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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152324
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電装品、及び電装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/09 20060101AFI20221004BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H05K1/09 A
H05K3/12 610B
H05K1/09 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055051
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】平林 辰雄
【テーマコード(参考)】
4E351
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351AA16
4E351CC06
4E351DD04
4E351EE11
4E351EE15
4E351EE16
4E351EE27
4E351GG09
5E343AA12
5E343AA33
5E343BB12
5E343BB14
5E343BB24
5E343BB57
5E343BB72
5E343BB77
5E343DD02
5E343DD03
5E343DD12
5E343DD33
5E343DD43
5E343ER13
5E343ER16
5E343ER33
5E343ER39
5E343GG02
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】銅によって構成された配線パターンを備える電装品とその製造方法を提供する。
【解決手段】回路部材と、前記回路部材に一体化されている樹脂部材とを備え、前記回路部材は、絶縁性樹脂によって構成されている基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備え、前記配線パターンは、前記基材フィルムの上に形成された配線部と、前記配線部の表面に形成されためっき層とを備え、前記配線部は、複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含み、前記めっき層は、銅によって構成されている、電装品。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部材と、
前記回路部材に一体化されている樹脂部材とを備え、
前記回路部材は、
絶縁性樹脂によって構成されている基材フィルムと、
前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備え、
前記配線パターンは、
前記基材フィルムの上に形成された配線部と、
前記配線部の表面に形成されためっき層とを備え、
前記配線部は、
複数の銅粒子と、
熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、
酸化防止剤とを含み、
前記めっき層は、銅によって構成されている、
電装品。
【請求項2】
前記電装品に対して、装飾性、電磁気的特性、機械的特性、及び化学的特性の少なくとも一つを付与する追加部材を備え、
前記追加部材は、前記回路部材及び前記樹脂部材の少なくとも一方に一体化されている請求項1に記載の電装品。
【請求項3】
前記基材フィルムは、熱可塑性樹脂によって構成される請求項1又は請求項2に記載の電装品。
【請求項4】
前記基材フィルムの厚さが0.025mm以上1mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項5】
150℃×30分の大気雰囲気における前記基材フィルムの熱収縮率が5%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項6】
前記複数の銅粒子のそれぞれは鱗片状である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項7】
前記複数の銅粒子の平均粒径は1μm以上20μm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項8】
前記めっき層の厚さは0.01μm以上50μmである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項10】
前記絶縁性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、及びシクロオレフィンポリマー樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項11】
前記配線パターンの少なくとも一部を覆う保護層を備え、
前記保護層は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電装品。
【請求項12】
絶縁性樹脂によって構成された基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備える回路部材を作製する工程Aと、
前記回路部材に樹脂部材を一体化する工程Bとを備え、
前記工程Aは、
前記基材フィルムを用意する工程A1と、
複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含む導電ペーストを用意する工程A2と、
前記基材フィルムの上に前記導電ペーストを配線パターン状に印刷する工程A3と、
熱処理によって前記バインダを硬化させることで配線部を形成する工程A4と、
前記配線部の表面に銅をめっきすることでめっき層を形成する工程A5とを含む、
電装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電装品、及び電装品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂によって構成される基材と、その基材の上に設けられた配線パターンとを備える回路部材が知られている。例えば、特許文献1には、絶縁性基材の上に配線パターンを形成した回路部材であるプリント配線板が開示されている。特許文献1における配線パターンは、金属ナノ粒子を含む導電性インクを絶縁性基材の上に印刷することで形成されている。
