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特開2022-152379溶接接合体及びその製造方法、並びにその評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152379
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】溶接接合体及びその製造方法、並びにその評価方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/11 20060101AFI20221004BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20221004BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20221004BHJP
【FI】
B23K11/11 540
B23K31/00 K
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055133
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 知将
【テーマコード(参考)】
2G001
4E165
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
2G001LA20
4E165AA01
4E165AA12
4E165AA13
4E165AB02
4E165BB02
4E165BB12
(57)【要約】
【課題】 非破壊的な手法により抵抗溶接ナゲットの形成状態を直接的かつ高精度に特定する上で好都合な構造を有した溶接接合体を提供する。
【解決手段】 板面の少なくとも一部が重なるよう積層された第一金属板材と第二金属板材との間に、第一金属板材と第二金属板材とを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲットを形成する。第一金属板材と第二金属板材との重なり領域において、第一金属板材及び第二金属板材の少なくとも一方の板面に、第一金属板材及び第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層を、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面の少なくとも一部が重なるよう積層された第一金属板材と第二金属板材との間に、前記第一金属板材と前記第二金属板材とを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲットが形成されるとともに、前記第一金属板材と前記第二金属板材との重なり領域において、前記第一金属板材及び前記第二金属板材の少なくとも一方の板面に、前記第一金属板材及び前記第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層が、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で前記造影成分の分布状態に差が生じるように形成されていることを特徴とする溶接接合体。
【請求項2】
前記抵抗溶接ナゲットの周囲領域における前記造影層の造影成分濃度が、前記抵抗溶接ナゲット内の造影成分濃度よりも高くなるように設定されている請求項1記載の溶接接合体。
【請求項3】
前記板面において前記抵抗溶接ナゲットの周囲領域には、前記造影層として前記造影成分が第一濃度となる造影層が形成された第一領域と、前記造影成分が前記第一濃度よりも低い第二濃度となる第二領域とが、予め定められた幾何学的パターンをなすように混在形成される一方、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域においては、前記幾何学的パターンを喪失させる形で前記抵抗溶接ナゲット内に前記造影成分が分散混入してなる請求項1又は請求項2に記載の溶接接合体。
【請求項4】
前記第二領域は前記造影層の非形成領域である請求項3に記載の溶接接合体。
【請求項5】
前記第一領域として前記板面上には、前記抵抗溶接ナゲットよりも径小の点状領域が複数分散形成されている請求項3又は請求項4に記載の溶接接合体。
【請求項6】
前記第一領域として前記板面上には、第一方向に第一間隔で配列する前記点状領域の列が、前記第一方向と直交する第二方向に第二間隔で複数配置される形で形成されている請求項5記載の溶接接合体。
【請求項7】
前記第一領域として前記板面上には、前記板面を該板面の法線方向から見たとき、前記抵抗溶接ナゲットの寸法よりも狭幅の帯状領域が複数、該帯状領域の長手方向と交差する向きに、前記抵抗溶接ナゲットの寸法よりも狭い一定間隔にて配列形成されている請求項3又は請求項4に記載の溶接接合体。
【請求項8】
前記板面上にて前記第一領域をなす前記帯状領域は、第一方向に一定の第一間隔で配列する第一帯状領域群と、前記第一方向と直交する第二方向に一定の第二間隔で配列する第二帯状領域群とを含む請求項7に記載の溶接接合体。
