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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152116
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】仏壇
(51)【国際特許分類】
   A47G 33/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A47G33/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054765
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】石野 聡
(72)【発明者】
【氏名】中條 将秀
(57)【要約】
【課題】薄型で省スペースであり、且つ明るく鮮明な画像を提示可能な仏壇を提供する。
【解決手段】この仏壇は、筐体と、前記筐体に収納され表示面に画像を表示可能に構成されたフラットパネルディスプレイと、前記フラットパネルディスプレイの表示面に配置され、前記表示面と略平行な主平面を有する半透過鏡と、前記フラットパネルディスプレイにおける表示を制御する表示制御部とを備える。フラットパネルディスプレイの表示面に仏壇画像や遺影写真などの各種画像が表示されると共に、その表示面には、表示面と略平行な主平面を有する半透過鏡が配置される。半透過鏡は、例えばガラス板を基板として形成され、その厚さを薄くコンパクトに形成することができる。フラットパネルディスプレイがOFFの場合には、半透過鏡の反射により、仏壇を通常の鏡として使用することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収納され表示面に画像を表示可能に構成されたフラットパネルディスプレイと、
前記フラットパネルディスプレイの表示面に配置され、前記表示面と略平行な主平面を有する半透過鏡と、
前記フラットパネルディスプレイにおける表示を制御する表示制御部と
を備えたことを特徴とする仏壇。
【請求項2】
前記半透過鏡の有効領域の面積をSh(=Wh×Hh)、前記フラットパネルディスプレイの表示領域の面積をSb(=Wb×Hb)とした場合、Wb/Whが0.1以上0.9以下であり、前記フラットパネルディスプレイの非表示領域の視野平均輝度が、前記表示領域の視野平均輝度よりも低い、請求項1に記載の仏壇。
【請求項3】
前記フラットパネルディスプレイの照度をEi(lx)、前記フラットパネルディスプレイの表示領域における平均輝度をLa(cd/m)、前記半透過鏡13の透過率をThとした場合、
La=K・(10+Ei)/Th(Kは0.001~10の定数)
の関係が成り立つ、請求項1に記載の仏壇。
【請求項4】
前記半透過鏡の照度を検知する照度センサを更に備える、請求項3に記載の仏壇。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記仏壇の使用者の後方にある物体までの距離に従い、前記非表示領域にオフフォーカス画像を表示させる、請求項1に記載の仏壇。
【請求項6】
前記物体までの距離を検出する距離センサを備え、前記表示制御部は、前記距離センサの検知出力に従って前記オフフォーカス画像の表示制御を行う、請求項5に記載の仏壇。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記仏壇の使用者の年齢に従い、前記フラットパネルディスプレイの輝度を制御する、請求項1に記載の仏壇。
【請求項8】
故人の声を生成する音声合成部を更に備え、
前記表示制御部は、前記音声に従い、前記フラットパネルディスプレイに表示される故人の遺影写真の表情を変更可能に構成された、請求項1に記載の仏壇。
【請求項9】
前記表示制御部は、前記フラットパネルディスプレイに表示される故人の遺影写真に画像処理を施して、現在存命である場合に予想される顔の写真に変更することが可能に構成された、請求項1に記載の仏壇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仏壇に関する。
【背景技術】
【0002】
仏壇は、仏教で仏を祀る壇全般を指し、寺院の仏堂において仏像を安置する壇である。また仏壇は一般家庭にも設置される。一般家庭に設置される仏壇は、仏教寺院の礼拝施設において本尊を祀る須弥壇(内陣)を小型化したものである。日本においては、家庭においても仏壇が設置され、先祖の供養に使われることが多い。
