(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152440
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】被覆部材及びステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20221004BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B62D1/06
H05B3/20 347
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055216
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】植松 展隆
【テーマコード(参考)】
3D030
3K034
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA35
3D030DA64
3D030DA69
3D030DB02
3D030DB81
3K034AA12
3K034BB13
3K034HA07
3K034JA09
(57)【要約】
【課題】機能部品の有効範囲をより広く確保し易くすることが可能な被覆部材を提供する。
【解決手段】本発明の被覆部材(20)は、表皮材(30)と、表皮材(30)の内面側に配される保持体(40)と、保持体(40)に保持される電気回線部(50)とを有し、表皮材(30)、保持体(40)及び電気回線部(50)は、長手方向に沿って配される一対の側端縁(31,41,51)をそれぞれ有し、保持体(40)の各側端縁(41)は、長手方向に直交する断面視において、表皮材(30)の挿通孔(21a)よりも表皮材(30)の幅方向の外側に配され、電気回線部(50)の各側端縁(51)は、長手方向に直交する断面視において、表皮材(30)の挿通孔(21a)よりも表皮材(30)の幅方向の内側に配されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールにおける環状のリム部に巻き付けられるとともに縫製が施される被覆部材であって、
前記リム部の周方向に沿って配されるシート状の表皮材と、前記表皮材の内面側に配される保持体と、前記保持体に保持される電気回線部とを有し、
前記表皮材は、前記表皮材の長手方向に沿って配される一対の側端縁と、前記表皮材の各側端縁の内側に長手方向に沿って設けられる複数の挿通孔とを有し、
前記保持体及び前記電気回線部は、前記長手方向に沿って配される一対の側端縁をそれぞれ有し、
前記保持体の各側端縁は、前記長手方向に直交する断面視において、前記表皮材の前記挿通孔よりも前記表皮材の幅方向の外側に配され、
前記電気回線部の各側端縁は、前記長手方向に直交する断面視において、前記表皮材の前記挿通孔よりも前記表皮材の幅方向の内側に配される
ことを特徴とする被覆部材。
【請求項2】
前記電気回線部は、通電により発熱する発熱回路、又は、前記リム部が把持されたことを検出するセンサー回路を備える請求項1記載の被覆部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の被覆部材が前記リム部に固定されていることを特徴とするステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両におけるステアリングホイールに巻き付けられる被覆部材、及び、その被覆部材が固定されているステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるステアリングホイール(ハンドルとも称する)では、環状のリム部に対し、一般的にリム部の周方向に沿って被覆部材が巻き付けられて固定されている。このような被覆部材は、主に、リム部の周方向に沿うように長細い形状を有する。
【0003】
被覆部材は、例えば、リム部のリム本体部に巻き付けてリム本体部を被覆するとともに、被覆部材の長手方向に沿った一対の側端縁を突き合せるようにしてリム本体部に固定される。この被覆部材をリム本体部に固定する際には、側端縁同士を突き合せた被覆部材の側縁部(被覆部材の側端縁に近い内側の部分)に、リム部の周方向に沿って縫製が行われることがある。このように被覆部材がリム部に取り付けられることにより、ステアリングホイールを把持したときの肌触りや握り易さが向上し、また、滑り止めの効果や操作感覚の向上等も得られることがある。
【0004】
ステアリングホイールの中には、例えばステアリングホイールを把持した運転者の手を温めるためのヒーター機能(ヒーターユニット)や、運転者がステアリングホイールを把持したことを検知するためのセンサー機能(センサーユニット)等の機能部品を備えるものが知られている(例えば、特開2019-137096号公報(特許文献1)を参照)。
