(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152337
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】共重合体及びその製造方法、並びに塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20221004BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20221004BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20221004BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20221004BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20221004BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20221004BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20221004BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08F220/18
C09D133/04
C09D133/14
C09D7/48
C08F220/34
C08F220/56
C08F220/06
C08F220/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055066
(22)【出願日】2021-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】南島 光男
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038CH191
4J038KA12
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
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4J038PB07
4J100AE18R
4J100AJ02Q
4J100AJ08Q
4J100AJ09Q
4J100AK32Q
4J100AL03P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100AM15Q
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4J100AM24Q
4J100BA15Q
4J100BA31Q
4J100BA35Q
4J100BA37R
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA61
(57)【要約】
【課題】耐日焼け止め剤性及びレベリング性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な共重合体及びその製造方法の提供。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、アミノ基、アミド基、ウレイド基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位と、エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位(ただし、これらは互いに異なる単量体単位である。)とを含有する共重合体であって、共重合体を構成する全単量体単位の総質量に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位の含有量が70~95質量%であり、エチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位の含有量が0.1~10質量%であり、エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位の含有量が1~22質量%である、共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、
アミノ基(ただし、アミド基及びウレイド基を除く。)、アミド基(ただし、ウレイド基を除く。)、ウレイド基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位と、
エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位とを含有する共重合体であって、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位及び前記エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位は互いに異なる単量体単位であり、
前記共重合体を構成する全単量体単位の総質量に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位の含有量が70~95質量%であり、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位の含有量が0.1~10質量%であり、前記エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位の含有量が1~22質量%である、共重合体。
