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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152163
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】流体封入式筒型防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/14 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F16F13/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054830
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】久米 廷志
(72)【発明者】
【氏名】今枝 健一郎
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047CA04
3J047CC02
3J047CD07
3J047FA04
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構造でオリフィス通路のチューニング自由度を大きく得ることができると共に、内部の流体室等に対する空気の混入を防ぎ易くなる、新規な構造の流体封入式筒型防振装置を提供すること。
【解決手段】流体封入式筒型防振装置10であって、本体ゴム弾性体16の外周部分に固着された中間スリーブ28が、2つの流体室44,44の間で外周面に開口しながら周方向に延びる溝状部36aを備えている一方、中間スリーブ28の溝状部36aに取り付けらたオリフィス部材46が、軸直角方向に貫通する通路形成孔52を備え、通路形成孔52の内周開口が溝状部36aの底壁部で塞がれると共に、通路形成孔52の外周開口がアウタ筒部材14で塞がれることにより、アウタ筒部材14と中間スリーブ28の間を周方向に延びるオリフィス通路58が通路形成孔52によって形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって連結されており、
該アウタ筒部材の周方向に離れて内部に形成される複数の流体室が、それら流体室の周方向間を延びるオリフィス通路によって相互に連通された構造を有する流体封入式筒型防振装置であって、
前記本体ゴム弾性体の外周部分に中間スリーブが固着されており、該中間スリーブが2つの前記流体室の間で外周面に開口しながら周方向に延びる溝状部を備えている一方、
該中間スリーブの該溝状部にはオリフィス部材が取り付けられており、該オリフィス部材は軸直角方向に貫通する通路形成孔を備え、該通路形成孔の内周開口が該溝状部の底壁部で塞がれると共に、該通路形成孔の外周開口が前記アウタ筒部材で塞がれることにより、該アウタ筒部材と該中間スリーブの間を周方向に延びる前記オリフィス通路が該通路形成孔によって形成されている流体封入式筒型防振装置。
【請求項2】
前記オリフィス部材は、前記アウタ筒部材との重ね合わせ面間における流体流動を制限するシールゴムを備えている請求項1に記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項3】
前記中間スリーブにおける前記溝状部の両側の側壁内面にはそれぞれ嵌合ゴムが固着されており、それら嵌合ゴムの間に前記オリフィス部材が嵌め合わされて、該オリフィス部材が該中間スリーブに対して位置決めされている請求項1又は請求項2に記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項4】
前記オリフィス部材は、前記中間スリーブにおける前記溝状部の周方向両端面に重ね合わされて、該オリフィス部材を該中間スリーブに対して位置決めする位置決め部を備えている請求項1~3の何れか一項に記載の流体封入式筒型防振装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、前記オリフィス部材の周方向の両端部において内周へ向けて突出して設けられており、前記中間スリーブにおける前記溝状部の底壁部の周方向両端面に重ね合わされている請求項4に記載の流体封入式筒型防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のサスペンションブッシュなどに用いられる流体封入式筒型防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特開平7-259922号公報(特許文献1)に開示されているように、自動車のサスペンションブッシュ等にも用いられる筒型防振装置が知られている。特許文献1は、内筒と外筒がゴム弾性筒によって連結された構造を有している。また、特許文献1では、特定周波数の振動に対する防振性能の向上などを目的として、内部に流体が封入された複数の流体室を設けて、流体室間の流体流動作用等に基づく防振効果が発揮されるようにした流体封入式の筒型防振装置とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-259922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の流体封入式筒型防振装置は、周方向に複数の流体室が設けられており、それら流体室が周方向間に設けられたオリフィス通路を通じて相互に連通された構造を有している。特許文献1では、ゴム弾性筒の外周面に固着された補強リングと、補強リングに外嵌装着された外筒との間に配されたオリフィス構造体によって、オリフィス通路が形成されている。オリフィス構造体は、金具とゴム弾性材との複合体であって、ゴム弾性材によって形成された溝の外周開口が外筒で覆われることによって、オリフィス通路が形成されている。