【0003】
特許文献2には、回路部材にプラスチック層を形成した電装品が開示されている。特許文献2の回路部材は、電気絶縁材料を含む基材フィルムと、基材フィルムの上に印刷された導電トレースとを備える。導電トレースは配線パターンに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-74055号公報
【特許文献2】特表2020-517120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、配線パターンを構成する金属ナノ粒子として、銀や金、銅などが使用可能であると記載されている。しかし、特許文献1の実施形態に記載されるように、金属ナノ粒子に使用可能な金属は実質的に銀である。
【0006】
銀によって構成された配線パターンを備える回路部材ではイオンマイグレーションが生じ易いという問題がある。回路部材にイオンマイグレーションが生じると、回路基板の機能が損なわれる恐れがある。また、銀によって構成された配線パターンを備える回路部材には高コストであるという問題もある。そのため、配線パターンを主に銅で構成したいというニーズがある。銅は、低コストで、かつイオンマイグレーションを生じさせ難い。しかし、銅には、焼成時に酸化し易く、その結果、配線パターンの導電性が低下し易いという問題がある。
【0007】
配線パターンの印刷に銅ナノ粒子を使用する場合、一般的に銅ナノ粒子は、凝集抑制・酸化防止のための高分子材料でコーティングされる。このコーティングを分解し、銅ナノ粒子同士を焼結させるために、印刷された配線パターンを200℃以上の高温で熱処理する必要がある。このとき、銅ナノ粒子の酸化が促進され易いという問題や基材が損傷する可能性があるという問題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本開示は、銅によって構成された配線パターンを備える電装品とその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の電装品は、回路部材と、前記回路部材に一体化されている樹脂部材とを備える。前記回路部材は、絶縁性樹脂によって構成されている基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備える。前記配線パターンは、前記基材フィルムの上に形成された配線部と、前記配線部の表面に形成されためっき層とを備える。前記配線部は、複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含み、前記めっき層は、銅によって構成されている。
【0010】
本開示の電装品の製造方法は、絶縁性樹脂によって構成された基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備える回路部材を作製する工程Aと、前記回路部材に樹脂部材を一体化する工程Bとを備える。前記工程Aは、前記基材フィルムを用意する工程A1と、複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含む導電ペーストを用意する工程A2と、前記基材フィルムの上に前記導電ペーストを配線パターン状に印刷する工程A3と、熱処理によって前記バインダを硬化させることで配線部を形成する工程A4と、前記配線部の表面に銅をめっきすることでめっき層を形成する工程A5とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電装品は、銅によって構成され、導電性に優れる配線パターンを備える。そのため、本開示の電装品では、イオンマイグレーションが生じ難い。
【0012】
本開示の電装品の製造方法は、配線パターンが銅によって構成された電装品を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に記載される電装品の概略平面図である。
図2図2は、実施形態1に記載される電装品の各構成の上下関係を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施形態1に記載される電装品の配線部の表面を模式的に示す拡大図である。
図4図4は、実施形態1に記載される電装品の製造工程の一部を説明する説明図である。
図5図5は、実施形態1に記載される電装品の製造工程の一部を説明する説明図である。
図6図6は、実施形態2に記載される電装品の各構成の上下関係を模式的に示す断面図である。
図7図7は、実施形態3に記載される電装品の各構成の上下関係を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施形態4に記載される電装品の各構成の上下関係を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0015】
<1>実施形態に係る電装品は、回路部材と、前記回路部材に一体化されている樹脂部材とを備える。前記回路部材は、絶縁性樹脂によって構成されている基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備える。前記配線パターンは、前記基材フィルムの上に形成された配線部と、前記配線部の表面に形成されためっき層とを備える。前記配線部は、複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含み、前記めっき層は、銅によって構成されている。
【0016】
実施形態に係る電装品の配線部では、複数の銅粒子を熱硬化性樹脂のバインダによって一体化している。そのため、配線部における銅粒子同士の接触が良好で、配線部の導電性が高い。また、配線部には酸化防止剤が含まれているため、配線部の製造時、及び製造後に銅粒子が酸化し難い。そのため、配線部の導電性が長期にわたって維持され易い。
【0017】
配線部の表面は銅のめっき層によって覆われている。めっき層は、配線部の導電性を補い、配線パターンの導電性を向上させる。
【0018】
銅によって構成される配線パターンでは、イオンマイグレーションが生じ難い。従って、電装品の品質が長期にわたって維持され易い。また、銅は銀に比べて安価であるため、電装品の製造コストが低くなる。
