(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152434
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】集材用車両および集材システム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/40 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B60P3/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055210
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 実
(72)【発明者】
【氏名】舞草 秀信
(57)【要約】
【課題】積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動化することができる集材用車両を提供する。
【解決手段】走行可能な車体部10と、車体部10に設けられたアーム20と、アーム20に設けられたグラップル装置30と、を備え、車体部10、アーム20、およびグラップル装置30の駆動を制御する駆動制御部51と、車体部10の周囲、およびグラップル装置30の周囲の画像を撮像する撮像部70と、画像中の木材Wを認識する画像認識部52と、を有し、駆動制御部51は、画像認識部52の認識結果に応じて車体部10、アーム20、およびグラップル装置30の駆動を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体部と、
前記車体部に設けられたアームと、
前記アームに設けられたグラップル装置と、
を備えた集材用車両であって、
前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記車体部の周囲、および前記グラップル装置の周囲の画像を撮像する撮像部と、
前記画像中の木材を認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する、
集材用車両。
【請求項2】
前記駆動制御部は、
前記画像中において、前記グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれる場合には、前記グラップル装置によって前記木材を把持する把持動作を実行するように、前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御し、
前記画像中において、前記グラップル装置によって把持できる範囲には木材が含まれないが、前記画像中に把持可能な木材が含まれる場合には、前記グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれる位置に移動するように、前記車体部の駆動を制御する、
請求項1に記載の集材用車両。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の集材用車両を含む、集材システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集材用車両および集材システムに関する。より詳細には、グラップル装置が設けられた、フォワーダや油圧ショベル等の集材用車両と、集材用車両を含む集材システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集材用車両としてフォワーダが使用されている。フォワーダは、例えば木材の伐採を行う木材伐採地(積み込み位置)から木材の集材を行う木材集材地(荷下ろし位置)に向けて、伐採された木材を搬送する作業に用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
フォワーダは、シャシフレームの下部に、自走可能なクローラ式の走行装置を備えている。シャシフレームの上部には、運転室、荷台、および折り曲げ式のクレーンが架装されている。クレーンにはグラップル装置が設けられている。グラップル装置は、開閉して木材を機械的に把持することができる。
【0004】
フォワーダは、積み込み位置や荷下ろし位置において、オペレータがクレーンおよびグラップル装置を手動操作することにより、荷台に木材を積み下ろしすることができる。また、フォワーダは、オペレータが手動運転することによって、積み込み位置から荷下ろし位置まで荷台に積載した木材を搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、積み込み位置や荷下ろし位置において、オペレータが手動操作でフォワーダに木材を積み下ろしする場合、木材の位置や、荷台の位置等を視認しながらクレーンおよびグラップル装置を操作する必要がある。このため、オペレータの手動操作によってフォワーダに木材を積み下ろしする作業は容易ではなく、オペレータが手動操作に習熟していなければ、木材を適切に積み下ろしすることは困難であった。また、オペレータがフォワーダを手動運転しながら伐採された木材を探すことは容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、走行および移動を自動で行うとともに、積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動で行うことができる集材用車両、および集材システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の集材用車両は、
走行可能な車体部と、
前記車体部に設けられたアームと、
前記アームに設けられたグラップル装置と、
を備えた集材用車両であって、
前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記車体部の周囲、および前記グラップル装置の周囲の画像を撮像する撮像部と、
前記画像中の木材を認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する。
【0009】
本発明の集材システムは、本発明に係る集材用車両を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の集材用車両によれば、走行および移動を自動で行うとともに、積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動で行うことができる。
【0011】
本発明の集材システムによれば、積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動で行うことができとともに、積み込み位置および荷下ろし位置の間を自動走行して移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る集材用車両の側面図である。
【
図4】
図4は、集材用車両の制御システムを示すブロック図である。
【
図5】
図5は、集材用車両の自動制御による動作を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、自動制御開始からの制御を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態2の集材システムを構成する集材用車両を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態2の集材システムを構成する集材用車両を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態2の集材システムを構成する集材用車両および木材運搬用車両を示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態2の集材システムを構成する集材用車両および木材運搬用車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかる集材用車両は、
走行可能な車体部と、