【0003】
一般家庭に設置される仏壇は、仏教宗派ごとに指定された様式にて、仏壇(木製の箱)の内部に本尊や脇侍の像・掛軸・供物などを置き、加えて先祖供養のための位牌や過去帳、法名軸なども祀るよう構成されている。仏壇の内部は通常、仏教各宗派の本山寺院の仏堂を模した作りになっている。
【0004】
伝統的な仏教は13の宗派に分かれており、具体的には、浄土系の浄土宗、浄土真宗、時宗、及び融通念仏宗、法華系の日蓮宗、密教系の真言宗、密教・法華系の天台宗、奈良仏教系の法相宗、律宗、及び華厳宗、並びに、禅系の臨済宗、曹洞宗、及び黄檗宗がある。教義上、各宗派とも遺影写真を飾る教えはない。仏壇の基となる寺院本堂は浄土を表したものあり、内陣も故人の遺影写真を置いておらず、仏壇もそれにならって遺影写真を飾らない。遺影写真は姿を記憶にとどめるための道具であり、それ以上のものではないので供えないとされる。
【0005】
しかし実際は、仏壇に遺影写真を置く家庭は多い。遺影写真を置くことで、故人にいつも見守られているという安心感や、故人との心の繋がりを保つことができる。遺影写真に手を合わせて故人への感謝や思いやりの気持ちを表すことで、孤独感などから来る精神的不安定な状態を取り除くことができる。
【0006】
また、近年は犬や猫などのペットが家族の一員となっており、ペットの死に際し、人間と同じように葬儀やお墓、仏壇を用意するケースも増えている。従前は、ペットは原則として人間と同じ仏壇には祀らないとしていたが、現在は必ずしもそうとは限らないケースも出てきている。このように、遺影写真を置いたり、ペットも祀ったりするなど、仏壇の使用形態は時代と共に変化している。
【0007】
上記のように、仏壇は、現代社会においても、先祖供養や故人と心の交流を深めるという重要な役割を持つが、その一方で、近年、一般家庭での仏壇の普及率が低下している。ある調査によれば、国内の一般家庭の6割以上が仏壇を持っておらず、仏壇離れが顕著となっている。その主な理由としては、核家族化により、年配者と同居する世帯が減少していること、賃貸住宅等において仏壇を設置するスペースが乏しいこと、住宅やライフスタイルの洋式化による住環境の変化などにより仏壇を設置する習慣が減ってきていること、洋風化した住宅と古風な外観の仏壇とがマッチしないこと、などが挙げられる。このような問題が、仏壇の普及率の低下を招いており、このような問題に対応した仏壇の提供が求められている。
【0008】
上記の要請から、省スペースで且つ洋風化した住環境にもマッチする仏壇が、例えば特許文献1により提案されている。この特許文献1の仏壇は、重ね合わせて設置され得る第1及び第2のフラットパネルディスプレイを備え、第2のフラットパネルディスプレイを透明ディスプレイとすることで、映像を立体的に表示可能としている。しかし、特許文献1の仏壇は、複数のフラットパネルディスプレイを重ね合わせた構成であるため、寸法が大きく、重量も大きくなり、現代の住宅のスペースに十分対応したものとは言い難い。また、複数のフラットパネルディスプレイが重ね合わされるため、周囲環境の明るさによっては、映像が暗く見えることが避けられず、鮮明な映像を再生することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5966887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、薄型で省スペースであり、且つ明るく鮮明な画像を提示可能な仏壇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る仏壇は、筐体と、前記筐体に収納され表示面に画像を表示可能に構成されたフラットパネルディスプレイと、前記フラットパネルディスプレイの表示面に配置され、前記表示面と略平行な主平面を有する半透過鏡と、前記フラットパネルディスプレイにおける表示を制御する表示制御部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る仏壇では、フラットパネルディスプレイの表示面に仏像や遺影写真などの各種画像が表示されると共に、その表示面には、表示面と略平行な主平面を有する半透過鏡が配置される。半透過鏡は、例えばガラス板を基板として形成され、その厚さを薄くコンパクトに形成することができる。このため、仏壇を薄型で軽量にすることができ、壁掛け設置が可能である。室内で設置スペースをほとんど要しない。また、フラットパネルディスプレイがOFFの場合には、半透過鏡の反射により、仏壇を通常の鏡として使用することができ、仏壇であることが一見して分からないため、洋風の室内にもマッチし、違和感が起こらない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薄型で省スペースであり、且つ明るく鮮明な画像を提示可能な仏壇を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】第1の実施の形態に係る仏壇10の斜視図である。
