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特開2022-152357共役ジエン重合体組成物、及び前記組成物を含むゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152357
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】共役ジエン重合体組成物、及び前記組成物を含むゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20221004BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20221004BHJP
   C08G 18/83 20060101ALI20221004BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20221004BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L75/04
C08G18/83
C08G18/79
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055096
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】土谷 平
(72)【発明者】
【氏名】滝川 真弥
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA02
3D131BA18
3D131BA20
4J002AC01W
4J002AC03W
4J002AC06W
4J002AC07W
4J002AC08W
4J002AC09W
4J002BB15W
4J002BB18W
4J002BB24W
4J002CK05X
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4J002GN01
4J034DP19
4J034FA05
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA07
4J034HA15
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
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4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA14
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4J034KB02
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4J034KC18
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4J034LA36
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4J034RA03
4J034RA11
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】自己修復性を有する共役ジエン重合体組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂とを含む共役ジエン重合体組成物であって、ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造と、活性水素基を有する化合物由来の構造と、ポリウレタン樹脂末端に2個以上の水素結合性官能基とを含む、共役ジエン重合体組成物、及び前記組成物を含むゴム組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂とを含む共役ジエン重合体組成物であって、ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造と、活性水素基を有する化合物由来の構造と、ポリウレタン樹脂末端に2個以上の水素結合性官能基とを含む、共役ジエン重合体組成物。
【請求項2】
ポリウレタン樹脂末端の水素結合性官能基は、ピペリジノ基、ピペラジノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の共役ジエン重合体組成物。
【請求項3】
ポリウレタン樹脂の活性水素基を有する化合物由来の構造は、ポリオール及び/又はポリアミン由来の構造を含む、請求項1又は2に記載の共役ジエン重合体組成物。
【請求項4】
ポリウレタン樹脂の3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造は、HDI変性イソシアヌレート、及び、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構造を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の共役ジエン重合体組成物。
【請求項5】
共役ジエン重合体は、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム及びエチレン-プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の共役ジエン重合体組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の共役ジエン重合体組成物を含む、ゴム組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項8】
請求項6に記載のゴム組成物を用いたベルト。
【請求項9】
