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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152435
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】樹木処理システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A01G23/00 512F
A01G23/00 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055211
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 実
(72)【発明者】
【氏名】舞草 秀信
(57)【要約】
【課題】送材部で送出させた材の長さを非接触で計測することにより、送材部が空転した場合であっても、材の長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる樹木処理システムを提供する。
【解決手段】作業アーム130を有するベースマシン200と、作業アーム130に取り付けられるとともに、樹木Wを材長方向に送出する送材部30、送材部30によって送出される樹木Wの枝払いを行う枝払い部40、および、枝払いされた材Wを玉切りする切断部45を有する、樹木処理装置10と、樹木処理装置10の駆動を制御する駆動制御部61と、樹木処理装置10によって材長方向に送出される材Wの画像を撮像する撮像部80と、画像から材Wの長さを認識する画像認識部62と、を有し、駆動制御部61は、画像認識部62の認識結果に応じて材Wを任意の長さで玉切りするように樹木処理装置10の駆動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アームを有するベースマシンと、
前記作業アームに取り付けられるとともに、樹木を材長方向に送出する送材部、前記送材部によって送出される樹木の枝払いを行う枝払い部、および、枝払いされた材を玉切りする切断部を有する、樹木処理装置と、
前記樹木処理装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記樹木処理装置によって材長方向に送出される材の画像を撮像する撮像部と、
前記画像から材の長さを認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記材を任意の長さで玉切りするように前記樹木処理装置の駆動を制御する、
樹木処理システム。
【請求項2】
前記画像認識部は、前記送材部によって送出される材の切り口から、前記切断部までの長さを認識する、
請求項1に記載の樹木処理システム。
【請求項3】
前記撮像部は、前記ベースマシンの運転室前方側に取り付けられている、
請求項1または請求項2に記載の樹木処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースマシンに設けられた樹木処理装置によって造材作業を行う樹木処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハーベスタあるいはプロセッサ等と呼ばれる樹木処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。樹木処理装置は、油圧ショベル等のベースマシンに設けられた作業アームに取り付けられて造材作業に用いられる。樹木処理装置のうちプロセッサを用いた造材作業では、伐採された樹木の枝払い作業と、枝払いされた樹木(材)を任意の長さに切断して丸太を形成する切断作業が連続して行われる。ハーベスタを用いた造材作業では、立木の伐倒作業も行うことができる。
【0003】
樹木処理装置は、主に把持部、送材部、枝払い部、および切断部を有している。把持部は、造材作業の対象となる樹木を把持する。送材部は、把持した樹木に接触させたクローラ等を駆動させることで、樹木を材長方向に送出する。枝払い部は、送材部によって勢いよく送出される樹木の枝にカッタを当接させて枝払いを行う。切断部は、枝払いされた材を任意の長さで玉切りして丸太を形成する。
【0004】
樹木処理装置は、材を送出させた長さ、つまり材の長さを計測(測長)する測長機構を有している。測長機構は、例えばクローラの回転数を検知するエンコーダを有している。エンコーダによって材の長さを計測し、予め設定した長さまで材を送出したところで送材部を停止させ、切断部で材を切断することにより、所望の長さの丸太を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-157075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、送材部によって材を材長方向に送出する際に樹木(材)に大きな負荷が加わる等により、クローラが樹木(材)の表面に対して空転する場合がある。クローラが空転すると、クローラの回転数に基づいて計測された材の長さと、実際に送出された材の長さに誤差が生じる。このため、エンコーダで測長した長さに基づいて玉切りしても、丸太の長さが所望の長さにならず、丸太の長さに誤差が生じるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、送材部で送出させた材の長さを非接触で計測することにより、送材部が空転した場合であっても、材の長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる樹木処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹木処理システムは、