図1B】第1の実施の形態に係る仏壇10の概略断面図である。
図2】第1の実施の形態の仏壇10の電気回路の構成を説明するブロック図である。
図3】フラットパネルディスプレイ12、及び半透過鏡13のサイズに関し説明する概略図である。
図4】使用者の背後にある壁WLの見え方(虚像IWL)に関し説明する概略図である。
図5】Wb/Whを様々な値(例えば約0.7、0.5、0.25)に設置した場合の表示例を示している。
図6】使用者の眼の位置が移動した場合における壁WLの虚像IWLの見え方の変化について説明する概略図である。
図7A】第1の実施の形態の仏壇の変形例を説明する。
図7B】第1の実施の形態の仏壇の変形例を説明する。
図7C】第1の実施の形態の仏壇の変形例を説明する。
図8】第1の実施の形態の仏壇の変形例を説明する。
図9】フラットパネルディスプレイ12の表示領域DA2への表示例である。
図10】第2の実施の形態に係る仏壇10’の斜視図である。
図11】第2の実施の形態の仏壇10’の電気回路の構成を説明するブロック図である。
図12】第3の実施の形態に係る仏壇10’’の斜視図である。
図13】第4の実施の形態に係る仏壇10Xの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0016】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1A図1B及を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る仏壇を説明する。図1Aは第1の実施の形態に係る仏壇10の斜視図であり、図1Bは、その概略断面図である。
【0018】
この仏壇10は、一例として、筐体11と、フラットパネルディスプレイ12と、半透過鏡13と、スピーカ14と、マイクロフォン15と、カメラ16とから大略構成される。筐体11は、前面が開口された収容部(凹部)を備え、その収容部に、内側から順に、フラットパネルディスプレイ12及び半透過鏡13が収容して構成されている。
【0019】
フラットパネルディスプレイ12は、筐体11の収容部の内側に収容・固定され、半透過鏡13は、筐体11の収容部の、フラットパネルディスプレイ12よりも外側の位置に収容・固定される。フラットパネルディスプレイ12と半透過鏡13とは、フラットパネルディスプレイ12の表示面と、半透過鏡13の主平面とが、互いに略平行になるように配置される。半透過鏡13とフラットパネルディスプレイ12を略平行に配置していることにより、薄型な仏壇10が実現できる。それにより狭い室内でも場所を取らず仏壇を設置することができる。また、仏壇10を壁掛け型とすることも容易となり、特段の設置スペースを要しない。
【0020】
なお、フラットパネルディスプレイ12及び半透過鏡13の筐体11への固定方法は特定のものには限定されない。例えば筐体11の収容部に設けられた骨格部材への嵌合により固定されてもよいし、接着剤による接着により固定されてもよい。フラットパネルディスプレイ12は、半透過鏡13と直接接触してもよいし、接着層を介して接触していてもよい。又は、両者は空気などの気体層を介して接触又は隣接していてもよい。
【0021】
半透過鏡13、フラットパネルディスプレイ12、筐体11を含めた仏壇10の本体部の厚さは、一例としては60mm以下とすることができる。半透過鏡13の厚さは通常6mm以下と薄く、またフラットパネルディスプレイ12も50mm以下の厚みのものが入手可能であり、仏壇10の厚さは60mm以下とすることが可能である。
【0022】
