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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152139
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】固定要素固着用カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20221004BHJP
   B28C 5/44 20060101ALI20221004BHJP
   E04F 21/165 20060101ALI20221004BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B65D81/32 T
B28C5/44
E04F21/165 Q
E04B1/41 503D
B65D81/32 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054797
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229324
【氏名又は名称】日本デコラックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 重夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 龍弥
【テーマコード(参考)】
2E125
3E013
4G056
【Fターム(参考)】
2E125AA71
2E125AF01
2E125AG13
2E125BA13
2E125BB08
2E125BD01
2E125CA82
2E125EB12
3E013AB04
3E013AB10
3E013AC11
3E013AC13
3E013AD23
3E013AE09
3E013AF02
3E013AF13
3E013AF17
3E013AF23
3E013AF38
4G056AA06
4G056CC35
4G056CD01
(57)【要約】
【課題】攪拌棒によって容易確実に水と水硬性粉体とを混合可能な、固定要素固着用カートリッジを提供する。
【解決手段】吐出口10aを有するカートリッジ本体10の後端開口が封止体11によって封止されている。吐出口10aと封止体11との間に、フィルム13が接合されたリング部材12が内篏されている。水Wと水硬性粉体Pとが、フィルム13を介して隔離された状態でそれぞれ収容されている。リング部材12の外周面には、液密性を高める凸条12dが形成されている。使用する際は、吐出口10aから攪拌棒Bを挿通してフィルム13を突き破り、水Wと水硬性粉体Pとを混合する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に穿設した穴内に固定要素を固着するための水硬性粉体を収容した固定要素固着用カートリッジであって、
先端に吐出口を有し、後端が開口した筒状のカートリッジ本体と、
前記吐出口を塞ぐ蓋と、
前記カートリッジ本体の後端開口を封止し、該カートリッジ本体内を前記吐出口に向けてスライド可能な封止体と、
前記吐出口と前記封止体との間において前記カートリッジ本体内に内篏され、中央部が開口したリング部材と、
前記リング部材の中央開口を塞ぐように前記リング部材に接合されたフィルムとを有し、
前記カートリッジ本体内の収容空間が、前記フィルムを介して吐出口側空間と後端側空間とに区画されており、
前記吐出口側空間に水が、前記後端側空間に水硬性粉体が、前記フィルムを介して隔離された状態でそれぞれ収容されている、固定要素固着用カートリッジ。
【請求項2】
前記リング部材が、前記吐出口側に向けてスライド可能である、請求項1に記載の固定要素固着用カートリッジ。
【請求項3】
前記リング部材の内周縁に沿って貼付代が形成されており、
前記フィルムは、前記貼付代において貼り付けられている、請求項1または請求項2に記載の固定要素固着用カートリッジ。
【請求項4】
前記リング部材の外周面には、液密性を高める凸条が形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の固定要素固着用カートリッジ。
【請求項5】
