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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152408
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電源装置および判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221004BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20221004BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 302C
H02J7/34 G
H02J7/34 B
B60R16/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055172
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】白島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】米▲崎▼ 圭一
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA04
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA11
5G503DA05
5G503DA07
5G503DA08
5G503DA17
5G503DA18
5G503EA08
5G503EA09
5G503FA16
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】第2電源の放電を抑制しつつ、第2系統の地絡か否かを判定することができる電源装置および判定方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る電源装置は、第1系統と、第2系統と、系統間スイッチと、判定部と、抑制回路とを備える。第1系統は、第1電源の電力を第1負荷に供給する。第2系統は、第2電源の電力を第2負荷に供給する。系統間スイッチは、第1系統および第2系統を接続切断可能である。判定部は、通常時は系統間スイッチをオンにし、第1系統または第2系統の地絡を検出すると系統間スイッチをオフにして地絡した系統を判定する。抑制回路は、第2電源の放電を抑制して第2系統に地絡判定用の電力を供給する。判定部は、抑制回路から第2系統に供給される電力に基づいて、第2系統に地絡が発生したか否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源の電力を第1負荷に供給する第1系統と、
第2電源の電力を第2負荷に供給する第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
通常時は前記系統間スイッチをオンにし、前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出すると前記系統間スイッチをオフにして地絡した系統を判定する判定部と、
前記第2電源の放電を抑制して前記第2系統に地絡判定用の電力を供給する抑制回路と、
を備え、
前記判定部は、
前記抑制回路から前記第2系統に供給される電力に基づいて、前記第2系統に地絡が発生したか否かを判定する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第2電源を前記第2系統に接続切断可能な電池用スイッチを備え、
前記抑制回路は、
前記第2電源から出力される電流を制限して前記第2系統に電力を供給する電流制限回路を備え、
前記判定部は、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出すると前記電池用スイッチをオンにし、前記電流制限回路から前記第2系統に供給される電力に基づいて、前記第2系統に地絡が発生したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第2電源を前記第2系統に接続切断可能な電池用スイッチを備え、
前記抑制回路は、
蓄電した電力を前記第2系統に供給する蓄電回路を備え、
前記判定部は、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出すると前記電池用スイッチをオフにし、前記蓄電回路から前記第2系統に供給される電力に基づいて、前記第2系統に地絡が発生したか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
第1電源の電力を第1負荷に供給する第1系統と、
第2電源の電力を第2負荷に供給する第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと
を備える電源装置の判定部が、
通常時は前記系統間スイッチをオンにし、前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出すると前記系統間スイッチをオフにして地絡した系統を判定することと、
前記電源装置の抑制回路が、
前記第2電源の放電を抑制して前記第2系統に地絡判定用の電力を供給することと、
前記電源装置の前記判定部が、
前記抑制回路から前記第2系統に供給される電力に基づいて、前記第2系統に地絡が発生したか否かを判定することと
を含むことを特徴とする判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源装置および判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動運転による走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、第1電源と第2電源とを備え、一方の電源系統に地絡が発生した場合に、他方の電源系統によって自動運転用の車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