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量が10000~60000である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)のホモポリマーのガラス転移温度が、アクリル酸アルキルエステルの場合は-30℃以上であり、メタクリル酸アルキルエステルの場合は80℃以上である、請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)及び前記エチレン尿素誘導体(a3)を一段階重合により重合する工程を含む、共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体を含む、塗料組成物。
【請求項6】
紫外線防止剤をさらに含む、請求項5に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及びその製造方法、並びに塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内外装部品や各種成形品の基材表面には、意匠性付与や保護などを目的として塗装が施されて塗膜が形成される場合が多い。
自動車の内外装部品や各種成形品は人の手に触れる機会が多いため、人の皮脂や汗が付着しやすく、塗膜が劣化することがある。特に、夏場など紫外線の強い時期は日焼け止め剤を使用する機会が増えるが、日焼け止め剤が付着した手で自動車の内外装部品や各種成形品を触ると、日焼け止め剤に含まれる成分が塗膜を膨潤させたり、塗膜中に浸透したりするなどして、塗膜の外観が悪くなったり、塗膜の耐摩耗性が低下したりしやすくなる。よって、塗膜には日焼け止め剤に対する耐性(以下、「耐日焼け止め剤性」という。)が要求される。
【0003】
塗膜の耐日焼け止め剤性を上げるためには、日焼け止め剤により塗膜が膨潤すること、日焼け止め剤が塗膜中に浸透することを防ぐことが必要である。そこで、塗膜の架橋密度を上げたり、剛直性を示すポリマー(例えば芳香環を含むポリマー等)を塗料に配合したりすることにより、日焼け止め剤が塗膜中を拡散しないようにする方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、剛直性を示すポリマーとしてセルロース誘導体を塗料に配合して塗膜に耐日焼け止め剤性を付与する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塗膜の架橋密度を上げたり、剛直性を示すポリマーを塗料に配合したりすると、塗膜の耐日焼け止め剤性は向上するものの、塗料の粘度が上がるため、塗膜がゆず肌となり光沢も低下してしまう。そこで、塗膜のレベリング性を上げるために塗料にレベリング剤を添加すると、塗膜の艶は向上するものの、塗料を基材表面に塗布する際にハジキ等の不具合が生じやすくなる。
本発明の目的は、耐日焼け止め剤性及びレベリング性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な共重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] (メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位と、
アミノ基(ただし、アミド基及びウレイド基を除く。)、アミド基(ただし、ウレイド基を除く。)、ウレイド基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位と、
エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位とを含有する共重合体であって、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位及び前記エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位は互いに異なる単量体単位であり、
前記共重合体を構成する全単量体単位の総質量に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)に由来する単位の含有量が70~95質量%であり、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)に由来する単位の含有量が0.1~10質量%であり、前記エチレン尿素誘導体(a3)に由来する単位の含有量が1~22質量%である、共重合体。
[2] 前記共重合体の重量平均分子量が10000~60000である、前記[1]の共重合体。
[3] 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)のホモポリマーのガラス転移温度が、アクリル酸アルキルエステルの場合は-30℃以上であり、メタクリル酸アルキルエステルの場合は80℃以上である、前記[1]又は[2]の共重合体。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの共重合体の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、前記エチレン性不飽和モノマー(a2)及び前記エチレン尿素誘導体(a3)を一段階重合により重合する工程を含む、共重合体の製造方法。
[5] 前記[1]~[3]のいずれかの共重合体を含む、塗料組成物。
[6] 紫外線防止剤をさらに含む、前記[5]の塗料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐日焼け止め剤性及びレベリング性に優れる塗膜を形成できる塗料組成物、前記塗料組成物を得るために好適な共重合体及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
