(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152106
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20221004BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054750
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢登
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】鶫 雄太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 達也
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA35
3E172EA43
(57)【要約】
【課題】充填ノズルを外す際に当該ノズルに異常負荷が作用する様な使用や、想定外の使用(軸方向以外に充填ノズルを移動して、接続・解除すること)等の誤使用をされても、車両側レセプタクルの損傷を防止出来る充填ノズルの提供。
【解決手段】本発明の充填ノズル(10)は、車両側レセプタクル(40)に接続された水素タンク(FCV等において水素が供給される水素タンク)内に高圧水素を氷点下に冷却しつつ充填する水素充填装置に接続された充填ノズル(10)において、該充填ノズル(10)の本体(1)に回動自在に配設された第1の基端部材(2A)と、該第1の基端部材(2A)に回動自在に車両側レセプタクルに挿入された第2の基端部材(2B)を備え、前記第1の基端部材(2A)と前記第2の基端部材(2B)との間に、軸受としての機能を有する部材(ブッシュ部材4等)を配設している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側レセプタクルに接続された水素タンク内に高圧水素を氷点下に冷却しつつ充填する水素充填装置に接続された充填ノズルにおいて、
該充填ノズルの本体に回動自在に配設された第1の基端部材と、
該第1の基端部材に回動自在に車両側レセプタクルに挿入された第2の基端部材を備え、
前記第1の基端部材と前記第2の基端部材との間に、軸受としての機能を有する部材を配設していることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
第2の基端部材に第1の基端部材に当接して係止する凸部が形成されている請求項1の充填ノズル。
【請求項3】
前記軸受としての機能を有する部材はブッシュ状部材を含み、当該ブッシュ状部材はすべり軸受を構成する請求項1、2の何れかの充填ノズル。
【請求項4】
前記軸受としての機能を有する部材は弾性部材を含み、前記凸部にはテーパが形成され、該テーパに沿って弾性部材が配設されている請求項2、3の何れかの充填ノズル。
【請求項5】
前記軸受としての機能を有する部材はOリングの前後に配設された第1のバックアップリング及び第2のバックアップリングを含む請求項1~4の何れか1項の充填ノズル。
【請求項6】
本体のハウジングと車両側レセプタクルとの接続部には、軸受としての機能を有する部材が配設されている請求項1~5の何れか1項の充填ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池自動車(FCV)のタンク等に水素を充填する充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図5で例示する水素ステーションは、水素貯蔵タンク50、燃料充填系統を構成するディスペンサー60、充填ホース45等を備えている。係る水素ステーションにおいて、水素ガスを燃料として走行する車両A(FCV等)は、水素ステーションで充填ホース45先端に設けた充填ノズル30と車両側レセプタクル40とを接続することにより、水素ガスを充填している。ここで、ガソリン車と同等の利便性を確保するべく水素ガスを急速に充填する場合には、車両A内の水素タンク41内の温度が上昇してしまう。
そのため、水素ガスを冷却(例えば-40℃)し、車両Aの水素タンク41等の水素充填容器における最高使用圧力に応じて、水素充填容器内の圧力及び温度が所定範囲内になる様に制御して水素充填が行われる。
なお、
図5における符号51は、水素貯蔵タンク50からディスペンサー60に水素を供給する水素供給配管系を示す。
【0003】
本出願人は、シール構造の劣化を防止して、水素ガスの漏洩リスクの低減をはかった充填ノズルを提案している(特許文献1)。