【請求項9】
第一金属板材と第二金属板材との少なくともいずれかの板面において、前記第一金属板材と前記第二金属板材との重ね合わせが予定された領域に、前記第一金属板材及び前記第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層を形成する工程と、
前記板面の前記造影層の形成された領域が重なり領域となるように前記第一金属板材及び前記第二金属板材とを積層する工程と、
前記重なり領域において前記第一金属板材及び前記第二金属板材を1対の溶接用電極により積層方向に挟持しつつ通電し、前記第一金属板材と前記第二金属板材とを相互溶融させることにより抵抗溶接ナゲットを、該抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で前記造影成分の分布状態に差が生じるように形成する工程と、を含むことを特徴とする溶接接合体の製造方法。
【請求項10】
板面の少なくとも一部同士が互いに重なるよう積層された第一金属板材と第二金属板材との間に、前記第一金属板材と前記第二金属板材とを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲットが形成されるとともに、前記第一金属板材と前記第二金属板材との重なり領域において、前記第一金属板材及び前記第二金属板材の少なくとも一方の板面に、前記第一金属板材及び前記第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層が、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で前記造影成分の分布状態に差が生じるように形成されている溶接接合体に対し、前記重なり領域において透過X線像を撮影する工程と、
前記透過X線像における前記造影成分の分布状態の差に由来した画像コントラストに基づき、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域とを前記透過X線像上にて識別する工程と、
前記識別の結果に基づいて前記抵抗溶接ナゲットの形成状態を評価する工程と、
を含むことを特徴とする溶接接合体の評価方法。
【請求項11】
前記溶接接合体は、前記板面のうち前記抵抗溶接ナゲットの周囲領域に、前記造影層として造影成分が第一濃度となる造影層が形成された第一領域と、前記造影成分が前記第一濃度よりも低い第二濃度となる第二領域とが予め定められた幾何学的パターンをなすように混在形成される一方、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域においては、前記幾何学的パターンを喪失させる形で前記抵抗溶接ナゲット内に前記造影成分が分散混入したものであり、
前記透過X線像において前記幾何学的パターンが喪失している領域を前記抵抗溶接ナゲットの形成領域として識別する請求項10記載の溶接接合体の評価方法。
【請求項12】
前記抵抗溶接ナゲットの形成状態を評価する工程は、識別された前記抵抗溶接ナゲットの形成領域の寸法を計測する工程である請求項11記載の溶接接合体の評価方法。
【請求項13】
前記第一領域として前記板面上には、第一方向に第一間隔で配列する点状領域の列が、前記第一方向と直交する第二方向に第二間隔で複数配置される形で形成され、前記第一方向における前記抵抗溶接ナゲットの寸法を、前記透過X線像上にて前記点状領域の列に生ずる該点状領域の欠損数に基づいて計測する請求項12記載の溶接接合体の評価方法。
【請求項14】
前記溶接接合体には前記第一領域として、前記板面を該板面の法線方向から見たとき、前記抵抗溶接ナゲットの寸法よりも狭幅の帯状領域が複数、該帯状領域の長手方向と交差する向きに、前記抵抗溶接ナゲットの寸法よりも狭い一定間隔にて配列形成され、前記抵抗溶接ナゲットの形成領域には、長手方向の中間位置に欠損を有する帯状領域である欠損帯状領域が生じてなり、
前記帯状領域の長手方向における前記抵抗溶接ナゲットの寸法を、前記透過X線像上にて前記帯状領域に生ずる欠損区間長に基づいて計測する請求項12に記載の溶接接合体の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された金属板材を抵抗溶接ナゲットにより接合した溶接接合体とその製造方法、並びにその評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層した金属板材を1対の電極で挟持して通電することにより、金属板材間に抵抗溶接ナゲットを形成して接合する、いわゆる重ね抵抗溶接法が広く使用されている。また、重ね抵抗溶接法により形成される抵抗溶接ナゲットの品質を評価する方法も種々提案されている。特許文献1には、本溶接前に、適正なナゲットを形成するテスト溶接を行い、該テスト溶接時の瞬時電力値の時間変化に基づいて電力基準パターンを形成するとともに、本溶接中の瞬時電力値が電量基準パターンに対し所定範囲内であるか否かに基づいて、溶接品質の良否を判定する手法が開示されている。また、特許文献2には、本溶接前に適正なナゲットを形成するテスト溶接を行い、本溶接として、該テスト溶接で得られた単位体積当たりの瞬時発熱量の時間変化曲線を基準として溶接を行う方法が開示されている。
