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特開2022-15245エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法
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  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図1
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図2
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図3
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図4
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図5
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図6
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図7
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図8
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図9
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図10
  • 特開-エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015245
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】エレベータの巻上機ブレーキの揚重装置、揚重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B66B7/00 G
B66B7/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117955
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305DA07
3F305DA13
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】エレベータの巻上機ブレーキを安全に吊り上げて交換することのできるエレベータの巻上機ブレーキの重装置及びエレベータの巻上機ブレーキの交換方法を提供する。
【解決手段】巻上機ブレーキを重するための重装置は、機械室床面よりも高いエレベータの巻上機の基台上に固定された板材と、板材の上に設置された第一支柱と、機械室床面に設置され、第一支柱よりも長い第二支柱と、第一支柱の頭頂部と第二支柱の頭頂部とを掛け渡すように固定されたレールと、レールの上を移動可能に設置されたトロリと、トロリに設置されたホイストと、を備える。第一支柱及び第二支柱のうちの少なくとも一方は、レールが水平に近づくように支柱高さを調整可能に構成される。また、第一支柱及び第二支柱は、レールが巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、その位置が決められる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室に設置されたエレベータの巻上機に搭載された巻上機ブレーキを楊重するための楊重装置であって、
前記機械室の機械室床面よりも高いエレベータの巻上機の基台上に固定された板材と、
前記板材の上に設置された第一支柱と、
前記機械室床面に設置され、前記第一支柱よりも長い第二支柱と、
前記第一支柱の頭頂部と前記第二支柱の頭頂部とを掛け渡すように固定されたレールと、
前記レールの上を移動可能に設置されたトロリと、
前記トロリに設置されたホイストと、を備え、
前記第一支柱及び前記第二支柱のうちの少なくとも一方は、前記レールが水平に近づくように支柱高さを調整可能に構成され、
前記レールが前記巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置が決められるエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置。
【請求項2】
前記レールは、取り外した前記巻上機ブレーキを前記ホイストによって吊り上げた状態で前記第二支柱の側に移動させて前記機械室床面に降ろすための作業スペースが確保される長さに設定されている請求項1に記載のエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置。
【請求項3】
前記第一支柱及び前記第二支柱は、下端部に固定された基底部を含み、
前記第一支柱及び前記第二支柱の前記頭頂部は、前記基底部に対してそれぞれ回転自在に構成されている請求項1又は請求項2に記載のエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置。
【請求項4】
機械室に設置されたエレベータの巻上機ブレーキを楊重するための楊重装置の設置方法であって、
機械室床面よりも高い位置であるエレベータの巻上機の基台上に板材を固定する第一ステップと、
前記板材の上に第一支柱を設置し、前記第一支柱よりも長い第二支柱を前記機械室床面に設置し、前記第一支柱の頭頂部と前記第二支柱の頭頂部とを水平に掛け渡すようにレールを固定する第二ステップと、
トロリを前記レールに移動可能に設置し、ホイストを前記トロリに設置する第三ステップと、を備え、
前記第二ステップは、
前記レールが前記巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置を決定する
ように構成される楊重装置の設置方法。
【請求項5】
