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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152317
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】記録媒体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 21/00 20060101AFI20221004BHJP
   B41J 3/54 20060101ALI20221004BHJP
   B41M 5/26 20060101ALN20221004BHJP
   B41M 5/52 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
B41J3/54 B
B41M5/26
B41M5/52 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055039
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和美
(72)【発明者】
【氏名】黒木 広幸
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 知之
【テーマコード(参考)】
2C055
2C187
2H111
【Fターム(参考)】
2C055KK07
2C187AC05
2C187AC07
2C187AE11
2C187AG15
2C187BF08
2C187BG06
2C187GA05
2C187GB01
2C187GD04
2H111CA03
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
(57)【要約】
【課題】レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画とにより形成される印刷物の品質を向上させること。
【解決手段】記録媒体製造方法は、画像処理装置が、元画像から、レーザーマーキング用階調データおよびカラー熱転写用階調データを生成する第1ステップ(ステップS10)と、熱転写カラープリンタが、カラー熱転写用階調データに基づき、記録媒体のコア基材に積層された第1発色層上にカラー熱転写によるカラー印画を行うことで第2記録情報である第2発色層を形成する第2ステップ(ステップS30)と、レーザーマーキング装置が、レーザーマーキング用階調データに基づき、第1発色層にレーザーマーキングによる白黒印画を行うことで第1記録情報を形成する第3ステップ(ステップS40)と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置が、元画像から、レーザーマーキング用階調データおよびカラー熱転写用階調データを生成する第1ステップと、
熱転写カラープリンタが、前記カラー熱転写用階調データに基づき、記録媒体のコア基材に積層された第1発色層上にカラー熱転写によるカラー印画を行うことで第2記録情報である第2発色層を形成する第2ステップと、
レーザーマーキング装置が、前記レーザーマーキング用階調データに基づき、前記第1発色層にレーザーマーキングによる白黒印画を行うことで第1記録情報を形成する第3ステップと、
を有し、
前記第1ステップにおいて、
前記画像処理装置は、
画素ごとに前記レーザーマーキング用階調データを生成し、
前記カラー熱転写用階調データの生成では、前記元画像の全域をカバーするように複数画素を含む領域を複数設定し、前記領域ごとにそれぞれの色の濃度を設定し、設定した前記濃度に応じて印画ドットの選択を行う、
記録媒体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体製造方法において、
前記画像処理装置は、前記第1発色層の特性に応じて前記レーザーマーキング用階調データを調整する、
記録媒体製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の記録媒体製造方法において、
前記画像処理装置は、前記レーザーマーキング用階調データと濃度との関係に基づき、前記レーザーマーキング用階調データの変化と前記濃度の変化との関係がリニアに近づくように前記レーザーマーキング用階調データを調整する、
記録媒体製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の記録媒体製造方法において、
前記画像処理装置は、
色サンプルの複数段階の色のそれぞれに対応する前記レーザーマーキング用階調データを調整し、
前記複数段階の色以外の色に対応する前記レーザーマーキング用階調データについては、近隣のそれぞれの段階の色の調整済の前記レーザーマーキング用階調データを用いた補間処理により前記レーザーマーキング用階調データを調整する、
