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特開2022-152111自動倉庫用ピッキング装置、自動倉庫システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152111
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】自動倉庫用ピッキング装置、自動倉庫システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20221004BHJP
   B65G 59/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B65G59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054759
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】川野 勉
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕輔
【テーマコード(参考)】
3C707
3F030
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS05
3C707CS05
3C707CY36
3C707FS01
3C707FT13
3C707FU01
3C707KT01
3C707KV01
3C707LT06
3C707LV12
3C707MT09
3C707MT13
3C707NS19
3F030AA04
3F030AB04
(57)【要約】
【課題】本開示の目的の一つは、複数の荷を安定的に保持可能な自動倉庫用ピッキング装置を提供することにある。
【解決手段】ある態様の自動倉庫用ピッキング装置3は、複数の荷10を保持可能な保持機構32によって保持した荷10を移動させるピッキング装置であって、保持機構32は、荷10を吸着する保持部34を複数有し、複数の保持部34は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいてピッキング対象の荷10の保持動作を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷を保持可能な保持機構によって保持した荷を移動させるピッキング装置であって、
前記保持機構は、荷を吸着する保持部を複数有し、
前記複数の保持部は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいて前記ピッキング対象の荷の保持動作を行う
自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項2】
前記保持機構は、前記表面状態に基づいて前記荷の表面のうち保持動作に適すると判断される特定領域を決定し、前記複数の保持部のうち当該特定領域に対応する保持部をオンにする
請求項1に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記表面状態に基づいて前記荷の表面のうち保持に適さないと判断される非特定領域を決定し、前記複数の保持部のうち当該非特定領域に対応しない保持部をオンにする
請求項1に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項4】
前記複数の保持部は、互いに直交する2方向に移動可能に並置され、
前記保持機構は、前記表面状態に基づいて前記荷の表面のうち保持に適すると判断される特定領域を選択し、当該特定領域を保持するように前記保持部を移動させる
請求項1に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項5】
ピッキング対象の荷の表面状態を検知する検知手段を有し、当該検知手段から前記表面状態を取得する
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項6】
予めピッキング対象の荷の表面状態が記憶された記憶装置から前記表面状態を取得する
請求項1から5のいずれか1項に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項7】
前記保持機構は、保持した荷の保持状態に応じて吸着位置を変更する
請求項1から6のいずれか1項に記載の自動倉庫用ピッキング装置。
【請求項8】
荷を保管可能な複数の保管部を有する棚部と、
前記棚部に入庫または出庫のために荷を移動する移動手段と、
複数の荷を保持可能な保持機構によって荷を移動させるピッキング装置と、
を備え、
前記保持機構は、
荷を保持する保持部を複数有し、
前記複数の保持部は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいて保持動作を行う
自動倉庫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫用ピッキング装置および自動倉庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
保管場所にある商品や一時的に置かれた商品等を出荷場所へ集めるための自動倉庫用ピッキング装置が知られている。例えば、特許文献1には、物品の上面を吸着して当該物品を吊り下げて移載先に移動させる物品移載装置が記載されている。この装置は、吸着パッドを有する吸着ブロックを複数含む吸着ユニットと、吸着制御部とを備えている。吸着制御部は、対象物品の寸法情報、対象物品の重量情報、対象物品の重心関する座標データなどに応じて吸着ブロックを水平方向に沿って移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-40130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以下の認識を得た。自動倉庫用ピッキング装置において、効率的に荷をピッキングするためには、複数の荷を同時にピッキングできることが望ましい。また、段ボールなどのケースに包まれた荷を取り扱う場合に、ケースにミシン目が開いていたり、ケースにシールが貼られていたり、ケース表面に滑り止め用のゴム等が設けられ、それにより表面に凹凸がある、等により吸着に適さない領域では十分な吸着力が得られず、荷の保持が不安定になる。特に、複数の荷を同時にピッキングする場合は、吸着に適さない領域の影響が顕著になり、荷の保持がより不安定になる。