前記第一支柱及び前記第二支柱のうちの少なくとも一方は、支柱高さを調整可能に構成され、
前記第二ステップは、
前記レールが水平に近づくように前記第一支柱又は前記第二支柱の支柱高さを調整する
ように構成される請求項4に記載の楊重装置の設置方法。
【請求項6】
前記機械室の機械室床面には、前記巻上機から取り外した旧巻上機ブレーキを降ろすとともに前記巻上機に新たに取り付ける新巻上機ブレーキを吊り上げるための作業スペースが設けられ、
前記第二ステップは、
前記レールが前記作業スペースの直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置を決定する
ように構成される請求項4又は請求項5に記載の楊重装置の設置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の設置方法によって設置された楊重装置を用いて前記エレベータの巻上機ブレーキを交換する交換方法であって、
前記巻上機に取り付けられている前記旧巻上機ブレーキの搭載位置の直上に前記ホイストを移動させ、
前記ホイストによって前記旧巻上機ブレーキを吊るしながら前記旧巻上機ブレーキを取り外し、
前記トロリによって前記旧巻上機ブレーキを作業スペースの直上に移動させ、
前記旧巻上機ブレーキを前記作業スペースに降ろす
ように構成される巻上機ブレーキの交換方法。
【請求項8】
前記作業スペースに置かれている前記新巻上機ブレーキの直上に前記ホイストを移動させ、
前記ホイストによって、前記新巻上機ブレーキを吊り上げて前記巻上機における前記新巻上機ブレーキの取り付け位置の直上に移動させ、
前記新巻上機ブレーキを前記巻上機に取り付ける
ように構成される請求項7に記載の巻上機ブレーキの交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの巻上機ブレーキの楊重装置、楊重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、重量物の楊重装置に関する技術が開示されている。この技術では、レールが一対の支柱の上部に水平になるように固定される。レールにはトロリが設けられ、トロリにはチェーンブロックが設けられている。チェーンブロックによって吊り上げられた重量物は、レールに沿って水平方向に運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-210109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの巻上機は、大型の巻上機ブレーキを備えている。巻上機ブレーキは、定期的に交換される。ここで、上述した特許文献1の楊重装置を利用して巻上機ブレーキの交換作業を行うことを考える。巻上機が設置されている機械室は、交換作業に利用可能な空間に制約がある。このような制限空間では、特許文献1のような大型の楊重装置を最適位置に設置できないおそれがある。巻上機ブレーキの取り付け位置から横方向にずれた位置に楊重装置を設置した場合、取り外した巻上機ブレーキが振り子のように振られてしまい危険を伴うおそれがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エレベータの巻上機ブレーキを安全に吊り上げて交換することのできるエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置、楊重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置は、機械室に設置されたエレベータの巻上機に搭載された巻上機ブレーキを楊重するための楊重装置であって、機械室の機械室床面よりも高いエレベータの巻上機の基台上に固定された板材と、板材の上に設置された第一支柱と、機械室床面に設置され、第一支柱よりも長い第二支柱と、第一支柱の頭頂部と第二支柱の頭頂部とを掛け渡すように固定されたレールと、レールの上を移動可能に設置されたトロリと、トロリに設置されたホイストと、を備え、第一支柱及び第二支柱のうちの少なくとも一方は、レールが水平に近づくように支柱高さを調整可能に構成され、レールが巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、第一支柱及び第二支柱の位置が決められるものである。
【0007】
また、本開示の楊重装置の設置方法は、機械室に設置されたエレベータの巻上機ブレーキを楊重するための楊重装置の設置方法であって、機械室床面よりも高い位置であるエレベータの巻上機の基台上に板材を固定する第一ステップと、板材の上に第一支柱を設置し、第一支柱よりも長い第二支柱を機械室床面に設置し、第一支柱の頭頂部と第二支柱の頭頂部とを水平に掛け渡すようにレールを固定する第二ステップと、トロリをレールに移動可能に設置し、ホイストをトロリに設置する第三ステップと、を備え、第二ステップは、レールが巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、第一支柱及び第二支柱の位置を決定するように構成されるものである。
【0008】
さらに、本開示の巻上機ブレーキの交換方法は、本開示の楊重装置の設置方法によって設置された楊重装置を用いてエレベータの巻上機ブレーキを交換する交換方法であって、巻上機に取り付けられている旧巻上機ブレーキの搭載位置の直上にホイストを移動させ、ホイストによって旧巻上機ブレーキを吊るしながら旧巻上機ブレーキを取り外し、トロリによって旧巻上機ブレーキを作業スペースの直上に移動させ、旧巻上機ブレーキを作業スペースに降ろすように構成されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示のエレベータの巻上機ブレーキの楊重装置によれば、機械室床面より高い位置である基台上に支柱を設置することができる。これにより、巻上機ブレーキの搭載位置の直上にレールを通すことができるので、限られたスペースにおいて、巻上機ブレーキを安全に吊り上げて交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エレベータの巻上機ブレーキの概要を説明するための図である。