本発明において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの総称である。
共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)、数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)、Mnに対するMwの比である分子量分散度(以下、「Mw/Mn」ともいう。)はそれぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)のホモポリマーのガラス転移温度は、JIS K 7121により測定される値である。
「塗膜」とは、本発明の塗料組成物より形成される塗膜である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
[共重合体]
本発明の共重合体(以下、「共重合体(A)」ともいう。)は、以下に示す(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)(以下、「単量体(a1)」ともいう。)に由来する単位と、エチレン性不飽和モノマー(a2)(以下、「単量体(a2)」ともいう。)に由来する単位と、エチレン尿素誘導体(a3)(以下、「単量体(a3)」ともいう。)に由来する単位とを含有する。
共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)に由来する単位をさらに含有してもよい。
単量体(a1)に由来する単位、単量体(a2)に由来する単位、単量体(a3)に由来する単位及び他の単量体単位に由来する単位は、互いに異なる単量体単位である。
【0010】
<単量体(a1)>
単量体(a1)(ただし、単量体(a2)及び単量体(a3)を除く。)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)である。
単量体(a1)のアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。単量体(a1)のアルキル基の炭素数が上記上限値以下であれば、耐日焼け止め剤性がより向上する。
単量体(a1)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性がより向上する点で、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、その中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルがより好ましい。
なお、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及び他の単量体は、互いに異なる単量体である。
【0011】
単量体(a1)のホモポリマーのガラス転移温度は、単量体(a1)がアクリル酸アルキルエステルの場合、-30℃以上が好ましい。
単量体(a1)のホモポリマーのガラス転移温度は、単量体(a1)がメタクリル酸アルキルエステルの場合、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
単量体(a1)のホモポリマーのガラス転移温度が上記下限値以上であれば、基材への密着性に優れ、耐日焼け止め剤性がより良好な塗膜となる。
単量体(a1)のホモポリマーのガラス転移温度は、250℃以下が実際的である。
【0012】
<単量体(a2)>
単量体(a2)(ただし、単量体(a3)を除く。)は、アミノ基(ただし、アミド基及びウレイド基を除く。)、アミド基(ただし、ウレイド基を除く。)、ウレイド基及びカルボキシ基からなる群より選ばれる1種以上を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2)である。
アミノ基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2-1)としては、例えば、2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
アミド基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2-2)としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
ウレイド基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2-3)としては、例えば、2-ウレイドエチルメタクリレート、2-ウレイドエチルアクリレートなどが挙げられる。
カルボキシ基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a2-4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸等のカルボキシ基含有単量体が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性がより向上する点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0013】
<単量体(a3)>
単量体(a3)は、エチレン尿素誘導体(a3)である。
