行う制御手段(ECU)と、を有し、
前記吸着ユニット(ユニットA、ユニットB)は、前記排気通路と連通する吸脱離経路と、前記吸脱離経路に導入された排気中のCO2を低温時に吸着させる吸着動作と、吸着されたCO2を高温時に脱離させる脱離動作とを行うCO2吸着材を備える吸脱離経路層(SL1、SL2)と、
前記CO2吸着材を加熱するための排気が導入される加熱経路を備える加熱経路層(HL1、HL2)と、
前記CO2吸着材を冷却するための外気が導入される冷却経路を備える冷却経路層(CL1、CL2)と、を有すると共に、前記吸脱離経路層(SL1、SL2)と前記加熱経路層(HL1、HL2)と前記冷却経路層(CL1、CL2)が一体化された構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)によれば、CO2を効率良く安定的に低減することができると共に大幅なコンパクト化ができる。
【0009】
請求項2に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)は、請求項2に記載のCO2分離装置(200等)において、前記吸着ユニット(ユニットA、ユニットB)は、前記吸脱離経路層(SL1、SL2)、前記加熱経路層(HL1、HL2)、前記冷却経路層(CL1、CL2)を夫々少なくとも1層以上有すると共に、前記吸脱離経路層(SL1、SL2)、前記加熱経路層(HL1、HL2)、前記冷却経路層(CL1、CL2)が積層した状態で一体化されていることを特徴とする。
このように、積層することによって、より効率的で、よりコンパクトなCO2分離装置(200等)を実現できる。
【0010】
請求項3に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)は、請求項2に記載のCO2分離装置(200等)において、前記吸脱離経路層(SL1、SL2)を挟んで前記加熱経路層(HL1、HL2)、前記冷却経路層(CL1、CL2)が積層されていることを特徴とする。従って、吸脱離経路層(SL1、SL2)の温度を応答性良く制御することができる。
【0011】
請求項4に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)は、請求項1~3のいずれか1項に記載のCO2分離装置(200等)において、前記冷却経路層(CL1、CL2)が前記吸着ユニット(ユニットA、ユニットB)の外側に露出するように積層されていることを特徴とする。従って冷却効率を大幅に向上することができる。
【0012】
請求項5に係る内燃機関を有するCO2分離装置(200等)は、請求項1に記載のCO2分離装置(200等)において、前記吸着ユニット(ユニットA、ユニットB)は、第1の吸着ユニット(ユニットA)と第2の吸着ユニット(ユニットB)とを有し、
前記内燃機関(ENG)からの前記排気を前記第1の吸着ユニット(ユニットA)に導入した後、前記第2の吸着ユニット(ユニットB)に導入させる第1の排気通路と、
前記排気を前記第2の吸着ユニット(ユニットB)に導入した後、前記第1の吸着ユニット(ユニットA)に導入させる第2の排気通路と、
前記第1の排気通路と前記第2の排気通路を切り替える切り替え手段(通路切り替えバルブVLV1)と、
前記制御手段(ECU)は、前記切り替え手段(通路切り替えバルブVLV1)によって前記第1の排気通路に切り替えられている際に、前記第1の吸着ユニット(ユニットA)に排気を導入することによって、前記CO2吸着材に吸着されていたCO2を前記排気の熱により脱離すると共に、前記第2の吸着ユニット(ユニットB)に外気を導入し、冷却することによって、前記排気中のCO2を吸着し、
前記切り替え手段(通路切り替えバルブVLV1)によって前記第2の排気通路に切り替えられている際に、前記第2の吸着ユニット(ユニットB)に排気を導入することによって、前記CO2吸着材に吸着されていたCO2を前記排気の熱により脱離すると共に、前記第1の吸着ユニット(ユニットA)に外気を導入し、冷却することによって、前記排気中のCO2を吸着させるように制御することを特徴とする。
【0013】
このように構成することによって、第1の吸着ユニットと第2の吸着ユニットとを交互に使用して連続的かつ効率的にCO2を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るCO2吸着システムの概略を示す模式図である。
