(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152124
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】水性クロムフリー表面処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C23C26/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054776
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】島倉 俊明
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】長野 葵
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA03
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA12
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC02
4K044BC05
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性クロムフリー金属表面処理剤を提供すること。
【解決手段】2官能性シラン化合物(A)と、1官能性シラン化合物(B)と、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と、を含む、水性クロムフリー表面処理剤。2官能性シラン化合物(A)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、1官能性シラン化合物(B)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、2官能性シラン化合物(A)と前記1官能性シラン化合物(B)の濃度比(A/B)が0.1~5の範囲内であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能性シラン化合物(A)と、1官能性シラン化合物(B)と、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と、を含む、水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項2】
前記2官能性シラン化合物(A)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、
前記1官能性シラン化合物(B)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、
前記2官能性シラン化合物(A)と前記1官能性シラン化合物(B)の濃度比(A/B)が0.1~5の範囲内である、請求項1に記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項3】
前記アセチレングリコール系界面活性剤(C)の濃度が0.05~1g/Lの範囲内である、請求項1又は2に記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項4】
鏡面仕上げしたアルミニウム板表面上での接触角が25度以下である、請求項1~3のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項5】
水分散性金属酸化物粒子(D)を更に含み、
前記水分散性金属酸化物粒子(D)は、平均粒子径が150nm以下であり、
前記水分散性金属酸化物粒子(D)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、請求項1~4のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項6】
ポリウレタン系水分散樹脂、及びポリウレタン系水溶性樹脂のうち、少なくとも何れかであるポリウレタン系樹脂(E)を更に含み、
前記ポリウレタン系樹脂(E)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項7】
ブロックイソシアネート系樹脂(F)を更に含み、
前記ブロックイソシアネート系樹脂(F)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、請求項1~6のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項8】
pHが5~7の範囲内である、請求項1~7のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤により表面に表面処理皮膜が形成されてなる、表面処理金属。
【請求項10】
