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特開2022-152232推定装置、プログラム、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152232
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】推定装置、プログラム、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/29 20150101AFI20221004BHJP
   H04W 4/30 20180101ALI20221004BHJP
【FI】
H04B17/29 300
H04W4/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054924
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】久保 穣
(72)【発明者】
【氏名】深貝 直史
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE25
5K067EE61
5K067FF03
(57)【要約】
【課題】人体が無線通信に与える影響の度合いを精度高く推定する。
【解決手段】ユーザにより携帯されるモバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定部、を備え、前記推定部は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定する、推定装置が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより携帯されるモバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定部、
を備え、
前記推定部は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定する、
推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度と、チャンネルと距離ごとに予め記録された受信電波強度の理想値とに基づいて、前記影響レベルを推定する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記モバイル機器により送信される2つの異なるチャンネルに属する無線信号の受信電波強度の差分値に基づいて、前記影響レベルを推定する、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記差分値と、前記2つの異なるチャンネルに係る前記理想値の差分である理想差分値とに基づいて、前記影響レベルを推定する、
請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記受信電波強度の理想値は、前記モバイル機器と前記他の通信装置との間における無線通信に対する人体による影響がない状況において測定される、
請求項2から請求項4までのうちいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、推定した前記影響レベルに基づいて、前記ユーザと前記モバイル機器との位置関係を推定する、
請求項1から請求項5までのうちいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、推定した前記影響レベルに応じて、前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に基づく距離の推定値を補正する、
請求項1から請求項6までのうちいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々は、互いに異なる回折特性を有する、
請求項1から請求項7までのうちいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項9】
コンピュータに、
ユーザにより携帯されるモバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定機能、
を実現させ、
前記推定機能に、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定させる、
プログラム。
【請求項10】
ユーザにより携帯されるモバイル機器と、
前記モバイル機器から互いに異なるチャンネルに属する無線信号を受信する少なくとも2つの通信装置と、
前記モバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と前記通信装置の各々との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定装置と、
を備え、
前記推定装置は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号が前記通信装置の各々により受信された場合の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、プログラム、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置間で無線信号を送受信した結果に基づいてなんらかの処理を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、情報処理装置から送信される信号の受信電波強度に基づいて当該情報処理装置との間の距離を推定する計測機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-21984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の計測機器は、ユーザにより携帯される機器である。