単量体(a3)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルエチレン尿素、2-(メタクリロイルオキシアセトアミドエチレン)-N,N’-エチレン尿素、メタクリルアミドエチルエチレン尿素、アリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルアミンエチルエチレン尿素などが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性がより向上する点で、2-メタクリロイルオキシエチルエチレン尿素が好ましい。
【0014】
<他の単量体>
他の単量体は、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)以外の単量体である。
他の単量体としては、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)の1種以上と共重合可能であれば特に限定されない。
【0015】
<含有量>
共重合体(A)を構成する全単量体単位の総質量に対して、単量体(a1)に由来する単位の含有量は、70~95質量%であり、75~95質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましい。単量体(a1)に由来する単位の含有量が上記範囲内であれば、塗膜の凝集力を適切に調整することができ、カール性が向上する。
【0016】
共重合体(A)を構成する全単量体単位の総質量に対して、単量体(a2)に由来する単位の含有量は、0.1~10質量%であり、1~10質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましい。単量体(a2)に由来する単位の含有量が上記範囲内であれば、塗膜の耐日焼け止め剤性が向上する。
【0017】
共重合体(A)を構成する全単量体単位の総質量に対して、単量体(a3)に由来する単位の含有量は、1~22質量%であり、1~15質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。単量体(a3)に由来する単位の含有量が上記範囲内であれば、塗膜の耐日焼け止め剤性及びレベリング性を高いレベルで両立させることができる。
【0018】
<物性>
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10000~60000が好ましく、20000~55000がより好ましく、30000~50000がさらに好ましい。共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であれば、共重合体(A)を含む塗料組成物の塗装作業性を良好に維持できる。加えて、耐日焼け止め剤性及び外観に優れた塗膜を容易に形成できる。
【0019】
共重合体(A)の数量平均分子量(Mn)は、1000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましく、10000~20000がさらに好ましい。
【0020】
共重合体(A)の数量平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である分子量分散度(Mw/Mn)は、2.0~6.0が好ましく、2.0~5.5がより好ましく、2.5~5.0がさらに好ましい。分子量分散度(Mw/Mn)が上記範囲内であれば、基材への密着性に優れ、耐日焼け止め剤性がより良好な塗膜となる。
【0021】
<製造方法>
共重合体(A)は、例えば、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)を含む単量体混合物(M)を一段階重合により重合することで得られる。すなわち、共重合体(A)の製造方法の一実施形態としては、単量体混合物(M)を一段階重合により重合する工程(重合工程)を含む。
【0022】
単量体混合物(M)は、必要に応じて他の単量体を含んでいてもよい。
単量体混合物(M)の総質量に対する、単量体(a1)の含有量は70~95質量%であり、75~95質量%が好ましく、80~95質量%がより好ましい。
単量体混合物(M)の総質量に対する、単量体(a2)の含有量は0.1~10質量%であり、1~10質量%が好ましく、1~7質量%がより好ましい。
単量体混合物(M)の総質量に対する、単量体(a3)の含有量は1~22質量%であり、1~15質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
なお、共重合体(A)を構成する全単量体単位の総質量に対する単量体(a1)に由来する単位の含有量は、単量体混合物(M)の総質量に対する単量体(a1)の含有量と同様とみなすことができる。単量体(a2)に由来する単位、単量体(a3)に由来する単位、及び他の単量体に由来する単位についても同じである。
【0023】
一段階重合とは、単量体の仕込みから目的の共重合体を得るまでにおいて、重合する際の室温(およそ1~35℃程度)から重合温度(およそ70~80℃程度)に昇温する操作が一回であるものを指す。なお、重合操作中の10℃前後の昇温操作はこれに含まない。
単量体混合物(M)を一段階重合により重合することにより、二段階重合等に比べて重合操作を簡易的に行うことが可能となる。
【0024】
昇温する操作が一回であれば、単量体混合物(M)の重合方法としては特に限定されず、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のいずれの重合方法でもよい。これらの中でも、有機溶剤中で重合を行う溶液重合が好ましい。
単量体混合物(M)の重合には、重合開始剤を用いてもよい。