【0005】
特許文献1に記載のピッキング装置は、吸着に適さない領域を避けて複数の荷を安定して保持するという観点からは十分な対応がなされていない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、複数の荷を安定的に保持可能な自動倉庫用ピッキング装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動倉庫用ピッキング装置は、複数の荷を保持可能な保持機構によって保持した荷を移動させるピッキング装置であって、保持機構は、荷を吸着する保持部を複数有する。複数の保持部は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいてピッキング対象の荷の保持動作を行う。
【0008】
本発明の別の態様は、自動倉庫システムである。この自動倉庫システムは、荷を保管可能な複数の保管部を有する棚部と、棚部に入庫または出庫のために荷を移動する移動手段と、複数の荷を保持可能な保持機構によって荷を移動させるピッキング装置と、を備える。保持機構は、荷を保持する保持部を複数有する。複数の保持部は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいて保持動作を行う。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の荷を安定的に保持可能な自動倉庫用ピッキング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の自動倉庫システムを概略的に示す平面図である。
図2】複数の荷が積層された荷姿の一例を示す斜視図である。
図3図1の自動倉庫システムの第1移動手段の一例を概略的に示す正面図である。
図4図1の自動倉庫システムの第2移動手段の一例を概略的に示す正面図である。
図5図1のピッキング装置の一例を示す図である。
図6図1のピッキング装置の保持機構を示す正面図である。
図7図1のピッキング装置の吸着機構を示す平面図である。
図8図7の吸着機構の吸着領域の第1例を示す平面図である。
図9図7の吸着機構の吸着領域の第2例を示す平面図である。
図10図1のピッキング装置のピッキング動作の一例を説明する説明図である。
図11図1のピッキング装置のデパレタイズ動作を説明するフローチャートである。
図12】第2実施形態のピッキング装置の吸着機構を示す平面図である。
図13図12の吸着機構の保持部を示す図である。
図14図12の吸着機構の保持部を示す図である。
図15図12の吸着機構の保持部を示す図である。
図16図12のピッキング装置のデパレタイズ動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
[第1実施形態]
図面を参照して第1実施形態に係るピッキング装置3を備えた自動倉庫システム1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る自動倉庫システム1を概略的に示す平面図である。
【0015】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する水平な方向をY軸方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。また、X軸に沿った方向を列方向と、Y軸に沿った方向を行方向と、Z軸に沿った方向を段方向(上下方向)ということがある。このような方向の表記は自動倉庫システム1の構成を制限するものではなく、自動倉庫システム1は、用途に応じて任意の構成で使用されうる。
【0016】
本明細書では、荷について下記の用語を用いる。内容物を収容した段ボール等のケースを「荷」という。荷には複数の物品が収容されてもよい。
【0017】
また、空荷のパレットを単に「パレット12j」という。一のパレット12j上に荷10が単数または複数載置されたものを「荷載パレット12」という。荷載パレット12は、荷10を複数含む荷の集合体を例示している。荷載パレット12はパレット12jとパレット12j上の荷10とを合わせたものを指している。荷載パレット12は、積層された複数の層から構成されてもよく、各層は複数の荷10を含んでもよい。例えば、荷載パレット12は、3つの層のそれぞれに6個の荷10を含んでいる。荷載パレット12は、自動倉庫システム1において、入庫、保管、出庫される最小単位であってもよい。荷10はピッキングを行うときに取り扱いされる最小単位であってもよい。
【0018】
図2は、複数の荷10が積層された荷姿の一例を示す斜視図である。内容物を取り出すために開封されることが想定された面を「反底面」といい、反底面とは反対側の底面をいう。図2の例では、反底面が上向面で、底面が下向面である非反転状態の荷10を示す。荷10は、反転装置(不図示)により反転され、底面が上向面で反底面が下向面である反転状態でピッキング等の荷扱いがなされてもよい。反底面は、底面よりも開封容易であってもよいし、底面は、反底面よりも高強度であってもよい。表示方法の一例として、ケースの側面に印字された文字が反転した向きであれば反転状態であるとしてもよい。
【0019】
図1に示すように、自動倉庫システム1は、荷10を保管可能な複数の保管部26を有する棚部22と、棚部22に入庫または出庫のために荷10を移動する移動手段14、16、18と、複数の荷10を保持可能な保持機構32によって荷10を移動させるピッキング装置3と、制御部50とを主に備える。
【0020】
移動手段14、16、18は、第1移動手段14(例えば、第1台車)と、第2移動手段16(例えば、第2台車)と、第3移動手段18(例えば、昇降装置)とを含む。第1移動手段14、第2移動手段16および第3移動手段18は、荷載パレット12を、行方向、列方向および段方向に移動させる搬送手段8を構成する。第1移動手段14は、荷載パレット12を行方向に沿って移動させうる。第2移動手段16は、荷載パレット12を列方向に沿って移動させうる。第3移動手段18は、荷載パレット12を段方向に移動させうる。
【0021】
例えば、搬送手段8は、荷載パレット12を棚部22の保管部26から搬出できる。例えば、搬送手段8は、荷載パレット12を棚部22の保管部26に搬入できる。例えば、搬送手段8は、荷載パレット12を棚部22の一の保管部26から棚部22の他の保管部26に搬送できる。