フラットパネルディスプレイ12の表示面には、仏壇の映像を表示することができ、使用者は、それを半透過鏡13を介して視認することができる。半透過鏡13は、一例として、可視光に対し20~60%程度の透過率を有するものとすることができる。半透過鏡13は、その前面側と後面側の相対的な明るさの違いで、観察者が視認できる像を透過像から反射像、またはその逆へと変更することができる。前面側の明るさが後面側のそれよりも相対的に大きければ、仏壇10の使用者は、半透過鏡13からの反射像をより鮮明に観察することができる。逆に、後面側の明るさが前面側の明るさよりも相対的に大きければ、使用者は、半透過鏡13の後方にある物(フラットパネルディスプレイ12等)の映像をより鮮明に観察することができる。フラットパネルディスプレイ12の半透過鏡13を介した仏壇画像の照度が、使用者側(半透過鏡13の前面側)の照度よりも明るい場合、使用者はフラットパネルディスプレイ12の仏壇表示映像を鮮明に視認することできる。このように、本実施の形態の仏壇10は、半透過鏡13を使用していることにより、フラットパネルディスプレイ12がOFFの時は鏡として使用することができる。鏡として使用されている状態では、仏壇10の見栄えが仏壇風ではないため、仏壇10は例えば洋風な室内デザインにもマッチする。
【0023】
半透過鏡13の後面の照度が前面側のそれよりも相対的に小さい場合、特にフラットパネルディスプレイ12がOFFとされている場合には、使用者は半透過鏡13からの反射像を観測することができ、仏壇10を鏡として使用することができる。半透過鏡13を、例えばフラットパネルディスプレイ12がOFFの場合に鏡として使用する観点からは、半透過鏡13の可視域の透過率を5~70%の範囲とすることが好ましい。また、様々なタイプの色、反射率を持つ半透過鏡13を使用することが可能である(例えば出願人が製造販売している「ミロビュー」(登録商標)などのハーフミラー製品)。また、ほぼ通常の透明ガラス(例えば出願人が製造販売しているソーダライムガラス、オプティホワイト(登録商標)など)も使用できるようにしておけば選択肢が広がり汎用性が増大する。また図示は省略するが、半透過鏡13の前面または裏面側にタッチパネルを追加することも可能であり、これによりタッチ機能を有する仏壇10を提供することができる。
【0024】
図2のブロック図を参照して、第1の実施の形態の仏壇10の電気回路の構成を説明する。この電気回路は、図1A及び図1Bに示す仏壇10の本体部に内蔵されていてもよいし、図示しない電気配線により本体部と接続されたコントロールボックスに内蔵されていてもよい。
【0025】
この電気回路は、一例として、CPU21と、ROM22と、RAM23と、ハードディスクドライブ24と、表示制御部25と、インタフェース26~28と、入力制御部29とを備える。CPU21は、この仏壇10の制御全般を司る演算処理ユニットであり、ROM22等に格納される制御ソフトウェアに従って動作を制御する。インタフェース26~28は、スピーカ14、マイクロフォン15、及びカメラ16との間の信号の入出力の送受信及び信号変換を行う。入力制御部29は、タッチパネルや図示しないキーボード等からの入力信号を受信して、CPU21に転送する処理を担当する。
【0026】
図3を参照して、フラットパネルディスプレイ12、及び半透過鏡13のサイズに関し説明する。半透過鏡13は、その有効領域(面積Sh=Wh×Hh)がフラットパネルディスプレイ12(面積Sa=Wa×Ha)よりも大きな面積を有し(Sh>Sa)、その有効領域が、フラットパネルディスプレイ12を包含するように設置される。
【0027】
また、フラットパネルディスプレイ12は、その表示面の一部において、仏壇等を表示するための表示領域DA2を有し、その他の部分は非表示領域DA1とされる。非表示領域DA1には、仏壇等の映像は表示されず、後述するように使用者の背景にある物体等が表示され得る。なお、表示領域DA2の位置及び大きさは可変とされてよい。表示領域DA2の視野平均輝度は、非表示領域DA1の視野平均輝度よりも大きい値に設定される。非表示領域DA1には、原則として画像は表示されず、その視野平均輝度が例えば1(ca/m以下に設定される。
【0028】
半透過鏡13の有効領域の面積をSh(=Wh×Hh)、フラットパネルディスプレイ12の表示領域DA2の面積をSb(=Wb×Hb)とした場合、Wb/Whは0.1以上0.9以下となるよう、フラットパネルディスプレイ12の表示領域DA2が設定される。好適には、Wb/Whは0.5以上0.7以下に設定される。
【0029】
図3で説明したような構成により、この仏壇10は、表示領域DA2に表示される仏壇画像に浮遊感(相対的に、背景画像よりも前面側に仏壇画像があり、背景画像から離間しているように見える感覚)を与えることができる。上記の構成により、仏壇画像と周囲映像との間に距離感が与えられ、その結果として結果周囲映像に奥行き感を持たせることが可能になる。
【0030】
