(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152201
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F02M55/02 310C
F02M55/02 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054884
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 智史
(72)【発明者】
【氏名】宮島 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】小高 義紀
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 亮祐
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AD04
3G066BA12
3G066BA61
3G066CB13S
3G066CB18
3G066CD17
(57)【要約】
【課題】脈動低減効果を確実にかつ容易に得ることができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、第一開口P1と第二開口P2とを連通する主流路Cを形成し、主流路Cの中間部に形成された第三開口P3を備える筒状のハウジング本体10と、筒状に形成され、第三開口P3を一端とするようにハウジング本体10に設けられ、第三開口P3において主流路Cに背向するハウジング環状座面21を有するハウジング筒部20と、一方面の外周縁がハウジング環状座面21に当接して配置され、第三開口P3を閉塞し、一方面が主流路Cを流通する流体の圧力を受ける面を構成し、主流路Cを流通する流体の圧力に応じて撓み変形する弾性膜30と、少なくとも筒部41を有し、ハウジング筒部20に固定され、筒部41の軸方向一端の押さえ部材環状座面41aが弾性膜30の他方面の外周縁に当接し、弾性膜30の他方面側に空間Sを形成する押さえ部材40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一配管に接続される第一開口と第二配管に接続される第二開口とを連通する主流路を形成し、前記主流路の中間部に形成された第三開口を備える筒状のハウジング本体と、
筒状に形成され、前記第三開口を一端とするように前記ハウジング本体に設けられ、前記第三開口において前記主流路に背向するハウジング環状座面を有するハウジング筒部と、
一方面の外周縁が前記ハウジング環状座面に当接して配置され、前記第三開口を閉塞し、前記一方面が前記主流路を流通する流体の圧力を受ける面を構成し、前記主流路を流通する流体の圧力に応じて撓み変形する弾性膜と、
少なくとも筒部を有し、前記ハウジング筒部に固定され、前記筒部の軸方向一端の押さえ部材環状座面が前記弾性膜の他方面の外周縁に当接し、前記弾性膜の前記他方面側に空間を形成する押さえ部材と、
を備える、コネクタ。
【請求項2】
前記弾性膜は、外環部の厚みが中央部の厚みより大きく形成され、
前記弾性膜の前記外環部は、前記ハウジング環状座面と前記押さえ部材環状座面とにより前記弾性膜の法線方向に圧縮された状態で挟持され、
前記弾性膜の前記中央部は、前記主流路を流通する流体の圧力に応じて撓み変形する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記押さえ部材は、前記押さえ部材環状座面よりも径方向内側から軸方向に突出し、前記弾性膜の前記外環部の径方向内側に位置し、前記外環部が径方向内側へ移動することを規制する環状突起を備える、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性膜は、
前記弾性膜の表層を形成し、前記ハウジング環状座面および前記押さえ部材環状座面に当接する弾性部材と、
前記弾性部材の内部に配置され、前記弾性部材より曲げ弾性率が高い材料により成形され、弾性変形可能な補強部材と、