図2】比較例としての巻上機ブレーキの楊重装置の構成を説明するための図である。
図3】比較例としての巻上機ブレーキの楊重装置の配置を説明するための図である。
図4】比較例の楊重装置の課題を説明するための図である。
図5】実施の形態の楊重装置の構成を説明するための図である。
図6】実施の形態の楊重装置の構成を説明するための図である。
図7】実施の形態の巻上機ブレーキの楊重装置の配置を説明するための図である。
図8】巻上機ブレーキの交換手順のうち楊重装置設置工程を説明するための図である。
図9】巻上機ブレーキの交換手順のうち楊重装置設置工程を説明するための図である。
図10】巻上機ブレーキの交換手順のうち楊重装置設置工程を説明するための図である。
図11】巻上機ブレーキ取外し工程において、巻上機ブレーキを作業スペースに降ろした様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
1.エレベータの巻上機ブレーキの概要
図1は、エレベータの巻上機ブレーキの概要を説明するための図である。この図に示す巻上機10は、エレベータ用の大型巻上機である。巻上機10は、機械室2に設置される。より詳しくは、機械室2には、巻上機10を設置するための基台4が設置されている。基台4は、例えば機械室2の床面に平行に設置された一対のH鋼により構成される。巻上機10は、基台4の上、つまり機械室床面よりも高い位置に固定される。
【0013】
巻上機10は、大型の巻上機ブレーキを備える。この図の巻上機10には、2つの巻上機ブレーキ12,14が搭載されている。巻上機ブレーキ12,14は、定期的に交換される。但し、このような大型の巻上機ブレーキの交換作業は容易ではない。一般的に機械室2は狭く、交換作業のための十分なスペースを確保できないからである。このため、巻上機ブレーキの交換作業には、限られた作業スペースを有効に利用するための工夫が求められる。
【0014】
巻上機ブレーキの交換作業は、楊重装置を用いて行われる。楊重装置は、巻上機ブレーキを吊して移動させるためのものである。以下、巻上機ブレーキ12,14のうち、巻上機ブレーキ12を交換する作業を例として、本実施の形態の楊重装置の構成について説明する。
【0015】
2.巻上機ブレーキの楊重装置
2-1.比較例の楊重装置
本実施の形態の楊重装置の説明に先立って、比較例の楊重装置の構成について説明する。図2は、比較例としての巻上機ブレーキの楊重装置の構成を説明するための図である。図3は、比較例としての巻上機ブレーキの楊重装置の配置を説明するための図である。比較例の楊重装置50は、2本の支柱52と、レール54と、トロリ56と、ホイスト58と、を備えている。2本の支柱52は、レール54を高所で水平に支持するためのものである。レール54は、例えばH鋼で構成される。レール54の両端部は、支柱52の頭頂部にそれぞれ固定される。レール54にはトロリ56が取り付けられる。トロリ56は、レール54の上を移動可能に構成されている。トロリ56にはホイスト58が取り付けられる。ホイスト58は、チェーンブロックが例示される。
【0016】
図2及び図3に示すように、機械室2には、巻上機10の正面側に2つの調速機6,8が設置されている。このため、比較例の楊重装置50では、2本の支柱52の基底部を機械室床面に設置可能な配置として、機械室2の機械室壁に沿った配置が採用されている。
【0017】
このような比較例の楊重装置50の配置において、巻上機ブレーキ12を交換する場合、以下のような課題が生じる。図4は、比較例の楊重装置の課題を説明するための図である。比較例の楊重装置50では、交換対象である巻上機ブレーキ12の直上に楊重装置50のレール54が位置していない。このため、巻上機ブレーキ12のアイボルトにホイスト58を連結して吊り上げる場合、巻上機ブレーキ12の取り付けボルトを外した際に当該巻上機ブレーキ12が楊重装置50の側に大きく振られてしまい危険を伴うおそれがある。このように、比較例の楊重装置50では、2本の支柱52の基底部を機械室床面に確実に接地させる必要があるため、設置場所に対する制約が大きい。また、比較例の楊重装置50は、取り外した巻上機ブレーキ12が振られることを考慮した安全設計が必要となる。このことは、例えば装置の大型化を招くこととなる。
【0018】
2-2.本実施の形態の楊重装置
図5及び図6は、本実施の形態の楊重装置の構成を説明するための図である。図7は、本実施の形態の巻上機ブレーキの楊重装置の配置を説明するための図である。本実施の形態の楊重装置20は、第一支柱22と、第二支柱24と、レール26と、トロリ28と、ホイスト30と、板材40とを備えている。第一支柱22は、第二支柱24よりも支柱高さが低い。第一支柱22及び第二支柱24は、支柱高さを調整可能に構成された支柱部222,242と、支柱部222,242の下端部に固定された基底部224,244と、をそれぞれ含む。支柱部222,242の構成は、例えばパイプサポートが例示される。
【0019】
レール26は、例えばH鋼で構成される。レール26の両端部は、第一支柱22及び第二支柱24の頭頂部に固定される。第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さを調整することによって、レール26は水平に固定される。
【0020】
レール26にはトロリ28が取り付けられる。トロリ28にはホイスト30が取り付けられる。ホイスト30は、チェーンブロックが例示される。
【0021】
巻上機10と機械室2の機械室壁との間には、向かい合った基台4を掛け渡すように板材40が配置されている。第一支柱22は板材40の上に設置される。この際、第一支柱22は、設置安定性を考慮して、基底部224の長手方向がレール26の延在方向に対して垂直となるように設置されることが望ましい。また、板材40は、上記のように第一支柱22を配置した場合に、基底部224が板上の範囲に収まる幅を有していることが望ましい。一方、第二支柱24は、交換対象の巻上機ブレーキ12の搭載位置の直上をレール26が通るように、巻上機10の正面の機械室床面に設置される。この際、巻上機ブレーキ12を吊り上げ可能な高さにおいてレール26が水平になるように第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さが調整される。
