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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152108
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054753
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 美典
(72)【発明者】
【氏名】筒井 燦
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA37
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA80
3J104CA24
3J104DA05
3J104DA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油を供給できる直動案内装置を提供する。
【解決手段】直動案内装置1は、案内レール2と、スライダ本体31、エンドキャップ33、及びスライダ3と、案内レールとスライダ本体との間に規定される転動通路5、スライダ本体の内部に設けられ、第1軸方向に直交する所定面の第2軸方向において転動通路に隣接する戻し通路6、及びエンドキャップとリターンガイドとの間に規定され、転動通路5と戻し通路とを結ぶ方向転換通路を含む循環通路100において転動可能な転動体4と、を備える。循環通路は、所定面において第2軸方向に直交する第3軸方向に配置される第1循環通路100A、第2循環通路100B、及び第3循環通路100Cを含む。リターンガイドは、第3軸方向から、第1循環通路、第2循環通路、及び第3循環通路のそれぞれに潤滑油を供給する複数の給油口を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、
前記案内レールに第1軸方向に案内され、スライダ本体、前記第1軸方向において前記スライダ本体の端部に接続されるエンドキャップ、及び前記エンドキャップに対向するように前記スライダ本体と前記エンドキャップとの間に配置されるリターンガイドを含むスライダと、
前記案内レールと前記スライダ本体との間に規定される転動通路、前記スライダ本体の内部に設けられ、前記第1軸方向に直交する所定面の第2軸方向において前記転動通路に隣接する戻し通路、及びエンドキャップと前記リターンガイドとの間に規定され、前記転動通路と前記戻し通路とを結ぶ方向転換通路を含む循環通路において転動可能な転動体と、を備え、
前記循環通路は、前記所定面において前記第2軸方向に直交する第3軸方向に配置される第1循環通路、第2循環通路、及び第3循環通路を含み、
前記リターンガイドは、前記第3軸方向から、前記第1循環通路、前記第2循環通路、及び前記第3循環通路のそれぞれに潤滑油を供給する複数の給油口を有する、
直動案内装置。
【請求項2】
前記リターンガイドは、前記第1循環通路と前記第2循環通路との間に配置される第1油路と、前記第2循環通路と前記第3循環通路との間に配置される第2油路と、を有し、
前記第1油路の一端部は、前記第1循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、前記第1油路の他端部は、前記第2循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、
前記第2油路の一端部は、前記第2循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、前記第2油路の他端部は、前記第3循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含む、
請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記第1油路の流路面積及び長さと前記第2油路の流路面積及び長さとは等しい、
請求項2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記リターンガイドは、前記第1油路の中央部に接続される第3油路と、前記第2油路の中央部に接続される第4油路と、接続部において前記第3油路及び前記第4油路に接続される第5油路と、を有し、
前記第3油路の流路面積及び長さと前記第4油路の流路面積及び長さとは等しい、