前記凸条が、前記リング部材が前記吐出口側に向けてスライド容易で、前記後端開口側に向けてはスライドし難い形状に形成されている、請求項4に記載の固定要素固着用カートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物に穿設した穴内に固定要素を固着するための水硬性粉体を収容した、いわゆる固定要素あと施工用の固定要素固着用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物には、構造強度や接合強度等を向上するため、アンカーボルト、鉄筋、ロックボルト、緊張材、螺子等の固定要素が埋め込まれる。このような固定要素は、コンクリート構造物を造形した後に、あと施工によって埋め込むことも多い。この場合、コンクリート構造物に固定要素埋め込み用の穴を穿設し、当該穴内に固定要素を挿通した状態で、同じく穴内に吐出ガンを用いて固着材を注入・硬化して固定要素を固着する。
【0003】
このような固着材としては有機系と無機系があるが、無機系の固着材としてはセメントを主とする水硬性粉体が使用される。水硬性粉体は水と混合した水硬性組成物としたうえで穴内へ注入されるが、施工現場において水と水硬性粉体をそれぞれ計量してから混合するのでは手間がかかる。
【0004】
そこで、吐出ガンに装着される水硬性組成物収容カートリッジに、予め所定量計量された水と水硬性粉体とを互いに隔離された状態で収容したものが、例えば下記特許文献1や特許文献2に開示されている。これらのカートリッジは、筒状のカートリッジ本体の先端に吐出口を有し、後端開口に封止体がスライド可能に配されている。そのうえで、特許文献1では保持袋に水を入れた状態で、特許文献2では水をガラス容器に入れた状態で、それぞれ水硬性粉体と共にカートリッジに収容している。
【0005】
特許文献1では、カートリッジを吐出ガンに装着し、吐出ガンの押圧棒によって封止体を押圧した際の押圧力(カートリッジの内圧上昇)によって保持袋を破断することで水を流出させ、カートリッジを吐出ガンごと激しく振ることで水硬性粉体と混合している。
【0006】
特許文献2では、吐出口から攪拌棒を挿入し、攪拌棒によってガラス容器を破壊しながら水と水硬性粉体とを混合している。このとき、破壊されたガラス容器の破片は、そのまま水硬性組成物(水と水硬性粉体との混合物)の骨材として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-81454号公報
【特許文献2】特開2017-165448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、吐出ガンによる押圧力によって保持袋を破断するとされているが、押圧力のみによって確実に保持袋を破断できるとは限らない。破断できたとしても、カートリッジを吐出ガンごと激しく振って水と水硬性粉体とを混合しているが、保持袋が邪魔となって全体的に均一に混合するにも限界がある。そこで、特許文献2のようにカートリッジを吐出ガンに装着する前に吐出口から攪拌棒を挿入し、攪拌棒によって積極的に破断・攪拌混合することも考えられる。しかし、保持袋はカートリッジ内で自由状態(非保持状態)で存在するので、保持袋が攪拌棒に絡みついてまともに攪拌できず、やはり均一混合には限界がある。
【0009】
一方、特許文献2ではガラス管を使用しているので、ガラス破片が特許文献1のように攪拌棒に絡みつくような問題はない。しかし、ガラス容器の破片を水硬性組成物の骨材として使用することを想定しているが、水硬性組成物を吐出口から吐出できる程度まで細かく粉砕するには手間がかかる。また、ガラス破片の大きさにバラつきがあると、均一分散性が低下して固着力の低下も懸念される。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、攪拌棒によって容易確実に水と水硬性粉体とを混合可能な、固定要素固着用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのための手段として、本発明は次の手段を執る。
(1)コンクリート構造物に穿設した穴内に固定要素を固着するための水硬性粉体を収容する固定要素固着用カートリッジであって、
先端に吐出口を有し、後端が開口した筒状のカートリッジ本体と、
