(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152264
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電力供給システムのバッテリ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20221004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221004BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221004BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 302C
H02J7/00 303C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054969
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堤 大昂
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA11
5G503FA06
5G503HA02
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電力を供給しようとする負荷に並列にコンデンサが接続されている場合であっても、バッテリの放置期間が長い場合であっても、並列接続されるバッテリに電圧不均等を効率よく解消することを可能とする電力供給システムのバッテリ制御装置を提供する。
【解決手段】コンデンサC1及び複数のバッテリ1~4から負荷に電力を供給する前に、バッテリ1~4の各電圧V1~V4の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリ1~4の中、コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給するバッテリを決定し、決定された前記バッテリからコンデンサC1に充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に並列に接続され、前記負荷に電力を供給するコンデンサと、
前記コンデンサに電力を供給して前記コンデンサを充電すると共に、前記負荷に電力を供給する並列接続可能な複数のバッテリと、
を備える電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサ及び複数の前記バッテリから前記負荷に電力を供給する前に、前記バッテリの各電圧の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリの中、前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する1以上のバッテリを決定し、
決定された前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行う、
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリの中、電圧の最も高い1つのバッテリであって、残りのバッテリは開放状態とされ、
前記1つのバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
前記1つのバッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した前記1つのバッテリとの電圧差がゼロとなった残りのバッテリからもプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
前記コンデンサの電圧と複数の前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差以内となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数の前記バッテリと前記コンデンサを並列接続する、
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリの中、電圧の最も高い1つのバッテリであって、残りのバッテリは開放状態とされ、
前記1つのバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
前記1つのバッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した前記1つのバッテリとの電圧差が所定電圧差以内となった残りのバッテリとを、各プリチャージ抵抗器を介して接続して電圧均等化を行った後、前記1つのバッテリと電圧均等化が図られた残りのバッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力の供給を継続し、
同様にして、電圧均等化が行われたバッテリと、残りのバッテリとの電圧均等化を行い、電圧均等化後の全てのバッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサを充電し、前記コンデンサの電圧と前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数のバッテリと前記コンデンサを並列接続する、
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリ中の電圧の高い側の複数のバッテリであって、複数の前記電圧の高い側の前記バッテリからそれぞれプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
複数の前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した複数の前記バッテリと残りのバッテリとの電圧差がゼロとなった前記残りのバッテリからもプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力の供給を継続し、
前記コンデンサの電圧と前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数のバッテリと前記コンデンサを並列接続する
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリ中の電圧の高い側の複数のバッテリであって、複数の前記電圧の高い側の前記バッテリからそれぞれプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給すると共に、電圧の低い側のバッテリに各プリチャージ抵抗器を介して前記充電用の電力を供給してバッテリの電圧均等化を行う、