【0005】
しかし、特許文献1では、オリフィス構造体における溝の底壁部が補強リングに重ね合わされることにより、径方向においてオリフィス通路の寸法が制限され易く、例えば、オリフィス通路の通路断面積を大きく設定するためには、外筒の大径化が必要となる。また、補強リングの外周面とオリフィス構造体の内周面との重ね合わせ面間に空気が残留し易く、残留した空気が流体室やオリフィス通路に入ることで、防振性能や静粛性等に悪影響を及ぼすおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、コンパクトな構造でオリフィス通路のチューニング自由度を大きく得ることができると共に、内部の流体室等に対する空気の混入を防ぎ易くなる、新規な構造の流体封入式筒型防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、インナ軸部材とアウタ筒部材が本体ゴム弾性体によって連結されており、該アウタ筒部材の周方向に離れて内部に形成される複数の流体室が、それら流体室の周方向間を延びるオリフィス通路によって相互に連通された構造を有する流体封入式筒型防振装置であって、前記本体ゴム弾性体の外周部分に中間スリーブが固着されており、該中間スリーブが2つの前記流体室の間で外周面に開口しながら周方向に延びる溝状部を備えている一方、該中間スリーブの該溝状部にはオリフィス部材が取り付けられており、該オリフィス部材は軸直角方向に貫通して周方向に延びる通路形成孔を備え、該通路形成孔の内周開口が該溝状部の底壁部で塞がれると共に、該通路形成孔の外周開口が前記アウタ筒部材で塞がれることにより、該アウタ筒部材と該中間スリーブの間を周方向に延びる前記オリフィス通路が該通路形成孔によって形成されているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置によれば、オリフィス通路がオリフィス部材の外周面に開口して周方向に延びる溝によって構成される場合に比して、軸直角方向においてオリフィス通路の幅寸法をスペース効率よく確保することができる。それゆえ、アウタ筒部材の大径化を要することなく、オリフィス通路のチューニング自由度を大きく得ることができる。
【0010】
また、オリフィス部材と中間スリーブにおける溝状部の底壁部との重ね合わせ面の面積が、通路形成孔によって小さくされることから、流体封入式筒型防振装置の製造に際して、オリフィス部材と中間スリーブの重ね合わせ面間に空気が残留する隙間が形成され難い。それゆえ、オリフィス部材と中間スリーブの重ね合わせ面間に残留した当該空気が流体室やオリフィス通路といった流体封入領域へ入ることに起因する防振性能の低下やキャビテーション異音の発生等が、有効に防止される。
【0011】
第二の態様は、第一の態様に記載された流体封入式筒型防振装置において、前記オリフィス部材は、前記アウタ筒部材との重ね合わせ面間における流体流動を制限するシールゴムを備えているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置によれば、流体室間においてオリフィス通路を介さない短絡がシールゴムによって防止されることから、オリフィス通路を通じた流体流動を効率的に生じさせて、優れた防振性能を得ることができる。また、シールゴムがオリフィス部材に設けられることから、アウタ筒部材の内周面にシールゴムを設ける必要がない。オリフィス部材はアウタ筒部材よりも小型の部材であることから、シールゴムをより効率的に製造することができる。
【0013】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式筒型防振装置において、前記中間スリーブにおける前記溝状部の両側の側壁内面にはそれぞれ嵌合ゴムが固着されており、それら嵌合ゴムの間に前記オリフィス部材が嵌め合わされて、該オリフィス部材が該中間スリーブに対して位置決めされているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置によれば、オリフィス部材を中間スリーブの溝状部に対して簡単に位置決めすることができる。特に、オリフィス部材と溝状部の側壁部とが嵌合ゴムを介して係止されることによって、オリフィス部材と中間スリーブを軸方向で効果的に位置決めすることができる。