【0003】
他方、抵抗溶接ナゲットを非破壊で評価する手法として、特許文献3及び特許文献4には、超音波を利用して抵抗溶接ナゲットの品質を評価する手法が開示されている。例えば、特許文献3は、ナゲットに向けて入射した超音波の反射エコー高さに基づいてナゲットの寸法を推定する方法を開示する。具体的には、ナゲットに向けて斜めに超音波を入射させたとき、その反射エコー高さとナゲット寸法との間に相関を生じることから、その相関関係を実験により事前に求めておき、測定により得られる反射エコー高さと該相関関係とに基づいてナゲット寸法を推定する。また、特許文献4は、ナゲットに超音波を入射して得られる多重反射エコーの散乱減衰から平均結晶粒径を算出し、実験により事前に求めたナゲット寸法と平均結晶粒径との相関関係と、散乱減衰から算出された平均結晶粒径とに基づいてナゲット寸法を推定する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-269337号公報
【特許文献2】特許5900699号公報
【特許文献3】WO86/04416公報
【特許文献4】特開平11-166917公報
【特許文献5】特開2003-93432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重ね抵抗溶接法により金属板材間に形成された抵抗溶接ナゲットは、金属板の隠ぺいにより外側からはその形状や寸法を直接特定することができない。特許文献1及2の方法にて採用される溶接中の瞬時電力値や瞬時発熱量の情報は、抵抗溶接ナゲットの形状や寸法を直接特定する目的にはほとんど貢献できない。また、超音波を用いる特許文献3及び4の方法は、反射エコー高さや散乱減衰高さとナゲット寸法との相関関係を事前に求めておかなければならず、工数を要する。さらに、ナゲット寸法は該相関関係を経由して間接的に特定されるに過ぎず、より高い精度が求められる場合には適さない問題がある。
【0006】
本発明の課題は、非破壊的な手法により抵抗溶接ナゲットの形成状態を直接的かつ高精度に特定する上で好都合な構造を有した溶接接合体とその製造方法、並びにその溶接接合体の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために本発明の溶接接合体は、板面の少なくとも一部が重なるよう積層された第一金属板材と第二金属板材との間に、第一金属板材と第二金属板材とを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲットが形成されるとともに、第一金属板材と第二金属板材との重なり領域において、第一金属板材及び第二金属板材の少なくとも一方の板面に、第一金属板材及び第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層が、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の溶接接合体の製造方法は、第一金属板材と第二金属板材との少なくともいずれかの板面において、第一金属板材と第二金属板材との重ね合わせが予定された領域に、第一金属板材及び第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層を形成する工程と、板面の造影層の形成された領域が重なり領域となるように第一金属板材及び第二金属板材とを積層する工程と、重なり領域において第一金属板材及び第二金属板材を1対の溶接用電極により積層方向に挟持しつつ通電し、第一金属板材と第二金属板材とを相互溶融させることにより抵抗溶接ナゲットを、該抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の溶接接合体の評価方法は、板面の少なくとも一部同士が互いに重なるよう積層された第一金属板材と第二金属板材との間に、第一金属板材と第二金属板材とを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲットが形成されるとともに、第一金属板材と第二金属板材との重なり領域において、第一金属板材及び第二金属板材の少なくとも一方の板面に、第一金属板材及び第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層が、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成されている溶接接合体に対し、重なり領域において透過X線像を撮影する工程と、透過X線像における造影成分の分布状態の差に由来した画像コントラストに基づき、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域とを透過X線像上にて識別する工程と、識別の結果に基づいて抵抗溶接ナゲットの形成状態を評価する工程と、を含むことを特徴とする。