【0022】
棚部22は、多数の荷10を保管可能な保管スペースであり、保管棚と称されることがある。本実施形態の棚部22は、第2走行路44を挟んで分割された、2つの棚部22a、22bを含む。棚部22の構成は、複数の荷10を収容、保管可能であれば、特に限定されない。棚部22は、X軸方向(列方向)、Y軸方向(行方向)およびZ軸方向(段方向)に沿って配列された複数の保管部26を含む。各保管部26は、荷載パレット12を収容可能に構成されている。
【0023】
棚部22には、第1移動手段14が走行するための第1走行路40(例えば、第1レール)と、第2移動手段16が走行するための第2走行路44(例えば、第2レール)とが設けられる。第1走行路40は、棚部22a、22bおよびピッキング空間302においてY軸方向に延設される。第1移動手段14は、各保管部26の下部を走行できる。第2走行路44は、棚部22a、22bおよびピッキング空間302に隣接してX軸方向に延設される。
【0024】
(第1移動手段)
図3は、第1移動手段14の一例を概略的に示す正面図である。第1移動手段14は、モータ(不図示)によって複数の車輪14fを駆動し、空荷または荷載パレット12を搭載した状態で第1走行路40をY軸方向に走行する。第1移動手段14は、リフト機構14dによって載置台部14c上の荷載パレット12を昇降させる。図3において、上昇状態の載置台部14cを破線で示し、下降状態の載置台部14cを実線で示す。第1移動手段14は、荷載パレット12を保管部26に降ろすことができる。第1移動手段14は、荷載パレット12を保管部26から持上げて支持することができる。第1移動手段14は、第2移動手段16および第3移動手段18に乗降できる。
【0025】
(第2移動手段)
図4は、第2移動手段16の一例を概略的に示す正面図であり、第1移動手段14を搭載した状態を示している。第2移動手段16は、モータ(不図示)によって複数の車輪16fを駆動し、第2走行路44をX軸方向に走行する。第2移動手段16は、空荷の状態または荷載パレット12を搭載した状態の第1移動手段14を移送する。
【0026】
(第3移動手段)
図1に示すように、第3移動手段18は、第2走行路44に隣接して設けられる。第3移動手段18は、第1移動手段14および荷載パレット12を任意の収容段から他の収容段に昇降させることができる。図1の例では、全段に対して単一の入出庫部52が設けられ、入出庫部52に第3移動手段18が連設されている。
【0027】
この例では、入庫対象の荷載パレット12は、外部搬送手段54(例えば、フォークリフト)によって入出庫部52に搬入され、第3移動手段18によって目的の段に移送される。また、出庫対象の荷載パレット12は、保管されていた段から第3移動手段18によって入出庫部52の段に昇降され、入出庫部52に移送され、入出庫部52から外部搬送手段54によって運び出される。
【0028】
第3移動手段18は、荷載パレット12を伴った第1移動手段14を、最上収容段を含む各収容段に移送できる。各収容段に移送された第1移動手段14は、荷載パレット12を伴って各収容段の第2移動手段16に移動する。なお、第3移動手段18は、荷載パレット12を第1移動手段14に搭載した状態で昇降するものであってもよいし、荷載パレット12を単独で昇降するものであってもよい。
【0029】
図1に戻る。制御部50は、MPU(Micro Processing Unit)などを含んで構成され、ユーザからの操作結果に基づき、入庫、出庫、搬出、移送等のために荷載パレット12の移動を制御する。一例として、制御部50は、入出庫用の領域と保管部との間や、複数の保管部間で荷載パレット12を移送するように、第1移動手段14、第2移動手段16および第3移動手段18の動作を制御する。また、制御部50は、荷10をピッキングするためにピッキング装置3の動作を制御する。
【0030】
また、制御部50は、予めピッキング対象の荷の表面状態が記憶された記憶装置から表面状態を取得する。この例では、記憶装置は、情報管理センタ90に設けられたデータベースDBである。制御部50は、ネットワークNWを通じて、データベースDBからピッキング対象の荷の表面状態に関するデータを取得する。データベースDBには、ピッキング対象の荷について、吸着に適する特定領域のデータが事前登録されており、制御部50は、データベースDBから特定領域の登録データを取得できる。以下、本明細書において吸着に適する特定領域は、保持に適する特定領域を例示しており、吸着に適さない非特定領域は、保持に適さない非特定領域を例示している。
【0031】
図1図5を参照して、ピッキング装置3の構成を説明する。先に、ピッキング空間302を説明する。図1の例では、ピッキング空間302は、棚部22aに設けられるピッキング空間302aと、棚部22bに設けられるピッキング空間302bとを含む。ピッキング空間302は、1つの棚部に設けられてもよいし、棚部の一部に設けられてもよい。図5(A)は、ピッキング装置3を拡大して示す平面図である。図5(B)は、ピッキング装置3を拡大して示す側面図である。これらの図では、一部の柱や梁などの記載を省略している。ピッキング空間302は、ピッキング装置3を用いてピッキングを行うためのスペースであり、本実施形態では棚部22内に設けられている(図1も参照)。ピッキング空間302には、ピッキング前の荷載パレット12(以下、「第1荷載パレット12S」という)を載置するための第1載置部26pと、ピッキング後の荷載パレット12(以下、「第2荷載パレット12M」という)を載置するための第2載置部26sとが設けられる。
【0032】
なお、第1載置部26pおよび第2載置部26sは、ピッキング空間302内の特定の場所を指すものではなく、荷載パレット12を一時的に保管するスペースを指している。したがって、ピッキング空間302における第1載置部26pおよび第2載置部26sの位置や範囲はピッキング作業ごとに変化する場合もある。本実施形態の第1載置部26pおよび第2載置部26sは、保管部26と同様の構成を有する。
【0033】
本実施形態のピッキング空間302には、第1走行路40がY軸方向に延設されている。第1載置部26pおよび第2載置部26sは、第1走行路40上に設けられている。第1移動手段14は、第1載置部26pおよび第2載置部26sの下部を走行できる。ピッキング前の第1荷載パレット12Sは、第1移動手段14によって第1載置部26pに運び入れされる。ピッキング後の第2荷載パレット12Mは、第1移動手段14によって第2載置部26sから運び出される。