【0019】
<2>実施形態に係る電装品の一形態として、前記電装品に対して、装飾性、電磁気的特性、機械的特性、及び化学的特性の少なくとも一つを付加する追加部材を備え、前記追加部材は、前記回路部材及び前記樹脂部材の少なくとも一方に一体化されている形態が挙げられる。
【0020】
装飾性を有する追加部材としては、例えば色彩や模様などが施されたものが挙げられる。電磁気的特性としては、例えば電磁シールド性が挙げられる。機械的特性としては、例えば耐衝撃性やクッション性などが挙げられる。化学的特性としては、透光性や撥水性、耐薬品性、耐候性などが挙げられる。電装品が追加部材を備えることで、追加部材の特性、例えば装飾性や機能性が電装品に付与される。そのため、電装品の用途が広がる。
【0021】
<3>実施形態に係る電装品の一形態として、前記基材フィルムは、熱可塑性樹脂によって構成される形態が挙げられる。
【0022】
後述する電装品の製造方法に規定されるように、回路部材は樹脂部材と一体化される。その際、回路部材が熱にさらされる。回路部材の基材フィルムが熱可塑性樹脂によって構成されていれば、回路部材に樹脂部材を一体化する際、回路部材の形状を変化させることができる。
【0023】
<4>実施形態に係る電装品の一形態として、前記基材フィルムの厚さが0.025mm以上1mm以下である形態が挙げられる。
【0024】
基材フィルムの厚さが0.025mm以上であれば、回路部材と樹脂部材とを一体化する際、基材フィルムに割れやシワなどが発生し難い。基材フィルムの厚さが1mm以下であれば、回路部材と樹脂部材とを一体化する際、基材フィルムを所望の形状に変形させ易い。
【0025】
<5>実施形態に係る電装品の一形態として、150℃×30分の大気雰囲気における前記基材フィルムの熱収縮率が5%以下である形態が挙げられる。
【0026】
後述する電装品の製造方法に規定されるように、回路部材は複数回にわたって熱にさらされる。例えば、バインダを硬化させるための熱処理などによって回路部材に熱が加わる。そのため、基材フィルムは所定の耐熱性を有することが好ましい。本開示における耐熱性は、加熱雰囲気における基材フィルムの熱収縮率によって規定される。上記形態<5>に規定する耐熱性を備える基材フィルムは、上記熱処理によって損傷し難い。基材フィルムが方向性フィルムの場合、MD(machine direction)における基材フィルムの熱収縮率と、TD(transverse direction)における基材フィルムの熱収縮率が共に5%以下であることが好ましい。
【0027】
<6>実施形態に係る電装品の一形態として、前記複数の銅粒子のそれぞれは鱗片状である形態が挙げられる。
【0028】
各銅粒子が鱗片状であれば、隣接する銅粒子同士の接触面積が大きくなる。そのため、配線パターンの導電性が向上する。
【0029】
<7>実施形態に係る電装品の一形態として、前記複数の銅粒子の平均粒径は1μm以上20μm以下である形態が挙げられる。
【0030】
後述する電装品の製造方法に規定されるように、実施形態の電装品の配線部は印刷によって基材フィルム上に形成される。複数の銅粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、印刷によって配線部を形成することができる。印刷としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、ディスペンサー印刷、又はインクジェット印刷などが挙げられる。
【0031】
複数の銅粒子の平均粒径が上記範囲であれば、銅粒子の比表面積が、銅ナノ粒子の比表面積よりもかなり小さくなる。銅粒子の比表面積が小さくなれば、銅粒子が酸化され難くなるため、配線部の導電性に及ぼす銅粒子の酸化の影響が小さくなる。
【0032】
<8>実施形態に係る電装品の一形態として、前記めっき層の厚さは0.01μm以上50μmである形態が挙げられる。
【0033】
めっき層の厚さが0.01μm以上であれば、配線パターンの導電性を十分に確保できる。めっき層が50μm以下であれば、めっき層を形成するための時間が短くてすむので、電装品の生産性が向上する。更には、めっき層の厚さは1μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0034】
<9>実施形態に係る電装品の一形態として、前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む形態が挙げられる。
【0035】
バインダを構成する熱硬化性樹脂が上記列挙される熱硬化性樹脂であれば、配線部と基材フィルムとの密着性が向上する。その結果、基材から配線部が剥離し難い。
【0036】
<10>実施形態に係る電装品の一形態として、前記絶縁性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、及びシクロオレフィンポリマー樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む形態が挙げられる。
【0037】
上記列挙される絶縁性樹脂は熱可塑性樹脂である。基材フィルムが熱可塑性樹脂であれば、電装品の製造時に基材フィルムの形状を大きく変化させられる。
【0038】
<11>実施形態に係る電装品の一形態として、前記配線パターンの少なくとも一部を覆う保護層を備え、前記保護層は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む形態が挙げられる。
【0039】
保護層によって配線パターンが電気的・物理的に保護される。カバーレイは、回路部材の曲げ箇所の保護に好適である。ソルダーレジストは、回路部材の平坦箇所の保護に好適である。
【0040】
<12>実施形態に係る電装品の製造方法は、絶縁性樹脂によって構成された基材フィルムと、前記基材フィルムに設けられた配線パターンとを備える回路部材を作製する工程Aと、前記回路部材に樹脂部材を一体化する工程Bとを備える。前記工程Aは、前記基材フィルムを用意する工程A1と、複数の銅粒子と、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダと、酸化防止剤とを含む導電ペーストを用意する工程A2と、前記基材フィルムの上に前記導電ペーストを配線パターン状に印刷する工程A3と、熱処理によって前記バインダを硬化させることで配線部を形成する工程A4と、前記配線部の表面に銅をめっきすることでめっき層を形成する工程A5とを含む。
