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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152417
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/03 20060101AFI20221004BHJP
   E04D 3/00 20060101ALI20221004BHJP
   E04D 13/16 20060101ALI20221004BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E04G23/03
E04D3/00 S
E04D13/16 A
E04D13/16 D
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055186
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】520296679
【氏名又は名称】株式会社ダイヤ工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中地 慶耀
【テーマコード(参考)】
2E001
2E108
2E176
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA17
2E001GA12
2E001GA24
2E001GA63
2E001NA07
2E001NC01
2E001ND25
2E001ND26
2E108AA02
2E108AZ01
2E108AZ02
2E108FG02
2E108GG20
2E176AA23
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】既存の屋根材を覆って補強を行いながらも、既存の屋根材が早期に劣化することを抑制することができる屋根構造を提供する。
【解決手段】勾配を有する既存の屋根材3の上に桁行方向に沿う姿勢で桁行方向と直交する梁間方向に間隔を置いて設置して第1通気層T1を形成する複数の胴縁4と、複数の胴縁4の上に設置する新規野地板5と、新規野地板5の上に設置して第2通気層T2を形成するシート状で広がり方向に通気性を有する通気材6と、通気材6の上に設置する新規屋根材7と、新規屋根材7の頂部に第1通気層T1及び第2通気層T2を外部に連通させるための換気部8と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配を有する既存の屋根材の上に桁行方向に沿う姿勢で桁行方向と直交する梁間方向に間隔を置いて設置して第1通気層を形成する複数の胴縁と、該複数の胴縁の上に設置する新規野地板と、該新規野地板の上に設置して第2通気層を形成するシート状で広がり方向に通気性を有する通気材と、該通気材の上に設置する新規屋根材と、該新規屋根材の頂部に前記第1通気層及び前記第2通気層を外部に連通させるための換気部と、を備えていることを特徴とする屋根構造。
【請求項2】
前記通気材が、前記新規野地板に接する位置にシート状の防水材を備えることを特徴とする請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記防水材は、防水性及び弾性を有する素材から構成され、前記新規屋根材を前記新規野地板に固定する釘が打ち込まれたときに、前記釘の外周面に密着するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記既存の屋根材の上に遮熱シートが配置されていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の屋根構造。
【請求項5】
前記新規屋根材の頂部に空気排出用の開口が形成され、前記換気部が、前記開口の上方を覆う覆い部と、前記新規屋根材の頂部側上面に取り付けられ、前記開口から上方へ移動した空気を前記覆い部とで軒先側へ案内して外部へ排出するための下側案内部と、を備えていることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根を構成する屋根材は、経年劣化等により寿命になる前に改修を行う必要があるが、アスベストを含有している屋根材を撤去する際には、アスベストの粉塵が飛散してしまう。そのため、既存の屋根材を撤去することなく既存の屋根材の上に新規の屋根材を施工することで、既存の屋根材を覆って補強することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63-32246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の屋根構造では、既存の屋根材を構成する野地板の上に防水シートを重ね、その上に多数の長尺金属板を桁行方向に沿う姿勢で梁間方向に間隔を置いて敷設して、梁間方向で隣り合う長尺金属板間に通気路を形成する。次に、各長尺金属板の立上り部間に吊子を介してキャップ材を架け渡して、立上り連結部を形成し、それら立上り連結部の上に、硬質基板、合成樹脂発泡体、シート状物が一体になった断熱下地板を敷設している。