係る従来技術(特許文献1)は有効な技術であるが、冷却された水素ガスの影響で、充填ノズルとレセプタクル(例えば、FCVにおける車両側レセプタクル)との接続部で結露した水が凍結し、充填ノズルが車両側レセプタクルに固着して、充填ノズルが外せなくなる恐れがある。また、係る従来技術(特許文献1)における充填ノズルは、当該充填ノズルと車両側レセプタクルとの接続を維持するクラッチ機構を備えているが、当該クラッチ機構を外す際に、充填ノズルにおけるレバーの突起にクラッチが係合して、充填ノズルを外せなくなる恐れがある。この様に充填ノズルが外せなくなると、作業員或いはユーザーが充填ノズルを回転して外そうとする場合がある。
しかし、充填ノズルを回転すると、車両側レセプタクルと充填ノズルの接触部では無潤滑の金属同士が摺動して凝着し、充填ノズルが更に外れ難くなってしまう。それと共に、金属同士の摺動により生じた金属粉が車両側に進入して、(水素と酸素を反応させて電気を作るための)電極触媒を損傷して発電効率が劣化するおそれが存在する。
さらに、充填ノズルのハウジングと車両側レセプタクルとの接続部においても、無潤滑の金属同士が摺動して凝着し、充填ノズルがより外れ難くなってしまう。
【0004】
従来技術における上述した不都合について、
図6を参照して説明する。
図6において、充填ノズル30は、水素貯蔵タンク50(
図5)から燃料充填系統51(
図5)を介して供給される水素ガスを、車両側レセプタクル40を介して、車載用水素タンク41(
図5)に充填する。充填ノズル30は、ノズル本体部31、本体部31に固定されたボデーピン32、本体部31に固定されたハウジング33を有している。
水素充填の際に燃料充填系統(
図5におけるディスペンサー60、充填ホース45等)を介して充填ノズル30に供給された水素ガスは、水素導入口31A、弁体34を経由して本体内流路31Dを流れ、ロッド35の開口35A、ロッド内流路35Bを経由して、レセプタクル内流路40A(
図1)を流過する。そして、車載用水素タンク41(
図5)内に流入する。ここで、
図5で示す様に充填ノズル30が車両側レセプタクル40と接合された状態では、弁体34とノズル本体部31の段部31Bで構成される開閉弁31Cは、スプリング37の弾性反撥力に抗して開放される。
図5において、充填ノズル30は、充填時等の加圧状態において、車両側レセプタクル40から充填ノズル30が外れてしまうことを防止するクラッチ機構36(クラッチ36A、レバー36B)を有している。
【0005】
図6において、水素ガスは図示しないガス冷却設備により冷却されて充填ノズル30に供給されており、冷却された水素ガスの影響で、充填ノズル30と車両側レセプタクル40との接続部で凍結して、充填ノズル30が車両側レセプタクル40から抜けなくなる場合がある。
充填ノズル30が車両側レセプタクル40から抜けなくなると、ユーザーは動転して、矢印Aで示す様に充填ノズル30を回転してしまい(捩じってしまい)、或いは、矢印Bで示す様に充填ノズル30を半径方向に押圧して、ラジアル荷重を負荷してしまうことがある。ここで、通常の充填操作では、充填ノズル30を矢印Aで示す様に回転して捩じること、或いは、充填ノズルを矢印Bで示す様に半径方向に押圧してラジアル荷重を負荷することは行わない。
充填ノズル30を矢印Aで示す様に回転して捩じること、或いは、充填ノズル30を矢印Bで示す様に半径方向に押圧してラジアル荷重を負荷する結果として、従来の充填ノズル30では、ボデーピン32のレセプタクル側先端部近傍(
図6ではボデーピン32の右端)が車両側レセプタクル40内径部と接触している領域で、点K1及び点K2において凝着が生じてしまう。ここで凝着は、異種の物質が接触して付着することを意味しており、いわゆる「かじった」状態である。
【0006】
また、明確には図示されていないが、従来の充填ノズル30のボデーピン32はレセプタクル40側の先端(
図6では左端)にテーパが形成されている。そして、テーパの基部(大径部:円筒形部分とテーパとの境界)がレセプタクル40内径と当接して、損傷を与える恐れがある。
さらに、前記ラジアル荷重が作用すると、ハウジング33が車両側レセプタクル40の中心軸と平行な状態から傾斜し、点K3、点K4で荷重を負荷することになる。ここで、充填ノズル30を車両側レセプタクル40と結合する際には、充填ノズル30のハウジング33の内径部及び車両側レセプタクル40の外径部には潤滑剤は塗布しない。そのため、ハウジング33と車両側レセプタクル40は無潤滑状態で摺動し、荷重が負荷された点K3、点K4で凝着が生じてしまう。