請求項6に記載のゴム組成物を用いた履物部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン重合体組成物、及び前記組成物を含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤなどのゴム製品においては、変形や破断に対する耐久性が求められる。従来、加硫ゴムの耐屈曲疲労性を向上するために、ゴム組成物に配合するゴム成分として耐屈曲疲労性に優れる天然ゴムを用いたり、屈曲による亀裂の発生及び成長を抑制する老化防止剤を配合したりすることが行われている。
【0003】
また、特許文献1には、ジエン系ゴムにポリウレタンを添加したゴム組成物に対して紫外線照射を行い、当該ゴム組成物の耐久性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-066202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1には自己修復性を有する共役ジエン重合重合体組成物は開示されていなかった。
【0006】
本発明は、自己修復性を有する共役ジエン重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関する。
[1]共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂とを含む共役ジエン重合体組成物であって、ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造と、活性水素基を有する化合物由来の構造と、ポリウレタン樹脂末端に2個以上の水素結合性官能基とを含む、共役ジエン重合体組成物。
[2]ポリウレタン樹脂末端の水素結合性官能基は、ピペリジノ基、ピペラジノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]の共役ジエン重合体組成物。
[3]ポリウレタン樹脂の活性水素基を有する化合物由来の構造は、ポリオール及び/又はポリアミン由来の構造を含む、[1]又は[2]の共役ジエン重合体組成物。
[4]ポリウレタン樹脂の3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造は、HDI変性イソシアヌレート、及び、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構造を含む、[1]~[3]のいずれかの共役ジエン重合体組成物。
[5]共役ジエン重合体は、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム及びエチレン-プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかの共役ジエン重合体組成物。
[6][1]~[5]のいずれかの共役ジエン重合体組成物を含む、ゴム組成物。
[7][6]のゴム組成物を用いたタイヤ。
[8][6]のゴム組成物を用いたベルト。
[9][6]のゴム組成物を用いた履物部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自己修復性を有する共役ジエン重合体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[共役ジエン重合体組成物]
共役ジエン重合体組成物は、共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂とを含む共役ジエン重合体組成物であって、ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造と、活性水素基を有する化合物由来の構造と、ポリウレタン樹脂末端に2個以上の水素結合性官能基とを含む。
【0010】
ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造を有するため、分岐構造を有する。また、ポリウレタン樹脂は、末端に2個以上の水素結合性官能基を含むため、加熱処理によって、破断個所における複数のポリウレタン樹脂の分子同士が水素結合し、得られるポリウレタン樹脂の結合体が網目構造を形成し易くなる。そして、共役ジエン重合体と、ポリウレタン樹脂の網目構造とで、セミ相互侵入網目高分子のような構造を形成することにより、共役ジエン重合体組成物に自己修復性が付与されるものと考えられる。なお、セミ相互侵入網目高分子とは、少なくとも2つのポリマーの組み合わせであり、そのポリマーのうち少なくとも1つが別のポリマー存在下で、そのポリマーに架橋されずに網目構造を形成し、そのポリマーのうち少なくとも1つが棒状高分子から構成されている高分子である。
【0011】
<共役ジエン重合体>
共役ジエン重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム(例えば、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム)等が挙げられる。共役ジエン重合体は、自己修復性及び相溶性の観点から、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム及びエチレン-プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
共役ジエン重合体は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0012】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂は、3個以上のイソシアネート基を有する化合物由来の構造と、活性水素基を有する化合物由来の構造と、ポリウレタン樹脂末端に2個以上の水素結合性官能基とを含む。ポリウレタン樹脂は、前記した化合物以外の更なる化合物(例えば、後述する水素結合性官能基を有する化合物)由来の構造を有していてもよい。なお、ポリウレタン樹脂において、3個以上のイソシアネート基を有する化合物(但し、後述するアダクト体を除く)、活性水素基を有する化合物及び更なる化合物は、ウレタン結合を有さないことが好ましい。また、3個以上のイソシアネート基を有する化合物及び活性水素基を有する化合物は、水素結合性官能基を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0013】