【0015】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された流体封入式筒型防振装置において、前記オリフィス部材は、前記中間スリーブにおける前記溝状部の周方向両端面に重ね合わされて、該オリフィス部材を該中間スリーブに対して位置決めする位置決め部を備えているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置によれば、オリフィス部材と中間スリーブを簡単に位置決めすることができる。特に、オリフィス部材の位置決め部と中間スリーブの周方向端面との係止によって、オリフィス部材と中間スリーブを周方向で効果的に位置決めすることができる。
【0017】
第五の態様は、第四の態様に記載された流体封入式筒型防振装置において、前記位置決め部は、前記オリフィス部材の周方向の両端部において内周へ向けて突出して設けられており、前記中間スリーブにおける前記溝状部の底壁部の周方向両端面に重ね合わされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置によれば、オリフィス部材の位置決め部と中間スリーブにおける溝状部の周方向両端面との重ね合わせ面積を大きくすることができて、オリフィス部材と中間スリーブの位置決め作用を有利に得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンパクトな構造でオリフィス通路のチューニング自由度を大きく得ることができると共に、内部の流体室等に対する空気の混入を防ぎ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一の実施形態としてのサスペンションブッシュを示す断面図であって、図2のI-I断面に相当する図
図2図1のII-II断面図
図3図1に示すサスペンションブッシュをアウタ筒部材の装着前状態で示す斜視図
図4図1に示すサスペンションブッシュをアウタ筒部材の装着前状態で示す右側面図
図5図1に示すサスペンションブッシュを構成するオリフィス部材の斜視図
図6図1に示すオリフィス部材の右側面図
図7図1に示すオリフィス部材の正面図
図8図7のVIII-VIII断面図
図9】本発明の別の一実施形態としてのサスペンションブッシュを構成するオリフィス部材の斜視図
図10図1に示すオリフィス部材の右側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1図2には、本発明に従う構造とされた流体封入式筒型防振装置の第一の実施形態として、自動車用のサスペンションブッシュ10が示されている。サスペンションブッシュ10は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは図1中の上下方向を、左右方向とは図1中の左右方向を言う。
【0023】
インナ軸部材12は、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、略円筒形状とされている。本実施形態のインナ軸部材12は、略一定の断面形状で軸方向に延びているが、例えば、軸方向で部分的に内径寸法及び/又は外径寸法が変化していたり、断面形状が軸方向で変化していてもよい。
【0024】
インナ軸部材12には、ストッパ部材18が取り付けられている。ストッパ部材18は、金属によって形成されていてもよいが、好適には合成樹脂によって形成されており、例えば、インナ軸部材12の外周面上に射出成形されている。ストッパ部材18は、全体として板状とされて、厚さ方向である軸方向に貫通するインナ装着孔20を備えており、インナ軸部材12がインナ装着孔20に挿通された状態で固着されている。ストッパ部材18は、上下方向の両側へ突出する一対のストッパ突部22,22を備えている。ストッパ突部22の突出先端面は、周方向に湾曲していると共に、軸方向の中央部分が周方向に延びる溝状に凹んでいる。ストッパ部材18における一対のストッパ突部22,22の基端側には、左右方向の外面に開口する凹所が形成されており、後述する本体ゴム弾性体16の固着面積が大きく確保されている。
【0025】
インナ軸部材12には、本体ゴム弾性体16が加硫接着されている。本体ゴム弾性体16は、全体として厚肉の円筒状とされており、内周面がインナ軸部材12の外周面に加硫接着されている。本体ゴム弾性体16は、上下方向の両側に向けて開口する一対のポケット部24,24を備えている。各ポケット部24の底面において、ストッパ部材18のストッパ突部22が突出している。また、本体ゴム弾性体16と一体形成されたストッパゴム26がストッパ部材18におけるストッパ突部22,22の各先端面に固着されている。
【0026】
本体ゴム弾性体16の外周端部には、中間スリーブ28が固着されている。中間スリーブ28は、金属等で形成された硬質の部材であって、インナ軸部材12に比して大径の略円筒形状とされている。中間スリーブ28は、本体ゴム弾性体16の一対のポケット部24,24の開口部と対応する一対の窓部30,30を備えており、一対のポケット部24,24が一対の窓部30,30を通じて外周へ開放されている。中間スリーブ28における窓部30よりも軸方向の外側部分は、全周にわたって連続する筒状とされており、図3図4に示すように、本体ゴム弾性体16と一体形成されたシール部32が外周面に固着されている。シール部32は、全周にわたって連続しており、外周面に突出する環状のシールリップ34を備えている。ポケット部24,24の軸方向の開口端部は、窓部30,30よりも軸方向の内側に位置しており、中間スリーブ28が固着されておらず、本体ゴム弾性体16単体で構成されている。窓部30,30は、軸方向寸法が周方向で部分的に大きくされている。
