(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152219
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】抗菌性通路
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20221004BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221004BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20221004BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E04B1/00 503
A01P3/00
A01N59/20 Z
A01N25/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054910
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB18
(57)【要約】
【課題】住居や施設等の出入口に簡便に設置することができ、抗菌のみならず抗ウイルス効果も期待することができる抗菌性通路を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌性通路は、トンネル状の通路10の内面を、純銅または銅合金からなる銅板11で構成したことを特徴とする。銅合金が、ベリリウム銅、リン青銅、ジルコニウム銅の何れかとすることができる。トンネル状の通路10が、建物または部屋の出入口に設置されたものであることが好ましく、トンネル状の通路の床面に、銅素材の削り屑の圧縮成形板を敷設した構造とすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル状の通路の内面を、純銅または銅合金からなる銅板で構成したことを特徴とする抗菌性通路。
【請求項2】
銅合金が、ベリリウム銅、リン青銅、ジルコニウム銅の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性通路。
【請求項3】
トンネル状の通路が、建物または部屋の出入口に設置されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性通路。
【請求項4】
トンネル状の通路の床面に、銅素材の削り屑の圧縮成形板を敷設したことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の抗菌性通路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路に抗菌・抗ウイルス性を持たせた抗菌性通路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隔離病棟と一般病棟とをつなぐ通路などに殺菌用の空間を形成し、出入りする人や物に付着している細菌やウイルスの活性を低下させることは従来から知られている。特許文献1には通路空間内に向かって殺菌用薬剤を噴霧して殺菌する病院用の殺菌システムユニットが開示されている。
【0003】
また、電子部品や食品等を製造するクリーンルームの入口には、出入りする人に向かって空気流を吹き付け、人体や衣服に付着しているダストの持ち込みを抑制する空気シャワー室が設けられている。
【0004】
最近の新型コロナウイルス感染者の増加に伴い、家庭では外部から家庭内へのウイルスの持ち込みを抑制するため、玄関で衣服に付着した埃を払い落とす等の行為がなされることがある。しかし払い落とした埃等に付着したウイルスは空中に飛散し、仮に壁面や床面に付着しても死滅しないため、その実際の効果は疑わしい。また病院用の殺菌室のような大掛かりな装置を住居に設置することは困難であるうえ、人に向かって殺菌液を噴霧することについては健康上の不安も感じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、住居や施設等の出入口に簡便に設置することができ、抗菌のみならず抗ウイルス効果も期待することができる抗菌性通路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の抗菌性通路は、トンネル状の通路の内面を、純銅または銅合金からなる銅板で構成したことを特徴とするものである。なお、銅合金が、ベリリウム銅、リン青銅、ジルコニウム銅の何れかとすることができる。
【0008】
また、トンネル状の通路が、建物または部屋の出入口に設置されたものであることが好ましく、トンネル状の通路の床面に、銅素材の削り屑の圧縮成形板を敷設した構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗菌性通路は、トンネル状の通路の内面を、純銅または銅合金からなる銅板で構成したものであるから、銅の持つ抗菌・抗ウイルス効果によって通路の内表面に付着した細菌やウイルスの活性を低下させることができる。このため抗菌性通路を通行する際に衣服に付着した埃を払い落とせば、飛散した細菌やウイルスは銅板と接触することにより活性が失われ、室内への持ち込みを抑制することができる。また本発明の抗菌性通路は構成が簡単であって安価に製作することができるうえ、殺菌液などの消耗品を必要としないので、ランニングコストが掛からない利点がある。