≪3個以上のイソシアネート基を有する化合物≫
3個以上のイソシアネート基を有する化合物(以下、単に「イソシアネート化合物」ともいう。)は、分子中に3個以上のイソシアネート基(-NCO基)を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されない。ポリウレタン樹脂が、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物由来の構造を有することで、ポリウレタン樹脂が分岐構造となり、各末端の水素結合性官能基同士の水素結合によって、網目構造を形成し易い。イソシアネート化合物において、イソシアネート基の数は、特に限定されないが、3個~9個であることが好ましく、3個~6個であることが特に好ましい。
【0014】
イソシアネート化合物としては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体、及び、イソシアヌレート変性体以外のイソシアネート化合物(「その他のイソシアネート化合物」ともいう)が挙げられる。
【0015】
(イソシアヌレート変性体)
イソシアヌレート変性体としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等をイソシアヌレート変性した化合物等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0018】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
イソシアヌレート変性体の市販品としては、デュラネートTPA-100(HDI系イソシアヌレート旭化成ケミカルズ社製)、デュラネートTLA-100(HDI系イソシアヌレート旭化成ケミカルズ社製)、コロネートHX(HDI系イソシアヌレート 日本ポリウレタン社製)等が挙げられる。
【0021】
(その他のイソシアネート化合物)
その他のイソシアネート化合物としては、特に限定されず、分子中に3個以上の活性水素基を有する化合物に、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が付加したアダクト体;及び、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物のビウレット体が挙げられる。
【0022】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、特に限定されず、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの具体例は、3個以上のイソシアネート基を有する化合物において前記した通りである。
【0023】
分子中に3個以上の活性水素基を有する化合物としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の水酸基を有する多価アルコール、ジエチレントリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等の多価アミン等が挙げられ、多価アルコールが好ましい。
【0024】
分子中に3個の水酸基を有する多価アルコールのアダクト体としては、例えば、下式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】

〔式(1)中、Rは、炭素原子数1~6のアルキル基であり、X11~X13は、独立に、炭素原子数2~20の酸素原子を有してもよい鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。〕
11~X13としては、前記した脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例から2つのイソシアネート基を除いた基であることが好ましい。
例えば、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体は、上記式において、Rが炭素原子数2のアルキル基であり、X11~X13は、キシリレン基である化合物である。
【0025】
3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物のビウレット体としては、
の前記した脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物のビウレット体等が挙げられる。
【0026】
前記アダクト体及びビウレット体以外の、その他のイソシアネート化合物としては、特に限定されない。なお、その他のイソシアネート化合物として、前記イソシアヌレート変性体、アダクト体及びビウレット体を構成する、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物は除かれるものとする。
【0027】
(イソシアネート化合物の好ましい態様)
イソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体である場合、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物からなる群より選択される1種以上のジイソシアネート化合物をイソシアヌレート変性した化合物であることが好ましく、HDI変性イソシアヌレートであることが特に好ましい。
イソシアネート化合物がアダクト体である場合、3個の水酸基を有する多価アルコールと、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物からなる群より選択される1種以上のジイソシアネート化合物とのアダクト体であることが好ましく、トリメチロールプロパンと、トリレンジイソシアネートとのアダクト体であることが特に好ましい。
イソシアネート化合物は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0028】