被塗物の表面を請求項1~8のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤により処理することで表面処理皮膜を形成する表面処理皮膜形成工程を有する、表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性クロムフリー表面処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属基材に耐食性を付与するための表面処理剤としては、クロメート処理剤、リン酸クロメート処理剤等のクロム系金属表面処理剤が知られており、現在でも広く使用されている。しかし、近年の環境規制の動向からすると、クロムの有する毒性、特に発ガン性のために将来的にクロム系金属表面処理剤の使用が制限される可能性がある。
【0003】
そこで、クロム系金属表面処理剤と同等の耐食性を示すクロムフリー金属表面処理剤が種々開発されている。例えば、特許文献1には、チタン化合物及び/又はジルコニウム化合物、アミノシラン及び多シリル官能シランの縮合反応物を含有する金属表面処理用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロムフリー金属表面処理剤を用いて金属基材に皮膜を形成する場合において、例えば金属基材をプレコート金属用途に用いる場合、形成される皮膜には、耐食性に加えて、高強度の加工性に耐え得る塗装密着性が要求される。しかし、従来のクロムフリー金属表面処理剤は、表面処理後の金属基材に対して高強度の加工が行われた際の塗装密着性が十分とは言えず、改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載されているようなシランカップリング剤を主成分とする処理剤は、被塗物である金属基材が平滑な表面を有する場合、塗装時に塗料ハジキが発生するため、金属表面上に均一な被膜を形成できず、塗装密着性も十分なものでは無かった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性クロムフリー金属表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、2官能性シラン化合物(A)と、1官能性シラン化合物(B)と、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と、を含む、水性クロムフリー表面処理剤に関する。
【0008】
(2) 前記2官能性シラン化合物(A)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、前記1官能性シラン化合物(B)の濃度が1~100g/Lの範囲内であり、前記2官能性シラン化合物(A)と前記1官能性シラン化合物(B)の濃度比(A/B)が0.1~5の範囲内である、(1)に記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0009】
(3) 前記アセチレングリコール系界面活性剤(C)の濃度が0.05~1g/Lの範囲内である、(1)又は(2)に記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0010】
(4) 鏡面仕上げしたアルミニウム板表面上での接触角が25度以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0011】
(5) 水分散性金属酸化物粒子(D)を更に含み、前記水分散性金属酸化物粒子(D)は、平均粒子径が150nm以下であり、前記水分散性金属酸化物粒子(D)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、(1)~(4)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0012】
(6) ポリウレタン系水分散樹脂、及びポリウレタン系水溶性樹脂のうち、少なくとも何れかであるポリウレタン系樹脂(E)を更に含み、前記ポリウレタン系樹脂(E)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、(1)~(5)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0013】
(7) ブロックイソシアネート系樹脂(F)を更に含み、前記ブロックイソシアネート系樹脂(F)の濃度が1~20g/Lの範囲内である、(1)~(6)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0014】
(8) pHが5~7の範囲内である、(1)~(7)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤。
【0015】
(9) (1)~(8)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤により表面に表面処理皮膜が形成されてなる、表面処理金属。
【0016】
(10) 被塗物の表面を(1)~(8)のいずれかに記載の水性クロムフリー表面処理剤により処理することで表面処理皮膜を形成する表面処理皮膜形成工程を有する、表面処理方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性クロムフリー金属表面処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る水性クロムフリー表面処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0019】