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
電圧高低差を有する少なくとも2つのバッテリを有し、
前記コンデンサに充電用の電力を供給するに際し、まず、電圧の高い方の前記バッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
電圧の高い方の前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した電圧の高い方の前記バッテリの電圧と電圧の低い方のバッテリの電圧との電圧差がゼロとなったとき、少なくとも2つの前記バッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、
前記コンデンサの電圧と少なくとも2つの前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差以内となったときに各前記プリチャージ抵抗器を短絡して前記少なくとも2個のバッテリと前記コンデンサを並列接続する
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記コンデンサに充電用の電力を供給するに際し、まず、電圧の最も高い前記バッテリから電圧の2番目に高いバッテリにプリチャージ抵抗器を介してバッテリ電圧均等化を行うと共に、電圧の最も高いバッテリ及び電圧の2番目に高いバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、次に、電圧の最も高い前記バッテリ及び電圧が2番目に高かったバッテリからプリチャージ抵抗器を介して電圧の3番目に高いバッテリにプリチャージ抵抗器を介してバッテリ電圧均等化を行うと共に、電圧の最も高いバッテリ、電圧の2番目に高かったバッテリ及び電圧の3番目に高かったバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、以下同様に処理を継続して、バッテリ電圧の均等化を行う
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電力供給システムのバッテリ制御装置であって、
前記負荷が、インバータを介して駆動される回転電機である
電力供給システムのバッテリ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、並列接続可能な複数のバッテリを備える電力供給システムのバッテリ制御装置に関し、一層詳細には、複数の前記バッテリの電圧均等化を行う、電力供給システムのバッテリ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両の走行用モータや電動飛行体の飛行用モータ等の重負荷には、高電圧のバッテリを並列接続して構成される大電力のバッテリから電力が供給される。
【0003】
複数のバッテリを並列接続して負荷に電力を供給する電力供給システムでは、並列接続時に電圧の高いバッテリから電圧の低いバッテリに過大な突入電流が流れることを抑制するため、複数のバッテリの電圧均等化を行ってから複数の前記バッテリを並列接続して負荷に電力を供給するようにしている。
【0004】
例えば、特許文献1には、モータジェネレータと該モータジェネレータを駆動する駆動回路(平滑コンデンサとインバータを備える。)からなる負荷に、電力を供給する並列接続されたバッテリ(電池スタック)を備える車両駆動システムの電源装置の電圧均等化方法が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された電圧均等化方法では、例えば、その
図2、
図5に示されるように、電源装置の動作停止後(S12)において、2つのバッテリ間に電圧差がある場合、プリチャージ抵抗器を介して並列接続し、電圧の高い方のバッテリから電圧の低い方のバッテリにプリチャージ抵抗器を通じて電流を流すことで、両バッテリの電圧差が少なくなるようにしている(特許文献1の[0034]、[0035])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された電圧均等化方法では、電源装置の動作停止後に、各バッテリの電圧均等化を行った後に、再び電源装置を起動する際、プリチャージ抵抗器が設けられた一方のバッテリにより、前記プリチャージ抵抗器を介して前記平滑コンデンサを充電した後に、各バッテリを並列接続するように構成されている(特許文献1の[0015])。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された電圧均等化方法では、電源装置の起動時に、前記平滑コンデンサに電力を供給した一方のバッテリと、前記平滑コンデンサに電力を供給していない他方のバッテリとの間に、電圧の不均等(電圧差)が生じるという課題がある。
【0009】
また、バッテリ使用後の放置期間が長い場合にも、バッテリの自己放電の差異等により、電圧差が生じてしまうという課題もある。
【0010】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであって、電力を供給しようとする負荷に並列にコンデンサが接続されている場合であっても、バッテリの放置期間が長い場合であっても、並列接続されるバッテリの電圧不均等を効率よく解消することを可能とする電力供給システムのバッテリ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一態様に係る電力供給システムのバッテリ制御装置は、負荷に並列に接続され、前記負荷に電力を供給するコンデンサと、前記コンデンサに電力を供給して前記コンデンサを充電すると共に、前記負荷に電力を供給する並列接続可能な複数のバッテリと、を備える電力供給システムのバッテリ制御装置であって、前記コンデンサ及び複数の前記バッテリから前記負荷に電力を供給する前に、前記バッテリの各電圧の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリの中、前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する1以上のバッテリを決定し、決定された前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行う。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、コンデンサから負荷に電力を供給する前に、バッテリの各電圧の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリの中、前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給するバッテリを決定し、決定された前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行うように構成している。