作業アームを有するベースマシンと、
前記作業アームに取り付けられるとともに、樹木を材長方向に送出する送材部、前記送材部によって送出される樹木の枝払いを行う枝払い部、および、枝払いされた材を玉切りする切断部を有する、樹木処理装置と、
前記樹木処理装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記樹木処理装置によって材長方向に送出される材の画像を撮像する撮像部と、
前記画像から材の長さを認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記材を任意の長さで玉切りするように前記樹木処理装置の駆動を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹木処理システムによれば、材の画像に基づいて材の長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係る樹木処理システムの側面図である。
図2図2は、樹木処理装置の正面図である。
図3図3は、樹木処理装置によって造材作業を行う状態を示す図である。
図4図4は、樹木処理装置によって造材作業を行う状態を示す図である。
図5図5は、樹木処理装置によって造材作業を行う状態を示す平面図である。
図6図6は、樹木処理システムの油圧回路の概略構成を示す図である。
図7図7は、樹木処理システムの制御システムを示すブロック図である。
図8図8は、樹木処理システムの制御システムの表示部を示す図である。
図9図9は、樹木処理システムの制御システムの表示部を示す図である。
図10図10は、樹木処理システムによる測長計測と送材部の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる樹木処理システムは、
作業アームを有するベースマシンと、
前記作業アームに取り付けられるとともに、樹木を材長方向に送出する送材部、前記送材部によって送出される樹木の枝払いを行う枝払い部、および、枝払いされた材を玉切りする切断部を有する、樹木処理装置と、
前記樹木処理装置の駆動を制御する駆動制御部と、
前記樹木処理装置によって材長方向に送出される材の画像を撮像する撮像部と、
前記画像から材の長さを認識する画像認識部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記画像認識部の認識結果に応じて前記材を任意の長さで玉切りするように前記樹木処理装置の駆動を制御する(第1の構成)。
【0012】
上記構成によれば、樹木処理システムの駆動制御部は、画像認識部の認識結果に応じて材を任意の長さで玉切りするように樹木処理装置の駆動を制御する。
このため、送材部が空転した場合であっても、材の画像に基づいて材の長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる。
【0013】
上記第1の構成において、
前記画像認識部は、前記送材部によって送出される材の切り口から、前記切断部までの長さを認識してもよい(第2の構成)。
【0014】
上記構成によれば、画像認識が比較的容易な材の切り口から切断部までの長さを認識する。
このため、材の画像に基づいて材の長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる。
【0015】
上記第1または第2の構成において、
前記撮像部は、前記ベースマシンの運転室前方側に取り付けられていてもよい(第3の構成)。
【0016】
上記構成によれば、撮像部は、ベースマシンの運転室前方側に取り付けられているため、撮像部によって撮像する範囲を広くすることができる。
このため、送材部によって送出される材を撮像しやすくすることができ、材の画像に基づいて材の長さを精度良く測長することができる。
【0017】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る樹木処理システム100を詳しく説明する。
【0018】
図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。図中、矢印Fは前方を示し、矢印Bは後方を示す。矢印Lは左方を示し、矢印Rは右方を示す。矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示す。
【0019】
以下の説明では、立木または立木を伐倒した枝付きの木(全木材)を樹木Wとし、枝払いが行われた全幹材を材Wとし、材を玉切りしたものを丸太WLとするが、これらを区別せずに樹木W、または材Wとして説明する場合がある。
【0020】
[全体構成]
まず、樹木処理システム100の全体構成について説明する。図1は、実施形態1に係る樹木処理システム100の側面図である。図1に示すように、樹木処理システム100は、ベースマシン200、樹木処理装置10、情報処理部60、および撮像部80を備えている。
