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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152136
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】通信衛星用のセラミック配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20221004BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H05K1/16 C
H05K1/03 610D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054793
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】敷根 延隆
(72)【発明者】
【氏名】清家 晃
(72)【発明者】
【氏名】菊地 真史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達哉
【テーマコード(参考)】
4E351
【Fターム(参考)】
4E351AA07
4E351BB31
4E351CC12
4E351DD05
4E351DD32
4E351GG04
(57)【要約】
【課題】衛星用途の環境への耐性を有するセラミック配線基板を提供する。
【解決手段】第1ガラスを含むセラミック基板に、導電性材料と第2ガラスとを含む抵抗体が形成された通信衛星用のセラミック配線基板は、抵抗体はセラミック基板に内蔵されており、セラミック基板中の第1ガラスの組成と、抵抗体中の第2ガラスの組成とが異なり、第1ガラスは、結晶化ガラスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラスを含むセラミック基板に、導電性材料と第2ガラスとを含む抵抗体が形成された通信衛星用のセラミック配線基板において、
前記抵抗体は前記セラミック基板に内蔵されており、
前記セラミック基板中の前記第1ガラスの組成と、前記抵抗体中の前記第2ガラスの組成とが異なり、
前記第1ガラスは、結晶化ガラスであることを特徴とする、通信衛星用のセラミック配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の通信衛星用のセラミック配線基板において、
前記セラミック基板はLTCC基板であることを特徴とする、通信衛星用のセラミック配線基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の通信衛星用のセラミック配線基板において、
前記抵抗体は、
主成分として、前記導電性材料としてのRuO2と、前記第2ガラスとを含み、
10μmの長さ当たりのシート抵抗が10Ω/sq以上100Ω/sq以下であり、
前記第2ガラスに対する前記RuO2の体積比が25%以上50%以下であることを特徴とする、通信衛星用のセラミック配線基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の通信衛星用のセラミック配線基板において、
前記第2ガラスは結晶化ガラスであり、
前記第2ガラスの結晶化温度は、前記第1ガラスの軟化点よりも低いことを特徴とする、通信衛星用のセラミック配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信衛星用のセラミック配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板のうち、人工衛星に搭載される機器等に使用される配線基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、エポキシ・コンポジット材により形成された配線基板の表層に、抵抗チップが配置された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-235748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工衛星に搭載される配線基板は、地上よりも環境の厳しい宇宙空間で使用されるため、より高い耐熱性および強度を有することが好ましい。この点、特許文献1に記載された配線基板の耐熱性および強度については向上の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、衛星用途での使用環境に適した配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、第1ガラスを含むセラミック基板に、導電性材料と第2ガラスとを含む抵抗体が形成された通信衛星用のセラミック配線基板が提供される。このセラミック配線基板は、前記抵抗体は前記セラミック基板に内蔵されており、前記セラミック基板中の前記第1ガラスの組成と、前記抵抗体中の前記第2ガラスの組成とが異なり、前記第1ガラスは、結晶化ガラスである。
【0008】