図2】実施形態に係る各ユニットのCO2吸着器と2つの熱交換器の概略構成を示す模式図である。
図3】実施形態に係るCO2吸着材の温度に対するCO2吸着特性の例を示す図である。
図4】実施形態に係る水吸着材の温度に対する水吸着特性を示す図である。
図5】実施形態に係るユニットAの構成例を示す模式図である。
図6図5のユニットAに設けられたボックスユニットの構成例を示す図である。
図7図6の構造に対して設けられた仕切り枠ユニットの構成例を示す図である。
図8図5の構造をカバー50で覆った構成例を示す図である。
図9図5に示した多層構造のユニットの断面の他の例を示す図である。
図10】実施形態のユニットAやBに対するガス等の供給と、排気の種類を示す図である。
図11】実施形態に係るCO2分離装置200の各動作を説明するためのフローチャートである。
図12】Tco2recセンサーA、Bの出力特性図である。
図13】モードAにおいて、高温の排気ガスがユニットBに供給されている状態を示す図である。
図14】モードBに切り替えられ、高温の排気ガスがユニットA側に切り替えられて供給開始された直後の状態を示す図である。
図15】モードBにおけるユニットAとユニットBに対する夫々の入力と出力の関係を示す図である。
図16】高温の排気ガスがユニットBに供給開始された直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例等を用いて説明する。尚、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係るCO2分離装置の概略を示す模式図である。
本実施形態のCO2分離装置200は、通路切り替えバルブVLV1、一体化されたユニットA(第1の吸着ユニット)、ユニットB(第2の吸着ユニット)、通路切り替えバルブVLV2、VLV3、Tco2recセンサーA、B、一方向バルブ1WY-VLV、制御部ECU等を含む。
又、本実施形態においては、ユニットAは一体化された熱交換器A1とCO2吸着器Aと熱交換器A2を有し、CO2吸着器Aは熱交換器A1と熱交換器A2に挟まれて密着(隣接)され一体化されている。熱交換器A2はCO2吸着器Aの冷却を促進するためのものである。
【0017】
又、本実施形態においては、ユニットBは一体化された熱交換器B1とCO2吸着器Bと熱交換器B2を有し、CO2吸着器Bは熱交換器B1と熱交換器B2に挟まれて密着(隣接)され一体化されている。熱交換器B2はCO2吸着器Bの冷却を促進するためのものである。尚、ここで密着(隣接)とは直接的に接触するものに限定されず、間に例えば熱伝導性の高い物質を挟んだ構造であっても良い。
又、熱交換器A2、B2は冷却効果を高めるための構造であれば良く、簡単な形態としては断面が凹凸の放熱面積を増大させた溝形状のもの(例えば放熱フィン構造)であっても良い。
【0018】
又、本実施形態において、CO2分離装置200は、例えば自動車等の移動装置に、内燃機関ENGとともに搭載されており、ユニットAとユニットBは、内燃機関ENGの排気通路に設けられ排気中のCO2を吸着するための吸着ユニットとして機能している。又、CO2分離装置は、CO2吸着器A又Bから脱離されたCO2を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮されたCO2を貯蔵する交換可能な耐圧タンク等を有する。
【0019】
そして、内燃機関ENGから排出される排ガスは排気路を介して、CO2分離装置200に供給され、切り替え手段としての通路切り替えバルブVLV1によって排気経路が切り替え制御されてユニットA又はユニットBに供給される。尚、移動装置は自動車に限定されず内燃機関を有し、内燃機関の動力を用いて負荷に伝達し、それらの負荷を駆動することによって移動するものを含む。
【0020】
図1の状態は、モードB、即ちユニットAを加熱し、ユニットBを冷却するモードを示しており、切り替え手段としての通路切り替えバルブVLV1によって排気経路が熱交換器A1側に接続されている。この状態では高温の排気は熱交換器A1で熱交換された後にCO2吸着器Bに供給される。即ち、内燃機関からの排気を第1の吸着ユニット(ユニットA)に導入した後、第2の吸着ユニット(ユニットB)に導入させる第1の排気通路が形成されている。