【0013】
このため、電力を供給しようとする負荷に並列にコンデンサが接続されている場合であっても、並列接続されるバッテリの電圧不均等を効率よく解消することができる。また、負荷に電力を供給する前に電圧均等化を行っているので、バッテリ使用後の放置期間が長い場合であっても、確実に電圧均等化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力供給システムが搭載された電動飛行体の模式的な概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、電力供給システムのバッテリ制御装置によるバッテリの電圧均等化処理を含む動作の説明に供されるフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、全てのバッテリのSOCが目標SOCになっている状態でコンデンサを充電する前の説明図、
図3Bは、4つのバッテリによるコンデンサの充電状態を示す説明図、
図3Cは、バッテリ電圧とコンデンサ電圧との差電圧の説明に供される説明図、
図3Dは、電動飛行体動作中の電源状態の説明図である。
【
図4】
図4Aは、1つのバッテリのSOCが目標SOCになっており、残りの3つのバッテリのSOCが目標SOCより低い状態でのコンデンサ充電前及びバッテリ均等化処理前の説明図、
図4Bは、目標SOCになっていた1つのバッテリによるコンデンサの充電状態を示す説明図、
図4Cは、バッテリ電圧均等化処理中の説明図、
図4Dは、電動飛行体動作中の電源状態の説明図である。
【
図5】
図5Aは、3つのバッテリのSOCが目標SOCになっており、残りの1つのバッテリのSOCが目標SOCより低い状態でのコンデンサ充電前及びバッテリ均等化処理前の説明図、
図5Bは、目標SOCになっていた3つのバッテリによる残りのバッテリの電圧均等化処理とコンデンサの充電状態を示す説明図、
図5Cは、バッテリ電圧均等化処理後の説明図、
図5Dは、電動飛行体動作中の電源状態の説明図である。
【
図6】
図6Aは、4つのバッテリのSOCがばらついている場合のコンデンサ充電前及びバッテリ均等化処理前の説明図、
図6Bは、最も高い電圧と次に高い電圧のバッテリのバッテリ電圧均等化処理とコンデンサの充電状態を示す説明図、
図6Cは、バッテリ電圧均等化処理後の説明図、
図6Dは、電動飛行体動作中の電源状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る電力供給システムのバッテリ制御装置について実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0016】
[構成]
図1は、実施形態に係る電力供給システム16が搭載された電動飛行体10の模式的な概略構成を示すブロック図である。
【0017】
電動飛行体10は、基本的には、電力供給システム16と、該電力供給システム16から電力が供給されて推力を発生する推力発生部18と、前記電力供給システム16及び推力発生部18を含め電動飛行体10全体を制御する制御部20と、から構成される。
【0018】
制御部20は、相互にCAN等の通信線を介して信号の送受を行うバッテリ制御装置30と飛行体制御装置36とから構成され、バッテリ制御装置30には、電動飛行体10のパワースイッチ38が接続されている。
【0019】
バッテリ制御装置30及び飛行体制御装置36は、それぞれ、CPU、メモリ(ROM及びRAM)、タイマ等を含むマイクロコンピュータにより構成され、CPUがメモリに記録されたプログラムを実行することにより各種機能部(機能手段)として機能する。
【0020】
電力供給システム16は、バッテリ部26と発電部28とから構成される。
【0021】
バッテリ部26は、複数、ここでは例として4個のバッテリ1~4を備えている。これら、4個のバッテリ1~4は、それぞれ、バッテリモジュール21~24として構成されている。
【0022】
バッテリ1~4は、この実施形態では、バッテリの仕様が、同一電力容量で同電圧を発生する高電圧のラミネート型リチウムイオン2次電池を用いているが、この発明は、バッテリ1~4の電力容量の仕様がバラついていても、他の種類の2次電池であっても適用することができる。ラミネート型リチウムイオン2次電池は、単セルを直列接続した高電圧を発生する組電池である。
【0023】
バッテリモジュール21~24は、正極母線81と負極母線82との間に並列に接続されている。
【0024】
バッテリモジュール21は、電圧センサ31が接続され負極側が負極母線82に接続されたバッテリ1と、プリチャージ抵抗器R1と、プリチャージコンタクタ(単に、コンタクタともいう。)K1nと、メインコンタクタ(単に、コンタクタともいう。)K1pとから構成される。
【0025】
この場合、直列接続されたプリチャージ抵抗器R1とプリチャージコンタクタK1nにメインコンタクタK1pが並列接続され、メインコンタクタK1pの一端側が正極母線81に接続されメインコンタクタK1pの他端側が前記バッテリ1の正極側に接続されている。
【0026】
他のバッテリモジュール22~24もバッテリモジュール21と同一の構成要素、同一の接続状態に構成されている。
【0027】
正極母線81の両端には、コンタクタK11、K13の一端が接続され、負極母線82の両端には、コンタクタK12、K14の一端が接続されている。
【0028】
全てのコンタクタK1p~K4p、K1n~K4n、K11~K14は、常開型の接点を有する電磁コンタクタであり、バッテリ制御装置30から図示しない各コイルに電力が供給されると各接点が閉じられる(コンタクタが閉じられる。)ように構成されている。
【0029】
バッテリ制御装置30は、電圧センサ31~34から各バッテリ1~4のバッテリ電圧Vb(Vb=V1、V2、V4、V4)を取得する。また、図示しない電流センサにより各バッテリ1~4に流れるバッテリ電流を取得する。さらに、図示しない温度センサにより各バッテリ1~4のバッテリ温度が取得されて各バッテリ1~4の残容量である各SOC(充電状態)が管理される。
【0030】
前記コンタクタK11、K12の他端には、始動時(パワースイッチ38のオン時)にバッテリ部26の負荷となる平滑コンデンサであるコンデンサC1とインバータ61の入力側が接続される。コンデンサC1の端子間電圧(コンデンサ電圧)Vc、すなわち、インバータ61の入力端電圧は該インバータ61を駆動制御するインバータ制御装置(不図示)に設けられた電圧センサ35により測定される。測定されたコンデンサ電圧Vcは、CAN等の通信線(不図示)を介してバッテリ制御装置30に送信されバッテリ制御装置30で取得される。
【0031】
インバータ61は、インバータ制御装置(不図示)の制御下に、始動時には、充電されたコンデンサC1の両端に発生している直流電圧(コンデンサ電圧)Vcを3相交流に変換して、モータジェネレータ62の主軸64を回転させる。