この様に、従来の充填ノズル30では、ボデーピン32と車両側レセプタクル40が接触する箇所と、ハウジング33と車両側レセプタクル40が接触する箇所の双方において凝着が生じ、充填ノズル30が車両側レセプタクル40から外せなくなってしまうという問題を有している。そして、充填ノズル30が車両側レセプタクル40から外せなくなった状態で、作業者が充填ノズル30を無理やり動かそうとすれば、車両側レセプタクル40を破損する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、充填ノズルを外す際に当該ノズルに異常負荷が作用する様な使用や、想定外の使用(例えば、軸方向以外の方向に充填ノズルを移動して、接続或いは接続解除すること)等の誤使用をされても、車両側レセプタクルの損傷を防止することが出来る充填ノズルの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の充填ノズル(10)は、
車両側レセプタクル(40)に接続された水素タンク(FCV等において水素が供給される水素タンク:図示せず)内に高圧水素を氷点下に冷却しつつ充填する水素充填装置に接続された充填ノズル(10)において、
該充填ノズル(10)の本体(1)に回動自在に配設された第1の基端部材(2A)と、
該第1の基端部材(2A)に回動自在に車両側レセプタクルに挿入された第2の基端部材(2B)を備え、
前記第1の基端部材(2A)と前記第2の基端部材(2B)との間に、軸受としての機能を有する部材(ブッシュ部材4等)を配設していることを特徴としている。
【0010】
本発明において、第2の基端部材(2B)に第1の基端部材(2A)に(後述する弾性部材5を介して)当接して係止する凸部(2BA)が形成されているのが好ましい。
【0011】
また本発明において、前記軸受としての機能を有する部材はブッシュ状部材(4)を含み、当該ブッシュ状部材(4)はすべり軸受を構成するのが好ましい。
或いは本発明において、前記軸受としての機能を有する部材は弾性部材(5:軸受:滑り軸受)を含み、前記凸部(2BA)にはテーパが形成され、該テーパに沿って弾性部材(5)が配設されているのが好ましい。
【0012】
そして本発明において、前記軸受としての機能を有する部材はOリング(6)の前後に配設された第1のバックアップリング(7A)及び第2のバックアップリング(7B)を含むのが好ましい。
【0013】
さらに本発明において、(充填ノズル)本体(1)のハウジング(3)と車両側レセプタクル(40)との接続部には、軸受としての機能を有する部材(8:軸受状部材)が配設されているのが好ましい。
【0014】
本発明において、第2の基端部材(2B)の長手方向におけるレセプタクル側端部(2BB)はレセプタクル(40)の内径部における段部(40B)と当接し、第2の基端部材(2B)におけるレセプタクル側端部よりもレセプタクル(40)から離隔する領域はレセプタクル(40)の半径方向内方に突出した箇所(40C)で支持されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述の構成を具備する本発明の充填ノズル(10)によれば、第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)との間に軸受としての機能を有する部材(ブッシュ部材4等)を配設しているので、第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)が直接接触することを防止することが出来て、金属部品同士が摺動しない。そして、金属同士の摺動により金属粉が生じることも無く、金属粉が車両側に進入して(水素と酸素を反応させて電気を作る)電極触媒を損傷することが防止され、発電効率が劣化することもない。
また、第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)との間に軸受としての機能を有する部材(ブッシュ部材4等)を配設したことにより、第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)の相対的な回転が可能であり、作業者或いはユーザーが給油ノズル(10)を誤って捻った(回転した)としても、第2の基端部材(2B)には当該回転は伝達されず、第2の基端部材(2B)とレセプタクル(40)との相対回転が防止され、レセプタクル(40)の内径部分が破損してしまうことが防止出来る。
【0016】
本発明において、第2の基端部材(2B)に第1の基端部材(2A)に(弾性部材5を介して)当接して係止する凸部(2BA)が形成されていれば、水素ガス充填時の高圧時に第2の基端部材(2B)が第1の基端部材(2A)より抜けてしまうことが防止できる。
また本発明において、前記軸受としての機能を有する部材がブッシュ状の部材(4:ブッシュ部材)であり、該ブッシュ状の部材(4)がすべり軸受を構成するのであれば、ブッシュ状の部材(4)は、無給油でも第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)の摩擦抵抗を小さくする作用を発揮する。
【0017】