抵抗溶接ナゲットの形成状態を評価する工程は、例えば識別された抵抗溶接ナゲットの形成領域の寸法を計測する工程である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の溶接接合体においては、第一金属板材と第二金属板材との重なり領域において、第一金属板材及び第二金属板材の少なくとも一方の板面に、第一金属板材及び第二金属板材のいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する造影層を、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成している。このような溶接接合体の重なり領域について透過X線像を撮影すれば、透過X線像における造影成分の分布状態の差に由来した画像コントラストに基づき、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域とを透過X線像上にて容易に識別することができる。よって、非破壊的な手法により抵抗溶接ナゲットの形成状態を直接的かつ高精度に特定する上で有利な構成となる。
【0011】
また、本発明の溶接接合体の製造方法においては、第一金属板材と第二金属板材との少なくともいずれかの板面において、第一金属板材と第二金属板材との重ね合わせが予定された領域に造影層を形成し、板面の造影層の形成された領域が重なり領域となるように第一金属板材及び第二金属板材とを積層し、その重なり領域において第一金属板材及び第二金属板材を1対の溶接用電極により積層方向に挟持しつつ通電して第一金属板材と第二金属板材とを相互溶融させ、抵抗溶接ナゲットを形成する。重なり領域に形成した造影層は、抵抗溶接ナゲットの非形成領域においては形成時の状態を維持する一方、抵抗溶接ナゲットの形成領域においては第一金属板材及び第二金属板材が造影層とともに相互溶融する。よって、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域との間で造影成分の分布状態に差が生じた本発明の溶接接合体の構造を簡単に得ることができる。
【0012】
そして、本発明の溶接接合体の評価方法によれば、本発明の溶接接合体を重なり領域において透過X線像を撮影し、透過X線像における造影成分の分布状態の差に由来した画像コントラストに基づき、抵抗溶接ナゲットの形成領域と非形成領域とを透過X線像上にて識別し、その識別の結果に基づいて抵抗溶接ナゲットの形成状態を評価するから、非破壊的な手法により抵抗溶接ナゲットの形成状態を直接的かつ高精度に特定・評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の溶接接合体の一例を、透過X線像の撮影に供した状態にて示す断面模式図。
図2】溶接接合体に形成した造影層と抵抗溶接ナゲットとを示す平面模式図。
図3】造影層の幾何学的パターンの第一例を示す平面模式図。
図4】造影層を形成するための造影ペーストの構造の第一例を示す模式図。
図5】造影層を形成するための造影ペーストの構造の第二例を示す模式図。
図6】造影層を形成するための造影ペーストの構造の第三例を示す模式図。
図7】造影層を形成するための造影ペーストの構造の第四例を示す模式図。
図8】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第一図。
図9】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第二図。
図10】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第三図。
図11】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第四図。
図12】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第五図。
図13】本発明の溶接接合体の製造方法の工程を説明する第六図。
図14】造影層の幾何学的パターンの第二例を示す平面模式図。
図15図14の造影層を抵抗溶接ナゲット形成した状態で示す平面模式図。
図16図14の造影層に含まれる欠損帯状領域の係数により抵抗溶接ナゲットの寸法を計測する概念を説明する平面模式図。
図17図14の造影層に含まれる帯状領域の好ましい寸法設定例を説明する図。
図18】造影層の幾何学的パターンの第三例を示す平面模式図。
図19図18の造影層を抵抗溶接ナゲットを形成した状態で示す平面模式図。
図20】造影層を金属板の重なり領域の全面に形成した例を示す平面模式図。