【0032】
モータジェネレータ62の主軸64はガスタービン66の圧縮機のロータ及びタービンを一体的に回転させる。続けて、ガスタービン66の燃焼器に燃料が供給されてガスタービン66が燃焼し、ガスタービン66は、燃料による回転を開始する。
【0033】
このとき、インバータ制御装置(不図示)は、モータジェネレータ62を、ガスタービン66により主軸64が回転される発電機として動作させ、発電機で発生させた交流電力を、インバータ61を通じて直流電力に変換させてバッテリ部26を構成するバッテリ1~4を充電する。
【0034】
バッテリ1~4に充電されている直流電力は、飛行体制御装置36による制御下に、コンタクタK13、K14を介し、推力発生部18を構成するコンデンサC2、インバータ72を通じて交流電力に変換され、該交流電力によりモータ74の主軸76を回転させ、該主軸76に連結している推力発生用のプロペラ80を回転させる。
【0035】
この実施形態において、電動飛行体10は、垂直離着陸機であり、例えば、垂直離着陸用の8個のプロペラと、水平飛行用の2個のプロペラを備える。この構成に限らず、電動飛行体10は、2個以上の垂直離着陸用のプロペラと1個以上の水平飛行用のプロペラを備えた垂直離着陸機としてもよく、さらに他の電動飛行体としてもよい。
【0036】
[動作]
次に、基本的には以上のように構成される電力供給システム16のバッテリ制御装置30によるバッテリ1~4の電圧均等化処理を含む動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。なお、特に断らない限り、フローチャートによる処理を実行するのはバッテリ制御装置30又は飛行体制御装置36のCPUやその他の専用のECU(不図示)であるが、これをその都度参照するのは繁雑になるので、必要に応じて参照する。
【0037】
ステップS1にて、電動飛行体10のパワースイッチ38がオフ状態からオン状態に変化したか否か監視され、オン状態に変化したと判断される(ステップS1:YES)と、ステップS2にて、電圧センサ31~34、35を通じて各バッテリ1~4のバッテリ電圧Vb(Vb=V1、V2、V3、V4)及びコンデンサC1のコンデンサ電圧Vcが取得される。
【0038】
なお、パワースイッチ38がオフ状態のとき、及びパワースイッチ38がオフ状態からオン状態に変化した時点では、全てのコンタクタK1p~K4p、K1n~K4n、K11~K14は、開かれている(電流の遮断状態になっている。)。
【0039】
次いで、ステップS3にて、コンデンサC1に突入電流が流れないように充電すると共に、バッテリ1~4間にも突入電流が流れないように電圧均等化処理を行う。
【0040】
実際上は、インバータ61、72を停止状態に制御した状態で、コンタクタK11~K14を閉じて、コンデンサC1とコンデンサC2とが並列状態で充電されるが、ここでは、煩雑さの回避、理解の便宜のために、コンタクタK11、K12を閉じ、コンタクタK13、K14を開いた状態でコンデンサC1に突入電流が発生しないようにプリチャージ充電し、且つバッテリ電圧を均等化する動作を以下の[1]~[4]の順で説明する。
【0041】
[1]通常のプリチャージ・電圧均等化処理{各バッテリ電圧Vbが目標残容量(目標SOC)を示す電圧になっている場合。}。
【0042】
この実施形態において、目標SOCは、例えば、バッテリ1~4の劣化の少ない、高残容量側を回避した値に設定される。この目標SOCは、ガスタービン66が燃焼していてモータジェネレータ62が発電機として作動しているときのバッテリ制御装置30によるバッテリ1~4の充放電制御中の目標SOCとされる。
【0043】
なお、SOCは、電圧に相関するので、目標SOCに相当するバッテリ電圧Vbを閾値電圧Vthとして説明する。
【0044】
[2](実施例1)バッテリ1~4中、1つのバッテリのSOCが目標SOC(略目標SOCになっている状態も含む。以下も同様である。)になっており、残りの3つのバッテリのSOCが目標SOCより低い場合のプリチャージ・電圧均等化処理。
【0045】
[3](実施例2)バッテリ1~4中、3つのバッテリが目標SOCになっており、残り1つのバッテリのSOCが目標SOCより低い場合のプリチャージ・電圧均等化処理。
【0046】
[4](実施例3)バッテリ1~4の全てのSOCが目標SOCより低く且つばらついている場合のプリチャージ・電圧均等化処理。
【0047】
[1]通常のプリチャージ・電圧均等化処理(V1=V2=V3=V4=Vthになっている場合)の説明
図3A~
図3Dの動作模式図も参照して説明する。
【0048】
【0049】
図3Aに示すように、バッテリ1~4のバッテリ電圧Vbの差が、突入電流防止電圧差(所定電圧範囲)ΔVp内にある場合{一のバッテリのバッテリ電圧Vbと他のバッテリのバッテリ電圧Vb(Vb
*という)との電圧差|Vb-Vb
*|が|Vb-Vb
*|≦ΔVp}、換言すれば、バッテリ1~4の電圧均等化が達成されている場合(電圧均等化処理が不要な場合)には、
図3Bに示すように、コンタクタK1p~K4p(
図1も参照)を開いた状態で(コンタクタK11、K12は既に閉状態)、コンタクタK1n~K4nを閉じ、過大な突入電流とならないように、バッテリ1~4から各プリチャージ抵抗器R1~R4を介してコンデンサC1を充電する。
【0050】
なお、バッテリ1~4に係わる突入電流防止電圧差ΔVpは、バッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4を同一電圧にする均等化処理のためにコンタクタK1p~K4pが閉じられてバッテリ1~4が並列接続されたときであっても、電圧の高いバッテリ1~4から電圧の低いバッテリ1~4に過大な突入電流が流れない、換言すれば、バッテリ電圧差|Vb-Vb*|とバッテリ1~4の内部抵抗で制限される許容可能な小さな突入電流が流れる予め定められる電圧範囲である。
【0051】
図3Cに示すように、充電が進み、コンデンサC1の電圧Vcとバッテリ電圧Vb(ここでは、V1=V2=V3=V4になっている。)との差電圧Vbc(Vbc=Vb-Vc)が、許容可能な突入電流以下となることが保証される突入電流防止電圧差ΔVr以下の値となったとき{(Vb-Vc)≦ΔVr}、コンタクタK1p~K4pを閉じる。バッテリ1~4とコンデンサC1とを直接接続したときに、バッテリ1~4からコンデンサC1に流れ込む突入電流を所定電流以内に制限可能な突入電流防止電圧差ΔVrは、バッテリ1~4及びコンデンサC1の組み合わせに応じて予め定まる。
【0052】
なお、コンタクタK1p~K4pを閉じる前にコンタクタK1n~K4nを開いてもよい。以下でも同様である。この場合、接点の開閉サイクル数等に依存するコンタクタK1n~K4nの経年劣化防止の観点からは閉じておいた方が好ましい。
【0053】