≪活性水素基を有する化合物≫
活性水素基を有する化合物は、イソシアネート化合物と反応してウレタン結合を形成する化合物である。活性水素基としては、イソシアネート基と反応する基であれば特に限定されないが、水酸基、アミノ基(好ましくは、第1級アミノ基)が好ましい。よって、活性水素基を有する化合物としては、ポリオール及び/又はポリアミンが挙げられる。活性水素基を有する化合物において、活性水素基の数は、特に限定されないが、2個~6個であることが好ましく、2個~4個であることが特に好ましい。なお、活性水素基を有する化合物として、前記アダクト体を構成するための分子中に3個以上の活性水素基を有する化合物は除かれる。
【0029】
ポリオールとしては、(水素化)ポリブタジエンポリオール、(水素化)ポリイソプレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオールが挙げられる。なお、「(水素化)ポリブタジエンポリオール」は、ポリブタジエンポリオール及びポリブタジエンポリオールの水素化物の少なくとも一方を意味する。(水素化)ポリイソプレンポリオールについても同様である。
【0030】
((水素化)ポリブタジエンポリオール)
ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、ポリ(1,4-ブタンジエン)ポリオール、ポリ(1,2-ブタジエン)ポリオール、ポリ(1,2-/1,4-ブタジエン)ポリオール等が挙げられる。ポリ(1,2-/1,4-ブタジエン)ポリオールにおいて、1,4結合及び1,2結合の割合は任意である。
【0031】
ポリブタジエンポリオールは、1,3-ブタジエンがトランス1,4結合したポリブタジエン構造を有するものであってもよく、1,3-ブタジエンがシス1,4結合したポリブタジエン構造を有するものであってもよく、1,3-ブタジエンが1,2結合したポリブタジエン構造を有するものであってもよい。また、これら結合が混在したポリブタジエン構造を有するものであってもよい。
【0032】
ポリブタジエンポリオールは、水素化ポリブタジエンポリオールであってもよい。水素化ポリブタジエンポリオールは、前記のポリブタジエンポリオールを水素付加することにより得られる。
【0033】
ポリブタジエンポリオールとしては、分子中にポリブタジエン構造及び2つの水酸基を有するものが好ましく、鎖状のポリブタジエン構造の両端にそれぞれ水酸基を有する両末端水酸基水素化ポリブタジエン(水素化ポリブタジエンジオール)であることが特に好ましい。
【0034】
ポリブタジエンポリオールは、合成してもよく、市販品を用いてもよい。1,2結合の繰り返し単位を主に有する水素化ポリブタジエンジオールの市販品としては、GI-1000、GI-2000、GI-3000(いずれも商品名:日本曹達株式会社製)等が挙げられる。1,4結合の繰り返し単位を主に有する水素化ポリブタジエンジオールの市販品としては、ポリテールH、ポリテールHA(いずれも三菱化学株式会社製)等が挙げられる。1,4結合の繰り返し単位を主に有するポリブタジエンジオールの市販品としては、Polybd(商標)R-15HT、Poly bd(商標)R-45HT(いずれも出光興産株式会社製)等が挙げられる。1,2結合の繰り返し単位を主に有するポリ(1,2-ブタジエン)グリコールの市販品としては、G-1000、G-2000,G-3000(いずれも日本曹達株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
((水素化)ポリイソプレンポリオール)
ポリイソプレンポリオールとしては、ポリ(1,2-イソプレン)ポリオール、ポリ(1,4-イソプレン)ポリオール、ポリ(3,4-イソプレン)ポリオール、及び前記の2種又は3種の組合せのポリイソプレンポリオール等が挙げられる。ポリイソプレンポリオールは、1,4結合、1,2結合及び3,4結合から選ばれる2種又は3種の結合を有するイソプレンの重合体である場合、それらの結合の割合は任意である。
【0036】
ポリイソプレンポリオールは、イソプレンがトランス1,4結合したポリイソプレン構造を有するものであってもよく、イソプレンがシス1,4結合したポリイソプレン構造を有するものであってもよく、イソプレンが1,2結合したポリイソプレン構造を有するものであってもよく、イソプレンが3,4結合したポリイソプレン構造を有するものであってもよい。また、これら結合が混在したポリイソプレン構造を有するものであってもよい。
【0037】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールとしては、特に制限されないが、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオール等の脂肪族ポリカーボネートジオール;ポリ1,4-キシリレンカーボネートジオール等の芳香族ポリカーボネートジオール;複数種の脂肪族モノマージオールと炭酸エステルとを構成成分とするポリカーボネートジオール;脂肪族モノマージオールと芳香族モノマージオールと炭酸エステルとを構成成分とするポリカーボネートジオール;脂肪族モノマージオールと脂環族モノマージオールと炭酸エステルとを構成成分とするポリカーボネートジオール;及び、脂肪族モノマージオールとダイマージオールと炭酸エステルとを構成成分とするポリカーボネートジオール等の共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0038】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、特に制限されないが、6-ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0039】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限されないが、3-オキサ-1,5-ペンタンジオール(ジエチレングリコール)等のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0040】
