(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152314
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】連結装置
(51)【国際特許分類】
F16D 43/21 20060101AFI20221004BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F16D43/21
F16D7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055035
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎也
【テーマコード(参考)】
3J068
【Fターム(参考)】
3J068AA02
3J068AA07
3J068BA02
3J068BA03
3J068BB04
3J068CB03
3J068EE12
3J068GA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動力伝達の遮断状態においても回転体の操作トルクを発生させる動力制御、及び作用するトルクの大きさによって動力の伝達を遮断する動力制御の少なくとも一方を比較的簡単な構造で実現可能な連結装置を提供する。
【解決手段】同軸上で相対的に回転可能に配される第1回転体10及び第2回転体20を有する連結装置1であって、第1回転体及び第2回転体間に配されるスペーサー40と、少なくとも第1回転体及び第2回転体の一方の回転体をスペーサーに押し付ける押付部材50とを有し、スペーサーは、弾性部材により形成され、且つ、押付部材による押し付けにより一方の回転体との間に摩擦力を生じさせ、一方の回転体とスペーサーとは、一方の回転体及びスペーサー間に摩擦力よりも大きなトルクが作用したときに、一方の回転体又はスペーサー空転可能に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上で相対的に回転可能に配される第1回転体及び第2回転体を有する連結装置であって、
前記第1回転体及び前記第2回転体間に配されるスペーサーと、少なくとも前記第1回転体及び前記第2回転体の一方の回転体を前記スペーサーに押し付ける押付部材とを有し、
前記スペーサーは、弾性部材により形成され、且つ、前記押付部材による押し付けにより前記一方の回転体との間に摩擦力を生じさせ、
前記一方の回転体と前記スペーサーとは、前記一方の回転体及び前記スペーサー間に前記摩擦力よりも大きなトルクが作用したときに、前記一方の回転体又は前記スペーサーが、前記スペーサー又は前記一方の回転体に対して空転可能に形成されている
ことを特徴とする連結装置。
【請求項2】
前記第1回転体は、外周縁部に複数の歯が設けられた第1歯車により形成され、
前記第2回転体は、外周縁部に複数の歯が設けられた第2歯車により形成される
請求項1記載の連結装置。
【請求項3】
前記スペーサーは、円環状の形状を有し、
前記スペーサーにおける前記一方の回転体が接触する接触部に、円周状又は円弧状の凹部又は凸部が設けられ、
前記一方の回転体における前記スペーサーが接触する接触部に、前記スペーサーの前記凹部又は前記凸部に対応する円周状又は円弧状の凸部又は凹部が設けられている
請求項1又は2記載の連結装置。
【請求項4】
前記スペーサーは、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方の回転体に対して回転不能に設けられている
請求項1~3の何れかに記載の連結装置。
【請求項5】
前記第1回転体と前記第2回転体との間で動力を伝達可能である請求項1~4の何れかに記載の連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸上で相対的に回転可能に配される第1回転体及び第2回転体を有する連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2つの部品・部材間を連結する連結装置として、2つの回転体を有するものがある。例えば2つの回転体を有する連結装置の一つとして、2つの回転体がそれぞれ歯車によって形成されるとともに、一方の歯車から他方の歯車へ動力(回転力)を伝達する動力伝達装置が知られている。また、動力伝達装置の一例として、例えば特開2008-169911号公報(特許文献1)には、第1歯車のトルクを第2歯車へ伝達するクラッチが記載されている。この特許文献1のクラッチは、第2歯車から第1歯車へのトルク伝達を遮断するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の動力伝達装置は、上述のように第1歯車から第2歯車へ回転力を伝達するとともに、第2歯車から第1歯車への動力を遮断するようにするため、複雑な構造で形成されている。