前記車体部に設けられたアームと、
前記アームに設けられたグラップル装置と、
を備えた集材用車両であって、
前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記車体部の周囲、および前記グラップル装置の周囲の画像を撮像する撮像部と、
前記画像中の木材を認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御する(第1の構成)。
【0014】
上記構成によれば、駆動制御部は、画像認識部の認識結果に応じて車体部、アーム、およびグラップル装置の駆動を制御する。このため、走行および移動を自動で行うとともに、積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動で行うことができる。
【0015】
上記第1の構成において、
前記駆動制御部は、
前記画像中において、前記グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれる場合には、前記グラップル装置によって前記木材を把持する把持動作を実行するように、前記車体部、前記アーム、および前記グラップル装置の駆動を制御し、
前記画像中において、前記グラップル装置によって把持できる範囲には木材が含まれないが、前記画像中に把持可能な木材が含まれる場合には、前記グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれる位置に移動するように、前記車体部の駆動を制御してもよい(第2の構成)。
【0016】
上記構成によれば、グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれる場合には、グラップル装置によって木材を把持する把持動作を実行し、グラップル装置によって把持できる範囲に木材が含まれないが、画像中に把持可能な木材が含まれる場合には、木材を把持できる位置まで移動する。
このため、積み込み位置や荷下ろし位置において、オペレータが操作することなく、グラップル装置による把持動作を実行することができる。
【0017】
本発明の一実施形態にかかる集材システムは、
上記第1または第2の構成に係る集材用車両を含んでいる(第3の構成)。
【0018】
上記構成によれば、積み込み位置や荷下ろし位置等において、木材の積み下ろし作業を自動で行うことができとともに、積み込み位置および荷下ろし位置の間を自動走行して移動することができる。
【0019】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る集材用車両100を詳しく説明する。本実施形態にかかる集材用車両100は、フォワーダの形態を有している。集材用車両100は、積み込み位置P1および荷下ろし位置P2において、オペレータがクレーン20およびグラップル装置30を手動操作することなく、自動運転により、荷台15に木材Wを積み下ろしすることができる。また、集材用車両100は、オペレータが手動運転することなく、積み込み位置P1から荷下ろし位置P2まで自動走行して荷台15に積載した木材Wを搬送することができる。
【0020】
以下の説明では、集材用車両100が自動走行し、自動で把持動作および配置動作を行う制御システムについて主に説明する。集材用車両100は、オペレータが手動運転して走行したり、手動操作によって木材Wの積み込みおよび荷下ろしを行うための操作部等の構成も備えているが、手動運転および手動操作に関する構成については詳細な説明を省略する。
【0021】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。図中、矢印Fは前方を示し、矢印Bは後方を示す。矢印Lは左方を示し、矢印Rは右方を示す。矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0022】
[全体構成]
まず、集材用車両100の全体構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る集材用車両100の側面図である。
図2は、集材用車両100の平面図である。
図1および
図2に示すように、集材用車両100は、車体部10、クレーン20、グラップル装置30、情報処理部50、および撮像部70を備えている。
【0023】
車体部10は、シャシフレーム11、および走行装置12を備えている。シャシフレーム11は、車体部10の基体をなす部分である。シャシフレーム11の上部には、運転室14および荷台15が設けられている。走行装置12は、走行用の油圧システムによって自走可能なクローラ式であり、シャシフレーム11の下部に配置されている。走行装置12は、油圧システムで構成される車体駆動部18(
図4参照)によって駆動される。具体的には、車体部10は、車体駆動部18が制御されることによって、前進、後進、方向転換、旋回等を行うことが可能である。なお、オペレータが手動で集材用車両100の運転操作を行う場合は、オペレータは運転室14に搭乗するが、集材用車両100を自動運転させる場合は、オペレータは運転室14に搭乗していなくてもよい。
【0024】
クレーン20は、シャシフレーム11の運転室14と荷台15との間に配置されている。クレーン20は、開閉可能なグラップル装置30を操作することにより、荷台15に対して木材Wを積み下ろしする際に使用される。
【0025】
クレーン20は、ベース21、コラム22、およびブーム23を有している。クレーン20は、油圧システムで構成されるクレーン駆動部28(
図4参照)によって駆動される。クレーン駆動部28は、旋回装置(図示せず)、インナシリンダ24、アウタシリンダ25、およびブーム伸縮シリンダ26を有している。クレーン20は、クレーン駆動部28が制御されることによって、コラム22の旋回、ブーム23の起伏および伸縮等が可能である。クレーン20は、本発明のアームに相当する。
【0026】
ベース21は、シャシフレーム11の上部に固定されている。コラム22は、クレーン駆動部28を構成する旋回装置(図示せず)によってベース21に対して旋回できるように構成されている。
【0027】
ブーム23は、折り曲げ式であり、コラム22の上部に支持されている。ブーム23は、インナブーム231、およびアウタブーム232を有している。インナブーム231は、コラム22に対して起伏可能に支持されている。インナブーム231の起伏は、インナシリンダ24によって行われる。
【0028】
アウタブーム232は、インナブーム231に対して格納および展開可能に接続されている。アウタブーム232は、複数の筒体が入れ子状に構成されている。アウタブーム232の展開および格納は、アウタシリンダ25により行い、アウタブーム232の伸縮は、ブーム伸縮シリンダ26により行う。アウタブーム232の先端には、グラップル装置30が装着されている。
【0029】
コラム22の上方には、作業台27が設けられている。木材Wの積み下ろし作業の際に、オペレータが手動操作によってクレーン20を操作するときは、オペレータは、作業台27に搭乗してクレーン20の操作を行うが、木材Wの積み下ろし作業を自動で行う場合は、オペレータは作業台27に搭乗していなくてもよい。
【0030】
グラップル装置30は、木材Wを機械的に掴む装置である。グラップル装置30は、上側部分31、下側部分32、およびトング33を備えている。グラップル装置30は、油圧システムで構成されるグラップル駆動部38(
図4参照)によって駆動される。グラップル駆動部38は、ローテータ35、および油圧シリンダ36を有している。
【0031】
上側部分31と下側部分32は、ローテータ35を介して連結されている。ローテータ35は油圧により旋回可能であるため、下側部分32は、上側部分31に対して旋回可能である。
【0032】
下側部分32には、トング33が設けられている。トング33は、油圧シリンダ36によって開閉可能であり、トング33を閉じることによって木材Wを把持することができ、トング33を開くことによって把持した木材Wを開放することができる。
【0033】