請求項3に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記第1油路及び前記第2油路の流路面積は、前記第3油路及び前記第4油路の流路面積よりも小さく、前記第3油路及び前記第4油路の流路面積は、前記第5油路の流路面積よりも小さい、
請求項4に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置に係る技術分野において、特許文献1及び特許文献2に開示されているような、スライダ本体と、スライダ本体の端部に配置されるエンドキャップと、スライダ本体とエンドキャップとの間に配置されるリターンガイドとを備える直動案内装置が知られている。転動体は、案内レールとスライダとの間に規定される転動通路、スライダ本体の内部に設けられる戻し通路、及びエンドキャップとリターンガイドとの間に規定される方向転換通路を含む循環通路を転動する。
【0003】
エンドキャップには給油孔が設けられており、給油孔から供給された潤滑油はエンドキャップ内部に形成された給油溝を経由して、方向転換通路から、循環通路側に貫通する通油口を通して循環通路に吐出される。特許文献1では、方向転換通路に壁で二分割した油路を形成し、各油路の幅を、循環路の位置により変更する発明が記載されている。特許文献2には、方向転換路部品に油路を形成し、片側2列ある循環通路の中間に潤滑油及び出口を設けて、両方の循環通路に潤滑油を供給する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-133917号公報
【特許文献2】特開2008-138840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リターンガイドには、循環通路に供給される潤滑油が流通する油路が形成される。直動案内装置の剛性を向上させるために、循環通路の列数を、例えば片側3列以上とする場合がある。循環通路が3列以上設けられる場合、特許文献1に記載されている発明では、油路を分割するための壁が2つ以上必要となるため、各循環通路に適量の潤滑油を供給するための設計が困難である。特許文献2に記載の発明では、方向転換通路に形成される油路が一本であるため、複数の給油孔を形成しても、各給油孔から各循環通路に適量の潤滑油を吐出させるのが困難である。そのため、3列以上の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油を供給できる技術が要望される。
【0006】
本開示は、複数の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油を供給できる直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る直動案内装置は、案内レールと、前記案内レールに第1軸方向に案内され、スライダ本体、前記第1軸方向において前記スライダ本体の端部に接続されるエンドキャップ、及び前記エンドキャップに対向するように前記スライダ本体と前記エンドキャップとの間に配置されるリターンガイドを含むスライダと、前記案内レールと前記スライダ本体との間に規定される転動通路、前記スライダ本体の内部に設けられ、前記第1軸方向に直交する所定面の第2軸方向において前記転動通路に隣接する戻し通路、及びエンドキャップと前記リターンガイドとの間に規定され、前記転動通路と前記戻し通路とを結ぶ方向転換通路を含む循環通路において転動可能な転動体と、を備え、前記循環通路は、前記所定面において前記第2軸方向に直交する第3軸方向に配置される第1循環通路、第2循環通路、及び第3循環通路を含み、前記リターンガイドは、前記第3軸方向から、前記第1循環通路、前記第2循環通路、及び前記第3循環通路のそれぞれに潤滑油を供給する複数の給油口を有する。
【0008】
これによれば、少なくとも3つの循環通路が第3軸方向に配置されている場合において、第3軸方向に潤滑油を供給可能な給油口から、第1循環通路、第2循環通路、及び第3循環通路のそれぞれに潤滑油を供給することにより、3つの循環通路のそれぞれに適量の潤滑油を供給することができる。
【0009】
本開示に係る搬送装置の望ましい態様として、前記リターンガイドは、前記第1循環通路と前記第2循環通路との間に配置される第1油路と、前記第2循環通路と前記第3循環通路との間に配置される第2油路と、を有し、前記第1油路の一端部は、前記第1循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、前記第1油路の他端部は、前記第2循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、前記第2油路の一端部は、前記第2循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含み、前記第2油路の他端部は、前記第3循環通路に前記潤滑油を供給する前記給油口を含んでもよい。