このように無線通信を行う装置の近傍に人体等の物体が存在する場合、人体等の物体が無線通信に影響を与える場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、人体が無線通信に与える影響の度合いを精度高く推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ユーザにより携帯されるモバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定部、を備え、前記推定部は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定する、推定装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、ユーザにより携帯されるモバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と他の通信装置との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定機能、を実現させ、前記推定機能に、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定させる、プログラムが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ユーザにより携帯されるモバイル機器と、前記モバイル機器から互いに異なるチャンネルに属する無線信号を受信する少なくとも2つの通信装置と、前記モバイル機器に関し、前記ユーザの人体が前記モバイル機器と前記通信装置の各々との間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する推定装置と、を備え、前記推定装置は、前記モバイル機器により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号が前記通信装置の各々により受信された場合の受信電波強度に基づいて、前記影響レベルを推定する、システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、人体が無線通信に与える影響の度合いを精度高く推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。
図2】同実施形態に係るチャンネルと距離ごとに記録された受信電波強度の理想値の一例を示す図である。
図3】同実施形態に係る無線通信に対する人体による影響の度合いが比較的小さい場合における受信電波強度と距離との相関例を示す図である。
図4】同実施形態に係る無線通信に対する人体による影響の度合いが比較的大きい場合における受信電波強度と距離との相関例を示す図である。
図5】同実施形態に係る推定部310による処理の流れの一例を示す図である。
図6】同実施形態に係る記憶部320に記憶される影響レベルごとの理想差分値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.実施形態>
<<1.1.システム構成例>>
まず、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成例について述べる。
【0013】
図1は、本実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態に係るシステム1は、例えば、図1に示すように、車両などの移動体40に搭載される第1の通信装置10、第2の通信装置20、および推定装置30を備えてもよい。
【0015】
また、本実施形態に係るシステム1は、図1に示すように、移動体40とは独立したモバイル機器50を備えてもよい。
【0016】
(第1の通信装置10)
本実施形態に係る第1の通信装置10は、少なくとも第1のチャンネルに属する無線信号をモバイル機器50から受信する。
【0017】
このために、本実施形態に係る第1の通信装置10は、第1のチャンネルに属する無線信号を受信するためのアンテナを少なくとも備える。
【0018】
また、本実施形態に係る第1の通信装置10は、第1のチャンネルに属する無線信号を送信してもよい。
【0019】
この場合、本実施形態に係る第1の通信装置10は、第1のチャンネルに属する無線信号を送信するためのアンテナを備える。
【0020】
本実施形態に係る第1のチャンネルは、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信規格に準拠した無線信号が属する周波数帯域であってもよい。
【0021】
(第2の通信装置20)
本実施形態に係る第2の通信装置20は、少なくとも第1のチャンネルとは異なる第2のチャンネルに属する無線信号をモバイル機器50から受信する。
【0022】
このために、本実施形態に係る第2の通信装置20は、第2のチャンネルに属する無線信号を受信するためのアンテナを少なくとも備える。
【0023】
また、本実施形態に係る第2の通信装置20は、第2のチャンネルに属する無線信号を送信してもよい。
【0024】
この場合、本実施形態に係る第2の通信装置20は、第2のチャンネルに属する無線信号を送信するためのアンテナを備える。
【0025】
本実施形態に係る各チャンネルは、各チャンネルに属する無線信号の各々が互いに異なる回折特性を有するよう調整されて設定される。
【0026】
例えば、第1のチャンネルがBLE通信規格に準拠した無線信号が属する周波数帯域である場合、第2のチャンネルはUHF(Ultra High Frequency)帯のうち950MHz前後の無線信号が属する周波数帯域であってもよい。
【0027】
上記のような設定によれば、後述するように、各チャンネルに属する無線信号の回折特性に応じた減衰率に基づいて、人体による影響の度合いを示す影響レベルを推定することが可能となる。
【0028】
(推定装置30)