【0005】
従来のステアリングホイールにおいて、上述のような機能部品が設けられる場合、例えば電線等により発熱部などを形成する電気回線部が保持体(マット部とも呼ばれることもある)に設けられて保持される。また、その電気回線部を保持する保持体は、ステアリングホイールのリム部を被覆する皮革等の表皮材(被覆部材の一部)の裏面に貼り付けられて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のステアリングホイールにおいて、被覆部材にヒーター機能等の機能部品を備えさせる場合、被覆部材は、通常、上述のような電気回線部(発熱部など)が固定された保持体を、表皮材の裏面に設けることによって形成される。また、その被覆部材は、ステアリングホイールのリム部に巻き付けられながら縫製加工が行われることによってリム部(リム本体部)に固定される。この場合、縫製加工では、被覆部材(具体的には、表皮材)の長手方向に沿った一対の側端縁が互いに突き合わされた状態で、被覆部材の一対の側縁部同士を周方向に沿って縫着することによって、被覆部材がリム本体部に固定される。また、この縫製加工では、縫い針が表皮材を刺通することによって、表皮材の一対の側縁部に複数の縫製孔(挿通孔)が形成される。このような複数の縫製孔は、表皮材の両方の側縁部に、表皮材の長手方向に沿って設けられる。
【0008】
しかし、このように表皮材の各側縁部に複数の縫製孔が長手方向に沿って設けられる場合、例えばリム部の周方向に直交する断面を見たときに、所要の機能を発揮させるために設ける電気回線部の設置範囲(機能部品の有効範囲)が、縫製孔の形成位置によって制限されてしまい、機能部品の無効範囲(電気回線部が設置されない非設置範囲)が広く形成され易かった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、機能部品の有効範囲をより広く確保し易くすることが可能な被覆部材、及び、その被覆部材が固定されているステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明により提供される被覆部材は、ステアリングホイールにおける環状のリム部に巻き付けられるとともに縫製が施される被覆部材であって、前記リム部の周方向に沿って配されるシート状の表皮材と、前記表皮材の内面側に配される保持体と、前記保持体に保持される電気回線部とを有し、前記表皮材は、前記表皮材の長手方向に沿って配される一対の側端縁と、前記表皮材の各側端縁の内側に長手方向に沿って設けられる複数の挿通孔とを有し、前記保持体及び前記電気回線部は、前記長手方向に沿って配される一対の側端縁をそれぞれ有し、前記保持体の各側端縁は、前記長手方向に直交する断面視において、前記表皮材の前記挿通孔よりも前記表皮材の幅方向の外側に配され、前記電気回線部の各側端縁は、前記長手方向に直交する断面視において、前記表皮材の前記挿通孔よりも前記表皮材の幅方向の内側に配されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る被覆部材において、前記電気回線部は、通電により発熱する発熱回路、又は、前記リム部が把持されたことを検出するセンサー回路を備えることが好ましい。
【0012】
また本発明によれば、上述した構成を備える被覆部材が前記リム部に固定されているステアリングホイールが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被覆部材及びステアリングホイールによれば、機能部品の有効範囲をより広く確保し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係るステアリングホイールを示す正面図である。
【
図2】
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】被覆部材のリム部に巻き付けられる前の平らな状態の構造を模式的に示す断面図である。
【
図4】従来のステアリングホイールにおけるリム部の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】従来のリム部に巻き付けられる前の被覆部材の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えばステアリングホイールは、環状のリム部を備えていれば、ステアリングホイールの形状、寸法、及びデザイン等については、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0016】
図1は、本実施例に係るステアリングホイールを示す正面図である。
図2は、
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。