【0010】
これによれば、第1油路が第1循環通路と第2循環通路との間に配置され、第2油路が第2循環通路と第3循環通路との間に配置されるので、第1油路の一端部に配置されている給油口、第1油路の他端部に配置されている給油口、第2油路の一端部に配置されている給油口、及び第2油路の他端部に配置されている給油口のそれぞれから供給される潤滑油の量を均一化することができる。したがって、第1循環通路、第2循環通路、及び第3循環通路のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0011】
本開示に係る搬送装置の望ましい態様として、前記第1油路の流路面積及び長さと前記第2油路の流路面積及び長さとは等しくてもよい。
【0012】
これによれば、第1油路を介して循環通路に供給される潤滑油の量と、第2油路を介して循環通路に供給される潤滑油の量とが均一化される。したがって、複数の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0013】
本開示に係る搬送装置の望ましい態様として、前記リターンガイドは、前記第1油路の中央部に接続される第3油路と、前記第2油路の中央部に接続される第4油路と、接続部において前記第3油路及び前記第4油路に接続される第5油路と、を有し、前記第3油路の流路面積及び長さと前記第4油路の流路面積及び長さとは等しくてもよい。
【0014】
これによれば、第3油路を介して循環通路に供給される潤滑油の量と、第4油路を介して循環通路に供給される潤滑油の量とが均一化される。したがって、複数の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0015】
本開示に係る搬送装置の望ましい態様として、前記第1油路及び前記第2油路の流路面積は、前記第3油路及び前記第4油路の流路面積よりも小さく、前記第3油路及び前記第4油路の流路面積は、前記第5油路の流路面積よりも小さくてもよい。
【0016】
これによれば、第5油路を流通した潤滑油が第3油路及び第4油路に分配される場合、第3油路を流通する潤滑油の不足及び第4油路を流通する潤滑油の不足が抑制される。また、第3油路を流通した潤滑油が第1油路を介して複数の給油口に分配されたり、第4油路を流通した潤滑油が第2油路を介して複数の給油口に分配されたりする場合、給油口から循環通路に供給される潤滑油の不足が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、複数の循環通路のそれぞれに適量の潤滑油を供給できる直動案内装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る直動案内装置を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る直動案内装置の一部を破断した正面図である。
図3図3は、実施形態に係る直動案内装置の一部を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係るエンドキャップ及びリターンガイドを示す図である。
図5図5は、実施形態に係るリターンガイドを示す図である。
図6図6は、実施形態に係るリターンガイドの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0020】
実施形態においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。水平面内のX軸(第1軸)に平行な方向をX軸方向(第1軸方向)とし、X軸に直交する水平面内のY軸(第2軸)に平行な方向をY軸方向(第2軸方向)とし、水平面に直交するZ軸(第3軸)に平行な方向をZ軸方向(第3軸方向)とする。YZ平面は、Y軸及びZ軸を含む所定面であり、X軸に直交する。
【0021】
図1は、実施形態に係る直動案内装置1を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る直動案内装置1の一部を破断した正面図である。図3は、実施形態に係る直動案内装置1の一部を示す断面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、直動案内装置1は、案内レール2と、案内レール2にX軸方向に案内されるスライダ3と、案内レール2とスライダ3との間に規定される転動通路5、スライダ3の内部に設けられる戻し通路6、及び転動通路5と戻し通路6とを結ぶ方向転換通路7を含む循環通路100において転動可能な転動体4とを備える。