を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記補強部材の外周部分の一部は、前記弾性部材と共に、前記ハウジング環状座面および前記押さえ部材環状座面に挟持される、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記押さえ部材における前記空間に配置され、前記弾性膜の前記他方面を前記主流路に向けて付勢するコイルスプリングを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記押さえ部材は、前記コイルスプリングの内周面に係合し前記コイルスプリングを位置決めする突起を備える、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記押さえ部材は、前記筒部および前記筒部の軸方向他端に形成された底部を備える有底筒状に形成され、前記筒部または前記底部に前記空間を大気開放させる孔が形成された、請求項1~7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記押さえ部材は、前記筒部および前記筒部の軸方向他端に形成された底部を備える有底筒状に形成され、
前記空間は、大気に開放されていない密閉空間である、請求項1~7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記ハウジング筒部と前記押さえ部材とは、螺子による螺合により固定された、請求項1~9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記ハウジング筒部と前記押さえ部材とは、溶着により固定された、請求項1~9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記ハウジング筒部と前記押さえ部材とは、相互に形成された係止手段により固定された、請求項1~9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料供給系において燃料の脈動を低減する技術が種々知られている。例えば、特許文献1には、インジェクタに燃料を供給するデリバリパイプにゴムパイプを設けることが記載されている。ゴムパイプが燃料の圧力変動に応じて膨張および収縮することにより、脈動が低減される。
【0003】
特許文献2には、燃料供給系に設けられるコネクタの内部に、空気ばねとして機能するベローズを設けることが記載されている。ベローズが伸縮変形することにより、脈動が低減される。特許文献3には、コネクタの流路に連通するシリンダと、シリンダ内を摺動するピストンとを備えることが記載されている。コネクタ内の圧力変動に応じてピストンが移動することにより、脈動が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-213434号公報
【特許文献2】特許第4641387号公報
【特許文献3】特許第5528838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているようなゴムパイプを設けることは、既存の燃料供給系の構成部品に対して別途部品を追加することになり、高コストとなる。特許文献2,3に記載されているように、コネクタに、脈動低減機能を付加することにより、新たな部品を追加する場合に比べて、低コストにできる。
【0006】
しかし、特許文献2に記載のベローズは、変形をより高精度にコントロールすることが容易ではない。そのため、脈動低減効果を十分に発揮できない場合がある。また、特許文献3に記載の構成は、シリンダ内をピストンが移動する際に、ピストンの外周に配置されたOリングがシリンダ内周面を摺動する。摺動するOリングの耐久性やシール性を確保するために、Oリングの材料や形状を工夫する必要がある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、脈動低減効果を確実にかつ容易に得ることができるコネクタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
第一配管に接続される第一開口と第二配管に接続される第二開口とを連通する主流路を形成し、前記主流路の中間部に形成された第三開口を備える筒状のハウジング本体と、
筒状に形成され、前記第三開口を一端とするように前記ハウジング本体に設けられ、前記第三開口において前記主流路に背向するハウジング環状座面を有するハウジング筒部と、
一方面の外周縁が前記ハウジング環状座面に当接して配置され、前記第三開口を閉塞し、前記一方面が前記主流路を流通する流体の圧力を受ける面を構成し、前記主流路を流通する流体の圧力に応じて撓み変形する弾性膜と、
少なくとも筒部を有し、前記ハウジング筒部に固定され、前記筒部の軸方向一端の押さえ部材環状座面が前記弾性膜の他方面の外周縁に当接し、前記弾性膜の前記他方面側に空間を形成する押さえ部材と、
を備える、コネクタにある。
【発明の効果】
【0009】