【0005】
ところで、第1歯車と第2歯車との間で動力が伝達される動力伝達装置では、その使用形態に応じて、以下のような動力制御が求められることがある。例えば第1歯車と第2歯車の間で回転力が伝達されない状態でも、第1歯車又は第2歯車を回転させるためのトルク(操作トルク)を発生させる動力制御が求められることがある。また、例えば第1歯車及び第2歯車間に作用するトルクが所定範囲を超えた時点で動力の伝達を遮断する動力制御が求められることがある。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、動力伝達装置を含む2つの回転体を備えた連結装置において、動力伝達の遮断状態においても回転体の操作トルクを発生させる動力制御、及び、作用するトルクの大きさによって動力の伝達を遮断する動力制御の少なくとも一方を、比較的簡単な構造で実現可能な連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明により提供される連結装置は、同軸上で相対的に回転可能に配される第1回転体及び第2回転体を有する連結装置であって、前記第1回転体及び前記第2回転体間に配されるスペーサーと、少なくとも前記第1回転体及び前記第2回転体の一方の回転体を前記スペーサーに押し付ける押付部材とを有し、前記スペーサーは、弾性部材により形成され、且つ、前記押付部材による押し付けにより前記一方の回転体との間に摩擦力を生じさせ、前記一方の回転体と前記スペーサーとは、前記一方の回転体及び前記スペーサー間に前記摩擦力よりも大きなトルクが作用したときに、前記一方の回転体又は前記スペーサーが、前記スペーサー又は前記一方の回転体に対して空転可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る連結装置において、前記第1回転体は、外周縁部に複数の歯が設けられた第1歯車により形成され、前記第2回転体は、外周縁部に複数の歯が設けられた第2歯車により形成されることが好ましい。
【0009】
また本発明において、前記スペーサーは、円環状の形状を有し、前記スペーサーにおける前記一方の回転体が接触する接触部に、円周状又は円弧状の凹部又は凸部が設けられ、前記一方の回転体における前記スペーサーが接触する接触部に、前記スペーサーの前記凹部又は前記凸部に対応する円周状又は円弧状の凸部又は凹部が設けられていることが好ましい。
【0010】
更に、前記スペーサーは、前記第1回転体及び前記第2回転体の他方の回転体に対して回転不能に設けられていることが好ましい。
また、前記第1回転体と前記第2回転体との間で動力を伝達可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連結装置によれば、動力伝達の遮断状態においても回転体の操作トルクを発生させる動力制御、及び作用するトルクの大きさによって動力の伝達を遮断する動力制御の少なくとも一方を比較的簡単な構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る連結装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した連結装置が分解された状態を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した連結装置を径方向に沿って切断したときの断面を模式的に示す断面図である。
【
図4】連結装置に用いられるスペーサーの変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】連結装置に用いられるスペーサーの別の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図6】連結装置に用いられる第1回転体及びスペーサーの変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図1に示した連結装置が適用された風向調整装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図7に示した風向調整装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図1に示した連結装置が適用されたカップホルダー装置を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図9に示したカップホルダー装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【