この構成によれば、セラミック基板は、結晶化ガラスである第1ガラスを含むため、結晶化ガラスではないセラミック基板よりも高強度であり、急激な温度変化に対する耐性を有する。この結果、本構成によれば、使用条件の厳しい環境での耐性を有し、衛星用途での使用環境に適したセラミック配線基板を提供できる。
【0009】
(2)上記態様の通信衛星用のセラミック配線基板において、前記セラミック基板はLTCC基板であってもよい。
この構成によれば、セラミック基板は、耐熱性と耐湿性とを有するLTCC基板である。そのため、本構成のセラミック配線基板は、衛星用途での使用環境により一層適している。
【0010】
(3)上記態様の通信衛星用のセラミック配線基板において、前記抵抗体は、主成分として、前記導電性材料としてのRuO2と、前記第2ガラスとを含み、10μmの長さ当たりのシート抵抗が10Ω/sq以上100Ω/sq以下であり、前記第2ガラスに対する前記RuO2の体積比が25%以上50%以下であってもよい。
この構成によれば、抵抗体は、10μm当たりのシート抵抗Rsが10(Ω/sq)以上100(Ω/sq)以下)を有するため、使用条件の厳しい環境で使用された場合であっても、安定した特性を示すことができる。この結果、本構成によれば、衛星用途での使用環境により一層適したセラミック配線基板を提供できる。
【0011】
(4)上記態様の通信衛星用のセラミック配線基板において、前記第2ガラスは結晶化ガラスであり、前記第2ガラスの結晶化温度は、前記第1ガラスの軟化点よりも低くてもよい。
この構成によれば、第2ガラスの結晶化温度が第1ガラスの軟化点よりも低いため、セラミック配線基板の製造時に、セラミック基板に含まれる第1ガラスが軟化点に達して軟化し始める前に、抵抗体に含まれる第2ガラスが結晶化温度に達して結晶化する。これにより、セラミック配線基板を長時間焼成しても、セラミック基板に含まれる第1ガラスと、抵抗体に含まれる第2ガラスとが混ざり合わない。その結果、この構成によれば、抵抗体の特性を悪化させずに維持することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、通信衛星用のセラミック配線基板、抵抗体材料内蔵配線基板、配線基板、セラミック配線基板の製造方法、およびこれらを備えるシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のセラミック配線基板を備える複合積層焼結体の概略断面図である。
図2】セラミック配線基板を備える複合積層焼結体の製造方法のフローチャートである。
図3】一次積層体の概略断面図である。
図4】貫通穴にビアペーストが充填された第1グリーンシートの概略断面図である。
図5】積層される前の複合シート積層体の概略断面図である。
図6】実施例および比較例のセラミック配線基板の評価についての説明図である。
図7】抵抗体のシート抵抗についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
・セラミック配線基板の構成:
図1は、本発明の実施形態のセラミック配線基板10を備える複合積層焼結体100の概略断面図である。複合積層焼結体100は、複数のセラミックを主成分とする層が厚さ方向に積層された焼結体である。本実施形態では、セラミック配線基板10が備える内側セラミック基板1,2が結晶化ガラスを含むため、セラミック配線基板10は、使用条件の厳しい環境での耐性を有し、衛星用途での使用環境に適している。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の複合積層焼結体100は、1層のセラミック配線基板10と、セラミック配線基板10の両面に積層された外側セラミック基板20,30と、を備えている。本実施形態のセラミック配線基板10は、ガラスを含む低温焼成積層セラミックス基板(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)である。なお、特にセラミック基板において、ガラス成分を60vol%以上70vol%以下含んでいるものをLTCC基板とする。セラミック配線基板10は、セラミックとガラスとを含む内側セラミック基板(セラミック基板)1,2に、導電性材料の粉末であるRuO2とガラスとを含む抵抗体3が形成された基板である。なお、以降では、内側セラミック基板1,2に含まれるガラスを第1ガラスGL1と呼び、抵抗体3に含まれるガラスを第2ガラスGL2と呼ぶ。
【0016】
図1に示されるように、セラミック配線基板10は、厚さ方向(Z軸方向)に積層された内側セラミック基板1,2と、2つの内側セラミック基板1,2間に形成されている内層電極4と、一部の内層電極4に接するように形成されている抵抗体3と、セラミック基板2内に形成されているビア5と、を備えている。本実施形態の内側セラミック基板1,2は、第1ガラスGL1としてのSiO2,CaO,BaO,MgOなどを含むホウケイ酸系ガラスと、セラミックとしてのAl23(アルミナ)と、により形成されている。
【0017】