記録媒体製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の記録媒体製造方法において、
前記第1ステップと前記第2ステップとの間に、
前記画像処理装置がレーザー光の照射に係るパラメータの調整を行う第4ステップを有する、
記録媒体製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の記録媒体製造方法において、
前記パラメータは、レーザーパワー、画素間隔、周波数、および印画スピードのいずれかを含む、
記録媒体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートやセキュリティカード等の記録媒体には、改ざんを防止する構成を有するものがある。例えば、特許文献1には、レーザー発色性基材と不可視インキとを用いた改ざん防止層を設け、改ざんを検知しやすくした個人認証用偽造防止媒体が開示されている。
【0003】
また、記録媒体には、偽造を防止する構成を有するものがある。例えば特許文献2には、機能性フィルム層よりも下層側のレーザー発色層への印刷品質を向上できる情報記録媒体等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/050223号
【特許文献2】特開2019-038168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体に形成される記録情報(印刷物)には、偽造防止のため、レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画とを重ねたものがある。しかしながら、熱転写によるカラー印画を行う際に位置ずれがあるとモアレが発生することがある。また、レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画との間で発色特性が異なるため、白黒印画とカラー印画とを合成した記録情報の色合いが不自然になることがある。
【0006】
そこで、本発明は、レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画とにより形成される記録情報の印画品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0008】
本発明の代表的な実施の形態による記録媒体製造方法は、画像処理装置が、元画像から、レーザーマーキング用階調データおよびカラー熱転写用階調データを生成する第1ステップと、熱転写カラープリンタが、カラー熱転写用階調データに基づき、記録媒体のコア基材に積層された第1発色層上にカラー熱転写によるカラー印画を行うことで第2記録情報である第2発色層を形成する第2ステップと、レーザーマーキング装置が、レーザーマーキング用階調データに基づき、第1発色層にレーザーマーキングによる白黒印画を行うことで第1記録情報を形成する第3ステップと、を有する。第1ステップにおいて、画像処理装置は、画素ごとにレーザーマーキング用階調データを生成し、カラー熱転写用階調データの生成では、元画像の全域をカバーするように複数画素を含む領域を複数設定し、領域ごとにそれぞれの色の濃度を設定し、設定した濃度に応じて印画ドットの選択を行う。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0010】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画とにより形成される記録情報の印画品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る記録媒体の構成の一例を示す図である。
図2】記録媒体の構成の他の例を示す断面図である。
図3】記録媒体に記録情報を形成する記録情報形成システムの構成の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る記録媒体の製造方法の一例を示すフロー図である。
図5】元画像から記録情報形成用の階調データを生成する処理の一例を示すフロー図である。
図6】レーザーマーキング用階調データの調整方法の一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る記録媒体の製造方法の一例を示す工程図である。
図8】記録情報の形成方法の具体例を示す図である。
図9図8の記録画像の拡大画像を示す図である。
図10】本発明の実施の形態2に係る記録媒体の製造方法の一例を示すフロー図である。
図11】本発明の実施の形態2に係る記録媒体の製造方法の一例を示す工程図である。
図12】本発明の実施の形態3に係る記録媒体の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する各実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、実施例において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0013】