【0021】
高温の排気熱は熱交換器A1によって熱交換されてCO2吸着器Aを加熱する。そして、CO2吸着器Aに吸着されていたCO2は脱離され、CO2排気経路を介して通路切り替えバルブVLV2に供給され、通路切り替えバルブVLV2を介して圧縮機で圧縮されて耐圧ボンベに貯蔵される。尚、CO2吸着材は図3で後述するように、低温でCO2を吸着し、高温でCO2を離脱する特性を有する。
【0022】
又、熱交換器A1で熱交換された後にCO2吸着器Bに供給される排ガスは温度が低下しているので、排ガス中のCO2はCO2吸着器Bにおいて吸着され、一方向バルブ1WAY-VLVを介して大気に放出される。このとき、冷却用の外気が通路切り替えバルブVLV3を介して熱交換器B2に供給される。それによってCO2吸着器Bは急速に冷却されCO2吸着が促進される。
【0023】
CO2吸着器Bの排気経路にはTco2recセンサーBが配置されており、CO2吸着器Bから排出されるガス中のCO2濃度を検出可能になっている。
同様に、CO2吸着器Aの排気経路にはTco2recセンサーAが配置されており、CO2吸着器Aから排出されるガス中のCO2濃度を検出可能になっている。
【0024】
このように、切り替え手段によって、第1の排気通路に切り替えられている際に、第1の吸着ユニット(ユニットA)に吸着されていたCO2を排気の熱により脱離する。更にそのとき、第2の吸着ユニット(ユニットB)に外気を導入して冷却することによって排気中のCO2の吸着を促進している。
尚、冷却用の外気を熱交換器に導く際に、更に冷却ファン等を用いて冷却効果を高めるようにしても良い。
【0025】
ECUは制御部であって、コンピュータとしてのCPUを内蔵し不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによってCO2分離装置200等の動作の制御を行う。ここで、制御部ECUは、吸着ユニットによって前記排気中の前記CO2を吸着させ、その後吸着されたCO2を脱離させる制御を行う制御手段として機能している。
【0026】
図2は、本実施形態に係る各ユニットのCO2吸着器と2つの熱交換器の概略構成を示す模式図である。例えばユニットAにおいて、熱交換器A1、A2の間に、CO2吸着材が内側に塗られたCO2吸着器Aが挟まれて密着(隣接)し一体化されており、加熱及び冷却効率が高められている。ユニットBについても同様である。従って、前述のように高温の排ガスは熱交換器A1に供給されCO2吸着器Aを効率的に加熱することができる。
【0027】
それによってCO2が効率良く脱離され、一方熱交換器A1で熱交換された後の冷えた排ガスはCO2吸着器Bに供給されCO2を分離吸着した後にN2やH2Oが大気に放出される。しかも本実施形態においては、この吸着動作中に、CO2吸着器Bに密着(隣接)して一体化された熱交換器B2によりCO2吸着器Bが効率的に冷却されるように構成されているので、速やかに効率よくCO2の吸着を行うことができる。
【0028】
図5の状態において、CO2吸着器Bにおける吸着が飽和に近づくと、排気経路中のTco2recセンサーBにより検出されるCO2濃度が上昇し所定値を上回る。すると、モードA(ユニットBを加熱し、ユニットAを冷却するモード)に切換わる。モードAへの切り替えに応じて通路切り替えバルブVLV1により排気経路が熱交換器B1側に接続され、高温の排ガスは熱交換器B1で熱交換された後にCO2吸着器Aに供給される。
【0029】
それにより、内燃機関からの排気を第2の吸着ユニット(ユニットB)に導入した後、第1の吸着ユニット(ユニットA)に導入させる第2の排気通路が形成される。このように、通路切り替えバルブVLV1は第1の排気通路と第2の排気通路を切り替える切り替え手段として機能している。又、このとき、通路切り替えバルブVLV1の切り替えに連動して通路切り替えバルブVLV3は冷却用外気を熱交換器A2に供給するように切換わる。
【0030】
熱交換器B1もCO2吸着器Bに密着(隣接)し一体化されている。従って、高温の排気熱によりCO2吸着器Bが加熱され、CO2吸着器Bに吸着されていたCO2は効率的に脱離されCO2排気経路を介して通路切り替えバルブVLV2に供給され圧縮機で圧縮されて耐圧ボンベに貯蔵される。