【0005】
上記屋根構造では、太陽光から受ける熱を断熱下地板及び通気路により既存の屋根材へ伝達されることをある程度防ぐことができるものの、気温が地球温暖化により年々上昇しているため、断熱下地板及び通気路では十分な対策になっていない。特に、劣化が始まっている既存の古い屋根材は、対策の内容によっては早期に劣化が進んでしまうことになり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、既存の屋根材を覆って補強を行いながらも、既存の屋根材が早期に劣化することを抑制することができる屋根構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の屋根構造は、前述の課題解決のために、勾配を有する既存の屋根材の上に桁行方向に沿う姿勢で桁行方向と直交する梁間方向に間隔を置いて設置して第1通気層を形成する複数の胴縁と、該複数の胴縁の上に設置する新規野地板と、該新規野地板の上に設置して第2通気層を形成するシート状で広がり方向に通気性を有する通気材と、該通気材の上に設置する新規屋根材と、該新規屋根材の頂部に前記第1通気層及び前記第2通気層を外部に連通させるための換気部と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、既存の屋根材の上に複数の胴縁を設置し、その上に新規野地板を設置して補強する。そして、通気材を介して新規屋根材を施工することによって、既存の屋根材を覆って既存の屋根材の補強を行うことができる。しかも、太陽光で暖められた空気が第1通気層及び第2通気層を通して上方へ移動し、換気部から外部へ排出されるので、太陽光から新規屋根材が受ける熱が既存の屋根材まで伝達されることを抑制できる。よって、既存の屋根材が早期に劣化することを抑制することができる。また、新規屋根材の下面に発生する結露水が、通気材を介して新規野地板へと移動し、新規野地板から下方へ向かって移動して外部へ排出することができるので、新規野地板の腐敗による劣化を抑制できる。
【0009】
又、本発明の屋根構造は、前記通気材が、前記新規野地板に接する位置にシート状の防水材を備えていてもよい。
【0010】
上記のように、新規野地板に接する位置にシート状の防水材を備えることによって、新規屋根材の下面に発生する結露水が、通気材を介して防水材へと移動することで、新規野地板に結露水が直接伝わることを抑制できる。よって、新規屋根材の下面に発生する結露水による新規野地板の腐敗による劣化を抑制することができる。
【0011】
又、本発明の屋根構造は、前記防水材は、防水性及び弾性を有する素材から構成され、前記新規屋根材を前記新規野地板に固定する釘が打ち込まれたときに、前記釘の外周面に密着するように構成されていてもよい。
【0012】
上記のように、新規屋根材を新規野地板に固定する釘が打ち込まれたときに、防水材が釘の外周面に密着することによって、防水材の防水性を維持することができる。
【0013】
又、本発明の屋根構造は、前記既存の屋根材の上に遮熱シートが配置されていてもよい。
【0014】
上記のように、既存の屋根材の上に遮熱シートが配置されていれば、新規屋根材から伝わってくる熱を遮熱シートで遮断することで、既存の屋根材への熱の伝達を更に抑制することができる。
【0015】
又、本発明の屋根構造は、前記新規屋根材の頂部に空気排出用の開口が形成され、前記換気部が、前記開口の上方を覆う覆い部と、前記新規屋根材の頂部側上面に取り付けられ、前記開口から上方へ移動した空気を前記覆い部とで軒先側へ案内して外部へ排出するための下側案内部と、を備えていてもよい。
【0016】
上記のように、新規屋根材の頂部に移動した空気は、開口から上方へ移動する。移動してきた空気は、覆い部と下側案内部とで軒先側へ案内して外部へ排出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の屋根材を覆って補強を行いながらも、新規屋根材と既存の屋根材との間に2つの通気層を設けることによって、既存の屋根材が早期に劣化することを抑制することができる屋根構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の屋根構造を示し、内部がわかるように一部を省略した斜視図である。