冗長電源システムは、自動運転用の第1負荷に接続される第1系統と、第1負荷と同一の機能を備える第2負荷に接続される第2系統と、第1系統および第2系統間を接続切断可能な系統間スイッチとを備える。
【0004】
冗長電源システムは、通常時には、系統間スイッチを接続して第1電源から第1負荷および第2負荷へ電力を供給する。そして、冗長電源システムは、第1系統に地絡などの電源失陥が発生すると、系統間スイッチを遮断して第2電源から第2負荷へ電力を供給して退避走行のためのバックアップ制御を行う。
【0005】
冗長電源システムでは、第2系統において地絡が発生すると、第2電源によるバックアップ制御を行えないため、第1系統または第2系統の地絡を検出した場合、第2系統の地絡か否かを判定する必要がある。
【0006】
このため、第1系統または第2系統の地絡を検出し、系統間スイッチを遮断した後に第2電源から第2系統に電力を供給して第2系統の地絡か否かを判定する電源システムがある(例えば、特許文献1参照)。電源システムは、第2系統の電圧が正常な電圧よりも低ければ第2系統の地絡と判定し、正常な電圧であれば第2系統の地絡でないと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-62727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では、第2電源を放電させて第2系統の地絡か否かを判定するため、第2電源に蓄電された電力の残量が減少し、退避走行のためのバックアップ制御を可能とする時間が短くなる。
【0009】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、第2電源の放電を抑制しつつ、第2系統の地絡か否かを判定することができる電源装置および判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一態様に係る電源装置は、第1系統と、第2系統と、系統間スイッチと、判定部と、抑制回路とを備える。第1系統は、第1電源の電力を第1負荷に供給する。第2系統は、第2電源の電力を第2負荷に供給する。系統間スイッチは、前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能である。判定部は、通常時は前記系統間スイッチをオンにし、前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出すると前記系統間スイッチをオフにして地絡した系統を判定する。抑制回路は、前記第2電源の放電を抑制して前記第2系統に地絡判定用の電力を供給する。前記判定部は、前記抑制回路から前記第2系統に供給される電力に基づいて、前記第2系統に地絡が発生したか否かを判定する。
【発明の効果】
【0011】
実施形態の一態様に係る電源装置および判定方法は、第2電源の放電を抑制しつつ、第2系統の地絡か否かを判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成例を示す説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図3図3は、第1実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図5図5は、第1実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図6図6は、第1実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る電源装置の構成例を示す説明図である。
図8図8は、第2実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図9図9は、第2実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図10図10は、第2実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図11図11は、第2実施形態に係る電源装置の動作例を示す説明図である。
図12図12は、第2実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、電源装置および判定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する電源装置を例に挙げて説明するが、実施形態に係る電源装置は、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0014】
また、以下では、電源装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリット自動車である場合について説明するが、電源装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1.電源装置の構成]
図1は、第1実施形態に係る電源装置の構成例を示す説明図である。図1に示すように、第1実施形態に係る電源装置1は、第1電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、自動運転制御装置100とに接続される。電源装置1は、第1電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する第1系統110と、後述する第2電源20の電力を第2負荷103に供給する第2系統120とを備える。
【0016】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。一般負荷102は、例えば、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0017】