或いは本発明において、前記軸受としての機能を有する部材は弾性部材(5:軸受:滑り軸受)であり、前記凸部(2BA)にはテーパが形成され、該テーパに沿って弾性部材(5)が配設されていれば、凸部(2BA)と第1の基端部材(2A)との間に隙間(G1)を形成し、当該隙間(G1)を設けることにより、第1の基端部材(2A)の金属面と第2の基端部材(2B)の金属面が接触することを防止出来る。
【0018】
本発明において、前記軸受としての機能を有する部材がOリング(6)の前後に配設された第1のバックアップリング(7A)及び第2のバックアップリング(7B)であれば、Oリング(6)、第1のバックアップリング(7A)及び第2のバックアップリング(7B)によりシール性を保持することが出来ると共に、Oリング(6)の保護機能を奏することが出来る。
そして、第1のバックアップリング(7A)が軸受(滑り軸受)として機能することにより、軸受(5)とOリング(6)と第2のバックアップリング(7B)と共に、第1の基端部材(2A)の金属面と第2の基端部材(2B)の相対回転を可能にする。
また、第2のバックアップリング(7B)は充填ノズル(10)の継手側部材(1、ノズル本体部、或いは第1の基端部材2A)のレセプタクル(40)側の部分がOリング(6)に当接することを防止し、以て、Oリング(6)を保護している。
【0019】
本発明において、第2の基端部材(2B)の長手方向におけるレセプタクル(40)側端部(2BB)はレセプタクル(40)の内径部における段部(40B)と当接し、第2の基端部材(2B)におけるレセプタクル(40)側端部よりもレセプタクル(40)から離隔する領域はレセプタクル(40)の半径方向内方に突出した箇所(40C)で支持されるのであれば、第2の基端部材(2B)の長さ方向におけるレセプタクル(40)側端部にはテーパが形成されていないので、従来技術の様にテーパの基部(第2の基端部における円筒形状部分との境界)がレセプタクル(40)の内径に当接することがなく(本発明ではテーパ自体が存在しない)、レセプタクル(40)の内径の損傷を防止することが出来る。
【0020】
さらに本発明において、(充填ノズル)本体(1)のハウジング(3)と車両側レセプタクル(40)との接続部に、軸受としての機能を有する部材(8:軸受状部材)を配設すれば、ハウジング(3)の内側面とレセプタクル(40)の外側面の金属面同士は非接触となり、そのため、ハウジング(3)が傾斜しても車両側レセプタクル(40)の外側面は損傷しない。
ハウジング(3)の内側面とレセプタクル(40)の外側面の金属面同士は非接触であることに加えて、軸受としての機能を有する部材(軸受状部材8)によりハウジング(3)の内側面とレセプタクル(40)の外側面とは相対的に回転することが可能になるため、ハウジング(3)の内側面とレセプタクル(40)の外側面とが凝着することを防止できる。
それに加えて、軸受としての機能を有する部材(8)を配設することにより、ハウジング(3)の内側面とレセプタクル(40)の外側面の間における半径方向隙間が減少し、充填ノズル(10)の中心軸とレセプタクル(40)の長手方向中心軸との傾斜も低減するので、充填ノズル(10)をレセプタクル(40)に挿入する際に、第1の基端部材(2A)と第2の基端部材(2B)により構成されるボデーピン(2)の損傷も軽減される。そのため、ボデーピン(2)に作用する荷重も分散され、低減される。
【0021】
これに加えて、前記弾性部材(5:軸受:滑り軸受)を設けることにより、第2の基端部材2Bの凸部(2BA)と第1の基端部材(2A)との間に隙間(G1)を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る充填ノズルを示す説明断面図であり、充填ノズルがFCVのレセプタクルに結合した状態を示す図である。
【
図2】
図1で示す充填ノズルがFCVのレセプタクルに結合していない状態の説明断面図である。
【
図4】軸受としての機能を有する部材(軸受状部材)の斜視説明図である。
【
図5】水素ステーションの概要を示す説明図である。
【
図6】従来の充填ノズルがFCVのレセプタクルに結合した状態を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に
図1~
図2を参照して、図示の実施形態に係る充填ノズル10において、特にボデーピン2に関する構造を説明する。ここで、充填ノズル10は水素充填装置60(
図5:ディスペンサー)に接続されており、車両側レセプタクル40に係合して車載用水素タンク41(
図5)内に高圧水素を冷却しつつ充填する。
充填ノズル10が車両(FCV)のレセプタクル40に結合した状態を示す
図1と、充填ノズル10が車両(FCV)のレセプタクル40に結合していない状態を示す