昇温する操作が一回であれば、単量体混合物(M)、重合開始剤等は、重合反応系に一括で添加してもよいし、重合反応の進行状況に応じ、時間の間隔を空けて数回程度に分割して重合反応系に添加してもよい。得られる共重合体(A)中の残留モノマーを低減でき、塗膜の耐日焼け止め剤性がより向上する点から、単量体混合物(M)、重合開始剤等は、分割して重合反応系に添加することが好ましい。
【0025】
重合の際に用いる有機溶剤としては、単量体(a1)、単量体(a2)及び単量体(a3)を溶解できるものであれば特に限定されず、公知のものを使用できるが、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;1-プロパノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類などが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
有機溶剤の使用量は特に限定されないが、単量体混合物(M)100質量部に対して、10~1000質量部が好ましいく、50~500質量部がより好ましい。
【0027】
重合の際に用いる重合開始剤としては公知のものを使用でき、得られる共重合体(A)の特性や重合性に応じて重合開始剤を選択して用いればよい。
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(イソブチレート)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロペン)2塩酸塩、2-tert-ブチルアゾ-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミド)2水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロペン]、2,2’-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、カリウムパーサルフェート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス-tert-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルパーオキシーラウレート、tert-ブチルパーオキシイソフタレート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド等のケトンパーオキシド系化合物などが挙げられる。
また、上述した以外にも重合開始剤として、例えば、パーオキシケタール系化合物、ハイドロパーオキシド系化合物、ジアルキルパーオキシド系化合物、ジアシルパーオキシド系化合物、パーオキシエステル系化合物、パーオキシジカーボネート系化合物、過酸化水素などを使用してもよい。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<作用効果>
以上説明した本発明の共重合体(A)は、特定量の単量体(a1)に由来する単位、特定量の単量体(a2)に由来する単位、及び特定量の単量体(a3)に由来する単位を含有するので、本発明の共重合体(A)を用いれば、耐日焼け止め剤性に優れる塗膜を形成できる。
塗膜の耐日焼け止め剤性が向上する理由としては、以下のように推測される。
一つ目の理由として、単量体(a3)がウレイド結合による大きな双極子を持ち、プラスに帯電したウレイド結合中の炭素原子と、マイナスに帯電した基材とに分子間力が働き、共重合体(A)と基材とが強固に接着するため、日焼け止め剤成分が塗膜と基材の界面に浸透しにくくなり、塗膜の耐日焼け止め剤性が向上すると推測される。
二つ目の理由として、単量体(a3)のエチレン尿素中の窒素原子に結合した水素原子と、単量体(a1)中のカルボニル基の酸素原子との間に分子間力が生じ、塗膜の凝集力が向上するため、日焼け止め剤成分により塗膜が膨潤したり、日焼け止め剤成分が塗膜中を浸透したりしにくくなり、塗膜の耐日焼け止め剤性が向上すると推測される。単量体(a2)についても同様に、単量体(a3)のエチレン尿素中の窒素原子に結合した水素原子と、単量体(a2)中のカルボニル基の酸素原子、又は単量体(a2)中のアミノ基、アミド基もしくはウレイド基の窒素原子との間に分子間力が生じ、塗膜の凝集力が向上するため、日焼け止め剤成分により塗膜が膨潤したり、日焼け止め剤成分が塗膜中を浸透したりしにくくなり、塗膜の耐日焼け止め剤性が向上すると推測される。
【0029】
本発明の共重合体(A)を用いれば、塗膜中の架橋密度を上げたり、剛直性を示すポリマーを併用したりする必要がないので、レベリング性にも優れる塗膜を形成できる。
よって、本発明の共重合体(A)によれば、耐日焼け止め剤性及びレベリング性を高いレベルで両立できる塗膜を形成できる。
本発明の共重合体(A)は、塗料組成物用として好適である。
【0030】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、上述した共重合体(A)を含む。
塗料組成物は、紫外線防止剤(B)をさらに含むことが好ましい。
塗料組成物は、有機溶剤(C)をさらに含んでいてもよい。
塗料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、共重合体(A)、紫外線防止剤(B)及び有機溶剤(C)以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0031】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、上述した本発明の共重合体(A)である。