【0027】
中間スリーブ28における一対の窓部30,30の周方向間には、軸方向の両端部よりも小径とされて、外周面に開口して周方向に延びる溝状部36a,36bが形成されている。本実施形態の溝状部36は、中間スリーブ28の軸方向の中央部分に設けられており、軸方向において中間スリーブ28の長さ寸法の半分よりも長い領域に設けられている。
【0028】
中間スリーブ28の一方の溝状部36aには、図2に示すように、一対の嵌合ゴム38,38が固着されている。嵌合ゴム38,38は、一方の溝状部36aの両側の側壁内面に固着されている。嵌合ゴム38,38は、軸方向において相互に離れており、嵌合ゴム38,38の軸方向間には、周方向に延びる嵌合溝40が形成されている。
【0029】
中間スリーブ28の他方の溝状部36bには、図1に示すように、閉塞ゴム42が固着されている。閉塞ゴム42は、溝状部36bを周方向の少なくとも一部において遮断して周方向の連通を阻止するように設けられている。本実施形態では、閉塞ゴム42が溝状部36bの周方向の中央部に設けられているが、閉塞ゴム42は、例えば、溝状部36b内の全体に設けられていてもよい。
【0030】
本実施形態では、嵌合ゴム38,38及び閉塞ゴム42は、シール部32と一体的に設けられている。シール部32に設けられたシールリップ34は、嵌合ゴム38,38及び閉塞ゴム42まで延びて設けられていてもよい。本実施形態のシールリップ34は、図4に示すように、嵌合ゴム38,38に軸方向で延び出していると共に、嵌合ゴム38,38の軸方向の内側部分において周方向に延びている。シールリップ34は、嵌合ゴム38,38の軸方向の対向面に突出して、嵌合溝40の深さ方向である左右方向の全長にわたって延びていてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、嵌合ゴム38,38においてシールリップ34から遠い部分には、外周面に開口する凹部が設けられている。これにより、後述するアウタ筒部材14の装着状態において、嵌合ゴム38,38とアウタ筒部材14が凹部によってシールリップ34に近い位置で優先的に当接することから、シールリップ34がアウタ筒部材14に有効に押し当てられて、シール性能の向上が図られる。
【0032】
中間スリーブ28は、本体ゴム弾性体16の成形時に加硫接着されており、本体ゴム弾性体16がインナ軸部材12と中間スリーブ28とを備える一体加硫成形品として形成されている。本実施形態では、ストッパゴム26、シール部32、嵌合ゴム38,38、閉塞ゴム42が本体ゴム弾性体16と一体形成されているが、それらは本体ゴム弾性体16と別体であってもよい。
【0033】
本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、アウタ筒部材14が取り付けられている。アウタ筒部材14は、金属によって形成された硬質の部材であって、中間スリーブ28よりも大径の略円筒形状とされている。アウタ筒部材14は、中間スリーブ28に対して外挿された状態で縮径加工されることにより、中間スリーブ28の軸方向両端部の外周面に密着されて、中間スリーブ28に固定されている。また、本実施形態では、アウタ筒部材14の軸方向両端部が内周へ突出するように屈曲されており、アウタ筒部材14の屈曲した軸方向両端部が中間スリーブ28に軸方向で外側から重ね合わされることによって、アウタ筒部材14が中間スリーブ28に対して軸方向で位置決めされている。
【0034】
中間スリーブ28にアウタ筒部材14が取り付けられることにより、中間スリーブ28の一対の窓部30,30がアウタ筒部材14によって覆われて塞がれる。これにより、窓部30,30を通じて開放された本体ゴム弾性体16の一対のポケット部24,24の開口部が、アウタ筒部材14によって液密に閉塞されて、一対の流体室44,44が一対のポケット部24,24を利用して形成されている。一対の流体室44,44は、周方向で相互に離れて設けられており、外周端部の周方向間に中間スリーブ28の溝状部36a,36bが位置している。中間スリーブ28における窓部30,30よりも軸方向の両側は、外周面がシール部32で全周にわたって覆われている。シール部32がアウタ筒部材14の内周面に押し当てられることにより、中間スリーブ28とアウタ筒部材14との重ね合わせ面間が流体密にシールされて、一対の流体室44,44が外部から液密に封止されている。本実施形態では、シール部32がシールリップ34を備えており、シールリップ34のアウタ筒部材14への押し当てによってシール性能の向上が図られている。
【0035】