【0022】
また、巻上機10の正面の機械室床面は、取り外した旧巻上機ブレーキ及び取り付け予定の新巻上機ブレーキを仮置きするための作業スペースA1として利用できることが好ましい。そこで、本実施の形態の楊重装置20では、作業スペースA1を跨いで第二支柱24が設置されるように、レール26の長さが設定されている。以下の説明では、取り外した巻上機ブレーキ12を「旧巻上機ブレーキ121」とも表記し、取り付け予定の巻上機ブレーキ12を「新巻上機ブレーキ122」とも表記する。
【0023】
以上のように構成された楊重装置20によれば、以下のような作用及び効果を奏する。
【0024】
楊重装置20は、交換対象の旧巻上機ブレーキ121の直上をレール26が通るように設置される。これにより、取り外した旧巻上機ブレーキ121が横方向に振られることを防ぐことができるので、交換作業の安全性を高めることができる。これにより、装置の小型化を図ることができる。
【0025】
板材40を基台4の上に設置することにより、第一支柱22の設置自由度を高めることができる。これにより、様々な巻上機10の種類、機械室2の間取り、機器の配置に対しても、交換対象の巻上機ブレーキ12の直上をレール26が通るように、楊重装置20を設置することができる。
【0026】
第二支柱24は、作業スペースA1を跨いだ位置に設置される。このような構成によれば、取り外した旧巻上機ブレーキ121を作業スペースA1に降ろす作業及び、新たな新巻上機ブレーキ122を吊り上げる作業を効率よく行うことができる。
【0027】
第一支柱22の支柱高さは、第二支柱24の支柱高さよりも低い。このような構成によれば、機械室床面よりも高い位置に設置された板材40の上に第一支柱22を設置したとしても、レール26を水平に近づけることが可能となる。また、第一支柱22及び第二支柱24は支柱高さを調整可能に構成されている。これにより、基台4の高さが異なる設備環境であっても、レール26を水平に近づけることが可能となる。
【0028】
3.巻上機ブレーキの交換手順
次に、楊重装置20を用いて巻上機10の巻上機ブレーキ12を交換する作業の手順について説明する。なお、ここでは巻上機ブレーキ12の交換手順について説明するが、巻上機ブレーキ14の交換についても同様の手順で行うことができる。
【0029】
巻上機ブレーキ12を交換する作業では、楊重装置設置工程、巻上機ブレーキ取外し工程、及び巻上機ブレーキ取り付け工程が順に行われる。
【0030】
楊重装置設置工程は、機械室2において楊重装置20を設置する工程である。図8から図10は、巻上機ブレーキの交換手順のうち楊重装置設置工程を説明するための図である。楊重装置設置工程では、先ず、第一ステップでは、機械室壁と巻上機との間の空間において、板材40を一対の基台4に渡し掛けるように配置し、クランプで固定する。次の第二ステップでは、第一支柱22、第二支柱24及びレール26を準備する。板材40の上に第一支柱22を仮配置し、第二支柱24を機械室床面に仮配置する。第一支柱22及び第二支柱24の頭頂部にレール26を固定する。レール26が水平に近づくように、第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さを調整する。この際、トロリ28及びホイスト30の吊り代を確保するため、取り付けられている巻上機ブレーキ12の最上部よりも予め定められた高さ、例えば800mm以上高くなる位置に設定する。
【0031】
第二ステップでは、更に、取り付けられている旧巻上機ブレーキ121の直上にレール26が位置するように第一支柱22及び第二支柱24の位置を調整する。また、この際、トロリ28の可動範囲であるレール26の直下に作業スペースA1を確保できるように第一支柱22及び第二支柱24の位置を調整する。ここでの作業スペースA1は、交換予定の新巻上機ブレーキ122と、取り外した旧巻上機ブレーキ121との両方を一度におくことのできるスペースである。作業スペースA1には、交換予定の新巻上機ブレーキ122を配置しておく。
【0032】
次の第三ステップでは、レール26にトロリ28を取り付ける。次にトロリ28にホイスト30を取り付ける。
【0033】
巻上機ブレーキ取外し工程は、楊重装置20を用いて旧巻上機ブレーキ121の取外し作業を行う工程である。巻上機ブレーキ取外し工程では、先ず、ホイスト30を旧巻上機ブレーキ121の直上に移動させる。旧巻上機ブレーキ121に取り付けた2本のアイボルトとホイスト30をベルト等で連結してテンションが掛かる程度に吊り上げる。次に、旧巻上機ブレーキ121に接続されているケーブル類とブレーキ取り付けボルトを取り外し、旧巻上機ブレーキ121を巻上機10から取り外す。この際、ホイスト30が巻上機ブレーキ12の直上に位置しているため、旧巻上機ブレーキ121を巻上機10から取り外した際に旧巻上機ブレーキ121が振られることが防止される。
【0034】
吊り上げた旧巻上機ブレーキ121は、トロリ28によって作業スペースA1の直上までレール26に沿って移動させて降ろす。図11は、巻上機ブレーキ取外し工程において、巻上機ブレーキ12を作業スペースA1に降ろした様子を示している。このように、旧巻上機ブレーキ121の直下が作業スペースA1となるため、旧巻上機ブレーキ121を牽引しながら降ろす必要はない。
【0035】
新たな新巻上機ブレーキ122の取り付ける巻上機ブレーキ取り付け工程では、取外し工程の逆の作業手順が行われる。典型的には、先ず、作業スペースA1に置かれている新巻上機ブレーキ122の直上にホイスト30を移動させる。ホイスト30によって、新巻上機ブレーキ122を吊り上げて巻上機10における新巻上機ブレーキ122の取り付け位置の直上まで移動させる。そして、新巻上機ブレーキ122を巻上機10にブレーキ取り付けボルトで取り付けるとともに、ケーブル類を接続する。