(活性水素基を有する化合物の水酸基価)
活性水素基を有する化合物の水酸基価は、20~250mgKOH/gであることが好ましく、50~120mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価は、JIS K1557-1に従って求めることができる。
【0041】
(その他のポリオール)
その他のポリオールとしては、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの炭素原子数2~12のジオール;ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの炭素原子数4~12のラクトン;ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸などの炭素原子数4~12のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
ポリアミンとしては、分子中に2個以上の第1級アミノ基を有するポリアミン化合物が挙げられる。ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0043】
活性水素基を有する化合物は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0044】
≪水素結合性官能基≫
ポリウレタン樹脂は、その末端に水素結合性官能基を2個以上有する。水素結合とは、電気陰性度の大きな原子(O、N、S等)に結合し電気的に陽性に分極した水素原子(ドナー)と、孤立電子対を有する電気的に陰性な原子(アクセプター)との間に形成される結合性の相互作用を意味する。よって、水素結合性官能基とは、水素結合においてドナーかつアクセプターとして機能することのできる官能基又は分子内の結合を意味する。
【0045】
このような水素結合性官能基としては、カルボキシル基、アミド基(-CONH基)、ヒドロキシアミノ基(-NHOH基)、第二級アミノ基、第三級アミノ基等が挙げられる。ここで、第二級アミノ基、第三級アミノ基は、環状アミノ基であってもよく、アミド結合又はウレア結合中の窒素原子であってもよい。ここで、環状アミノ基とは、アミノ基の窒素原子と共に形成される、第二級又は第三級の飽和又は不飽和の含窒素複素環基を意味する。環状アミノ基としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モホルリノ基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、キヌクリジンイル基、ピラジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等が挙げられる。
水素結合性官能基は、共役ジエン重合体組成物の自己修復性向上の観点から第二級アミノ基、第三級アミノ基及びカルボキシル基であることが好ましく、ピペリジノ基、ピペラジノ基及びカルボキシル基であることが特に好ましい。
【0046】
水素結合性官能基は、水素結合性官能基を有する化合物によって導入することができる。この場合、ポリウレタン樹脂は、更なる単位として水素結合性官能基を有する化合物に由来する構造を有する。水素結合性官能基を有する化合物は、活性水素基又はイソシアネート基を有することが好ましい。水素結合性官能基を有する化合物が活性水素基を有する場合、イソシアネート基と容易に反応することができ、これによりポリウレタン樹脂に水素結合性官能基が導入される。水素結合性官能基を有する化合物がイソシアネート基を有する場合、活性水素基と容易に反応することができ、これによりポリウレタン樹脂に水素結合性官能基が導入される。
【0047】
水素結合性官能基を有する化合物としては、水素結合性官能基と活性水素基を有する化合物であることが好ましい。このような化合物として、1-フェニルピペラジン、4-ピペリジノピペリジン等の水素結合性官能基とアミノ基を有する化合物、ヒドロキシカルボン酸(例えば、ヒドロキシピパル酸等)等の水素結合性官能基と水酸基を有する化合物が挙げられる。なお、水素結合性官能基が有するアミノ基の窒素原子は、活性水素基がアミノ基である場合の窒素原子を兼ねていてもよい。例えば、水素結合性官能基を有する化合物が第二級アミノ基を有する化合物である場合、当該第二級アミノ基とイソシアネート基とが反応して形成される第三級アミノ基が、水素結合性官能基となってもよい。
【0048】
また、水素結合性官能基がカルボキシル基である場合、ポリオール化合物とイソシアネート化合物とを、ポリオール成分を過剰とした条件で反応させて得られる反応生成物中の水酸基を酸化することにより、カルボキシル基を形成してもよい。この場合、ポリウレタン樹脂は、活性水素基及び水素結合性官能基を有する化合物に由来する構造を有する。
【0049】
水素結合性官能基を有する化合物は、得られる共役ジエン重合体組成物及び前記組成物を含むゴム組成物の弾性率に応じて適宜設定でき、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0050】
ポリウレタン樹脂において、水素結合性官能基は、2つのイソシアネート化合物を連結する側鎖中に存在しないことが好ましい。また、ポリウレタン樹脂は、1つのイソシアネート化合物のみに結合する炭素鎖に、1個の水素結合性官能基が存在することが好ましい。このような水素結合性官能基は、1個の水素結合性官能基と、1個の活性水素基とを有する化合物によって導入してもよい。また、水素結合性官能基がカルボキシル基である場合には、ジオール化合物とイソシアネート化合物とを、ジオール成分を過剰とした条件で反応させて得られる反応生成物中の水酸基を酸化することにより、水素結合性官能基を導入してもよい。
【0051】
ポリウレタン樹脂が有する末端の水素結合性官能基の数は、自己修復性及び弾性率の観点から、3個以上であることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂は、1個の水素結合性官能基を有する炭素鎖を2つ~6つ有することが好ましい。