<水性クロムフリー表面処理剤>
本実施形態に係る水性クロムフリー表面処理剤は、2官能性シラン化合物(A)と、1官能性シラン化合物(B)と、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と、を含む。また、水分散性金属酸化物粒子(D)、ポリウレタン系樹脂(E)、及びブロックイソシアネート系樹脂(F)のうち、少なくともいずれかを更に含むことが好ましい。
【0020】
(2官能性シラン化合物(A))
2官能性シラン化合物(A)は、シラノール基、又は加水分解によりシラノール基を生成可能なシリル基を1分子中に2つ有する化合物である。2官能性シラン化合物(A)としては、例えば以下の式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【0022】
上記式(I)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~30の1価の有機基を示す。上記1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基;水酸基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を有する炭化水素基;等が挙げられる。上記1価の有機基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0023】
上記式(I)中、Yは、2価の有機基又はアミンを示す。2価の有機基としては、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンチオ基、又は上記2価の有機基を部分構造として含む基が挙げられる。上記2価の有機基としては、アルキレン基が好ましい。上記2価の有機基の炭素数は、2~30であることが好ましく、2~12であることがより好ましい。
【0024】
上記式(I)中、X1及びX2は、それぞれ独立に加水分解性基を示す。加水分解性基としては、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。X1及びX2は、水酸基であることが好ましい。X1及びX2がアルコキシ基である場合、上記アルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
【0025】
上記式(I)中、a及びbは、それぞれ独立に0~2の整数を示し、0≦a+b≦2である。また、c及びdは、それぞれ独立に0~2の整数を示し、0≦c+d≦2である。a+b及びc+dは、いずれも0又は1が好ましい。
【0026】
上記式(I)で表される2官能性シラン化合物(A)の具体例としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,9-ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,9-ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)アミン、ビス(トリエトキシシリル)アミン、ビス(トリメトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い上の安全性、得られる皮膜の耐食性及び密着性の観点から、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンが好ましい。
【0027】
2官能性シラン化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、2官能性シラン化合物(A)は、部分的に加水分解していてもよく、又は加水分解により縮合していてもよい。
【0028】
2官能性シラン化合物(A)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、1~100g/Lの範囲内であることが好ましい。
【0029】
(1官能性シラン化合物(B))
1官能性シラン化合物(B)は、シラノール基、又は加水分解によりシラノール基を生成可能なシリル基を1分子中に1つ有する化合物である。1官能性シラン化合物(B)としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン;トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン;トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、アミノ基含有シランが好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0030】
1官能性シラン化合物(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、1官能性シラン化合物(B)は、部分的に加水分解していてもよく、又は加水分解により縮合していてもよい。
【0031】
1官能性シラン化合物(B)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、1~100g/Lの範囲内であることが好ましい。
【0032】