上記コネクタによれば、主流路を流通する流体の圧力が脈動する場合、流体の圧力に応じて弾性膜が撓み変形する。このように、弾性膜の撓み変形によって、脈動を低減することができる。つまり、コネクタが脈動低減機能を有しているため、流体流通経路の新たな部位に脈動低減機能を有する部材を設ける場合に比べて容易である。
【0010】
また、弾性膜は、一方面の外周縁がハウジング環状座面に当接し、他方面の外周縁が押さえ部材環状座面に当接する。つまり、弾性膜の外周部分である外環部が、ハウジング環状座面と押さえ部材環状座面との間に挟まれている。そして、弾性膜の中央部が、撓み変形する部位となる。つまり、弾性膜は、当接する部材との間で摺動することがない。従って、弾性膜の耐久性などの観点において、摺動する場合に比べて有利である。
【0011】
また、上述したように、弾性膜の中央部が撓み変形することにより、主流路を流通する流体の脈動を低減することができる。弾性膜の撓み変形は、ベローズの変形に比べてコントロールすることが容易である。従って、確実に、脈動低減効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第二実施形態のコネクタの部分拡大図である。
【
図4】第三実施形態のコネクタの部分拡大図である。
【
図5】第四実施形態のコネクタの部分拡大図である。
【
図6】第五実施形態のコネクタの部分拡大図である。
【
図7】第六実施形態のコネクタの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1.第一実施形態)
(1-1.コネクタ1の適用対象)
コネクタ1は、例えば、自動車の燃料供給系や冷却水の流路などの一部を構成する。例えば、
図1に示すように、コネクタ1は、燃料供給系において、エンジンのインジェクタに接続されるフューエルデリバリパイプと、燃料タンクからポンプにより圧送される流体燃料を流通させる長尺状の樹脂チューブとを連結する。インジェクタの開閉状態が制御されることにより、エンジンのシリンダ内に所望量の流体燃料が噴射される。
【0014】
コネクタ1は、流体燃料を流通させる主流路Cを形成しており、一端に第一配管2としてのフューエルデリバリパイプが接続され、他端に第二配管3としての樹脂チューブが接続される。本形態においては、流体燃料は、第二配管3としての樹脂チューブから、コネクタ1を介して、第一配管2としてのフューエルデリバリパイプに向かって流通する。
【0015】
そして、インジェクタの開閉動作によって、コネクタ1、第一配管2および第二配管3を流通する流体燃料に脈動が生じる。ただし、コネクタ1は、燃料供給系以外であっても、脈動を生じる流体の流通経路に適用可能である。
【0016】
(1-2.コネクタ1の構成)
コネクタ1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。コネクタ1は、ハウジング本体10、ハウジング筒部20、弾性膜30および押さえ部材40を備える。
【0017】
ハウジング本体10は、コネクタ1の主流路Cを形成する部分であり、主流路Cの外壁を構成する筒状に形成されている。ハウジング本体10は、第一配管2に接続される第一開口P1と第二配管3に接続される第二開口P2とを連通する主流路Cを形成する。つまり、ハウジング本体10において、筒状の一方の開口が第一開口P1であり、筒状の他方の開口が第二開口P2である。
図1においては、ハウジング本体10は、エルボータイプを例示しており、角度を有した主流路Cを有する。ただし、ハウジング本体10は、直筒状に形成し、直線状の主流路Cを有するようにしても良い。
【0018】
ハウジング本体10は、例えば、金属や樹脂などにより成形されている。例えば、ハウジング本体10が金属により成形される場合には、鋼材、アルミニウムなどが用いられる。また、ハウジング本体10が樹脂により成形される場合には、ハウジング本体10を形成する母材樹脂は、ポリプロピレン、ポリアミドなどが好適であるが、これに限定されるものではなく種々の樹脂材料を適用できる。ここで、ハウジング本体10は、
図1においては、1つの部材により形成される場合を例にあげるが、複数の部材を一体的に連結して形成されるようにしても良い。
【0019】
ハウジング本体10は、第一本体部11および第二本体部12を備え、第一本体部11と第二本体部12とは、一体成形されるようにしても良いし、別体に成形されて接合するようにしても良い。第一本体部11は、直筒状に形成され、一端(
図1の右端)に第一開口P1を形成する。本形態においては、第一本体部11は、第一配管2が挿入可能に形成され、かつ、第一配管2を係止する構成を有する。ただし、第一本体部11の形状は、連結対象部材に応じて適宜変更可能である。