前記吐出口を塞ぐ蓋と、
前記カートリッジ本体の後端開口を封止し、該カートリッジ本体内を前記吐出口に向けてスライド可能な封止体と、
前記吐出口と前記封止体との間において前記カートリッジ本体内に内篏され、中央部が開口したリング部材と、
前記リング部材の中央開口を塞ぐように前記リング部材に接合されたフィルムとを有し、
前記カートリッジ本体内の収容空間が、前記フィルムを介して吐出口側空間と後端側空間とに区画されており、
前記吐出口側空間に水が、前記後端側空間に水硬性粉体が、前記フィルムを介して隔離された状態でそれぞれ収容されている、固定要素固着用カートリッジ。
(2)前記リング部材が、前記吐出口側に向けてスライド可能である、(1)に記載の固定要素固着用カートリッジ。
(3)前記リング部材の内周縁に沿って貼付代が形成されており、
前記フィルムは、前記貼付代において貼り付けられている、(1)または(2)に記載の固定要素固着用カートリッジ。
(4)前記リング部材の外周面には、液密性を高める凸条が形成されている、(1)ないし(3)のいずれかに記載の固定要素固着用カートリッジ。
(5)前記凸条が、前記リング部材が前記吐出口側に向けてスライド容易で、前記後端開口側に向けてはスライドし難い形状に形成されている、(4)に記載の固定要素固着用カートリッジ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカートリッジは、フィルムを介して内部の収容空間が2つに区画され、それぞれに水と水硬性粉体とが隔離された状態で予め収容されているので、施工現場にてこれらをわざわざ計量する手間を省ける。
【0013】
そのうえで、水と水硬性粉体とを混合する際は、吐出口から挿通した攪拌棒によってフィルムを突き破ればよいが、フィルムはカートリッジ本体内に内篏されたリング部材に接合されているので、攪拌する際に水と水硬性粉体との混錬性を阻害することがなく、且つ攪拌棒に巻き付くことも無いので、容易確実に混合することができる。このとき、リング部材は中央部が開口しているので、攪拌混合する際にリング部材が邪魔になることもない。さらに、フィルムを細かく粉砕等する必要もないので、安定した固着力を得ることができる。
【0014】
カートリッジを吐出ガンに装着して固着材(水硬性組成物)を吐出する際は、吐出ガンの押圧棒によって封止体を吐出口方向へ押圧スライドさせる。このとき、リング部材がカートリッジ本体内に固定されていると、封止体のスライドがリング部材によって途中でせき止められ、カートリッジ内に残存する固着材量が多くなってしまう。そこで、リング部材も吐出口方向へスライド可能となっていれば、封止体と共にリング部材も吐出口方向限界までスライドさせられるので、固着材のロスを少なくすることができる。
【0015】
フィルムをリング部材へ接合する方法としては、接着、融着、溶着、挟み込み、差し込み、係止部材による係止など種々の方法が挙げられるが、リング部材の内周縁に貼付代を設けて、当該貼付代にフィルムを接着や溶着により貼り付ければ、生産性が高い。
【0016】
リング部材の外周面に凸条を形成しておけば、リング部材とカートリッジ本体との間における液密性、すなわち水漏れ防止性を向上することができる。
【0017】
凸条をリング部材が吐出口側に向けてスライド容易で、後端開口側に向けてはスライドし難い形状に形成していれば、良好な液密性を確保しながら、固着材の吐出作業性も向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】カートリッジの斜視図である。
図2】リング部材の斜視図である。
図3】リング部材の中央断面図である。
図4】攪拌棒によってフィルムを突き破る状態の断面図である。
図5】攪拌棒によって混合している状態の断面図である。
図6】吐出ガンによって固着材を吐出している状態の断面図である。
図7】吐出ガンから固着材を吐出しきった状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の代表的な実施形態について説明する。図1に示すように、カートリッジ1は、カートリッジ本体10と、封止体11と、リング部材12と、フィルム13と、蓋14とを有し、内部に水Wと水硬性粉体Pが隔離された状態で収容されている。
【0020】