一方、熱交換器B1で熱交換された後にCO2吸着器Aに供給される排ガスは温度が低下しているので、排ガス中に含まれるCO2はCO2吸着器Aにおいて吸着され、その後、一方向バルブ1WAY-VLVを介して大気に放出される。
【0031】
又、このとき冷却用外気が通路切り替えバルブVLV3を介して熱交換器A2に供給されるので、CO2吸着器Aは急速に冷却され、CO2の吸着が促進される。CO2吸着器AでCO2が吸着されクリーン化された排ガスは、その後一方向バルブを介して大気に放出される。
このように、切り替え手段によって、第2の排気通路に切り替えられている際に、第2の吸着ユニット(ユニットB)に吸着されていたCO2を排気の熱により脱離する。それと共に、第1の吸着ユニット(ユニットA)に外気を導入して冷却することによって排気中のCO2の吸着を促進させることができる。
【0032】
即ち、本実施形態では、高温の排ガスをユニットAで熱交換してからユニットBへ供給するルートとその逆のルートを交互に切り替えることで、連続して排ガス中のCO2を吸着、脱離できるようにしている。更に、上記の切り替えに連動して吸着中のCO2吸着器に対する冷却動作も行っているので吸着効率を高めることができる。
ボンベに貯蔵されたCO2は例えばガスステーション等で空のボンベと交換され、ボンベに貯蔵されたCO2は再生工場等に持ち込まれて再利用される。
【0033】
尚、本実施形態においては、2つのユニットA、Bを交互に用いているが、3つ以上のユニットを順番に循環的に用いるようにしても良い。
図3は本実施形態に係るCO2吸着材の温度に対するCO2吸着特性の例を示す図である。本実施形態では、CO2吸着材として、例えばリチウム複合酸化物、ゼオライト等を用いているが、これらに限定されない。
【0034】
図3においてDRY線に示すようにCO2吸着材は低温(T1)で吸着、高温(T2)で脱離作用を持つが、一般的に水分が存在すると、図3のWET線のように大幅にCO2吸着量が低減する。これはCO2との競争吸着が発生するためである。よってCO2吸着材に排気ガスを供給する前に脱水処理を行うことで効率的にCO2吸着を行うことができる。従って、例えば熱交換器A1、B1からCO2吸着器B、Aへの排ガス経路中に夫々水吸着材を有する不図示の水吸着器A、Bを配置することが望ましい。
【0035】
図4は本実施形態に係る水吸着材の温度に対する水吸着特性を示す図であり、低温(T3)で水を吸着し、高温(T4)で水を脱離する。尚T3、T4は夫々例えばT1、T2と略同じ温度であっても良い。
従って、夫々の水吸着器A、Bは熱交換器A1、B1に密着(隣接)して配置することが望ましい。それによって熱交換器A1、B1からCO2吸着器B、Aへ供給される排ガス中の水分を事前に効率的に除去することができる。尚、水吸着材としては、例えばリチウム複合酸化物、ゼオライト等吸着材を用いることができる。
【0036】
図5は、本実施形態に係るユニットAの構成例を示す模式図である。吸着ユニットとしてのユニットA、ユニットBは同じ構成を有するのでユニットBの構成についての説明は省略する。
図5において、HL1、HL2は熱交換器A1を構成し内燃機関からの、CO2吸着材を加熱するための排気が導入される加熱経路を備える加熱経路層である。又、CL1、CL2は熱交換器A2を構成しCO2吸着材を冷却するための外気が導入される冷却経路を備える冷却経路層である。又、SL1、SL2はCO2吸着器Aを構成する吸脱離経路層である。吸脱離経路層は排気通路と連通する吸脱離経路と、吸脱離経路に導入された排気中のCO2を低温時に吸着させる吸着動作と、吸着されたCO2を高温時に脱離させる脱離動作とを行うCO2吸着材を備える。
【0037】
ユニットAは図5に示すように多層構造の3次元構造を有する。即ち、吸脱離経路層と加熱経路層と冷却経路層を夫々少なくとも1層以上有し、それらを積層した状態で一体化されている。又、本実施形態では、ユニットAは、CO2吸着器を構成する吸脱離経路層を、熱交換器A1を構成する加熱経路層と、熱交換器A2を構成する冷却経路層とで挟んで密着(隣接)する3層構造を少なくとも含んでいる。尚、層の数は3に限定されない。
【0038】
図5の構成例では6層の例が示されている。又、層の順番も図5の順番に限定されない。但し、熱交換器A2を構成する冷却経路層は吸着ユニットとしてのユニットAの外側に露出するように積層されることが望ましい。尚、これらの多層構造の変形例については図9を参照して後述する。