【0052】
(ポリウレタン樹脂の特性(分子量))
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000~300,000であることが好ましく、30,000~200,000であることが特に好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0053】
(ポリウレタン樹脂と共役ジエン重合体の割合)
共役ジエン重合体組成物におけるポリウレタン樹脂と共役ジエン重合体の割合は、特に限定されないが、共役ジエン重合体100質量部に対して、ポリウレタン樹脂の含有量は1~500質量部であることが好ましく、10~500質量部であることがより好ましく、25~500質量部であることが更に好ましく、25~100質量部であることが特に好ましい。前記したポリウレタン樹脂と共役ジエン重合体の含有量である場合、共役ジエン重合体組成物の自己修復性を向上させることができる。
【0054】
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
ポリウレタン樹脂の製造方法は、従来公知の方法により製造することができる。ポリウレタン樹脂の製造方法の具体例としては、以下の工程1及び工程2を含む方法が挙げられる。
工程1:活性水素基を有する化合物と、3個以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させて、ポリウレタン前駆体を得る工程と、
工程2:ポリウレタン前駆体に、水素結合性官能基を形成させる工程と、を含む。
【0055】
工程1は、活性水素基を有する化合物と、3個以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させて、ポリウレタン前駆体を得る工程である。工程1において、活性水素基を有する化合物及び3個以上のイソシアネート基を有する化合物の使用量に応じて、ポリウレタン前駆体は、末端に活性水素基を有するポリウレタン前駆体(「ポリウレタン前駆体1」ともいう)、又は末端にイソシアネート基を有するポリウレタン前駆体(「ポリウレタン前駆体2」ともいう)が得られる。
【0056】
また、工程1においてポリウレタン前駆体1が得られる場合、工程1は、さらに、ポリウレタン前駆体1と、2個のイソシアネート基を有する化合物と反応させて、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン前駆体(「ポリウレタン前駆体3」ともいう)を得る工程を含んでいてもよい。また、工程1においてポリウレタン前駆体1が得られる場合、3個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いて、さらに、工程1を繰り返すことで、更なる分岐構造を形成してもよい。
【0057】
工程2は、ポリウレタン前駆体に、水素結合性官能基を形成させる工程である。工程2としては、イソシアネート基を有するポリウレタン前駆体と、水素結合性官能基及び活性水素基を有する化合物とを反応させる工程(工程2a)、又は、活性水素基を有するポリウレタン前駆体の活性水素基を、水素結合性官能基に変換する工程(工程2b)が挙げられる。
【0058】
工程2aは、イソシアネート基を有するポリウレタン前駆体と、水素結合性官能基及び活性水素基を有する化合物とを反応させる工程である。工程2aは、ポリウレタン前駆体2又は3(末端にイソシアネート基を有するポリウレタン前駆体)を原料とする。工程2において、活性水素基と水素結合性官能基とを有する化合物とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂に水素結合性官能基を導入することができる。活性水素基と水素結合性官能基とを有する化合物は、前記した通りである。なお、工程2aの原料として、TP-1001(日本曹達株式会社)等の市販品を用いてもよい。
【0059】
工程2bは、活性水素基を有するポリウレタン前駆体の活性水素基を、水素結合性官能基に変換する工程である。工程2bは、ポリウレタン前駆体1(末端に活性水素基を有するポリウレタン前駆体)を原料とする。工程2bは、ポリウレタン前駆体1が有する活性水素基が水酸基であるときは、当該水酸基を酸化して、前記ポリウレタン前駆体の水酸基をカルボキシル基とすることにより、ポリウレタン樹脂を得る工程であってもよい。ポリウレタン前駆体を酸化するための酸化剤としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を用いた酸化方法が挙げられる。また、工程2bは、ポリウレタン前駆体1と、イソシアネート基及び水素結合性官能基を有する化合物とを反応させる工程であってもよい。ここで、イソシアネート基及び水素結合性官能基を有する化合物は、前記した通りである。
【0060】
ポリウレタン樹脂の製造方法において、原料化合物(即ち、活性水素基を有する化合物、3個以上のイソシアネート基を有する化合物等)の使用量(NCO/OH比等)は、所望のポリウレタン樹脂の構造に応じて、適宜設定できる。その他の製造方法の条件は、例えば、特開2017-66202公報に記載の方法により製造することができる。
【0061】
ポリウレタン樹脂製造方法において、活性水素基を有する化合物と、イソシアネート基を有する化合物との反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ポリウレタン樹脂を製造する際に用いられる触媒であれば特に制限はされず、スズ(錫)系触媒(ジラウリル酸ジブチルスズ、等)や鉛系触媒(オクチル酸鉛など)等の金属と有機及び無機酸の塩、並びに有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。
【0062】
(共役ジエン重合体組成物の製造方法)
共役ジエン重合体組成物は、共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂とを、混合することにより製造することができる。
【0063】