【0034】
ピッキング装置3の構成を説明する。図5(B)に示すように、ピッキング装置3は、ピッキング前の第1荷載パレット12Sから荷10をピッキングして第2荷載パレット12Mへ移載する。本実施形態のピッキング装置3は、いわゆるガントリ型のクレーン機構30と、保持機構32とを含んでいる。クレーン機構30は、一対の横梁30eと、横桁30kと、クレーン台車30dと、吊下げ部30jとを備える。一対の横梁30eは、ピッキング空間302の上部空間においてY軸方向両側に離隔して設けられる。横梁30eの両端は、縦柱30gの上端に支持される。
【0035】
横桁30kは、Y軸方向に延びるレール状の構造体で、一対の横梁30eの間に架け渡される。横桁30kは、横梁30e上をX軸方向に自走可能に構成される。横桁30kは、クレーンガータと称されることがある。クレーン台車30dは、横桁30k上をY軸方向に自走可能な台車である。クレーン台車30dは、トロリ台車と称されることがある。吊下げ部30jは、保持機構32をクレーン台車30dに吊下げるとともに、保持機構32をZ軸方向に上下動させることができる。また、吊下げ部30jは、保持機構32を水平に回転させることができる。保持機構32は、吊下げ部30jの先端に設けられ、荷10を持上げ可能に構成される。
【0036】
クレーン機構30は、保持機構32を水平な列方向および行方向(X軸方向、Y軸方向)に自在に移動可能に支持している。また、クレーン機構30は、保持機構32を段方向(Z軸方向)に移動可能に支持している。
【0037】
図6を参照して、保持機構32を説明する。図6は、保持機構32を示す正面図である。上述したように、保持機構32は、荷10を吸着して保持する保持部34を複数有する。複数の保持部34は、吸着機構33を構成する。
【0038】
また、図6に示すように、本実施形態のピッキング装置3は、画像を取得するためにカメラ391、392を備える。カメラ391、392は、保持機構32から下側の画像を取得可能に配置される。この例では、カメラ391、392は、保持機構32が保持する荷載パレット12の荷10を撮像可能な2つの第1カメラ391と、保持機構32の下側に位置する荷載パレット12を撮像可能な2つの第2カメラ392とを含む。第2カメラ392は、荷載パレット12と保持機構32の相対位置の検出できる。2つの第1カメラ391は、保持機構32の幅方向両側部に設けられている。2つの第2カメラ392は、保持機構32の幅方向両側部に設けられている。カメラ391は保持機構32に備えずに定位置で固定してても良い。カメラ392はセンサを使用してもよい。
【0039】
図7を参照して、吸着機構33を説明する。図7は、平面視の吸着機構33を示す図である。吸着機構33は、平向面視で略矩形形状を有する。吸着機構33には、複数の保持部34がX軸方向およびY軸方向のマトリックス状に配置される。図7の例では、吸着機構33は、X軸方向に17行×Y軸方向に14列で238個の保持部34を有する。この説明では、複数の保持部34を行符号1~17と列符号A~Mとを付して区別する。複数の保持部34は、それぞれが保持力の大きさを調整可能である。この例の保持部34は、空気を吸入することによって負圧による吸着力を発生させる。すなわち、この例の保持力は吸着力である。各保持部34は、負圧を調整して吸着力を増加したり低減したりすることができる。各保持部34は、負圧を調整して吸着力をオフにできる。保持部34の形状は四角形でも円形でもよい。
【0040】
各保持部34は、荷10を保持可能な吸着力を発生するオン状態と、吸着力を実質的に発生しないオフ状態とを切替できる。保持部34に荷10を吸着可能な吸着力を発生させることを「保持部34をオンにする」といい、実質的に吸着力を発生させないことを「保持部34をオフにする」という。吸着機構33は、複数の保持部34のオンとオフとを制御して吸着領域のパターン(以下、「吸着パターン」という)を変更できる。また、吸着機構33は、吸着パターンを調整して、一層のすべての荷10、一部の荷10または単独の荷10を吸着、保持できる。吸着パターンは、複数の保持部34のうちオンにする保持部34と、オフにする保持部34の平面位置をプロットした平面パターンである。
【0041】
図8を参照して、吸着機構33の吸着パターンの第1例を説明する。図8は、吸着機構33の吸着パターンの第1例を示す平面図である。この図は、荷載パレットの一つの層に積まれた12個の荷10に、13列17行の保持部34を重ねて示している。第1例では、吸着機構33は、太線で示した6個の荷10(10-A~10-F)を吸着する。この例では、荷10の上側表面のうちY軸方向で中央の1/3の領域を除いた両側の領域が、制御部50によって吸着に適すると判断された領域(以下、「特定領域P」という)である。また、荷10の上側表面のうち特定領域Pを除いたY軸方向の中央の1/3の領域を非特定領域Qという。図8では、特定領域Pをハッチングで示し、非特定領域Qを白抜きで示す。
【0042】
図8の例では、保持機構32は、6個の荷10-A~10-Fの特定領域Pに対応する保持部34をオンにする。具体的には、荷10-Aについて、A2、A5、B2、B5、C2、C5の保持部34をオンにし、荷10-Bについて、A7、A10、B7、B10、C7、C10の保持部34をオンにし、荷10-Cについて、D2、D5、E2、E5、F2、F5の保持部34をオンにし、荷10-Dについて、D7、D10、E7、E10、F7、F10の保持部34をオンにし、荷10-E、10-Fについて、それぞれY軸方向に連なるG2~G7、J2~J7の保持部34をオンにする。なお、オンにした保持部34に隣接する保持部34もオンにしてもよい。なお、保持機構32は、表面状態に基づいて荷10の表面のうち保持に適さないと判断される非特定領域を決定し、複数の保持部34のうち当該非特定領域に対応しない保持部34をオンにしてもよい。
【0043】
図9を参照して、吸着機構33の吸着パターンの第2例を説明する。図9は、吸着機構33の吸着パターンの第2例を示す平面図である。この図は、荷載パレットの一つの層に積まれた8個の荷10に、13列17行の保持部34を重ねて示している。第2例では、吸着機構33は、太線で示した5個の荷10(10-A~10-E)を吸着する。
【0044】