図5に示すように、各層は、断面が例えば矩形のパイプが複数連結された構成となっている。
【0039】
Hは熱交換器A1(加熱経路層)を構成する加熱経路パイプ、Cは熱交換器A2(冷却経路層)を構成する冷却経路パイプ、SはCO2吸着器A(吸脱離経路層)を構成する吸脱離経路パイプである。尚、各パイプの断面形状は矩形に限定されない。また各パイプの断面形状や断面積等は各層毎に或いはパイプ毎に異なっていても良い。
【0040】
CO2吸着器を構成する吸脱離経路層の各パイプの内面にはCO2吸着材として、例えばリチウム複合酸化物、ゼオライト等吸着材が例えば塗布等により設けられている。
又、各層を構成するパイプは比熱容量が小さい素材によって構成するのが望ましい。従って素材としては金属系やセラミクスが好ましい。
【0041】
又、セラミクスで構成する場合は炭化珪素などが望ましい。尚、各層を構成するパイプは、パイプ形状でなくても良く、連通した穴を有する多孔質の素材(例えばセラミクス等)であっても良い。
又、前述のように、熱交換器A2、B2は冷却効果を高めるための構造であれば良く、簡単な形態としては断面が凹凸の放熱面積を増大させた溝形状のもの(例えば放熱フィン構造)であっても良い。
【0042】
図6図5のユニットAに設けられたボックスユニットの構成例を示す図である。
ユニットAのガス等が供給される右側(以下入口側)には、図6のように、ボックス31~36の積層構造から成るボックスユニット30が配置されている。ボックス31~36の、入口側とは反対の出口側(図中左側)は開放状態となっている。
【0043】
又、ボックス31、34は入口側に開口31a、34aを夫々有し、ボックス32、35は入口側に開口32a、35aを夫々有し、ボックス33、36は入口側に開口33a、36aを夫々有する。
尚、このボックスユニット30と同様の構造のボックスユニット30bが、図6のユニットAの左端(ガス排出側、出口側)に、ボックスユニット30に対して180度回転した向きに設けられている。
【0044】
図7図6の構造に対して設けられた仕切り枠ユニットの構成例を示す図である。
即ち、図6の構造の入口側(図中右側)には、仕切り枠401、402、403を図7のように並べた構造の仕切り枠ユニット40が設けられている。仕切り枠401、402、403は夫々ガス供給側とガス排出側が全面開口となっている。
尚、この仕切り枠ユニット40と同じ構造の仕切り枠ユニット40bが、図7のようにボックスユニット30bの左端(ガス排出側、出口側)に設けられている。
【0045】
図7のような仕切り枠401、402、403の開口に対して不図示の3つの配管を介して夫々高温排気導入路60から高温排気ガス、外気導入路61からは冷却用外気、低温排気導入路62からは低温排気の3種類を供給(入力)可能である。
図7の仕切り枠401から入った高温の排ガスはボックス31、34の開口31a、34aを介して熱交換器A1を構成する加熱経路層HL1、HL2の全ての加熱経路パイプHに供給される。そしてガス排出側に設けたボックスユニット30bと仕切り枠ユニット40bを介してまとめられて排出される。
【0046】
又、図7の402から入った冷却用の外気はボックス32、35の開口32a、35aを介して熱交換器A2を構成する冷却経路層CL1、CL2の全ての冷却経路パイプCに供給される。そしてガス排出側に設けたボックスユニット30bと仕切り枠ユニット40bを介してまとめて排出される。
【0047】
又、図7の403から入った低温の排ガスはボックス33、36の開口33a、36aを介してCO2吸着器Aを構成する吸脱離経路層SL1、SL2の全ての吸脱離経路パイプSに供給される。そしてガス排出側に設けたボックスユニット30bと仕切り枠ユニット40bを介してまとめて排出される。
【0048】
図8は、図7の構造をカバー50で覆った構成例を示す図である。カバー50は環境影響を小さくするために断熱特性が良好な(熱伝導率が低い)材料を用いることが望ましい。
尚、図5図8はユニットAについて説明したが、ユニットBも同様の構成を有する。
【0049】
図9図5に示した多層構造のユニットの断面の他の例を示す図である。図9(A)はユニットAやBを3層で積層した例を示す。前述したように、Hは熱交換器A1を構成する加熱経路パイプ、Cは熱交換器A2を構成する冷却経路パイプ、SはCO2吸着器Aを構成する吸脱離経路パイプである。