2官能性シラン化合物(A)の濃度と、1官能性シラン化合物(B)の濃度との比である、濃度比(A/B)は、0.1~5の範囲内であることが好ましく、0.25~2.5の範囲内であることがより好ましい。濃度比(A/B)が5を超える場合、皮膜と塗膜界面の水素結合の数が低下し、強度が低下することにより、塗膜との密着性が低下する。濃度比(A/B)が0.1未満である場合、皮膜の親水性が高くなることで水分の透過を招きやすくなり、塗装後の耐食性や塗膜密着性が低下する。
【0033】
(アセチレングリコール系界面活性剤(C))
アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、アセチレン基を有する非イオン性界面活性剤である。アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、2官能性シラン化合物(A)及び1官能性シラン化合物(B)と共に水性クロムフリー金属表面処理剤に含有されることで、被塗物である金属基材に対する、水性クロムフリー金属表面処理剤の濡れ性を向上させることができる。例えば、金属基材に対する接触角を25度以下に調整できる。これにより、金属基材上に均一な塗膜を形成できる。アセチレングリコール系界面活性剤(C)としては、例えば以下の式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【0035】
上記式(II)中、R5及びR6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。上記式(II)中、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子又はアルキレン基を示す。上記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。即ち、アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、アルキレンオキサイド付加型であってもよいし、アルキレンオキサイド非付加型であってもよい。
【0036】
上記式(II)中、n及びmは、それぞれ独立に1~10の整数を示す。
【0037】
上記式(II)で表されるアセチレングリコール系界面活性剤(C)としては、市販品を用いることができる。市販品の例としては、例えば、日信化学工業株式会社製のサーフィノール(サーフィノール104、サーフィノール465等)や、エアープロダグツ社製のオルフィンシリーズ等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
アセチレングリコール系界面活性剤(C)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、0.05~1g/Lの範囲内であることが好ましく、0.1~0.5gの範囲内であることがより好ましい。
【0039】
(水分散性金属酸化物粒子(D))
水分散性金属酸化物粒子(D)は、酸化Zr、酸化Ti、酸化Si、酸化Al、酸化Ce、酸化Nb、酸化Nd、酸化Sn、酸化Nd、酸化La等の水分散性を有する金属酸化物粒子である。水分散性金属酸化物粒子(D)が水性クロムフリー金属表面処理剤に含有されることで、形成される皮膜の脆性崩壊を抑制でき、高強度の加工に耐え得る塗装密着性をより向上できる。水分散性金属酸化物粒子(D)としては、酸化Zrであることが好ましい。水分散性金属酸化物粒子(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
水分散性金属酸化物粒子(D)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、1~20g/Lの範囲内であることが好ましく、2~15gの範囲内であることがより好ましい。
【0041】
水分散性金属酸化物粒子(D)の平均粒子径(動的光散乱法により測定されるメジアン径D50)は、150nm以下であることが好ましく、10nm~120nmであることがより好ましい。
【0042】
(ポリウレタン系樹脂(E))
ポリウレタン系樹脂(E)は、ポリウレタン系水分散樹脂、及びポリウレタン系水溶性樹脂のうち、少なくとも何れかである。即ち、ポリウレタン系樹脂(E)は、水溶性又は水分散性のうちいずれかの性質を有する。ポリウレタン系樹脂(E)が水性クロムフリー金属表面処理剤に含有されることで、形成される皮膜の脆性崩壊を抑制でき、高強度の加工に耐え得る塗装密着性をより向上できる。ポリウレタン系樹脂(E)としては、特に限定されず、例えば、ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを従来公知の方法により重合することで得られる。ポリウレタン系樹脂(E)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記ポリオール化合物としては特に限定されず、従来公知の合成原料を使用できる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0044】
上記ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、従来公知の合成原料を使用できる。例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