図3Cの接続状態で、コンデンサC1への充電が継続される。この場合、接点の閉じたコンタクタK1p~K4pが、それぞれプリチャージ抵抗器R1~R4と接点の閉じたコンタクタK1n~K1nの直列回路に並列に接続される。この場合、コンタクタK1p~K4pの接触抵抗値は、プリチャージ抵抗器R1~R4の抵抗値に比べて極めて低い値であるので、各バッテリ1~4から流れでる電流は、略全てコンタクタK1p~K4pを通じてコンデンサC1に流れ込む。
【0054】
このようにして、ステップS3のコンデンサC1(実際にはC2も含む。)への[1]通常のプリチャージ・電圧均等化処理によるコンデンサC1への充電処理が終了する。
【0055】
コンデンサC1への充電制御の終了後、ステップS4にて、
図3Cの状態で、インバータ61が駆動され、駆動されたインバータ61を介してモータジェネレータ62がモータとして駆動され主軸64が回転する。
【0056】
主軸64の回転により、ステップS5にて、ガスタービン66がモータジェネレータ62を介して始動され、発電部28が発電を開始する。
【0057】
すなわち、ステップS6にて、
図3Dに示すように、モータジェネレータ62が発電機(ジェネレータ)として動作し、発電部28の電力により並列接続されているバッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4が目標SOCに対応する閾値電圧Vthとなるようにバッテリ制御装置30による充電制御が継続される。
【0058】
これと同時に、ステップS7にて、並列接続されたバッテリ1~4及びコンデンサC2の電力によりインバータ72を通じてモータ74が駆動されることで、該モータ74を介してプロペラ80が回転可能とされる。これにより推力発生部18が飛行体制御装置36の制御下に動作可能(垂直離着陸飛行や垂直離陸飛行後の水平飛行、垂直飛行が可能)になる。
【0059】
次いで、ステップS8にて、パワースイッチ38がオフ状態とされるまで電動飛行体10の飛行動作が継続される(ステップS8:NO→ステップS6:発電継続→ステップS7:プロペラ80回転駆動)。
【0060】
電動飛行体10が所定位置に着陸し、ステップS8にて、パワースイッチ38がオン状態からオフ状態にされる(ステップS8:YES)と、ステップS9にて、全てのコンタクタK11~K14、K1p~K4p、K1n~K4nがオフ状態にされ、フローチャートによる処理動作が終了する。
【0061】
なお、処理動作を終了する際、危険防止のために、コンデンサC1、C2は、図示しない放電回路を通じて放電され、コンデンサ電圧Vcが所定電圧以下とされる。
【0062】
[2](実施例1)バッテリ1~4中、1つのバッテリのSOCが目標SOCになっており、残りの3つのバッテリのSOCが目標SOCより低い場合のプリチャージ・電圧均等化処理(コンデンサC1への突入電流の防止処理、バッテリ1~4間での突入電流を防止しながらの電圧均等化処理、以下同様)の説明
図4A~
図4Dの動作模式図も参照して説明する。
【0063】
図4Aに示すように、バッテリ1のバッテリ電圧V1は、略閾値電圧Vthになっている(V1≒Vth)が、残りのバッテリ2~4のバッテリ電圧V2~V4が、閾値電圧Vthより低い(V2~V4<Vth≒V1)場合の処理が該当する。
【0064】
図4Bに示すように、コンタクタK1p~K4p、K2n~K4nを開いた状態で、バッテリ電圧Vbの高いバッテリ1のコンタクタK1nのみを閉じる。これにより、コンデンサC1への突入電流が過大とならずに、高電圧状態のバッテリ1のみからコンタクタK1n及びプリチャージ抵抗器R1を介してコンデンサC1が充電される。
【0065】
次いで、バッテリ1のバッテリ電圧V1と、残りのバッテリ2~4のバッテリ電圧V2~V4との電圧差ΔVb(V1―V2、V1-V3、V1-V4)が、突入電流防止電圧差ΔVpとなったとき、該当するコンタクタK2n~K4nを閉じる。
【0066】
例えば、電圧差ΔVb=(V1-V2)が、突入電流防止電圧差ΔVpまで低下したときには、コンタクタK2nを閉じることで、バッテリ1とバッテリ2との電圧均等化がなされると共に、電圧均等化されたバッテリ1、2から各プリチャージ抵抗器R1、R2を通じてコンデンサC1への充電が継続される。
【0067】
以下同様な条件下で、コンデンサC1に電力を供給しているバッテリ1、2を除く、残りのバッテリ3、4のコンタクタK3n、K4nも順次閉じることでバッテリ1~4の電圧均等化がされると同時に、電圧均等化されたバッテリ1~4から各プリチャージ抵抗器R1~R4を通じてコンデンサC1への充電が継続される。
【0068】
このようにして、
図4Cに示すように、充電が進み、コンデンサC1の電圧Vcとバッテリ電圧Vb(Vb=V1~V4)との差電圧Vbc(Vbc=Vb-Vc)がコンデンサC1への許容可能な突入電流以下の電流が流れることが保証される突入電流防止電圧差ΔVr以下の値となった(Vbc=(Vb-Vc)≦ΔVr)とき、コンタクタK1p~K4pを閉じる。
【0069】
これにより、バッテリ1~4から流れでる電流は、コンタクタK1p~K4pを通じてコンデンサC1に流れ込む。
【0070】
このようにして、ステップS3のコンデンサC1(実際にはC2も含む)への充電処理、バッテリ1~4の電圧均等化処理が終了する。
【0071】
なお、上記した実施例1に係る
図4Bから
図4Cへの処理では、バッテリ1のみでコンデンサC1にプリチャージしている状態において、バッテリ電圧V1が低下中のバッテリ1の該バッテリ電圧V1と電圧均等化処理前のバッテリ2~4のバッテリ電圧V2~V4との電位差ΔVbが突入電流防止電圧差ΔVpまで低下したとき、コンタクタK2n~K4nを閉じて、バッテリ2~4の電圧均等化処理を行った後に、バッテリ1~4によりコンタクタK1n~K4n及びプリチャージ抵抗器R1~R4を介して継続してコンデンサC1をプリチャージするようにしているが、これに限らず、変形例1のようにしてもよい。
【0072】
[変形例1]
この場合、バッテリ1のみでプリチャージ抵抗器R1を介してコンデンサC1にプリチャージしている状態(
図4B)において、端子間電圧(バッテリ電圧V1)が低下中のバッテリ1の該バッテリ電圧V1が、バッテリ2~4のバッテリ電圧V2~V4と同電圧(ΔVb=0)まで低下したときに、つまり実質的にバッテリ電圧均等化処理が終了したときに、コンタクタK2n~K4nを閉じて、バッテリ1~4によりコンタクタK1n~K4n及びプリチャージ抵抗器R1~R4を介して継続してコンデンサC1をプリチャージするように処理を変更してもよい。
【0073】
なお、実施例1及び変形例1において、バッテリ2~4のSOCがバッテリ1のSOCより極端に小さい場合には、バッテリ1のみでコンデンサC1のプリチャージを終了し、発電部28を動作させた後に、バッテリ1により残りのバッテリ2~4を、電圧均等化するように処理してもよい。