図8の例では、保持機構32は、5個の荷10-A~10-Eの特定領域Pに対応する保持部34をオンにする。具体的には、荷10-A、10-B、10-Cについて、それぞれX軸方向に連なるA1~M1、A2~M2、A5~M5、A6~M6の保持部34をオンにし、荷10-D、10-Eについて、それぞれY軸方向に連なるA7~A11、B7~B11、E7~E11、H7~H11、I7~I11、L7~L11、M7~M11の保持部34をオンにする。
【0045】
(ピッキング動作)
次に、図10を参照して、ピッキング装置3のピッキング動作を説明する。図10は、ピッキング装置のピッキング動作の一例を説明する説明図である。ピッキング動作は後述するデパレタイズ動作とパレタイズ動作を含む。この説明では、別種類の荷およびパレットを区別するために、符号の末尾に「-A」、「-B」、「-C」を付して表記する。図10では、荷10-Aを白抜きで、荷10-Bを直線ハッチングで、荷10-Cを破線ハッチングで示す。
【0046】
この例のピッキング動作では、出荷計画に基づいて第1荷載パレット12Sから荷10を取り出し、販売店などの仕向先へ出荷する第2荷載パレット12Mを作成する。第1荷載パレット12S-A、12S-B、12S-Cには、別種類の荷10-A、10-B、10-Cが積まれている。この動作で、荷載パレット12は、移動手段14、16、18によって移動される。
【0047】
図10の例では、ピッキング空間302の第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cに、第1荷載パレット12S-A、12S-B、12S-Cが置かれ、第2載置部26sに、第2荷載パレット12Mが置かれている。
【0048】
ピッキング装置3のピッキング動作によって、第1荷載パレット12S-Aから所要数の荷10-Aが取り出されて第2荷載パレット12Mに積み付けられる。同様に、第1荷載パレット12S-Bから所要数の荷10-Bが取り出されて第2荷載パレット12Mに積み付けられ、第1荷載パレット12S-Cから所要数の荷10-Cが取り出されて第2荷載パレット12Mに積み付けられる。
【0049】
ピッキング動作の過程において、保持機構32を水平に回転させて荷10の姿勢を変更してもよい。積み付けが済んだ第2荷載パレット12Mは、棚部22に移送されて一時保管されてもよいし、入出庫部52に移送されて倉庫外部に搬出されてもよい。これらの動作によりピッキング動作は終了する。
【0050】
(デパレタイズ動作)
次に、図10図11を参照して、ピッキング装置3のデパレタイズ動作の一例としてプロセスS110を説明する。図11は、プロセスS110のフローチャートである。ここでは、目標位置に置かれた第1荷載パレット12S-Bから複数(N個)の荷10-Bをピッキングするプロセスを説明する。この説明では、N個の荷10-Bは、ピッキング対象の荷であり、単に「荷10-B」と表記することがある。
【0051】
プロセスS110を開始したら、ピッキング装置3は、制御部50から、デパレタイズの指示を取得する(ステップS111)。一例として、この指示は、第1荷載パレット12S-Bの位置と、ピッキング対象の荷の配置および数量とを含む。
【0052】
ステップS111を実行したら、ピッキング装置3は、クレーン機構30をX軸方向またはY軸方向に走向させて保持機構32を目標位置に向かって移動させる(ステップS112)。
【0053】
ステップS112を実行したら、ピッキング装置3は、保持機構32が目標位置に到達したかどうかを判断する(ステップS113)。このステップで、目標位置に到達したかどうかは、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方の取得画像に基づいて判断できる。例えば、この取得画像に基づいて、第1荷載パレット12S-Bと、保持機構32との相対位置関係を認識し、目標位置との位置ずれが所定の基準値以下であるかによって、この判断をしてもよい。目標位置に到達していないと判断した場合(ステップS113のN)、ピッキング装置3は、処理をステップS112に戻し、ステップS112~S113を繰り返す。
【0054】
目標位置に到達したと判断した場合(ステップS113のY)、ピッキング装置3は、ピッキング対象の荷の表面状態を検知する検知手段39から当該表面状態を取得する。この例では、検知手段39は、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方である。したがって、ピッキング装置3は、ピッキング対象の荷の表面を撮像した表面画像を取得する(ステップS114)。このステップで、ピッキング装置3は、荷の表面画像から吸着に適さない領域(非特定領域)を決定する。一例として、非特定領域は、吸着の外乱要因を有する箇所、ケースの四隅、ケースの折り曲げ部分に近い箇所であってもよい。外乱要因を有する箇所は、ホットメルトが付着する箇所、ミシン目等を有する箇所、外部からの力による変形が多い箇所などが挙げられる。非特定領域を決定したら、ピッキング装置3は、非特定領域を避けて、荷の表面のうち吸着に適すると判断される特定領域を決定する。
【0055】
また、ピッキング装置3は、制御部50を通じて、データベースDBからピッキング対象の荷に関する特定領域の登録データを取得する(ステップS115)。ピッキング装置3は、登録データに基づいてピッキング対象の荷の特定領域を決定する。
【0056】
ステップS114、S115で特定領域を決定したら、ピッキング装置3は、特定領域に対応する吸着パターンを決定する(ステップS116)。このステップで、ピッキング装置3は、特定領域に応じて、複数の保持部34のうちオンにする保持部34と、オフにする保持部34を決定する。
【0057】
ステップS116で吸着パターンを決定したら、ピッキング装置3は、吸着パターンに基づいて、複数の保持部34をオンとオフとに制御するオン/オフ制御を実行する(ステップS117)。
【0058】
ステップS117で吸着力を発生させたら、ピッキング装置3は、保持機構32を下降させる(ステップS118)。
【0059】
ステップS118を実行したら、ピッキング装置3は、吸着機構33で第1荷載パレット12S-Bの荷10-Bを吸着し(ステップS119)、保持機構32を上昇させる(ステップS120)。
【0060】