図3は、被覆部材のリム部に巻き付けられる前の平らな状態の構造を模式的に示す断面図である。
【0017】
なお
図3では、被覆部材を形成する各部材(表皮材、保持体、及び電気回線部)を判り易くするために、それぞれの部材の厚さを実際の製品よりも厚くして示している。また
図3では、被覆部材をステアリングホイールのリム本体部に固定するために行う縫製加工において、被覆部材に縫い針の刺通によって形成される挿通孔が仮想線で示されている。また、例えばリム本体部に縫製加工によって固定された被覆部材を、リム本体部から取り外して平らに延ばした場合、その被覆部材には、
図3に仮想線で示されている挿通孔が長手方向に沿って複数設けられている。
【0018】
以下の説明において、ステアリングホイールの周方向に沿った方向を被覆部材の長手方向又は前後方向と言う。また、被覆部材がリム部に固定された状態において、リム部の周方向に直交するとともにリム部の外周面に沿った方向を被覆部材の幅方向又は左右方向と言う。
【0019】
更に、被覆部材がリム部に固定される前の平らに拡げられた状態において、被覆部材の長手方向に直交するとともに被覆部材の外面又は内面に沿った方向を、被覆部材の幅方向又は左右方向と言う。また、被覆部材の長手方向に直交するとともに被覆部材の外面又は内面に直交する方向を、被覆部材の厚さ方向又は上下方向と言う。更に、ステアリングホイールの正面視(
図1)において、環状のリム部に対し、リム部の中心部(又は後述するステアリングパッド)に近付く向きを内周方向とし、リム部の中心部から離れる方向を外周方向とする。
【0020】
本実施例のステアリングホイール1は、ステアリング本体2と、ステアリング本体2の運転者に対向する乗員対向面側に配され、エアバッグモジュールが内蔵されているステアリングパッド(パッド体)3と、ステアリング本体2の乗員対向表面とは反対となる裏面側を被覆する図示しないロアカバーとを有する。ステアリング本体2は、運転者が把持する環状のリム部(グリップ部)10と、リム部10の中央部に配されてステアリングパッド3を支持する図示しないボス部と、リム部10及びボス部間を連結する3つのスポーク部4とを有する。本実施例の場合、リム部10は、ステアリングホイール1を正面から見たときに(
図1を参照)、円環状を呈する形状を有する。なお本発明において、リム部の形状は環状に限定されず、例えばリム部は、一部分が円弧状となる形状や、環状以外の形状に形成されていてもよい。
【0021】
ステアリング本体2のリム部10は、
図2に示すように、リム本体部11と、リム本体部11に巻き付けられてリム本体部11を被覆する被覆部材20とを有する。本実施例において、被覆部材20は、リム部10の全周に亘って配されている。なお本発明において、リム部における被覆部材の設置範囲は特に限定されず、被覆部材は、リム部の周方向における少なくとも一部の領域でリム本体部を被覆するように固定されていればよい。
【0022】
リム本体部11は、具体的な図示を省略するが、芯材(骨格)となる金属製の芯金部(リム芯金部)と、芯金部を包み込む樹脂被覆部とにより形成されている。樹脂被覆部は、例えば発泡ポリウレタン樹脂等で形成される。リム本体部11におけるリム部10の周方向に直交する断面は、円形又は略円形を呈する。なお本発明において、リム本体部の形状及び材質等は特に限定されず、リム部は、例えばリム本体部の前記周方向に直交する断面が、楕円形等のような円形以外の形状を呈するように形成されていてもよい。
【0023】
被覆部材20は、細長いシート状の形態を有するとともに、可撓性と適度な伸縮性とを備える。また、被覆部材20は、リム本体部11を被覆する部分だけでなく、スポーク部4の一部を被覆する部分を有していてもよい。
【0024】
本実施例の被覆部材20は、リム本体部11に取り付ける前の平面状に拡げた状態において、被覆部材20の長手方向に沿って配される左右一対の側端縁と、被覆部材20における長手方向の一端部及び他端部に配される図示しない前端部及び後端部とを有する。この被覆部材20は、被覆部材20における長手方向の寸法が、リム本体部11の内周側における周方向の寸法に対応して形成されており、また、被覆部材20における幅方向の寸法が、リム本体部11の周方向に直交する断面における周(円周)の長さに対応して形成されている。
【0025】
本実施例において、被覆部材20は、被覆部材20の左右の側端縁をリム部10の内周側に配置した状態でリム本体部11に固定される。このため、被覆部材20は、リム本体部11に固定されたときに、リム本体部11の外周側の表面に対向する中央部と、リム本体部11の内周側の表面に対向する左右の側縁部とを有する。ここで、被覆部材20の側縁部とは、被覆部材20の側端縁と、その側端縁の近傍部分を含む領域(範囲)を言う(後述する表皮材30、保持体40、及び電気回線部50においても同義)。
【0026】
本実施例の被覆部材20は、