一対の流体室44,44には、非圧縮性流体が封入されている。封入される非圧縮性流体は、水,エチレングリコール,アルキレングリコール,シリコーン油,それらの混合液等の液体が好適に採用される。非圧縮性流体は、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るために、好適には粘性率が0.1Pa・s以下の低粘性流体とされる。
【0036】
一対のポケット部24,24の底面に突出する一対のストッパ突部22,22は、アウタ筒部材14の内周面に対して上下方向で所定の距離だけ離れて対向している。なお、各ストッパ突部22の先端に設けられたストッパゴム26は、アウタ筒部材14の内周面に対して、予め接触していてもよいが、本実施形態では離隔している。そして、サスペンションブッシュ10の車両への装着状態(後述)において、ストッパ突部22がストッパゴム26を介してアウタ筒部材14に当接することにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の上下方向の相対変位量が制限されており、本体ゴム弾性体16の過剰な変形による損傷が防止されている。
【0037】
中間スリーブ28の溝状部36a,36bは、外周側の開口がアウタ筒部材14によって覆われている。溝状部36aにおいて、嵌合ゴム38,38がアウタ筒部材14に対して流体密に押し当てられていると共に、嵌合ゴム38,38の軸方向間には嵌合溝40によって周方向に延びる空間が形成されている。溝状部36bは、閉塞ゴム42がアウタ筒部材14に対して押し当てられることにより、周方向の中央部分において液密に遮断されている。なお、嵌合ゴム38,38が溝状部36aの開口よりも外周まで突出して形成されていると共に、閉塞ゴム42が溝状部36bの開口よりも外周まで突出して形成されていることが望ましい。もっとも、例えば、嵌合ゴム38,38が溝状部36aの開口から外周へ突出することなく形成されていると共に、閉塞ゴム42が溝状部36bの開口から外周へ突出することなく形成されており、アウタ筒部材14の嵌着に伴う中間スリーブ28の縮径変形によって、嵌合ゴム38,38と閉塞ゴム42がアウタ筒部材14に押し当てられるようにしてもよい。
【0038】
溝状部36a内の嵌合溝40には、図3図4に示すように、オリフィス部材46が配されている。オリフィス部材46は、オリフィス本体47を備えている。オリフィス本体47は、略板状とされており、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材とされている。より詳細には、オリフィス本体47は、図5図8に示すように、周方向に延びる本体部48と、本体部48の周方向両端から突出する一対の位置決め部50,50とを、備えている。
【0039】
本体部48は、円弧状に湾曲する湾曲板状とされており、外周面がアウタ筒部材14の内周面に対応する曲率とされ、且つ内周面が溝状部36aの底壁内面に対応する曲率とされている。本体部48には、通路形成孔52が貫通して形成されている。通路形成孔52は、本体部48の軸方向中央部分を軸直角方向である左右方向に貫通していると共に、本体部48の周方向の全長にわたって設けられている。本体部48は、通路形成孔52によって軸方向両側に分割されている。
【0040】
位置決め部50は、本体部48の周方向両端部から内周(左右方向の内側)へ向けて突出している。換言すれば、オリフィス本体47は、本体部48の周方向両側が内周へ向けて屈曲して位置決め部50,50をなす形状を有している。位置決め部50は、オリフィス本体47の軸方向全長にわたって連続して設けられており、通路形成孔52の周方向端部が位置決め部50によって塞がれている。そして、オリフィス本体47は、通路形成孔52によって二分された本体部48が、周方向両端において位置決め部50,50を介してつながっていることにより、全体が一体的な部品とされている。本実施形態において、本体部48と位置決め部50,50は、一体形成されているが、例えば、別々に形成されて固着されていてもよい。なお、左右方向の内側へ向けて突出した位置決め部50,50は、先端部分が上下方向の外側へ向けて突出するように途中で曲がっていてもよく、それによって、面積の狭い位置決め部50,50の突出先端面が振動入力時に本体ゴム弾性体16等に接触するのを防ぐことができる。
【0041】
オリフィス本体47は、例えば通路形成孔52を打ち抜いた金属板を湾曲させて本体部48を形成し、金属板の両端部を折り曲げて位置決め部50,50を形成することによって得ることができる。また、オリフィス本体47は、合成樹脂製とされていてもよく、この場合には、本体部48と位置決め部50,50とが射出成形等によって一体的に成形される。
【0042】
オリフィス本体47の外周面には、シールゴム54が固着されている。シールゴム54は、本体部48の外周面を全体にわたって覆っている。また、シールゴム54と一体形成された連結部56,56が、位置決め部50,50の基端部の周方向外面を覆っている。本体部48の外周面に固着されたシールゴム54は、通路形成孔52によって軸方向に分割されているが、周方向両側に連結部56,56が一体形成されていることによって一定的につながっている。シールゴム54は、オリフィス部材46に対して、例えば、加硫接着されていてもよいし、接着剤によって成形後に接着されていてもよい。シールゴム54がオリフィス部材46に設けられていることにより、オリフィス部材46とアウタ筒部材14の重ね合わせ面において流体室44,44間の短絡が問題となる部分にシールゴム54を効率的に設けることができる。