【0023】
案内レール2は、スライダ3をX軸方向に案内する。案内レール2は、X軸方向に延在する。案内レール2は、X軸方向に延在する転動溝8を有する。転動溝8の内側に転動体4の少なくとも一部が配置される。転動溝8の内面は、転動体4を支持する転動面9を含む。転動体4は、転動面9に接触しながら転動する。
【0024】
転動溝8は、案内レール2の+Y側の側面及び-Y側の側面のそれぞれに3つずつ設けられる。案内レール2の+Y側の側面において、転動溝8は、Z軸方向に3つ配置される。案内レール2の-Y側の側面において、転動溝8は、Z軸方向に3つ配置される。
【0025】
スライダ3は、案内レール2に案内されながら、案内レール2に対してX軸方向に相対移動する。スライダ3の少なくとも一部は、転動体4を介して案内レール2に対向する。
【0026】
スライダ3は、X軸方向に延在するスライダ本体31と、X軸方向においてスライダ本体31の端部に接続されるエンドキャップ33と、エンドキャップ33に対向するようにスライダ本体31とエンドキャップ33との間に配置されるリターンガイド32とを含む。スライダ本体31は、金属製である。リターンガイド32及びエンドキャップ33のそれぞれは、合成樹脂製である。なお、リターンガイド32及びエンドキャップ33の一方又は両方が、金属製でもよい。例えば、リターンガイド32及びエンドキャップ33の一方又は両方が、鉄製でもよいし、鉄鋼製でもよいし、ステンレス製でもよいし、アルミニウム製でもよい。
【0027】
スライダ本体31は、案内レール2に跨るように配置される。スライダ本体31は、案内レール2の+Y側及び-Y側のそれぞれに配置される脚部31Fと、案内レール2よりも+Z側に配置され、一対の脚部31Fを連結する胴部31Bとを含む。
【0028】
スライダ本体31は、X軸方向に延在する転動溝10を有する。スライダ本体31の転動溝10は、案内レール2の転動溝8に対向する。転動溝10は、案内レール2に対向する脚部31Fの内面に形成される。転動溝10の内側に転動体4の少なくとも一部が配置される。転動溝10の内面は、転動体4を支持する転動面11を含む。転動体4は、転動面11に接触しながら転動する。
【0029】
転動溝10は、案内レール2よりも+Y側に配置されている脚部31Fの内面及び案内レール2よりも-Y側に配置されている脚部31Fの内面のそれぞれに3つずつ設けられる。案内レール2よりも+Y側に配置されている脚部31Fの内面において、転動溝10は、Z軸方向に3つ配置される。案内レール2よりも-Y側に配置されている脚部31Fの内面において、転動溝10は、Z軸方向に3つ配置される。
【0030】
転動体4は、金属製のボールである。転動体4は、複数設けられる。転動体4は、転動通路5、戻し通路6、及び方向転換通路7を含む循環通路100を転動しながら通過することができる。
【0031】
転動通路5は、転動面9と転動面11との間に規定される。転動通路5は、案内レール2とスライダ3との間においてX軸方向に延在する。転動体4は、転動通路5を転動しながらX軸方向に移動することができる。転動体4は、負荷を受けた状態で、転動通路5を転動する。転動通路5は、案内レール2と案内レール2よりも+Y側に配置されている脚部31Fとの間に3つ設けられる。転動通路5は、案内レール2と案内レール2よりも-Y側に配置されている脚部31Fとの間に3つ設けられる。転動体4は、転動面9及び転動面11のそれぞれに接触しながら、転動通路5を転動する。
【0032】
戻し通路6は、スライダ本体31の内部に設けられる。戻し通路6は、スライダ本体31の内部においてX軸方向に延在する。転動体4は、戻し通路6を転動しながらX軸方向に移動することができる。転動体4は、負荷を受けない状態で、戻し通路6を転動する。戻し通路6は、Y軸方向において転動通路5に隣接する。戻し通路6は、Y軸方向において、スライダ3の中心に対して転動通路5よりも外側に設けられる。実施形態において、戻し通路6は、脚部31Fの内部に設けられる。1つの転動通路5に対して1つの戻し通路6が設けられる。実施形態において、転動通路5は、6つ設けられる。戻し通路6も6つ設けられる。転動通路5と戻し通路6とは実質的に平行である。
【0033】