【0074】
この場合、バッテリ電圧V2~V4とバッテリ電圧V1との電位差が突入電流防止電圧差ΔVp以下となったときに、順次、プリチャージ抵抗器R2~R4をコンタクタK2p~K4pで短絡するようにして電圧均等化処理が行われる。
【0075】
次いで、上述したステップS4以降の処理を、簡潔に説明する。
【0076】
ステップS4にて、
図4Cの状態で、インバータ61を介してモータジェネレータ62が駆動され、ステップS5にて、ガスタービン66がモータジェネレータ62を介して始動されることで発電部28が発電を開始する。
【0077】
この後、ステップS6にて、
図4Dに示すように、発電部28の電力によりバッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4が目標SOCに対応する閾値電圧Vthとなるように充電制御され、モータジェネレータ62の発電機(ジェネレータ)としての動作が継続される。
【0078】
ステップS7にて、バッテリ1~4の電力によりプロペラ80が回転可能とされる。これにより推力発生部18が飛行体制御装置36の制御下に上述した種々の飛行動作が可能になる。
【0079】
[3](実施例2)バッテリ1~4中、3つのバッテリが略目標SOCになっており、残り1つのバッテリのSOCが低い場合のプリチャージ・電圧均等化処理の説明
図5A~
図5Dの動作模式図も参照して説明する。
【0080】
図5Aに示すように、バッテリ1~3のバッテリ電圧V1~V3が、閾値電圧Vthと略同電圧になっているが、残りのバッテリ4のバッテリ電圧V4が、閾値電圧Vthより低い(V4<Vth)場合について説明する。
【0081】
この場合、コンタクタK1p~K4pを開いた状態で、コンタクタK1n~K4nを閉じる。
【0082】
これにより、
図5Bに示すように、プリチャージ抵抗器R1~R3及びプリチャージ抵抗器R4を介して電圧の低いバッテリ4がバッテリ1~3と同電圧となるまで充電されてバッテリ1~4の電圧均等化処理がなされると共に、バッテリ1~4から各プリチャージ抵抗器R1~R4を通じて、突入電流が過大とならない範囲でコンデンサC1が充電される。
【0083】
なお、実施例2に係る
図5Bでは、コンデンサC1のプリチャージとバッテリ1~3によるバッテリ4への充電を同時に実施しているが、これに限らず、変形例2のようにしてもよい。
【0084】
[変形例2]
例えば、
図5Aの状態において、コンタクタK4nを開いたままコンタクタK1n~K3nを閉じ、バッテリ1~3によるコンデンサC1のプリチャージを優先し、バッテリ1~3のバッテリ電圧V1~V3とバッテリ4のバッテリ電圧V4との電位差ΔVb差がゼロ(同一の電圧)になったとき、又は突入電流防止電圧差ΔVpまで低下したときにコンタクタK4nを閉じることでバッテリ1~4の電圧均等化を行うようにしてもよい。
【0085】
このようにコンデンサC1のプリチャージを優先してバッテリ4の電圧均等化を行うか、
図5Bに示しているように、最初からコンデンサC1のプリチャージとバッテリ4の電圧均等化を同時に行うかのいずれの処理を採用するかは、バッテリ1~4のSOCとコンデンサC1の静電容量を考慮して予め決定し、プリチャージ及び電圧均等化が早く終了する処理を選択することができる。
【0086】
実施例2及び変形例2のいずれの場合においても、
図5Cに示すように、充電が進み、コンデンサC1の電圧Vcとバッテリ電圧Vb=V1~V4との差電圧Vbc(Vbc=Vb-Vc)が許容可能な突入電流以下の電流が流れることが保証される突入電流防止電圧差ΔVr以下の値となった{Vbc=(Vb―Vc)≦ΔVr}とき、コンタクタK1p~K4pを閉じる。
【0087】
この後、バッテリ1~4から流れでる電流は、コンタクタK1p~K4pを通じてコンデンサC1に流れ込む。
【0088】
このようにして、ステップS3のコンデンサC1(実際にはC2も含む)への充電制御が終了する。
【0089】
次いで、ステップS4以降の処理を、簡潔に説明する。
【0090】
ステップS4にて、
図5Cの状態で、インバータ61を介してモータジェネレータ62が駆動され、ステップS5にて、ガスタービン66がモータジェネレータ62を介して始動されることで発電部28が発電を開始する。
【0091】
ステップS6にて、
図5Dに示すように、発電部28の電力によりバッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4が目標SOCに対応する閾値電圧Vthとなるように充電制御され、モータジェネレータ62の発電機(ジェネレータ)としての動作が継続される。
【0092】
ステップS7にて、バッテリ1~4の電力によりプロペラ80が回転可能とされる。これにより推力発生部18が飛行体制御装置36の制御下に上述した種々の飛行動作が可能になる。
【0093】
[4](実施例3)バッテリ1~4の全てのSOCが目標SOC(閾値電圧Vth)より低く且つばらついている場合のプリチャージ・電圧均等化処理の説明
【0094】
【0095】
図6Aに示すように、バッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4が、閾値電圧Vthより低く、且つVth>V1>V3>V4>V2とばらついている場合について説明する。
【0096】
この場合、まず、
図6Bに示すように、コンタクタK1p~K4pが開いた状態で、最もバッテリ電圧Vbの高いバッテリ1(Vb=V1)のコンタクタK1nと、2番目にバッテリ電圧Vbの高いバッテリ3(Vb=V3)のコンタクタK1n、コンタクタK3nを閉じる。
【0097】
これにより、プリチャージ抵抗器R1、R3を介してバッテリ3のバッテリ電圧V3がバッテリ1のバッテリ電圧V1と同電圧となるまで充電されバッテリ1、3のバッテリ電圧V1、V3の電圧均等化がなされる(この時点でのバッテリ電圧V1は、
図6Aに示すバッテリ電圧V1よりも降下している。)と共に、バッテリ1からプリチャージ抵抗器R1を通じて、突入電流が過大とならない範囲でコンデンサC1が充電され、バッテリ1とバッテリ3との電圧均等化がなされた(V1=V3)後は、バッテリ1、3から各プリチャージ抵抗器R1、R3を通じてコンデンサC1が充電される。
【0098】
図示はしないが、
図6Bの状態で、3番目にバッテリ電圧Vbの高いバッテリ4のコンタクタK4nが閉じられて、プリチャージ抵抗器R1、R3、R4を介してバッテリ4のバッテリ電圧V4がバッテリ1、3のバッテリ電圧Vb=V1=V3と同電圧となるまで充電されバッテリ1、3、4の電圧均等化がなされると共に、電圧均等化されたバッテリ1、3、4から各プリチャージ抵抗器R1、R3、R4を通じて、突入電流が過大とならない範囲でコンデンサC1が充電される。
【0099】