ステップS120を実行したら、ピッキング装置3は、吸着が成功したかどうかを判断する(ステップS121)。このステップで、吸着が成功したかどうかは、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方の取得画像に基づいて判断できる。
【0061】
吸着が成功していないと判断した場合(ステップS121のN)、処理をステップS118に戻し、ステップS118~S121を繰り返す。これにより、ピッキング装置3は、保持機構32を再下降させて吸着動作をやり直す。
【0062】
このステップで、ピッキング装置3は、吸着した荷10の吸着状態(保持状態)に応じて吸着位置(保持位置)を変更してもよい。荷10の保持状態には、吸着した荷10の吸着状態を含む。つまり、ピッキング装置3は、複数の保持部34のうちオンにする保持部34と、オフにする保持部34を変更してもよい。
【0063】
吸着が成功したと判断した場合(ステップS121のY)、プロセスS110は終了する。上述のデパレタイズ動作で取り出された荷10は、パレタイズ動作によって別のパレットに積み付けされる。上述の各ステップは各種の変形が可能である。
【0064】
(パレタイズ動作)
パレタイズ動作では、ピッキング装置3は、制御部50から取得した荷10-Bの積み付け指示に基づいて、クレーン機構30を用いて保持機構32を積み付け位置に移動させ、荷10-Bを第2荷載パレット12Mに積み付ける。
【0065】
(入庫、出庫動作)
図1を参照して自動倉庫システム1の入庫動作および出庫動作を説明する。これらの動作は、制御部50によって制御される。入庫動作では、製造工場で作成された荷載パレット12は、トラック等によって自動倉庫システム1に運ばれ、外部搬送手段54によって入出庫部52に搬入される。入出庫部52に搬入された荷載パレット12は、第3移動手段18によって保管先の棚段に移送され、第1移動手段14と第2移動手段16によって保管先の保管部26に移送され、その保管部26に収容される。これらの動作により入庫が行われる。
【0066】
出庫動作では、搬送元の保管部26の荷載パレット12は、第1移動手段14と第2移動手段16によって第3移動手段18に移送され、第3移動手段18によって入出庫部52に移送される。入出庫部52に移送された荷載パレット12は、外部搬送手段54によってトラック(不図示)などに積み付けされる。これらの動作により出庫が行われる。ピッキング動作は、入庫動作の後に実行されてもよいし、出庫動作の前に実行されてもよい。
【0067】
以上のように構成された自動倉庫用ピッキング装置3の特徴を説明する。ピッキング装置3は、複数の荷10を保持可能な保持機構32によって保持した荷10を移動させるピッキング装置であって、保持機構32は、荷10を吸着する保持部34を複数有し、複数の保持部34は、ピッキング対象の荷の表面状態に基づいてピッキング対象の荷10の保持動作を行う。
【0068】
この構成によれば、ピッキング対象の荷の表面状態に応じて吸着機構33の吸着領域を変えるため、吸着に適さない領域の影響を減らして複数の荷を安定的に保持できる。
【0069】
本実施形態では、保持機構32は、表面状態に基づいて荷10の表面のうち吸着に適すると判断される特定領域を決定し、複数の保持部34のうち当該特定領域に対応する保持部34をオンにする。この場合、吸着に適する特定領域を吸着できるため、複数の荷を安定的に保持できる。複数の保持部34を選択的にオン/オフするため、保持部34に負圧を供給するコンプレッサの負担が減り、コンプレッサの小型化、省エネルギーの点で有利になる。
【0070】
本実施形態では、ピッキング対象の荷の表面状態を検知する検知手段39を有し、当該検知手段39から表面状態を取得する。この場合、ピッキング対象の荷に固有の外乱要因を検出できる。
【0071】
本実施形態では、予めピッキング対象の荷の表面状態が記憶された記憶装置から表面状態を取得する。この場合、登録データを用いるので、吸着に適さない領域の影響を一層減らせる。
【0072】
本実施形態では、保持機構32は、吸着した荷10の保持状態(吸着状態)に応じて吸着位置を変更する。この場合、ピッキング対象の荷に固有の外乱要因の影響を減らせる。
【0073】
自動倉庫システム1の特徴を説明する。自動倉庫システム1は、荷10を保管可能な複数の保管部26を有する棚部22と、棚部22に入庫または出庫のために荷10を移動する移動手段14、16、18と、複数の荷10を保持可能な保持機構32によって荷10を移動させるピッキング装置3と、を備える。保持機構32は、移動可能に設けられて荷10を吸着する保持部34を複数有する吸着機構33を有し、ピッキング対象の荷の表面状態を取得し、当該表面状態に基づいて吸着機構33の吸着領域を変える。
【0074】
この構成によれば、ピッキング対象の荷の表面状態に応じて吸着機構33の吸着領域を変えるため、吸着に適さない領域の影響を減らして複数の荷を安定的に保持できる。複数の荷が接した状態で保持動作を行うと、隣接する荷が相互作用を及ぼして保持が不安定になるが、この構成により、複数の荷を安定的に保持することができる。また、複数の荷を安定して支持できるので、保持機構32の移動速度を上げることができ、ピッキングの所要時間を短縮できる。例えば、ペットボトル飲料、缶飲料など、ケースに収容される内容物の重量が大きい場合、吸着機構吸着した際、保持機構32が荷10の表面に作用させる力が大きい場合、及び、環境への配慮のためケースの厚さが薄い場合等、おいて、たわんだ荷10どうしが接して相互に作用を及ぼし合っている状態でも安定して支持できる。
【0075】
[第2実施形態]
次に第2実施形態に係るピッキング装置3を説明する。本実施形態では、複数の保持部34は、吸着機構33内を互いに直交する2方向に移動可能に並置され、保持機構32は、表面状態に基づいて荷10の表面のうち吸着に適すると判断される特定領域を選択し、当該特定領域を吸着するように保持部34を移動させる点で第1実施形態と相違し、他の構成は同様である。重複する説明を省き、第1実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0076】
図12は、第2実施形態に係るピッキング装置3の吸着機構33を示す平面図である。吸着機構33は、平面視で略矩形形状を有する。吸着機構33には、複数の保持部34がX軸方向およびY軸方向のマトリックス状に配置される。図12の例では、吸着機構33は、X軸方向に5行×Y軸方向に4列で20個の保持部34を有する。この説明では、複数の保持部34を行符号1~5と列符号A~Dとを付して区別し、例えば「A1」のように表記する。