カートリッジ本体10は、合成樹脂製の円筒形の中空容器であって、図4,5に示すように、先端に吐出口10aを有し、後端は開口している。吐出口10aの直径はカートリッジ本体10の直径より小さく、カートリッジ本体10の上面(先端面)から突出形成されている。吐出口10aの外周面にはネジ山が形成されており、カートリッジ1の使用前は、吐出口10aに蓋14が螺合されて塞がれている。これにより、カートリッジ1の保管時や運搬時等に水Wが吐出口10aからこぼれたり乾燥することで収容量が減少することが防止される。
【0021】
封止体11は、カートリッジ本体10の後端開口を封止する樹脂成型品であって、カートリッジ本体10の内形と封止体11の外形は一致している。カートリッジ1の使用前は、封止体11はカートリッジ本体10の後端を初期位置として配されている。封止体11は、カートリッジ本体10の内部を初期位置から吐出口10a方向へスライド可能な程度に圧入されている。封止体11はカートリッジ本体10の後端開口を封止するものであるが、その封止対象は詳細を後述する水硬性粉体Pや水硬性組成物Mからなる粘度の高いペーストなので、リング部材12ほどの密閉性は要求されない。したがって、封止体11の外周面は平坦で構わないが、密閉性を高めるために1つ又は複数の凸条を設けることも好ましい。
【0022】
封止体11の厚み(カートリッジ1の軸方向長さ)は、粉体やペーストを封止できる程度にカートリッジ本体10とある程度の接合面積を確保できれば特に限定されないが、可能な限り厚みは小さいことが好ましい。内部収容空間を大きく取りながら、できるだけカートリッジ1をコンパクトにできるからである。また、固着材を注入する際に吐出ガン100の押圧棒103(図7参照)による封止体11の押圧力が必要以上に大きくなることも避けられる。封止体11は、外形がカートリッジ本体10の内径と一致していれば、平板円盤状でもよいし、外周壁を有するお盆状でもよい。
【0023】
リング部材12は、合成樹脂製の一体成型品であって、吐出口10aと封止体11との間においてカートリッジ本体10内に内篏されている。図3,4に示すように、リング部材12は、中央が開口した円環部材である。リング部材12の外周壁12aの内周縁には、全周に亘って貼付代12bが径方向内方に向けて膨出形成されている。貼付代12bの裏面は、軽量化のために中空とされている。換言すれば、リング部材12の外周壁12aを外筒部として捉えれば、その直径より一周り小さな直径の内筒部12cを有し、その上縁から外周壁12aまで径方向外方に向けてフランジ12bが全周に亘って形成され、当該フランジ12bが貼付代として使用されると説明することもできる。なお、貼付代12bの強度を向上するため、貼付代12bの裏側であって、内筒部12cと外周壁12aとの間に、周方向に複数のリブを並設することも好ましい。貼付代12bは、外周壁12aの上端より低い位置に形成されている。これにより、貼付代12bの外周は、外周壁12aで囲まれている。
【0024】
フィルム13は、リング部材12の中央開口を塞ぐようにリング部材12に接合されている。フィルム13は、貼付代12bにおいてリング部材12へ貼り付けられている。フィルム13の貼り付け方法としては、接着又は溶着が挙げられるが、生産性の高い接着が好ましい。このとき、貼付代12bの外周が外周壁12aによって囲まれていることで、貼付工程においてフィルム13を容易に位置決めして貼付代12bの上へ載置することができる。
【0025】
フィルム13は、カートリッジ1の内部に収容した水Wや水硬性粉体Pの重量や内圧によって破断されない程度の剛性を有し、且つ後述の攪拌棒Bによって突き破れるものであれば、その素材は特に限定されない。代表的には、アルミニウムや銅等の金属ないし合金製フィルム、又は樹脂フィルムを使用できる。熱可塑性樹脂製のフィルムとすれば、リング部材12へ溶着することもできる。
【0026】
フィルム13が貼り付けられ、中央開口が塞がれたリング部材12がカートリッジ本体10内に内篏されていることで、当該カートリッジ本体10の内部収容空間は、フィルム13を介して吐出口10a側空間と後端側空間とに区画されている。そのうえで、吐出口10a側空間に水Wが予め収容されており、後端側空間に予め水硬性粉体Pが収容されている。すなわち、水Wと水硬性粉体Pとがフィルム13を介して隔離された状態で、それぞれカートリッジ1内に予め収容されている。