同様に、図示はしないが、4番目にバッテリ電圧Vbの高いバッテリ2のコンタクタK2nが閉じられて、プリチャージ抵抗器R1、R2、R3、R4を介してバッテリ2のバッテリ電圧V2がバッテリ1、3、4のバッテリ電圧Vb=V1=V3=V4と同電圧となるまで充電されバッテリ1~4の電圧均等化がなされると共に、電圧均等化されたバッテリ1~4から各プリチャージ抵抗器R1~R4を通じて、突入電流が過大とならない範囲でコンデンサC1が充電される。
【0100】
なお、
図6Bでは、コンデンサC1のプリチャージとバッテリ3への充電を同時に実施しているが、これに限らず、変形例3のようにしてもよい。
【0101】
[変形例3]
最初にバッテリ電圧V1の最も高いバッテリ1のコンタクタK1nのみを閉じてコンデンサC1をプリチャージし、該コンデンサC1へのプリチャージに伴うバッテリ1のバッテリ電圧V1の電圧降下によりバッテリ3のバッテリ電圧V3との電位差ΔVbがゼロ(同一の電圧)になったとき、又は突入電流防止電圧差ΔVpまで低下したとき、つまり電圧均等化がなされた後に、コンタクタK3nを閉じることでバッテリ1、3によるコンデンサC1のプリチャージを行うようにしてもよい。他のバッテリ2、4に対しても同様である。
【0102】
実施例3及び変形例3のいずれの場合においても、
図6Cに示すように、充電が進み、コンデンサC1の電圧Vcと、バッテリ電圧Vb(Vb=V1~V4)との差電圧Vbc(Vbc=Vb-Vc)が許容可能な突入電流以下の電流が流れることが保証される突入電流防止電圧差ΔVr以下の値(Vbc≦ΔVr)となったとき、コンタクタK1p~K4pを閉じる。
【0103】
この後、バッテリ1~4から流れでる電流は、コンタクタK1p~K4pを通じてコンデンサC1に流れ込む。
【0104】
このようにして、ステップS3のコンデンサC1(実際にはC2も含む)への充電処理が終了する。
【0105】
また、実施例3及び変形例3のいずれも、電圧高低差を有する少なくとも2つのバッテリに適用可能である。
【0106】
次いで、ステップS4以降の処理を、簡単に説明する。
【0107】
ステップS4にて、
図6Cの状態で、インバータ61を介してモータジェネレータ62が駆動され、ステップS5にて、ガスタービン66がモータジェネレータ62を介して始動されることで発電部28が発電を開始する。
【0108】
ステップS6にて、
図6Dに示すように、発電部28の電力によりバッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4が目標SOCに対応する閾値電圧Vthとなるように充電制御され、モータジェネレータ62の発電機(ジェネレータ)としての動作が継続される。
【0109】
ステップS7にて、バッテリ1~4の電力によりプロペラ80が回転可能とされる。これにより推力発生部18が飛行体制御装置36の制御下に上述した種々の飛行動作が可能になる。
【0110】
[実施形態から把握し得る発明]
ここで、上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。なお、理解の便宜のために構成要素には実施形態で用いた符号の一部を付けているが、該構成要素は、その符号を付けたものに限定されない。
【0111】
この発明に係る電力供給システムのバッテリ制御装置は、負荷に並列に接続され、前記負荷に電力を供給するコンデンサC1と、前記コンデンサC1に電力を供給して前記コンデンサC1を充電すると共に、前記負荷に電力を供給する並列接続可能な複数のバッテリ1~4と、を備える電力供給システム16のバッテリ制御装置30であって、前記コンデンサC1及び複数の前記バッテリ1~4から前記負荷に電力を供給する前に、前記バッテリ1~4の各電圧の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリ1~4の中、前記コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給する1以上のバッテリを決定し、決定された前記バッテリから前記コンデンサC1に充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行う。
【0112】
この構成により、コンデンサC1から負荷に電力を供給する前に、バッテリ1~4の各電圧の取得結果に基づいて、複数の前記バッテリ1~4の中、前記コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給するバッテリを決定し、決定された前記バッテリから前記コンデンサC1に充電用の電力を供給することを契機として、複数の前記バッテリの電圧均等化を行うように構成している。
【0113】
このため、電力を供給しようとする負荷に並列にコンデンサC1が接続されている場合であっても、並列接続されるバッテリ1~4の電圧不均等を効率よく解消することができる。また、負荷に電力を供給する前に電圧均等化を行っているので、バッテリ使用後の放置期間が長い場合であっても、確実に電圧均等化を行うことができる。
【0114】
また、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリの中、電圧の最も高い1つのバッテリであって、残りのバッテリは開放状態とされ、前記1つのバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、前記1つのバッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した前記1つのバッテリとの電圧差がゼロとなった残りのバッテリからもプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、前記コンデンサの電圧と複数の前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差以内となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数の前記バッテリと前記コンデンサを並列接続するようにしてもよい(変形例1対応)。
【0115】
これによれば、バッテリの電圧均等化処理の開始に先立ち、コンデンサC1のプリチャージを開始するようにしたので、コンデンサのプリチャージ時間を短縮することができる。
【0116】