第2負荷103は、第1負荷101と同様の機能を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等の自動運転中に動作する装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源装置1から供給される電力によって動作する。自動運転制御装置100は、第1負荷101または第2負荷103を動作させて、車両を自動運転制御する装置である。
【0018】
第1電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、第1電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0019】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続され、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0020】
なお、第1電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述する第2電源20の充電を行う。
【0021】
電源装置1は、第2電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、判定部3と、抑制回路61と、電圧センサ51,52とを備える。
【0022】
第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。第2電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、第2電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0023】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続および切断可能なスイッチである。電池用スイッチ42は、LiB21と抑制回路61とを接続および切断可能なスイッチである。
【0024】
抑制回路61は、第2電源20の放電を抑制して第2系統120に地絡判定用の電力を供給する回路である。抑制回路61は、電池用スイッチ42と第2負荷103との間に接続される。抑制回路61は、バックアップスイッチ43と、電流制限回路62とを備える。
【0025】
バックアップスイッチ43は、電池用スイッチ42と第2負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。電流制限回路62は、第2電源20から出力される電流を制限して第2系統120に電力を供給する回路である。電流制限回路62は、バックアップスイッチ43に並列接続される。電流制限回路62は、例えば、抵抗63である。
【0026】
なお、電流制限回路62は、抵抗63に限定されるものではない。電流制限回路62は、第2電源20から出力される電流を制限できれば、他の回路素子であってもよい。例えば、電流制限回路62は、直列に接続される複数のダイオードであってもよい。
【0027】
電圧センサ51は、第1電源10と第1負荷101との間に接続される。電圧センサ51は、第1系統110の電圧を検出し、検出結果を判定部3に出力する。電圧センサ52は、抑制回路61と第2負荷103との間に接続される。電圧センサ52は、第2系統120の電圧を検出し、検出結果を判定部3に出力する。
【0028】
判定部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、判定部3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0029】
判定部3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、電源装置1の動作を制御する。判定部3は、電圧センサ51,52から入力される検出結果に基づいて、第1系統110または第2系統120の地絡を判定し、系統間スイッチ41、電池用スイッチ42、バックアップスイッチ43をオンオフ制御する。
【0030】
判定部3は、系統間スイッチ41、電池用スイッチ42、およびバックアップスイッチ43をオンオフ制御することによって、第1電源10または第2電源20から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103へ電力を供給する。電源装置1の給電動作については、図2図5を参照して後述する。
【0031】
また、判定部3は、LiB21の電圧が低下したときは第1電源10から供給される電力によってLiB21の充電を行う。例えば、判定部3は、図示せぬ電圧センサによって検出されるLiB21の電圧が充電閾値以下になると、系統間スイッチ41、電池用スイッチ42、およびバックアップスイッチ43をオンにする。これにより、LiB21は、第1電源10から供給される電力によって充電される。
【0032】
判定部3は、第1系統110および第2系統120のうち、一方の系統に地絡等の電源失陥が発生した場合に、他方の系統によって負荷へ電力を供給する。これにより、電源装置1は、自動運転中にいずれか一方の系統が地絡しても、他方の系統を使用し、自動運転制御装置100によって車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0033】
次に、図2図5を参照し、電源装置1の動作について説明する。図2図5では、電源装置1の動作の理解を容易にするため、判定部3、自動運転制御装置100、および図1に破線矢印で示した制御信号線の図示を省略している。
【0034】
[1-2.電源装置の通常時動作]
判定部3は、第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時には、図2に示すように、系統間スイッチ41をオン、電池用スイッチ42をオフ、バックアップスイッチ43をオフにして、第1電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。