情報処理部50は、駆動制御部51および画像認識部52等を有している(
図4参照)。情報処理部50は、車体部10の運転室14付近に配置されている。駆動制御部51は、車体部10、クレーン20、およびグラップル装置30の駆動を制御する。画像認識部52は、撮像部70によって撮像された画像中の木材Wを認識する。情報処理部50については後に詳細に説明する。
【0034】
撮像部70は、集材用車両100の周囲、およびグラップル装置30の周囲の画像を撮像する。撮像部70は、車両周辺撮像部71およびグラップル周辺撮像部72を有している。車両周辺撮像部71は、主に集材用車両100の周囲を撮像し、集材用車両100の周囲に存在する木材W、障害物、あるいは人等を撮像する。グラップル周辺撮像部72は、主にグラップル装置30で把持しようとする木材Wを撮像する。車両周辺撮像部71およびグラップル周辺撮像部72に示した2点鎖線は、車両周辺撮像部71およびグラップル周辺撮像部72で撮像する領域の角度の一例を示している。
【0035】
車両周辺撮像部71は、前方領域撮像部711、後方領域撮像部712、右領域撮像部713、および左領域撮像部714を有している。前方領域撮像部711は、運転室14の前部に配置されており、車体部10の前方を撮像する。後方領域撮像部712は、シャシフレーム11の後部に配置されており、車体部10の後方を撮像する。右領域撮像部713は、運転室14の右部に配置されており、車体部10の右方を撮像する。左領域撮像部714は、運転室14の左部に配置されており、車体部10の左方を撮像する。
【0036】
グラップル周辺撮像部72は、ブーム撮像部721、グラップル撮像部722を有している。ブーム撮像部721は、アウタブーム232の基部に配置されており、グラップル装置30およびグラップル装置30の下方を撮像する。グラップル撮像部722は、グラップル装置30のトング33の間に配置されており、グラップル装置30の下方を撮像する。なお、図示した車両周辺撮像部71およびグラップル周辺撮像部72の取り付け位置は一例である。例えば、グラップル撮像部722は、トング33の外側に配置されていてもよい。
【0037】
図3は、グラップル装置30の側面図である。
図3に示すように、グラップル装置30の上側部分31は、アウタブーム232に対して揺動可能に連結されている。下側部分32は、上側部分31に対してローテータ35を介して連結されている。下側部分32に設けられたトング33は、油圧シリンダ36によって開閉駆動される。ローテータ35および油圧シリンダ36を駆動させる作動油は、グラップル駆動部38を構成する油圧ポンプおよび油圧バルブ等から油圧配管39を介して供給される。
【0038】
グラップル駆動部38の駆動制御により油圧シリンダ36に作動油が供給されると、油圧シリンダ36が伸縮動作する。油圧シリンダ36の伸縮動作は、リンク機構を介して伝達され、トング33を開閉動作させる。本実施形態では、トング33は、
図3の実線で示す開放位置と、2点鎖線で示す閉鎖位置との間で動作可能になっている。
【0039】
トング33が開いており、トング33間に木材Wが位置している状態で、トング33を閉じることにより、トング33で木材Wを把持する把持動作を実行することができる。また、トング33で木材Wを把持した状態から、トング33を開くことにより、トング33から木材Wを開放する配置動作を実行することができる。
【0040】
グラップル駆動部38の駆動制御によりローテータ35に作動油が供給されると、ローテータ35が回転動作する。ローテータ35の回転動作に応じて、グラップル装置30の上側部分31に対して、下側部分32が所定の角度だけ旋回される。これにより、木材Wを把持できるようにトング33の向きを変更することができる。
【0041】
次に、集材用車両100の自動制御について
図4~
図13を用いて詳細に説明する。
図4は、集材用車両100の制御システムを示すブロック図である。
【0042】
図4に示すように、情報処理部50は、予め記録されたプログラムや機械学習によって情報処理を行い、集材用車両100の各部との間で情報通信をする装置である。情報処理部50の構成は限定されず、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)やメモリ、外部記憶装置、情報通信手段等を備えた公知のコンピュータ装置を用いることができる。
【0043】
情報処理部50は、駆動制御部51、画像認識部52、距離判定部53、荷重判定部54、走行ルート案内部55、積載量判定部56、および機械学習部58を有している。また、情報処理部50には、撮像部70、距離計測部73、荷重計測部74、衛星測位システム75、および自立航法システム76からの出力信号が入力されるように構成されている。
【0044】
駆動制御部51は、情報処理部50の一部として構成された部分である。駆動制御部51は、画像認識部52、距離判定部53、荷重判定部54、走行ルート案内部55、積載量判定部56、機械学習部58の出力に基づいて、車体駆動部18、クレーン駆動部28、およびグラップル駆動部38の駆動を制御する。駆動制御部51による自動制御の詳細については後述する。
【0045】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる木材やその他の構造物、人等について形状やサイズ、位置、向きなどを認識する。
【0046】
距離判定部53は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wやその他の構造物、人等について、距離を判定し、例えば木材Wについてはグラップル装置30によって把持できる範囲に含まれているかどうかを判定する。木材Wまでの距離は、距離計測部73からの出力信号に基づいて算出する。なお、木材Wまでの距離は、撮像部70が撮像した画像から画像認識によって算出してもよい。
【0047】
荷重判定部54は、グラップル装置30で木材Wを把持したかどうか判定するとともに、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重であるかどうかを判定する。また、荷重判定部54は、グラップル装置30で木材Wを把持できなかった場合における荷重がない状態も判定する。判定はグラップル装置30の荷重に基づいて行い、グラップル装置30の荷重は、グラップル装置30に設けた荷重計測部74からの出力信号に基づいて算出する。
【0048】
走行ルート案内部55は、木材Wの積み込み位置P1と荷下ろし位置P2との間の走行ルートを記憶する。また、走行ルート案内部55は、集材用車両100が積み込み位置P1と荷下ろし位置P2との間を走行ルートに沿って自動走行するように、駆動制御部51に対して制御信号を出力する。走行ルート案内部55に記憶させる走行ルートは、衛星測位システム75および自立航法システム76からの出力信号を用いて記憶させる。具体的には、例えばオペレータが集材用車両100を走行ルートに沿って手動運転し、その際に、走行ルートに対応する位置情報等を衛星測位システム75および自立航法システム76から走行ルート案内部55に入力して記憶させる。
【0049】
積載量判定部56は、荷台15に積載された木材Wによる荷重が積載可能範囲であるかどうかを判定する。判定は荷台15の荷重に基づいて行い、荷台15の荷重は、荷台15の支持部に設けたロードセル(図示せず)等の荷重計測装置からの出力信号に基づいて算出する。
【0050】
機械学習部58は、駆動制御部51による車体駆動部18、クレーン駆動部28、およびグラップル駆動部38の駆動制御と、車体部10、クレーン20、およびグラップル装置30による作業結果とを照らし合わせて、機械学習を実行することで駆動制御部51による制御効率を向上させる。機械学習部58による機械学習としては、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習等の公知の技術を用いることができる。
【0051】