内側セラミック基板1,2は、結晶化しており、ディオプサイドを含んでいる。換言すると、第1ガラスGL1は、結晶化ガラスである。本実施形態の第1ガラスGL1の軟化点Tsは、摂氏863度(℃)である。第1ガラスGL1の軟化点Tsは、第1ガラスGL1に含まれるSiO2などの割合により制御される。
【0018】
内層電極4は、Agと、ホウケイ酸系ガラスと、により形成されている。本実施形態の抵抗体3は、図1に示されるように、内側セラミック基板2に内蔵されている。抵抗体3は、主成分として、導電性材料としてのRuO2と、第2ガラスGL2としてのホウケイ酸系ガラスとを含んでいる。本実施形態の第2ガラスGL2は、結晶化しており、ディオプサイドを含んでいる。本実施形態の第2ガラスGL2の結晶化温度Tcは、790℃であり、第1ガラスGL1の軟化点Tsよりも低い。なお、本実施形態では、第1ガラスGL1に含まれるSiO2などの割合と、第2ガラスGL2に含まれるSiO2などの割合とが異なる。すなわち、第1ガラスGL1の組成と、第2ガラスGL2の組成とは異なる。なお、組成とは化学組成のことを指す。
【0019】
ビア5は、Agにより形成されている。ビア5は、内側セラミック基板2を厚さ方向に貫通するように形成されている。そのため、ビア5は、外側セラミック基板30において内側セラミック基板2に対向する面に形成された配線パターンと、内側セラミック基板2内の内層電極4とを電気的に接続している。
【0020】
図1に示されるように、外側セラミック基板20,30は、セラミック配線基板10の内側セラミック基板1,2の外側の各面に積層されている。外側セラミック基板20,30は、セラミックであるAl23(アルミナ)を主成分として形成されている。
【0021】
・セラミック配線基板を備える複合積層焼結体の製造方法:
図2は、セラミック配線基板10を備える複合積層焼結体100の製造方法のフローチャートである。図2に示される複合積層焼結体100の製造フローでは、初めに、内側セラミック基板1,2、外側セラミック基板20,30、内層電極4、抵抗体3、およびビア5の各材料が準備される(ステップS1)。
【0022】
焼結前の内側セラミック基板1,2の第1グリーンシートの材料として、平均粒径が2.0μmのSiO2,CaO,BaO,MgOなどを含むホウケイ酸ガラス粉末と、平均粒径が3.0μmのAl23(アルミナ)とが準備される。焼結前の外側セラミック基板20,30の第2グリーンシートの材料として、平均粒径が2.0μmのAl23(アルミナ)が準備される。焼結前の内層電極4,5の電極ペーストの材料として、平均粒径が2.0μmのAg粉末と、平均粒径が2.0μmのガラス粉末とが準備される。焼結前の抵抗体3の抵抗体ペーストの材料として、RuO2粉末と、ガラス粉末とが準備される。ビア5の材料として、Ag粉末を含むビアペーストP5が準備される。なお、各材料として準備されるガラス粉末は焼結後の各部材の組成を制御するために、ガラス粉末に含まれる分量や成分の割合が適宜選択される。
【0023】
次に、準備された各部材の材料に、バインダーおよび溶剤が加えられて撹拌されたスラリーとペースト材が作製される(ステップS2)。第1グリーンシートのスラリーは、ホウケイ酸ガラス粉末とアルミナ粉末とを質量比3:2で混合された総量800gに、バインダー成分としてのアクリル系バインダーを80gと、溶剤としてのMEK(メチルエチルケトン)およびトルエンと、可塑剤としてのDOP(ジ・オクチル・フタレート)と、を混合して作製される。この混合物がアルミナ製のポットに投入されて5時間混合されると、セラミックススラリーが得られる。なお、混合物に加えられる溶剤および可塑剤の量は、スラリー粘度およびシート強度を持たせるために必要な量が選択される。
【0024】
第2グリーンシートのスラリーは、アルミナ粉末1000gに、アクリル系バインダーを120gと、溶剤としてのMEKおよびトルエンと、可塑剤としてのDOPと、を混合して作製される。この混合物がアルミナ製のポットに投入されて3時間混合されると、スラリーが得られる。
【0025】
電極ペーストは、Ag粉末とガラス粉末とが体積比80:20で混合された混合粉末に、ワニス成分としてのエチルセルロース樹脂とターピネオール溶剤とが加えられて作製される。この混合物が3本ロールミルにより混練されると、電極ペーストが作製される。
【0026】
抵抗体ペーストは、RuO2粉末とガラス粉末とを体積比30:70で混合された混合粉末に、ワニス成分としてのエチルセルロース樹脂とターピネオール溶剤と加えられて作製される。この混合物が3本ロールミルにより混練されると、抵抗体ペーストが作製される。
【0027】
次に、作製された第1グリーンシートおよび第2グリーンシートの元となるスラリーが、成膜される(ステップS3)。第1グリーンシートの元となるスラリーは、ドクターブレード法により、厚み0.20mmに成膜される。第2グリーンシートの元となるスラリーは、ドクターブレード法により、厚み0.50mmに成膜される。
【0028】