<記録媒体の構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る記録媒体の構成の一例を示す図である。図1(a)は記録媒体10の平面図であり、図(b)は記録媒体10の断面図である。なお、図1(b)には、カラー印画の記録情報が形成された領域の断面図が示されている。
【0014】
記録媒体10は、例えば、パスポートやセキュリティカード等であるが、これらに限定されるものではなく、例えば会員証や診察券等でもよい。記録媒体10には、図1(a)に示すように、例えば所定の文字、記号、写真等の記録情報20(20a、20b、20c等)が形成される。
【0015】
図1(b)に示すように、記録媒体10は、例えば、コア基材1、第1発色層2、第1保護層3、第2発色層4(第2記録情報20B)、第2保護層5等の各層が積層された構成となっている。なお、図1(b)では、コア基材1の一方の面にのみ各層が積層されているが、コア基材1の一方の面(第1の面)と反対側の他方の面(第2の面)にも、これら各層が積層されてもよい。
【0016】
記録情報20が、例えば文字や記号等のような黒色や灰色等の無彩色のみで構成される場合、レーザーマーキングによる第1発色層2への白黒印画が行われる。なお、ここで言う白黒印画とは、いわゆるグレースケールの印画も含む。
【0017】
一方、記録情報20が、例えば写真等のようなカラーである場合、レーザーマーキングによる第1発色層2への白黒印画と、熱転写によるカラー印画とが行われる。このように、第1発色層2に形成される第1記録情報20Aと、第2発色層4である第2記録情報20Bとを重ねることで、カラーの記録情報20が形成される。
【0018】
コア基材1は、例えば樹脂を主成分として構成されたシート状の基材である。コア基材1を構成する樹脂として、例えば、ポリカーボネート(PC)、植物由来ポリカーボネート(バイオPC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂等が用いられる。また、コア基材1の膜厚は、例えば10~500μmが好適である。
【0019】
第1発色層2は、レーザーマーキングによる白黒印画が行われる層である。すなわち、第1発色層2にレーザー光が照射されることで黒色や灰色等の無彩色の白黒印画が行われる。
【0020】
第1発色層2は、例えば、前述した樹脂に、照射されるレーザー光を吸収するレーザー光吸収剤が添加材として添加されたものである。レーザー光吸収剤は、例えばレーザー光を吸収して熱エネルギーに変換できる材料である。レーザー光吸収剤がレーザー光を吸収すると、熱エネルギーにより周囲の樹脂が炭化し、樹脂が黒色や灰色等の色に発色したレーザーマーキング部2aが形成される。そして、レーザーマーキング部2aと、レーザー光が照射されないレーザー非照射領域との組み合わせにより、白黒画像の第1記録情報20Aが形成される。
【0021】
レーザー光吸収剤として、例えば、染料と珪素含有無機化合物、珪素を含有する染料、金属珪酸塩等の放射線吸収物質、水和アルミナ等の無機質充填剤、燐酸塩を含む顔料、非白色のチタン酸金属塩、黒色有機染料、非黒色の無機鉛化合物、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、金属水酸化物または/および金属含水化合物と着色剤を含有したもの等が挙げられる。
【0022】
レーザー光吸収剤は、レーザー光の波長(波長域)と樹脂との相性等により適宜選択される。また、レーザー光吸収剤の添加量は、エネルギーの吸収効率、第1発色層2における樹脂の物性への影響等を考慮し適宜設定される。
【0023】
レーザー光として、例えば、ルビーレーザー、チタンサファイアレーザー、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーは赤外)等の固体レーザー、炭酸ガスレーザー(赤外)やヘリウムネオンレーザー(赤色)、アルゴンイオンレーザー(主に青色または緑色)、エキシマレーザー(主に紫外)等のガスレーザー、半導体レーザー等が用いられる。
【0024】
図2は、記録媒体の構成の他の例を示す断面図である。図2は、第1発色層2の構成が異なる点以外は図1(b)と同じである。図2の第1発色層2は、コア基材1側から黒色層2mと隠蔽層2nとが積層された構成となっている。黒色層2mは、前述した樹脂に、例えばカーボンブラックやグラファイト等の黒色のレーザー光吸収剤が添加されたものである。
【0025】
隠蔽層2nは、公知のバインダー樹脂に酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等の白色顔料を分散させたインキを黒色層2mに積層塗工させることで形成される。