【0035】
[1-3.電源装置の地絡系統判定動作]
電源装置1では、図2に示す通常動作中に、第1系統110または第2系統120に地絡200が発生した場合、第1電源10および第2電源20から地絡点への放電が起こる。このため、図3に示すように、判定部3は、第1系統110または第2系統120の地絡200を検出すると、地絡200が発生していない方の電源から地絡点への放電を抑止するため、系統間スイッチ41をオフにする。
【0036】
具体的には、判定部3は、電圧センサ51,52によって検出される電圧のうち少なくとも一方の電圧が地絡200の発生により地絡閾値以下になった場合、第1系統110または第2系統120に地絡200が発生したと判定し、系統間スイッチ41をオフにする。
【0037】
なお、電源装置1は、電圧センサ51,52の代わりに電流センサを備える構成であってもよい。この場合、判定部3は、電流センサによって検出される電流が地絡閾値以上になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡200が発生したと判定し、系統間スイッチ41をオフにする。
【0038】
その後、判定部3は、第1系統110と第2系統120のどちらの系統で地絡200が発生したのかを判定する。このとき、第1系統110に地絡200が発生しておらず、第2系統120に地絡200が発生していた場合、系統間スイッチ41がオフにされた後、第1電源10から第1負荷101へ電力が供給されるが、第2電源20から第2負荷103へは電力が供給されない。
【0039】
このため、判定部3は、系統間スイッチ41をオフにした後、電圧センサ51によって検出される電圧が異常確定判定用の所定時間T以内に地絡閾値よりも高い電圧まで復帰すれば、第1系統110に地絡200がないと判定する。また、判定部3は、電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間T連続して地絡閾値以下であれば、第1系統110に地絡200があると判定し、第1系統110に異常が発生したことを確定する。
【0040】
同様に、判定部3は、系統間スイッチ41をオフにした後、例えば、第2電源20と第2負荷103とを直接接続し、電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間T以内に地絡閾値よりも高い電圧まで復帰すれば、第2系統120に地絡200がないと判定できる。また、判定部3は、電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間T連続して地絡閾値以下であれば、第2系統120に地絡200があると判定できる。
【0041】
しかし、第2電源20と第2負荷103とを直接接続し、第2電源20を放電させて第2系統120の地絡200か否かを判定する場合、第2電源20に蓄電された電力の一部が当該判定のために費やされ、第2電源20の電力の残量が減少し、退避走行のためのバックアップ制御を可能とする時間が短くなる。
【0042】
そこで、電源装置1は、第2電源20の放電を抑制して第2系統120に地絡判定用の電力を供給する抑制回路61を備える。そして、判定部3は、抑制回路61から第2系統120に供給される電力に基づいて、第2系統120に地絡200が発生したか否かを判定する。これにより、電源装置1は、第2電源20の放電を抑制しつつ、第2系統120の地絡200か否かを判定することができる。
【0043】
具体的には、図3に示すように、判定部3は、第1系統110または第2系統120の地絡200を検出すると、系統間スイッチ41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。このとき、バックアップスイッチ43は、オフになっている。
【0044】
そして、判定部3は、電流制限回路62から第2系統120に供給される電力に基づいて、第2系統120に地絡200が発生したか否かを判定する。このとき、第2系統120に地絡200がなければ、第2電源20から電池用スイッチ42および抵抗63を経由して、第2電源20から出力される電流が制限された電力が第2負荷103に供給される。
【0045】
これにより、電圧センサ52によって検出される電圧が地絡閾値より高くなる。これに対して、第2系統120に地絡200があれば、電池用スイッチ42をオンにしても、第2電源20から地絡点に電流が流れるので、電圧センサ52によって検出される電圧は地絡閾値以下になる。
【0046】
このため、判定部3は、系統間スイッチ41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにした後、電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間T連続して地絡閾値より低ければ、第2系統120に地絡ありと判定し、第2系統120に異常が発生したことを確定する。電圧センサ52によって検出される電圧が、所定時間T以内に地絡閾値以上に復帰すれば第2系統120に地絡なしと判定する。
【0047】
判定部3は、第1系統110と、第2系統120のどちらにも地絡が発生していないと判定すると、第1負荷101や第2負荷103等による一時的な過負荷あるいはノイズ等による誤検出であったと判定し、系統間スイッチ41をオンにし、その後電池用スイッチ42をオフにして通常状態に復帰させる。
【0048】
このように、電源装置1は、第2電源20から出力される電流を電流制限回路62によって制限した地絡判定用の電力を第2系統120に供給して、第2系統120における地絡200の有無を判定する。これにより、電源装置1は、第2電源20の放電量を必要最小限に抑えつつ、第2系統120の地絡200か否かを判定することができる。
【0049】
[1-4.電源装置の第1系統地絡時動作]
次に、図4を参照して、電源装置1の第1系統地絡時動作について説明する。図4に示すように、判定部3は、第1系統110の地絡200を検出し、異常を確定した場合、図3に示す状態からバックアップスイッチ43をオンにする。