図11】本発明の変形例に係る連結装置が適用されたコンソールボックスを示す斜視図及び部分拡大図である。
【
図12】
図11に示したコンソールボックスのヒンジ部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば以下では、本発明の連結装置が適用される幾つかの適用例について説明しているが、本発明の連結装置はその他の様々な製品にも適用することが可能である。
【実施例0014】
図1は、本実施例に係る連結装置を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示した連結装置が分解された状態を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図1に示した連結装置を径方向に沿って切断したときの断面を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明において、2つの回転体の回転軸に沿った方向を上下方向とする。この場合、便宜上、回転体に対して押付部材が配されている側の向きを上方とし、その反対側の向きを下方とする。
【0015】
本実施例の連結装置1は、支持部30と、支持部30に回転可能に支持される上側の第1歯車(第1回転体)10及び下側の第2歯車(第2回転体)20と、第1歯車10及び第2歯車20間に配されるスペーサー40と、第1歯車10の上に配される押付部材50と、支持部30の下端部に係合する押さえ部60とを有しており、各部材・部品は、それぞれ独立して形成されている(他の部材・部品と別体に形成されている)。
【0016】
この連結装置1は、第1歯車10と第2歯車20との間で動力(回転力)が伝達される動力伝達装置(クラッチ機構)として形成されている。すなわち、第1歯車10に動力(回転力)が入力されたときは、第2歯車20から動力を出力することが可能で、その反対方向の動力の入力及び出力も可能である。
【0017】
支持部30は、上下方向に延びる軸部31と、軸部31の上端部に一体的に設けられるフランジ部32とを有する。支持部30の軸部31には、第1歯車10、第2歯車20、及びスペーサー40が回転可能に取り付けられ、且つ、押付部材50が弾性変形可能に取り付けられている。
【0018】
軸部31の下端部には、押さえ部60を係合させて固定する複数の係合爪部33が設けられている。押さえ部60は、中央部に軸部31を挿通させる挿通孔部61が設けられた円環状(リング状)の形状を有する。なお本実施例において、支持部30の軸部31に押さえ部60を係合又は固定する方法及び手段は特に限定されず、従来から一般的に知られている方法及び手段を採用できる。
【0019】
支持部30のフランジ部32と、軸部31の下端部に固定された押さえ部60との間には、押付部材50、第1歯車10、スペーサー40、及び第2歯車20が、上下方向に順番に重ねられて挟持されている。この場合、第2歯車20は、押さえ部60に対して回転可能に接触している。
【0020】
第1歯車10は、中央部に挿通孔が設けられた円環状の第1基部11と、第1基部11の外周部に一体的に設けられる第1歯部12と、第1基部11から下方に突出する凸部13とを有する(
図2及び
図3を参照)。第1基部11の上面には、押付部材50の一部を載置するとともに収容する収容溝部14が第1歯車10の周方向に沿って設けられている。
【0021】
第1歯部12には、第1歯車10の径方向の外側に向けて突出する複数の歯が設けられている。第1歯車10の凸部13は、第1基部11の下面から下方に突出する凸条部13aにより形成されている。凸条部13aは、第1歯車10でスペーサー40が接触する接触部として形成され、また第1歯車10の底面視(不図示)にて、第1歯車10の周方向の全体に亘って連続する円周状に設けられている。なお本発明において、第1歯車10に設ける凸部13の形態は、凸条部13aに限定されるものではなく、その他の形状及び構造を採用することも可能である。
【0022】