【0026】
第1保護層3は、第1発色層2を保護する層である。第1保護層3は、レーザー光を透過する透明な素材で構成される。
【0027】
第2発色層4は、熱転写によるカラー印画により形成される層である。例えば、第1保護層3に重ねて配置されたカラー印画用のインクリボンを、サーマルヘッドやヒートローラー等の公知の熱源を用いて加熱することで、第1保護層3上に第2発色層4が熱転写される。形成された第2発色層4は、前述したカラーの第2記録情報20Bとなる。そして、第1記録情報20Aと第2記録情報20Bとによりカラーの記録情報20が形成される。
【0028】
第2保護層5は、第2保護層5(第2記録情報20B)を保護する層である。第2保護層5は、透明な素材で構成される。
【0029】
なお、記録媒体10は、これら各層の他にも、例えばホログラムや回折格子を有する光学デバイス層等を備えてもよい。
【0030】
<記録情報形成システム>
次に、記録媒体10の製造方法について説明する。まず、白黒印画およびカラー印画を行うことで記録媒体10に記録情報を形成するための記録情報形成システムについて説明する。
【0031】
図3は、記録媒体に記録情報を形成する記録情報形成システムの構成の一例を示す図である。図3の記録情報形成システム500は、画像処理装置100、レーザーマーキング装置200、熱転写カラープリンタ300を含む。画像処理装置100は、レーザーマーキング装置200および熱転写カラープリンタ300との間で印画用の階調データ等の各種情報の送受信を行う。なお、レーザーマーキング装置200と熱転写カラープリンタ300とが接続されてもよい。
【0032】
画像処理装置100は、記録情報20を生成するための元画像から、レーザーマーキング用の階調データ、およびカラー熱転写用の階調データをそれぞれ生成する。画像処理装置100は、図3に示すように、例えば、コンピュータ101、メモリ102、記憶装置103等を備えている。画像処理装置100は、これらの構成要素を有するものであれば特に制限されるものではない。したがって、画像処理装置100として、例えばパソコン等を使用することが可能である。
【0033】
記憶装置103は、例えば、画像処理装置100を動作させる基本プログラム、階調データ生成用の階調データ生成プログラム等の各種プログラムを記憶する。また、記憶装置103は、外部から入力された元画像や、生成された階調データ等を記憶してもよい。
【0034】
メモリ102は、例えば、記憶装置103から読み出されたプログラム、コンピュータ101の演算結果等の各種情報を一時的に保持する。
【0035】
コンピュータ101は、例えばCPU等のプロセッサを備えている。コンピュータ101は、記憶装置103から読み出され、メモリ102に保持された各種プログラムを読み出し実行することで、例えば階調データを生成するブロック等、各プログラムの機能を発揮する機能ブロックをコンピュータ101上に実現させる。なお、コンピュータ101が実行する処理には、コンピュータ101上に実現される機能ブロックが実行する処理が含まれる。
【0036】
レーザーマーキング装置200は、画像処理装置100で生成されたレーザーマーキング用階調データに基づきレーザーマーキング加工による白黒印画を行う。熱転写カラープリンタ300は、画像処理装置100で生成されたカラー熱転写用階調データに基づきカラー熱転写によるカラー印画を行う。
【0037】
<記録媒体の製造方法>
次に、記録媒体10の製造方法について具体的に説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る記録媒体の製造方法の一例を示すフロー図である。図4では、情報媒体の製造方法として、ステップS10~S40が示されている。
【0038】
<<階調データ生成>>
ステップS10において、画像処理装置100のコンピュータ101は、外部から取得した元画像に対する処理を行い、写真等の元画像から、レーザーマーキング用の階調データ、およびカラー熱転写用の階調データをそれぞれ生成する。
【0039】
図5は、元画像から記録情報形成用の階調データを生成する処理の一例を示すフロー図である。図4には、色データの生成処理として、ステップS11~S15が例示されている。
【0040】
ステップS11において、コンピュータ101は、元画像に対するRGBの色分解を行い、画素ごとに各色の第1階調データ(R1、G1、B1)を取得する。第1階調データ(R1、G1、B1)は、メモリ102に保持されてもよいし、記憶装置103に記憶されてもよい。
【0041】
次に、ステップS12において、コンピュータ101は、ステップS11で生成したRGBの第1階調データ(R1、G1、B1)をCMYKの第2階調データ(C、M、Y、K)に変換する。具体的には、コンピュータ101は、例えば以下に示す階調データ変換式(式1~式4)を用いて、第1階調データ(R1、G1、B1)を第2階調データ(C、M、Y、K)に変換する。なお、式4は、K成分の階調データがCMKの各階調データのうちの最小値であることを示している。第2階調データ(C、M、Y、K)は、メモリ102に保持されてもよいし、記憶装置103に記憶されてもよい。