【0021】
ベースマシン200は、油圧ショベルであり、下部走行体110、上部旋回体120、作業アーム130、および運転室150を備えている。なお、ベースマシンは油圧ショベルに限らない。例えばホイール式のベースマシンが用いられてもよい。
【0022】
下部走行体110は、無限軌道装置112を有している。無限軌道装置112は、駆動輪で履帯を循環させて走行するための装置である。
【0023】
上部旋回体120は、下部走行体110に対して旋回自在に支持されている。上部旋回体120は、油圧アクチュエータを備えた旋回装置114により下部走行体110に対して旋回駆動される。
【0024】
作業アーム130は、上部旋回体120から延びて屈曲動作および伸長動作を行う多関節アームであり、先端に樹木処理装置10が取り付けられている。作業アーム130は、油圧制御で動作し、樹木処理装置10の方向や位置を変更させる。作業アーム130は、ブーム131、アーム133、および先端アーム135を有している。
【0025】
ブーム131は、上部旋回体120の前側において起伏可能に支持されている。ブーム131は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ141によって起伏可能である。
【0026】
アーム133は、ブーム131の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。アーム133は、油圧アクチュエータであるアームシリンダ143によって揺動可能である。
【0027】
先端アーム135は、アーム133の先端において上下方向に揺動可能となるように連結されている。先端アーム135は、アーム133の先端の第1支持ピン136と、リンク部材138の一端に設けた第2支持ピン137とに連結されている。リンク部材138の他端はアーム133の先端に連結されている。リンク部材138には、バケットシリンダ145の先端が連結されている。
【0028】
作業アーム130(ブーム131、アーム133、および先端アーム135)は、ブームシリンダ141、アームシリンダ143、およびバケットシリンダ145によって起伏が可能である。また、作業アーム130(ブーム131、アーム133、および先端アーム135)の旋回は、旋回装置114により上部旋回体120を旋回させることによって行われる。
【0029】
運転室150は、上部旋回体120に設けられている。オペレータは、運転室150に搭乗して、運転室150内の操作機器を操作することで、下部走行体110の走行操作、上部旋回体120の旋回操作、作業アーム130の駆動操作、および樹木処理装置10の操作などを行う。
【0030】
樹木処理装置10は、ハーベスタであり、立木である樹木Wを把持して伐倒するとともに、樹木Wを材長方向に送り出しながら造材作業を行う装置である。樹木処理装置10は、樹木Wの枝を切断する枝払い機能や、樹木Wを所定長さで切断する切断機能も備えている。樹木処理装置10の構成については、後に詳細に説明する。
【0031】
情報処理部60は、駆動制御部61および画像認識部62等を有している(図7参照)。情報処理部60は、ベースマシン200の運転室150に配置されている。駆動制御部61は、樹木処理装置10の駆動を制御する。画像認識部62は、撮像部80によって撮像された画像中の木材Wを認識する。本実施形態では、画像認識により材Wの長さを計測する。情報処理部60については後に詳細に説明する。
【0032】
撮像部80は、樹木処理装置10によって材長方向に送出される材Wの画像を撮像する。撮像部80は、ベースマシン200の運転室150の上部前方側に取り付けられている。撮像部80は、深度センサであり、例えばステレオカメラを用いることができる。撮像部80は、空間の距離測定に用いることができる深度センサであればよく、ステレオカメラの他、デプスカメラや、ToF(Time of Flight)カメラなど、他の深度センサを用いることができる。
【0033】
図2は、樹木処理装置10の正面図である。図2に示すように、樹木処理装置10は、樹木処理装置本体11、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部45を有している。
【0034】
樹木処理装置本体11は、樹木処理装置10の基体をなす部分である。樹木処理装置本体11は、チルト部25のチルトアーム27、およびローテータ13を介して、ベースマシン200の先端アーム135に取り付けられている。
【0035】
把持部20は、複数のクローラ31を開閉させて、樹木Wを把持または開放する部分である。把持部20は、開閉機構21を有している。開閉機構21は、開閉用油圧シリンダ23(図6参照)によって作動し、複数のクローラ31を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0036】
チルト部25は、立木Wの伐倒を行うために樹木処理装置10の姿勢を切り換える部分である。チルト部25は、チルトアーム27を有している。チルトアーム27には、樹木処理装置本体11が起倒可能に取り付けられている。チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28(図4図6参照)によって作動し、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させ、樹木処理装置本体11の姿勢を上下方向に向けた第1姿勢P1(図3a参照)と、水平方向に向けた第2姿勢P2に切り換えることができる(図2および図3b参照)。