【0027】
そのため、リング部材12の外周面には、複数の凸条12dが全周に亘って形成されている。本実施形態では、リング部材12の上端、中央部、下端の3個所に、それぞれ凸条12d,12d,12dが形成されている。これらの凸条12dの存在によって、リング部材12とカートリッジ本体10との間における液密性(水漏れ防止性)が高められている。
【0028】
上端の凸条12dは、カートリッジ1の吐出口10a側(上側)と後端開口側(下側)の傾斜角度が同じ山型に形成されている。中央部の凸条12dも山型に形成されているが、外周壁12aに対する吐出口10a側(上側)の傾斜角度θが、外周壁12aに対する後端開口側(下側)の傾斜角度θよりも大きくなっている。また、下端の凸条12dは、外周壁12aに対する吐出口10a側(上側)の傾斜角度θが、中央部の凸条12dにおける同じ面の傾斜角度θと同じ角度の半山型に形成されている。これら凸条12dと凸条12dの特殊形状により、リング部材12は、吐出口10a側に向けてスライド容易であるが、後端開口側に向けてはスライドし難くなっている。これにより、リング部材12とカートリッジ本体10との間で良好な液密性を担保しながら、攪拌棒Bによってフィルム13を突き破る際にリング部材12がカートリッジ1の後端開口側へ不用意にスライドすることを避けられると共に、固着材を注入する際に吐出ガン100の押圧棒103によって吐出口10a側へ円滑にスライドさせることができる。なお、リング部材12の外周面には、必要に応じてワセリン等の潤滑剤を塗布しておくことも好ましい。
【0029】
カートリッジ1へ予め収容する水Wと水硬性粉体Pの量は、固定要素の種類や大きさ、及び求められる固着力等に応じて、従来から公知の配合量で予め収容しておけばよい。水硬性粉体Pとしては、この種の固着材用として従来から公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントやエコセメント、並びにこれらのセメントにフライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、アルミナセメント、超速硬セメント、急硬性セメント、急結セメント、微粒子セメント、マグネシア等が挙げられる。また、水硬性粉体Pは細骨材を含有していてもよい。細骨材としては、例えばスラグ細骨材、珪砂、山砂、海砂、陸砂、川砂、再生細骨材、セメントクリンカ、ガラスビーズ等が挙げられる。さらに、細骨材以外にも、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、減水剤を含む粉体状の界面活性剤、セメント用ポリマー、粗骨材、急結剤や急硬剤等の硬化促進剤、硬化遅延剤、膨張材、防水剤、防錆剤、顔料、増粘剤、収縮低減剤、増量材、繊維等の添加物を配合することもできる。これらのセメント、細骨材、及び添加成分は、一種単独で使用することもできるし、二種以上を併用することもできる。
【0030】
水Wとしては水道水で構わないが、必要に応じて凝結遅延剤、凝結促進剤、減水剤、増粘剤等を添加してもよい。
【0031】
カートリッジ1へ予め水Wと水硬性粉体Pを収容する方法としては、吐出口10aを下にして、後端開口からリング部材12をカートリッジ本体10内へ挿通内篏してから所定量の水硬性粉体Pを収容し、封止体11を圧入して後端開口を封止する。次いで、カートリッジ本体10を上下反転して吐出口10aから所定量の水を収容した後、吐出口10aを蓋14で塞げばよい。なお、保管時や運搬時は、基本的に図1に示すように吐出口10aを上にしてカートリッジ1を立てておくことができる。
【0032】
次に、カートリッジ1の使用方法について説明する。図1に示す保管状態から蓋14を取り外して、図4に示すように、吐出口10aから専用の攪拌棒Bを挿通する。攪拌棒Bは金属製である。そして、そのまま水Wの領域を超えて攪拌棒Bをカートリッジ1の奥方(後端開口側)まで挿通することで、フィルム13を突き破る。このとき、凸条12dや凸条12dの特殊形状によって、リング部材12は後端開口側へ不用意にスライドすることはない。
【0033】