【0020】
本形態においては、第一本体部11は、内部に第一配管2を挿入可能に形成される。ここで、第一配管2は、先端から距離を隔たて位置に、径方向外側に全周に亘って突出する環状フランジ2aを有する。第一配管2は、例えば、金属配管または硬質の樹脂配管などである。
【0021】
第一本体部11は、第一配管2の環状フランジ2aに対して、第一本体部11の軸方向に係止する係止部材11aを備える。係止部材11aは、第一配管2の環状フランジ2aが挿入されるように弾性変形可能に設けられている。つまり、第一配管2が第一本体部11の正規位置まで挿入されることで、第一配管2の環状フランジ2aが係止部材11aに係止され、環状フランジ2aが、第一配管2が引き抜かれることを規制する。
【0022】
さらに、第一本体部11の内周面と第一配管2の先端側の外周面との径方向間に、シールユニット4が設けられている。シールユニット4は、第一本体部11の内周面と第一配管2の先端部の外周面とをシールする一対のOリング51,53と、一対のOリング51,53の軸方向間に配置される円筒状のカラー部材52と、Oリング51,53およびカラー部材52を位置決めするための円筒状のブッシュ54とにより構成される。
【0023】
第二本体部12は、直筒状に形成され、一端(
図1の下端)に第二開口P2を形成し、他端(
図1の上端)にて第一本体部11の他端と接続される。第二本体部12の外周面に、第二配管3が嵌装され、かつ、第二配管3を係止する構成を有する。ただし、第二本体部12の形状は、連結対象部材に応じて適宜変更可能である。
【0024】
本形態においては、第二本体部12は、外周面に第二配管3が嵌装される。ここで、第二配管3は、拡管変形可能な樹脂により成形されている。第二本体部12の内周面は、円筒内周面状に形成されている。一方、第二本体部12の外周面は、径方向外側に突出する環状凸部を、軸方向に複数備える。環状凸部は、軸方向断面において係止力を確保するために鋭角に形成されるようにすると良い。
【0025】
第二配管3が第二本体部12の外周側に嵌装されることで、第二配管3は、拡管するとともに、第二本体部12の外周面の複数の環状凸部に対して軸方向に係止される。また、第二本体部12の外周面には、シール部材としてのOリング5が配置されており、Oリング5は、第二本体部12の外周面と第二配管3の内周面との間に径方向に挟まれることにより、シール機能を発揮する。
【0026】
さらに、ハウジング本体10は、主流路Cの中間部に形成された第三開口P3を備える。本形態においては、第三開口P3は、第一本体部11と第二本体部12との接続位置、すなわち、ハウジング本体10の角部に設けられている。第三開口P3は、例えば、円形の孔であるが、任意の形状の孔とすることができる。
【0027】
また、本形態においては、第三開口P3は、第二開口P2に対向するように形成されている。ただし、第三開口P3は、第一開口P1に対向するように形成しても良いし、第一開口P1および第二開口P2に対して角度を有するように形成しても良い。また、ハウジング本体10が直筒状の場合には、第三開口P3は、ハウジング本体10の軸方向の中間部に、ハウジング本体10の内部と外部とを径方向に貫通する開口となる。
【0028】
コネクタ1のハウジング筒部20は、筒状に形成されており、ハウジング本体10と一体成形されるようにしても良いし、別体に成形されて接合するようにしても良い。ハウジング筒部20は、例えば、金属や樹脂などにより成形されている。例えば、ハウジング筒部20は、樹脂により成形される場合には、射出成形により、ハウジング本体10と同時に一体成形されるようにしても良い。ハウジング筒部20は、第三開口P3を一端とするように、ハウジング本体10に設けられている。本形態においては、ハウジング筒部20は、ハウジング本体10の第二本体部12と同軸上に位置し、
図1の下端に第三開口P3を有する状態となる。
【0029】
ハウジング筒部20は、一端側すなわち第三開口P3側に、径方向内側に張り出す鍔部が形成されている。つまり、ハウジング筒部20は、第三開口P3において、ハウジング本体10により形成される主流路Cに背向する環状座面21(以下、「ハウジング環状座面」と称する)を有する。ハウジング環状座面21は、ハウジング筒部20の軸方向に直交する平面であって、全周に亘って同一平面状に形成される。
図1および
図2においては、ハウジング環状座面21は、上方の法線を有する。ハウジング環状座面21は、例えば円形に形成される。つまり、ハウジング環状座面21の内側が、第三開口P3を形成する。なお、環状とは、円形に限らず、多角形などを含む形状を意味し、以下も同様である。