【0037】
送材部30は、把持した樹木Wを材長方向に送出する部分である。送材部30は、クローラ31、フレーム34、および送材用駆動モータ35を有している。クローラ31は、チェーン型クローラで形成されており、樹木Wに食い込ませるための小突起が外面に列設されている。フレーム34は、開閉機構21に取付けられている。フレーム34には、クローラ31が掛け回される一対のスプロケット(図示せず)が支持されている。送材用駆動モータ35は、油圧モータであり、スプロケットを回転駆動させることによりクローラ31を回転させる。送材用駆動モータ35は、駆動制御部61から入力される制御信号に応じて正転、逆転、および停止し、クローラ31を回転させて樹木Wを送出させる。
【0038】
樹木Wは複数のクローラ31による挟持力によって弾性的に保持されている。樹木Wの送出時に、樹木Wの径の大きさが小さくなっていく場合には、樹木Wの径の大きさに対応してクローラ31の間隔が閉じていく。また、樹木Wの径が大きくなってクローラ31を押し広げる力が作用した場合には、クローラ31が開閉機構21の油圧力に抗して外側に開くことが可能になっている。
【0039】
枝払い部40は、送材部30によって送出される樹木Wの枝払いを行う部分である。枝払い部40は、開閉体41、およびカッタ43を有している。開閉体41は、把持部20によって把持された樹木Wを抱持するように開閉する部分である。開閉体41は、開閉体用油圧シリンダ42(図6参照)によって作動する。カッタ43は、開閉体41の一方の側部に取り付けられている。カッタ43は、送材部30によって送出される樹木Wの表面に摺接して樹木Wの枝を切断する。なお、開閉体41の動作は、駆動制御部61から入力される制御信号に応じて開閉動作を行ってもよいが、把持部20に連動して動作するようにしてもよい。
【0040】
切断部45は、クローラ31で所定長さ送出された材Wを切断して玉切りする部分である。切断部45は、クローラ31に対して、枝払い部40とは反対側の端部に設けられている。切断部45は、カットソウ46を有している(図4参照)。切断部45は、駆動制御部61から入力される制御信号に応じてカットソウ46が駆動されて切断動作が実行される。
【0041】
図3は、樹木処理装置10によって造材作業を行う状態を示す図である。図3aは、樹木処理装置10によって立木Wを伐倒する状態を示している。図3bは、樹木処理装置10によって樹木Wを方向D1に向けて送材しながら枝払いを行う状態を示している。
【0042】
図3aに示すように、樹木処理装置10によって立木Wを伐倒する場合、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を上下方向に向けた第1姿勢P1とする。第1姿勢P1では、枝払い部40が上方となり、切断部45が下方となる。この第1姿勢P1のまま、把持部20を作動させてクローラ31で立木Wの根元付近を把持し、その状態で切断部45のカットソウ46を作動させて立木Wの根元を切断する。
【0043】
続いて図3bに示すように、切断した樹木Wを把持部20で把持した状態のまま、チルト部25を作動させて、樹木処理装置本体11の姿勢を水平方向に向けた第2姿勢P2に切り換える。これにより、樹木処理装置10によって立木Wを伐倒することができる。
【0044】
樹木処理装置10によって立木Wを伐倒した後、続いて送材部30を作動させてクローラ31を回転させ、樹木Wを方向D1に向けて送材する。このとき、枝払い部40のカッタ43を送材部30によって送り出される樹木Wの表面に摺接させて樹木Wの枝を切断する。
【0045】
本実施形態では、画像認識により、材Wの切り口WPから切断部45までの長さを認識することによって材Wの長さを計測(測長)する。画像認識によって材Wの長さを計測し、予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部45で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0046】
図4は、樹木処理装置10によって造材作業を行う状態を示す図である。図4では、切断部45で材Wを切断する状態を示している。切断部45は、カットソウ46、カットソウ用駆動モータ47、およびカットソウ用油圧シリンダ48を有している。
【0047】
カットソウ46は、チェーンソウであり、ソーバー461およびソーチェーン463を有している。ソーバー461は、ソーチェーン463を案内する板状部材である。ソーバー461は、支持軸465によって揺動可能に支持されている。ソーチェーン463は、ソーバー461およびスプロケット(図示せず)に掛け回されている。スプロケットには、カットソウ用駆動モータ47が連結されている。カットソウ用駆動モータ47は、油圧モータである。作動油によってカットソウ用駆動モータ47が回転することにより、ソーチェーン463が回転駆動されて切断動作が実行される。
【0048】
カットソウ用油圧シリンダ48は、カットソウ46を材Wの径方向に進退するように揺動させるアクチュエータである。作動油によってカットソウ用油圧シリンダ48が伸縮することにより、カットソウ46が材Wの径方向に進退するように揺動されて切断動作が実行される。