図2において、充填ノズル10は、ノズル本体1、本体部1に固定されたボデーピン2、本体部1に固定されたハウジング3を有している。そしてボデーピン2は、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bにより構成される。
【0024】
充填ノズル10における水素ガスの流路に関する構造を説明する。
ノズル本体1の水素供給側(
図1、
図2で右側)端部の中央部(上下方向中央部)には水素導入口1Aが設けられており、ノズル本体1のレセプタクル側(
図1、
図2で左側)にはレセプタクル40を挿入する空間1B(
図2参照)が形成されており、空間1Bにレセプタクル40が挿入される(
図1参照)。
充填ノズル10における上下方向中央部にはノズル本体内流路1Cが形成されており、ノズル本体内流路1Cは、水素導入口1Aからレセプタクル側空間1B(
図2)に延在している。
ノズル本体内流路1Cにはロッド9(9A、9B)が収容されている。ロッド9の先端(水素導入口1A側先端、
図1、
図2で右側)には弁体11が設けられ、弁体11は、ノズル本体内流路1Cの水素導入口1A近傍に形成された拡径部1D(
図1)に配置されている。弁体11、スプリング12、拡径部1Dの段部1E(
図1)により開閉弁1F(
図1)が構成されている。スプリング12は、弁体11をレセプタクル側の方向に付勢する付勢手段である。
【0025】
ロッド9は、弁体11に接続された細径部9Aと、中空部分を有する大径部9Bを備えており、大径部9Bの中空部はロッド内流路9Cを構成する。ロッド内流路9Cは上述したノズル本体内流路1Cの一部を構成する。ロッド9の細径部9Aと大径部9Bの境界部には連絡孔9Dが形成されており、連絡孔9Dを介してノズル本体内流路1Cの弁体11近傍の領域とロッド内流路9Cは接続される。
充填ノズル10と車両側のレセプタクル40が接続された状態を示す
図1では、開閉弁1Fはスプリング12の弾性反撥力に抗して開放され、充填ノズル10と車両側のレセプタクル40が接続されていない状態を示す
図2では、開閉弁1Fはスプリング12の弾性反撥力により閉鎖される。
充填ノズル10と車両側のレセプタクル40を接続して水素充填を行う際は(
図1)、燃料充填系統(
図5のディスペンサー60、充填ホース45等)を介して充填ノズル10に供給された水素ガスは、水素導入口1A、ノズル本体内流路1C、連絡孔9D、ロッド内流路9C、レセプタクル内流路40Aを流過し、図示しない車載用水素タンク(
図5の符号41)内に流入する。
なお、図示の実施形態においてもクラッチ機構36(クラッチ36A、レバー36B)が設けられている。
【0026】
次に、
図1、
図2を参照して、図示の実施形態に係る充填ノズル10におけるボデーピン2について説明する。
上述した様に、ボデーピン2は、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bにより構成されており、ボデーピン2は第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bに分けた「2部品構造」となっている。
第1の基端部材2Aは、その水素導入口1A側(
図1、
図2の右側)の端部近傍がノズル本体1の内側に位置しており、その内部にノズル本体内流路1Cが形成され、ノズル本体内流路1C内にはロッド9が配置されている。
第2の基端部材2Bは、その水素導入口1A側の部分(右側部分)は第1の基端部材2Aの内側に位置しており、そのレセプタクル40側の部分(左側部分)はレセプタクル40の内側に位置している。第2の基端部材2Bの内側にはノズル本体内流路1Cが形成され、ノズル本体内流路1C内にはロッド9が配置されている。
【0027】
第1の基端部材2Aはノズル本体1とは別体の部材であり、
図1、
図2において明確には図示されていないが、第1の基端部材2Aはノズル本体1に対して回動自在である。そのため、
図6において矢印Aで示す回転がノズル本体1に作用しても、当該回転は第1の基端部材2Aには伝達されない。第1の基端部材1Aとノズル本体1を回動自在に接続する機構(図示せず)は、公知、市販のものを使用することが出来る。
第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間に回転機構13が設けられており、回転機構13は、
図2における符号C内の部材であり、
図3で詳細に示されている。回転機構13は、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間で軸受として機能する部材であり、構成部材の総称である。図示の実施形態における回転部材13は、ブッシュ部材4、弾性部材5(軸受:滑り軸受)、Oリング6、Oリング6の両側(
図3では左右両側)に配設された第1及び第2のバックアップリング7A、7Bである。なお、