(共役ジエン重合体組成物の用途)
共役ジエン重合体組成物は、室温(例えば、10~30℃)以上90℃以下の温度で放置することにより、自己修復性を発揮することができる。自己修復性を発現する時間は、放置温度、共役ジエン重合体組成物の組成に応じて適宜設定することができるが、4時間以上放置することが好ましく、材料の劣化の観点から24時間以下が望ましい。
【0064】
[ゴム組成物]
ゴム組成物は、共役ジエン重合体組成物を含む。即ち、ゴム組成物は、共役ジエン重合体組成物(共役ジエン重合体とポリウレタン樹脂との混合物)以外に、使用用途に応じて、ゴム工業で一般的に使用されている更なる成分を含むことができる。更なる成分としては、カーボンブラック等の着色剤、加硫剤、架橋剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑化剤等が挙げられる。更なる成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。また、更なる成分の配合量は、特に限定されず、ゴム組成物の用途に応じて適宜設定することができる。
【0065】
(ゴム組成物の用途)
ゴム組成物は、タイヤ、ベルト(コンベアベルト等)、履物部材、防振ゴム等に用いることができる。
【0066】
タイヤとしては、乗用車用、トラック用、バス用等の空気入りタイヤが挙げられる。ゴム組成物は、トレッドゴム、サイドウォールゴム、リムストリップゴム等のタイヤの各部位に適用することができる。このほかに、タイヤ用のゴム組成物としては、例えば、特開2011-252090号公報に記載されたタイヤに適用することができる。
【実施例0067】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。表における値は、特に断らない限り質量部である。
【0068】
(ポリウレタン樹脂の合成例)
(合成例1)
活性水素基を有する化合物である両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000「日本曹達株式会社製」水酸基価70.5mgKOH/g、407g)を酢酸ブチル(脱水)1400gに溶解させ、触媒としてジラウリル酸ジブチルスズ45mg加え、さらに3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であるイソシアヌレート(製品名:デュラネート(登録商標)TPA-100「旭化成株式会社製」、47g)を加え90℃で2時間半反応させた。この溶液1300mLと酢酸ブチル605gとジラウリル酸ジブチルスズ132mgと3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であるイソシアヌレート(製品名:デュラネート(登録商標)TPA-100「旭化成株式会社製」、125g)を90℃で3時間攪拌し、さらに水素結合性官能基を形成する化合物である1-フェニルピペラジンを77g加え90℃で30分間攪拌して、ポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂を分析した結果、Mw=185,500、Mw/Mn=65.1であった。
【0069】
(合成例2)
活性水素基を有する化合物である両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000「日本曹達株式会社製」水酸基価70.5mgKOH/g、203g)を酢酸ブチル(脱水)709gに溶解させ、触媒としてジラウリル酸ジブチルスズ26mg加え、さらに3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であるイソシアヌレート(製品名:デュラネート(登録商標)TPA-100「旭化成株式会社製」、23g)を加え90℃で反応させた。濃縮後得られた重合体58gと酢酸ブチル517gとイソホロンジイソシアネート(IPDI) 9gを90℃で3時間攪拌し、さらに水素結合性官能基を形成する化合物である1-フェニルピペラジンを5.5g加え90℃で撹拌して、ポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂を分析した結果、Mw=36,700、Mw/Mn=12.7であった。
【0070】
(合成例3)
活性水素基を有する化合物である両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000「日本曹達株式会社製」水酸基価70.5mgKOH/g、252.17g)を酢酸ブチル(脱水)932.2gに溶解させた。触媒としてジラウリル酸ジブチルスズ36.2mg加え、さらに3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であるイソシアヌレート(製品名:デュラネート(登録商標)TPA-100「旭化成株式会社製」、27.6g)を加えて90℃で100分反応させた。
この反応により得られた物質64.8gを100mLのジクロロメタンに溶解させた。さらに0.67Mリン酸緩衝液(pH6.7)150mL、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)1.0gを加えた。2M NaClO水溶液92mLと、0.04M NaClO水溶液46mLとを滴下し、35℃で6時間攪拌し、ポリウレタン樹脂末端の水酸基を酸化した。濃縮により、ポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂を分析した結果、Mw=31,800、Mw/Mn=4.7であった。
【0071】
(合成例4)