【0049】
図4では、切断部45で玉切りされた丸太WLが、クローラ31で把持された材Wから離脱している状態を示している。クローラ31で把持された材Wには、新たな切り口WPが形成されている。次の丸太WLを形成する場合には、送材部30で材Wを送出させながら、画像認識により新たな切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの長さを計測(測長)する。画像認識によって材Wの長さを計測し、予め設定した長さまで材Wを送出したところで送材部30を停止させ、切断部45で材Wを切断することにより、所望の長さの丸太WLを形成する。
【0050】
図5は、樹木処理装置10によって造材作業を行う状態を示す平面図である。図5では、画像認識により材Wの長さを計測して、長さLPの丸太WLを形成する造材作業を示している。撮像部80から延びる2点鎖線によって規定される範囲は、撮像部80によって撮像される領域の一例を示している。撮像部80で撮像される領域には、樹木処理装置10で把持している樹木Wを丸太WLに玉切りする範囲が含まれるようにする。
【0051】
図5aに示すように、送材部30で材Wを送出させながら、画像認識により切り口WPから切断部45までの長さを認識する。材Wには、先に切断部45で切断された切り口WPが形成されている。画像認識によって計測した材Wの長さが予め設定した長さLPに到達したところで、送材部30を停止させる。
【0052】
図5aに示した状態において、切断部45で材Wを切断することにより、図5bに示すように、所望の長さの丸太WLを形成することができる。新たに形成された切り口WPの位置は、切断部45のカットソウ46の位置に一致している。続いて同じ樹木Wから丸太WLを形成する場合には、新たに形成された切り口WPを基準にして、同様の画像認識によって材長LPの計測と玉切りを行うことにより、連続的に丸太WLを形成することができる。
【0053】
図6は、樹木処理システム100の油圧回路50の概略構成を示す図である。図6に示すように、油圧回路50では、作動油タンク51および油圧ポンプ部52から供給される作動油によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部45の駆動が行われるように構成されている。本実施形態では、図示しない操作レバー等を操作することや、駆動制御部61からの制御信号によって、ローテータ13、把持部20、チルト部25、送材部30、枝払い部40、および切断部45の駆動制御を行うことが可能になっている。
【0054】
ローテータ13は、ローテータ用駆動モータ14を有している。作動油によってローテータ用駆動モータ14が正転、逆転、および停止することにより、樹木処理装置10の方向を制御することができる。
【0055】
把持部20は、開閉機構21を作動させる開閉用油圧シリンダ23を有している。作動油によって開閉用油圧シリンダ23が伸縮することにより、複数のクローラ31を開閉させて、樹木Wを把持または開放する。
【0056】
チルト部25は、チルト用油圧シリンダ28を有している。作動油によってチルト用油圧シリンダ28が伸縮することにより、チルトアーム27に対して樹木処理装置本体11を起倒させ、樹木処理装置本体11の姿勢を第1姿勢P1(図3a参照)と第2姿勢P2に切り換えることができる(図2および図3b参照)。
【0057】
送材部30は、一対の送材用駆動モータ35を有している。作動油によって送材用駆動モータ35が同期して回転することにより、クローラ31が回転して樹木Wが送出される。また、材Wを所定長さ送出させた位置において材Wを切断部45で玉切りできるように、送材用駆動モータ35を駆動、減速、および停止させる駆動制御が行われる。
【0058】
枝払い部40は、開閉体41を開閉させる開閉体用油圧シリンダ42を有している。作動油によって開閉体用油圧シリンダ42が伸縮することにより、開閉体41を開閉させて、把持部20によって把持された樹木Wを抱持する。
【0059】
切断部45は、カットソウ用駆動モータ47およびカットソウ用油圧シリンダ48を有している。作動油によってカットソウ用駆動モータ47が回転することにより、カットソウ46が駆動されて切断動作が実行される。また、作動油によってカットソウ用油圧シリンダ48が伸縮することにより、カットソウ46が材Wの径方向に進退するように揺動されて切断動作が実行される。
【0060】
図7は、樹木処理システム100の制御システムを示すブロック図である。図7では、材Wの長さを画像認識によって計測し、それに基づいて送材部30を制御する構成についてのみ示しており、その他の樹木処理装置10の制御に関する構成については省略している。
【0061】
図7に示すように、情報処理部60は、予め記録されたプログラムによって情報処理を行い、樹木処理システム100の各部との間で情報通信をする装置である。情報処理部60の構成は限定されず、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)やメモリ、外部記憶装置、情報通信手段等を備えた公知のコンピュータ装置を用いることができる。
【0062】