【0041】
上記電装品の製造方法によれば、実施形態に係る電装品を作製できる。
上記電装品の製造方法では、配線部の材料となる導電ペーストに熱硬化性樹脂のバインダが含まれている。このバインダが熱処理によって硬化することで、配線部が形成される。このとき、バインダが収縮し、銅粒子同士が十分に接触する。その結果、配線部の導電性が確保される。
【0042】
ここで、バインダを硬化させるための熱処理の温度は、特許文献1におけるナノ粒子を焼成する温度よりも低い。従って、バインダの熱処理によって銅粒子が酸化し難いし、基材フィルムが損傷し難い。さらに、導電ペーストには酸化防止剤が含まれているので、バインダの熱処理時に銅粒子が酸化され難い。
【0043】
上記電装品の製造方法では、配線部の表面に銅のめっき層が形成される。銅からなるめっき層は、配線部の導電性を補い、配線パターンの導電性を向上させる。
【0044】
上記電装品の製造方法は、回路部材を樹脂部材と一体化する工程Bを備える。この工程Bでは回路部材が熱にさらされる。回路部材の配線部に含まれるバインダは熱硬化性樹脂であるため、工程Bの熱によって配線部が損傷し難い。また、配線部には酸化防止剤が含まれているので、配線部に含まれる銅粒子は、工程Bの熱によって酸化し難い。
【0045】
上記電装品の製造方法の工程Bでは、回路部材の基材フィルムが熱可塑性樹脂によって構成されていれば、電装品の形状を所望の形状にできる。例えば、電装品の形状を、車両の室内灯を含む車載パネルの形状に形成することができる。
【0046】
上記電装品の製造方法における工程Aは、基材フィルム上に構成を追加していくアディティブ法である。アディティブ法では、サブトラクティブ法に比べて、廃液の発生が大幅に低減される。サブトラクティブ法は、エッチングなどの薬液によって不要な銅箔を取り除くことで配線パターンを形成する方法である。また、工程Bにおいても、回路部材に樹脂部材を付加している。つまり、上記電装品の製造方法では、薬液によって構成を取り除く工程を含んでいない。従って、上記電装品の製造方法は、電装品の製造時の環境負荷を低減できる。
【0047】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態を詳細に説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
【0048】
<実施形態1>
図1に示される実施形態1の電装品1は、車両の内装パネルとして利用される。電装品1は、回路部材2と、回路部材2に一体化されている樹脂部材3とを備える。回路部材2は、配線パターン21を含む電気回路である。樹脂部材3は、内装パネルを構成する。本例の電装品1は更に、追加部材4と保護層5と実装部品6を備える。以下、本例の電装品1の構成を詳細に説明する。
【0049】
≪回路部材≫
回路部材2の説明にあたっては図2を主に参照する。図2は、図1に示される電装品1の各構成の上下関係を模式的に示す図である。図2に示されるように、回路部材2は、基材フィルム20と、基材フィルム20に設けられた配線パターン21とを備える。
【0050】
(基材フィルム)
基材フィルム20は、絶縁性樹脂によって構成されたフィルムである。基材フィルム20を構成する絶縁性樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。後述するように、電装品1の製造時、回路部材2は樹脂部材3と一体化される。その際、回路部材2が熱にさらされる。基材フィルム20が熱可塑性樹脂によって構成されていれば、回路部材2に樹脂部材3を一体化する際、回路部材2の形状を変化させることができる。
【0051】
熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(polycarbonate)樹脂、ポリスチレン(polystyrene)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(acrylonitrile-butadiene styrene)樹脂、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)樹脂、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(polyethylene terephthalate)樹脂、ナイロン(nylon)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide)樹脂、ポリフェニレンエーテル(Polyphenyleneether)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(syndiotactic polystyrene)樹脂、及びシクロオレフィンポリマー(Cycloolefin polymer)樹脂から選択される少なくとも1種を含む。
【0052】
特に、液晶ポリマー樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、及びシクロオレフィンポリマー樹脂は、誘電特性に優れている。従って、これらの熱可塑性樹脂によって基材フィルム20が構成されることで、高速・高周波用途に適した電装品1が得られる。また、これらの熱可塑性樹脂は熱処理によって収縮し難い。従って、基材フィルム20の形状を変形させたときに、所望の形状に基材フィルム20を変形させ易い。
【0053】
基材フィルム20の厚さは、例えば0.025mm以上1mm以下であることが好ましい。基材フィルム20の厚さが0.025mm以上であれば、回路部材2と樹脂部材3とを一体化する際、基材フィルム20に割れやシワなどが発生し難い。基材フィルム20の厚さが1mm以下であれば、回路部材2と樹脂部材3とを一体化する際、基材フィルム20を所望の形状に変形させ易い。
【0054】