図21図20の造影層を抵抗溶接ナゲットを形成した状態で示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の溶接接合体の断面構造の一例を示すものである。溶接接合体70は、板面の少なくとも一部が重なるよう積層された第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとを有する。図1では、第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとは一方の板面の全面が他方の板面に重なるように積層されているが、例えば、第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの各板面の一部同士、例えば端部同士が重なるように積層してもよい。なお、図中、符号20はX線カメラ、21は撮像素子である。
【0015】
第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとの間には、第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとを相互溶融させる形で抵抗溶接ナゲット51が形成されている。1つの抵抗溶接ナゲット51により接合される金属板材の数は3枚以上であってもよい。この場合、本発明の金属接合体の概念は、隣接して積層される1対の金属板材を上記第一金属板材及び第二金属板材50Bとみなすことで、それら3枚以上の金属板材においても成り立っていると考えることができる。
【0016】
第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの材質は特に限定されないが、例えば鉄又は鉄合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、さらには銅又は銅合金である。本実施形態では、一例として第一金属板材50A及び第二金属板材50Bがともに鋼鈑(鉄合金)として構成されている場合を例にとる。第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの厚さは、 例えば0.2mm以上5mm以下である。
【0017】
次に、第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとの重なり領域には、第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの一方のみ、図1では第一金属板材50Aの板面にのみ造影層1が形成されている。なお、第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの双方に造影層1を形成してもよい。
【0018】
造影層1は、第一金属板材50A及び第二金属板材50Bのいずれの構成材料よりもX線透過率が小さい造影成分を含有する。造影層1に含有される造影成分は例えば周知のものを採用できる。造影成分の主体をなす元素成分としては、鉄よりも原子量が大きくX線遮断能の高い元素のうち、安定核種を有するものであって、毒性が比較的低い元素群から選ばれる。周期律表の順に元素記号にて例示すれば、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb、Bi、Th、Uを列挙できる。取り扱いの容易性を考慮すれば放射性元素は避けることが望ましく、また、原料コストを軽減する観点からは希少金属以外の候補から選択することが望ましい。また、鉄との原子量の隔たりはできる限り大きいことがX線遮断能確保の観点において望ましい。これらを充足する元素群としては、特に、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Te、I、Ba、La、Ce,Pr、Nd、Sm、Eu、Ta、W、Biなどが好適である。これらの元素は、単体で用いてもよいし、有機ないし無機の化合物の形態で用いてもよい。
【0019】
本発明に好適に使用できる具体的な造影成分の例としては、特許文献5が開示するX線造影インキに含有される造影成分、すなわち、硫酸バリウム、オキシ炭酸ビスマス、ヨウ化ナトリウム、銀-タンパク質コロイド、ヨウ化銀-ゼラチンコロイド、酸化トリウム(IV)ゾル、ヨウ素付加した不飽和油脂、ヨウ素懸濁油脂、ヨウ素ピリドン酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種類のX線造影剤を挙げることができる。
【0020】
また、金属状態の造影成分を利用する場合は、金属状態での化学的安定性が良好であり、かつ、抵抗溶接ナゲットを形成する際の成分気化によるブローホール等の欠陥発生を抑制する観点から、金属板材の主成分の融点よりも沸点の高い金属成分を用いることが望ましい。また、金属板材の主成分とともに抵抗溶接ナゲット内に取り込まれた際に、抵抗溶接ナゲットの強度低下要因となる相分離や金属間化合物をなるべく生じにくく、特に、金属板材の主成分元素に対し一定の固溶限を有して抵抗溶接ナゲット内に均一に分散可能となる造影成分を用いるのがよい。このような金属状態の造影成分としてはIn、Sn、Ta、W及びBiを例示できる。これらは2種以上のものを組み合わせて用いてもよいし、助剤成分として他の金属元素が含有されていてもよい。例えば、近年電子回路基板の製造に活用されている鉛フリー半田合金(例えばSn-Ag-Cu合金、Sn-Zn-Bi合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-In-Bi合金、Sn-Bi合金、Sn-Ag合金等)を造影成分として用いることもできる。