表示される仏壇画像は、フラットパネルディスプレイ12の表示領域DA2から与えられる実像である。一方、非表示領域DA1では、その視野平均輝度が1(ca/m)以下に設定されるため、半透過鏡13を介して、仏壇10が設置される室内の物体(壁等)の虚像が表示される。図4に示すように、仏壇10(半透過鏡13)と使用者との間の距離をX、使用者の背後の壁WLと半透過鏡13との距離をY(Y>>X)とすると、使用者が表示領域DA2で観測する仏壇画像の位置と、非表示領域DA1で観測される壁WLの虚像の位置との差Dは、D=Yとなり、Yが大きいほど、仏壇画像が相対的に前面にせり出すような映像が得られる。これにより、仏壇画像が立体的に観測され、更には仏壇画像の浮遊感が得られる。
【0031】
使用者から見て、仏壇画像よりも周囲映像が後方に結像しているように見えることが重要である。また、周囲映像をより効果的に視認できるようにするためには、半透過鏡13の面積Sh=Wh×Hhに対し、仏壇画像が表示される表示領域DA2を小さくする必要がある。そのため、前述のようにWb/Whが0.1以上0.9以下に設定され、より好適には、0.5以上0.7以下に設定される。図5は、Wb/Whを様々な値(例えば約0.7、0.5、又は0.25)に設置した場合の表示例を示している。
【0032】
なお、図6に示すように、使用者の眼の位置が、例えばVP1からVP2に移動することにより、非表示領域DA1における壁WLの虚像IWLの見え方も変化する。一方、表示領域DA2に表示される仏壇画像の位置は、フラットパネルディスプレイ12における表示制御が変らない限りほぼ一定である。このように、使用者の眼の位置に応じ、仏壇画像との関係で周囲画像の見え方が相対的に変化する。
【0033】
また、半透過鏡13に近い物体の虚像の位置は、使用者の眼の位置が変わっても大きくは動かないが、半透過鏡13から遠い物体の虚像の位置は、使用者の眼の位置が変わることにより大きくその位置が変化する。このような変化も、仏壇画像の浮遊感の向上に寄与する。なお、使用者の眼の位置をカメラ16等により検知し、その検知結果に応じて非表示領域DA1におけるフラットパネルディスプレイによる画像範囲を視点移動に応じ移動させることも可能である。つまり、物体から半透過鏡13までの距離が短い場合と長い場合とで、視点移動によりその物体の虚像の移動の程度が異なる。これは、仏壇画像の浮遊感を向上させ得る。
【0034】
図7A図7Cを参照して、第1の実施の形態の仏壇の変形例を説明する。
図7Aは、第1の実施の形態の第1の変形例の外観を示している。この第1の変形例は、筐体11の下端に、供物台111を備えている。また、筐体11の側面には、仏壇10を把持するための把持部112が設けられている。供物台111は、筐体11の下端において、筐体11に対し略直角(例えば90°~105°程度)な方向に延在する底面を有し、その底面の周囲に沿ってフリンジ部を有している。供物台111は、図7Bに示すように、その上面に、各種の仏具(位牌、仏飯器、仏茶器、花立て、供え物の模型、鈴など)を載置することができる。供物台111は、筐体11に対し固定的に形成されてもよいが、図7Cに示す供物台111’のように、筐体11に対し嵌合可能に形成されてもよい。
【0035】
図8を参照して、第1の実施の形態の仏壇の第2の変形例を説明する。この第2の変形例は、筐体11を壁に懸架可能とし、壁掛け式の仏壇としたものである。図8に示すように、引っ掛け部113を有する壁掛け具をネジ114等により壁に固定すると共に、筐体11の裏面に、この引っ掛け部113に嵌合可能な嵌合部115を設ける。この嵌合部115を引っ掛け部113に嵌合させることにより、仏壇を壁に懸架することが可能になる。
【0036】
図9は、フラットパネルディスプレイ12の表示領域DA2への表示例である。(a)は、表示領域DA2に仏壇画像のみを表示した例であり、(b)は仏壇画像と遺影写真画像を重畳表示した例であり、(c)は故人の全身像のみを表示した例であり、(d)は故人の全身像と遺影写真とを重畳表示した例であり、(e)は、仏壇画像と個人の全身画像を重畳させ、故人の全身画像は半透明処理して表示した例である。いずれの場合も、非表示領域DA1の視野平均輝度は表示領域DA2よりも低く設定され、これにより表示画像の浮遊感が得られる。図9の例は一例であって、例えば、遺影写真は、人間の故人の画像に限らず、例えばペットなどの動物の遺影写真であってもよい。
【0037】