ポリウレタン系樹脂(E)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、樹脂固形分換算で1~20g/Lの範囲内であることが好ましく、5~15gの範囲内であることがより好ましい。
【0046】
(ブロックイソシアネート系樹脂(F))
ブロックイソシアネート系樹脂(F)は、ポリウレタン系樹脂(E)と反応して架橋構造を形成する水溶性樹脂である。ブロックイソシアネート系樹脂(F)は、フェノール系、アルコール系、オキシム系、活性メチレン系、酸アミド系、カルバミン酸塩系、及び亜硫酸塩系等のブロック剤でブロック化された1分子中に少なくとも1つのブロックイソシアネート基を有する化合物(単量体)の重縮合物である。
【0047】
ブロックイソシアネート系樹脂(F)は、1分子中に少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物にブロック剤を付加することにより得られる。1分子中に少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。ブロックイソシアネート系樹脂(F)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ブロックイソシアネート系樹脂(F)の水性クロムフリー金属表面処理剤中の濃度は、樹脂固形分換算で1~20g/Lの範囲内であることが好ましく、5~15gの範囲内であることがより好ましい。
【0049】
(その他の化合物)
本実施形態に係る水性クロムフリー金属表面処理剤は、上述した各成分以外に、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、樹脂の硬化を促進させる上記以外の架橋剤、レベリング用途に用いられる表面調整剤、抑泡用途に用いられる消泡剤等が挙げられる。
【0050】
(水性クロムフリー金属表面処理剤のpH)
本実施形態に係る水性クロムフリー金属表面処理剤は、pHが5~7の範囲内であることが好ましい。水性クロムフリー金属表面処理剤のpHが7以下であることで、貯蔵安定性がより向上する。
【0051】
(水性クロムフリー金属表面処理剤の接触角)
本実施形態に係る水性クロムフリー金属表面処理剤は、鏡面仕上げしたアルミニウム板表面上での接触角が25度以下である。従って、被塗物である金属基材に対する濡れ性が良好であり、均一な皮膜を形成できる。従って結果的に塗装密着性を向上できる。鏡面仕上げしたアルミニウム板は、超微粒子研磨材を用いたバフ研磨により、アルミニウム板の表面粗さRzが0.05~0.2μmとなるまで研磨し、表面を脱脂剤(例えば、日本ペイント・サーフケミカルズ社製サーフクリーナー155等)及び水で洗浄したものを用いることができる。接触角は、20℃に設定された恒温室内で接触角計(例えば、KRUSS社製 DSA20E)で測定される静的接触角の値を用いることができる。
【0052】
<表面処理方法>
本実施形態に係る表面処理方法は、被塗物である金属基材を上述した本実施形態に係る水性クロムフリー金属表面処理剤により処理することで表面処理皮膜を形成する、表面処理皮膜形成工程を有する。表面処理皮膜形成工程は、例えば、被塗物である金属基材の表面に水性クロムフリー金属表面処理剤を塗布する塗布工程と、水性クロムフリー金属表面処理剤が塗布された金属基材を乾燥して皮膜を形成する乾燥工程と、を有する。
【0053】
(塗布工程)
塗布工程において、水性クロムフリー金属表面処理剤を金属基材に塗布する方法としては特に限定されず、ロールコーター塗装、刷毛塗り塗装、ローラー塗装、バーコーター塗装、流し塗り塗装等の方法が挙げられる。
【0054】
(乾燥工程)
乾燥工程における乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。乾燥工程における乾燥温度は、例えば、金属基材表面の到達温度であるピークメタル温度で、60~90℃であることが好ましい。
【0055】
塗布工程と乾燥工程とは、同時並行的に行ってもよい。例えば、予め加熱しておいた金属基材に対して水性クロムフリー金属表面処理剤を塗布し、余熱を利用して乾燥させてもよい。
【0056】
表面処理皮膜形成工程における水性クロムフリー金属表面処理剤の皮膜量は、乾燥後の皮膜量が0.1~500mg/m2の範囲内であることが好ましく、1~250mg/m2の範囲内であることがより好ましい。
【0057】
本実施形態に係る表面処理方法は、表面処理皮膜形成工程により皮膜が形成された金属基材に対し、更にプライマー塗装や上塗り塗装を行うものであってもよい。
【0058】
<表面処理金属>
本実施形態に係る表面処理金属は、上述した本実施形態に係る水性クロムフリー表面処理剤により被塗物である金属基材の表面に表面処理皮膜が形成されてなる。金属基材としては、特に限定されず、アルミニウム板、ステンレス鋼板、又は亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板が挙げられる。また、上記金属基材に対して、表面処理皮膜が形成された後に、ラミネートフィルムによりラミネート加工が施されたものであってもよい。
【0059】