【0030】
ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22は、後述する押さえ部材40との係合面を構成する。本形態においては、内周面22には、例えば、螺合するための雌螺子が形成されている。
【0031】
弾性膜30は、
図2に示すように、扁平状に形成され、ハウジング環状座面21の形状に対応する外形形状に形成されている。例えば、ハウジング環状座面21が円形の場合には、弾性膜30は、扁平円形に形成されている。
【0032】
弾性膜30は、弾性変形可能な材料により成形されている。例えば、弾性膜30には、ゴムやエラストマーなどの弾性部材、金属や樹脂などの板バネ、これらの複合体のいずれかが適用される。本形態においては、弾性膜30は、上記の弾性部材と板バネとの複合体を例にあげる。
【0033】
弾性膜30は、一方面の外周縁がハウジング環状座面21に当接して配置され、第三開口P3を閉塞する。そして、弾性膜30の一方面が、主流路Cを流通する流体の圧力を受ける面を構成する、さらに、弾性膜30は、主流路Cを流通する流体の圧力に応じて撓み変形する。
【0034】
ここで、本形態においては、弾性膜30は、外周部分を構成する外環部31、および、外環部31の径方向内側部分を構成する中央部32を備える。外環部31は、弾性膜30の法線方向から見て、円形、楕円形、多角形など、任意の無端環状に形成されている。
【0035】
弾性膜30の外環部31の一方面が、ハウジング環状座面21に、全周に亘って当接する。つまり、弾性膜30の外環部31とハウジング環状座面21との当接により、主流路Cと外部とがシールされる。そして、弾性膜30の中央部32は、第三開口P3に対向しており、第三開口P3を介して主流路Cを流通する流体の圧力を受ける面を構成し、主流路Cを流通する流体の圧力に応じて撓み変形する。
【0036】
ここで、弾性膜30の外環部31の厚み(
図2の上下方向厚み)が、中央部32の厚みよりも大きく形成されている。弾性膜30の外環部31は、弾性膜30の軸方向断面において、略円形や略矩形など、任意の形状に形成されている。例えば、弾性膜30の外環部31は、Oリングのような形状や円筒形などである。弾性膜30の中央部32は、薄膜のシート状に形成されている。そして、弾性膜30の中央部32は、外環部31の厚み方向の中央付近に接続されている。
【0037】
上記においては、弾性膜30を、ハウジング環状座面21に当接する外環部31と、撓み変形する中央部32とに分けて説明した。弾性膜30を、異なる観点にて分けた場合について説明する。
【0038】
弾性膜30は、弾性部材30aと、補強部材30bとを備える。弾性部材30aは、例えば、ゴムまたはエラストマーなどの弾性材料により成形される。弾性部材30aは、弾性膜30の表層を形成する。弾性部材30aは、上述した外環部31の表層を形成するとともに、中央部32の表層を形成する。従って、弾性部材30aは、ハウジング環状座面21に当接する。また、弾性部材30aは、中央部32において、主流路Cを流通する流体の圧力を直接受ける面を構成する。
【0039】
補強部材30bは、弾性部材30aよりも曲げ弾性率が高い材料、例えば、金属または樹脂により成形される。補強部材30bは、弾性変形可能である。つまり、補強部材30bは、板バネとして機能する。補強部材30bは、弾性部材30aの内部に配置されている。補強部材30bは、平板状に形成されており、少なくとも弾性膜30の中央部32の厚みよりも薄く形成される。補強部材30bは、少なくとも、弾性膜30の中央部32の全範囲に埋設されている。ただし、本形態においては、補強部材30bの外周部分の一部は、弾性膜30の外環部31に全周に亘って埋設されている。
【0040】
押さえ部材40は、例えば、金属や樹脂などにより成形されている。例えば、押さえ部材40が金属により成形される場合には、鋼材、アルミニウムなどが用いられる。例えば、押さえ部材40が樹脂により成形される場合には、押さえ部材40を形成する母材樹脂は、ハウジング本体10と同様に、ポリプロピレン、ポリアミドなどが好適であるが、これに限定されるものではなく種々の樹脂材料を適用できる。押さえ部材40は、筒状に形成されている。本形態においては、押さえ部材40は、筒部41および底部42を備える有底筒状に形成されている。ただし、押さえ部材40は、底部42を備えない筒形状としても良い。
【0041】