基材フィルム20は所定の耐熱性を有することが好ましい。本例における基材フィルム20の耐熱性は、150℃×30分の大気雰囲気における基材フィルム20の熱収縮率が5%以下であることによって規定される。基材フィルム20の熱収縮率は、{(加熱前の基材フィルム20の長さ―加熱後の基材フィルム20の長さ)/加熱前の基材フィルム20の長さ}×100によって求める。より好ましい熱収縮率は3%以下である。上記加熱雰囲気における熱収縮率が5%以下であれば、実施形態の電装品1の製造時に基材フィルム20が損傷することを抑制できる。基材フィルム20が方向性フィルムの場合、MDにおける基材フィルムの熱収縮率と、TDにおける基材フィルムの熱収縮率が共に5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。
【0055】
(配線パターン)
配線パターン21は、基材フィルム20の上に形成された配線部211と、配線部211の表面に形成されためっき層212とを備える。配線部211は、図1に示されるように配線パターン21を上面視したときに、配線パターン21と同一の形状を備える。
【0056】
図3は、配線部211の表面を模式的に示す拡大図である。図3に示されるように、配線部211は、複数の銅粒子21pとバインダ21bとを含む。更に配線部211は酸化防止剤を含む。配線部211の断面積は、配線パターン21に要求される導電性を満たすように、適宜選択される。例えば、配線部211の断面積は、0.0001mm以上0.5mm以下であることが挙げられる。配線部211の厚さは、10μm以上50μm以下であることが挙げられる。配線部211の厚さが10μm以上であれば、配線部211に含まれる銅粒子21p同士の接触が十分に確保される。配線部211の厚さが50μm以下であれば、印刷によって配線部211を形成し易い。
【0057】
本例の銅粒子21pは、純銅又は銅合金の粒子である。銅粒子21pの平均粒径は1μm以上20μm以下であることが好ましい。後述する電装品の製造方法に規定されるように、本例の電装品1の配線部211は印刷によって基材フィルム20上に形成される。複数の銅粒子21pの平均粒径が上記範囲内であれば、印刷によって配線部211を形成することができる。銅粒子21pの平均粒径の下限は、2μm、更には3μmであっても良い。また、銅粒子21pの平均粒径の上限は、18μm、更には15μmであっても良い。従って、銅粒子21pの平均粒径は、2μm以上18μm以下、更には3μm以上15μm以下であっても良い。
【0058】
銅粒子21pの平均粒径は、配線部211の厚さ方向に直交する断面を顕微鏡観察することで得られる。まず、配線部211の断面から5視野以上の顕微鏡画像を取得する。各顕微鏡画像を二値化処理し、画像中の全ての粒子の粒径を求める。測定される銅粒子21pの粒径は、断面における銅粒子21pの長軸方向の長さである。長軸方向の長さは、銅粒子21pに外接する四角形の長辺の長さと同じである。全ての粒径の平均値が、銅粒子21pの平均粒径である。
【0059】
銅粒子21pの形状は特に問われない。銅粒子21pは、球形でも良いし異形でも良い。本例の銅粒子21pは、鱗片状粒子である。鱗片状粒子のアスペクト比、即ち鱗片状粒子の長軸方向の長さと短軸方向の長さとの比は、2.5以上5.0以下であることが好ましい。各銅粒子21pが鱗片状であれば、配線部211の厚さ方向に銅粒子21pが積層された状態となり易い。厚さ方向に積層した銅粒子21p同士は面接触し易く、銅粒子21p同士の接触面積が大きくなる。その結果、配線パターン21の導電性が向上する。
【0060】
配線部211における銅粒子21pの含有量は、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。銅粒子21pの含有量が50質量%以上であれば、配線部211の導電性が十分に確保される。銅粒子21pの含有量が90質量%以下であれば、複数の銅粒子21pの隙間に十分な量のバインダ21bが配置される。その結果、複数の銅粒子21pが強固に一体化される。より好ましい銅粒子21pの含有量は60質量%以上85質量%以下である。更に好ましい銅粒子21pの含有量は65質量%以上80質量%以下である。
【0061】
配線部211における銅粒子21pの質量割合は、以下のようにして求められる。まず、配線部211の厚さ方向に直交する断面における5視野以上の顕微鏡画像を二値化処理する。各顕微鏡画像に占める銅粒子21pの面積割合を求める。全ての視野における面積割合を平均し、その平均値を配線部211における銅粒子21pの体積割合とみなす。銅粒子21pの体積割合に銅の比重をかけると共に、バインダ21bの体積割合にバインダ21bの比重をかけ、配線部211における銅粒子21pの質量割合を求める。
【0062】
バインダ21bは、複数の銅粒子21pを一体化する熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール(phenol)樹脂、ユリア(Urea)樹脂、メラミン(melanin)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、不飽和ポリエステル(unsaturated polyester)樹脂、ポリウレタン(polyurethane)樹脂、及びシリコーン(silicone)樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、配線部211と基材フィルム20との密着性を向上させる。その結果、基材フィルム20から配線部211が剥離し難い。
【0063】
バインダ21bを構成する熱硬化性樹脂として、特にフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂は還元性を有している。そのため、フェノール樹脂は、銅粒子21pの酸化を抑制する。さらにフェノール樹脂として、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。レゾール型フェノール樹脂は自己反応性を有するため、硬化剤を必要としない。
【0064】
酸化防止剤は、銅粒子21pの酸化を抑制する化学物質である。酸化防止剤は、バインダ21b中に分散されていても良いし、銅粒子21pに含まれていても良い。酸化防止剤としては例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びフェニルアミン系酸化防止剤などが挙げられる。その他、還元性を有するエチレングリコールやポリエチレングリコールなどのポリオール系溶剤が含まれていても良い。
【0065】