【0050】
これにより、電源装置1は、第2電源20から電池用スイッチ42およびバックアップスイッチ43を経由して第2負荷103に電力を供給し、第2負荷103によって車両を退避走行させることができる。
【0051】
このように、電源装置1は、第1系統110における地絡200を検出し確定した場合、電流制限回路62による電流制限を行うことなく、第2電源20から第2負荷103に直接電力を供給するので、第2負荷103に対して必要十分な電力を供給することができる。
【0052】
[1-5.電源装置の第2系統地絡時動作]
次に、図5を参照して、電源装置1の第2系統地絡時動作について説明する。図5に示すように、判定部3は、第2系統120の地絡200を検出し、異常を確定した場合、第1電源10から第1負荷101に電力を供給し、第1負荷101によって車両を退避走行させることができる。
【0053】
[1-6.電源装置の判定部が実行する処理]
次に、図6を参照して、第1実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例について説明する。図6は、第1実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
判定部3は、車両が起動されている通常動作中に、図6に示す処理を実行する。図6に示すように、判定部3は、車両が起動されると、まず、第1系統110または第2系統120の地絡を検出したか否かを判定する(ステップS101)。
【0055】
判定部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出しないと判定した場合(ステップS101,No)、地絡を検出するまでステップS101の判定処理を繰り返す。また、判定部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出したと判定した場合(ステップS101,Yes)、系統間スイッチ41をオフにし(ステップS102)、電池用スイッチ42をオンにする(ステップS103)。
【0056】
その後、判定部3は、第1系統110に地絡が発生したか否かを判定する(ステップS104)。判定部3は、第1系統110に地絡が発生したと判定した場合(ステップS104,Yes)、第1系統110に異常が発生したことを確定してバックアップスイッチ43をオンにし(ステップS105)、第2電源20から第2負荷103に電力を供給して処理を終了する。
【0057】
また、判定部3は、第1系統110に地絡が発生していないと判定した場合(ステップS104,No)、第2系統120に地絡が発生したか否かを判定する(ステップS106)。判定部3は、第2系統120に地絡が発生したと判定した場合(ステップS106,Yes)、第2系統120に異常が発生したことを確定し、電池用スイッチ42をオフにして(ステップS107)、第2電源20の放電を防止し、第1電源10から第1負荷101に電力を供給して処理を終了する。
【0058】
また、判定部3は、第2系統120に地絡が発生していないと判定した場合(ステップS106,No)、一時的な過負荷やノイズ等による誤検出であったと判定し、通常状態に復帰させるべく、系統間スイッチ41をオンし(ステップS108)、その後電池用スイッチ42をオフする(ステップS109)。なお、判定部3は、通常状態に復帰させる際、系統間スイッチ41をオンした後に電池用スイッチ42をオフすることで、第2負荷103の電力が途絶えることなく、通常状態に復帰させることができる。
【0059】
[2.第2実施形態]
[2-1.電源装置の構成]
次に、図7を参照して第2実施形態に係る電源装置の構成について説明する。図7は、第2実施形態に係る電源装置の構成例を示す説明図である。以下では、図7に示す構成要素のうち、図1に示す構成要素と同一の構成要素については、図1に示す符号と同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0060】
図7に示すように、第2実施形態に係る電源装置1aは、図1に示す抑制回路61に代えて抑制回路61aを備える点と、判定部3aによる電池用スイッチ42の制御が図1に示す電源装置1とは異なる。
【0061】
抑制回路61aは、蓄電回路62aを備える。蓄電回路62aは、例えば、第1電源10から供給される電力によって充電され、蓄電した電力を第2系統120に供給する。蓄電回路62aは、例えば、コンデンサ63aである。
【0062】
判定部3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出した場合に、系統間スイッチ41をオフにする。このとき、電池用スイッチ42は、オフにされたままである。このため、コンデンサ63aは、系統間スイッチ41がオフにされると、放電して電力を第2系統120に供給する。
【0063】
これにより、判定部3aは、第2電源20の電力を使用することなく、コンデンサ63aに蓄電された電力を使用して、第2系統120に地絡が発生したか否かを確定することができる。
【0064】
次に、図8図11を参照し、電源装置1aの動作について説明する。図8図11では、電源装置1の動作の理解を容易にするため、判定部3、自動運転制御装置100、および図7に破線矢印で示した制御信号線の図示を省略している。
【0065】
[2-2.電源装置の通常時動作]
判定部3aは、第1系統110および第2系統120に地絡が発生していない通常時には、図8に示すように、系統間スイッチ41をオン、電池用スイッチ42をオフにして、第1電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。このとき、コンデンサ63aは、第1電源10から供給される電力によって充電される。
【0066】
[2-3.電源装置の地絡系統判定動作]