以上説明したように、第1の実施の形態の仏壇によれば、フラットパネルディスプレイ12と半透過鏡13とが略平行に配置されるので、薄型で省スペースの仏壇を提供することができる。また、フラットパネルディスプレイ12と半透過鏡13の上記のような構造により、仏壇画像を浮遊感を持って提示することができる。更に、仏壇10の不使用時には、半透過鏡13の部分を鏡として使用することができる。このため、洋風の部屋にもマッチし、仏壇を置くことへの抵抗感を払拭させることができ、仏壇の一般家庭への普及に寄与し得る。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、図10図11を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る仏壇を説明する。図10は、第2の実施の形態の仏壇10’の斜視図であり、図11は、第2の実施の形態の仏壇10’の電気回路の構成を示すブロック図である。図10及び図11において、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0039】
この第2の実施の形態の仏壇10’は、第1の実施の形態の構成に加え、半透過鏡13の照度を計測するための照度センサ17を備えている。この照度センサ17により検出された照度により、フラットパネルディスプレイ12の視野平均輝度が調整される。照度センサ17の出力信号は、A/Dコンバータ30に入力されて照度の値(デジタル信号)に変換され、CPU21に供給される。CPU21は、この照度の値に従って、フラットパネルディスプレイ12の最適な輝度を演算し、この演算結果に従って表示制御部25を介してフラットパネルディスプレイ12を制御する。
【0040】
仏壇10’は通常室内に設置されるが、仏壇10’の周囲の照度は時間帯や天候、部屋の構造等によって変化する。半透過鏡13を使用しない場合のフラットパネルディスプレイ12の最適な輝度La(ca/m)はフラットパネルディスプレイ12の照度Ei(lx)の関係において、おおむねLa=1+0.1Ei(視認距離1.5m程度を想定)であることが知られている。前式に所定値Kを導入して一般化すると、La=K・(10+Ei)となる。よって、半透過鏡13をフラットパネルディスプレイ12の前面に配置した場合におけるフラットパネルディスプレイ12の最適な輝度Laは、半透過鏡13の透過率をThとして、次の式で表すことができる。
【0041】
(式1)
La=K・(10+Ei)/Th
【0042】
本実施の形態では、半透過鏡13の照度Eiを照度センサ17で計測し、計測値に応じてCPU21において輝度Laを演算し、フラットパネルディスプレイ12を最適な輝度に自動調整することができる。
【0043】
なお、仏壇10’の照度に変化が無くても、部屋の状況の変化や、使用者の嗜好によって最適輝度は異なり得ることが想定される。例えば定数Kはおよそ0.1が平均的な値であることが知られているが、本実施の形態では、Kを所定値に固定せず、例えば入力デバイスを介して入力し、任意の範囲の数値に設定することが可能である。例えば、Kは、0.01~1の範囲内で設定可能とされることができる。より多様性を持たせる場合には、Kを0.001~10の範囲内で設定可能とすることもできる。
【0044】
[第3の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る仏壇を説明する。図12は、第3の実施の形態の仏壇10’’の斜視図である。図12において、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0045】
この第3の実施の形態の仏壇10’’は、第2の実施の形態の構成に加え、仏壇10’’の周囲にある物体までの距離を計測する距離センサ18を備えている。本実施の形態の仏壇10’’は、距離センサ18の計測結果に従い、フラットパネルディスプレイ12の非表示領域DA1の表示をピント外れ(オフフォーカス)画像に変化させるよう構成されている。
【0046】
第2の実施の形態で説明した通り、周囲の物体が半透過鏡13よりより遠い位置にあった方が、仏壇画像の浮遊感が強調され得る。しかし、仏壇10’’が設置されている部屋が狭いと、物体の距離も近くなり、その分仏壇画像の浮遊感が低下してしまう。このため、第3の実施の形態では、距離センサ18により計測された周囲の物体までの距離が所定値以下の場合には、フラットパネルディスプレイ12の非表示領域DA1の表示画像をオフフォーカス画像とするよう、フラットパネルディスプレイ12が制御される。近視者が遠方の風景を見た場合、ピントが合わず視野がボケる状態と似た状態が非表示領域DA1に表示され、疑似的な遠方視映像が非表示領域DA1に表示されるため、仏壇画像との距離差を感じられ、結果、仏壇画像の浮遊感を演出することができる。一例としては、距離センサ18により計測された距離Yが1.5m以下であれば、半透過鏡13と物体まで距離が小さいと判断し、CPU21からの命令に従い、表示制御部25の制御の下、オフフォーカス映像を非表示領域DA1に表示させることができる。仏壇画像が遠近法などにより三次元表現とされていれば、浮遊感は更に高まる。