【0042】
C=((255-R1-K)/(255-K))×255 ・・・(式1)
M=((255-G1-K)/(255-K))×255 ・・・(式2)
Y=((255-B1-K)/(255-K))×255 ・・・(式3)
K=min(255-R1、255-G1、255-B1) ・・・(式4)
次に、ステップS13において、コンピュータ101は、カラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)を生成する。熱転写カラープリンタごとに印画特性が異なるため、ステップS13において、プリンタの特性に応じて各色の濃度(階調)を調整している。
【0043】
一方で、熱転写カラープリンタによるカラー印画では、ドットごとに濃度を調整することができないため、面積階調により各色の濃度が調整される。コンピュータ101は、元画像の全域をカバーするように複数画素を含む領域(例えば16画素×16画素のマトリクス)を複数設定し、領域ごとに各色の濃度を設定する。そして、コンピュータ101は、設定した濃度に応じて印画ドットの選択を行う。
【0044】
そして、コンピュータ101は、色ごとに選択した各ドットに対し、CMY成分の第2階調データ(C、M、Y)、および、以下に示す階調データ変換式(式5~式7)を用いてカラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)を生成する。カラー熱転写用階調データは、メモリ102に保持されてもよいし、記憶装置103に記憶されてもよい。
【0045】
Rc=255-Y ・・・(式5)
Gc=255-M ・・・(式6)
Bc=255-C ・・・(式7)
なお、コンピュータ101は、色ごとに、全ドットの階調データを含めたデータをカラー熱転写用階調データとして生成してもよいし、全色の全ドットの階調データを含めたデータをカラー熱転写用階調データとして生成してもよい。これらのカラー熱転写用階調データは、CMY成分のビットマップデータとなる。
【0046】
次に、ステップS14において、コンピュータ101は、画素ごとに、レーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)を生成する。なお、レーザーマーキングによる白黒印画では、画素ごとに濃度(階調)を調整することが可能である。
【0047】
具体的には、コンピュータ101は、例えば、K成分の第2階調データ、および、以下に示す階調データ変換式(式8~式10)を用いてレーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)を生成する。以下に示すように、レーザーマーキング用階調データの各成分(Rl、Gl、Bl)は同じ値である。レーザーマーキング用階調データは、メモリ102に保持されてもよいし、記憶装置103に記憶されてもよい。
【0048】
Rl=255-K ・・・(式8)
Gl=255-K ・・・(式9)
Bl=255-K ・・・(式10)
なお、コンピュータ101は、色ごとに、全画素の階調データを含めたデータをレーザーマーキング用階調データとして生成してもよいし、全画素の全色の階調データを含めたデータをレーザーマーキング用階調データとして生成してもよい。これらのレーザーマーキング用階調データは、K成分のビットマップデータとなる。
【0049】
次に、ステップS15において、コンピュータ101は、レーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)の調整を行う。レーザーマーキング用階調データの調整は、印画材(例えば第1発色層2)の特性に応じて行われる。
【0050】
コンピュータ101は、レーザーマーキング用階調データの調整は、調整前のレーザーマーキング用階調データと濃度との関係に基づき、階調データの変化と濃度の変化とが自然な関係になるように行われる。具体的には、レーザーマーキング用階調データの調整は、階調データの変化と濃度の変化との関係がリニアに近づくように行われる。
【0051】
コンピュータ101は、印画材料ごとに、調整前のレーザーマーキング用階調データと調整後のレーザーマーキング用階調データとを対応付けるレーザーマーキング用階調データ変換テーブルLUTを事前に作成し、記憶装置103へ記憶させておく。なお、レーザーマーキング用階調データ変換テーブルLUTは、別の装置で生成されたものでもよい。
【0052】