第2歯車20は、中央部に挿通孔が設けられた円環状の第2基部21と、第2基部21の外周部に一体的に設けられる第2歯部22と、第2基部21から下方に円筒状に突出する円筒部23と、第2基部21の上面から突出する4つのリブ24とを有する(
図2及び
図3を参照)。第2歯部22には、第2歯車20の径方向の外側に向けて突出する複数の歯が設けられている。第2歯車20の4つのリブ24は、第2歯車20の径方向に沿って直線状に設けられており、且つ、第2歯車20の周方向に等間隔で配されている。
【0023】
本実施例のスペーサー40は、押付部材50によって第1歯車10がスペーサー40に押し付けられている状態において、第1歯車10又は第2歯車20に回転力が入力されたときに、第1歯車10とスペーサー40とが一体的に(又は一緒に)回転可能な摩擦力を第1歯車10及びスペーサー40間に生じさせる材質及び/又は形状で形成されている。
【0024】
スペーサー40についてより具体的に説明すると、スペーサー40は、弾性部材により形成されている。弾性部材は、弾性を備える部材である。弾性部材には、例えば弾性変形可能な材料で形成された部材、及び弾性を発揮する形状を備えた部材が含まれる。また、弾性部材は、軟質の合成樹脂により形成されていてもよい。
【0025】
スペーサー40は、円環状又はリング状の形状を有する。スペーサー40の円周状の上面部には、凹部41が設けられている。このスペーサー40の凹部41は、第1歯車10の上述した凸条部13aを収容するとともに接触させる凹溝部41aにより形成されている。なお本発明において、スペーサー40に設ける凹部41の形態は、凹溝部41aに限定されるものではなく、その他の形状及び構造を採用することも可能である。
【0026】
凹溝部41aは、スペーサー40の平面視(不図示)にて、スペーサー40の周方向の全体に亘って連続する円周状に設けられている。このスペーサー40の凹溝部41aに第1歯車10の凸条部13aを収容して接触させることによって、第1歯車10とスペーサー40の間の相対的な位置がずれることを抑制できる。また、第1歯車10とスペーサー40との間に適切な摩擦力を安定して発生させることができる。
【0027】
スペーサー40の下端部には、第2歯車20に設けたリブ24が挿入されて係合させる4つの係合凹部42が設けられている。スペーサー40を第2歯車20の上に重ねたときに、スペーサー40の各係合凹部42に第2歯車20の各リブ24を係合させることにより、スペーサー40が第2歯車20に対して回転不能に載置される。
【0028】
本実施例の押付部材50は、コイルスプリング51により形成されている。このコイルスプリング51により、第1歯車10を付勢して、第1歯車10をスペーサー40に押し付けることができる。これによって、第1歯車10の凸条部13aがスペーサー40の凹溝部41aに収容されて接触した状態を安定して維持できる。また、コイルスプリング51により、スペーサー40を第2歯車20に押し付けることができ(言い換えると、第2歯車20をスペーサー40に押し付けることができ)、それによって、第2歯車20のリブ24がスペーサー40の係合凹部42に係合した状態を安定して維持できる。
【0029】
なお本実施例において、押付部材50はコイルスプリング51により形成されているが、押付部材50は、第1歯車10をスペーサー40に押し付けることが可能であれば、コイルスプリング51以外の弾性を備えた部材で形成されていてもよい。また、本実施例の押付部材50は、第1歯車10の上側(第1歯車10のスペーサー40側とは反対の側)に配されているが、本発明において、押付部材50は、第2歯車20の下側(第2歯車20のスペーサー40側とは反対の側)に配されていてもよく、又は、第1歯車10の上側と第2歯車20の下側の両方に配されていてもよい。
【0030】
本実施例の連結装置(動力伝達装置)1は、比較的容易に組み立て可能な簡単な構造で形成されている。すなわち、連結装置1は、支持部30の軸部31に、コイルスプリング51、第1歯車10、スペーサー40、及び第2歯車20を順番に取り付け、その後、押さえ部60の挿通孔部61に支持部30の軸部31を挿通させて、軸部31の下端部に押さえ部60を固定することによって容易に組み立てることができる。
【0031】
本実施例の連結装置1によれば、第1歯車10に入力される回転力を第2歯車20から出力する動力伝達、及びその反対方向の動力伝達を円滑に行うことができる。