【0050】
図のように、CO2吸着器Aを構成する吸脱離経路層は複数の吸脱離経路パイプSから構成され、熱交換器A1を構成する加熱経路層は複数の加熱経路パイプHから構成され、熱交換器A2を構成する冷却経路層は複数の冷却経路パイプCから構成されている。そしてユニットが3層から構成される場合には、吸脱離経路層は加熱経路層と冷却経路層とで挟んで密着するように構成するのが望ましい。
【0051】
尚、図9(A)においては、各層は複数のパイプにより構成されているが、夫々1つだけの、例えば断面が細長い矩形のパイプによって各層を構成するようにしても良い。即ち、1つ以上の吸脱離経路パイプSから成る吸脱離経路層を、熱交換器A1を構成する1つ以上の加熱経路パイプHから成る加熱経路層と、熱交換器A2を構成する1つ以上の冷却経路パイプCから成る冷却経路層とで挟んで密着するように構成しても良い。
【0052】
図9(B)はユニットAやBを例えば5層で構成した例を示す。ユニットが5層の場合には、吸脱離経路層を、加熱経路層と冷却経路層とで挟んで密着(隣接)するように構成すると共に、2つの冷却経路層は図のように吸着ユニットの外側に露出するように配置するのが望ましい。
【0053】
図9(C)は図9(B)の変形例を示す。図9(C)のように、加熱経路パイプHと、冷却経路パイプCは例えば1つの層内に交互にかつ所定の周期で配置されていても良い。
【0054】
図9(D)~(H)に示すように、熱交換器A1としての加熱経路層、加熱経路パイプHと、熱交換器A2としての冷却経路層、冷却経路パイプCと、CO2吸着器Aとしての吸脱離経路層、吸脱離経路パイプSの適宜の組み合わせが可能である。但し、吸脱離経路パイプSは加熱経路パイプHと冷却経路パイプCに挟まれるようにすると共に、冷却経路パイプCはユニットの外側に露出するように配置することが望ましい。
【0055】
又、図9(A)~(H)などにおいて、ユニットの外側に露出し外気を導入させる冷却経路層は断面が矩形や円形などの、断面の周囲が閉じたパイプ形状ではなく、断面の周囲の一部がオープンとなっている凹凸形状の溝(フィン形状の溝)としても良い。本実施形態における冷却経路層はそのような断面の一部がオープンとなっている、断面が凹凸の溝状の構造(放熱フィン構造)も含む。尚、冷却用の外気を導入する際に、冷却用のファンを用いて冷却効率を上げても良い。
尚、図9(A)~(H)では縦に多層化した例を示しているが、横に多層化したものであっても良い。
【0056】
図9(A)~(H)では、ユニットAについて説明したが、ユニットBも同様の構成を有するものとする。
又、前述のように、熱交換器A、BからCO2吸着器B、Aへの排ガス経路中に夫々水吸着器A、Bを配置する場合、水吸着器を図5図9に示す一体化された多層構造の中の、特に、加熱経路パイプHに隣接して配置するようにしても良い。水吸着器の構成はCO2吸着器Aを構成する吸脱離経路層と同様の構成で良く、水吸着器の各パイプの内面に水吸着材として、例えばリチウム複合酸化物、ゼオライト等吸着材を例えば塗布すれば良い。
【0057】
図10は、本実施形態のユニットAやBに対するガス等の供給と、排気の種類を示す図である。前述のように、ユニットAやBに対しては高温排気導入路60から高温排気ガス、外気導入路61からは冷却用外気、低温排気導入路62からは低温排気の3種類を供給(導入、入力)可能である。一方、排気(出力)としては低温排気ガス、高温外気、N2等の種類がある。
【0058】
次に図11図16を用いて本実施形態におけるCO2分離装置200の動作を詳細に説明する。
図11は、本実施形態に係るCO2分離装置200の各動作を説明するためのフローチャートであり、制御部ECUがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによってCO2分離装置200等における図11の各ステップの処理を行う。
【0059】
図12はTco2recセンサーA、Bの出力特性図である。図12に示すように、センサー出力Cco2とCO2濃度の関係は所定の範囲において略リニアな特性を有し、CO2濃度が所定の閾値Cco2limitに達するとTco2recセンサーA、BはCco2vを出力する。
【0060】