情報処理部60は、駆動制御部61、画像認識部62、材長判定部63を有している。また、情報処理部60には、撮像部80および操作部90からの出力信号が入力されるように構成されている。
【0063】
駆動制御部61は、情報処理部60の一部として構成された部分である。駆動制御部61は、画像認識部62、材長判定部63の出力に基づいて、樹木処理装置10の送材部30および切断部45の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部61は、画像認識部62の認識結果に応じて材Wを任意の長さで玉切りするように、送材部30および切断部45の駆動を制御する。
【0064】
画像認識部62は、撮像部80が撮像した画像を取得し、画像から材Wの長さを認識する。本実施形態では、画像認識部62は、送材部30によって送出される材Wの切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの長さを認識(計測)する(図5参照)。
【0065】
材長判定部63は、画像認識部62によって認識された材Wの長さについて、予め設定された材Wの長さに到達したかどうかを判定する。
【0066】
操作部90は、造材作業によって形成される丸太WLについて任意の長さを設定したり、任意の長さの位置で送材を停止できるように送材部30を正転、減速、停止、または逆転させる位置を設定するなど、樹木処理装置10による処理内容を設定する部分である。操作部90は、表示部91および入力部93を有している。
【0067】
表示部91は、樹木処理装置10による処理内容を表示する部分であり、LED(Light Emitting Diode)を用いたインジケータや、液晶表示装置等のハードウェアを用いることができる。表示部91は、入力部93による指示情報や、樹木処理装置10による処理の結果について表示する。
【0068】
入力部93は、オペレータが樹木処理装置10による処理内容について指示を入力する部分であり、物理的なスイッチを操作することでの入力や、表示部91をタッチパネルで構成して所定の画像領域への接触による入力を用いることができる。入力部93で入力された指示は、指示情報として情報処理部60に伝達される。
【0069】
図8および図9は、樹木処理システム100の制御システムの表示部91を示す図である。図8および図9に示すように、タッチパネル式の表示部91に仮想的なスイッチ画像を表示して、部分的に入力部93としての機能をもたせている。ベースマシン200の運転室150に搭乗したオペレータは、表示部91に表示された処理内容を随時確認して樹木Wの造材作業を行い、必要に応じて入力部93から指示情報の入力を行う。
【0070】
図8は、表示部91に運転画面(通常画面)が表示された状態を示している。この運転画面では、材Wの玉切りを行う測長設定値が「205cm」であることを示している。
【0071】
図9は、表示部91に減速設定画面(設定メニュー)が表示された状態を示している。本実施形態では、自動測長時において、測長設定値(図8の「205cm」)の手前で送材部30の送材速度を通常速度から微速に切り替えるように設定されており、減速のパターンとして、2つの減速パターン(減速1および減速2)が設定されている。
【0072】
図9では、減速1は、自動測長時に測長設定値(図8の「205cm」)の手前「50cm」で送材部30の送材速度を通常速度から微速に切り替えるように設定されている。そして、測長設定値の手前「1cm」で停止、つまり測長値が「205cmより-1cm(204cm)」となった時点で送材部30の正転出力がOFFになり、測長設定値に到達して測長が完了するように設定されている。
【0073】
また、材Wがオーバーランして測長設定値(図8の「205cm」)を超えた場合を考慮して、測長設定値の「+2cm」で戻しON、つまり測長値が「205cmより+2cm(207cm)」となった時点で送材部30の逆転出力がONになって正転から逆転に切り替わるように設定され、逆転によって測長設定値の「+1cm」で戻しOFF、つまり測長値が「205cmより+1cm(206cm)」まで戻った時点で送材部30の逆転出力をOFFにすることで測長設定値に到達し、測長が完了するように設定されている。
【0074】
また、減速2は、自動測長時に測長設定値(図8の「205cm」)の手前「5cm」で送材部30の送材速度を通常速度から微速に切り替えるように設定されている。そして、測長設定値の手前「1cm」で停止、つまり測長値が「205cmより-1cm(204cm)」となった時点で送材部30の正転出力がOFFになるが、慣性により測長設定値で停止しきれずオーバーランしてしまい、測長設定値の「+2cm」で戻しON、つまり測長値が「205cmより+2cm(207cm)」となった時点で送材部30の逆転出力がONになって正転から逆転に切り替わるように設定され、逆転によって測長設定値の「+1cm」で戻しOFF、つまり測長値が「205cmより+1cm(206cm)」まで戻った時点で送材部30の逆転出力をOFFにすることで測長設定値に到達し、測長が完了するように設定されている。
【0075】
なお、減速設定画面(設定メニュー)に表示された各数値は変更可能であり、タッチパネルである表示部91の各欄の入力部93に変更後の数値を入力することができる。
【0076】