また本実施例の連結装置1では、例えば第1歯車10及び第2歯車20の一方の歯車が回転不能に維持された状態において、第1歯車10及び第2歯車20の他方の歯車を回転させる操作を行う場合、第1歯車10及びスペーサー40間に発生する摩擦力よりも大きなトルクを前記他方の歯車に入力することが必要となる。これにより、前記他方の歯車を回転操作するときに、トルク(操作トルク)を容易に且つ安定して発生させることができる。このため、操作者に対し、連結装置1の操作感又は使用感を与えることが可能となる。
【0032】
またこの場合、本実施例の連結装置1では、スペーサー40の材質の変更、スペーサー40の形状の変更、及び押付部材50の反力(コイルスプリング51の弾性力)の変更等により、操作トルクの大きさを容易に変更したり、調整したりすることが可能である。
【0033】
更に本実施例の連結装置1によれば、第1歯車10及び第2歯車20の一方の歯車に回転力が入力されている状態において、例えば第1歯車10及び第2歯車20間に作用するトルクが、第1歯車10及びスペーサー40間に発生する摩擦力よりも大きくなった場合、摩擦力による第1歯車10とスペーサー40の一体的な回転が維持できなくなり、第1歯車10をスペーサー40に対して(又はスペーサー40を第1歯車10に対して)、空転させる(独立して回転させる)動力制御を行うことができる。
【0034】
このような動力制御を行う本実施例の連結装置1は、第1歯車10及び第2歯車20間に作用するトルクが、前記摩擦力によって設定される設定値を超えたときに、第1歯車10とスペーサー40との間で動力の伝達を遮断でき、それによって、入力されたトルクをキャンセルするキャンセル機能を発揮することができる。この場合、本実施例の連結装置1では、スペーサー40の材質の変更、スペーサー40の形状の変更、及び押付部材50の反力(コイルスプリング51の弾性力)の変更等により、摩擦力によって設定されるキャンセル機能の設定値を容易に変更したり、調整したりすることが可能である。
【0035】
なお本実施例のスペーサー40は、
図2及び
図3に示したように、円環状のスペーサー40の上面部に、周方向の全体に亘って連続する円周状の凹溝部41aが設けられて形成され、第1歯車10には、スペーサー40の凹溝部41aに収容されて接触する凸条部13aが設けられている。しかし、本発明の連結装置(動力伝達装置)に用いられるスペーサーは、これに限定されるものではなく、例えばスペーサーの上面部に凸部(凸条部)が設けられ、且つ、第1歯車にその凸部を収容して接触させる凹部(凹溝部)が設けられていてもよい。
【0036】
更に本発明では、上述した実施例のスペーサー40に代えて、例えば
図4及び
図5に変形例として示したスペーサー40a,40bを用いて連結装置(動力伝達装置)を形成することも可能である。
例えば
図4に示した変形例に係るスペーサー40aは、第1歯車10の凸条部13aを収容して接触させる4つの凹溝部43と、第1歯車10の凸条部13aを接触させない4つの非接触部44とが、スペーサー40の周方向に交互に設けられて形成されている。一方、
図5に示した変形例に係るスペーサー40bは、2つの円周状の凹溝部45,46が、スペーサー40の上面部に径方向に並んで設けられて形成されている。
【0037】
このような
図4に示したスペーサー40a又は
図5に示したスペーサー40bを用いて形成される連結装置であっても、上述した実施例の連結装置1と同様の効果を得ることができる。またこの場合、実施例の連結装置1と異なる操作トルクの大きさと、キャンセル機能の設定値とを設定することができる。
【0038】
また、上述した実施例の連結装置1では、第2歯車20とスペーサー40とが別体に形成されているが、本発明では、例えば
図6に示したように、第2歯車20とスペーサー40とが一体化されたような形状を有する歯車部材70を用いて連結装置が形成されていてもよい。この場合、
図6の歯車部材70は、第2歯車部71と、スペーサー部72とを有する。
【0039】
歯車部材70の第2歯車部71は、リブ24が設けられていないことを除いて実施例の第2歯車20と実質的に同じ形状を有する。スペーサー部72は、第2歯車部71から立ち上がる4つの柱部72aと、柱部72aの上端部を連結するリング部72bと、リング部72bの上面から突出するとともに第1歯車10に接触させる4つの接触部72cとを有する。接触部72cは、リング部72bの周方向において、隣接する2つの柱部72aの中間位置に配されている。スペーサー部72は、接触部72cを第1歯車10に接触させたときにリング部72bを撓ませるように弾性変形可能である。
【0040】