成膜後に、所定の寸法にカットされた第1グリーンシートおよび第2グリーンシートが作製される(ステップS4)。作製された第1グリーンシートの表面に、接続用の内部導体用電極パターンとしての電極ペーストが印刷により形成される(ステップS5)。電極ペーストが印刷された第1グリーンシートは乾燥させられた後に、第1グリーンシートの所定位置に抵抗体ペーストが印刷により形成され(ステップS6)、一次積層体11が作製される。
【0029】
図3は、一次積層体11の概略断面図である。図3に示されるように、第1グリーンシート(グリーンシート)SH1の表面に、電極ペーストP4が印刷された後、抵抗体ペーストP3が印刷されている。本実施形態の抵抗体ペーストP3は、1.0mm×1.2mmの印刷パターンにより、内部導体用電極パターンと重なるように印刷される。
【0030】
電極ペーストP4および抵抗体ペーストP3が印刷された第1グリーンシートSH1とは別の第1グリーンシートに対して、マイコンパンチングにより厚さ方向に貫通するφ1.0mmの貫通穴が形成される(図2のステップS7)。形成された貫通穴H1にAg粉末を含有するビアペースト5Pが充填される(ステップS8)。
【0031】
図4は、貫通穴H1にビアペーストP5が充填された第1グリーンシート(グリーンシート)SH2の概略断面図である。図4には、貫通穴H1にビアペーストP5が形成された第1グリーンシートSH2に加えて、後で第1グリーンシートSH2に積層される一次積層体11も示されている。ビアペーストP5の焼成後のビア5は、一次積層体11と第1グリーンシートSH2とが積層された場合に、2つの第1グリーンシートSH1,SH2間に形成される内層電極4を電気的に接続する。
【0032】
一次積層体11と、ビアペーストP5が充填された第1グリーンシートSH2とが積層された多層体の両側に第2グリーンシートが積層されて、図1に示されるような複合シート積層体100の焼成前の積層体が作製される(図2のステップS9)。
【0033】
図5は、積層される前の複合シート積層体の概略断面図である。図5に示されるように、一次積層体11と、一次積層体11の上側に配置された第1グリーンシートSH2と、第1グリーンシートSH2の上側に配置された第2グリーンシートSH30と、一次積層体11の下側に配置された第2グリーンシートSH20と、が積層されることにより、複合シート積層体が作製される。
【0034】
作製された複合シート積層体が900℃にて60分間焼成されて(図2のステップS10)、複合積層焼結体100が生成される。焼成工程では、第1グリーンシートSH1,SH2、抵抗体ペーストP3、およびビアペースト5Pは同時焼成されている。複合積層焼結体100が生成されると、複合積層焼結体100の製造フローが終了する。
【0035】
・セラミック配線基板の評価:
図6は、実施例および比較例のセラミック配線基板の評価についての説明図である。図6には、実施例のセラミック配線基板と、比較例のセラミック配線基板とのESD(Electro-Statics Discharge)特性値(%)の評価結果が示されている。図6に示されるように、実施例と比較例とでは、抵抗体3に含まれる第2ガラスGL2および第2ガラスGL2の結晶化温度Tcが異なる。本実施形態のESD評価では、ESD特性値が-2%以上+2%以下の範囲で良好な抵抗体特性であるとして判定した。ESD特性の測定には、ノイズ研究所製のTG-815Dの装置を用いた。測定では、2kVの電圧を5パルス印加し、電圧の印加前後抵抗値を測定し、測定値の変化率をESD特性値とした。なお、図6に示される抵抗体3の第2ガラスGL2は、第2ガラスGL2に含まれる元素である。
【0036】
実施例のサンプルは、第2ガラスGL2の結晶化温度Tcが第1ガラスGL1の軟化点Tsよりも小さくなるように作製されている。実施例は、上記実施形態のセラミック配線基板10のサンプルである。比較例のサンプルは、第2ガラスGL2の結晶化温度Tcが第1ガラスGL1の軟化点Ts以上になるように作製されている。
【0037】
図6に示されるように、実施例の第2ガラスGL2を含むセラミック配線基板10のESD特性の測定値は、焼成時間が1時間および3時間のいずれの場合でも、-2以上+2以下の範囲に収まっており、良好な抵抗体特性を有している。一方で、比較例の第2ガラスGL2を含むセラミック配線基板のESD特性の測定値は、焼成時間が1時間の場合に-2よりも小さく、良好な抵抗体特性を有してはいない。
【0038】
また、実施例のセラミック配線基板10に対して冷熱サイクル試験の評価を行った。冷熱サイクル試験では、-65℃から150℃までの温度変化のサイクルを1000回繰り返し、試験前後のセラミック配線基板10の抵抗値の変化が確認される。本実施形態では、冷熱サイクル試験後のセラミック配線基板10の抵抗値変化率が10%以下で良好な抵抗体特性であると判定した。冷熱サイクル試験の結果、実施例の冷熱サイクル試験後の抵抗値変化率は1.95%であり、実施例のセラミック配線基板10は、良好な抵抗体特性を有していると言える。
【0039】