【0047】
[第4の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る仏壇10Xを説明する。図13は、第4の実施の形態の仏壇10Xの斜視図である。図13において、第1の実施の形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0048】
この第4の実施の形態の仏壇10Xは、使用者の年齢AGに関する情報を取得する年齢情報取得部を備えている点で前述の実施の形態と異なる。年齢情報取得部は、一例としては、図13に示すように、フラットパネルディスプレイ12の表示画面上に、使用者の年齢の入力を促す画面が表示されるものとすることができる。このような入力画面は、仏壇10Xの初期設定時にのみ表示されてもよいし、仏壇10Xの電源起動後に、毎回又は定期的に表示されてもよい。また、年齢情報取得部は、ユーザによる年齢入力の他、ネットワークを介して接続された他のコンピュータからのデータ取得であってもよい。
【0049】
フラットパネルディスプレイ12の最適輝度は、使用者の年齢にも大きく依存していることが知られており、フラットパネルディスプレイ12の最適輝度PL(cd/m)の、使用者の年齢AGに対する依存性は、次の式((式2)、(式3))で表される。
【0050】
(式2)
PL=(DL+d)/Th
(式3)
Log(DL)=A+B*log(E)-C*log(SA)-D*log(AL)
ただし、
A=0.0096*AG+2.189
B=-0.0029*AG+0.3329
C=0.0024*AG+0.1661
D=-0.0022*AG+0.3694
であり、
DLはフラットパネルディスプレイ12単体での表示輝度(cd/m
dは表示輝度DLの公差
Eは、半透過鏡13の照度(Lx)、
SAは、フラットパネルディスプレイ12水平観視画角(deg)
ALは、フラットパネルディスプレイ12単体での映像の平均輝度レベル(%)
AGは、使用者の年齢
である。
【0051】
DLは元々統計的な平均値であり、実際、特定の年齢において最適と考える輝度は個人の好みが生じる。よって、それに対して輝度を予め調整できるようにしておいた方が好ましい。表示輝度DLの公差dは、表示輝度DLの変化幅の95%(2σ)、又は68%(1σ)をカバーできるように設定されることが好適である。好適には、上記dが表示輝度DLの+70%~-40%の範囲を取ることができ、より好適には、+140%~-80%の範囲を取ることができる。
【0052】
この第4の実施の形態によれば、使用者の年齢に関する情報が入力され、この年齢の情報に基づいて、フラットパネルディスプレイの輝度が最適値に調整される。仏壇を長年使用していても、適切なタイミングで年齢の情報が反映されることで、フラットパネルディスプレイの輝度が最適値に維持される。また、複数の使用者が一つの仏壇を使用する際、各使用者の年齢情報がデバイスに入力されていれば、各使用者の年齢に応じてフラットパネルディスプレイの輝度を自動的に調整することができる。なお、このような年齢による輝度の自動調整に加え、手動による輝度調整が可能にされてもよいことは言うまでもない。
【0053】
[その他]
上記の複数の実施の形態は、上記した各種の構成を追加、置換、削除、又は組み合わせてして様々な変形を行うことが可能である。また、上記以外の構成を追加したり、上記の構成と置換したりすることも可能である。一例としては、以下のような変更が可能である。
【0054】
(1)仏壇にアロマディフューザを設け、香水の噴射を行うことができる。アロマディフューザは、噴霧式、超音波式、加熱気化、送風気化方式などで良い。アロマディフューザは、筐体11に一体に形成されていてもよいし、筐体11とは別体とされてもよい。また、アロマディフューザの仏壇への電気的接続は、筐体11の内部の配線によってもよいし、USBなどの汎用コネクタによってもよい。アロマディフューザを搭載することにより、仏壇使用時にお香の匂いを発したり、例えば花の香の芳香剤の香を放出したりすることで、仏壇周辺においてリラクゼーション効果を高めることができる。また、複数通りの芳香剤を用意しておくことで、香りの種類を変更する機能を持たせることもできる。