図1、
図2では煩雑さを回避するため、これら具体的部材のうちブッシュ部材4以外は符号を示していない。
ここで、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Aの間に転がり軸受等が介装されている訳ではない。なお、本明細書では、回転部材13或いは上述の部材4、6、7A、7Bを「軸受としての機能を有する部材」と記載する場合がある。
弾性部材5(軸受:滑り軸受)、Oリング6、第1及び第2のバックアップリング7A、7Bの構成、機能については、
図3を参照して後述する。
【0028】
図1、
図2において、上述した軸受としての機能を有する具体的な部材(「回転機構13」を構成する部材)に関し、ブッシュ状部材4はすべり軸受の機能を奏する。そのため、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間に潤滑剤の塗布等がされていなくても(無給油でも)、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの摩擦抵抗は小さくなる。すなわち、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの相対回転を許容する(第2の基端部材2Bは第1の基端部材2Aに対して回動自在である)。
図1で示す様に、第2の基端部材2Bの車両側レセプタクル40側の端部近傍(左端近傍)は、レセプタクル40内に挿入される。
作業者或いはユーザーが充填ノズル10を誤って捻る(回転:
図6の矢印A参照)操作をした場合、上述した様に第1の基端部材2Aはノズル本体1に対して回動自在であるため、当該回転(
図6の矢印A)は第1の基端部材2Aには伝達されない。そして、当該回転(
図6の矢印A)が第1の基端部材2Aに伝達されてしまったとしても、第1の基端部材2Aの回転は第2の基端部材2Bには伝達されず、第2の基端部材2Bとレセプタクル40との相対回転は防止される。そのため、レセプタクル40の内径部分が破損してしまうことが防止される。
【0029】
図1、
図2において、第2の基端部材2Bの水素導入口1A側の部分(右側)は第1の基端部材2Aの内側に位置しており、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bは接触していない。
第2の基端部材2Bの外周面には凸部2BAが形成されており、凸部2BAの両側(
図3の左右方向両側:凸部2BAの前後)には凸部2BAを挟む様に軸受5(弾性部材:
図3)及び第1のバックアップリング7Aが配置されている。そのため、水素ガス充填時に高圧が作用しても、第2の基端部材2Bは凸部2BAによって第1の基端部材2Aに係止され、第2の基端部材2Bが第1の基端部材2Aから抜け出してしまうことが防止される。
【0030】
図3には、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間の空間に、回転機構13を構成する滑り軸受5、Oリング6、第1及び第2のバックアップリング7A、7Bが介装された状態が拡大して示されている。なお、
図3には
図1、
図2で説明したブッシュ状部材4も示されている。
第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bは共に金属製であるため、金属同士が接触しない様に、滑り軸受5とOリング6が第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間に配置されている。金属同士が接触すると損傷し、金属粉が発生し、発生した金属粉が車両側に進入して電極触媒を損傷し、発電効率が劣化する等の不具合を生じるからである。
ここで、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間に回転機構13(ブッシュ部材4を含む)を介装することにより、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの平行な状態を保つように構成されている。
【0031】
図3において、滑り軸受5は、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間の空間において、第1のバックアップリング7Aと共に凸部2BAを挟む態様で、凸部2BAのテーパに沿って配設されている。
第1のバックアップリング7Aと共に凸部2BAを挟む態様で滑り軸受5を配設しているので、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの凸部2BAの先端部との間に隙間空間G1を保持され、そのため第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bが接触しない。その結果、第1の基端部材2Aの金属面と第2の基端部材2Bの金属面同士が接触することが防止され、且つ、異物(図示せず)が隙間G1に侵入することも防止される。