転動通路5を移動する転動体4の進行方向と戻し通路6を移動する転動体4の進行方向とは逆方向である。転動通路5に存在する転動体4が転動通路5を+X方向に進行するとき、戻し通路6に存在する転動体4は戻し通路6を-X方向に進行する。転動通路5に存在する転動体4が転動通路5を-X方向に進行するとき、戻し通路6に存在する転動体4は戻し通路6を+X方向に進行する。
【0034】
方向転換通路7は、転動通路5及び戻し通路6の一方から他方に転動する転動体4を通過させる。方向転換通路7は、エンドキャップ33とリターンガイド32との間に規定される。
【0035】
エンドキャップ33は、スライダ本体31の+X側の端部及び-X側の端部のそれぞれに接続される。エンドキャップ33は、例えばボルト33Bによりスライダ本体31に固定される。リターンガイド32は、エンドキャップ33に対向するように、スライダ本体31の+X側の端部及び-X側の端部のそれぞれに接続される。
【0036】
方向転換通路7は、転動通路5の+X側の端部と戻し通路6の+X側の端部とを結ぶように設けられる。方向転換通路7は、転動通路5の-X側の端部と戻し通路6の-X側の端部とを結ぶように設けられる。方向転換通路7は、転動通路5の端部と戻し通路6の端部とを結ぶ円弧状である。
【0037】
例えば転動通路5を+X方向に移動し、転動通路5の+X側の端部から方向転換通路7に進入した転動体4は、方向転換通路7を移動した後、戻し通路6の+X側の端部から戻し通路6に進入することができる。戻し通路6の+X側の端部から戻し通路6に進入した転動体4は、戻し通路6を-X方向に移動する。戻し通路6を+X方向に移動し、戻し通路6の+X側の端部から方向転換通路7に進入した転動体4は、方向転換通路7を移動した後、転動通路5の+X側の端部から転動通路5に進入することができる。転動通路5の+X側の端部から転動通路5に進入した転動体4は、転動通路5を-X方向に移動する。
【0038】
転動通路5、戻し通路6、及び方向転換通路7により、転動体4の循環通路100が形成される。転動体4が循環通路100を循環するように転動することにより、スライダ3は案内レール2に対して+X方向及び-X方向のそれぞれに相対移動することができる。
【0039】
実施形態において、循環通路100は、Z軸方向に3つ配置される。以下の説明においては、Z軸方向に配置される3つの循環通路100のそれぞれを適宜、第1循環通路100A,第2循環通路100B、及び第3循環通路100C、と称する。
【0040】
次に、図3図4、及び図5を参照しながら、実施形態に係るエンドキャップ33及びリターンガイド32について説明する。図4は、実施形態に係るエンドキャップ33及びリターンガイド32を示す図である。図5は、実施形態に係るリターンガイド32を示す図である。
【0041】
エンドキャップ33は、スライダ本体31の+X側の端部及び-X側の端部のそれぞれに固定される。リターンガイド32は、X軸方向において、スライダ本体31とエンドキャップ33との間に配置される。方向転換通路7は、エンドキャップ33とリターンガイド32との間に規定される。エンドキャップ33は、方向転換通路7の外側案内面7Aを有する。リターンガイド32は、方向転換通路7の内側案内面7Bを有する。図3に示すように、外側案内面7Aは及び内側案内面7Bのそれぞれは、XY平面において円弧状である。外側案内面7Aと内側案内面7Bとは間隙を介して対向する。外側案内面7Aは、X軸方向において、外側に凹むように形成される。内側案内面7Bは、X軸方向において、外側に突出するように形成される。
【0042】
エンドキャップ33は、案内レール2に跨るように配置される。エンドキャップ33は、案内レール2の+Y側及び-Y側のそれぞれに配置される脚部331と、案内レール2よりも+Z側に配置され、一対の脚部331を連結する胴部332とを含む。
【0043】
リターンガイド32は、エンドキャップ33に装着される。リターンガイド32は、エンドキャップ33に着脱可能である。リターンガイド32は、一対の脚部331のそれぞれに装着される。スライダ本体31に対向する脚部331の内面に、リターンガイド32が嵌る凹部34が設けられる。凹部34にリターンガイド32が嵌められることにより、リターンガイド32がエンドキャップ33に装着される。リターンガイド32が対向する凹部34の内面は、方向転換通路7の外側案内面7Aを含む。外側案内面7Aに対向するリターンガイド32の対向面は、方向転換通路7の内側案内面7Bを含む。
【0044】