図2に示されるように、めっき層212は、配線部211の表面を覆う。より具体的には、めっき層212は、配線部211のうち、基材フィルム20に密着する部分を除く部分を覆う。めっき層212は銅によって構成される。めっき層212は、無電解めっきや電解めっきなどによって形成される。
【0066】
銅からなるめっき層212は、配線部211の導電性を補い、配線パターン21の導電性を向上させる。従って、めっき層212の抵抗率は、50μΩ・cm以下であることが好ましく、30μΩ・cm以下であることがより好ましい。
【0067】
めっき層212の厚さは0.01μm以上50μmであることが望ましい。めっき層212の厚さが0.01μm以上であれば、配線パターン21の導電性を十分に確保できる。めっき層212が50μm以下であれば、めっき層212を形成するための時間が短くてすむので、電装品1の生産性が向上する。厚さの下限は1μm、1.5μm、又は2μmであっても良い。厚さの上限は10μm、7.5μm、又は5μmであっても良い。従って、めっき層212の厚さは、1μm以上10μm以下、1.5μm以上7.5μm以下、又は2μm以上5μm以下であっても良い。
【0068】
≪保護層≫
図1図2に示されるように、配線パターン21の少なくとも一部は保護層5に覆われている。保護層5は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む。保護層5によって配線パターン21が電気的・物理的に保護される。カバーレイは、接着剤層を有する絶縁フィルムである。カバーレイは、回路部材2の曲げ箇所に設けられる配線パターン21の保護に好適である。ソルダーレジストは、回路部材2上に塗布した原液を硬化させたものである。ソルダーレジストは、回路部材2の平坦箇所に設けられる配線パターン21の保護に好適である。
【0069】
≪実装部品≫
実装部品6は、回路部材2に後付けされる電気部品である。実装部品6としは、例えばLEDライト、ICチップ、及びコンデンサなどが挙げられる。
【0070】
≪樹脂部材≫
回路部材2に一体化された樹脂部材3は、回路部材2を支持する部材である。また、樹脂部材3は、電装品1の形状を保つ役割を担う部材である。樹脂部材3はブロック状でも良いし、パネル状であっても良い。樹脂部材3は、電装品1が搭載される機械の外装パネルや内装パネルを兼ねていても良い。例えば、図1に示されるように、回路部材2が室内灯の配線を構成し、樹脂部材3が室内灯近傍の内装パネルの形状を有している形態が挙げられる。その他、樹脂部材3が、インストルメントパネルやアームレストに設けられる開口部を閉じるカバーや、パワーウィンドウやディスプレイのスイッチ類が設けられる操作パネルである形態が挙げられる。
【0071】
樹脂部材3は、強度と耐久性に優れる絶縁性樹脂によって構成される。例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、又はアクリル樹脂などが好適である。
【0072】
樹脂部材3は、図2に示されるように、回路部材2の第一面20A、又は第二面20Bに一体化されている。第一面20Aは、回路部材2における配線パターン21が設けられる面である。第二面20Bは、第一面20Aと反対側の面である。本例の樹脂部材3は、回路部材2の第二面20Bに一体化されている。
【0073】
樹脂部材3と回路部材2との間には、プライマー及び接着剤の少なくとも一方が存在しても良い。プライマー及び接着剤は、樹脂部材3と回路部材2との接合を強固にする。プライマーとしては、例えばポリウレタン系樹脂、又はアクリル系樹脂を主成分とするプライマーが挙げられる。接着剤としては、例えばアクリル系接着剤が挙げられる。
【0074】
≪追加部材≫
追加部材4は、電装品1に特性を付加する部材である。特性としては、装飾性、電磁気的特性、機械的特性、及び化学的特性の少なくとも一つが挙げられる。装飾性を有する追加部材4としては、例えば色彩や模様などが施されたものが挙げられる。例えば、電装品1を車両の内装パネルに使用する場合、追加部材4によって内装の質感が向上する。電磁気的特性としては、例えば電磁シールド性が挙げられる。機械的特性としては、例えば耐衝撃性やクッション性などが挙げられる。化学的特性としては、透光性や撥水性、耐薬品性、耐候性などが挙げられる。所定の特性を有する追加部材4によれば、追加部材4に備わる特性が電装品1に付与される。例えば電磁シールドとして機能する追加部材4であれば、電装品1に対して別途電磁シールドを設ける必要がなくなる。
【0075】
追加部材4は、絶縁性樹脂などの有機材料によって構成されていても良いし、金属によって構成されていても良いし、セラミックスなどの無機材料によって構成されていても良い。もちろん、追加部材4は、絶縁性樹脂と金属との複合体などであっても良い。追加部材4の材質は、追加部材4に求められる特性に応じて適宜選択される。
【0076】
追加部材4は、回路部材2及び樹脂部材3の少なくとも一方に一体化されている。本例の追加部材4は、樹脂部材3に一体化されている。
【0077】
≪効果≫
本例の電装品1の配線部211では、図3に示されるように、複数の銅粒子21pを熱硬化性樹脂のバインダ21bによって一体化している。そのため、配線部211における銅粒子21p同士の接触が良好で、配線部211の導電性が高い。また、配線部211には酸化防止剤が含まれているため、配線部211の製造時、及び製造後に銅粒子21pが酸化し難い。そのため、配線部211は導電性に優れる。
【0078】
配線部211の表面は、図2に示されるように、銅のめっき層212によって覆われている。従って、配線部211における銅粒子21p(図3)が酸化され難い。また、めっき層212は、配線部211と共に配線パターン21の導電性を確保する。従って、配線部211の導電性が長期にわたって維持され易い。
【0079】
銅によって構成される配線パターン21では、イオンマイグレーションが生じ難い。従って、電装品1の品質が長期にわたって維持され易い。また、銅は銀に比べて安価であるため、電装品1の製造コストが低くなる。
【0080】
本例の電装品1は樹脂部材3を備える。樹脂部材3は電装品1の形状を保ち、回路部材2の損傷を抑制する。
【0081】
本例の電装品1は追加部材4を備える。追加部材4は、電装品1に装飾性及び機能性を付与する。そのため、電装品1の用途が広がる。
【0082】