塗料組成物中の共重合体(A)の含有量は、塗料組成物の総質量に対して、10~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。共重合体(A)の含有量が上記範囲内であれば、基材への密着性に優れ、耐日焼け止め剤性がより良好な塗膜となる。
【0032】
<紫外線防止剤(B)>
紫外線防止剤(B)は、有機系の紫外線防止剤(B-1)と無機系の紫外線防止剤(B-2)とに分類される。
塗料組成物は、有機系の紫外線防止剤(B-1)及び無機系の紫外線防止剤(B-2)の少なくとも一方を含むことが好ましく、少なくとも有機系の紫外線防止剤(B-1)を含むことがより好ましい。
【0033】
有機系の紫外線防止剤(B-1)は、一般的に紫外線を吸収する紫外線吸収剤である。有機系の紫外線防止剤(B-1)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ジベンゾイルメタン系化合物、パラアミノ安息香酸系化合物、メトキシ桂皮酸系化合物、サリチル酸系化合物などが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の耐日焼け止剤性がより向上する点で、トリアジン系化合物が好ましい。
【0034】
有機系の紫外線防止剤(B-1)を塗料組成物中に含有させることにより、塗料組成物から形成される塗膜の表面に日焼け止め剤が付着しても、塗膜に日焼け止め剤が浸透しにくくなる。これは、有機系の紫外線防止剤(B-1)がベンゼン環等の構造を有するためである。
塗料組成物中の有機系の紫外線防止剤(B-1)の含有量は、塗料組成物中の共重合体(A)100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましい。有機系の紫外線防止剤(B-1)の含有量が上記範囲内であれば、塗膜の耐日焼け止め剤性がより向上する。
【0035】
無機系の紫外線防止剤(B-2)は、一般的に紫外線を散乱させる紫外線散乱剤である。無機系の紫外線防止剤(B-2)としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、(酸化セリウム)などが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の耐日焼け止剤性がより向上する点で、酸化チタンが好ましく、特に、光触媒活性の低いルチル型の酸化チタンがより好ましい。
【0036】
無機系の紫外線防止剤(B-2)を塗料組成物中に含有させることにより、塗料組成物から形成される塗膜の表面に日焼け止め剤が付着しても、塗膜が膨潤したり、日焼け止め剤成分が塗膜に浸透したりしにくくなる。これは、紫外線防止剤が無機系であることにより、紫外線防止剤が日焼け止め剤に含まれる低分子量の物質や溶媒等に溶解しにくいためである。また、無機系の紫外線防止剤(B-2)は、有機系の紫外線防止剤(B-1)に比べて熱で劣化しにくいため、日焼け止め剤による塗膜の劣化を長期に渡り防ぐことができる。
塗料組成物中の無機系の紫外線防止剤(B-2)の含有量は、塗料組成物中の共重合体(A)100質量部に対して、0.1~12質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。無機系の紫外線防止剤(B-2)の含有量が上記範囲内であれば、塗膜の耐日焼け止め剤性がより向上する。
【0037】
<有機溶剤(C)>
有機溶剤(C)としては、共重合体(A)の製造方法の説明において先に例示した有機溶剤が挙げられる。
塗料組成物中の有機溶剤(C)の含有量は、該塗料組成物の粘度に応じて適宜調整することができるが、例えば、塗料組成物の総質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましい。有機溶剤(C)の含有量が上記範囲内であれば、塗装時の作業性が良好となる。加えて、塗膜のレベリング性がより向上する。
【0038】
<任意成分>
任意成分としては、例えば、顔料、充填剤、可塑剤、表面調整剤、分散剤、塗面調製剤、界面活性剤、酸化防止剤等の塗料用として通常用いられる添加剤などが挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塗料組成物中の任意成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0039】
<塗料組成物の製造方法>
塗料組成物は、例えば、共重合体(A)と、有機溶剤(C)と、必要に応じて紫外線防止剤及び任意成分から選ばれる1種以上とを混合することで得られる。
【0040】
共重合体(A)を溶液重合で製造する場合、共重合体(A)は重合の際に使用した有機溶剤に溶解又は分散した溶液(以下、「共重合体(A)溶液」ともいう。)の状態で得られる。この共重合体(A)溶液をそのまま塗料組成物として用いてもよい。また、必要に応じて、共重合体(A)溶液に紫外線防止剤及び任意成分から選ばれる1種以上を添加して、塗料組成物としてもよい。また、必要に応じて共重合体(A)溶液を有機溶剤(C)でさらに希釈してもよい。共重合体(A)溶液を希釈する場合の有機溶剤(C)は、共重合体(A)溶液中の有機溶剤と同じ種類が好ましい。
共重合体(A)溶液中の有機溶剤、すなわち共重合体(A)の製造に用いた有機溶剤が、塗料組成物中の有機溶剤(C)となる。
なお、共重合体(A)溶液から有機溶剤等を除去して共重合体(A)を回収したものを塗料組成物に用いてもよい。
【0041】
<作用効果>
以上説明した本発明の塗料組成物は、上述した共重合体(A)を含むので、耐日焼け止め剤性に優れる塗膜を形成できる。