図3に示すように、被覆部材20の外面を形成する表皮材30と、表皮材30の内面に固定される保持体40と、保持体40に保持される電気回線部50とを有する。被覆部材20を形成する表皮材30、保持体40、及び電気回線部50は、被覆部材20の長手方向に沿って配される左右一対の側端縁31,41,51をそれぞれ有する。ここで、表皮材30の左右の側端縁31を第1側端縁31とし、保持体40の左右の側端縁41を第2側端縁41とし、電気回線部50の左右の側端縁51を第3側端縁51とする。
【0027】
表皮材30は、例えば皮革又は合成樹脂により形成されており、また、細長いシート状の形状を有する。表皮材30は、適度な柔軟性と伸縮性とを備える。この表皮材30における長手方向の寸法及び幅方向の寸法は、被覆部材20における長手方向の寸法及び幅方向の寸法にそれぞれ対応する。この場合、表皮材30における幅方向の寸法は、少なくとも保持体40及び電気回線部50の幅方向の寸法よりも大きい。
【0028】
保持体40は、発泡ウレタン又は発泡ポリエチレンなどの発泡樹脂により形成されており、また、細長いシート状の形状を有する。保持体40が発泡樹脂で形成されていることにより、後述するように被覆部材20をステアリングホイール1のリム本体部11に固定するために行う縫製加工において、保持体40に縫い針を刺通させ易くすることができ、縫製加工を円滑に行うことができる。この保持体40は、表皮材30よりも柔らかく形成されていることが好ましい。
【0029】
保持体40は、被覆部材20がリム本体部11に巻き付けられたときに、表皮材30とリム本体部11の間に配置される。保持体40は、被覆部材20に行う縫製加工によって表皮材30の左右の側縁部が縫い合わされるときに、保持体40の左右の側縁部も、表皮材30の側縁部とともに縫い合わせられる。なお、保持体40は、縫製加工が行われる前に、保持体40の少なくとも一部が接着等によって表皮材30に固定されていてもよい。
【0030】
本実施例の電気回線部50は、電流を流すことにより発熱するヒーター機能を備えた機能部品であり、保持体40の内面(保持体40の表皮材30に対向する外面とは反対側の面)に固定されている。この電気回線部50は、電流を流す回線となる電線(ヒーター線)が、例えば所定の面積(領域)を占めるように波状に蛇行して平面状に配置されることによって形成されている。また、電気回線部50は、電力を供給する図示しない電極に接続されている。なお本発明において、電気回線部50を形成する電線の配置は特に限定されない。
【0031】
本実施例の被覆部材20では、リム部10に巻き付けられる前の状態(
図3)において、電気回線部50が保持体40の内面に固定されて保持されており、且つ、その保持体40が表皮材30の内面に配置されている。この場合、保持体40は、表皮材30の内面に接着等によって固定されていてもよい。
【0032】
表皮材30の左右の側縁部には、被覆部材20をリム本体部11に固定する縫製加工において、縫い針の刺通によって形成される複数の挿通孔(縫製孔)21aが設けられる(
図3を参照)。また、挿通孔21aは、表皮材30の左右の側縁部において、それぞれ表皮材30の長手方向に沿って、一定の間隔(又は略一定の間隔)で設けられる。この場合、挿通孔21aは、表皮材30の左右の各第1側端縁31よりも表皮材30の幅方向の内側寄りの位置に設けられている。挿通孔21aが表皮材30の第1側端縁31から離れた位置に設けられていることにより、表皮材30の側縁部の強度を適切に確保できる。なお本発明においいて、表皮材30の左右側縁部にそれぞれ設けられる挿通孔21aは、長手方向に沿って1列状に配されていれば、一定の間隔(又は略一定の間隔)で配されていなくてもよい。
【0033】
本実施例の保持体40は、
図3において、保持体40の左右の第2側端縁41が、表皮材30に設けられる左右の挿通孔(縫製孔)21aの位置よりも被覆部材20の幅方向の外側に配されるように形成されている。これにより、保持体40を、表皮材30に対して幅方向の広い範囲に設けることができる。その結果、保持体40に保持される電気回線部50を幅方向の広い範囲に設けることが可能となる。
【0034】
また、保持体40の第2側端縁41が挿通孔21aの位置よりも幅方向の外側に配されることにより、被覆部材20の幅方向に関して、表皮材30の左右の第1側端縁31の位置と保持体40の左右の第2側端縁41の位置とを近付けることができる。このため、被覆部材20をリム本体部11に巻き付けて固定したときに、被覆部材20の外面(表皮材30の外面)に、表皮材30の内面と保持体40の内面との間の段差に起因する凹凸形状を発生させ難くすることができる。更に、保持体40における第2側端縁41の形状(角形状)が表皮材30の外面に露出すると凹凸形状を発生させるが、本実施例では、保持体40の第2側端縁41が、表皮材30の挿通孔21aの位置よりも幅方向の外側に位置することにより、その第2側端縁41の形状を表皮材30の外面に露出させ難くすることができる。これにより、被覆部材20の外面に凹凸形状をより発生させ難くすることができる。このため、本実施例では、ステアリングホイール1の外観品質を向上させることができる。更に、凹凸形状に起因してステアリングホイール1の感触(触り心地)が悪くなることも抑制できる。