本実施形態に係る推定装置30は、図1に示すように、推定部310および記憶部320を備えてもよい。
【0029】
(推定部310)
本実施形態に係る推定部310は、ユーザにより携帯されるモバイル機器50に関し、当該ユーザの人体がモバイル機器50と他の通信装置(例えば、第1の通信装置10、第2の通信装置20など)と間における無線通信に与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定する。
【0030】
また、本実施形態に係る推定部310は、モバイル機器50により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信強度に基づいて、上記の影響レベルを推定することを特徴の一つとする。
【0031】
例えば、本実施形態に係る推定部310は、第1の通信装置10が受信した第1のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度と、第2の通信装置20が受信した第2のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度と、に基づいて、上記の影響レベルを推定してもよい。
【0032】
この際、本実施形態に係る推定部310は、モバイル機器50により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度と、チャンネルと距離ごとに予め記録された受信電波強度の理想値とに基づいて、影響レベルを推定してもよい。
【0033】
より具体的には、本実施形態に係る推定部310は、モバイル機器50により送信される2つの異なるチャンネルにする無線信号の受信電波強度の差分値と、当該2つの異なるチャンネルに係る上記の理想値の差分である理想差分値とに基づいて、前記影響レベルを推定してもよい。
【0034】
推定部310による理想差分値に基づく影響レベルの推定については、別途詳細に説明する。
【0035】
また、上記の受信電波強度の理想値は、モバイル機器50と他の通信装置(例えば、第1の通信装置10、第2の通信装置20など)との間における無線通信に対する人体による影響がない状況において測定される測定値であってよい。
【0036】
本実施形態に係る推定部310が有する機能は、各種のプロセッサにより実現される。本実施形態に係る推定部310が有する機能の詳細については別途説明する。
【0037】
(記憶部320)
本実施形態に係る記憶部320は、推定部310により用いられる各種の情報を記憶する。記憶部320は、例えば、上記の異なる2つのチャンネルに係る理想差分値などを記憶する。
【0038】
(モバイル機器50)
本実施形態に係るモバイル機器50は、例えば、移動体40を利用するユーザ(例えば、移動体40のオーナー、当該オーナーにより移動体40の利用を許可された者など)に携帯される。
【0039】
本実施形態に係るモバイル機器50は、図1に示すように、第1の通信部510、第2の通信部520、および制御部530を備えてもよい。
【0040】
(第1の通信部510)
本実施形態に係る第1の通信部510は、少なくとも第1のチャンネルに属する無線信号を送信する。
【0041】
このために、本実施形態に係る第1の通信部510は、第1のチャンネルに属する無線信号を送信するためのアンテナを備える。
【0042】
また、本実施形態に係る第1の通信部510は、第1のチャンネルに属する無線信号を受信してもよい。
【0043】
この場合、本実施形態に係る第1の通信部510は、第1のチャンネルに属する無線信号を受信するためのアンテナを備える。
【0044】
(第2の通信部520)
本実施形態に係る第2の通信部520は、少なくとも第2のチャンネルに属する無線信号を送信する。
【0045】
このために、本実施形態に係る第2の通信部520は、第2のチャンネルに属する無線信号を送信するためのアンテナを少なくとも備える。
【0046】
また、本実施形態に係る第2の通信部520は、第2のチャンネルに属する無線信号を受信してもよい。
【0047】
この場合、本実施形態に係る第2の通信部520は、第2のチャンネルに属する無線信号を受信するためのアンテナを備える。
【0048】
(制御部530)
本実施形態に係る制御部530は、モバイル機器50に備えられる各構成を制御する。
【0049】
制御部530は、例えば、第1の通信部510による第1のチャンネルに属する無線信号の送信、第2の通信部520による第1のチャンネルに属する無線信号の送信を制御してもよい。
【0050】
以上、本実施形態に係るシステム1の構成例について述べた。なお、図1を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係るシステム1の構成は係る例に限定されない。
【0051】
例えば、本実施形態に係る第1の通信装置10、第2の通信装置20、および推定装置30は、必ずしも移動体40に搭載されずともよい。
【0052】
第1の通信装置10と第2の通信装置20とは、互いに近傍に配置されればよい。
【0053】
また、推定装置30は、第1の通信装置10および第2の通信装置20の各々から、各チャンネルに属する無線信号の受信電波強度に関する情報を受信できる状況にあればよく、必ずしも第1の通信装置10および第2の通信装置20の近傍に配置されずともよい。
【0054】
また、本実施形態に係るシステム1は、3つ以上の通信装置を備えてもよい。この場合、通信装置の各々は、互いに異なるチャンネルに属する無線信号を受信してよい。さらにこの場合、モバイル機器50は、互いに異なるチャンネルに属する無線信号を送信する3つ以上の通信部を備えてよい。
【0055】
本実施形態に係るシステム1の構成は仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0056】
<<1.2.推定の詳細>>
次に、本実施形態に係る推定装置30による推定について詳細に述べる。
【0057】