撮像部70は、上述のように、集材用車両100の周囲、およびグラップル装置30の周囲の画像を撮像する。車両周辺撮像部71は、主に集材用車両100の周囲に存在する木材W、障害物、人を撮像する。グラップル周辺撮像部72は、主にグラップル装置30の周囲、特にグラップル装置30で把持しようとする木材Wを撮像する。
【0052】
距離計測部73は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wやその他の構造物、人等までの距離を計測する。距離計測部73からの出力信号は、距離判定部53に入力される。距離計測部73として、例えばレーザー距離センサを用いることができる。
【0053】
荷重計測部74は、グラップル装置30に加わる荷重を計測する。荷重計測部74はグラップル装置30に設けられており、出力信号は、荷重判定部54に入力される。荷重計測部74として、例えばロードセルを用いることができる。
【0054】
衛星測位システム75は、測位衛星からの信号に基づいて集材用車両100の位置情報を取得するシステムである。衛星測位システム75としてGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いることができる。衛星測位システム75からの出力信号は、走行ルート案内部55に入力される。
【0055】
自立航法システム76は、加速度センサやジャイロセンサ等を用いて集材用車両100の位置情報を取得するシステムである。自立航法システム76からの出力信号は、走行ルート案内部55に入力される。
【0056】
車体駆動部18は、車体部10の駆動を行う。車体駆動部18は、車体部10に設けられた油圧ポンプ、油圧バルブ等の油圧システムによって構成されている。車体駆動部18は、駆動制御部51によって駆動制御されて車体部10の駆動を行い、例えば走行ルートに沿って集材用車両100を前進、後進、方向転換、旋回等させることが可能である。
【0057】
クレーン駆動部28は、クレーン20の駆動を行う。クレーン駆動部28は、車体部10に設けられた油圧ポンプ、油圧バルブ、および、クレーン20に設けられた旋回装置(図示せず)、インナシリンダ24、アウタシリンダ25、およびブーム伸縮シリンダ26(
図1参照)等の油圧システムによって構成されている。クレーン駆動部28は、駆動制御部51によって駆動制御されてクレーン20の駆動を行い、グラップル装置30の位置を操作して木材Wを移動させることが可能である。
【0058】
グラップル駆動部38は、グラップル装置30の駆動を行う。グラップル駆動部38は、車体部10に設けられた油圧ポンプ、油圧バルブ、および、グラップル装置30に設けられたローテータ35、および油圧シリンダ36(
図3参照)等の油圧システムによって構成されている。グラップル駆動部38は、駆動制御部51によって駆動制御されてグラップル装置30の駆動を行い、木材Wの把持および開放を行うことが可能である。
【0059】
[動作]
図5は、集材用車両100の自動制御による動作を模式的に示す図である。
図5に示すように、集材用車両100の自動制御では、駆動制御部51の制御によって、A~D段階に示したよう動作を繰り返し行う。
【0060】
A段階の積み込み位置P1への移動動作では、衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76を用いて、予め記憶された走行ルートに沿って積み込み位置P1に向けて自動走行する。自動走行中は、画像認識に基づいて、周囲に人や障害物が存在するかどうかを判定しながら走行する。積み込み位置P1では、画像認識により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが存在するかどうかを判定する。
【0061】
B段階の木材Wの積み込み動作では、画像認識に基づいて、クレーン20およびグラップル装置30を駆動制御し、積み込み位置P1の木材Wをグラップル装置30で把持する動作(把持動作)と、グラップル装置30で把持した木材Wを集材用車両100の荷台15に積み込む動作(配置動作)を繰り返し行う。
【0062】
C段階の木材Wの荷下ろし位置P2への移動動作では、衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76を用いて、予め記憶された走行ルートに沿って積み込み位置P1から荷下ろし位置P2に向けて自動走行する。自動走行中は、画像認識に基づいて、周囲に人や障害物が存在するかどうかを判定しながら走行する。
【0063】
D段階の木材Wの荷下ろし動作では、画像認識に基づいて、クレーン20およびグラップル装置30を駆動制御し、荷台15に積載された木材Wをグラップル装置30で把持する動作(把持動作)と、グラップル装置30で把持した木材Wを荷下ろし位置P2で開放して(配置動作)、荷下ろしする動作を繰り返し行う。
【0064】
次に、
図6~
図13を用いて、集材用車両100の自動制御による木材Wの積み込み位置P1への移動動作、木材Wの積み込み動作、木材Wの荷下ろし位置P2への移動動作、木材Wの荷下ろし動作について、さらに詳細に説明する。
【0065】
図6は、自動制御開始からの制御を示すフローチャートである。
図7は、
図6に続く制御を示すフローチャートである。
図8は、
図7に続く制御を示すフローチャートである。
図9は、
図8に続く制御を示すフローチャートである。
図10は、
図9に続く制御を示すフローチャートである。
図11は、
図10に続く制御を示すフローチャートである。
図12は、
図11に続く制御を示すフローチャートである。
図13は、
図12に続く制御を示すフローチャートである。
【0066】
図6に示すように、集材用車両100の自動運転を開始すると、A段階の木材Wの積み込み位置P1への移動動作を開始する。駆動制御部51は車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100を積み込み位置P1に向けて走行させる。走行中は、走行ルート案内部55が衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76からの出力信号に基づいて予め記憶された走行ルートの範囲内であるかどうかを判定する。走行ルートの範囲外を走行している場合(NO)は走行方向を修正する。走行ルートの範囲内を走行している場合(YES)は走行を続行する。
【0067】
画像認識部52は、走行中に撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる人や障害物を認識する。人や障害物を認識した場合(NO)は自動運転を停止する(2)。人や障害物を認識しない場合(YES)は走行を続行する。
【0068】
走行ルート案内部55は、衛星測位システム75および自立航法システム76からの出力信号に基づいて予め記憶された積み込み位置P1に到達したかどうかを判定する。集材用車両100が積み込み位置P1に到達した場合(YES)は、駆動制御部51は、車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100の走行を停止する。集材用車両100が積み込み位置P1に到達していない場合(NO)は走行を続行する。
【0069】
集材用車両100が積み込み位置P1に到達して停止すると、画像認識部52は、撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる木材Wを認識する。距離計測部73は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wまでの距離を計測する。距離判定部53は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wについて、グラップル装置30によって把持できる範囲に含まれているかどうかを判定する。
【0070】
距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていると判定された場合(NO)、
図7に示したB段階の木材Wの積み込み動作に移行する(3)。
【0071】