図11のステップS1でフローを開始し、ステップS2において、CO2を回収中か否か判断し、NoであればステップS10に進み、ステップS1にリターンする。ステップS2でYesであればステップS3において、フラグF_CO2RECが1であるか判別する。フラグF_CO2REC=1であればモードA(ユニットBを加熱し、ユニットAを冷却するモード)の状態であることを意味する。
【0061】
図13は、モードAにおいて、高温の排気ガスがユニットBに供給されている状態を示す図である。図13において、高温の排気熱により熱交換器B1を介してCO2吸着器Bが加熱され、ユニットBにおいてCO2の脱離が行われている。
又、ユニットBの熱交換器B1で熱交換された後の低温排気ガス(CO2やN2)は、ユニットAのCO2吸着器Aに供給され、低温排気ガス(CO2やN2)中のCO2はユニットAのCO2吸着器Aにおいて吸着され、N2が大気に排気される。
【0062】
このとき、冷却用の低温の外気がユニットAの熱交換器A2に供給されているので、CO2吸着器Aは十分に冷却されCO2吸着率は高い状態にある。
この状態においては、ステップS3でYesとなり、ステップS4に進み、Tco2recセンサーAによるCO2濃度検出を行う。
【0063】
Tco2recセンサーAにより検出されたCO2濃度Cco2が、ステップS5で所定の閾値Cco2limitに対応した値Cco2vより大きいと判別されればステップS6に進む。ステップS5でNoであればステップS10に進み、ステップS1にリターンする。ここでTco2recセンサーAの出力がCco2vより大きいということは、ユニットAのCO2吸着器Aによる吸着が飽和に近づき、一部のCO2が吸着されずに放出され始めたことを示している。
【0064】
従って、ステップS6ではフラグF_CO2REC=0に切り替えてモードB(ユニットAを加熱しユニットBを冷却するモード)に切り替える。これに伴って、ステップS7で通路切り替えバルブVLV1をユニットA側に切り替えると共にステップS8で切り替えバルブVLV2をユニットA側に切り替える。更に、ステップS9で切り替えバルブVLV3をB側に切り替えて、ユニットBに冷却用外気を供給して冷却を始める。それによりユニットA、Bは図13の状態から図14の状態に切り替わる。
【0065】
図14は、モードBに切り替えられ、高温の排気ガスがユニットA側に切り替えられて供給開始された直後の状態を示す図である。図14において、通路切り替えバルブVLV1をユニットA側に切り替えることによって、高温の排気熱により熱交換器A1を介してCO2吸着器Aが加熱され始める。これによって、ユニットAにおいてCO2の脱離の準備がなされる。
【0066】
又、ユニットAの熱交換器A1で熱交換された低温排気ガスはユニットBのCO2吸着器Bに供給され、低温排気ガス(CO2やN2)中のCO2はユニットBのCO2吸着器Bにおいて吸着され始め、CO2が低減されたN2が大気に排気される。又、ステップS9で冷却用の低温の外気がユニットBの熱交換器B2に供給されるので、CO2吸着器Bは急速に冷却され始め、CO2吸着率が上昇していく。従ってユニットA、Bは速やかに図15の状態に移行する。
【0067】
図15は、モードBにおけるユニットAとユニットBに対する夫々の入力と出力の関係を示す図であり、高温の排気ガスがユニットAに供給され、熱交換器A1を介して高温の排気熱によりCO2吸着器Aが加熱され、CO2が脱離されて出力される。又、このときステップS8で切り替えバルブVLV2がユニットA側に切り替えられているので、脱離されたCO2は圧縮機で圧縮されて耐圧ボンベに貯蔵される。
【0068】
ユニットAの熱交換器A1で熱交換された低温排気ガスはユニットBのCO2吸着器Bに供給され、低温排気ガス(CO2やN2等)中のCO2は、ユニットBのCO2吸着器Bにおいて吸着され、N2が大気に排気される。このとき、冷却用の低温の外気がユニットBの熱交換器B2に供給されているので、CO2吸着器Bは安定的に冷却されCO2吸着効率が高い状態で維持される。
ステップS9の後はステップ10に進みステップS2に戻る。このときモードBの状態なので、ステップS6でF_CO2REC=0と判別され、ステップS3においてNoとなり、ステップS11に進む。
【0069】