【0077】
複数の保持部34は、図示しない駆動手段によって駆動され、吸着機構33内を水平なX軸方向およびY軸方向に移動する。図12の例では、複数の保持部34は、第1支持部331、332、333、334、335と第2支持部336、337、338、339の各交点に支持されている。第1支持部331、332、333、334、335は、X軸方向に延伸し、Y軸方向に移動可能な可動ステージである。第2支持部336、337、338、339は、Y軸方向に延伸し、X軸方向に移動可能な可動ステージである。
【0078】
各保持部34は、複数(例えば4個)の吸着セル36を有する。4個の吸着セル36は、保持部34内をX軸方向およびY軸方向に移動可能にマトリックス状に配置される。各吸着セル36は、複数(例えば4個)の吸着パッド37を有する。この例の吸着パッド37は、空気を吸入することによって負圧による吸着力を発生させる。吸着パッド37は、負圧を調整して吸着力を増加したり低減したりすることができる。吸着パッド37は、負圧を調整して吸着力をオフにできる。
【0079】
図13図15は、吸着機構33の保持部34を示す図である。図13(A)、図14(A)、図15(A)は、側面視の保持部34を示し、図13(B)、図14(B)、図15(B)は、平面視の保持部34を示す。これらの図に示すように吸着セル36は、駆動機構38の支持リンク382、383に支持される。図13は、4つの吸着セル36の間隔が中間である中間状態の保持部34を示す。図14は、4つの吸着セル36の間隔を拡げた幅広状態の保持部34を示す。図15は、4つの吸着セル36の間隔を狭くした幅狭状態の保持部34を示す。
【0080】
このように、本実施形態の吸着機構33は、複数の保持部34をX軸方向およびY軸方向に移動するとともに、4つの吸着セル36の間隔を変え、さらに各吸着パッド37の吸着力をオン/オフ制御することにより、所望の吸着パターンを得ることができる。換言すれば、吸着機構33は、ピッキング対象の荷の特定領域を選択し、当該特定領域に対応する吸着パターンを実現するように、複数の保持部34を移動させ、吸着セル36の間隔を変え、吸着パッド37の吸着力をオン/オフ制御する。
【0081】
次に、図16を参照して、本実施形態のデパレタイズ動作の一例としてプロセスS210を説明する。図16は、プロセスS210のフローチャートである。ここでは、第1実施形態と重複する説明を省略する。また、パレタイズ動作は、第1実施形態と同様であり説明を省略する。
【0082】
プロセスS210を開始したら、ピッキング装置3は、制御部50から、デパレタイズの指示を取得する(ステップS211)。一例として、この指示は、第1荷載パレット12S-Bの位置と、ピッキング対象の荷の配置および数量とを含む。
【0083】
ステップS211を実行したら、ピッキング装置3は、クレーン機構30をX軸方向またはY軸方向に走向させて保持機構32を目標位置に向かって移動させる(ステップS212)。
【0084】
ステップS212を実行したら、ピッキング装置3は、保持機構32が目標位置に到達したかどうかを判断する(ステップS213)。このステップで、目標位置に到達したかどうかは、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方の取得画像に基づいて判断できる。例えば、この取得画像に基づいて、第1荷載パレット12S-Bと、保持機構32との相対位置関係を認識し、目標位置との位置ずれが所定の基準値以下であるかによって、この判断をしてもよい。目標位置に到達していないと判断した場合(ステップS213のN)、ピッキング装置3は、処理をステップS212に戻し、ステップS212~S213を繰り返す。
【0085】
目標位置に到達したと判断した場合(ステップS213のY)、ピッキング装置3は、ピッキング対象の荷の表面状態を検知する検知手段39から当該表面状態を取得する。この例では、検知手段39は、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方である。したがって、ピッキング装置3は、ピッキング対象の荷の表面を撮像した表面画像を取得する(ステップS214)。このステップで、ピッキング装置3は、荷の表面画像から吸着に適さない領域(非特定領域)を決定する。一例として、非特定領域は、吸着の外乱要因を有する箇所、ケースの四隅、ケースの折り曲げ部分に近い箇所であってもよい。外乱要因を有する箇所は、ホットメルトが付着する箇所、ミシン目等を有する箇所、外部からの力による変形が多い箇所などが挙げられる。非特定領域を決定したら、ピッキング装置3は、非特定領域を避けて、荷の表面のうち吸着に適すると判断される特定領域を決定する。
【0086】
また、ピッキング装置3は、制御部50を通じて、データベースDBから特定領域の登録データを取得する(ステップS215)。ピッキング装置3は、登録データに基づいて特定領域を決定する。
【0087】
ステップS214、S215で特定領域を決定したら、ピッキング装置3は、特定領域に対応する吸着パターンを決定する(ステップS216)。このステップで、ピッキング装置3は、特定領域に応じて、複数の保持部34の位置と、4つの吸着セル36の位置と、吸着パッド37のうちオンにする吸着パッド37と、オフにする吸着パッド37とを決定する。
【0088】
ステップS216で吸着パターンを決定したら、ピッキング装置3は、吸着パターンに基づいて、複数の保持部34を移動させ(ステップS217)、4つの吸着セル36の間隔を変え(ステップS218)、吸着パッド37のオン/オフ制御を実行する(ステップS219)。
【0089】
ステップS219を実行したら、ピッキング装置3は、保持機構32を下降させ(ステップS220)、吸着機構33で第1荷載パレット12S-Bの荷10-Bを吸着し(ステップS221)、保持機構32を上昇させる(ステップS222)。
【0090】
ステップS222を実行したら、ピッキング装置3は、吸着が成功したかどうかを判断する(ステップS223)。このステップで、吸着が成功したかどうかは、第1カメラ391および第2カメラ392の一方または両方の取得画像に基づいて判断できる。
【0091】
吸着が成功していないと判断した場合(ステップS223のN)、処理をステップS220に戻し、ステップS220~S223を繰り返す。これにより、ピッキング装置3は、保持機構32を再下降させて吸着動作をやり直す。