図6は、レーザーマーキング用階調データの調整方法の一例を示す図である。図6(a)は、調整前のレーザーマーキング用階調データと濃度との関係を示す図である。図6(b)は、調整後のレーザーマーキング用階調データと濃度との関係を示す図である。なお、濃度は、例えば黒色の濃度であり、濃度の数値が高くなると黒色が強くなるものとする。図6(c)は、レーザーマーキング用階調データ調整用の色サンプルである。図6(c)では、白色側から順に第1段階~第11段階までの複数段階の色が示されている。
【0053】
図6(a)に示すように、レーザーマーキング用階調データ調整前では、階調データと濃度との関係がリニアからかなり外れている。例えば、階調データが0~100程度では、濃度変化が小さい。階調データが100~200程度では、濃度が急激に上昇している。そして、それ以上の階調データでは、再び濃度変化が小さくなっている。一方、レーザーマーキング用階調データ調整後は、図6(b)に示す階調データと濃度との関係が、リニアに近づいている。
【0054】
このようなレーザーマーキング用階調データの調整方法として、例えばガンマ変換等が用いられる。コンピュータ101は、例えば図6(a)に示す11箇所の階調データP1~P11に対するガンマ変換をそれぞれ行い、調整後のレーザーマーキング用階調データP1’~P11’をそれぞれ生成する。なお、変換後の階調データP1’~P11’が、図6(b)にそれぞれ示されている。すなわち、これらの階調値P1’~P11’は、図6(c)に示す色サンプルの第1段階から第11段階までの各色にそれぞれ対応している。このように、ガンマ変換により、同一段階の色同士で階調データの調整が行われる。
【0055】
一方、これら11段階以外の色に対応する階調データについては、例えば、近隣の各段階の色の調整済のレーザーマーキング用階調データを用いた補間処理により調整される。
【0056】
そして、コンピュータ101は、調整前後の各階調データを対応付けたレーザーマーキング用階調データ変換テーブルLUTを生成する。生成されたレーザーマーキング用階調データ変換テーブルLUTは、例えば記憶装置103に記憶される。
【0057】
これらステップS11~S15により、レーザーマーキング用階調データ、およびカラー熱転写用の階調デーがそれぞれ生成される。なお、ステップS13~S15の順序は、適宜変更可能である。
【0058】
<<白黒印画の粒状性の調整>>
ステップS10で生成されたレーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)を用いて白黒印画が行われても、白黒印画の粒子が粗くなる場合があり得る。粒子が粗いと、解像度の低下や、カラー印画によるドットとの干渉によるモアレ等が発生し、印刷物である記録情報の印画品質が低下する可能性がある。
【0059】
そこで、ステップS20では、白黒印画の粒状性の調整が行われる。粒状性の調整方法として、コンピュータ101は、例えばレーザー光の照射に係る各種パラメータの調整を行う。調整対象のパラメータとしては、例えば、レーザーパワー(レーザー出力)、画素間隔、周波数(周期)、印画スピード(スキャンスピード等)が挙げられる。調整された各種パラメータは、対応するレーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)と関連付けて記憶装置103等に記憶される。白黒印画の粒状性の調整は、白黒印画の粒状性が例えば銀塩写真の粒状性と同等になるように行われる。
【0060】
なお、図4の例では、ステップS10とステップS30との間にステップS20が実行される場合が示されているが、これに限定されるものではない。すなわち、ステップS20は、ステップS10の後ステップS40の前に実行されればよい。
【0061】
<<カラー印画>>
次に、ステップS30において、熱転写によるカラー印画が行われる。図7は、本発明の実施の形態1に係る記録媒体の製造方法の一例を示す工程図である。図7には、図4のステップS30、S40に対応する各工程の断面図が示されている。画像処理装置100は、カラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)等を熱転写カラープリンタ300へ出力する。なお、これらの情報は、事前に熱転写カラープリンタ300に入力されてもよい。また、これらの情報は、例えばネットワークに接続されたサーバ(図示は省略)から熱転写カラープリンタ300へ供給されてもよい。
【0062】
記録媒体10の第1保護層3上に、カラー熱転写用のインクリボンRIBが配置される。そして、熱転写カラープリンタ300は、カラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)等に基づき、サーマルヘッドやヒートローラー等の熱源を用いてドットごとにインクリボンRIBを加熱することで(図7(a)~図7(b))、第1保護層3上に第2発色層4を形成する(図7(c))。この第2発色層4は、カラー画像の第2記録情報20Bである。そして、カラー印画が終了すると、インクリボンRIBは除去され、第2発色層4上に第2保護層5が形成される(図7(d))。