【0035】
本実施例の保持体40では、保持体40の左右の第2側端縁41が、表皮材30の左右の第1側端縁31の位置よりも被覆部材20の幅方向の内側に配されている。これにより、保持体40を表皮材30の内面側に安定して隠すことができる。また、リム本体部11に対し、被覆部材20を表皮材30の左右の第1側端縁31が互いに突き合わされた状態で安定して固定できる。
【0036】
この場合、表皮材30の第1側端縁31の位置と保持体40の第2側端縁41の位置との間の幅方向における間隔C1は、1mm以上3mm以下であることが好ましい。第1側端縁31と第2側端縁41間の幅寸法が3mm以下であることにより、電気回線部50を幅方向に広く設け易くすることができ、また、ステアリングホイール1の外観品質を向上させ易くすることができる。第1側端縁31と第2側端縁41間の幅寸法が1mm以上であることにより、保持体40を表皮材30の内面側に隠し易くすることができる。
【0037】
保持体40の左右の側縁部には、上述した縫製加工において、挿通孔(縫製孔)21bが設けられる。保持体40に設けられる左右の挿通孔21bは、表皮材30に設けられる左右の挿通孔21aに連通している。この場合、表皮材30に設けられる複数の挿通孔21aの位置と、保持体40に設けられる複数の挿通孔21bの位置とは互いに対応している(一致している)。また、表皮材30の挿通孔21aと保持体40の挿通孔21bとには、被覆部材20をステアリングホイール1のリム本体部11に固定する図示しない縫製糸が挿通される。
【0038】
本実施例の電気回線部50は、
図3において、電気回線部50の左右の第3側端縁51が、表皮材30及び保持体40に設けられる左右の挿通孔21a,21bの位置よりも、被覆部材20の幅方向の内側に配されるように形成されている。これにより、被覆部材20をリム本体部11に固定する縫製加工時に縫い針が電気回線部50を刺通して損傷させることを防止し、電気回線部50の機能(ヒーター機能)を安定して発揮させることができる。
【0039】
この場合、表皮材30及び保持体40の挿通孔21a,21bと電気回線部50の第3側端縁51の位置の間の幅方向における間隔C2は、1mm以下であることが好ましい。それにより、電気回線部50をより広く幅方向に設けることができる。
【0040】
次に、本実施例の被覆部材20をステアリングホイール1のリム本体部11に固定する方法について説明する。
【0041】
被覆部材20をリム本体部11に固定する場合、先ず、被覆部材20の幅方向における中央部をリム本体部11の外周部に接触させるようにして被覆部材20をリム本体部11の周方向に沿わせるとともに、被覆部材20の左右側縁部をリム本体部11の内周部側に寄せて、被覆部材20の左右の側端縁(表皮材30の左右の側端縁)をリム本体部11の内周部側で突き合せられる(又は部分的に重ね合わせる)。
【0042】
続いて、被覆部材20の左右側端縁が突き合された状態で、被覆部材20の左右の側縁部に縫製加工を行う。これによって、表皮材30及び保持体40の左右の側縁部に挿通孔21a,21bが形成されるとともに、その挿通孔21a,21bに挿通される縫製糸によって、被覆部材20の左右の側縁部を、表皮材30の左右の側端縁が突き合わされた状態で固定することができる。なお本実施例では、この縫製加工を行う際に、被覆部材20の一部をリム本体部11に接着剤等で固定してもよい。
以上の作業を行うことにより、被覆部材20をリム部10の周方向に沿ってリム本体部11に固定することができる。
【0043】
このようにして被覆部材20がリム本体部11に固定されたステアリングホイール1では、例えば
図2に示すように、リム部10の外周面において、被覆部材20のヒーター機能を発揮する電気回線部50の設置範囲(後述する機能部品の有効範囲25)を広く確保し易くなり、それによって、電気回線部50が設置されない機能部品の無効範囲26を狭めることができる。
【0044】
ここで、本実施例のリム部10に設けられる電気回線部50(機能部品)の有効範囲25と無効範囲26の大きさについて、従来の一般的なステアリングホイールのリム部と比較することによって、より具体的に説明する。
【0045】
例えば
図4及び
図5に従来のリム部70及び被覆部材80を示すように、従来のリム部70には、リム本体部71に被覆部材80が巻き付けられて固定されている。従来の被覆部材80は、表皮材90と、表皮材90の内面に固定される保持体100と、保持体100に保持される電気回線部110とを有する。