【0036】
以上のような楊重装置20の設置方法及び巻上機ブレーキの交換方法によれば、大型の巻上機ブレーキを安全に脱着して交換することが可能となる。
【0037】
4.巻上機ブレーキの楊重装置の変形例
実施の形態の楊重装置20は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0038】
第一支柱22は、基底部224に対して支柱部222の頭頂部が柱の中心軸を中心とした回転方向に回転可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、第一支柱22は、基底部224を動かすことなく支柱部222の頭頂部、すなわち頭頂部に固定されたレール26の向きを回転させることができる。これにより、例えば第一支柱22の設置スペース制限があり基底部224を理想の向きに配置できない場合であっても、レール26を所望の方向に向けて配置することが可能となる。このことは、第二支柱24についても同様であり、第二支柱24は、基底部244に対して支柱部242の頭頂部が柱の中心軸を中心とした回転方向に回転自在に構成されていてもよい。これにより、基底部244を動かすことなく支柱部222の頭頂部、すなわち頭頂部に固定されたレール26の向きを回転させることができる。
【0039】
支柱高さを調整する構成は、第一支柱22及び第二支柱24のうちの少なくとも一方が備えていればよい。
【符号の説明】
【0040】
2 機械室、 4 基台、 6,8 調速機、 10 巻上機、 12,14 巻上機ブレーキ、 20 楊重装置、 22 第一支柱、 24 第二支柱、 26 レール、 28 トロリ、 30 ホイスト、 40 板材、 50 楊重装置、 52 支柱、 54 レール、 56 トロリ、 58 ホイスト、 121 旧巻上機ブレーキ、 122 新巻上機ブレーキ、 222,242 支柱部、 224,244 基底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室に設置されたエレベータの巻上機に搭載された巻上機ブレーキを重するための重装置であって、
前記機械室の機械室床面よりも高いエレベータの巻上機の基台上に固定された板材と、
前記板材の上に設置された第一支柱と、
前記機械室床面に設置され、前記第一支柱よりも長い第二支柱と、
前記第一支柱の頭頂部と前記第二支柱の頭頂部とを掛け渡すように固定されたレールと、
前記レールの上を移動可能に設置されたトロリと、
前記トロリに設置されたホイストと、を備え、
前記第一支柱及び前記第二支柱のうちの少なくとも一方は、前記レールが水平に近づくように支柱高さを調整可能に構成され、
前記レールが前記巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置が決められるエレベータの巻上機ブレーキの重装置。
【請求項2】
前記レールは、取り外した前記巻上機ブレーキを前記ホイストによって吊り上げた状態で前記第二支柱の側に移動させて前記機械室床面に降ろすための作業スペースが確保される長さに設定されている請求項1に記載のエレベータの巻上機ブレーキの重装置。
【請求項3】
前記第一支柱及び前記第二支柱は、下端部に固定された基底部を含み、
前記第一支柱及び前記第二支柱の前記頭頂部は、前記基底部に対してそれぞれ回転自在に構成されている請求項1又は請求項2に記載のエレベータの巻上機ブレーキの重装置。
【請求項4】
機械室に設置されたエレベータの巻上機ブレーキを重するための重装置の設置方法であって、
機械室床面よりも高い位置であるエレベータの巻上機の基台上に板材を固定する第一ステップと、
前記板材の上に第一支柱を設置し、前記第一支柱よりも長い第二支柱を前記機械室床面に設置し、前記第一支柱の頭頂部と前記第二支柱の頭頂部とを水平に掛け渡すようにレールを固定する第二ステップと、
トロリを前記レールに移動可能に設置し、ホイストを前記トロリに設置する第三ステップと、を備え、
前記第二ステップは、
前記レールが前記巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置を決定する
ように構成される重装置の設置方法。
【請求項5】
前記第一支柱及び前記第二支柱のうちの少なくとも一方は、支柱高さを調整可能に構成され、
前記第二ステップは、
前記レールが水平に近づくように前記第一支柱又は前記第二支柱の支柱高さを調整する
ように構成される請求項4に記載の重装置の設置方法。
【請求項6】
前記機械室の機械室床面には、前記巻上機から取り外した旧巻上機ブレーキを降ろすとともに前記巻上機に新たに取り付ける新巻上機ブレーキを吊り上げるための作業スペースが設けられ、
前記第二ステップは、
前記レールが前記作業スペースの直上を通るように、前記第一支柱及び前記第二支柱の位置を決定する
ように構成される請求項4又は請求項5に記載の重装置の設置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の設置方法によって設置された重装置を用いて前記エレベータの巻上機ブレーキを交換する交換方法であって、
前記巻上機に取り付けられている前記旧巻上機ブレーキの搭載位置の直上に前記ホイストを移動させ、
前記ホイストによって前記旧巻上機ブレーキを吊るしながら前記旧巻上機ブレーキを取り外し、
前記トロリによって前記旧巻上機ブレーキを作業スペースの直上に移動させ、
前記旧巻上機ブレーキを前記作業スペースに降ろす
ように構成される巻上機ブレーキの交換方法。
【請求項8】
前記作業スペースに置かれている前記新巻上機ブレーキの直上に前記ホイストを移動させ、
前記ホイストによって、前記新巻上機ブレーキを吊り上げて前記巻上機における前記新巻上機ブレーキの取り付け位置の直上に移動させ、
前記新巻上機ブレーキを前記巻上機に取り付ける