【0063】
<<白黒印画>>
次に、ステップS40において、レーザーマーキングによる白黒印画が行われる。画像処理装置100は、記録媒体10に形成する記録情報に対応するレーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)、対応する調整済み各種パラメータ等の各種情報をレーザーマーキング装置200へ出力する。なお、これらの情報は、事前にレーザーマーキング装置200に入力されてもよい。また、これらの情報は、例えばネットワークに接続されたサーバ(図示は省略)からレーザーマーキング装置200へ供給されてもよい。
【0064】
レーザーマーキング装置200は、レーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)、調整済み各種パラメータに基づき、記録媒体10に向けてレーザー光LAZを照射する。これにより、第1発色層2のレーザー光LAZが照射された領域に、レーザーマーキング部2aが形成される。そして、レーザーマーキング部2aと、レーザー光LAZが照射されないレーザー非照射領域との組み合わせにより、第1発色層2に白黒画像の第1記録情報20Aが形成される(図7(e))。なお、本実施の形態では、図7(e)に示すように、レーザー光LAZは、第2発色層4を介して第1発色層2へ照射される。
【0065】
レーザー光LAZの照射が終了すると、記録情報20の形成処理が完了する(図7(f))。これらの工程により、記録媒体が製造される。
【0066】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、ステップS10において、画像処理装置100は、画素ごとにレーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)を生成し、カラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)の生成では、元画像の全域をカバーするように複数画素を含む領域を複数設定し、領域ごとにそれぞれの色の濃度を設定し、設定した濃度に応じて印画ドットの選択を行う。
【0067】
この構成によれば、白黒印画とカラー印画とで階調データの生成方法が異なり、レーザーマーキングによる白黒印画と熱転写によるカラー印画とにより形成される記録情報の印画品質を向上させることが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、画像処理装置100は、レーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)と濃度との関係に基づき、レーザーマーキング用階調データの変化と濃度の変化との関係がリニアに近づくように前記レーザーマーキング用階調データを調整する。この構成によれば、印画材(例えば第1発色層2)の特性に応じて、レーザーマーキング用階調データを適切な値に調整することが可能となる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、画像処理装置は、色サンプルの複数段階の色のそれぞれに対応するレーザーマーキング用階調データを調整し、複数段階の色以外の色に対応するレーザーマーキング用階調データについては、近隣のそれぞれの段階の色の調整済のレーザーマーキング用階調データを用いた補間処理によりレーザーマーキング用階調データを調整する。この構成によれば、レーザーマーキング用階調データの調整に係る演算量を減らすことが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、画像処理装置100は、レーザー光LAZの照射に係るパラメータ(例えば、レーザーパワー、画素間隔、周波数、および印画スピード)の調整を行う。この構成によれば、白黒印画の粒状性を調整して粒子が目立たなくすることができる。これにより、カラー印画のドットの干渉によるモアレの発生を抑えることが可能となる。
【0071】
[実施例]
ここで、本実施の形態に係る実施例を説明する。図8は、記録情報の形成方法の具体例を示す図である。図8(a)は、白黒印画により第1発色層2に形成される第1記録情報20Aの具体例である。図8(b)は、カラー印画により第1保護層3上に形成される第2記録情報20Bの具体例である。これらの記録情報(20A、20B)は、元画像から生成される各階調データ等に基づいて形成される。なお、図面では図8(b)が白黒表示されているが、実際にはカラー表示である。そして、図8(c)は、第1記録情報20Aと、第2記録情報20Bとを重ねることで形成されるカラーの記録情報20である。
【0072】
図9は、図8の記録画像の拡大画像を示す図である。図9(a)は、図8(b)の拡大画像を示している。図9(a)には、粒状性が調整された白黒印画が示されている。図9(a)に示すように、パラメータを調整することで、白黒印画を拡大表示しても粒子が目立たなくなっている。