アルミニウム板としては、例えば、3000番系アルミニウム合金、4000番系アルミニウム合金、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金、アルミニウム系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のアルミニウムめっき鋼板等が挙げられる。
【0060】
ステンレス鋼板としては、例えば、SUS300系ステンレスや、SUS400系ステンレスが挙げられる。
【0061】
亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛-ニッケルめっき鋼板、亜鉛-鉄めっき鋼板、亜鉛-クロムめっき鋼板、亜鉛-55wt%アルミニウム合金めっき鋼板等の亜鉛-アルミニウムめっき鋼板、亜鉛-チタンめっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等が挙げられる。
【0062】
ラミネートフィルムとしては、例えば、樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリル等の熱可塑性樹脂が用いられる。上記ラミネートフィルムを積層するラミネート加工方法については特に限定されず、ドライラミネート法や押出ラミネート法が例示される。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
<水性クロムフリー表面処理剤の調製>
[実施例1]
表1に記載の濃度となるように、(A)、(B)、及び(C)成分をイオン交換水に混合し撹拌することにより、実施例1の水性クロムフリー表面処理剤を得た。2官能性シラン(A)としては事前に加水分解した1,2-ビストリエトキシシリルエタン(信越化学工業株式会社製、「KBE-3026」)を用い、1官能性シラン(B)としては3-アミノプロピルエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)を用い、活性剤(C)としてはエアプロダクツ社製のサーフィノール104(アセチレングリコール系界面活性剤、エチレンオキサイド付加型)を用いた。
【0065】
[実施例2~21、比較例1~5]
実施例19では、2官能性シラン(A)成分として事前に加水分解したビス(トリエトキシシリル)アミン(EVONIC社製、Dynasylan1124)を用いた。実施例20では、1官能性シラン(B)として3-グリシドキシトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBE-403)を用いた。実施例21では、活性剤(C)としてエアプロダクツ社製のサーフィノール465(アセチレングリコール系界面活性剤、エチレンオキサイド非付加型)を用いた。比較例4では、活性剤(C)として日本乳化剤株式会社製のニューコール1000(アルキルエーテル系界面活性剤)を用いた。比較例5では、水性クロムフリー表面処理剤に代えて6価クロム含有処理剤(日本ペイント・サーフケミカルズ社製、サーフコートNRC300)を用いた。上記以外は実施例1と同様とした。
【0066】
<試験板の作製>
実施例1~21、比較例1~5の表面処理剤を用い、表1に示す金属基材としての3000番系と5000番系アルミニウム板(日本テストパネル社製、板厚0.35mm)に対してそれぞれ表面処理を行った。表面処理は、以下の手順で行った。アルカリ脱脂剤であるサーフクリーナー155(日本ペイントサーフケミカルズ社製)にアルニウム板を60℃で10secスプレー脱脂した後、スプレー水洗し、乾燥させた後、バーコーター#3で表面処理剤をアルミニウム板に塗布後、PMT(ピークメタル温度)80℃で乾燥させた。比較例5では、脱脂、水洗、乾燥後クロム付着量30mg/m2となるようにバーコーターで塗布し、PMT60℃で乾燥した。上記の方法で表面処理したアルミニウム板に熱硬化型アクリルクリアー塗料(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製、スーパーラック D1F R-37 ゴールド艶消(改)AP)を乾燥膜厚が5μmとなるように塗装した後、PMT250℃で50sec焼き付け乾燥し、実施例1~21、比較例1~5の試験板を得た。
【0067】
<評価>
[折り曲げ1次密着性]
20℃の環境下で、試験板を、スペーサを間に挟まずに180°折り曲げ加工(0TT)し、又は0.35mmのアルミ板2枚をスペーサとして間に挟み180°折り曲げ加工(2TT)し、折り曲げ加工部を3回テープ剥離して、剥離度合いを20倍ルーペで観察し、以下の基準で評価した。4以上を合格とし、結果を表1に示した。
5:剥離なし、4.5:1~10%剥離、4:11~20%剥離、3.5:21~30%剥離、3:31~40%剥離、2.5:41~50%剥離、2:51~60%剥離、1.5:61~70%剥離、1:71~80%剥離、0.5:81~90%剥離、0:91~100%剥離
【0068】
[折り曲げ2次密着性]
試験板を沸騰水に2時間浸漬後、24時間室内に放置したものについて、折り曲げ一次密着性と同様に、0TTと2TTの条件で、それぞれ同一基準で評価した。3.5以上を合格とし、結果を表1に示した。
【0069】
[糸錆長さ]