また、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給する前記バッテリ1~4は、複数の前記バッテリ1~4の中、電圧の最も高い1つのバッテリであって、残りのバッテリは開放状態とされ、前記1つのバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1に充電用の電力を供給し、前記1つのバッテリから前記コンデンサC1に充電用の電力の供給中に、電圧が低下した前記1つのバッテリとの電圧差が所定電圧差以内となった残りのバッテリとを、各プリチャージ抵抗器を介して接続して電圧均等化を行った後、前記1つのバッテリと電圧均等化が図られた残りのバッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1に充電用の電力の供給を継続し、同様にして、電圧均等化が行われたバッテリと、残りのバッテリとの電圧均等化を行い、電圧均等化後の全てのバッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1を充電し、前記コンデンサC1の電圧と前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数のバッテリと前記コンデンサC1を並列接続するようにしてもよい(実施例1対応)。
【0117】
これによれば、バッテリ1~4の電圧均等化処理の開始に先立ち、コンデンサC1のプリチャージを開始するようにしたので、コンデンサC1のプリチャージ時間を短縮することができる。
【0118】
さらに、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記コンデンサに最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリ中の電圧の高い側の複数のバッテリであって、複数の前記電圧の高い側の前記バッテリからそれぞれプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、複数の前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した複数の前記バッテリと残りのバッテリとの電圧差がゼロとなった前記残りのバッテリからもプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力の供給を継続し、前記コンデンサの電圧と前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差となったときに前記プリチャージ抵抗器を短絡して複数のバッテリと前記コンデンサを並列接続するようにしてもよい(変形例2対応)。
【0119】
これによれば、コンデンサのプリチャージ時間及びバッテリ電圧均等化時間を短縮することができる。
【0120】
さらに、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記コンデンサC1に最初に充電用の電力を供給する前記バッテリは、複数の前記バッテリ中の電圧の高い側の複数のバッテリであって、複数の前記電圧の高い側の前記バッテリからそれぞれプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1に充電用の電力を供給すると共に、電圧の低い側のバッテリに各プリチャージ抵抗器を介して前記充電用の電力を供給してバッテリの電圧均等化を行うようにしてもよい(実施例2対応)。
【0121】
これによれば、コンデンサC1のプリチャージ時間及びバッテリ電圧均等化時間を短縮することができる。
【0122】
さらに、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、電圧高低差を有する少なくとも2つのバッテリを有し、前記コンデンサに充電用の電力を供給するに際し、まず、電圧の高い方の前記バッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、電圧の高い方の前記バッテリから前記コンデンサに充電用の電力の供給中に、電圧が低下した電圧の高い方の前記バッテリの電圧と電圧の低い方のバッテリの電圧との電圧差がゼロとなったとき、少なくとも2つの前記バッテリから各プリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサに充電用の電力を供給し、前記コンデンサの電圧と少なくとも2つの前記バッテリの電圧との電圧差が所定電圧差以内となったときに各前記プリチャージ抵抗器を短絡して前記少なくとも2個のバッテリと前記コンデンサを並列接続するようにしてもよい(変形例3対応)。
【0123】
これによれば、バッテリのバッテリ電圧に高低差が存在していても、バッテリ電圧の均等化とコンデンサのプリチャージを効率よく行うことができる。
【0124】
さらに、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記コンデンサC1に充電用の電力を供給するに際し、まず、電圧の最も高い前記バッテリから電圧の2番目に高いバッテリにプリチャージ抵抗器を介してバッテリ電圧均等化を行うと共に、電圧の最も高いバッテリ及び電圧の2番目に高いバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1に充電用の電力を供給し、次に、電圧の最も高い前記バッテリ及び電圧が2番目に高かったバッテリからプリチャージ抵抗器を介して電圧の3番目に高いバッテリにプリチャージ抵抗器を介してバッテリ電圧均等化を行うと共に、電圧の最も高いバッテリ、電圧の2番目に高かったバッテリ及び電圧の3番目に高かったバッテリからプリチャージ抵抗器を介して前記コンデンサC1に充電用の電力を供給し、以下同様に処理を継続して、バッテリ電圧の均等化を行うようにしてもよい(実施例3対応)。
【0125】
これによれば、バッテリ1~4のバッテリ電圧V1~V4に高低差が存在していても、バッテリ電圧の均等化とコンデンサC1のプリチャージを効率よく行うことができる。
【0126】
さらに、電力供給システムのバッテリ制御装置30においては、前記負荷が、インバータを介して駆動される回転電機であるとしてもよい。
【0127】
これによれば、回転電機の動力により種々の応用が可能である。
【0128】
なお、この発明は、上述の実施形態で説明した電動飛行体10に限らず、例えば、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車を含む電動車両の他、電動ボート等、バッテリを動力源としモータを移動駆動源とする電動移動体に適用する等、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0129】
また、電動飛行体10を含む前記電動移動体において、発電部28のガスタービン66は、レシプロエンジン等の内燃機関に代替してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1~4…バッテリ 10…電動飛行体
16…電力供給システム 18…推力発生部
20…制御部 21~24…バッテリモジュール
26…バッテリ部 28…発電部
30…バッテリ制御装置 31~35…電圧センサ
36…飛行体制御装置 38…パワースイッチ
61、72…インバータ 62…モータジェネレータ
64、76…主軸 66…ガスタービン
74…モータ 80…プロペラ
81…正極母線 82…負極母線