距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていないと判定された場合(YES)には、画像認識部52は、画像中に把持可能な木材Wが含まれるかどうか判定する。
【0072】
その結果、画像認識部52が、画像中に把持可能な木材Wが含まれないと判定した場合(NO)、駆動制御部51は、集材用車両100の自動運転を停止する(2)。画像認識部52により、画像中に把持可能な木材Wが含まれると判定された場合(YES)、駆動制御部51は、車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100をその木材Wに向けて走行させる(
図7の(a)へ続く)。
【0073】
図7に示すように、駆動制御部51が車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100を木材Wに向けて走行させると、画像認識部52は、撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる木材Wを認識する。距離計測部73は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wまでの距離を計測する。距離判定部53は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wについて、グラップル装置30によって把持できる範囲に含まれているかどうかを判定する。
【0074】
距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていると判定された場合(YES)、駆動制御部51が車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100を停止させ、B段階の木材Wの積み込み動作に移行する。距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていないと判定された場合(NO)は、走行を続行する。
【0075】
B段階の木材Wの積み込み動作を開始すると、駆動制御部51は、把持動作を開始する。具体的には、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させる。また、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20の旋回、起伏および伸縮等を行い、集積された木材Wの中央上部にグラップル装置30を移動させる。さらに、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してローテータ35を回転させ、グラップル装置30の上側部分31に対して、下側部分32を旋回させてトング33の向きを変更する。
【0076】
画像認識部52は、把持しようとしている木材W、および旋回中のグラップル装置30のトング33の画像を取得し、木材Wとトング33のそれぞれの向きを認識する。画像認識部52により、トング33と木材Wが平行ではないと判定した場合(YES)、トング33で木材Wを把持可能であるため、トング33の旋回を停止する。
【0077】
画像認識部52により、トング33と木材Wが平行になっていると判定した場合(NO)、トング33を閉じても木材Wを把持することができないため、トング33を開放した状態を維持し、集積された木材Wの中央上部にグラップル装置30を移動させた状態のままで、トング33の旋回を続行する(
図8の(b)へ続く)。
【0078】
図8に示すように、トング33の旋回を停止した後、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してブーム23の高さを下げてグラップル装置30を木材Wに向けて降下させる。
【0079】
画像認識部52は、把持しようとしている木材W、およびグラップル装置30のトング33の画像を取得し、木材Wとトング33のそれぞれの位置を認識する。画像認識部52、距離計測部73および距離判定部53により、トング33が木材Wを把持できる高さになっていると判定した場合(YES)、トング33で木材Wを把持可能であるため、ブーム23の降下を停止する。
【0080】
画像認識部52および距離判定部53により、トング33が木材Wを把持できる高さになっていないと判定した場合(NO)、ブーム23の降下を続行する。
【0081】
トング33が木材Wを把持できる高さになっている状態で、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を閉鎖させる。
【0082】
トング33を閉鎖すると、荷重判定部54は、グラップル装置30で木材Wを把持したかどうか判定する。判定はグラップル装置30の荷重に基づいて行い、グラップル装置30の荷重は、グラップル装置30に設けた荷重計測部74からの出力信号に基づいて算出する。
【0083】
荷重判定部54により、グラップル装置30で木材Wを把持していないと判定した場合(NO)、
図7の(6)で示したように、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を再度開放させて、B段階の木材Wの積み込み動作を再度実行する。
【0084】
荷重判定部54により、グラップル装置30で木材Wを把持していると判定した場合(YES)、さらに荷重判定部54は、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重であるかどうかを判定する。
【0085】
荷重判定部54により、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重であると判定した場合(NO)、
図7の(6)で示したように、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させて木材Wを開放し、B段階の木材Wの積み込み動作を再度実行する。
【0086】
荷重判定部54により、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重でないと判定した場合(YES)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20の旋回、起伏および伸縮等を行い、グラップル装置30で把持した木材Wを集材用車両100の荷台15の直上に移動させ、配置動作を行う。
【0087】
配置動作においては、画像認識部52は、把持している木材W、および集材用車両100の荷台15の画像を取得し、木材Wと荷台15のそれぞれの位置を認識する。画像認識部52により、木材Wが荷台15の直上になっていないと判定した場合(NO)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20による木材Wの移動を続行する。画像認識部52により、木材Wが荷台15の直上であると判定した場合(YES)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20による木材Wの移動を停止する(
図9の(c)へ続く)。
【0088】
図9に示すように、クレーン20による木材Wの移動を停止した後、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してローテータ35を回転させ、グラップル装置30の上側部分31に対して、下側部分32を旋回させてトング33の向きを変更する。
【0089】
画像認識部52は、把持している木材W、および集材用車両100の荷台15の画像を取得し、木材Wと荷台15のそれぞれの向きを認識する。画像認識部52により、トング33と荷台15が平行であると判定した場合(YES)、木材Wを荷台15に積み込み可能であるため、トング33の旋回を停止する。
【0090】
画像認識部52により、トング33と荷台15が平行でないと判定した場合(NO)、木材Wを荷台15に積み込みできないため、トング33の旋回を続行する。
【0091】