また、滑り軸受5は、ラジアル荷重(
図6の矢印B)が負荷されても、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bとの平行を維持する機能も有している。その意味で、バックアップリング7と同様な機能を発揮する。
【0032】
図3において、第1の基端部材2Aと第2の基端部材2Bの間には、滑り軸受5に加えて、Oリング6と第1のバックアップリング7Aと第2のバックアップリング7Bが設けられている。第1及び第2のバックアップリング7A、7Bは、Oリング6の前後(
図3で左右)に配設され、第1のバックアップリング7Aは滑り軸受5側(
図3で左側)に位置しており、第2のバックアップリング7Bは第1の基端部材2A側(
図3では右側:
図1では水素導入口1A側)に位置している。
Oリング6はシール性に加えて、回転機構13としての機能、すなわち第2の基端部材2Bと第1の基端部材2Aを相対回転可能にせしめる機能を有している。
【0033】
図3の左右方向について、Oリング6と第1の基端部材2Aの間に第2のバックアップリング7Bが配置される。
第2のバックアップリング7Bが当該位置に配置されていない場合には、金属製の第1の基端部材2AがOリング6に当接して、Oリング6が損傷してしまう恐れがある。そのため、図示の実施形態では、
図3で示す様に第2のバックアップリング7Bを配設しているので、第1の基端部材2AがOリング6に当接することはなく、Oリング6の損傷を防止している。
そして、Oリング6、第1及び第2のバックアップリング7A、7Bによりシール性を保持している。
【0034】
再び
図1及び
図2において、図示の実施形態に係る第2の基端部材2Bのレセプタクル40側の端部2BB(
図1)には、
図6の従来技術でボデーピン32の先端に形成されている様なテーパは形成されていない。図示の実施形態における第2の基端部材2Bのレセプタクル40側の端部2BBは平坦に形成されており、端部2BBはレセプタクル40の内径部における段部40B(
図1)と当接し、第2の基端部材2Bにおけるレセプタクル40側の端部よりもレセプタクル40から離隔する領域は、レセプタクル40の半径方向内方に突出した箇所40C(
図1)により支持されている。
そのため、
図6の従来技術と異なり、図示の実施形態の第2の基端部材2Bでは、テーパの基部(円筒形状部分との境界)がレセプタクル40の内径に当接することがなく(図示の実施形態ではテーパ自体が存在しない)、レセプタクル40の内壁(内径)を損傷することも無い。
【0035】
図1、
図2において、ノズル本体1のハウジング3と車両側レセプタクル40との接続部(
図1、
図2でハウジング3の左側端部近傍)には、軸受としての機能を有する部材8(軸受状部材)が配設されている。軸受状部材8はブッシュ状の部材であり、転がり軸受等を含む訳ではない。
ブッシュ状の軸受状部材8を、ハウジング3と車両側レセプタクル40との接続部に設けることにより、ハウジング3の内側面の金属面とレセプタクル40の外側面の金属面は非接触となり、そのため、ハウジング3が傾斜しても車両側レセプタクル40の外側面は損傷しない。
また、ブッシュ状の軸受状部材8を配設することにより、ハウジング3の内側面とレセプタクル40の外側面の金属面同士は非接触であることに加えて、ハウジング3の内側面とレセプタクル40の外側面とは相対的に回転することが可能であるので、ハウジング3の内側面とレセプタクル40の外側面とが凝着することを防止出来る。
【0036】
さらに、ブッシュ状の軸受状部材8を配設することにより、ハウジング3の内側面と車両側レセプタクル40の外側面の間における半径方向隙間が減少し、充填ノズル10の中心軸とレセプタクル40の長手方向中心軸との相対的な傾斜も低減するので、
図6の矢印Bで示す様なラジアル荷重を受けても、充填ノズル10が車両側レセプタクル40に対して傾くことが防止される。
そして、ハウジング3の内側面と車両側レセプタクル40の外側面の間における半径方向隙間が減少し、充填ノズル10の中心軸とレセプタクル40の長手方向中心軸との傾斜も低減するので、当該傾斜に起因して生じる不具合も軽減される。例えば、従来技術を示す
図6の様にハウジング3とレセプタクル40における点K3,点K4に負荷が集中することが回避され、充填ノズル10をレセプタクル40に挿入する際等に生じるボデーピン2(の損傷が軽減される。そして、前記傾斜が減少するため、ボデーピン2に作用する荷重も分散され、低減される。