クロスカットを入れた試験板を濃塩酸50mLが入った2Lビーカーに入れ、塩酸蒸気で10分間曝露した後、40℃、RT82%の恒温恒湿セルに入れ、250時間後のカット部からの糸錆長さ、チップ数(糸錆個数)を測定し、糸錆全長を算出した。2mm以下を合格とした。結果を表1に示した。
【0070】
[SST(塩水噴霧試験)]
JIS Z2317に示される塩水噴霧腐食試験機にクロスカットを入れた試験板を1000hr投入し、カット部からの片側腐食平均フクレ幅と端面(上バリ、下バリ)からの平均腐食フクレ幅を測定した。1mm以下を合格とし、結果を表1に示した。
【0071】
[CCT(複合サイクル腐食試験)]
JIS K5621に示される複合サイクル腐食試験機にクロスカットを入れた試験板を1000hr投入し、カット部からの片側腐食平均フクレ幅と端面(上バリ、下バリ)からの平均腐食フクレ幅を測定した。1mm以下を合格とし、結果を表1に示した。
【0072】
[接触角測定]
実施例1~21、比較例1~4の表面処理剤を、自動接触角計(KRUSS社製 DSA20E)にセットし、アルミ板に滴下された処理剤の静的接触角を20℃の恒温室にて測定した。アルミ板は、超微粒子ポリッシャーを用いたバフ研磨により、アルミニウム板の表面粗さRzが0.05~0.2μmとなるまで研磨し、表面を脱脂剤(日本ペイント・サーフケミカルズ社製サーフクリーナー155)で60℃ 30sec脱脂した後、水洗したものを用いた。25度以下を合格とし、結果を表1に示した。
【0073】
【0074】
[実施例22~38、比較例6~9]
表2に示す種類及び量の金属酸化物粒子(D)を更に加えた。比較例9では、水性クロムフリー表面処理剤に代えて6価クロム含有処理剤(日本ペイント・サーフケミカルズ社製、サーフコートNRC300)を用いた。上記以外は実施例1と同様に表面処理剤の調製を行った。表2に示す金属酸化物粒子(D)の平均粒子径(D50)は以下に示す通りである。
ZrO2:80nm、TiO2:10nm、SiO2:9nm、CeO2:15nm、Nb2O5:4nm、SnO2:2nm、Al2O3:50nm
【0075】
<試験板の作製>
金属基材としての亜鉛-55wt%アルミニウム合金めっき鋼板(GL)(日本テストパネル社製、板厚0.35mm)に対して表面処理を行ったこと以外は実施例1、比較例5と同様に表面処理を行った。上記の方法で表面処理したGL鋼板にエポキシポリエステル系プライマー塗料(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製、NSC5610NC PRIMER)を乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターで塗装した後、PMT215℃で焼き付け乾燥した後、ポリエステル系トップコート(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製、S/C 490HQ 1C4661)を乾燥膜厚が15μmとなるようにバーコーターで塗装し、PMT230℃で焼き付け乾燥し、実施例22~38、比較例6~9の試験板を得た。
【0076】
<評価>
[折り曲げ1次密着性、折り曲げ2次密着性]
実施例1~21、比較例1~5と同様の手順で試験を行い、以下の基準で評価した。4以上を合格とし、結果を表2に示した。
5:クラック無し、4:加工部全面にクラック、3:剥離面積が加工部の20%未満、2:剥離面積が加工部の20%以上、80%未満、1:剥離面積が加工部の80%以上
【0077】
[SST(塩水噴霧試験)、CCT(複合サイクル腐食試験)]
実施例1~21、比較例1~5と同様の手順で試験を行い評価した。SSTは、加工部耐食性を更に評価した。加工部耐食性は、SST試験後(2TT)の塗装表面の白錆面積割合(%)を目視で以下の基準により評価した。
5:錆なし、4.5:0~10%、4:11~20%、3.5:21~30%、3:31~40%、2.5:41~50%、2:51~60%、1.5:61~70%、1:71~80%、0.5:81~90%、0:91~100%
【0078】
表2に示すSST、CCT試験の合格基準は以下の通りとした。SST(加工部耐食性):4以上、SST(カット部):1以下、SST(端面上下):7以下、CCT(カット部):0.7以下、CCT(端面上下):3以下
【0079】
【0080】
[実施例39~56、比較例10~13]
表3に示す種類及び量の金属酸化物粒子(D)、ポリウレタン系樹脂(E)(第一工業製薬社製、スーパーフレックス650)、及びブロックイソシアネート系樹脂(F)(ランクセス・ソリューションズ・ジャパン社製、Aqua BI220)を更に加えたこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様に表面処理剤の調製及び試験板の作製を行った。
【0081】
【0082】
<評価>
SST試験、CCT試験の条件を1000hrから1500hrにしたこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様の条件で評価を行った。結果を表4に示す。なお、表4に示すSST、CCT試験の合格基準は以下の通りとした。SST(加工部耐食性):3.5以上、SST(カット部):1.5以下、SST(端面上下):6.1以下、CCT(カット部):0.7以下、CCT(端面上下):3.5以下