図2】同屋根構造の軒下側を示す縦断面図である。
図3】同屋根構造の頂部側を示す縦断面図である。
図4】第2通気層の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る屋根構造を、図面を参照しつつ説明する。この屋根構造は、既存の屋根材を撤去することなく、既存の屋根材の上に新規屋根材を施工して構成される。この実施形態では、切り妻屋根を例に挙げて説明する。
【0020】
図3に示すように、切り妻屋根1は、屋根の頂部を境にして両側の軒先にかけて下向きに傾斜した一対の屋根2,2から構成されている。これら一対の屋根2,2は、同一構成であるため、以下において一方の屋根2について説明する。
【0021】
図1図3に示すように、屋根2は、勾配を有する既存の屋根材3の上に桁行方向(傾斜方向)に沿う姿勢で桁行方向と直交する梁間方向(屋根2の幅方向)に間隔を置いて設置して第1通気層T1を形成する複数の胴縁4と、複数の胴縁4の上に設置する新規野地板である構造用合板5と、構造用合板5の上に設置して第2通気層T2を形成する通気材である立体網状体6と、立体網状体6の上に設置する新規屋根材7と、新規屋根材7の頂部に第1通気層T1及び第2通気層T2を外部に連通させるための換気部8と、を備えている。尚、第1通気層T1及び第2通気層T2は、屋根の下端部で外部に連通されている。この屋根構造は、温度差によって上昇気流が発生し、その上昇気流によって温かい空気が屋根の上方まで移動して排出される自然換気を利用して屋根2の温度上昇を抑制している。
【0022】
また、前記構造用合板5の上には、防水材9(図1では省略している)を設置し、防水材9の上に立体網状体6が設置されている。尚、立体網状体6を防水材9の上に一体化しておけば、防水材9を構造用合板5の上に設置するだけで、防水材9と立体網状体6の両方を同時に設置することができる。前述したように、第1通気層T1及び第2通気層T2を設けることによって、軒先において太陽光で暖められた空気が大量に発生した場合でも、第1通気層T1及び第2通気層T2を介して上方へスムーズに案内することができる。これにより、新規屋根材7、構造用合板5、既存の屋根材3の温度上昇を抑制することができる。第2通気層T2は、第1通気層T1の上下寸法よりも長い上下寸法に設定されているが、同一寸法に設定してもよい。
【0023】
既存の屋根材3は、木製の野地板10の上面に設置される化粧スレート屋根材が挙げられる。尚、既存の屋根材3が複数の瓦である場合には、胴縁4を安定良く設置できないため、全ての瓦を取り外すことになる。
【0024】
図1に示すように、野地板10は、垂木11の上に配設され、垂木11の軒先側端面11Aに木製の鼻隠し板12を配設している。また、新規屋根材7の軒先側端部に金属製の鼻隠し板金13を垂設している。したがって、太陽光により暖められて上昇する空気が鼻隠し板12の外側端面12Bにより上方へ案内され、鼻隠し板金13の内面13Aにより案内されて第1通気層T1及び第2通気層T2へ移動し、換気部8へ移動する。
【0025】
各胴縁4は、例えば縦45mm×横15mmの角材である。各胴縁4の奥行(傾斜方向の長さ)は、軒先から屋根の頂部までの距離に設定されている。そして、前述したように、複数の胴縁4を既存の屋根材3の上に設置し、複数の胴縁4の上に構造用合板5を設置することによって、梁間方向で隣り合う胴縁4,4と既存の屋根材3と構造用合板5とで第1通気層T1が形成される。
【0026】
構造用合板5は、既存の屋根3を覆うことができる大きさに構成され、厚みは、既存の屋根3の大きさに応じて設定される(この実施形態では、例えば12mmに設定している)。
【0027】
立体網状体6は、シート上でシートの広(拡)がり方向に通気性を有するように構成されている。具体的には、立体網状体6は、図4に示すように、不規則な形になるように捩じられた合成樹脂(例えばポリプロピレン)の線状体6Aの複数を絡ませ、絡ませることにより線状体同士が接触する接触部分を接合させることで、あらゆる方向(シートの広がり方向)に空間が形成された立体物である。新規屋根材7の下面7Aに発生する結露水が、下面7Aに接触する立体網状体6を介して防水材9へと移動することで、構造用合板5に結露水が伝わることを抑制できる。よって、新規屋根材7の下面7Aに発生する結露水による構造用合板5の腐敗による劣化を抑制することができる。また、新規屋根材7が金属で構成されているため、新規屋根材7が太陽光を受けて膨張するときの膨張音を小さくするように立体網状体6が膨張音を吸収することができる。尚、立体網状体6は、合成樹脂で構成されることが好ましいが、合成樹脂以外、例えば紙や、場合によっては、金属等で構成されていてもよい。また、立体網状体6は、網状以外のものであってもよい。