【0021】
上記のような造影成分を含有した造影層1は、図2において、抵抗溶接ナゲット51の形成領域と非形成領域1Cとの間で造影成分の分布状態に差が生じるように形成されている。抵抗溶接ナゲット51の周囲領域における造影層1の造影成分濃度は、抵抗溶接ナゲット51内の造影成分濃度よりも高くなるように設定されている。
【0022】
また、第一金属板材50Aの第二金属板材50Bとの重なり領域おける板面において、抵抗溶接ナゲット51の周囲領域には、造影層1として造影成分が第一濃度となる造影層1が形成された第一領域と、造影成分が第一濃度よりも低い第二濃度となる第二領域とが、予め定められた幾何学的パターンをなすように混在形成されている。抵抗溶接ナゲット51の形成領域は、該幾何学的パターンを喪失させる形で抵抗溶接ナゲット51内に造影成分が分散混入した構造となっている。第二領域は例えば造影層1の非形成領域1Cであるが、第一領域よりも低濃度に造影成分を含有した造影層を第二領域として形成するようにしてもよい。
【0023】
図2においては、造影層1(第一領域)として第一金属板材50Aの板面上に、抵抗溶接ナゲット51よりも径小の点状領域が複数分散形成されている。具体的には、造影層1(第一領域)として、第一金属板材50Aの板面上に、第一方向Xに第一間隔dXで配列する点状領域の列1Rが、第一方向Xと直交する第二方向Yに第二間隔dYで複数配置される形で形成されている。第一間隔dX、および第二間隔dYは、平面視における抵抗溶接ナゲット51の寸法よりも狭く設定されている。
【0024】
以下、溶接接合体70の製造方法の一例について説明する。
図3に示すように、第一金属板材50Aの板面のうち、第二金属板材50Bとの重ね合わせが予定された領域に造影層1を形成する。造影層1は、抵抗溶接ナゲット51の形成が予定された領域と、予定されていない領域とを区別することなく、第一金属板材50Aの第二金属板材50Bとの重なり領域の全体に渡って形成される。
【0025】
造影層1は、例えば、造影成分を含有したペーストを第一金属板材50Aの板面に塗布することで形成できる。造影層1の形成厚さは、造影成分のX線遮断能力や含有量に応じて適宜選択されるが、例えば1μm以上100μm以下である。
【0026】
図4は、ペースト1Pの構成例を示すものであり、流動性を有したビヒクル2に化合物系の造影成分粒子3(例えば硫酸バリウム粒子)を懸濁又は分散させたものである。ペースト1中における造影成分粒子3の含有率は例えば5質量%以上60質量%以下である。また、ビヒクル2の材質は、半田ペースト等に活用されているものと同じ成分、例えば粘着性付与用の樹脂材(例えば、ロジン)および適量の溶剤を含むものが使用できる。造影成分粒子3の平均粒径は例えば0.5μm~50μmである。
【0027】
ペースト1Pとしては、例えば図5に示すように、ビヒクル2に金属系の造影成分粒子30(例えば前述の鉛フリー半田合金)を分散させたもの、さらには図6に示すように、金属系の造影成分粒子30と化合物系の造影成分粒子3とを混合した形でビヒクル2に分散させたものを用いることもできる。金属系の造影成分粒子30は抵抗溶接ナゲット内への分散性が良好となる利点を有する。一方、化合物系の造影成分粒子3として原子量の特に大きい金属元素を用いるもの(典型的なものとして硫酸バリウム)を使用すれば、造影層1の形成厚さが小さくとも、十分なX線造影能力を担保できる利点があるが、抵抗溶接ナゲット内への分散性はやや劣る。図6のように、金属系の造影成分粒子30と化合物系の造影成分粒子3とを混在させたペーストを用いれば、抵抗溶接ナゲット内への造影成分の分散性を改善することができる。同様の効果は、図7に示すように、化合物系の造影成分粒子コア3cの表面を金属層3mで覆った複合造影成分粒子3xを用いても達成できる。金属層3mは、例えばCuないしNi(あるいはそれらを主成分とする合金)の無電解メッキ層として形成が可能である。
【0028】
上記のペースト1Pを用いて造影層1は、例えば次のようにして形成できる。まず、図8に示すように、形成すべき造影層の幾何学的パターンに対応した形状のキャビティ61が形成されたマスク60を用意し、これを第一金属板材50Aの板面に重ね合わせる。この状態で、図9に示すようにマスク60上にペースト1Pを盛り、マスク上のペースト1Pをスキージ62により掻き取りつつキャビティ61に充填する。そして、図10に示すように、マスク60を取り外せば、第一金属板材50Aの板面上には造影層1が、マスク60のキャビティ61に対応した幾何学的パターンに形成される。なお、造影層1の幾何学的パターンは、スクリーン印刷など他の方法により形成してもよい。