【0083】
【0084】
[実施例57~74、比較例14~17]
表5に示す種類及び量の金属酸化物粒子(D)、ポリウレタン系樹脂(E)、及びブロックイソシアネート系樹脂(F)を更に加え、実施例65においては金属酸化物粒子(D)として平均粒子径(D50)が100nmのAl2O3を用いたこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様に表面処理剤の調製を行った。試験板の作製は、金属基材を溶融亜鉛めっき鋼板(GI)(日本テストパネル社製、板厚0.35mm)とし、スプレー水洗後に硫酸ニッケル系の表面調整剤(NPコンディショナー700、pH3.0、60℃)に5秒間浸漬したこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様の手順で作製した。
【0085】
【0086】
<評価>
[安定性]
調製後40℃のインキュベータで3か月静置後の表面処理液の液安定性について目視で以下の基準で評価を行った。1:問題無し、2:やや白濁あり
【0087】
上記以外は実施例22~38、比較例6~9と同様の条件で評価を行った。結果を表6に示す。なお、表6に示すSST、CCT試験の合格基準は以下の通りとした。SST(加工部耐食性):3.5以上、SST(カット部):6.0以下、SST(端面上下):6.1以下、CCT(カット部):0.7以下、CCT(端面上下):3.5以下
【0088】
【0089】
[実施例75~92、比較例18~21]
表7に示す種類及び量の金属酸化物粒子(D)、ポリウレタン系樹脂(E)、及びブロックイソシアネート系樹脂(F)を更に加え、実施例83においては金属酸化物粒子(D)として平均粒子径(D50)が140nmのAl2O3を用い、金属基材をステンレス鋼板(表7に示す304はSUS304を示し、430はSUS430を示す)(日本テストパネル社製、板厚0.35mm)としたこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様に表面処理剤の調製及び試験板の作製を行った。
【0090】
【0091】
<評価>
SST及びCCTを1500hrとしたこと以外は実施例57~74、比較例14~17と同様にして評価を行った。結果を表8に示す。なお、表8に示すSST、CCT試験の合格基準は以下の通りとした。SST(加工部耐食性):4.0以上、SST(カット部):1.0以下、SST(端面上下):0.5以下、CCT(カット部):0以下、CCT(端面上下):0.5以下
【0092】
【0093】
[実施例93~112、比較例22~25]
表9に示す種類及び量の金属酸化物粒子(D)、ポリウレタン系樹脂(E)、及びブロックイソシアネート系樹脂(F)を更に加えたこと以外は実施例22~38、比較例6~9と同様に表面処理剤の調製を行った。試験板の作製は、アルカリ脱脂剤であるサーフクリーナー155(日本ペイントサーフケミカルズ社製)に表9に示すGI板、またはGL板(ともに日本テストパネル社製、板厚0.35mm)を60℃で10secスプレー脱脂した後、スプレー水洗した後、コバルトイオン含有系のアルカリ表面調整剤(NPコンディショナー200、pH11、60℃)に5秒間浸漬し、水洗後PMT80℃で乾燥させ、その後バーコーター#3で記載の成分の処理剤をGI板またはGL板に塗布後、PMT(ピークメタル温度)80℃で乾燥させた。表面処理後、ウレタン系接着剤を塗布し、その後アクリル系のラミネートフィルム(厚さ50μmのポリプロピレンフィルム)をローラーで圧着し、230℃で加熱して接着して実施例93~112、比較例22~25の試験板を得た。
【0094】
【0095】
<評価>
[加工1次密着試験(エリクセン試験)]
試験板に碁盤目状にカッターで切れ込みを入れ、エリクセン試験機で8mmまで押出加工後にテープ剥離を行った。テープ剥離試験は、JIS Z0237 :2009に準拠して行った。テープ剥離の程度を以下の基準により評価し、4以上を合格とした。結果を表10に示す。
5:剥離なし、4.5:1~10%剥離、4:11~20%剥離、3.5:21~30%剥離、3:31~40%剥離、2.5:41~50%剥離、2:51~60%剥離、1.5:61~70%剥離、1:71~80%剥離、0.5:81~90%剥離、0:91~100%剥離
【0096】
[加工2次密着試験(エリクセン試験)]
前加工として、試験板に碁盤目状にカッターで切れ込みを入れ、エリクセン試験機で6mmまで押出加工後に98℃の沸騰水に1時間浸漬し、その後押出加工部にテープ剥離を行った。テープ剥離の程度を加工1次密着試験と同様に評価した。結果を表10に示す。
【0097】
上記以外に、SST及びCCTを1000hrとし、評価を行った。結果を表10に示す。なお、表10に示すSST、CCT試験の合格基準は以下の通りとした。SST(カット部):5.0以下、SST(端面上下):6.0以下、CCT(カット部):2以下、CCT(端面上下):3.5以下
【0098】
【0099】
上記実施例及び比較例の結果から、実施例に係る水性クロムフリー金属表面処理剤は、比較例に係る表面処理剤と比較して、塗装密着性が優れており、金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる結果が確認された。