図10は、樹木処理システム100による測長計測と送材部30の制御を示すフローチャートである。図10に示すように、測長計測を開始すると、まず減速値と目標値(測長設定値)を設定する。設定は、図9に示したように、表示部91に減速設定画面(設定メニュー)を表示させた状態で行う。以下では、減速値と目標値(測長設定値)は、図8および図9に示された値に設定されたものとして説明する。
【0077】
オペレータは、減速値と目標値(測長設定値)を設定した後、切断部45のソーバー461の位置(カットソウ46の位置)に材Wの切り口WPが位置していることを確認し、送材操作を行って送材部30による材Wの送出を開始する。
【0078】
材Wの送出が開始されると、画像認識部62は、送材部30によって送出される材Wの切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの距離の計測を開始する。
【0079】
材長判定部63は、画像認識部62によって認識された材Wの切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの距離について、距離を判定し、予め設定された材Wの長さに到達したかどうかを判定する。具体的には、目標値(測長設定値)と測長値の差が減速値であるかどうかを判定する。減速値は、図9に示したように、減速1では、測長設定値(図8の「205cm」)の手前「50cm」であり、減速2では、測長設定値(図8の「205cm」)の手前「5cm」である。減速値に到達している場合(YES)は、送材部30の送材速度を通常速度から微速に切り替える。減速値に到達していない場合(NO)は、送材部30の送材速度を通常速度としたまま、送材を続行する。
【0080】
送材部30の送材速度を微速にした状態においても、画像認識部62は、送材部30によって送出される材Wの切り口WPから切断部45(カットソウ46)までの距離の計測を続行する。
【0081】
そして、送材部30の送材速度を微速にした状態において、材長判定部63は、画像認識部62によって認識された材Wの長さについて、距離を判定し、予め設定された材Wの長さに到達したかどうかを判定する。具体的には、目標値(測長設定値)と測長値の差が範囲内であるかどうかを判定する。この「範囲内」とは、図9に示した設定値においては、目標値(測長設定値)に対して「±1cm」である。これは、目標値(測長設定値)に対して「±1cm」の範囲で送材部30を停止させるように設定されているためである。目標値(測長設定値)と測長値の差が範囲内に到達している場合(YES)は、送材部30による送材を停止する。目標値(測長設定値)と測長値の差が範囲内に到達していない場合(NO)は、送材部30の送材速度を微速としたまま、送材を続行する。
【0082】
目標値(測長設定値)と測長値の差が範囲内に到達して、送材部30による送材を停止した状態で、切断部45による切断動作を実行して、測長計測を終了する。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る樹木処理システム100によれば、駆動制御部61は、画像認識部62の認識結果に応じて材Wを任意の長さで玉切りするように樹木処理装置10の駆動を制御する。このため、送材部30のクローラ31が空転した場合であっても、材Wの画像に基づいて材Wの長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる。
【0084】
画像認識部62は、画像認識が比較的容易な材Wの切り口WPから切断部45までの長さを認識する。このため、材Wの画像に基づいて材Wの長さを精度良く測長することができ、精度の高い造材作業を行うことができる。
【0085】
撮像部80は、ベースマシン200の運転室150前方側に取り付けられているため、撮像部80によって撮像する範囲を広くすることができる。このため、送材部30によって送出される材Wを撮像しやすくすることができ、材Wの画像に基づいて材Wの長さを精度良く測長することができる。
【0086】
[変形例]
本発明に係る樹木処理システムは、上記説明した実施形態に限定されない。
【0087】
本実施形態では、撮像部80の取り付け位置は、ベースマシン200の運転室150の前方側としたが、この位置に限定されない。例えば撮像部80を作業アーム130や樹木処理装置10に配置してもよい。
【0088】
本実施形態では、画像認識により、材Wの切り口WPから切断部45までの長さを認識することによって材Wの長さを計測することとしたが、他の2点間の距離を認識することで材Wの長さを計測してもよい。
【0089】
また、本発明に係る画像認識による非接触式の測長と、従来のエンコーダ等を用いた接触式の測長を併用し、両方式で補完しながら材Wの長さを計測するようにしてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、樹木処理装置を用いた樹木処理システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
100 樹木処理システム
200 ベースマシン
130 作業アーム
10 樹木処理装置
30 送材部
40 枝払い部
45 切断部
61 駆動制御部
62 画像認識部
80 撮像部
W 樹木、材
図1
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図10