また、充填ノズル10の中心軸とレセプタクル40の長手方向中心軸との傾斜も低減するため、クラッチ機構36を外す際に、充填ノズル10におけるクラッチレバー36B(の突起)とクラッチ36Aが係合して充填ノズル10がレセプタクル40から外すことが出来なくなることが防止される。
【0037】
ブッシュ状の軸受状部材8について、
図4を参照して説明する。
図4において、軸受状部材8には図示しない中心軸に対して傾斜する方向に延在する切込み8A(切れ目)が形成されている。ここで、
図1、
図2の状態では、軸受部材8の中心軸は、充填ノズル10の中心軸及びレセプタクル40の中心軸に平行に延在している。
ブッシュ状の軸受状部材8の内径寸法を「d」とし、車両側レセプタクル40(
図1、
図2)の外径寸法を「φ」とすると、軸受状部材8の内径寸法dは車両側レセプタクル40の外径寸法φに比較してやや小径に設定される。
車両側レセプタクル40における外形寸法φについては、車種、メーカーにより若干の相違が存在する。軸受状部材8に切込み8Aを設け、切込み8Aを広げない状態における軸受状部材8の内径dを、車両レセプタクル40の外形寸法φよりも小さく設定すれば、充填ノズル10を車両側レセプタクル40に接続した際に、切込み8Aの幅(周方向の長さ寸法)が拡大され、軸受状部材8がレセプタクル40の外周面を包囲することになる。それにより、車種、メーカーにより車両側レセプタクル40の外形寸法φが異なっていても、同一の軸受状部材8で対応することが出来るので、軸受状部材8の汎用性が向上する。
【0038】
図4において、軸受状部材8の切込み8Aが図示しない中心軸に対して傾斜する方向に延在しているのは、車両側レセプタクル40の外形が円筒形ではなく、例えば円を6面面取りした形状である場合に、切込み8Aが図示しない中心軸と平行に延在している場合、面取りした箇所に切込み8Aが位置してしまうと、切り込み8Aの幅は面取り箇所では広がらない(変化しない)ため、その様なレセプタクル40の外接円の直径に対して軸受状部材8の内径寸法dの調整が出来ない。
それに対して、軸受状部材8の切込み8Aが、
図4に示す様に斜めに延在する切込み8Aであれば、車両側レセプタクル40の外形が円を6面面取りした形状である場合において、レセプタクル40における面取りした部分だけでなく、面取りされていない円周にも(斜めに延在する切込み8Aが)位置する領域が存在することになり、面取りされていない領域の切込み8Aの幅が変化して、レセプタクル40の外径φに対応できる。
すなわち、斜めに延在する切込み8Aを形成した軸受状部材8であれば、円筒形のレセプタクル40における外形寸法φの相違にも適用できるし、6面面取りをした様な形状のレセプタクル40における外形寸法φの相違にも対応できる。
ただし、実機において、切込み8Aを軸受状部材8の中心軸と平行に延在させることも可能である。
【0039】
図示の実施形態によれば、上述した様に改良したので、車両(FCV)のレセプタクル40に充填ノズル10を挿入する際におけるボデーピン2の損傷が軽減され、充填ノズル10に回転力が付加されても、或いはラジアル荷重が作用しても、レセプタクル40とボデーピン2の第2の基端側部材2Bとが相対回転してしまうことが防止される。
また、金属同士が接触することが防止されるので、レセプタクル40の内径部(内周面)と充填ノズル10(第2の基端部材2B)の外周面、或いはレセプタクル40の外側面と充填ノズル10(ハウジング3)の内側面が凝着することが防止される。そのため、レセブタクル40から充填ノズル10が抜けなくなることが防止され、作業者やユーザーが給油ノズル10を回転したり(捻ったり)、半径方向の力(ラジアル荷重)を付加してしても、その力はレセプタクル40側に伝達されず、凝着の発生が防止できる。
さらに、充填ノズル10の中心軸とレセプタクル40の長手方向中心軸との傾斜も低減するので、ボデーピン2のレセプタクル40に対する傾斜も小さくなる。そして、ボデーピン2の一部がレセプタクル40の一部(例えば
図6における点K1、K2、K3、K4)にのみ当接して、ラジアル荷重が集中して作用すること(応力集中)により損傷や凝着が防止出来る。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0041】
1・・・ノズル本体
2・・・ボデーピン
2A・・・第1の基端部材
2B・・・第2の基端部材
2BA・・・凸部
2BB・・・第2の基端部材におけるレセプタクル側端部
3・・・ハウジング
4・・・ブッシュ部材
5・・・弾性部材(軸受或いは滑り軸受)
6・・・Oリング
7A・・・第1のバックアップリング
7B・・・第2のバックアップリング
8・・・軸受状部材
10・・・充填ノズル
40・・・車両側レセプタクル
40B・・・レセプタクルの内径部における段部
40C・・・レセプタクルの半径方向内方に突出した箇所