図7は、抵抗体3のシート抵抗Rsについての説明図である。図7には、第2ガラスGL2に対するRuO2の体積比に応じて変化する、抵抗体3の10μm当たりのシート抵抗Rs((Ω/sq)または(Ω/□))が示されている。図7に示されるように、抵抗体3のシート抵抗Rsは、第2ガラスGL2に含まれるRuO2の体積が増加するほど低下する。本実施形態では、抵抗体3の10μm当たりのシート抵抗Rsが10(Ω/sq)以上100(Ω/sq)以下、かつ、第2ガラスGL2に対するRuO2の体積比が25%以上50%以下となるように、第2ガラスGL2およびRuO2の体積が制御されている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のセラミック配線基板10では、本実施形態の抵抗体3は、内側セラミック基板2に内蔵されている。内側セラミック基板1,2に含まれる第1ガラスGL1の組成と、抵抗体3に含まれる第2ガラスGL2の組成とが異なる。また、第1ガラスGL1は、結晶化ガラスである。そのため、本実施形態の内側セラミック基板1,2は、結晶化ガラスではないセラミック基板よりも高強度であり、急激な温度変化に対する耐性を有する。これにより、セラミック配線基板10は、使用条件の厳しい環境での耐性を有し、衛星用途での使用環境に適している。さらに、抵抗体3を内側セラミック基板2に内蔵することで、上記環境変化による抵抗体3の抵抗特性の影響を効果的に抑制することが可能である。
【0041】
また、本実施形態の内側セラミック基板1,2は、ガラスを含む低温焼成積層セラミックス基板(LTCC)である。そのため、本実施形態のセラミック配線基板10は、耐熱性と耐湿性とに優れており、衛星用途での使用環境により一層適している。
【0042】
また、本実施形態のセラミック配線基板10の抵抗体3は、主成分として、導電性材料としてのRuO2と、第2ガラスGL2としてのホウケイ酸系ガラスとを含んでいる。また、抵抗体3の10μm当たりのシート抵抗Rsが10(Ω/sq)以上100(Ω/sq)以下であり、かつ、第2ガラスGL2に対するの体積比が25%以上50%以下である。すなわち、本実施形態では、抵抗体3は、10μm当たりのシート抵抗Rsが10(Ω/sq)以上100(Ω/sq)以下)を有するため、使用条件の厳しい環境で使用された場合であっても、安定した特性を示すことができる。この結果、衛星用途での使用環境により一層適したセラミック配線基板10を提供できる。
【0043】
また、本実施形態の第2ガラスGL2は、結晶化ガラスである。第2ガラスGL2の結晶化温度Tcは、第1ガラスGL1の軟化点Tsよりも低い。そのため、本実施形態のセラミック配線基板10の製造時に、内側セラミック基板1,2に含まれる第1ガラスGL1が軟化点Tsに達して軟化し始める前に、抵抗体3に含まれる第2ガラスGL2が結晶化温度Tcに達して結晶化する。これにより、セラミック配線基板10を長時間焼成しても、内側セラミック基板1,2に含まれる第1ガラスGL1と、抵抗体3に含まれる第2ガラスGL2とが混ざり合わない。その結果、本実施形態では、抵抗体3の特性を悪化させずに維持することができる。
【0044】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0045】
上記実施形態および実施例1~3は、衛星用途のセラミック配線基板10の一例であり、セラミック配線基板10が備える構成および成分等については種々変形可能である。例えば、セラミック配線基板10は、第1ガラスGL1が結晶化ガラスである範囲で、実施例とは異なるガラス成分を有していてもよい。内側セラミック基板1,2は、LTCC基板以外の基板であってもよい。抵抗体3の第2ガラスGL2は、結晶化ガラスでなくてもよい。
【0046】
他の実施形態の複合積層焼結体100は、複数のセラミック配線基板が積層されていてもよい。例えば、上記実施形態の複数のセラミック配線基板10が積層された積層体の両面を、第2グリーンシートSH20,SH30で挟み込んだ複合積層焼結体であってもよい。抵抗体3が含む導電性材料は、RuO2以外であってもよく、周知の導電性を有する材料を採用できる。抵抗体3の10μm当たりのシート抵抗Rsは、10(Ω/sq)未満であってもよいし、100(Ω/sq)を超えていてもよい。また、第2ガラスGL2に対するRuO2の体積比は、25%未満であってもよいし、50%を超えていてもよい。第2ガラスGL2の結晶化温度Tcは、必ずしも第1ガラスGL1の軟化点Tsよりも低くなくてもよく、第1ガラスGL1の軟化点Ts以上であってもよい。
【0047】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,2…内側セラミック基板(セラミック基板)
3…抵抗体
4…内層電極
5…ビア
10…セラミック配線基板
11…一次積層体
20…外側セラミック基板
100…複合積層焼結体
GL1…第1ガラス
GL2…第2ガラス
H1…貫通穴
Rs…シート抵抗
P3…抵抗体ペースト
P4…電極ペースト
P5…ビアペースト
SH1,SH2…第1グリーンシート(グリーンシート)
SH20,SH30…第2グリーンシート
Tc…第2ガラスの結晶化温度
Ts…第1ガラスの軟化点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7