【0092】
このステップで、ピッキング装置3は、吸着した荷10の保持状態(吸着状態)に応じて吸着パターンを変更してもよい。
【0093】
吸着が成功したと判断した場合(ステップS223のY)、プロセスS210は終了する。上述のデパレタイズ動作で取り出された荷10は、パレタイズ動作によって別のパレットに積み付けされる。上述の各ステップは各種の変形が可能である。
【0094】
本実施形態は、第1実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0095】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。また、図面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0096】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0097】
実施形態の説明では、保持機構32は、空気の負圧によって吸着力を発生させる例を示したが、本発明はこれに限定されない。保持機構32は、荷10の上面に対して、荷10を上方へ移動させる力を作用させること可能な保持部を備えることができる。実施形態において、保持部の一例として、保持部34が示されている。例えば、保持機構32は、空気の負圧の代わりに、磁石等の磁気的吸引力や、その他の物理的原理に基づく吸引力を用いるものであってもよい。例えば、内容物がスチール缶の場合、保持機構32は、保持機構32に吸着パッド37の代わりに設けられた電磁石によってスチール缶を磁気的吸引することで、ケースを保持してもよい。
【0098】
実施形態の説明では、ピッキング空間302が、棚部22と一体的に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング空間302は、棚部22外に設けられてもよい。この場合、荷載パレット12は、フォークリフトなどの搬送機構によって、棚部22とピッキング空間302との間で搬送されてもよい。
【0099】
実施形態の説明では、第2移動手段16と第3移動手段18が別個に備えられる例を示したが、これに限定されない。第2移動手段として、荷載パレット12を段方向および列方向に移動可能な移動手段(例えば、スタッカークレーン)を採用してもよい。この場合、スタッカークレーンは、第1移動手段を搭載できないものであってもよいし、荷載パレット12とともに第1移動手段を搭載可能なものであってもよい。
【0100】
実施形態の説明では、全段に対して単一の入出庫部52が設けられ、入出庫部52に第3移動手段18が連設される例を示したが、これに限定されない。各段それぞれに入出庫部が設けられ、入出庫する荷は、フォークリフトによって各段の入出庫部に出し入れされてもよい。また、入出庫部は入庫部と出庫部とに分けられていてもよい。
【0101】
実施形態の説明では、ピッキング装置3が、第1荷載パレット12Sから取り出した荷10を第2荷載パレット12Mに移載する例を示したが、ピッキング装置3による荷10の移載先はパレットに限定されない。例えば、ピッキング装置3は、取り出した荷10をベルトコンベアなどに移載してもよいし、フォークリフトやトラックの荷台に移載してもよいし、第1移動手段14などの自走可能な台車上に移載してもよい。
【0102】
実施形態の説明では、ピッキング空間302が棚部22と同じ平面に設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されず、ピッキング空間302は棚部22とは異なる平面に設けられてもよい。
【0103】
保持機構32は、アームとハンドとによって荷の側方を保持してもよい。
【0104】
実施形態の説明では、ピッキング装置3が、ガントリ型のクレーン機構30によって天井側から支持される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ピッキング装置は多関節ロボットや別構成の支持手段によって支持されてもよい。また、ピッキング装置は側方の横壁に取付けられ、側方から支持される構成であってもよい。
【0105】
実施形態の説明では、ピッキング動作において、同一種の荷10の荷載パレット12から取り出した荷10を複数種の荷10の荷載パレット12に積み付ける例を示したが、本発明はこれに限定されない。ピッキング動作は、複数種の荷10の荷載パレット12から荷10を取り出す動作を含んでもよいし、取り出した荷10によって同一種の荷10の荷載パレット12を作成するものであってもよい。また、ピッキングによって作成された同一種の荷10の荷載パレット12を出庫するようにしてもよい。
【0106】
実施形態の説明では、ピッキング動作において、複数の第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cから単一の第2載置部26sにピッキングを行う例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数の第1載置部26pから複数の第2載置部26sにピッキングを行うようにしてもよい。
【0107】
実施形態の説明では、図10において、複数の第1載置部26p-A、26p-B、26p-Cが、Y軸方向に一列に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。複数の第1載置部を一列に配置することは必須ではなく、それぞれ離隔して配置されてもよい。
【0108】
実施形態の説明では、ピッキング装置3の全体が棚部22の平面範囲に含まれる例を示したが、本発明はこれに限定されない。ピッキング装置3の一部または全部は棚部22の平面範囲から外へ張り出してもよい。
【0109】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0110】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0111】
1 自動倉庫システム、 3 自動倉庫用ピッキング装置、 10 荷、 22 棚部、 26 保管部、 32 保持機構、 33 吸着機構、 34 保持部、 36 吸着セル、 37 吸着パッド、 39 検知手段。
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図16