ように構成される請求項7に記載の巻上機ブレーキの交換方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの巻上機ブレーキの重装置、重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、重量物の重装置に関する技術が開示されている。この技術では、レールが一対の支柱の上部に水平になるように固定される。レールにはトロリが設けられ、トロリにはチェーンブロックが設けられている。チェーンブロックによって吊り上げられた重量物は、レールに沿って水平方向に運搬される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-210109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベータの巻上機は、大型の巻上機ブレーキを備えている。巻上機ブレーキは、定期的に交換される。ここで、上述した特許文献1の重装置を利用して巻上機ブレーキの交換作業を行うことを考える。巻上機が設置されている機械室は、交換作業に利用可能な空間に制約がある。このような制限空間では、特許文献1のような大型の重装置を最適位置に設置できないおそれがある。巻上機ブレーキの取り付け位置から横方向にずれた位置に重装置を設置した場合、取り外した巻上機ブレーキが振り子のように振られてしまい危険を伴うおそれがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エレベータの巻上機ブレーキを安全に吊り上げて交換することのできるエレベータの巻上機ブレーキの重装置、重装置の設置方法、及び巻上機ブレーキの交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエレベータの巻上機ブレーキの重装置は、機械室に設置されたエレベータの巻上機に搭載された巻上機ブレーキを重するための重装置であって、機械室の機械室床面よりも高いエレベータの巻上機の基台上に固定された板材と、板材の上に設置された第一支柱と、機械室床面に設置され、第一支柱よりも長い第二支柱と、第一支柱の頭頂部と第二支柱の頭頂部とを掛け渡すように固定されたレールと、レールの上を移動可能に設置されたトロリと、トロリに設置されたホイストと、を備え、第一支柱及び第二支柱のうちの少なくとも一方は、レールが水平に近づくように支柱高さを調整可能に構成され、レールが巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、第一支柱及び第二支柱の位置が決められるものである。
【0007】
また、本開示の重装置の設置方法は、機械室に設置されたエレベータの巻上機ブレーキを重するための重装置の設置方法であって、機械室床面よりも高い位置であるエレベータの巻上機の基台上に板材を固定する第一ステップと、板材の上に第一支柱を設置し、第一支柱よりも長い第二支柱を機械室床面に設置し、第一支柱の頭頂部と第二支柱の頭頂部とを水平に掛け渡すようにレールを固定する第二ステップと、トロリをレールに移動可能に設置し、ホイストをトロリに設置する第三ステップと、を備え、第二ステップは、レールが巻上機ブレーキの搭載位置の直上を通るように、第一支柱及び第二支柱の位置を決定するように構成されるものである。
【0008】
さらに、本開示の巻上機ブレーキの交換方法は、本開示の重装置の設置方法によって設置された重装置を用いてエレベータの巻上機ブレーキを交換する交換方法であって、巻上機に取り付けられている旧巻上機ブレーキの搭載位置の直上にホイストを移動させ、ホイストによって旧巻上機ブレーキを吊るしながら旧巻上機ブレーキを取り外し、トロリによって旧巻上機ブレーキを作業スペースの直上に移動させ、旧巻上機ブレーキを作業スペースに降ろすように構成されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示のエレベータの巻上機ブレーキの重装置によれば、機械室床面より高い位置である基台上に支柱を設置することができる。これにより、巻上機ブレーキの搭載位置の直上にレールを通すことができるので、限られたスペースにおいて、巻上機ブレーキを安全に吊り上げて交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エレベータの巻上機ブレーキの概要を説明するための図である。
図2】比較例としての巻上機ブレーキの重装置の構成を説明するための図である。
図3】比較例としての巻上機ブレーキの重装置の配置を説明するための図である。
図4】比較例の重装置の課題を説明するための図である。
図5】実施の形態の重装置の構成を説明するための図である。
図6】実施の形態の重装置の構成を説明するための図である。
図7】実施の形態の巻上機ブレーキの重装置の配置を説明するための図である。
図8】巻上機ブレーキの交換手順のうち重装置設置工程を説明するための図である。
図9】巻上機ブレーキの交換手順のうち重装置設置工程を説明するための図である。
図10】巻上機ブレーキの交換手順のうち重装置設置工程を説明するための図である。
図11】巻上機ブレーキ取外し工程において、巻上機ブレーキを作業スペースに降ろした様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
1.エレベータの巻上機ブレーキの概要
図1は、エレベータの巻上機ブレーキの概要を説明するための図である。この図に示す巻上機10は、エレベータ用の大型巻上機である。巻上機10は、機械室2に設置される。より詳しくは、機械室2には、巻上機10を設置するための基台4が設置されている。基台4は、例えば機械室2の床面に平行に設置された一対のH鋼により構成される。巻上機10は、基台4の上、つまり機械室床面よりも高い位置に固定される。
【0013】
巻上機10は、大型の巻上機ブレーキを備える。この図の巻上機10には、2つの巻上機ブレーキ12,14が搭載されている。巻上機ブレーキ12,14は、定期的に交換される。但し、このような大型の巻上機ブレーキの交換作業は容易ではない。一般的に機械室2は狭く、交換作業のための十分なスペースを確保できないからである。このため、巻上機ブレーキの交換作業には、限られた作業スペースを有効に利用するための工夫が求められる。