エンドキャップ33は、潤滑油が供給される受入口60と、受入口60に供給された潤滑油が流通する油路61とを有する。リターンガイド32は、油路61を介して受入口60から供給された潤滑油が流通する油路50と、循環通路100に潤滑油を供給する給油口40とを有する。
【0045】
受入口60は、胴部332に設けられる。受入口60は、Y軸方向において胴部332の中央部に設けられる。受入口60は、直動案内装置1の外部に存在する潤滑油供給装置(不図示)から供給された潤滑油を受け入れる。潤滑油は、グリースを含む。潤滑油供給装置から供給された潤滑油は、受入口60を介して油路61に供給される。
【0046】
油路61の一端部は、受入口60に接続される。受入口60に供給された潤滑油は、油路61を流通する。油路61は、スライダ本体31に対向する胴部332の内面に形成された給油溝を含む。胴部332の内面とスライダ本体31のX軸方向の端面とが接続されることにより、油路61がスライダ本体31の端面で覆われる。
【0047】
油路61は、+Y側の脚部331に装着されるリターンガイド32及び-Y側の脚部331に装着されるリターンガイド32のそれぞれに向かって延在する。
【0048】
リターンガイド32は、循環通路100に潤滑油を供給する給油口40と、給油口40とエンドキャップ33の油路61とを接続する油路50とを有する。受入口60から供給され、油路61及び油路50を流通した潤滑油は、給油口40から循環通路100に供給される。給油口40は、転動体4の周囲に潤滑油を供給する。潤滑油により、転動体4の外面及び循環通路100の内面の摩耗が軽減される。
【0049】
油路50は、第1油路51A、第2油路51B、第3油路52A、第4油路52B、第5油路54、及び第6油路55を含む。油路50は、スライダ本体31に対向するリターンガイド32の内面に形成された給油溝を含む。リターンガイド32の内面とスライダ本体31のX軸方向の端面とが接続されることにより、油路50がスライダ本体31の端面で覆われる。
【0050】
実施形態において、給油口40は、方向転換通路7と戻し通路6との境界に設けられる。給油口40は、方向転換通路7及び戻し通路6の一方から他方に移動する転動体4に潤滑油を供給する。
【0051】
実施形態において、循環通路100は、Z軸方向に配置される第1循環通路100A、第2循環通路100B、及び第3循環通路100Cを含む。第1循環通路100Aは、第2循環通路100Bよりも+Z側に配置される。第3循環通路100Cは、第2循環通路100Bよりも-Z側に配置される。
【0052】
リターンガイド32の給油口40は、Z軸方向から、第1循環通路100A、第2循環通路100B、及び第3循環通路110Cのそれぞれに潤滑油を供給するように、複数設けられる。実施形態において、給油口40は、第1循環通路100Aに潤滑油を供給する第1給油口40Aと、第2循環通路100Bに潤滑油を供給する第2給油口40B及び第3給油口40Cと、第3循環通路100Cに潤滑油を供給する第4給油口40Dとを含む。
【0053】
第1給油口40Aは、第1循環通路100Aの内面の-Z側の端部に配置される。第1給油口40Aは、第1循環通路100Aの内側に向かって+Z方向に潤滑油を供給する。
【0054】
第2給油口40Bは、第2循環通路100Bの内面の+Z側の端部に配置される。第2給油口40Bは、第2循環通路100Bの内側に向かって-Z方向に潤滑油を供給する。
【0055】
第3給油口40Cは、第2循環通路100Bの内面の-Z側の端部に配置される。第3給油口40Cは、第2循環通路100Bの内側に向かって+Z方向に潤滑油を供給する。
【0056】
第4給油口40Dは、第3循環通路100Cの内面の+Z側の端部に配置される。第4給油口40Dは、第3循環通路100Cの内側に向かって-Z方向に潤滑油を供給する。
【0057】
第1給油口40Aの大きさ及び形状と、第2給油口40Bの大きさ及び形状と、第3給油口40Cの大きさ及び形状と、第4給油口40Dの大きさ及び形状とは、実質的に等しい。
【0058】
図5に示すように、リターンガイド32の油路50及び給油口40は、Z軸方向においてリターンガイド32の中心を通りY軸と平行な対称軸ASに対して線対称である。
【0059】
リターンガイド32の油路50は、第1循環通路100Aと第2循環通路100Bとの間に配置される第1油路51Aと、第2循環通路100Bと第3循環通路100Cとの間に配置される第2油路51Bとを含む。第1油路51Aは、第1循環通路100Aと第2循環通路100Bとの間において、Z軸方向に延在する。第2油路51Bは、第2循環通路100Bと第3循環通路100Cとの間において、Z軸方向に延在する。