【0028】
防水材9は、防水性及び弾性を有する素材から構成され、新規屋根材7を構造用合板5に固定する釘(図示せず)が打ち込まれたときに、釘の外周面に密着する構成である。したがって、新規屋根材7を構造用合板5に固定する釘が打ち込まれたときに、防水材9が弾性復元力を発揮することにより釘の外周面に密着する。これにより、防水材9の防水性を維持することができる。よって、雨水等が防水材9から構造用合板5へ漏れることがないようにしている。
【0029】
また、既存の屋根材3の上には、遮熱シート14(図1では省略している)が配置されている。したがって、新規屋根材7から下方へ伝わってくる熱を遮熱シート14で遮断することで、既存の屋根材3への熱の伝達を更に抑制することができる。
【0030】
遮熱シート14は、赤外線を反射する合成樹脂(例えばポリエチレン)でなる多孔質シート又は不織布で構成されるとともに、透湿性及び防水性を有している。したがって、遮熱シート14は、既存の屋根材3の湿気を排出し、既存の屋根材3への結露水の侵入を防止する。しかも、赤外線を反射して既存の屋根材3の温度上昇を抑制することができる。
【0031】
換気部8は、図3に示すように、一対の屋根2,2(新規屋根材7,7)の頂部側端面2T,2T間に形成される空気排出用の縦向きの開口Sの上方を覆う三角形状の覆い部8Aと、一対の屋根2,2(新規屋根材7,7)の頂部側上面に取り付けられ、開口Sから上方へ移動した空気を覆い部8Aとで軒先側へ案内して外部へ排出するための一対の下側案内部8B,8Bと、を備えている。前記開口Sへは、一対の屋根2,2に形成された第1通気層T1,T1及び第2通気層T2,T2からの空気が合流するだけでなく、開口Sに連通している小屋裏15からの空気も上昇して合流する。覆い部8A及び下側案内部8B,8Bは、新規屋根材7,7と略平行に形成されている。また、下側案内部8B,8Bの軒先側端部に斜め上方に折り曲げられた傾斜部を有しているため、移動してきた空気を斜め上方の外部へ排出することができる。尚、前記換気部8内に空気を強制吸引するためのファンを設けて実施してもよい。
【0032】
また、本発明は、新規屋根材を既存の屋根材に設置して既存の屋根材を補強する屋根材補強工法を備えている。この屋根材補強工法は、複数の胴縁4を勾配を有する既存の屋根材3の上に桁行方向に沿う姿勢で桁行方向と直交する梁間方向に間隔を置いて設置して第1通気層T1を形成する胴縁設置工程と、前記複数の胴縁4の上に構造用合板5を設置する構造用合板設置工程と、前記構造用合板5の上に合成樹脂製の立体網状体6を設置して第2通気層T2を形成する立体網状体設置工程と、前記立体網状体6の上に新規屋根材7を設置する新規屋根材設置工程と、前記新規屋根材7の頂部に前記第1通気層T1及び前記第2通気層T2を外部に連通させるための換気部8を設置する換気部設置工程と、を備えている
【0033】
また、屋根材補強工法は、構造用合板5の上に防水材9を設置する防水材設置工程を備えている。更に、屋根材補強工法は、既存の屋根材3の上に遮熱シート14を設置する遮熱シート設置工程を備えている。
【0034】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
上記実施形態では、切り妻屋根を挙げて説明したが、寄せ棟屋根、方形屋根、片流れ屋根等、屋根の頂部から軒先にかけて下向きに傾斜した屋根であれば、どのような形態の屋根であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、新規屋根材7を金属製から構成したが、金属製以外の材料から構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…切り妻屋根、2…屋根、2T…頂部側端面、3…既存の屋根材、4…胴縁、5…構造用合板(新規野地板)、6…立体網状体(通気材)、6A…線状体、7…新規屋根材、7A…下面、8…換気部、8A…覆い部、8B…下側案内部、9…防水材、10…野地板、11…垂木、11A…軒先側端面、12…鼻隠し板、12B…外側端面、13…鼻隠し板金、13A…内面、14…遮熱シート、15…小屋裏、S…開口、T1…第1通気層、T2…第2通気層
図1
図2
図3
図4