押さえ部材40は、ハウジング筒部20に固定される。詳細には、押さえ部材40の筒部41の外周面が、ハウジング筒部20の内周面22に固定される。例えば、押さえ部材40の筒部41とハウジング筒部20とは、螺子による螺合により固定される。つまり、押さえ部材40の筒部41の外周面には、雄螺子が形成される。螺子による固定を適用することにより、容易に両者を固定することができる。
【0042】
押さえ部材40の筒部41の軸方向一端(
図2の下端)には、環状座面41a(以下、「押さえ部材環状座面」と称する)を有する。押さえ部材環状座面41aは、押さえ部材40の筒部41の軸方向に直交する平面であって、全周に亘って同一平面状に形成される。また、押さえ部材環状座面41aは、ハウジング環状座面21に対して距離を隔てて対向する。押さえ部材環状座面41aは、弾性膜30の他方面(
図2の上面)に当接する。特に、押さえ部材環状座面41aは、弾性膜30の外環部31に全周に亘って当接する。より詳細には、押さえ部材環状座面41aは、弾性膜30の外環部31を、弾性膜30の法線方向に圧縮した状態で当接する。つまり、弾性膜30の外環部31は、押さえ部材環状座面41aとハウジング環状座面21とにより、弾性膜30の法線方向に圧縮した状態で挟持される。
【0043】
弾性膜30は、上述したように、表層の弾性部材30aと補強部材30bとを備える。従って、押さえ部材環状座面41aは、弾性膜30の弾性部材30aに当接する。また、弾性膜30の補強部材30bの外周部分の一部は、弾性膜30の外環部31に全周に亘って埋設されている。従って、補強部材30bの外周部分の一部は、外環部31における弾性部材30aと共に、押さえ部材環状座面41aとハウジング環状座面21とに挟持される。
【0044】
従って、押さえ部材40の筒部41は、弾性膜30の他方面側(
図2の上面側)に空間Sを形成する。空間Sは、弾性膜30の中央部32の他方面に接する領域となる。つまり、弾性膜30が、主流路Cと空間Sとを区画する。
【0045】
押さえ部材40の筒部41は、さらに、押さえ部材環状座面41aよりも径方向内側から軸方向に突出する環状突起41bを備える。環状突起41bは、弾性膜30の外環部31の径方向内側に位置し、外環部31が径方向内側へ移動することを規制する。つまり、環状突起41bは、弾性膜30を位置決めする機能を有する。
【0046】
押さえ部材40の底部42は、押さえ部材40の筒部41の軸方向他端(
図2の上端)に形成されている。押さえ部材40の底部42は、空間Sと外部とを連通する孔42aが形成されている。つまり、孔42aは、空間Sを大気開放させる孔として機能する。孔42aは、底部42の一部に設けられる程度の大きさとしている。なお、底部42に形成される孔42aの位置、大きさ、形状は、任意に設定可能である。
【0047】
また、本形態においては、空間Sを大気開放させる孔42aは、底部42に形成するものとしたが、押さえ部材40の筒部41に形成するようにしても良いし、底部42および筒部41の両者に形成するようにしても良い。押さえ部材40の筒部41に、空間Sを大気開放させる孔を形成する場合には、当該孔は、例えば、筒部41の軸方向他端(
図2の上端)側に形成されると良い。すなわち、当該孔は、筒部41において、ハウジング筒部20の軸方向外側に形成されると良い。筒部41に形成される孔の位置、大きさ、形状は、任意に設定可能である。
【0048】
(1-3.効果)
上記コネクタ1によれば、主流路Cを流通する流体の圧力が脈動する場合、流体の圧力に応じて弾性膜30が撓み変形する。このように、弾性膜30の撓み変形によって、脈動を低減することができる。つまり、コネクタ1が脈動低減機能を有しているため、流体流通経路の新たな部位に脈動低減機能を有する部材を設ける場合に比べて容易である。
【0049】
また、弾性膜30は、一方面の外周縁がハウジング環状座面21に当接し、他方面の外周縁が押さえ部材環状座面41aに当接する。つまり、弾性膜30の外周部分である外環部31が、ハウジング環状座面21と押さえ部材環状座面41aとの間に挟まれている。そして、弾性膜30の中央部32が、撓み変形する部位となる。つまり、弾性膜30は、当接する部材20,40との間で摺動することがない。従って、弾性膜30の耐久性などの観点において、摺動する場合に比べて有利である。
【0050】
また、上述したように、弾性膜30の中央部32が撓み変形することにより、主流路Cを流通する流体の脈動を低減することができる。弾性膜30の撓み変形は、ベローズの変形に比べて、コントロールすることが容易である。従って、確実に、脈動低減効果を発揮させることができる。
【0051】