【0060】
第1油路51Aの+Z側の端部は、第1循環通路100Aに潤滑油を供給する第1給油口40Aを含む。第1油路51Aの-Z側の端部は、第2循環通路100Bに潤滑油を供給する第2給油口40Bを含む。
【0061】
第2油路51Bの+Z側の端部は、第2循環通路100Bに潤滑油を供給する第3給油口40Cを含む。第2油路51Bの-Z側の端部は、第3循環通路100Cに潤滑油を供給する第4給油口40Dを含む。
【0062】
第1油路51Aの流路面積及び長さと第2油路51Bの流路面積及び長さとは等しい。
【0063】
また、リターンガイド32の油路50は、第1油路51Aに接続される第3油路52Aと、第2油路51Bに接続される第4油路52Bと、接続部53において第3油路52A及び第4油路52Bに接続される第5油路54とを有する。
【0064】
第3油路52Aの一端部と第4油路52Bの一端部とは、接続部53において接続される。第3油路52Aの他端部は、Z軸方向において第1油路51Aの中央部に接続される。第4油路52Bの他端部は、Z軸方向において第2油路51Bの中央部に接続される。
【0065】
第3油路52Aの流路面積及び長さと第4油路52Bの流路面積及び長さとは等しい。実施形態において、第3油路52Aの中間部は屈曲する。第4油路52Bの中間部は屈曲する。
【0066】
第5油路54は、Y軸方向に延在する。第5油路54の一端部は、第6油路55を介して、エンドキャップ33の油路61に接続される。第5油路54の他端部は、接続部53において第3油路52Aの一端部及び第4油路52Bの一端部に接続される。第5油路54は、接続部53において、第3油路52A及び第4油路52Bのそれぞれに分岐する。
【0067】
第1油路51A及び第2油路51Bの流路面積は、第3油路52A及び第4油路52Bの流路面積よりも小さい。第3油路52A及び第4油路52Bの流路面積は、第5油路54の流路面積よりも小さい。第5油路54の流路面積と第6油路55の流路面積とは等しい。
【0068】
第6油路55は、Z軸方向に延在する。第6油路55は、エンドキャップ33の油路61に接続される流入口55Aを有する。流入口55Aは、第6油路55の+Z側の端部に配置される。第6油路55の中間部は、接続部56において第5油路54に接続される。第6油路55の-Z側の端部にダミー流入口55Bが配置される。
【0069】
受入口60から給油口40に供給される潤滑油は、流入口55Aと接続部56との間の第6油路55の第1部分551を流通する。流入口55Aから流入した潤滑油の少なくとも一部は、接続部56とダミー流入口55Bとの間の第6油路55の第2部分552に流入する可能性がある。第2部分552に存在する潤滑油は、給油口40に供給されない。
【0070】
リターンガイド32に第2部分552が設けられ、油路50を対称軸ASに対して線対称にすることにより、リターンガイド32の向きを変えるだけで、+Y側の脚部331及び-Y側の脚部331のそれぞれにリターンガイド32を装着することができる。すなわち、リターンガイド32に第2部分552を設け、油路50を対称軸ASに対して線対称にすることにより、+Y側の脚部331に装着されるリターンガイド32と-Y側の脚部331に装着されるリターンガイド32とを共用することができる。なお、第2部分552は設けられなくてもよい。
【0071】
図6は、実施形態に係るリターンガイド32の一部を示す断面図であり、図5のA-A線矢視図に相当する。第3油路52Aは、給油溝を含む。図6に示すように、実施形態において、第3油路52Aは、深さDaの部分521と、深さDbの部分522とを含む。深さDa及び深さDbは、スライダ本体31のX軸方向の端面に接触するリターンガイド32の内面に対する深さである。深さDaは、深さDbよりも深い。部分522は、部分521よりも給油口40に近い。すなわち、第3油路52Aの流路面積は、給油口40に近いほど絞られる。第3油路52Aと同様、第4油路52Bは、部分521及び部分522を含む。第4油路52Bについての説明は省略する。
【0072】
次に、実施形態に係る潤滑油の供給方法について説明する。潤滑油供給装置から受入口60に潤滑油が供給される。受入口60に供給された潤滑油は、エンドキャップ33の油路61を流通した後、流入口55Aを介して第6油路55に流入する。第6油路55の第1部分551を流通した潤滑油は、接続部56を介して第5油路54に流入する。第5油路54を流通した潤滑油は、接続部53において、第3油路52A及び第4油路52Bのそれぞれに分配される。