トング33の旋回を停止した後、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してブーム23の高さを下げてグラップル装置30を荷台15に向けて降下させる。
【0092】
画像認識部52は、把持している木材W、および荷台15の画像を取得し、木材Wと荷台15のそれぞれの位置を認識する。画像認識部52および距離判定部53により、把持している木材Wが荷台15または荷台15に積載している別の木材Wに近い高さになっていると判定した場合(YES)、木材Wを積み込み可能であるため、ブーム23の降下を停止する。
【0093】
画像認識部52により、把持している木材Wが荷台15または荷台15に積載している別の木材Wに近い高さになっていないと判定した場合(NO)、ブーム23の降下を続行する。
【0094】
木材Wが荷台15に積み込みできる高さになっている状態で、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させ、把持していた木材Wを荷台15または荷台15に積載している別の木材Wの上に載置する。
【0095】
木材Wを荷台15に積み込むと、積載量判定部56は、荷台15に積載された木材Wによる荷重が積載可能範囲であるかどうかを判定する。判定は荷台15の荷重に基づいて行い、荷台15の荷重は、荷台15の支持部に設けたロードセル(図示せず)等の荷重計測装置からの出力信号に基づいて算出する。
【0096】
積載量判定部56により、更なる積載は可能でないと判定された場合(NO)、
図10に示したC段階の木材Wの荷下ろし位置への移動動作に移行する(5)。
【0097】
積載量判定部56により、更なる積載が可能であると判定された場合(YES)、画像認識部52は、撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる木材Wを認識する。距離計測部73は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wまでの距離を計測する。距離判定部53は、撮像部70が撮像した画像中に含まれる木材Wについて、グラップル装置30によって把持できる範囲に含まれているかどうかを判定する。
【0098】
距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていると判定された場合(NO)、
図7の(6)で示したように、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を再度開放させて、B段階の木材Wの積み込み動作を再度実行する。
【0099】
距離判定部53により、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれていないと判定された場合(YES)には、画像認識部52は、画像中に把持可能な木材Wが含まれるかどうか判定する。その結果、画像中に把持可能な木材Wが含まれると判定された場合(NO)、
図7の(4)で示したように、駆動制御部51は、車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100をその木材Wに向けて走行させる。
【0100】
一方、画像認識部52が、画像中に把持可能な木材Wが含まれないと判定した場合(YES)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28およびグラップル駆動部38を駆動制御して、クレーン20およびグラップル装置30を格納し、C段階の木材Wの荷下ろし位置への移動動作に移行する。
【0101】
図10に示すように、C段階の木材Wの荷下ろし位置P2への移動動作に移行すると、駆動制御部51は車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100を荷下ろし位置P2に向けて走行させる。走行中は、走行ルート案内部55が衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76からの出力信号に基づいて予め記憶された走行ルートの範囲内であるかどうかを判定する。走行ルートの範囲外を走行している場合(NO)は走行方向を修正する。走行ルートの範囲内を走行している場合(YES)は走行を続行する。
【0102】
画像認識部52は、走行中に撮像部70が撮像した画像を取得し、画像に含まれる人や障害物を認識する。人や障害物を認識した場合(NO)は自動運転を停止する(2)。人や障害物を認識しない場合(YES)は走行を続行する。
【0103】
走行ルート案内部55は、衛星測位システム75および自立航法システム76からの出力信号に基づいて予め記憶された荷下ろし位置P2に到達したかどうかを判定する。集材用車両100が荷下ろし位置P2に到達した場合(YES)は、駆動制御部51は、車体駆動部18を駆動制御して集材用車両100の走行を停止する。集材用車両100が荷下ろし位置P2に到達していない場合(NO)は走行を続行する(
図11の(d)へ続く)。
【0104】
図11に示すように、集材用車両100が荷下ろし位置P2に到達して停止すると、D段階の木材Wの荷下ろし動作に移行する。
【0105】
D段階の木材Wの荷下ろし動作を開始すると、駆動制御部51は、把持動作を開始する。具体的には、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させる。また、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20の旋回、起伏および伸縮等を行い、荷台15に積載された木材Wのうち頂上部の木材Wの中央上部にグラップル装置30を移動させる。さらに、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してローテータ35を回転させ、グラップル装置30の上側部分31に対して、下側部分32を旋回させてトング33の向きを変更する。
【0106】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した、把持しようとしている木材Wおよび旋回中のグラップル装置30のトング33の画像を取得し、木材Wとトング33のそれぞれの向きを認識する。画像認識部52により、トング33と木材Wが平行ではないと判定した場合(YES)、トング33で木材Wを把持可能であるため、トング33の旋回を停止する。
【0107】
画像認識部52により、トング33と木材Wが平行になっていると判定した場合(NO)、トング33を閉じても木材Wを把持することができないため、トング33を開放した状態を維持し、積載された木材Wの中央上部にグラップル装置30を移動させた状態のままで、トング33の旋回を続行する。
【0108】
トング33の旋回を停止した後、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してブーム23の高さを下げてグラップル装置30を荷台15に積載された木材Wに向けて降下させる。
【0109】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した、把持しようとしている木材Wおよびグラップル装置30のトング33の画像を取得し、木材Wとトング33のそれぞれの位置を認識する。画像認識部52および距離判定部53により、トング33が木材Wを把持できる高さになっていると判定した場合(YES)、トング33で木材Wを把持可能であるため、ブーム23の降下を停止する(
図12の(e)へ続く)。
【0110】
画像認識部52および距離判定部53により、トング33が木材Wを把持できる高さになっていないと判定した場合(NO)、ブーム23の降下を続行する。
【0111】
図12に示すように、トング33が木材Wを把持できる高さになっている状態で、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を閉鎖させる。
【0112】