また、押さえ部材40に孔42aを形成し、空間Sを大気開放させている。これにより、弾性膜30の中央部32は、主流路Cを流通する流体の圧力変動に効果的に追従することができる。従って、高い脈動低減効果を発揮できる。なお、空間Sを大気開放させる孔が押さえ部材40の筒部41に形成される場合も同様の効果を発揮する。
【0052】
また、弾性膜30の外環部31の厚みを中央部32の厚みより大きく形成した。これにより、弾性膜30の外環部31が、確実に、ハウジング環状座面21と押さえ部材環状座面41aとにより圧縮された状態で挟持されるのに対して、中央部32は、外環部31の圧縮の影響を大きく受けることなく、主流路Cの流体の圧力に応じて撓み変形可能となる。つまり、外環部31が、弾性膜30を位置決め機能とシール機能を発揮するのに対して、中央部32が脈動低減効果を確実に発揮することができる。
【0053】
さらに、押さえ部材40が、押さえ部材環状座面41aよりも径方向内側から軸方向に突出する環状突起41bを備えることにより、弾性膜30の外環部31に位置ずれを規制することができる。従って、弾性膜30の位置決め効果を高めることができ、結果として、シール機能、脈動低減効果を高めることができる。
【0054】
また、弾性膜30は、弾性部材30aと補強部材30bとを備える。補強部材30bを備えることにより、弾性膜30の弾性変形をコントロールすることができる。つまり、弾性膜30がゴムまたはエラストマーなどの弾性材料のみにより成形される場合に比べて、弾性膜30の変形を抑制することができるとともに、高い復元力を得ることができる。従って、弾性膜30の撓み変形による脈動低減効果をコントロールすることができ、さらに、弾性膜30の耐久性を高めることができる。
【0055】
(2.第二実施形態)
第二実施形態のコネクタ101について
図3を参照して説明する。本形態のコネクタ101は、第一実施形態のコネクタ1に対して、ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22と押さえ部材40の筒部41との係合面が相違する。
【0056】
図3に示すように、ハウジング筒部20の内周面22は、円筒内周面状に形成されている。押さえ部材40の筒部41の外周面は、円筒外周面状に形成されている。そして、ハウジング筒部20の内周面22と押さえ部材40の筒部41の外周面は、溶着により固定される。溶着の手段は、レーザ溶着やスピン溶着など、種々の手段を適用できる。
【0057】
(3.第三実施形態)
第三実施形態のコネクタ102について
図4を参照して説明する。本形態のコネクタ102は、第一実施形態のコネクタ1に対して、ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22と押さえ部材40の筒部41との係合面が相違する。
【0058】
図4に示すように、ハウジング筒部20の内周面22は、係止手段としての凹部22aを備える。凹部22aは、内周面22の全周に亘って形成されるようにしても良いし、内周面22の周方向に断続的に複数箇所形成されるようにしても良いし、内周面22の周方向に1か所形成されるようにしても良い。
【0059】
押さえ部材40の筒部41の外周面は、係止手段として、径方向外側に突出する凸部41cを備える。凸部41cは、凹部22aに対して軸方向に係止する。そこで、凸部41cは、凹部22aに対応するように、筒部41の外周面の全周に亘って形成されるようにしたり、周方向に断続的に複数箇所形成されるようにしたり、周方向に1か所形成されるようにしたりする。
【0060】
なお、本形態では、相互に形成される係止手段として、ハウジング筒部20の内周面22に凹部22aを形成し、押さえ部材40の筒部41の外周面に凸部41cを形成したが、凹凸を逆にしても良い。すなわち、ハウジング筒部20の内周面22に凸部を形成し、押さえ部材40の筒部41の外周面に凹部を形成するようにしても良い。
【0061】
(4.第四実施形態)
第四実施形態のコネクタ103について
図5を参照して説明する。本形態のコネクタ103は、第一実施形態のコネクタ1に対して、弾性膜130が相違する。弾性膜130は、ゴムまたはエラストマーなどの弾性材料のみにより成形され、補強部材30b(
図2に示す)を備えない。弾性膜130は、第一実施形態の弾性膜30と同様に、外周部分を構成する外環部131、および、外環部131の径方向内側部分を構成する中央部132を備える。この場合にも、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。ただし、弾性膜130の撓み変形のコントロールとしては、弾性膜130を構成する弾性材料に依存する。