【0043】
オリフィス部材46は、図1図2に示すように、中間スリーブ28とアウタ筒部材14の径方向間に配されている。オリフィス部材46は、本体部48が溝状部36aの嵌合溝40内に挿し入れられて、嵌合ゴム38,38に軸方向で重ね合わされていると共に、位置決め部50,50が溝状部36aの周方向両端よりも周方向外側に位置して、溝状部36aの周方向両端面に重ね合わされている。これらにより、オリフィス部材46は、中間スリーブ28に対して、軸方向及び周方向において位置決めされている。
【0044】
オリフィス部材46が嵌合ゴム38,38の間へ挿し入れられることにより、中間スリーブ28の溝状部36aやオリフィス部材46の本体部48に製造上の寸法誤差があったとしても、嵌合ゴム38,38の弾性変形によって当該寸法誤差が許容される。それゆえ、中間スリーブ28の溝状部36aに対するオリフィス部材46の取付け不良が発生し難い。また、オリフィス部材46と嵌合ゴム38,38との軸方向の当接係止だけでなく、オリフィス部材46と嵌合ゴム38,38との摩擦抵抗による位置決め作用も得ることができ、例えば、軸方向だけでなく周方向での位置決め作用も発揮され得る。
【0045】
位置決め部50,50がオリフィス部材46の周方向端部において内周へ向けて突出していることにより、位置決め部50,50が溝状部36aの溝底壁部の周方向端面の略全体に対して重ね合わされており、位置決め部50,50と溝状部36aの周方向端面との重ね合わせ面積が大きく確保されている。
【0046】
本実施形態では、中間スリーブ28の溝状部36aが、位置決め部50,50の周方向間で締め代を持って挟み込まれている。位置決め部50,50は、溝状部30aに対して、本体ゴム弾性体16の一部を介して周方向に押し当てられており、溝状部36aと位置決め部50,50との周方向の重ね合わせ面間が流体密に封止されている。これにより、中間スリーブ28とオリフィス部材46との重ね合わせ面間を通じた流体流動が制限されている。なお、溝状部36aの底壁内面には、例えばオリフィス部材46の内周面が重ね合わされる部位などの一部或いは全面にわたってゴム層を設けてもよく、中間スリーブ28とオリフィス部材46との重ね合わせ面間のシール性を高めることも可能である。当該ゴム層は、本体ゴム弾性体16と別体であってもよいし、本体ゴム弾性体16と一体形成することもできる。
【0047】
アウタ筒部材14は、オリフィス部材46が装着された中間スリーブ28に取り付けられる。アウタ筒部材14が縮径加工されて中間スリーブ28の外周面に密着する際に、アウタ筒部材14の内周面がオリフィス部材46の外周面に対してシールゴム54を介して押し付けられて、アウタ筒部材14とオリフィス部材46の重ね合わせ面間がシールゴム54によって流体密にシールされる。これにより、アウタ筒部材14とオリフィス部材46の重ね合わせ面間における流体流動が制限されている。
【0048】
オリフィス部材46が中間スリーブ28とアウタ筒部材14の径方向間に配されることにより、通路形成孔52の一方の開口(内周側の開口)が、中間スリーブ28の溝状部36aの底壁部によって塞がれていると共に、通路形成孔52の他方の開口(外周側の開口)が、アウタ筒部材14によって塞がれている。これらにより、中間スリーブ28の溝状部36aには、周方向に延びるトンネル状の通路が、オリフィス部材46によって形成されている。このトンネル状の通路は、周方向の両端部が流体室44,44に連通されており、一対の流体室44,44を相互に連通するオリフィス通路58が、一対の流体室44,44の周方向間において、オリフィス部材46の通路形成孔52によって形成されている。オリフィス通路58は、中間スリーブ28とアウタ筒部材14の径方向間を周方向に延びており、周方向で相互に離隔した一対の流体室44,44が、オリフィス通路58によって相互に連通されている。
【0049】
オリフィス通路58は、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、通路断面積と通路長の比に基づいて設定されており、例えばブレーキ振動やステアリング振動に相当する周波数に設定されている。もっとも、オリフィス通路58のチューニング周波数は、特に限定されない。
【0050】
オリフィス通路58は、壁部が何れも硬質とされた中間スリーブ28とアウタ筒部材14とオリフィス部材46とによって構成されており、通路断面の形状や大きさの変化が生じ難くなっている。従って、オリフィス通路58の通路断面積の違いによるチューニング周波数のばらつきが抑えられており、オリフィス通路58のチューニング周波数を目的とする振動周波数に精度よくチューニングすることが可能とされている。なお、シールゴム54もオリフィス通路58の壁部の一部を構成し得るが、シールゴム54は、薄肉であると共に、アウタ筒部材14とオリフィス部材46の間で圧縮されていることから、シールゴム54の変形によるオリフィス通路58の断面の変化は実質的に問題にならない。