図6に示した歯車部材70を用いて形成される連結装置であっても、上述した実施例の連結装置1と同様の効果を得ることができる。またこの場合、実施例の連結装置1と異なる前記操作トルクの大きさと、前記キャンセル機能の設定値とを設定することができる。
【0041】
更に、本発明では、
図12を参照しながら後述するように、上述した実施例の第1歯車10及び第2歯車20に代えて、それぞれ歯部を備えない円環状の第1回転リング80及び第2回転リング90が、第1回転体及び第2回転体として連結装置2に設けられていてもよい。このような第1回転リング80及び第2回転リング90を有する連結装置2であっても、第1回転リング80及び第2回転リング90の一方を回転させる操作を行うときに、操作トルクを発生させる動力制御を容易に且つ安定して行うことができる。その結果、操作者に対し、連結装置2の操作感又は使用感を与えることが可能となる。
【0042】
次に、上述した実施例の連結装置(動力伝達装置)1が適用される具体的な実施形態として、連結装置1が風向調整装置100に適用される場合(第1適用例)について、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0043】
図7に示した風向調整装置100は、内部に空気が流通する空間が設けられたケース体101と、ケース体101の下流側開口部に設けられる複数の第1フィン102と、第1フィン102の上流側に隣接して設けられる複数の第2フィン103とを有する。この場合、上流側及び下流側とは、空気の流通方向における上流側及び下流側を意味する。
【0044】
複数の第1フィン102は、ケース体101の幅方向に沿って配されるとともに、ケース体101の高さ方向へ回動可能にケース体101に保持されている。また、複数の第1フィン102は、図示しない第1リンク部材によって、各第1フィン102の回転が連動するように互いに連結されている。
【0045】
複数の第2フィン103は、ケース体101の高さ方向に沿って配されるとともに、ケース体101の幅方向へ回動可能にケース体101に保持されている。また、複数の第2フィン103は、図示しない第2リンク部材によって、各第2フィン103の回転が連動するように互いに連結されている。
【0046】
第2フィン103の1つには、接続部材104が連結されている。接続部材104は、第2フィン103に接続される接続軸部104aと、接続軸部104aの上端部に一体的に形成される扇形歯車104bとを有する。この接続部材104の扇形歯車104bは、実施例の連結装置1の第2歯車20に噛み合わされており、第2歯車20から扇形歯車104bに回転力が伝達されることによって、複数の第2フィン103を連動させて回動させることができる。
【0047】
この風向調整装置100には、図示しないモーターが内蔵された駆動部105と、駆動部105の回転軸に取り付けられる外部歯車106と、外部歯車106に接続される実施例の連結装置1とが設けられている。外部歯車106は、連結装置1の第1歯車10に噛み合わされており、駆動部105の駆動力(回転力)が、外部歯車106を介して連結装置1の第1歯車10に入力される。また、駆動部105が停止しているときは、第1歯車10も回転しない停止状態で保持される。
【0048】
このような風向調整装置100において、駆動部105の駆動力によって第2フィン103を回動させる場合、駆動部105の駆動力が連結装置1の第1歯車10に入力されることによって、連結装置1では、第1歯車10を回転させ、また、第1歯車10とスペーサー40との間に生じる摩擦力でスペーサー40及び第2歯車20を第1歯車10と一体的に回転させることができる。これにより、第2歯車20の回転力が接続部材104の扇形歯車104bに伝達されるため、駆動部105の駆動によって、複数の第2フィン103を連動して幅方向(左右)に回動させることができる。
【0049】
一方、風向調整装置100では、駆動部105を停止させた状態(第1歯車10が回転しない状態)で、第2フィン103に接続された図示しない操作部を手動で操作することによって、複数の第2フィン103を連動して幅方向に回転させることもできる。具体的に説明すると、第2フィン103が手動で操作される場合、上述したように第1歯車10が回転しない状態で保持されるものの、手動操作によって、接続部材104を介して連結装置1の第2歯車20に回転力(操作トルク)が入力される。このとき、第2歯車20に入力される操作トルクが、第1歯車10とスペーサー40との間に生じる摩擦力よりも大きくなることによって、第2歯車20及びスペーサー40を第1歯車10に対して空転させることができるため、駆動部105の停止状態でも第2フィン103を手動で容易に回動させることが可能となる。