図9に示すように、電源装置1aの判定部3aは、第1実施形態と同様に、電圧センサ51,52によって検出される少なくとも一方の電圧が地絡200の発生により地絡閾値以下になった場合、第1系統110または第2系統120に地絡200が発生したと判定し、系統間スイッチ41をオフにする。その後、判定部3aは、第1系統110と第2系統120のどちらの系統で地絡200が発生したのかを判定する。
【0067】
判定部3aは、系統間スイッチ41をオフにした後、電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間T以内に地絡閾値よりも高い電圧まで復帰すれば、第1系統110に地絡200がないと判定する。また、判定部3は、電圧センサ51によって検出される電圧が所定時間T連続して地絡閾値以下であれば、第1系統110に地絡200があると判定し、第1系統110に異常が発生したことを確定する。
【0068】
また、電源装置1aでは、系統間スイッチ41がオフにされると、コンデンサ63aが放電して、第2系統120に地絡判定用の電力を供給する。このとき、電池用スイッチ42は、オフにされているため、第2電源20が放電することはない。
【0069】
判定部3aは、コンデンサ63aから第2系統120に供給される電力により、電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間T以内に地絡閾値よりも高い電圧まで復帰すれば、第2系統120に地絡200がないと判定する。また、判定部3aは、電圧センサ52によって検出される電圧が所定時間T連続して地絡閾値以下であれば、第2系統120に地絡200があると判定し、第2系統120に異常が発生したことを確定する。
【0070】
このように、電源装置1aは、第1系統110または第2系統の地絡を検出した場合に、第2電源20との接続が遮断されたコンデンサ63aから出力される地絡判定用の電力を第2系統120に供給して、第2系統120における地絡200の有無を判定する。これにより、電源装置1aは、第2電源20の放電量を0にして、第2系統120の地絡200か否かを確定することができる。
【0071】
[2-4.電源装置の第1系統地絡時動作]
次に、図10を参照して、電源装置1aの第1系統地絡時動作について説明する。図10に示すように、判定部3aは、第1系統110の地絡200を検出し確定した場合、図9に示す状態から電池用スイッチ42をオンにする。これにより、電源装置1aは、第2電源20から第2負荷103に電力を供給し、第2負荷103によって車両を退避走行させることができる。
【0072】
[2-5.電源装置の第2系統地絡時動作]
次に、図11を参照して、電源装置1aの第2系統地絡時動作について説明する。図11に示すように、判定部3aは、第2系統120の地絡200を検出し確定した場合、電池用スイッチ42はオフにしたまま第1電源10から第1負荷101に電力を供給し、第1負荷101によって車両を退避走行させることができる。
【0073】
判定部3aは、第1系統110と、第2系統120のどちらにも地絡が発生していないと判定すると、第1負荷101や第2負荷103等による一時的な過負荷あるいはノイズ等による誤検出であったと判定し、系統間スイッチ41をオンにして通常状態に復帰させる。
【0074】
[2-6.電源装置の判定部が実行する処理]
次に、図12を参照して、第2実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例について説明する。図12は、第2実施形態に係る電源装置の判定部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0075】
判定部3aは、車両が起動されている通常動作中に、図12に示す処理を実行する。図12に示すように、判定部3aは、車両が起動されると、まず、第1系統110または第2系統120の地絡を検出したか否かを判定する(ステップS201)。
【0076】
判定部3aは、第1系統110または第2系統120の地絡を検出しないと判定した場合(ステップS201,No)、地絡を検出するまでステップS201の判定処理を繰り返す。また、判定部3aは、第1系統110または第2系統120の地絡を検出したと判定した場合(ステップS201,Yes)、系統間スイッチ41をオフにし(ステップS202)、第1系統110に地絡が発生したか否かを判定する(ステップS203)。
【0077】
判定部3aは、第1系統110に地絡が発生したと判定し確定した場合(ステップS203,Yes)、電池用スイッチ42をオンにし(ステップS204)、第2電源20から第2負荷103に電力を供給して処理を終了する。また、判定部3aは、第1系統110に地絡が発生していないと判定した場合(ステップS203,No)、第2系統120に地絡が発生したか否かを判定する(ステップS205)。
【0078】
判定部3aは、第2系統120に地絡が発生したと判定した場合(ステップS205,Yes)、第2系統120に異常が発生したことを確定し、第1電源10から第1負荷101に電力を供給して処理を終了する。このとき、電池用スイッチ42は、オフになっているため、第2電源20が放電することはない。
【0079】
また、判定部3aは、第2系統120に地絡が発生していないと判定した場合(ステップS205,No)、一時的な過負荷やノイズ等による誤検出であったと判定し、通常状態に復帰させるべく、系統間スイッチ41をオンする(ステップS206)。
【0080】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1a 電源装置
10 第1電源
11 DC/DC
12 PbB
20 第2電源
21 LiB
3,3a 判定部
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
43 バックアップスイッチ
51,52 電圧センサ
61,61a 抑制回路
62 電流制限回路
62a 蓄電回路
63 抵抗
63a コンデンサ
100 自動運転制御装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12