【0010】
また、通路の床面にも銅素材の削り屑の圧縮成形板を敷設すれば、下方に落下した細菌やウイルスを捕捉して活性を低下させることができるうえ、滑り止めの効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示す斜視図であり、トンネル状の通路10を部屋の出入口に設置した様子を示している。この通路10の側壁及び天井は、銅板11により構成されている。
【0013】
銅板11は純銅または銅合金からなる板である。銅は従来から知られているように、抗菌・抗ウイルス作用を持つ金属である。そのメカニズムは、銅イオンがウイルスのエンベローブ膜に穴を開けたり、銅イオンによって生成されたフリーラジカルが細菌やウイルスの遺伝物質を分解するためであろうと考えられている。また米国の国立衛生研究所(NHI)の研究チームによれば、新型コロナウイルスの残存時間はプラスチックやステンレスの表面では72時間、段ボールの表面では24時間であるのに対して、銅の表面では4時間であるとのことであり、銅が新型コロナウイルスに対しても抗ウイルス作用を持つことが確認されている。
【0014】
このように銅イオンが抗菌・抗ウイルス作用を発揮するのであるから必ずしも純銅を用いる必要はなく、ベリリウム銅、リン青銅、ジルコニウム銅などの銅合金を用いてもよい。ベリリウム銅やリン青銅は導電性のあるバネ材として広く用いられており、ジルコニウム銅は溶接用のコンタクトチップの材料として広く用いられている工業材料であるから、入手が容易な利点がある。
【0015】
なお、銅の抗菌・抗ウイルス効果を利用した抗菌材として、従来から銅粉末や銅繊維があるが、これらは微粉末としたり微細繊維とするための多くの加工コストが必要となる。これに比べて本発明において用いる銅板10は加工コストが低く、板厚を薄くすれば材料コストも低く抑えられる利点がある。
【0016】
図1に示す第1の実施形態では通路10の全体を銅板11により構成したが、本発明ではトンネル状の通路の内面が銅板11であればよいため、
図2に示す第2の実施形態のように、通路10の側壁及び天井を木材または樹脂などからなる基材12により構成し、その内面に銅板11を貼り付けてもよい。銅の抗菌・抗ウイルス作用を得るためには板厚を厚くする必要はなく、第1の実施形態では通路10としての強度を確保するためある程度の板厚の銅板11が必要であるが、第2の実施形態では肉薄の銅板11を用いることができ、より安価に製作することが可能となる。
【0017】
抗菌・抗ウイルス効果の観点からは通路10の長さは長いほど好ましいが、余りに長くすると大きい設置スペースが必要となり、屋内に設置する際には邪魔なるおそれがあるため、0.5~2m程度の長さとするのが実用的である。通路10の長さが短すぎると、空中の細菌やウイルスが接触する銅板11の表面積が減少するので好ましくない。
【0018】
このように構成された抗菌性通路を建物または部屋の出入口に設置し、出入口を通行する際に衣服に付着した埃を通路10の内部で払い落とせば、飛散した細菌やウイルスは銅板11と接触することにより活性が失われ、室内への持ち込みを抑制することができる。また銅は食器や鍋などにも使用されているように人体に対して安全な金属であるから、殺菌液を噴霧する場合のような健康上の不安を招くことはない。しかも銅板11は空気中では長期間にわたって銅光沢を維持するから、美観が低下することもない。
【0019】
なお、表面積が大きくなるほど抗菌・抗ウイルス効果を高めることができるから、銅板11の表面に凹凸を付けたり、溝を形成することもできる。さらに人体や衣服の表面に付着した埃をより積極的に除去するために、ファンなどの送風手段を設けて空気流を吹き付けることもできる。
【0020】
上記した第1の実施形態及び第2の実施形態では、通路10の側壁と天井の内面を銅板11で構成したが、空中に飛散した埃は付着した再任やウイルスとともに、最終的には床面に落下する確率が高いと考えられる。このため
図3に示した第3の実施形態においては、トンネル状の通路10の床面に、銅素材の削り屑の圧縮成形板13を敷設した。
【0021】
銅素材を旋盤やフライス盤で切削する際には大量の削り屑が発生する。この削り屑は
図3中に拡大して示したように細かい螺旋状であり、切削状態によって異なるが、その幅は1~10mm程度、螺旋の直径は1~10mm程度、その厚さは数μmから数10μm程度である。従ってその表面積は非常に大きくなる。これをプレスして圧縮成形すれば切り屑が相互に絡まり合った状態となり、落下してきた埃やその表面に付着している細菌やウイルスをその内部空間内に捕捉し、殺菌することができる。
【0022】
またこの削り屑の圧縮成形板13は微細な凹凸を持つため、銅板11に比べて摩擦係数が大きくなり、滑り止め効果を発揮する。しかも削り屑は廃棄物として処分されていたものであるから安価に入手することができる。なお、床面の全体を圧縮成形板13とする必要はなく、適宜の間隔で配置することもできる。
【0023】
以上に説明したように、本発明の抗菌性通路は住居や施設等の出入口に簡便に設置することができるもので、抗菌のみならず抗ウイルス効果を発揮できる利点がある。設置場所は屋外であっても屋内であってもよく、また一般家庭やマンションの入り口に設置するほか、病院や施設の入口に設置することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 通路
11 銅板
12 基材
13 圧縮成形体