【0050】
また、このように駆動部105の停止状態で第2フィン103を手動で回動させる場合、スペーサー40が弾性部材によって形成されていることにより、第1歯車10に対するスペーサー40の静摩擦力から動摩擦力への摩擦力の変化を比較的小さくできる。このため、操作者が第2フィン103の手動による回動操作を開始するときに違和感を生じさせ難くすることができる。また、手動で第2フィン103を回動させるためには、摩擦力よりも大きな操作トルクが必要となるため、操作者に対し、第2フィン103の操作感を適切に与えることができる。更に、第2フィン103の回動を所望の向き(角度)で停止させたときには、第1歯車10とスペーサー40との間の摩擦力によって、第2フィン103の停止状態(第2フィン103の向き)を安定して保持できる。
【0051】
次に、実施例の連結装置(動力伝達装置)1がカップホルダー装置110に適用される場合(第2適用例)について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。
【0052】
図9に示したカップホルダー装置110は、カップ等の容器(不図示)が挿入されて保持されるホルダー本体111と、ホルダー本体111に挿入された容器を側方から押さえる上段の第1タブ112、中段の第2タブ114、及び下段の第3タブ116とを有する。また、第1タブ112~第3タブ116には、それぞれ、扇形歯車113が一体的に設けられている。
【0053】
このカップホルダー装置110では、第1タブ112~第3タブ116が、それぞれ、ホルダー本体111の高さ方向に直交する平面上で回動することによって、ホルダー本体111に挿入された図示しない容器を側面側から押さえて保持すること、また、第1タブ112~第3タブ116による容器の保持状態を解除することができる。
【0054】
カップホルダー装置110には、第1タブ112~第3タブ116に対し、図示しない駆動部と、駆動部の回転軸に取り付けられる外部歯車117と、外部歯車117に接続される実施例の連結装置1とがそれぞれ設けられている。この場合、便宜上、第1タブ112、第2タブ114、及び第3タブ116に対して設けられる連結装置1をそれぞれ第1連結装置1a、第2連結装置1b、及び第3連結装置1cと称する。また、第1連結装置1a、第2連結装置1b、及び第3連結装置1cは、それぞれ上下方向を反対向きにしてカップホルダー装置110に設置されている。
【0055】
このカップホルダー装置110では、第1タブ112~第3タブ116の各扇形歯車113が、第1連結装置1a~第3連結装置1cの各第2歯車20に噛み合わされている。第1連結装置1a~第3連結装置1cの各第1歯車10は、外部歯車117にそれぞれ噛み合わされており、図示しない各駆動部の駆動力(回転力)が、それぞれ外部歯車117を介して、第1連結装置1a~第3連結装置1cの各第1歯車10に入力される。また、各駆動部がそれぞれ停止しているときは、対応する各第1歯車10も回転しない停止状態で保持される。
【0056】
このようなカップホルダー装置110においては、ホルダー本体111に容器が挿入された状態で、それぞれの駆動部を駆動させることによって、第1連結装置1a~第3連結装置1cを介して、第1タブ112~第3タブ116を容器に近付く方向又は容器から離れる方向に回動させることができる。従って、ホルダー本体111に容器が挿入された状態で、第1タブ112~第3タブ116を容器に近付く方向に回動させることによって、第1タブ112~第3タブ116で容器をホルダー本体111内で動かないように(又は動き難いように)自動的に安定して押さえることができる。
【0057】
また、例えば第1タブ112~第3タブ116が容器を接触した状態で、各駆動部から、第1連結装置1a~第3連結装置1cを介して、第1タブ112~第3タブ116に容器に近付く方向の回転力が入力される場合には、第1連結装置1a~第3連結装置1cのそれぞれの上述した各キャンセル機能によって、第1歯車10とスペーサー40との間で動力の伝達を遮断できる。これにより、第1連結装置1a~第3連結装置1cのそれぞれに大きな負荷がかかることを防いで、第1連結装置1a~第3連結装置1cに破損等が生じることを抑制できる。
【0058】