活性水素基を有する化合物である両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-3000「日本曹達株式会社製」水酸基価28.8mgKOH/g、100g)を酢酸ブチル(脱水)384gに溶解させた。触媒としてジラウリル酸ジブチルスズ25mg加え、さらに3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であるイソシアヌレート(製品名:デュラネート(登録商標)TPA-100「旭化成株式会社製」、4.8g)を加えて90℃で1時間反応させた。濃縮により得られた重合体61gを200mLのジクロロメタンに溶解させた。さらに0.67Mリン酸緩衝液(pH6.7)150mL、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)460mgを加えた。2M NaClO水溶液42mLと、0.04M NaClO水溶液21mLとを滴下し、35℃で6時間攪拌し、ポリウレタン樹脂末端の水酸基を酸化した。濃縮により、ポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂を分析した結果、Mw=118,600、Mw/Mn=8.1であった。
【0072】
(合成例5)
活性水素基を有する化合物(多価アルコール)の両末端にジイソシアネートを付加したアダクト体である末端イソシアネート基導入ポリブタジエン(製品名:TP-1001「日本曹達株式会社製」27.7g)を酢酸ブチル(脱水)40.8gに溶解させた。さらに水素結合性官能基を形成する化合物である4-ピペリジノピペリジン5gを加えて42℃で160分撹拌して、ポリウレタン樹脂を得た。
【0073】
(共役ジエン重合体組成物の製造例)
(実施例1~5)
共役ジエン重合体であるポリブタジエンゴム(製品名:UBEPOL BR(登録商標)150B「宇部興産株式会社製」)と合成例1、2、4のポリウレタン樹脂をラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、型式:10C100)を用いて、80℃、60rpmで5分間混錬を行い、共役ジエン重合体組成物を得た。ポリウレタン樹脂とポリブタジエンゴムとの混合割合を表1に示した。その後、得られた共役ジエン重合体組成物を金型、離型紙、鋼製平板を用いて80℃で1時間、余熱で30分加圧することにより、15×60×3mmの試験片を作製した。
【0074】
(実施例6及び7)
共役ジエン重合体であるポリブタジエンゴム(製品名:UBEPOL BR(登録商標)150B「宇部興産株式会社製」)と合成例3、5のポリウレタン樹脂をラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製、型式:10C100)を用いて、80℃、60rpmで5分間混錬を行い、共役ジエン重合体組成物を得た。ポリウレタン樹脂とポリブタジエンゴムとの混合割合を表1に示した。その後、得られた共役ジエン重合体組成物を金型、離型紙、鋼製平板を用いて80℃で1時間、余熱で30分加圧することにより、40×60×1.5mmのプレスシートを作製した。さらにプレスシートをカットすることにより8×40×1.5mmの試験片を作製した。
【0075】
(比較例1)
共役ジエン重合体であるポリブタジエンゴム(製品名:UBEPOL BR(登録商標)150B「宇部興産株式会社製」)を金型、離型紙、鋼製平板を用いて80℃で1時間、余熱で30分加圧することにより、15×60×3mmの試験片を作製した。
【0076】
(自己修復性(引張試験))
前記方法により得られた試験片の中央部に、試験片平行部に対して垂直に厚さ方向50%の切断傷をハサミにより付与し、傷入り試験片を作製した。傷入り試験片を送風乾燥機にて、80℃にて16時間加熱したものを修復後試験片とした。実施例1~5及び比較例1の試験片に対し、万能試験機(インストロン製5582(100KN))を用いて、温度23℃±2℃、つかみ具間距離40mm、100mm/minの速度で引張試験を行った。
なお、上記引張試験は、試験片が切断しなくても、つかみ具間距離が200mmとなった時点で終了した。
【0077】
また、実施例6及び7の試験片に対し、万能試験機(インストロン製5582(100KN))を用いて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%、つかみ具間距離20mm、100mm/minの速度で引張試験を行った。
なお、上記引張試験は、試験片が切断しなくても、つかみ具間距離が100mmとなった時点で終了した。
【0078】
引張試験より得られた弾性率を表1に示した。また自己修復性については目視及びS-S曲線により判定した。
(自己修復性の評価結果)
○:引張ひずみ500%まで切断面が破断しなかった場合。又は、切断前の試験片の(引張ひずみ(%)×0.9)で切断面又は切断面以外が破断した場合。
△:破断時の引張ひずみが100%以上かつ、切断前の試験片の(引張ひずみ(%)×0.9)未満で破断したした場合。
×:破断時の引張ひずみが100%未満の場合。
【0079】
(重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(東ソー製 HLC-82220GPC)を用い、ポリスチレン標準物質で校正した上で、分子量分布曲線を測定した。数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)で分子量分布を評価した。合成したポリウレタン樹脂はTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた後、分子量分布曲線を測定した。
【0080】
結果を以下の表1に示す。各成分の配合量の値は全て質量部である。
【0081】
【表1】
【0082】
表1から、実施例の共役ジエン重合体組成物は、自己修復性が優れていた。一方、比較例1は、共役ジエン重合体のみであり、自己修復性を有していなかった。また、実施例1及び2と実施例3との比較より、ポリウレタン樹脂の含有率が高くなる場合、自己修復性が優れていることが分かる。また、実施例1及び2の結果より、ポリウレタン樹脂の含有量を調節することで、自己修復性を維持したまま、共役ジエン重合体組成物の弾性率の制御が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
自己修復性に優れた共役ジエン重合体組成物は、タイヤ、ベルト、履物部材等の各種ゴム組成物の材料とし有用である。