【0029】
続いて、造影層1に適宜乾燥処理を施したのち、図11に示す如く、第一金属板材50Aの造影層1が形成されている側の板面に第二金属板材50Bを積層するとともに、図12に示すように、その積層体を1対の溶接用電極60A,60Bにより挟持し、加圧しつつ通電を行なう。すると、第一金属板材50A及び第二金属板材50Bの溶接用電極60A,60Bの間に位置する部分が抵抗発熱により相互溶融し、図13に示すように抵抗溶接ナゲット51が形成される。
【0030】
図11に示すように、抵抗溶接ナゲット51の形成前の状態において造影層1は、抵抗溶接ナゲット51の形成が予定された領域と、予定されていない領域とを区別することなく、第一金属板材50Aの第二金属板材50Bとの重なり領域の全体に渡って形成されている。この状態で、図13に示すように、溶接用電極60A,60Bにより第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとを相互溶融させて抵抗溶接ナゲット51を形成すると、造影層1は、抵抗溶接ナゲット51の非形成領域1Cにおいては形成時の状態を維持する一方、抵抗溶接ナゲット51の形成領域においては第一金属板材50A及び第二金属板材50Bが造影層1を巻き込む形で相互溶融する。よって、抵抗溶接ナゲット51の形成領域と非形成領域1Cとの間で造影成分の分布状態に差が生じる。
【0031】
例えば、抵抗溶接ナゲット51の形成が予定された領域に形成された造影層1中の造影成分が、抵抗溶接ナゲット51が溶融形成される際において板材の厚さ方向に拡散ないし分散する形になれば、抵抗溶接ナゲット51の周囲領域における造影層1の造影成分濃度は、抵抗溶接ナゲット51内の造影成分濃度よりも高くなる。また、造影層1が図2のごとく幾何学的パターンをなすように形成されていれば、抵抗溶接ナゲット51は、その幾何学的パターンを喪失させる形で造影成分を分散ないし拡散混入させた構造となる。
【0032】
このような構造の溶接接合体70は、図1に示すように、溶接接合体70を積層方向に挟んで配置されたX線カメラ20と撮像素子21とを用い、抵抗溶接ナゲット51が形成された第一金属板材50Aと第二金属板材50Bとの重なり領域のX線透過像を撮影することができる。上記のように、抵抗溶接ナゲット51の形成領域1と非形成領域1Cとの間には造影成分の分布に差を生じており、透過X線像においては該差に由来した画像コントラストが、抵抗溶接ナゲット51の形成領域と非形成領域1Cとの間に生ずる。例えば、抵抗溶接ナゲット51の周囲領域における造影層1の造影成分濃度が、抵抗溶接ナゲット51内の造影成分濃度よりも高くなっていれば、抵抗溶接ナゲット51の領域は周囲領域よりも透過X線強度が低くなるので、透過X線像上にて抵抗溶接ナゲット51の領域は周囲領域との間で明度に差が生じ、容易にこれを識別できる。さらに、図2においては、抵抗溶接ナゲット51の形成領域は造影層1の幾何学的パターンが喪失(あるいは不明確化)しており、透過X線像上においても造影層1に由来した幾何学的パターンの像は、抵抗溶接ナゲット51に対応した領域にて同様に喪失あるいは不明確化する。よって、透過X線像上にて幾何学的パターンが失われている領域の輪郭から抵抗溶接ナゲット51の平面形状を把握でき、かつ画像上にて該領域の寸法Dnを計測すれば、平面視における抵抗溶接ナゲット51の寸法情報を容易に取得することができる。
【0033】
図2においては、造影層1は点状領域として複数分散形成されているから、抵抗溶接ナゲット51がそれよりも径大に形成されれば、抵抗溶接ナゲット51の形成領域において点状領域の1ないし複数のものは抵抗溶接ナゲット51に完全に取り込まれる形で喪失するため、透過X線像上で抵抗溶接ナゲット51の形成領域をより容易に識別することができる。特に、図3に示すように、第一方向Xに第一間隔dXで配列する点状領域の列1Rを、第一方向Xと直交する第二方向Yに第二間隔dYで複数配置する形で形成すれば、図2に示すように、第一方向Xにおける抵抗溶接ナゲット51の寸法を、透過X線像上にて点状領域の列1Rに生ずる該点状領域の欠損数に基づき、より簡便に計測することができる。なお、同一の抵抗溶接ナゲット51に対し、欠損が生じている点状領域の列が複数存在する場合は、それら点状領域の列のうち欠損数が最大となるものを特定し、その特定された欠損数の計数値を、その抵抗溶接ナゲット51の寸法として採用することができる。
【0034】
以下、造影層の形成形態の種々の変形例について説明する。
造影層1(第一領域)は、図14に示すように複数の帯状領域として形成することができる。図14において帯状領域10は、板面を該板面の法線方向から見たとき、帯状領域10の長手方向(X)と交差する向き(Y)に一定間隔dXにて複数配列形成されている。図15に示すように、各帯状領域10は抵抗溶接ナゲット51の寸法よりも狭幅に形成され、帯状領域10の配列間隔dXもまた、抵抗溶接ナゲット51の寸法よりも狭く設定されている。隣接する帯状領域10,10の間に位置する領域は前述の第二領域に相当し、本実施形態ではこれを造影層の非形成領域としている。