トング33を閉鎖すると、荷重判定部54は、グラップル装置30で木材Wを把持したかどうか判定する。判定はグラップル装置30の荷重に基づいて行い、グラップル装置30の荷重は、グラップル装置30に設けた荷重計測部74からの出力信号に基づいて算出する。
【0113】
荷重判定部54により、グラップル装置30で木材Wを把持していないと判定した場合(NO)、
図11の(7)で示したように、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を再度開放させて、D段階の木材Wの荷下ろし動作を再度実行する。
【0114】
荷重判定部54により、グラップル装置30で木材Wを把持していると判定した場合(YES)、さらに荷重判定部54は、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重であるかどうかを判定する。
【0115】
荷重判定部54により、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重であると判定した場合(NO)、
図11の(7)で示したように、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させて木材Wを開放し、D段階の木材Wの荷下ろし動作を再度実行する。
【0116】
荷重判定部54により、グラップル装置30で把持した木材Wによる荷重が過荷重でないと判定した場合(YES)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20の旋回、起伏および伸縮等を行い、グラップル装置30で把持した木材Wを荷下ろし位置P2の直上に移動させ、配置動作を行う。
【0117】
配置動作においては、画像認識部52は、把持している木材W、および荷下ろし位置P2の画像を取得し、木材Wと荷下ろし位置P2のそれぞれの位置を認識する。画像認識部52により、木材Wが荷下ろし位置P2または荷下ろし位置P2に先に荷下ろしされた別の木材Wの直上になっていないと判定した場合(NO)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20による木材Wの移動を続行する。画像認識部52により、木材Wが荷下ろし位置P2または荷下ろし位置P2に先に荷下ろしされた別の木材Wの直上であると判定した場合(YES)、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してクレーン20による木材Wの移動を停止する。
【0118】
クレーン20による木材Wの移動を停止した後、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してローテータ35を回転させ、グラップル装置30の上側部分31に対して、下側部分32を旋回させてトング33の向きを変更する。
【0119】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した、把持している木材Wおよび集材用車両100の荷台15の画像を取得し、把持している木材Wと荷下ろし位置P2に先に荷下ろしされた別の木材Wのそれぞれの向きを認識する。画像認識部52により、把持している木材Wと荷下ろし位置P2の既存の木材Wが平行であると判定した場合(YES)、木材Wを荷下ろし位置P2に荷下ろし可能であるため、トング33の旋回を停止する(
図13の(f)へ続く)。
【0120】
画像認識部52により、把持している木材Wと荷下ろし位置P2の既存の木材Wが平行でないと判定した場合(NO)、木材Wを荷下ろし位置P2に荷下ろしできないため、トング33の旋回を続行する。
【0121】
図13に示すように、トング33の旋回を停止した後、駆動制御部51は、クレーン駆動部28を駆動制御してブーム23の高さを下げてグラップル装置30を荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wに向けて降下させる。
【0122】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した、把持している木材W、荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wの画像を取得し、把持している木材Wと荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wのそれぞれの位置を認識する。画像認識部52および距離判定部53により、把持している木材Wが荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wに近い高さになっていると判定した場合(YES)、木材Wを荷下ろし可能であるため、ブーム23の降下を停止する。
【0123】
画像認識部52により、把持している木材Wが荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wに近い高さになっていないと判定した場合(NO)、ブーム23の降下を続行する。
【0124】
木材Wが荷下ろし位置P2に荷下ろしできる高さになっている状態で、駆動制御部51は、グラップル駆動部38を駆動制御してグラップル装置30のトング33を開放させ、把持していた木材Wを荷下ろし位置P2の地面または荷下ろし位置P2の既存の木材Wの上に荷下ろしする。
【0125】
画像認識部52は、撮像部70が撮像した、集材用車両100の荷台15の画像を取得し、画像に含まれる木材Wを認識する。画像中に木材Wが含まれると判定した場合(NO)、荷下ろし動作を再度実行する。
【0126】
画像認識部52が、画像中に木材Wが含まれないと判定して(YES)、荷台15に積載していた木材Wの荷下ろしが完了すると、駆動制御部51は、クレーン駆動部28およびグラップル駆動部38を駆動制御して、クレーン20およびグラップル装置30を格納し、A段階の木材Wの積み込み位置P1への移動動作に移行する。
【0127】
以上説明した本実施形態に係る集材用車両100によれば、駆動制御部51は、画像認識部52の認識結果に応じて車体部10、クレーン20、およびグラップル装置30の駆動を制御する。このため、積み込み位置P1や荷下ろし位置P2等において、木材Wの積み下ろし作業を自動化することができる。
【0128】
グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれる場合には、グラップル装置30によって木材Wを把持する把持動作を実行する。このため、積み込み位置P1や荷下ろし位置P2において、オペレータが操作することなく、グラップル装置30による把持動作を実行することができる。
【0129】
グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれないが、画像中に把持可能な木材Wが含まれる場合には、木材Wを把持できる位置まで集材用車両100が移動する。このため、積み込み位置P1や荷下ろし位置P2において、オペレータが操作することなく、木材Wを把持できる位置まで集材用車両100が移動し、移動した位置でグラップル装置30による把持動作を実行することができる。
【0130】
距離判定部53は、画像中に含まれる木材Wについて、グラップル装置30によって把持できる範囲に含まれているかどうかを判定する。このため、グラップル装置30によって把持できる範囲に木材Wが含まれると判定した場合に、オペレータが操作することなく、グラップル装置30によって木材Wを把持する把持動作を実行することができる。
【0131】
把持動作の後、木材Wを配置する荷台15の上や荷下ろし位置P2までグラップル装置30を移動させ、荷台15の上や荷下ろし位置P2においてグラップル装置30に木材Wを開放させる配置動作を実行する。このため、積み込み位置P1や荷下ろし位置P2において、オペレータが操作することなく、把持動作および配置動作を実行し、木材Wを積み下ろしすることができる。
【0132】
機械学習部58は、把持動作および配置動作を機械学習する。このため、グラップル装置30を用いた把持動作および配置動作の最適化を図ることができる。
【0133】