【0073】
図9(b)は、図8(c)の人物の目およびその付近を拡大表示した図である。図9(c)は、図9(b)の目をさらに拡大した図である。図9(b)、図9(c)の拡大図では、カラー印画のドットが見えているが、粒状性を調整した白黒印画では粒子がほとんど見えていない。したがって、このような記録情報20であれば、カラー印画のドットと、白黒印画の粒子とが干渉せず、記録情報の印画品質が向上していることがわかる。
【0074】
なお、図8図9は、財団法人日本規格協会より発行されている「高精細カラーディジタル標準画像データ」に公開されている「ISO/JIS-SCIDサンプル」の識別番号「N1」の画像を元画像に用いて作成したものである。また、図8に添えられた「ISO 400」は、元画像の解像度を示すものである。解像度の表示は、当該画像の使用に際し要請されているものであり、当該表示が本願の範囲を制限するものではない。
【0075】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係る記録媒体の製造方法の一例を示すフロー図である。図10に示すように、本実施の形態では、白黒印画の工程とカラー印画の工程との順序が入れ換わっている。
【0076】
<<白黒印画>>
次に、ステップS40において、レーザーマーキングによる白黒印画が行われる。図11は、本発明の実施の形態2に係る記録媒体の製造方法の一例を示す工程図である。図11には、図10のステップS40、S30に対応する各工程の断面図が示されている。
【0077】
レーザーマーキング装置200は、レーザーマーキング用階調データ(Rl、Gl、Bl)、調整済み各種パラメータに基づき、記録媒体10に向けてレーザー光LAZを照射する。これにより、レーザーマーキング装置200は、第1発色層2のレーザー光LAZが照射された領域にレーザーマーキング部2aを形成する。そして、レーザーマーキング部2aと、レーザー光LAZが照射されないレーザー非照射領域との組み合わせにより、第1発色層2に白黒画像の第1記録情報20Aが形成される(図11(a)~図11(b))。なお、本実施の形態では、カラー印画の前に白黒印画が行われるので、図11(b)に示すように、レーザー光LAZは、第2発色層4を介することなく第1発色層2へ照射される。
【0078】
そして、レーザー光LAZの照射が終了すると、第1発色層2上に第1保護層3が形成される(図11(c))。なお、レーザー光LAZの照射は、第1発色層2の上に第1保護層3が形成された後に行われてもよい。
【0079】
<<カラー印画>>
次に、ステップS30において、熱転写によるカラー印画が行われる。まず、カラー熱転写用のインクリボンRIBが記録媒体10の第1保護層3上に配置される(図11(d))。そして、熱転写カラープリンタ300は、カラー熱転写用階調データ(Rc、Gc、Bc)等に基づき、サーマルヘッドやヒートローラー等の熱源を用いてドットごとにインクリボンRIBを加熱することで、第1保護層3上に第2発色層4(第2記録情報20B)を形成する(図11(e))。そして、カラー印画が終了すると、インクリボンRIBは除去され、第2発色層4上に第2保護層5が形成される(図11(f))。
【0080】
カラー印画が終了すると、記録情報20の形成処理が完了する。これらの工程により、記録媒体が製造される。
【0081】
本実施の形態においても、前述の実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0082】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図12は、本発明の実施の形態3に係る記録媒体の構成の一例を示す断面図である。図12に示すように、本実施の形態の記録媒体10Aでは、第1発色層2と第2発色層4(第2記録情報20B)の積層順序が入れ換わっている。前述の実施の形態1、2とは異なる。
【0083】
なお、図12では、第1保護層3および第2保護層5の積層順序も併せて入れ換えているが、このような構成に限定されるものではない。
【0084】
記録媒体10Aへの記録情報20の形成は、前述したカラー印画の工程(ステップS30)および白黒印画の工程(ステップS40)により行われる。
【0085】
本実施の形態においても、前述の実施の形態1、2と同様の効果が得られる。
【0086】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0087】
2…第1発色層、4…第2発色層、10、10A…記録媒体、20…記録情報、20A…第1記録情報、20B…第2記録情報、100…画像処理装置、200…レーザーマーキング装置、300…熱転写カラープリンタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12