【0051】
このような構造とされたサスペンションブッシュ10は、例えば、インナ軸部材12が図示しない自動車のサブフレーム等に取り付けられると共に、アウタ筒部材14が図示しない自動車のサスペンションアームのアームアイ等に取り付けられて、自動車において車両ボデーとサスペンションアームを防振連結する。
【0052】
そして、自動車の走行時に、ブレーキ振動やステアリング振動に相当する振動がサスペンションブッシュ10へ入力されると、振動の車両ボデーへの伝達がサスペンションブッシュ10によって低減される。即ち、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の間へ上下方向の振動が入力されると、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位によって、一対の流体室44,44間に相対的な圧力差が生じる。そして、一対の流体室44,44の圧力差に基づいて、オリフィス通路58を通じた流体流動が生じて、流体の流動作用に基づく振動減衰作用や振動絶縁作用等の防振効果が発揮される。
【0053】
オリフィス通路58は、オリフィス部材46を貫通する通路形成孔52の開口が中間スリーブ28の溝状部36aとアウタ筒部材14とによって塞がれることによって形成されている。それゆえ、オリフィス部材の外周面に開口する溝によってオリフィス通路を形成する場合のように、当該溝の底壁部が溝状部36aに重ね合わされることがなく、溝状部36aとアウタ筒部材14の間の制限された領域において、オリフィス通路58の径方向寸法をスペース効率よく確保することができる。その結果、サスペンションブッシュ10の大径化を抑制しながら、オリフィス通路58のチューニング自由度を大きく得ることができる。
【0054】
また、オリフィス部材46に通路形成孔52が設けられていることによって、オリフィス部材46と溝状部36aの溝底面との重ね合わせ面の面積が小さくされている。これにより、オリフィス部材46と溝状部36aの溝底面との重ね合わせ面間に空気が残留する隙間が形成され難く、流体室44,44及びオリフィス通路58への空気の混入が防止される。それゆえ、空気の混入による防振性能の低下やキャビテーション異音の発生等が防止されて、サスペンションブッシュ10が適用される自動車において乗り心地や静粛性の向上が図られる。特に本実施形態では、通路形成孔52が本体部48の周方向全長にわたって形成されていることから、オリフィス部材46と溝状部36aの溝底面との重ね合わせ面の面積が小さくされている。また、通路形成孔52が本体部48の軸方向の中央部分に形成されていることから、通路形成孔52の両側におけるオリフィス部材46と溝状部36aの溝底面との重ね合わせ面の面積がそれぞれ小さくされている。
【0055】
また、オリフィス部材46とアウタ筒部材14の重ね合わせ面間にシールゴム54が配されていることにより、オリフィス部材46とアウタ筒部材14の重ね合わせ面間を通じた流体室44,44間の短絡が防止される。その結果、オリフィス通路58を通じた流体流動量が多く確保されて、オリフィス通路58による防振効果を有利に得ることができる。
【0056】
オリフィス部材46において、オリフィス通路58の壁部を構成するオリフィス本体47と、アウタ筒部材14との重ね合わせ面間の流体密性を実現するシールゴム54とが、互いに独立しており、シールゴム54がオリフィス本体47に固着されている。これにより、オリフィス通路58の通路断面積や通路形状等を安定して高精度に設定しつつ、オリフィス部材46とアウタ筒部材14の重ね合わせ面間を通じた流体室44,44間の短絡を防ぐことができる。
【0057】
また、シールゴム54がオリフィス部材46の外周面に固着されていることによって、アウタ筒部材14の内周面にシールゴム層を設ける必要がない。アウタ筒部材14側にシールゴム層を設けようとすると、アウタ筒部材14の内周面を広範囲にわたって覆うシールゴム層を設ける必要が生じて、ゴム材料が多く必要になる。更に、アウタ筒部材14がオリフィス本体47よりも大型の部材であることから、アウタ筒部材14側にシールゴム層を形成しようとすると、シールゴム層を一度に形成できる数が少なくなって製造効率が低下する。従って、アウタ筒部材14ではなくオリフィス部材46側にシールゴム54を設けることで、シールゴム54の形成材料の削減が図られると共に、シールゴム54の製造効率の向上も実現可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、オリフィス部材46は、必ずしも全体が略一定の厚さで形成される必要はなく、両端部分を内周側へ突出するように厚肉とすれば、屈曲形状とすることなく位置決め部を設けることもできる。
【0059】