≪電装品の製造方法≫
実施形態1の電装品1は、例えば以下の工程によって作製される。
・回路部材2を作製する工程A
・回路部材2に樹脂部材3を一体化する工程B
・回路部材2又は樹脂部材3の少なくとも一方に追加部材4を一体化する工程C
【0083】
工程Bと工程Cはどちらが先に行われても良い。工程Bと工程Cとが同時に行われても良い。ここで、本例とは異なり、電装品1が追加部材4を備えない場合、工程Cは省略される。
【0084】
(工程A)
工程Aは、以下の工程A1から工程A6を含む。
・基材フィルム20を用意する工程A1
・複数の銅粒子21pと、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダ21bと、酸化防止剤とを含む導電ペーストを用意する工程A2
・基材フィルム20の上に導電ペーストを配線パターン状に印刷する工程A3
・熱処理によってバインダ21bを硬化させることで配線部211を形成する工程A4
・配線部211の表面に銅をめっきすることでめっき層212を形成する工程A5
・配線パターン21の少なくとも一部を覆う保護層5を形成する工程A6
【0085】
工程A1において用意する基材フィルム20は、電装品1の項目で説明した基材フィルム20である。基材フィルム20と配線パターン21との密着性を向上させるため、基材フィルム20に表面処理を施すことが好ましい。表面処理としては、基材フィルム20の表面にプラズマ照射、コロナ照射、又はUV照射を行うことが挙げられる。その他、基材フィルム20の表面をプライマー処理することが挙げられる。プライマーとしては、例えばポリウレタン系プライマー、及びアクリル系プライマーなどが挙げられる。
【0086】
工程A2において用意する導電ペーストは、電装品1の項目で説明した銅粒子21pとバインダ21bと酸化防止剤とを含む。導電ペーストは、揮発性の溶媒を含んでいても良い。溶媒によって導電ペーストの粘度が調整される。
【0087】
工程A3では、基材フィルム20上に導電ペーストが印刷される。印刷としては、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、ディスペンサー印刷、又はインクジェット印刷などが挙げられる。導電ペーストに含まれる銅粒子21pの平均粒径が1μm以上20μm以下であれば、インクジェット印刷、及びディスペンサー印刷で使用されるノズルの先端に銅粒子21pが詰まり難い。従って、インクジェット印刷、及びディスペンサー印刷であっても、導電ペーストを問題なく印刷できる。
【0088】
工程A4では、配線パターン状に印刷された導電ペーストが熱処理される。この熱処理によって導電ペーストのバインダ21bが硬化することで、配線部211が形成される。このとき、導電ペーストと共に基材フィルム20も熱にさらされる。従って、熱処理の温度は150℃以下であることが好ましい。この温度は、特許文献1におけるナノ粒子を焼成する温度よりも低い。焼成温度は例えば200℃以上である。熱処理の温度が150℃以下であれば、銅粒子21pが酸化し難いし、基材フィルム20が損傷し難い。
【0089】
工程A5において、配線部211の表面に銅のめっき層212が形成される。めっきは、無電解めっきでも良いし、電解めっきでも良い。
【0090】
工程A6において、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む保護層5を形成する。カバーレイの形成方法、及びソルダーレジストの形成方法は公知である。例えばソルダーレジストであれば、回路部材2の表面にUV硬化型のソルダーレジストをスクリーン印刷する。次いで、ソルダーレジストにUVを照射することで、保護層5が形成される。
【0091】
(工程B)
工程Bは、例えばインサート成形、又は真空圧空成形などによって実施される。工程Bは、接着などによっても実施可能である。
【0092】
インサート成形によって実施される工程Bを図4に基づいて説明する。図4では、金型8の内部に回路部材2と追加部材4を配置する。このとき、回路部材2と追加部材4との間に隙間が形成されている。この隙間に樹脂部材3の原料となる樹脂を注入する。その結果、回路部材2と追加部材4とが樹脂部材3によって一体化された状態となる。この例では、工程Bと工程Cとが同時に行われる。
【0093】
図4に示す例では、実装部品6が搭載された回路部材2が用いられている。実装部品6は、回路部材2と追加部材4とが樹脂部材3によって一体化された後に、回路部材2に取付けられても良い。
【0094】
真空圧空成形によって実施される工程Bを図5に基づいて説明する。真空圧空成形の金型9は、チャンバー90と可動成形型91とを備える。回路部材2は、チャンバー90内に支持される。回路部材2を挟んで上方の空間と下方の空間とは区画されている。
【0095】
図5の上段に示されるように、可動成形型91には、可動成形型91の形状に沿った樹脂部材3が配置されている。この状態から、回路部材2をヒータなどで加熱すると共に、回路部材2と可動成形型91との間を真空引きする。チャンバー90内は回路部材2によって仕切られているため、回路部材2よりも上方の空間は真空引きされない。次いで、図5の下段に示されるように、可動成形型91を上方に移動させ、回路部材2と樹脂部材3とを一体化する。このとき、回路部材2は、樹脂部材3の形状に沿った形状に変形する。
【0096】
(工程C)
工程Cは、工程Bと同様、インサート成形又は真空圧空成形などによって実施される。工程Cは、接着などによっても実施可能である。工程Cは、工程Bと独立して実施することもできるし、工程Bの後に実施することもできるし、工程Bの前に実施することもできる。
【0097】
<実施形態2>
実施形態2では、回路部材2に対する樹脂部材3と追加部材4の位置が実施形態1と異なる電装品1を図6に基づいて説明する。図6では、配線部とめっき層を一まとめにして配線パターン21としており、保護層の図示も省略している。この点は、後述する図7図8でも同様である。
【0098】
図6に示される電装品1では、回路部材2の第一面20Aに追加部材4が一体化されている。また、回路部材2の第二面20Bに樹脂部材3が一体化されている。追加部材4が透光性材料で構成され、実装部品6がLEDライトであれば、追加部材4の外側からLEDライトの点灯を確認できる。本例の電装品1は、例えば回路部材2の第二面20Bに樹脂部材3をインサート成形した後、回路部材2の第一面20Aに追加部材4をインサート成形することで作製される。ここで、本例の電装品1では、第一面20Aが追加部材4に覆われているため、配線パターン21を覆う保護層はなくても構わない。