【0062】
なお、本形態においては、ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22と押さえ部材40の筒部41との係合面は、第一実施形態と同様に、螺合による構成とした。ただし、当該係合面は、第二実施形態または第三実施形態に示した構成とすることもできる。
【0063】
(5.第五実施形態)
第五実施形態のコネクタ104について
図6を参照して説明する。本形態のコネクタ104は、第四実施形態のコネクタ103に対して、押さえ部材110が相違するとともに、新たにコイルスプリング120を備える点が相違する。
【0064】
押さえ部材110は、第四実施形態の押さえ部材40に対して、底部42の空間S側の面に、突起111を備える。突起111は、底部42の中央部に形成されている。つまり、突起111と押さえ部材110の筒部41との間に、環状溝が形成されている。
【0065】
コイルスプリング120は、空間Sに配置されており、一端が押さえ部材110の底部に当接し、他端が弾性膜30の他端面(主流路Cとは反対側の面)に当接する。つまり、コイルスプリング120は、弾性膜30の他端面を主流路Cに向けて付勢する。このコイルスプリング120は、弾性膜30の撓み変形をコントロールするために設けられている。つまり、コイルスプリング120は、第一実施形態のコネクタ1における補強部材30bと同様の機能を有する。
【0066】
また、コイルスプリング120の一端は、押さえ部材110の底部42に形成された突起111の外周面に係合する。つまり、押さえ部材110の突起111は、コイルスプリング120の内周面に係合し、コイルスプリング120を位置決めする。従って、本形態のコネクタ104は、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、コイルスプリング120は、第一実施形態のコネクタ1に適用することもできる。
【0067】
なお、本形態においては、ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22と押さえ部材40の筒部41との係合面は、第一実施形態と同様に、螺合による構成とした。ただし、当該係合面は、第二実施形態または第三実施形態に示した構成とすることもできる。
【0068】
(6.第六実施形態)
第六実施形態のコネクタ105について
図7を参照して説明する。本形態のコネクタ105は、第一実施形態のコネクタ1に対して、押さえ部材40が、孔42aを備えない点が相違する。つまり、押さえ部材40は、筒部41および底部42を備えており、筒部41および底部42には、空間Sと外部とを連通する孔が形成されていない。従って、押さえ部材40により形成される空間Sは、大気に開放されていない密閉空間とされている。
【0069】
ここで、押さえ部材40の筒部41および底部42には空間Sと外部とを連通する孔が形成されておらず、押さえ部材40の押さえ部材環状座面41aが、弾性膜30の外環部31に全周に亘って当接している。従って、空間Sは、押さえ部材40の筒部41の内周面、底部42の面(
図7の下面)、および、弾性膜30の面(
図7の上面)を壁面とする密閉空間となる。
【0070】
空間Sが密閉空間とされることで、弾性膜30の中央部32は、主流路Cを流通する流体の圧力変動に効果的に追従することができる。さらに、空間Sが密閉空間とされることで、弾性膜30が空間S側に変形することに伴って空間Sの内圧が高くなるため、弾性膜30の過度な変形を抑制できる。従って、弾性膜30の使用耐久性を高度に維持しつつ、高い脈動低減効果を発揮できる。
【0071】
なお、本形態においては、ハウジング筒部20の軸方向他端側の内周面22と押さえ部材40の筒部41との係合面は、第一実施形態と同様に、螺合による構成とした。ただし、当該係合面は、第二実施形態または第三実施形態に示した構成とすることもできる。また、本形態におけるコネクタ105は、第四実施形態における弾性膜130を適用することもでき、第五実施形態における突起111およびコイルスプリング120を備える構成を適用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1,101,102,103,104,105 コネクタ
2 第一配管
3 第二配管
10 ハウジング本体
20 ハウジング筒部
21 ハウジング環状座面
30,130 弾性膜
40,110 押さえ部材
41 筒部
41a 押さえ部材環状座面
C 主流路
P1 第一開口
P2 第二開口
P3 第三開口
S 空間