また、オリフィス部材46の位置決め部50,50は、必須ではなく、例えば、オリフィス部材の周方向端部が溝状部36aの周方向端面に重ね合わされることなく、溝状部36aよりも周方向の外側まで延びていてもよい。当該態様では、例えばオリフィス部材の周方向端部がアウタ筒部材14の内周面に沿って周方向に延びることとなる。その際、オリフィス通路58の周方向端は、例えば通路形成孔52が溝状部36から周方向外方にまで延びだして形成されることにより、通路形成孔52の周方向端部を通じてオリフィス部材の内周面に向けて開口して流体室44に連通され得る。また、例えば、オリフィス部材の周方向両端部が軸方向の外側へ拡がっており、軸方向で幅広とされたオリフィス部材の周方向端部が位置決め部として溝状部36aの側壁部の周方向端面に重ね合わされることで、オリフィス部材が中間スリーブ28に対して周方向に位置決めされるようにしてもよい。
【0060】
本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対するオリフィス部材46の組み付けに際しての位置決め等の目的で、例えば中間スリーブ28の溝状部36とそこに組み付けられるオリフィス部材46との重ね合わせ面間に凹凸などの係合構造を採用することも可能である。
【0061】
オリフィス部材46は、両方の溝状部36a,36bにそれぞれ取り付けられていてもよい。この場合に、溝状部36aに取り付けられたオリフィス部材と、溝状部36bに取り付けられたオリフィス部材とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、各オリフィス部材によって形成されるオリフィス通路は、互いに同じ周波数にチューニングされて、特定周波数の振動に対してより優れた防振性能が発揮されるようにしてもよいし、互いに異なる周波数にチューニングされて、より広い周波数の振動に対して防振性能が発揮されるようにしてもよい。
【0062】
また、1つのオリフィス部材において、相互に独立した複数の通路形成孔を設けて、1つのオリフィス部材によって複数のオリフィス通路を形成することもできる。それら複数のオリフィス通路は、互いに異なる周波数にチューニングされていてもよいし、互いに同じ周波数にチューニングされていてもよい。
【0063】
通路形成孔52は、軸方向で一方へ偏倚して設けられていてもよい。通路形成孔52は、全体として周方向に延びていれば、換言すれば、両端部が周方向の両側においてそれぞれ異なる流体室44に連通されていれば、途中が傾斜、屈曲、蛇行等していてもよいし、必ずしも本体部48の周方向全長にわたって形成されなくてもよい。また、通路形成孔52及びオリフィス通路58は、長さ方向で断面形状が変化していてもよい。
【0064】
シールゴムの具体的な形状は、前記実施形態のものに限定されない。具体的には、例えば、図9図10に示すオリフィス部材60のようなシールゴム62を採用することもできる。シールゴム62は、通路形成孔52の縁に沿って周方向に延びる第一のシール部64と、第一のシール部64から軸方向外側へ向けて延び出す複数の第二のシール部66とを、一体的に備えている。シールゴム62が第一のシール部64を備えることにより、オリフィス部材60の外周面においてオリフィス通路から軸方向外側への流体の漏れが防止される。また、シールゴム62が第二のシール部66を備えることにより、オリフィス通路を外れたオリフィス部材60の外周面上において、周方向の流体流動が防止される。本態様のシールゴム62は、第一の実施形態のシールゴム54に比して、アウタ筒部材14に対する接触面積が小さくされていることから、シール性能の向上や安定化が図られ得る。
【0065】
流体室44は、3つ以上が設けられていてもよい。また、流体室44は、壁部の一部が可撓性膜で構成されて容積変化が許容される平衡室を含んでいてもよい。
【0066】
第一の実施形態では、オリフィス部材46の外周面にシールゴム54を固着して設けると共に、アウタ筒部材14の内周面にはシールゴムが設けられていない例を示したが、例えば、オリフィス部材46の外周面とアウタ筒部材14の内周面との両方にシールゴムを設けることもできるし、オリフィス部材46の外周面にシールゴムを設けずに、アウタ筒部材14の内周面にシールゴムを設けることもできる。また、アウタ筒部材14とオリフィス部材46の重ね合わせ面間において、シールゴムはなくてもよい。なお、アウタ筒部材14の内周面にシールゴムを設ける場合に、オリフィス部材46の外周面に突条を設けて、当該突条がアウタ筒部材14の内周面に設けられたシールゴムに強く押し当てられることで、優れたシール性能を発揮するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 サスペンションブッシュ(流体封入式筒型防振装置)
12 インナ軸部材
14 アウタ筒部材
16 本体ゴム弾性体
18 ストッパ部材
20 インナ装着孔
22 ストッパ突部
24 ポケット部
26 ストッパゴム
28 中間スリーブ
30 窓部
32 シール部
34 シールリップ
36 溝状部
38 嵌合ゴム
40 嵌合溝
42 閉塞ゴム
44 流体室
46 オリフィス部材
47 オリフィス本体
48 本体部
50 位置決め部
52 通路形成孔
54 シールゴム
56 連結部
58 オリフィス通路
60 オリフィス部材(別の一実施形態)
62 シールゴム
64 第一のシール部
66 第二のシール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10