【0014】
巻上機ブレーキの交換作業は、重装置を用いて行われる。重装置は、巻上機ブレーキを吊して移動させるためのものである。以下、巻上機ブレーキ12,14のうち、巻上機ブレーキ12を交換する作業を例として、本実施の形態の重装置の構成について説明する。
【0015】
2.巻上機ブレーキの重装置
2-1.比較例の重装置
本実施の形態の重装置の説明に先立って、比較例の重装置の構成について説明する。図2は、比較例としての巻上機ブレーキの重装置の構成を説明するための図である。図3は、比較例としての巻上機ブレーキの重装置の配置を説明するための図である。比較例の重装置50は、2本の支柱52と、レール54と、トロリ56と、ホイスト58と、を備えている。2本の支柱52は、レール54を高所で水平に支持するためのものである。レール54は、例えばH鋼で構成される。レール54の両端部は、支柱52の頭頂部にそれぞれ固定される。レール54にはトロリ56が取り付けられる。トロリ56は、レール54の上を移動可能に構成されている。トロリ56にはホイスト58が取り付けられる。ホイスト58は、チェーンブロックが例示される。
【0016】
図2及び図3に示すように、機械室2には、巻上機10の正面側に2つの調速機6,8が設置されている。このため、比較例の重装置50では、2本の支柱52の基底部を機械室床面に設置可能な配置として、機械室2の機械室壁に沿った配置が採用されている。
【0017】
このような比較例の重装置50の配置において、巻上機ブレーキ12を交換する場合、以下のような課題が生じる。図4は、比較例の重装置の課題を説明するための図である。比較例の重装置50では、交換対象である巻上機ブレーキ12の直上に重装置50のレール54が位置していない。このため、巻上機ブレーキ12のアイボルトにホイスト58を連結して吊り上げる場合、巻上機ブレーキ12の取り付けボルトを外した際に当該巻上機ブレーキ12が重装置50の側に大きく振られてしまい危険を伴うおそれがある。このように、比較例の重装置50では、2本の支柱52の基底部を機械室床面に確実に接地させる必要があるため、設置場所に対する制約が大きい。また、比較例の重装置50は、取り外した巻上機ブレーキ12が振られることを考慮した安全設計が必要となる。このことは、例えば装置の大型化を招くこととなる。
【0018】
2-2.本実施の形態の重装置
図5及び図6は、本実施の形態の重装置の構成を説明するための図である。図7は、本実施の形態の巻上機ブレーキの重装置の配置を説明するための図である。本実施の形態の重装置20は、第一支柱22と、第二支柱24と、レール26と、トロリ28と、ホイスト30と、板材40とを備えている。第一支柱22は、第二支柱24よりも支柱高さが低い。第一支柱22及び第二支柱24は、支柱高さを調整可能に構成された支柱部222,242と、支柱部222,242の下端部に固定された基底部224,244と、をそれぞれ含む。支柱部222,242の構成は、例えばパイプサポートが例示される。
【0019】
レール26は、例えばH鋼で構成される。レール26の両端部は、第一支柱22及び第二支柱24の頭頂部に固定される。第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さを調整することによって、レール26は水平に固定される。
【0020】
レール26にはトロリ28が取り付けられる。トロリ28にはホイスト30が取り付けられる。ホイスト30は、チェーンブロックが例示される。
【0021】
巻上機10と機械室2の機械室壁との間には、向かい合った基台4を掛け渡すように板材40が配置されている。第一支柱22は板材40の上に設置される。この際、第一支柱22は、設置安定性を考慮して、基底部224の長手方向がレール26の延在方向に対して垂直となるように設置されることが望ましい。また、板材40は、上記のように第一支柱22を配置した場合に、基底部224が板上の範囲に収まる幅を有していることが望ましい。一方、第二支柱24は、交換対象の巻上機ブレーキ12の搭載位置の直上をレール26が通るように、巻上機10の正面の機械室床面に設置される。この際、巻上機ブレーキ12を吊り上げ可能な高さにおいてレール26が水平になるように第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さが調整される。
【0022】
また、巻上機10の正面の機械室床面は、取り外した旧巻上機ブレーキ及び取り付け予定の新巻上機ブレーキを仮置きするための作業スペースA1として利用できることが好ましい。そこで、本実施の形態の重装置20では、作業スペースA1を跨いで第二支柱24が設置されるように、レール26の長さが設定されている。以下の説明では、取り外した巻上機ブレーキ12を「旧巻上機ブレーキ121」とも表記し、取り付け予定の巻上機ブレーキ12を「新巻上機ブレーキ122」とも表記する。
【0023】
以上のように構成された重装置20によれば、以下のような作用及び効果を奏する。
【0024】
重装置20は、交換対象の旧巻上機ブレーキ121の直上をレール26が通るように設置される。これにより、取り外した旧巻上機ブレーキ121が横方向に振られることを防ぐことができるので、交換作業の安全性を高めることができる。これにより、装置の小型化を図ることができる。
【0025】
板材40を基台4の上に設置することにより、第一支柱22の設置自由度を高めることができる。これにより、様々な巻上機10の種類、機械室2の間取り、機器の配置に対しても、交換対象の巻上機ブレーキ12の直上をレール26が通るように、重装置20を設置することができる。
【0026】
第二支柱24は、作業スペースA1を跨いだ位置に設置される。このような構成によれば、取り外した旧巻上機ブレーキ121を作業スペースA1に降ろす作業及び、新たな新巻上機ブレーキ122を吊り上げる作業を効率よく行うことができる。
【0027】