更に、例えば第1タブ112~第3タブ116が容器を押さえている状態で、各駆動部の駆動が停止したときには、第1連結装置1a~第3連結装置1cのそれぞれにおける第1歯車10とスペーサー40との間の摩擦力によって、第1タブ112~第3タブ116のそれぞれの位置を安定して保持できる。このため、第1タブ112~第3タブ116で容器を押さえている状態を安定して維持できる。
【0059】
一方、ホルダー本体111内で容器が第1タブ112~第3タブ116で押さえられている状態で、各駆動部の駆動によって第1タブ112~第3タブ116を容器から離れる方向に回動させることによって、容器が抑えられている状態を自動的に解除できる。これにより、容器をホルダー本体111から容易に取り出すことができる。
【0060】
また、このカップホルダー装置110では、各駆動部を停止させた状態でも、第1タブ112~第3タブ116をそれぞれ手動で操作することによって、第2歯車20及びスペーサー40を第1歯車10に対して空転させることができるため、第1タブ112~第3タブ116をそれぞれ容易に回動させることが可能となる。特にこの場合、第1タブ112~第3タブ116を回動させるためには、第1歯車10とスペーサー40との間の摩擦力よりも大きな操作トルクが必要となるため、操作者に操作感を適切に与えることができる。
【0061】
次に、実施例の連結装置1における第1歯車10及び第2歯車20に代えて、歯部を備えない円環状の第1回転リング80及び第2回転リング90が設けられた変形例に係る連結装置2が、コンソールボックス120に適用される場合(第3適用例)について、
図11及び
図12を参照しながら説明する。
【0062】
図11に示したコンソールボックス120は、収容部を有するコンソール本体部121と、コンソール本体部121に開閉可能に配される蓋部(アームレスト)122と、コンソール本体部121及び蓋部122を接続するヒンジ部123とを有する。ヒンジ部123は、コンソール本体部121に固定されるシャフト部124と、シャフト部124に固定される変形例の連結装置2と、連結装置2を覆うカバー部125とを有する。また、カバー部125は蓋部122に固定されており、蓋部122とともに回動するように形成されている。
【0063】
変形例の連結装置2は、支持部30と、支持部30に回転可能に支持される第1回転リング80及び第2回転リング90と、第1回転リング80及び第2回転リング90間に配されるスペーサー40cと、押付部材(コイルスプリング)50aと、支持部30の先端部に係合する押さえ部60aとを有する。なお、コンソールボックス120では、第1回転リング80及び第2回転リング90を有する連結装置2に代えて、第1歯車10及び第2歯車20を有する実施例の連結装置1を用いてもよい。
【0064】
連結装置2において、第1回転リング80は、不図示の保持部で回転しないように押さえられていてもよい。第2回転リング90は、押さえ部60aに固定されており、押さえ部60aは、カバー部125と一体的に形成されている。なお、例えば連結装置2に代えて実施例の連結装置1を用いる場合には、カバー部125は、カバー部125に設けられる図示しない歯車を介して連結装置1の第2歯車20に接続されていてもよい。
【0065】
連結装置2のスペーサー40cは、第1回転リング80に対して回転不能に設けられている。スペーサー40cの第2回転リング90に接触する接触部には、円周状の凹溝部47が設けられている。第2回転リング90には、スペーサー40cの凹溝部47に収容されて接触する円周状の凸条部91が設けられている。
【0066】
変形例の連結装置2では、押付部材50aで第2回転リング90がスペーサー40cに押し付けられることにより、第2回転リング90の凸条部91がスペーサー40cの凹溝部47に収容されて接触した状態を安定して維持できる。また、第2回転リング90とスペーサー40cとの間に摩擦力を生じさせている。この変形例の連結装置2では、第2回転リング90に作用するトルクが当該摩擦力よりも大きくなった場合、第2回転リング90をスペーサー40cに対して空転させることができる。
【0067】
このようなコンソールボックス120によれば、蓋部122を開閉するときに、第2回転リング90をスペーサー40cに対して空転させることができるため、蓋部122を容易に開閉することができる。またこのように蓋部122の開閉操作を行うときには、前記摩擦力よりも大きな操作トルクが必要となるため、操作者に操作感を適切に与えることができる。更に、蓋部122の開閉操作が停止したときには、第2回転リング90とスペーサー40c間の摩擦力によって、蓋部122をその停止位置で保持することも可能となる。