上述したように、装置間における無線通信は、装置の近傍に存在する人体等の物体による影響を受ける。
【0058】
このため、無線通信に基づく処理は、人体等の物体による影響により処理の精度が劣化してしまう可能性がある。
【0059】
ここで、処理の精度の劣化を回避するためには、人体等の物体による影響の度合いを精度高く推定し、推定の結果に基づいて処理の結果を補正することが有効である。
【0060】
このために、本実施形態に係る推定部310は、モバイル機器50により送信される少なくとも2つの異なるチャンネルに属する無線信号の各々の受信電波強度と、チャンネルと距離ごとに予め記録された受信電波強度の理想値とに基づいて、影響レベルを推定することを特徴の一つとする。
【0061】
より具体的には、本実施形態に係る推定部310は、モバイル機器50により送信される2つの異なるチャンネルにする無線信号の受信電波強度の差分値と、当該2つの異なるチャンネルに係る上記の理想値の差分である理想差分値とに基づいて、前記影響レベルを推定してもよい。
【0062】
図2は、本実施形態に係るチャンネルと距離ごとに記録された受信電波強度の理想値の一例を示す図である。
【0063】
図2には、モバイル機器50が送信し第1の通信装置10により受信される第1のチャンネルに属する無線信号(図2においては、「CH1」と記載)の受信電波強度と、モバイル機器50と第1の通信装置10との間の距離との相関が示されている。
【0064】
また、図2には、モバイル機器50が送信し第2の通信装置20により受信される第1のチャンネルに属する無線信号(図2においては、「CH2」と記載)の受信電波強度と、モバイル機器50と第2の通信装置20との間の距離との相関が示されている。
【0065】
ここで、図2に示される受信電波強度は、モバイル機器50と第1の通信装置10との間、およびモバイル機器50と第2の通信装置20との間において人体等の物体が存在せず、かつモバイル機器50、第1の通信装置10、第2の通信装置20のいずれも人体等の物体による影響を受けていない状況(影響レベルL0とする)において測定された理想値であってよい。
【0066】
図2に示すように、第1のチャンネルに属する無線信号と、第2のチャンネルに属する無線信号とは、モバイル機器50との距離が離れるほど減衰していく。
【0067】
一方、上記の減衰の度合いは、第1のチャンネルに属する無線信号と、第2のチャンネルに属する無線信号とで互いに異なることが把握できる。
【0068】
例えば、図1に示す一例の場合、第1のチャンネルに属する無線信号は、モバイル機器50と第1の通信装置10との間の距離が数十m程度で80dBほど減衰する。一方、第2のチャンネルに属する無線信号が80dBほど減衰するのは、モバイル機器50と第2の通信装置20との間の距離が100mを大きく超えてからである。
【0069】
一方で、通信経路が同一である場合、第1のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度と第2のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度との差分値は、距離に依らず一定となる。
【0070】
例えば、図1に示す一例の場合、距離が10mである際の差分値D10と距離が100mである際の差分値D100はともに20dB弱であり、その他の距離における差分値についても同様である。
【0071】
また、無線信号の減衰率に対して人体等の物体が与える影響の度合いは、無線信号の周波数によって異なる。
【0072】
これは、無線信号は周波数が低いほど物体を回り込みやすくなる一方、周波数が高いほど物体を回り込みづらくなるためである。
【0073】
このことから、本実施形態に係る各チャンネルは、各チャンネルに属する無線信号が、互いに異なる回折特性(物体に対する回り込みのしやすさに係る特性)を有するように設定されてよい。
【0074】
例えば、第1のチャンネルに属する無線信号と第2のチャンネルに属する無線信号は、周波数が規定の値以上異なるよう設定されてもよい。
【0075】
上記のように各チャンネルが設定される場合、各チャンネルに属する無線信号の減衰率には、無線通信に対する人体による影響の度合いに応じた影響が表れる。
【0076】
ここでは、影響レベルL0の場合における第1のチャンネルと第2のチャンネルに係る一定の差分値を差分値DL0とする。
【0077】
図3は、本実施形態に係る無線通信に対する人体による影響の度合いが比較的小さい場合(影響レベルL1とする)における受信電波強度と距離との相関例を示す図である。
【0078】
また、図4は、本実施形態に係る無線通信に対する人体による影響の度合いが比較的大きい場合(影響レベルL3とする)における受信電波強度と距離との相関例を示す図である。
【0079】
なお、図2図4においては、第1のチャンネルに属する無線信号の周波数が第2のチャンネルに属する無線信号の周波数に対して十分に高いものとする。
【0080】
ここで、図2図4を比較すると、第1のチャンネルに属する無線信号および第2のチャンネルに属する無線信号は、共に影響レベルが高いほど減衰率が上昇することがわかる。
【0081】
また、第1のチャンネルに属する無線信号の減衰率は、第2のチャンネルに属する無線信号の減衰率と比較して、影響レベルの高さに大きく影響を受けていることがわかる。
【0082】
これは、第1のチャンネルに属する無線信号は第2のチャンネルに属する無線信号と比較して周波数が高く回折がしづらいためである。
【0083】
また、第1のチャンネルと第2のチャンネルに係る差分値に着目すると、影響レベルにより当該差分値に違いが現れることがわかる。
【0084】
ここでは、影響レベルL1の場合における第1のチャンネルと第2のチャンネルに係る一定の差分値を差分値DL1とし、影響レベルL3の場合における第1のチャンネルと第2のチャンネルに係る一定の差分値を差分値DL3とする。
【0085】