【0046】
この場合、従来の保持体100においては、被覆部材80をリム本体部71に固定する縫製加工において、縫い針が被覆部材80を刺通し易くするとともに、縫い針によって保持体100が傷付けられないようにするために、保持体100の左右の側端縁101が、縫い針によって表皮材90に形成される挿通孔81の位置よりも幅方向の内側に配されていた。
【0047】
また、その保持体100に保持される電気回線部110は、保持体100及び電気回線部110の汎用性や加工精度等が考慮されて、電気回線部110の左右の側端縁111が、保持体100の左右の側端縁101の位置に対して3mm~10mmほど幅方向の内側に配されるように形成されていた。このため、従来の被覆部材80の場合、表皮材90の一方の側端縁91の位置と電気回線部110の一方の側端縁111の位置との間には、幅方向に最大15mm程の間隔(クリアランス)が形成されることもあった。このような間隔は、被覆部材80において、電気回線部110が設置されない機能部品の無効範囲86(例えば、ヒーター機能が発揮できない範囲)となる。
【0048】
従って、被覆部材80がリム本体部71に固定されて形成される従来のリム部70の場合、リム部70の周方向に直交する断面を見たときに(
図4を参照)、リム部70の外周面において、機能部品の無効範囲86が大きく形成されてしまい、機能部品の有効範囲85の領域が狭く制限されていた。例えば従来の被覆部材80の場合、機能部品の無効範囲86がリム部70の外周面の30%程度を占めることもあった。その結果、リム部70の全体を温めることが難しくなり、また、リム部70の外周面に温度差を生じさせることもあった。
【0049】
更に、従来の被覆部材80の場合、表皮材90の左右の側端縁91の位置と保持体100の左右の側端縁101の位置とが幅方向に広く離れている。その上、保持体100の左右の側端縁101が、表皮材90の縫製部の位置(挿通孔81の位置)に隣り合って配置されており、保持体100における側端縁101の角形状が、縫製部の幅方向内側直近に位置している(
図5を参照)。この場合、被覆部材80をリム本体部71に巻き付けて縫製によって固定したときに、縫製糸によって表皮材90と保持体100の側端縁101とが挿通孔81の位置で押さえ付けられるため、被覆部材80の外面(表皮材90の外面)に、表皮材90の内面と保持体100の内面との間の段差や、保持体100の側端縁形状が写されて凹凸形状(段部)が形成され易くなり、ステアリングホイールの外観品質及び感触(触り心地)を低下させることもあった。
【0050】
これに対し、本実施例の被覆部材20によれば、
図2に示したように、従来の被覆部材80(
図4)に比べて、電気回線部50の設置範囲である機能部品の有効範囲25を広く確保するとともに、機能部品の無効範囲26を狭めることができる。それにより、ステアリングホイール1のリム部10において、電気回線部50のヒーター機能によって温めることができない領域を減少させ、リム部10を効果的に温めることができる。また、リム部10の外周面に温度差を発生させ難くすることができる。
【0051】
また、本実施例の被覆部材20では、表皮材30と保持体40が縫製加工によって同時に縫われて固定される。このため、表皮材30に対して保持体40及び電気回線部50の位置がずれることも効果的に防止できる。更に、本実施例の被覆部材20によれば、上述したように、表皮材30の左右の第1側端縁31の位置と保持体40の左右の第2側端縁41の位置とが近付けられることによって被覆部材20の外面に、表皮材30の内面と保持体40の内面との間の段差に起因する凹凸形状を発生させ難くすることができる。また、保持体40の第2側端縁41が、縫製部の位置(挿通孔21a,21bの位置)よりも幅方向の外側に位置するため、縫製糸によって保持体40の第2側端縁41が押さえ付けられなくなる。これにより、第2側端縁41の形状を表皮材30の外面に露出させ難くして凹凸形状の発生をより効果的に抑制できる。その結果、ステアリングホイール1の外観品質及び感触(触り心地)が低下することも抑制できる。
【0052】
なお、上述した実施例において、ヒーター機能を発揮する電気回線部50は、電流を流す電線(ヒーター線)が平面状に配置されることによって形成されているが、本発明において、ヒーター機能を発揮する電気回線部の構成は特に限定されない。ヒーター機能の電気回線部は、上述した電線の代わりに、例えば導電布又は金属膜によって形成されていてもよい。また、本発明の被覆部材に設けられる電気回線部は、上述のようなヒーター機能を備えた機能部品に限定されず、例えば運転者がステアリングホイールを把持したことを検知するためのセンサー機能を備えた機能部品(センサー回路等)、又はそれ以外の機能を発揮する機能部品として形成されていてもよい。