フィルム13を突き破ると、水Wがリング部材12の中央開口から下方へ流下し、水硬性粉体Pと混ざり合う。そして、図5に示すように、攪拌棒Bをカートリッジ1の最奥端(最下端)まで押し込み、上下左右に動かしながら回転させることで、水Wと水硬性粉体Pとを混合攪拌することで、固着材となる水硬性組成物Mとなる。攪拌棒Bによる攪拌は、手動で行ってもよいが、図外のインパクトドライバ等の回転工具に取り付けて行うと効率的である。このとき、フィルム13はリング部材12に貼り付いたままなので、フィルム13によって水硬性組成物Mの攪拌効率が阻害されることはない。
【0034】
水Wと水硬性粉体Pとを十分に攪拌して滑らかな水硬性組成物Mが得られたら、図6に示すように、吐出口10aに吐出ノズル101を取り付けてから、公知の吐出ガン100に装着する。そして、操作レバー102を操作して押圧棒103により封止体11を吐出口10a側へ押し込みスライドさせることで、水硬性組成物Mが吐出ノズル101の先端から吐出される。これにより、図外のコンクリート構造物へ穿設した固定要素固着用の穴内へ水硬性組成物Mを注入することができる。
【0035】
コンクリート構造物としては、例えばビル、トンネル、橋梁等が挙げられる。固定要素としては、例えばアンカーボルト、鉄筋、ロックボルト、緊張材、螺子等が挙げられる。
【0036】
なお、吐出ガン100の押圧棒103をどんどん押し込んでいくと、押圧棒103によって押し込まれた封止体11がリング部材12に接触するが、当該リング部材12は吐出口10a側へ容易にスライド可能なので、封止体11と共にリング部材12も吐出口10a側限界までスライドしていく。これにより、水硬性組成物Mのロスを低減してほぼ最後まで使い切ることができる。
【0037】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、これに限られることは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えばフィルム13は、リング部材12に接着や溶着により貼り付けるほか、リング部材12を分割部材にして外周壁12aの部分で挟み込んだり、外周壁12aの内周面に形成した溝に挿通したり、係止ピン等の係止部材によって係止することで、フィルム13をリング部材12に接合することもできる。
【0038】
また、リング部材12に貼付代12bを設けず、リング部材12の上面又は下面に貼り付けることもできる。貼付代12bを形成する場合でも、外周壁12aの上面又は下面と貼付代12bの貼付面とが同じ高さで面一となっていてもよいし、外周壁12aの上面又は下面より貼付代12bの貼付面が上方又は下方へ突出していてもよい。
【0039】
水Wの収容量によっては、水W用の収容空間を小さくして、必ずしもリング部材12をスライド可能とする必要もない。
【0040】
リング部材12の外面には、必ずしも凸条12dを形成する必要もない。形成する場合でも、上記実施形態のように3つに限らず、1つ又は2つ、もしくは4つ以上形成することもできる。このとき、必ずしも特殊形状とする必要もなく、全ての凸条12dが、外周壁12aに対する吐出口10a側の傾斜面と後端開口側の傾斜面とが同じ凸条12dのような形状としていてもよい。
【0041】
また、凸条12dを、リング部材12が吐出口10a側に向けてスライド容易で、後端開口側に向けてはスライドし難い特殊形状に形成するとしても、全ての凸条12dを、外周壁12aに対する吐出口10a側の傾斜角度θが鈍角で、外周壁12aに対する後端開口側の傾斜角度θが鋭角となっている凸条12dのように形成することもできるし、外周壁12aに対する吐出口10a側の傾斜角度θが鈍角な半山型となっている凸条12dのように形成することもできる。
【0042】
攪拌棒Bは、吐出口10aから挿通可能な形状であれば、図示した波型形状に限らず、先端部がL字型、N字型、J字型など種々の形状のものを使用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 カートリッジ
10 カートリッジ本体
10a 吐出口
11 封止体
12 リング部材
12a 外周壁
12b 貼付代
12d 凸条
13 フィルム
W 水
P 水硬性粉体
M 水硬性組成物(固着材)
B 攪拌棒
100 吐出ガン
101 吐出ノズル
103 押圧棒



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7