この場合、差分値DL0、差分値DL1、および差分値DL3は、図2図4に示すように、互いに異なる値となる。また、値の大きさは、差分値DL0<差分値DL1<差分値DL3、となり、影響レベルが高いほど差分値の値が大きくなる。
【0086】
本実施形態に係る推定部310は、上記のような異なるチャンネル間における受信信号強度の差分値に基づいて無線通信に対して人体が与える影響の度合いを示す指標である影響レベルを推定してよい。
【0087】
図5は、本実施形態に係る推定部310による処理の流れの一例を示す図である。
【0088】
図5に示す一例の場合、推定部310は、まず、モバイル機器50が送信し第1の通信装置10が受信する第1のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度を、第1の通信装置10から取得する(S102)。
【0089】
また、推定部310は、モバイル機器50が送信し第2の通信装置20が受信する第2のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度を、第2の通信装置20から取得する(S104)。
【0090】
なお、ステップS102における処理、およびステップS104における処理は、異なる順番で行われてもよいし、並行して行われてもよい。
【0091】
次に、本実施形態に係る推定部310は、ステップS102において取得した第1のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度とステップS104において取得した第2のチャンネルに属する無線信号の受信電波強度の差分値を算出する(S106)。
【0092】
次に、本実施形態に係る推定部310は、ステップS106において算出した差分値と予め記録された第1のチャンネルと第2のチャンネルに係る理想差分値に基づいて、人体による影響レベルを推定する(S108)。
【0093】
図6は、本実施形態に係る記憶部320に記憶される影響レベルごとの理想差分値の一例を示す図である。
【0094】
図6に示すように、本実施形態に係る記憶部320には、予め影響レベルごとに計測された理想差分値が記憶される。
【0095】
図6に示す一例の場合、影響レベルL0~L3において計測された理想差分値は、それぞれIDL0~IDL3である。
【0096】
この場合、推定部310は、ステップS106において算出した差分値を理想差分値IDL0~IDL3のそれぞれと比較し、最も値の近い理想差分値に応じて影響レベルを推定してよい。
【0097】
例えば、ステップS106において算出した差分値が理想差分値IDL2に最も近い場合、推定部310は、人体による影響が影響レベルL2であると推定する。
【0098】
再び図5を参照して説明を続ける。本実施形態に係る推定部310は、ステップS108において推定した影響レベルに基づいて、ユーザとモバイル機器50との位置関係を推定してもよい(S110)。
【0099】
例えば、影響レベルをL0~L4の段階とし、L0は、人体による影響がない状況、L1は人体による影響が比較的小さい状況、L2は人体による影響が中程度である状況、L3は人体による影響が比較的大きい状況とする。
【0100】
この際、例えば、推定部310は、ステップS110において推定した影響レベルがL0の場合には、モバイル機器50がユーザから離れた位置にあると推定してもよい。
【0101】
また、例えば、推定部310は、ステップS110において推定した影響レベルがL1の場合には、モバイル機器50がユーザの手に持たれた状態であると推定してもよい。
【0102】
また、例えば、推定部310は、ステップS110において推定した影響レベルがL2の場合には、モバイル機器50がユーザが着る衣服の前ポケットに収められた状態であると推定してもよい。
【0103】
また、例えば、推定部310は、ステップS110において推定した影響レベルがL3の場合には、モバイル機器50がユーザが着る衣服の後ろポケットに収められた状態であると推定してもよい。
【0104】
上記のような影響レベルとモバイル機器50の位置との対応は予め記憶部320に記憶されていればよい。
【0105】
また、推定部310は、ステップS108において推定した影響レベルに基づいて、モバイル機器50と他の通信装置(例えば、第1の通信装置10)との間における無線通信に基づく距離の推定値を補正してもよい(S112)。
【0106】
例えば、第1のチャンネルがBLE通信規格に準拠した無線信号が属する周波数帯域である場合、第1の通信装置10は当該無線信号の受信電波強度に基づいてモバイル機器50との距離の推定値を算出することが可能である。
【0107】
ただし、上記のような距離の推定値の精度は、人体による影響レベルに強く影響を受ける。
【0108】
このことから、本実施形態に係る推定部310は、人体による影響レベルに応じて生じる距離の推定値に係る誤差に基づいて、当該推定値を補正してもよい。
【0109】
この場合、人体による影響レベルに応じて生じる距離の推定値に係る誤差は、予め測定され記憶部320に記憶されればよい。
【0110】
上記のような補正によれば、モバイル機器50との間における距離の推定精度を効果的に高めることが可能となる。
【0111】
なお、モバイル機器50との間における距離の推定は、超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の無線信号を用いた測距により行われてもよい。
【0112】
<2.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0113】
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【符号の説明】
【0114】
10:第1の通信装置、20:第2の通信装置、30:推定装置、310:推定部、320:記憶部、40:移動体、50:モバイル機器、510:第1の通信部、520:第2の通信部、530:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6