また、本発明の塗料組成物は、共重合体(A)を含むことで耐日焼け止め剤性に優れる塗膜を形成できるので、塗膜中の架橋密度を上げたり、剛直性を示すポリマーを含有したりする必要がない。そのため、本発明の塗料組成物は、塗膜中の架橋密度を上げたり、剛直性を示すポリマーを含有したりする従来の塗料に比べて高粘度になりにくいため、レベリング性にも優れる塗膜を形成できる。
よって、本発明の塗料組成物によれば、耐日焼け止め剤性及びレベリング性を高いレベルで両立できる塗膜を形成できる。
【0042】
<用途>
本発明の塗料組成物は、例えば、自動車内装用部材;自動車外装用部材;パソコン、携帯電話等の筐体;表示窓等の各種部品;家具用外装材;内装建材;外装建材;家屋の内装面化粧材など、各種用途に好適に使用することができる。本発明の塗料組成物は耐日焼け止め剤性に優れた塗膜を形成できることから、これらの中でも、自動車内装用部材、自動車外装用部材に好適である。
【0043】
自動車内装用部材等を構成する基材に本発明の塗料組成物を塗布し、乾燥することで、基材の表面に塗膜が形成される。
基材を構成する材料としては、塗膜が形成される基材表面がマイナスに帯電するものが好ましく、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)などが挙げられる。
これらの中でも特に、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は、ABS樹脂で構成された基材に対して優れた付着性を有する。
【0044】
基材の形状については特に限定されず、フィルム状、立体状のいずれでもよい。
また、塗膜との密着性を高める観点から、塗膜が形成される基材表面は、コロナ放電処理やプラズマ処理など前処理が施されていてもよい。
【0045】
基材への塗料組成物の塗布方法としては特に制限されず、公知の方法を採用できるが、例えば、スプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、カーテンコート法、フローコート法、浸漬塗り法などが挙げられる。
基材へ塗料組成物を塗布した後に、例えば25~80℃で乾燥することにより、基材上に塗膜が形成された積層体が得られる。
塗膜の膜厚は特に限定されないが、通常は5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましい。
基材上に塗膜が形成された積層体は、そのまま成形品(例えば、上述した自動車内装用部材;自動車外装用部材;パソコン、携帯電話等の筐体;表示窓等の各種部品;家具用外装材;内装建材;外装建材;家屋の内装面化粧材など)として、各種用途に用いることができる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における各種測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0047】
[測定・評価方法]
<共重合体(A)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定>
共重合体(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。GPCの測定条件は、以下の通りとした。
・GPC装置:GPC-101(昭光通商株式会社製)。
・カラム:Shodex A-806M×2本直列つなぎ(昭和電工株式会社製)。
・検出器:Shodex RI-71(昭和電工株式会社製)。
・移動相:テトラヒドロフラン。
・流速:1mL/分。
【0048】
<耐日焼け止め剤性の評価>
ABS板(5cm×15cm)に、スプレーガンを用いて乾燥膜厚が10μmになるように塗料組成物を塗布し、室温(25℃)で10分間養生した。その後、70~80℃で30分間焼付け乾燥を行い、さらに1日養生して、ABS板上に塗膜が形成された試験体(1)を得た。
試験体(1)の塗膜の表面上に、日焼け止め剤(株式会社資生堂製、「ANESSAパーフェクトUVサンスクリーンAA」)を0.5g/100cm2の量で均一に塗布した。日焼け止め剤を塗布した試験体(1)を強制対流のない電気炉内(炉内温度55℃)で4時間放置した。その後、少量の中性洗剤を用いて塗膜の表面を十分に洗浄し、乾燥した。乾燥後の試験体(1)の塗膜の表面状態を目視にて観察し、かつ、日焼け止め剤を塗布した塗膜部分に指で触れ、塗膜のべとつき(タック感)を確認し、以下の評価基準にて評価した。
◎:日焼け止め剤による跡は認められず、タック感も全くない。
○:日焼け止め剤による跡は認められないが、多少のタック感がある。
△:日焼け止め剤による跡が認められるものの、膨れ・膨張といった劣化は認められない。また、多少のタック感がある。
×:膨れ・膨張といった劣化が認められ、タック感がある。
【0049】
<レベリング性の評価>
耐日焼け止め剤性の評価と同様にして試験体(1)を作製した。
試験体(1)の塗膜表面を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
〇:塗膜のゆず肌がほとんど認められず、良好である。
△:一部塗膜のゆず肌が認められるが、実用上の許容範囲である。
×:塗膜のゆず肌が認められ、問題がある。
【0050】
<カール性の評価>
100μm厚のPETフィルム(15cm×20cm)に、アプリケータを用いて乾燥膜厚が10μmになるように塗料組成物を塗布し、塗料組成物中の有機溶剤(C)を除去させるために、平板上にて室温(25℃)で24時間乾燥し、PETフィルム上に塗膜が形成された試験体(2)を得た。