(2)仏壇に、使用者の挙動を検知するモーションセンサ、使用者の近接を検知する近接センサなどを設けることができる。モーションセンサ及び近接センサは、赤外線カメラ、ドットプロジェクタ、投光イルミネーターなどであってよい。また、仏壇にカメラ等を設置し、使用者の顔認証システムを構成してもよい。予め使用者の顔の画像情報を登録しておき、登録済の使用者が近接した場合にのみ、フラットパネルディスプレイ12をONにし、仏壇画像等を表示することができる。
【0055】
(3)マイクロフォン15により、使用者が発する読経等の音声を検知し、この検知された音声と同期させて、鈴や木魚の打音等の音声をスピーカ14により出力することができる。音声の同期出力のON/OFFは、使用者が任意に切り替えることができる。逆に、自分では読経は行わず、スピーカ14から鈴や木魚の打音等のみを出力させることも可能である。内蔵のソフトウエア(AI機能等)により、マイクロフォン15を介して検知された音声を分析し、その音声に合致したリズムを有する音声をスピーカ14から出力させることも可能である。
(4)カメラ16により、使用者の挙動を検知し、この検知された挙動と同期させて、鈴や木魚の打音等の音声をスピーカ14により出力することができる。例えば、使用者が拍手やお辞儀をしたことを検知し、その挙動に合わせて、スピーカ14から鈴の音色を発することができる。カメラ16に代えて、使用者の動きを検知するモーションセンサを設けることもできる。
【0056】
(5)マイクロフォン15により使用者の音声を検知しつつ、フラットパネルディスプレイ12には故人の遺影写真を表示させ、音声対話機能が備わった対面型の仏壇を提供することができる。マイクロフォン15で検出された使用者の会話の内容をソフトウェアで分析し、その会話の内容に応じた、故人の返答の音声をソフトウェアにおいて生成し、スピーカ14から出力することができる。スピーカ14から発する音声は、故人の肉声録音に基づいた音声でもよいし、音声合成ソフトウェアにより合成された音声であってもよい。
遺影と会話を交わすことで、前記音声合成ソフトウェアにより発せられる音声に従い、画像処理ソフトウェアにより、フラットパネルディスプレイ12に表示される遺影の表情を変えながら供養する人と会話する機能が実現可能である。また、フラットパネルディスプレイ12に表示する故人の遺影写真も、会話の内容に応じて表情を変化させることも可能である。なお、フラットパネルディスプレイに表示する遺影写真は、亡くなった当時の顔としてもよいし、所定の画像処理ソフトウェアにより提供される画像処理部による画像処理を施して、生存中の顔を、現在存命である場合に予想される顔に変更することもできる。生存中の顔と、画像処理後の顔とを任意に選択可能とすることができる。
(6)本実施形態の仏壇に、無線LANのセットトップボックスを内蔵又は接続させることができる。これにより、遠隔にあるサーバから、ネットワークを介した情報表示、ソフトウェアの更新、コンテンツの更新等が可能とされる。例えば、様々なコンテンツデータ(例:様々な仏壇画像データ、仏像・仏具・花・供物のデータ、様々な遺影写真など)をサーバ上に保存しておき、ネットワークを介して提供することも可能であり、また、ネットワークを介して接続された多数の仏壇に対して、最新のコンテンツ、サービスをタイムリーに提供し、管理を行うことができる。
【0057】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、上記以外の様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10、10’、10’’、10X…仏壇
11…筐体
12…フラットパネルディスプレイ
13…半透過鏡
14…スピーカ
15…マイクロフォン
16…カメラ
17…照度センサ
18…距離センサ
21…CPU
22…ROM
23…RAM
25…表示制御部
26、27、28…インタフェース
29…入力制御部
30…A/Dコンバータ
111、111’…供物台
112…把持部
113…引っ掛け部
114…ネジ
115…嵌合部
DA1…非表示領域
DA2…表示領域
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
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図12
図13