ステップS11において、Tco2recセンサーBによるCO2濃度検出を行う。ステップS12でCO2濃度Cco2が所定の閾値Cco2limitに対応した値Cco2vより大きければステップS13に進む。NoであればステップS10に進み、ステップS1にリターンする。それにより図15のモードBの状態が暫く続くことになる。その後、時間が経過すると、ユニットBのCO2吸着器Aによる吸着が飽和し始め、一部のCO2が吸着されずに放出され始めると、Tco2recセンサーBの出力がCco2vより大きくなる。
【0070】
するとステップS12がYesとなり、ステップS13に進み、フラグF_CO2REC=1に切り替えて、モードA(ユニットBを加熱しユニットAを冷却するモード)に切り替える。これに伴い、ステップS14で通路切り替えバルブVLV1をユニットB側に切り替えてユニットBを加熱開始すると共に、ステップS15で切り替えバルブVLV2をユニットB側に切り替え、ユニットBから離脱されたCO2を圧縮し耐圧ボンベに供給する。又、ステップS16で切り替えバルブVLV3をA側に切り替えて、ユニットAを冷却開始する。これによってユニットA、Bは図15の状態から図16の状態に切り替わる。又、ステップS10に進んでステップS1にリターンする。
【0071】
図16は、高温の排気ガスがユニットBに供給開始された直後の状態を示す図である。即ち、図16はモードAに切り替わった直後の状態を示している。図16において、通路切り替えバルブVLV1をユニットB側に切り替えたことにより、高温の排気熱により熱交換器B1を介してCO2吸着器Bが加熱され始める。これによって、ユニットBにおいてCO2の脱離の準備がなされる。
【0072】
又、ユニットBの熱交換器B1で熱交換された低温排気ガスはユニットAのCO2吸着器Aに供給され、低温排気ガス(CO2やN2)中のCO2は、ユニットAのCO2吸着器Aにおいて吸着され始め、CO2が低減されつつN2が大気に排気される。このとき、冷却用の低温の外気がユニットAの熱交換器A2に供給され、CO2吸着器Aは冷却され始め、CO2吸着率が上昇していく。
【0073】
尚、このとき、ユニットAはまだ熱い状態なので冷却用の外気が暖められて高温外気として出力される。その後、ユニットAの冷却が速やかに進み、図13に示されるモードAの安定状態に移行する。
ステップS1にリターンした後は、再びステップS2を介してステップS3に進む。このとき、モードA状態、即ちF_CO2REC=1なので、ステップS4でTco2recセンサーAによりCO2濃度を検出する。そして、検出されたCO2濃度Cco2がステップS5で所定の閾値Cco2limitに対応した値Cco2vより大きくなるまで暫く図13に示されるモードAの安定状態を維持する。
【0074】
以上のようにして、ユニットAとユニットBとをTco2recセンサーA、Bの出力に応じて交互に切り替えることで、CO2を連続的にかつ安定的に低減することができる。
以上実施形態を用いて説明したように、本実施形態によれば、内燃機関の排気ガスからCO2を効率的に回収することができ、大気中CO2濃度の増大抑止に貢献するコンパクトなCO2分離装置を実現することができる。又、移動装置としても、排出するCO2を効率的に低減することができると共に、移動装置全体を小型軽量化できる。又、内燃機関のCO2分離装置の制御手段による制御をコンピュータにより実行させることによって、複雑なハードウェアに依存せずに制御手段による制御を簡単に実現できると共に、調整や修正を適宜、容易にできる。
【0075】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば前述のように、本実施形態における密着や隣接とは、間に例えば熱伝導性の高い物質を挟んだ構造を含む。
【0076】
尚、本実施形態における制御の一部又は全部を上述した実施形態の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介してCO2分離装置や移動装置等に供給するようにしてもよい。そしてそのCO2分離装置や移動装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0077】
HL1、HL2 加熱経路層
CL1、CL2 冷却経路層
SL1、SL2 吸脱離経路層
H 加熱経路パイプ
C 冷却経路パイプ
S 吸脱離経路パイプ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16