第一支柱22の支柱高さは、第二支柱24の支柱高さよりも低い。このような構成によれば、機械室床面よりも高い位置に設置された板材40の上に第一支柱22を設置したとしても、レール26を水平に近づけることが可能となる。また、第一支柱22及び第二支柱24は支柱高さを調整可能に構成されている。これにより、基台4の高さが異なる設備環境であっても、レール26を水平に近づけることが可能となる。
【0028】
3.巻上機ブレーキの交換手順
次に、重装置20を用いて巻上機10の巻上機ブレーキ12を交換する作業の手順について説明する。なお、ここでは巻上機ブレーキ12の交換手順について説明するが、巻上機ブレーキ14の交換についても同様の手順で行うことができる。
【0029】
巻上機ブレーキ12を交換する作業では、重装置設置工程、巻上機ブレーキ取外し工程、及び巻上機ブレーキ取り付け工程が順に行われる。
【0030】
重装置設置工程は、機械室2において重装置20を設置する工程である。図8から図10は、巻上機ブレーキの交換手順のうち重装置設置工程を説明するための図である。重装置設置工程では、先ず、第一ステップでは、機械室壁と巻上機との間の空間において、板材40を一対の基台4に渡し掛けるように配置し、クランプで固定する。次の第二ステップでは、第一支柱22、第二支柱24及びレール26を準備する。板材40の上に第一支柱22を仮配置し、第二支柱24を機械室床面に仮配置する。第一支柱22及び第二支柱24の頭頂部にレール26を固定する。レール26が水平に近づくように、第一支柱22及び第二支柱24の支柱高さを調整する。この際、トロリ28及びホイスト30の吊り代を確保するため、取り付けられている巻上機ブレーキ12の最上部よりも予め定められた高さ、例えば800mm以上高くなる位置に設定する。
【0031】
第二ステップでは、更に、取り付けられている旧巻上機ブレーキ121の直上にレール26が位置するように第一支柱22及び第二支柱24の位置を調整する。また、この際、トロリ28の可動範囲であるレール26の直下に作業スペースA1を確保できるように第一支柱22及び第二支柱24の位置を調整する。ここでの作業スペースA1は、交換予定の新巻上機ブレーキ122と、取り外した旧巻上機ブレーキ121との両方を一度におくことのできるスペースである。作業スペースA1には、交換予定の新巻上機ブレーキ122を配置しておく。
【0032】
次の第三ステップでは、レール26にトロリ28を取り付ける。次にトロリ28にホイスト30を取り付ける。
【0033】
巻上機ブレーキ取外し工程は、重装置20を用いて旧巻上機ブレーキ121の取外し作業を行う工程である。巻上機ブレーキ取外し工程では、先ず、ホイスト30を旧巻上機ブレーキ121の直上に移動させる。旧巻上機ブレーキ121に取り付けた2本のアイボルトとホイスト30をベルト等で連結してテンションが掛かる程度に吊り上げる。次に、旧巻上機ブレーキ121に接続されているケーブル類とブレーキ取り付けボルトを取り外し、旧巻上機ブレーキ121を巻上機10から取り外す。この際、ホイスト30が巻上機ブレーキ12の直上に位置しているため、旧巻上機ブレーキ121を巻上機10から取り外した際に旧巻上機ブレーキ121が振られることが防止される。
【0034】
吊り上げた旧巻上機ブレーキ121は、トロリ28によって作業スペースA1の直上までレール26に沿って移動させて降ろす。図11は、巻上機ブレーキ取外し工程において、巻上機ブレーキ12を作業スペースA1に降ろした様子を示している。このように、旧巻上機ブレーキ121の直下が作業スペースA1となるため、旧巻上機ブレーキ121を牽引しながら降ろす必要はない。
【0035】
新たな新巻上機ブレーキ122の取り付ける巻上機ブレーキ取り付け工程では、取外し工程の逆の作業手順が行われる。典型的には、先ず、作業スペースA1に置かれている新巻上機ブレーキ122の直上にホイスト30を移動させる。ホイスト30によって、新巻上機ブレーキ122を吊り上げて巻上機10における新巻上機ブレーキ122の取り付け位置の直上まで移動させる。そして、新巻上機ブレーキ122を巻上機10にブレーキ取り付けボルトで取り付けるとともに、ケーブル類を接続する。
【0036】
以上のような重装置20の設置方法及び巻上機ブレーキの交換方法によれば、大型の巻上機ブレーキを安全に脱着して交換することが可能となる。
【0037】
4.巻上機ブレーキの重装置の変形例
実施の形態の重装置20は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0038】
第一支柱22は、基底部224に対して支柱部222の頭頂部が柱の中心軸を中心とした回転方向に回転可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、第一支柱22は、基底部224を動かすことなく支柱部222の頭頂部、すなわち頭頂部に固定されたレール26の向きを回転させることができる。これにより、例えば第一支柱22の設置スペース制限があり基底部224を理想の向きに配置できない場合であっても、レール26を所望の方向に向けて配置することが可能となる。このことは、第二支柱24についても同様であり、第二支柱24は、基底部244に対して支柱部242の頭頂部が柱の中心軸を中心とした回転方向に回転自在に構成されていてもよい。これにより、基底部244を動かすことなく支柱部222の頭頂部、すなわち頭頂部に固定されたレール26の向きを回転させることができる。
【0039】
支柱高さを調整する構成は、第一支柱22及び第二支柱24のうちの少なくとも一方が備えていればよい。
【符号の説明】
【0040】
2 機械室、 4 基台、 6,8 調速機、 10 巻上機、 12,14 巻上機ブレーキ、 20 重装置、 22 第一支柱、 24 第二支柱、 26 レール、 28 トロリ、 30 ホイスト、 40 板材、 50 重装置、 52 支柱、 54 レール、 56 トロリ、 58 ホイスト、 121 旧巻上機ブレーキ、 122 新巻上機ブレーキ、 222,242 支柱部、 224,244 基底部