集材用車両100は、オペレータが操作することなく、積み込み位置P1および荷下ろし位置P2の間を自動走行して移動することができる。
【0134】
[実施形態2]
図14および
図15は、実施形態2の集材システム500を構成する集材用車両100Aを示す図である。
図16および
図17は、実施形態2の集材システム500を構成する集材用車両100Aおよび木材運搬用車両300を示す図である。実施形態2の集材システム500は、集材用車両100Aおよび木材運搬用車両300によって構成されている。本実施形態の集材システム500では、集材用車両100Aおよび木材運搬用車両300が、実施形態1で説明したA~D段階の動作を分担して行う(
図5参照)。
【0135】
図14に示すように、集材用車両100Aは、ベースマシンである油圧ショベルのアーム120の先端にグラップル装置30が取り付けられることで構成されている。集材用車両100Aは、例えば、クローラ112を有する下部走行体113と、下部走行体113に対してショベル本体旋回ベアリング114を介して旋回自在に支持される上部旋回フレーム115とを備えている。上部旋回フレーム115の前側には、ブーム122がブームシリンダ124によって起伏可能に連結されている。アーム120は、ブーム122の先端にアームシリンダ126によって揺動自在に連結されている。グラップル装置30は、アーム120の先端の第1支持ピン134と、リンク部材138の一端に設けた第2支持ピン136とに連結されている。リンク部材138の他端はアーム120の先端に連結されており、リンク部材138の中間部にバケットシリンダ132の先端が連結されている。
【0136】
本実施形態のアーム120およびブーム122は、本発明のアームに相当する。また、アーム(アーム120およびブーム122)はブームシリンダ124およびアームシリンダ126によって起伏が可能であり、アーム(アーム120およびブーム122)の旋回は、ショベル本体旋回ベアリング114により上部旋回フレーム115が旋回することによって行われる。
【0137】
図14から
図17では、集材システム500による、積み込み位置P1における木材Wの積み込み動作、または荷下ろし位置P2における木材Wの荷下ろし動作を示している。積み込み位置P1における木材Wの積み込み動作では、例えば
図14、
図15、
図16および
図17の順番に動作を行う。これに対して、荷下ろし位置P2における木材Wの荷下ろし動作では、例えば
図17、
図16、
図15および
図14の順番に動作を行う。
【0138】
図16および
図17に示すように、木材運搬用車両300は、グラップル装置は備えていないが、木材Wを積載する荷台315を備えている。木材運搬用車両300は、積み込み位置P1から荷下ろし位置P2まで自動走行して荷台315に積載した木材Wを搬送することができる。木材運搬用車両300は、自動走行に関しては、集材用車両100Aと同様の制御システムを備えているものとする。
【0139】
本実施形態に係る集材システム500は、積み込み位置P1では、木材運搬用車両300の荷台315に対して、集材用車両100Aが自動制御により木材Wを積載する。木材Wを積載した木材運搬用車両300は、積み込み位置P1から荷下ろし位置P2まで自動走行して木材Wを搬送する。荷下ろし位置P2では、木材運搬用車両300の荷台315から、集材用車両100Aが自動制御により木材Wを荷下ろしする。
【0140】
なお、以下の説明では、積み込み位置P1および荷下ろし位置P2にそれぞれ別の集材用車両100Aが配置され、積み込み位置P1で積み込み動作を行う集材用車両100Aと、荷下ろし位置P2で荷下ろし動作を行う集材用車両100Aは、異なる車両であるものとする。しかしながら、積み込み位置P1および荷下ろし位置P2において同じ集材用車両100Aが作業を行ってもよい。この場合、同一の集材用車両100Aが木材運搬用車両300と共に積み込み位置P1と荷下ろし位置P2の間を自動走行して、積み込み位置P1で積み込み動作を行い、荷下ろし位置P2で荷下ろし動作を行う。
【0141】
[動作]
集材システム500の自動運転を開始すると、木材運搬用車両300は、A段階の木材Wの積み込み位置P1への移動動作を行う。A段階の積み込み位置P1への移動動作では、衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76を用いて、予め記憶された走行ルートに沿って積み込み位置P1に向けて自動走行する。自動走行中は、画像認識に基づいて、周囲に人や障害物が存在するかどうかを判定しながら走行する。
【0142】
木材運搬用車両300が積み込み位置P1に到着すると、積み込み位置P1に配置されている集材用車両100Aは、木材運搬用車両300の荷台315に対して、B段階の木材Wの積み込み動作を行う。積み込み動作は、画像認識に基づいて、アーム(アーム120およびブーム122)、ショベル本体旋回ベアリング114およびグラップル装置30を駆動制御する。
【0143】
B段階の木材Wの積み込み動作が完了すると、木材運搬用車両300は、C段階の木材Wの荷下ろし位置P2への移動動作を行う。C段階の荷下ろし位置P2への移動動作では、衛星測位システム(GNSS)75および自立航法システム(慣性システム)76を用いて、予め記憶された走行ルートに沿って荷下ろし位置P2に向けて自動走行する。自動走行中は、画像認識に基づいて、周囲に人や障害物が存在するかどうかを判定しながら走行する。
【0144】
木材運搬用車両300が荷下ろし位置P2に到着すると、荷下ろし位置P2に配置されている集材用車両100A(積み込み位置P1で作業を行った集材用車両100Aとは異なる車両)が、木材運搬用車両300の荷台315に対して、D段階の木材Wの荷下ろし動作を行う。荷下ろし動作は、画像認識に基づいて、アーム(アーム120およびブーム122)、ショベル本体旋回ベアリング114およびグラップル装置30を駆動制御する。
【0145】
D段階の木材Wの荷下ろし動作が完了すると、木材運搬用車両300は、A段階の木材Wの積み込み位置P1への移動動作を行い、A~D段階に示した動作を繰り返し行う。
【0146】
以上説明した本実施形態に係る集材システム500によれば、積み込み位置P1や荷下ろし位置P2等において、木材Wの積み下ろし作業を自動で行うことができるとともに、積み込み位置P1および荷下ろし位置P2の間を自動走行して移動することができる。
【0147】
[変形例]
本発明に係る集材用車両は、上記説明した実施形態に限定されない。
【0148】
例えば、実施形態で説明した自動制御において、駆動制御部51は機械学習部58を用いて画像中の木材Wの画像認識、把持できる木材Wの判断、木材Wとトング33との交差方向、把持動作や配置動作におけるトング33の開閉動作等について機械学習を行って、動作の最適化を図るものとしたが、予め縮小サイズの模型や学習用データ画像を用いて機械学習を実行してから実物でさらに機械学習を繰り返すようにしてもよい。
【0149】
本発明におけるグラップル装置として、実施形態の説明では、把持機能を有する単体のグラップル装置30を例に挙げて説明したが、これに限定されない。グラップル装置は、例えば、ハーベスタやプロセッサに設けられていてもよい。ハーベスタは、立木の伐倒、枝払い、玉切りなどの工程を行うことができる装置であり、ハーベスタに設けられたグラップル装置によって立木や木材を把持することができる。プロセッサは、伐倒後の木の枝払い、玉切りなどの工程を行うことができる装置であり、プロセッサに設けられたグラップル装置によって伐倒後の木や木材を把持することができる。
【0150】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、グラップル装置を用いた集材用車両、および集材システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
100 集材用車両
300 木材運搬用車両
500 集材システム
10 車体部
20 クレーン(アーム)
30 グラップル装置
51 駆動制御部
52 画像認識部
70 撮像部
W 木材