【0073】
第3油路52Aを流通した潤滑油は、第1油路51Aに流入する。第1油路51Aに流入した潤滑油は、第1給油口40A及び第2給油口40Bのそれぞれに分配される。第1給油口40Aは、潤滑油を第1循環通路100Aに供給する。第2給油口40Bは、潤滑油を第2循環通路100Bに供給する。
【0074】
第4油路52Bを流通した潤滑油は、第2油路51Bに流入する。第2油路51Bに流入した潤滑油は、第3給油口40C及び第4給油口40Dのそれぞれに分配される。第3給油口40Cは、潤滑油を第2循環通路100Bに供給する。第4給油口40Dは、潤滑油を第3循環通路100Cに供給する。
【0075】
以上説明したように、本開示によれば、少なくとも3つの循環通路100がZ軸方向に配置されている場合において、Z軸方向に潤滑油を供給可能な給油口40から、第1循環通路100A、第2循環通路100B、及び第3循環通路100Cのそれぞれに潤滑油が供給される。そのため、3つの循環通路100のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0076】
第1油路51Aが第1循環通路100Aと第2循環通路100Bとの間に配置され、第2油路51Bが第2循環通路100Bと第3循環通路100Cとの間に配置される。これにより、第1油路51Aの+Z側の端部に配置されている第1給油口40A、第1油路51Aの-Z側の端部に配置されている第2給油口40B、第2油路51Bの+Z側の端部に配置されている第3給油口40C、及び第2油路51Bの-Z側の端部に配置されている第4給油口40Dのそれぞれから供給される潤滑油の量が均一化される。したがって、第1循環通路100A、第2循環通路100B、及び第3循環通路100Cのそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0077】
第1油路51Aの流路面積及び長さと第2油路51Bの流路面積及び長さとが等しい。そのため、第1油路51Aを介して循環通路100に供給される潤滑油の量と、第2油路51Bを介して循環通路100に供給される潤滑油の量とが均一化される。したがって、複数の循環通路100のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0078】
第3油路52Aの流路面積及び長さと第4油路52Bの流路面積及び長さとが等しい。そのため、第3油路52Aを介して循環通路100に供給される潤滑油の量と、第4油路52Bを介して循環通路100に供給される潤滑油の量とが均一化される。したがって、複数の循環通路100のそれぞれに適量の潤滑油が供給される。
【0079】
第1油路51A及び第2油路51Bの流路面積は、第3油路52A及び第4油路52Bの流路面積よりも小さく、第3油路52A及び第4油路52Bの流路面積は、第5油路54の流路面積よりも小さい。これにより、第5油路54を流通した潤滑油が第3油路52A及び第4油路52Bに分配される場合、第3油路52Aを流通する潤滑油の不足及び第4油路52Bを流通する潤滑油の不足が抑制される。また、第3油路52Aを流通した潤滑油が第1油路51Aを介して第1給油口40A及び第2給油口40Bに分配されたり、第4油路52Bを流通した潤滑油が第2油路51Bを介して第3給油口40C及び第4給油口40Dに分配されたりする場合、複数の給油口40のそれぞれから循環通路100に供給される潤滑油の不足が抑制される。
【符号の説明】
【0080】
1…直動案内装置、2…案内レール、3…スライダ、4…転動体、5…転動通路、6…戻し通路、7…方向転換通路、7A…外側案内面、7B…内側案内面、8…転動溝、9…転動面、10…転動溝、11…転動面、31…スライダ本体、31B…胴部、31F…脚部、32…リターンガイド、33…エンドキャップ、33B…ボルト、34…凹部、40…給油口、40A…第1給油口、40B…第2給油口、40C…第3給油口、40D…第4給油口、50…油路、51A…第1油路、51B…第2油路、52A…第3油路、52B…第4油路、53…接続部、54…第5油路、55…第6油路、55A…流入口、55B…ダミー流入口、56…接続部、60…受入口、61…油路、100…循環通路、100A…第1循環通路、100B…第2循環通路、100C…第3循環通路、331…脚部、332…胴部、521…部分、522…部分、551…第1部分、552…第2部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6