試験体(2)の状態を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。カール性が良好であるほど、基材への密着性が良好であることを意味する。
○:PETフィルムの浮き高さが0mmであり、良好である。
△:PETフィルムの浮き高さが0mm超、10mm以下であるが、実用上の許容範囲である。
×:PETフィルムの浮き高さが10mm超であり、問題がある。
【0051】
[実施例1]
<共重合体(A-1)の製造>
単量体(a1)としてメタクリル酸メチル94質量部、単量体(a2)としてメタクリル酸1質量部、単量体(a3)として日本乳化剤株式会社製の商品名「FU-64B02」(2-メタクリロイルオキシエチルエチレン尿素を25.2質量%含有)19.8質量部を混合し、単量体混合物(M-1)を得た。
冷却器、温度計、モノマー滴下装置、及び攪拌機を備えた2Lの4つ口フラスコに、前記単量体混合物(M-1)57.4質量部と、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)1質量部と、イソプロパノール32.5質量部と、酢酸エチル20質量部とを仕込み、フラスコ内温を75℃に昇温し、この温度を維持できるように冷却しながら発熱を抑え、1時間重合反応を行った。
その後、残りの単量体混合物(M-1)57.4質量部と、ABN-Eを1質量部と、イソプロパノール32.5質量部と、酢酸エチル20質量部とをさらに仕込み、75℃を維持しながら2時間重合反応を行った。
ついで、未反応のモノマーを処理するため、ABN-Eを0.5質量部投入し、75℃で2時間重合反応を行った。重合反応終了後、50℃まで冷却し、イソプロパノール15質量部及び酢酸エチル5質量部を投入して希釈し、共重合体(A-1)を溶液の状態で得た。以下、この溶液を「共重合体(A-1)溶液」ともいう。共重合体(A-1)溶液の固形分は約44質量%であった。
共重合体(A-1)の数平均分子量(Mn)は12000であり、重量平均分子量(Mw)は43000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は3.6であった。
【0052】
得られた共重合体(A-1)溶液をそのまま塗料組成物として使用し、耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2~8、比較例1~6]
単量体(a1)~(a3)の配合量を表1、2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体(A-2)~(A-14)を溶液の状態で得た。以下、これらの溶液を「共重合体(A-2)~(A-14)溶液」ともいう。共重合体(A-2)~(A-14)溶液の固形分は約44質量%であった。
共重合体(A-2)~(A-14)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(Mw/Mn)を表1、2に示す。
得られた共重合体(A-2)~(A-14)溶液をそのまま塗料組成物として使用し、耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0054】
[実施例9]
単量体(a1)~(a3)の配合量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体(A-2)を溶液の状態で得た。
得られた共重合体(A-2)溶液中の共重合体(A-2)100質量部に対し、有機系の紫外線防止剤としてトリアジン系化合物を有効成分が4.3質量部となるように、共重合体(A-2)溶液に添加し、よく混合して塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物について、耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
なお、表1、2中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
また、単量体(a1)のホモポリマーのガラス転移温度は以下の通りである。
・メタクリル酸メチル:105℃。
・アクリル酸メチル:8℃。
・アクリル酸n-ブチル:-54℃。
【0058】
実施例1~9で得られた塗料組成物は、耐日焼け止め剤性、レベリング性及びカール性に優れる塗膜を形成できた。特に、紫外線防止剤を含む実施例9で得られた塗料組成物から形成された塗膜は、耐日焼け止め剤性により優れていた。
対して、単量体(a1)に由来する単位の含有量が70質量%未満であり、単量体(a3)に由来する単位の含有量が22質量%超である共重合体(A-9)又は共重合体(A-10)を含む比較例1、2の塗料組成物より得られた塗膜は、レベリング性及びカール性に劣っていた。特に、単量体(a2)に由来する単位の含有量が10質量%超である比較例1の場合、カール性により劣っていた。
単量体(a2)に由来する単位を含まない共重合体(A-11)~(A-13)のいずれかを含む比較例3~5の塗料組成物より得られた塗膜は、耐日焼け止め剤性に劣っていた。特に、単量体(a2)の代わりに他の単量体を用いた比較例4の場合は、カール性にも劣っていた。
単量体(a1)に由来する単位の含有量が95質量%超であり、単量体(a3)に由来する単位を含まない共重合体(A-14)を含む比較例6の塗料組成物より得られた塗膜は、耐日焼け止め剤性及びカール性に劣っていた。
本発明の共重合体及び塗料組成物によれば、耐日焼け止め剤性及びレベリング性に優れる塗膜を形成できる。よって、本発明は、自動車の内外装部品や各種成形品の基材表面に塗布される塗料組成物の分野において好適に利用でき、本発明は産業上極めて重要である。