【0035】
上記の構成によると、図16に示すように、抵抗溶接ナゲット51の形成領域には、長手方向の中間位置に欠損を有する帯状領域である欠損帯状領域J1・・・Jnが生じる。帯状領域10の長手方向における抵抗溶接ナゲット51の寸法は、透過X線像上にて該帯状領域10に生ずる欠損区間長に基づいて計測することができる。図15及び図16に示すように、同一の抵抗溶接ナゲット51に対し、欠損帯状領域J1・・・Jnが複数生じている場合は、最大の欠損区間長を示す帯状領域10での該欠損区間長の計測値を、その抵抗溶接ナゲット51の寸法として採用することができる。
【0036】
この場合、帯状領域10の幅(パターン幅)は、抵抗溶接ナゲット51の寸法計測に求められる精度に応じて適宜設定される。その具体例について、円形の抵抗溶接ナゲット51の直径Dを計測する場合を例にとり、図17を用いて説明する。図17の左は、円状の抵抗溶接ナゲット51の領域の中央を帯状領域10が横切っている状態を示している。図17の右は、帯状領域10と抵抗溶接ナゲット51の領域との重なり部分を拡大して示している。幅Pの帯状領域10に生ずる欠損区間長により、抵抗溶接ナゲット51の寸法を計測しようとする場合、帯状領域10を切り取る抵抗溶接ナゲット51の輪郭線は円弧状なので、欠損区間長の計測において幾何学的に生ずる誤差eは、
e=(D/2)-{(D/2)-(P/2)0.5 ・・・(1)
により表わすことができる。抵抗溶接ナゲット51の中心点から、帯状領域10を切り取る抵抗溶接ナゲット51の円弧状輪郭線を見込む角度を2θとすれば、許容誤差が最大値のα%となる場合のθの値は、図17より明らかに、
θ=arccos{(100-α)/100}・・・(2)
である。この場合、
P/2=(D/2)×sinθ すなわち、
P=D×sinθ ・・・(3)
となる。例えば、D=5(mm)、α=2(%)のとき、(2)式からθ=11.47834(°)となり、(3)式によりP=0.995(mm)となる。つまり、直径5mmの抵抗溶接ナゲット51の外径を2%以内の誤差にて計測したい場合、帯状領域10の幅Pは1mm程度以下に設定する必要があることを示している。
【0037】
なお、抵抗溶接ナゲット51の寸法を板面上の2方向にて計測したい場合は、図18及び図19に示すように、第一方向Xに一定の第一間隔dXで配列する第一帯状領域群10hと、第一方向Xと直交する第二方向Yに一定の第二間隔dYで配列する第二帯状領域群10vとが含まれるように造影層(第一領域)を形成しておけばよい。この場合、第一帯状領域群10hと第二帯状領域群10vとのそれぞれについて、図17に示すように、抵抗溶接ナゲット51の形成に由来した欠損区間長の計測を個別に実施するようにする。
【0038】
また、図16において、帯状領域10の幅と配列間隔を抵抗溶接ナゲット51の寸法よりも十分に小さく設定できる場合は、配列方向に連続して生ずる欠損帯状領域J1・・・Jnの数を計数することにより、抵抗溶接ナゲット51の寸法を特定することも可能である。抵抗溶接ナゲット51の寸法を板面上の2方向にて計測したい場合は、第一帯状領域群10hの欠損帯状領域J1・・・Jnの数と、第二帯状領域群10vの欠損帯状領域K1・・・Knの数とをそれぞれ計数するようにする。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はそれらに限定されるものではない。例えば、造影層は、図20に示すように、特定の何学的パターンに従わない形で、第一金属板材50Aあるいは第二金属板材50Bの板面全面を覆うように形成することも可能である。この場合、図21に示すように、抵抗溶接ナゲット51内に造影成分が拡散し、抵抗溶接ナゲット51の周囲領域における造影層1の造影成分濃度が、抵抗溶接ナゲット51内の造影成分濃度よりも高くなっていれば、透過X線像において、抵抗溶接ナゲット51の領域とその周囲との間に明確にコントラストを生じ、抵抗溶接ナゲット51の領域輪郭を画像上にて特定できる。よって、透過X線像上にて該領域輪郭の外径寸法を測定すれば、抵抗溶接ナゲット51の寸法を計測することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 造影層
1C 非形成領域
1P ペースト
1R 列
2 ビヒクル
3 造影成分粒子
3c 造影成分粒子コア
3m 金属層
3x 複合造影成分粒子
10 帯状領域
10h 第一帯状領域群
10v 第二帯状領域群
20 X線カメラ
21 撮像素子
30 造影成分粒子
50A 第一金属板材
50B 第二金属板材
51 抵抗溶接ナゲット
60 マスク
60A,60B 溶接用電極
61 キャビティ
62 スキージ
70 溶接接合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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