【0099】
実施形態2の変形例として、第一面20Aに樹脂部材3が一体化され、第二面20Bに追加部材4が一体化されていても良い。
【0100】
<実施形態3>
実施形態3では、実施形態1,2とは異なる配置を備える電装品1を図7に基づいて説明する。
【0101】
図7に示される電装品1では、回路部材2の第二面20Bから順に、追加部材4と樹脂部材3とが一体化されている。本例の電装品1は、例えば回路部材2の第二面20Bと、板状の樹脂部材3との間に、追加部材4をインサート成形することで作製される。
【0102】
<実施形態4>
実施形態4では、実施形態1から実施形態3とは異なる配置を備える電装品1を図8に基づいて説明する。
【0103】
図8に示される電装品1では、回路部材2の第一面20Aから順に、樹脂部材3と追加部材4とが一体化されている。本例の電装品1は、例えば回路部材2の第一面20Aと、板状の追加部材4との間に、樹脂部材3をインサート成形することで作製される。ここで、本例の電装品1では、第一面20Aが樹脂部材3と追加部材4とに覆われているため、配線パターン21を覆う保護層はなくても構わない。
【0104】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 電装品
2 回路部材
20 基材フィルム、21 配線パターン
211 配線部、212 めっき層
20A 第一面、20B 第二面
21b バインダ、21p 銅粒子
3 樹脂部材
4 追加部材
5 保護層
6 実装部品
8 金型
9 金型
90 チャンバー、91 可動成形型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記めっき層の厚さは0.01μm以上50μm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電装品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
前記配線パターンの一部を覆う保護層を備え、
前記保護層は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電装品。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
<8>実施形態に係る電装品の一形態として、前記めっき層の厚さは0.01μm以上50μm以下である形態が挙げられる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
<11>実施形態に係る電装品の一形態として、前記配線パターンの一部を覆う保護層を備え、前記保護層は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む形態が挙げられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(polycarbonate)樹脂、ポリスチレン(polystyrene)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(acrylonitrile-butadiene styrene)樹脂、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)樹脂、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)樹脂、ナイロン(nylon)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide)樹脂、ポリフェニレンエーテル(Polyphenyleneether)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(syndiotactic polystyrene)樹脂、及びシクロオレフィンポリマー(Cycloolefin polymer)樹脂から選択される少なくとも1種を含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
めっき層212の厚さは0.01μm以上50μm以下であることが望ましい。めっき層212の厚さが0.01μm以上であれば、配線パターン21の導電性を十分に確保できる。めっき層212が50μm以下であれば、めっき層212を形成するための時間が短くてすむので、電装品1の生産性が向上する。厚さの下限は1μm、1.5μm、又は2μmであっても良い。厚さの上限は10μm、7.5μm、又は5μmであっても良い。従って、めっき層212の厚さは、1μm以上10μm以下、1.5μm以上7.5μm以下、又は2μm以上5μm以下であっても良い。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
≪保護層≫
図1図2に示されるように、配線パターン21の一部は保護層5に覆われている。保護層5は、カバーレイ及びソルダーレジストの少なくとも一方を含む。保護層5によって配線パターン21が電気的・物理的に保護される。カバーレイは、接着剤層を有する絶縁フィルムである。カバーレイは、回路部材2の曲げ箇所に設けられる配線パターン21の保護に好適である。ソルダーレジストは、回路部材2上に塗布した原液を硬化させたものである。ソルダーレジストは、回路部材2の平坦箇所に設けられる配線パターン21の保護に好適である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
(工程A)
工程Aは、以下の工程A1から工程A6を含む。
・基材フィルム20を用意する工程A1
・複数の銅粒子21pと、熱硬化性樹脂によって構成されたバインダ21bと、酸化防止剤とを含む導電ペーストを用意する工程A2
・基材フィルム20の上に導電ペーストを配線パターン状に印刷する工程A3
・熱処理によってバインダ21bを硬化させることで配線部211を形成する工程A4
・配線部211の表面に銅をめっきすることでめっき層212を形成する工程A5
・配線パターン21の一部を覆う保護層5を形成する工程A6