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特開2022-152455作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152455
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221004BHJP
   E02F 3/76 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F3/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055235
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中江 好秀
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋一朗
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AB01
2D003AC02
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】安価かつ容易に操向を制御できる作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法を提供する。
【解決手段】操向機構66は、モータグレーダ100の進行方向を操作する。方向修正入力部36は、オペレータにより操作される。コントローラ40は、操向機構66による操向を自動制御している状態で、方向修正入力部36の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するように操向機構66を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の操向制御システムであって、
前記作業機械の進行方向を操作する操向機構と、
オペレータにより操作される方向修正入力部と、
前記操向機構による操向を自動制御している状態で、前記方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するように前記操向機構を制御するコントローラと、を備えた、作業機械の操向制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記自動制御の制御開始時点における前記作業機械の進行方向を目標方向として維持するように前記操向機構を制御することにより前記自動制御を実行する、請求項1に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項3】
オペレータの操作にしたがって前記操向機構を動作させる操向操作部をさらに備え、
前記コントローラは、前記操向操作部の操作が停止された状態が所定期間継続されたことに基づいて前記自動制御を開始する、請求項2に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項4】
オペレータにより操作される自動制御操作部をさらに備え、
前記コントローラは、前記自動制御操作部からの開始指令に基づいて前記自動制御を開始する、請求項2に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、衛星測位システムを利用して前記操向機構を制御することにより前記自動制御を実行する、請求項1に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記自動制御の制御開始時点における前記作業機械の進行方向を目標方向として維持するように前記操向機構を制御する第1モードと、衛星測位システムを利用して前記操向機構を制御する第2モードとのいずれかにより前記自動制御を実行し、
前記第1モードと前記第2モードとを切り替えるモード切替部をさらに備えた、請求項1に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項7】
前記モード切替部により前記第2モードに切り替えられた場合に、前記方向修正入力部は前記作業機械をオフセット走行させる際のインターフェースとして機能する、請求項6に記載の作業機械の操向制御システム。
【請求項8】
作業機械の進行方向を操作する操向機構と、オペレータにより操作される方向修正入力部とを備えた、作業機械の操向制御方法であって、
前記操向機構による操向の自動制御を実行するステップと、
前記自動制御の実行中に、前記方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するように前記操向機構を制御するステップと、を備えた、作業機械の操向制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータグレーダは、多数の操作レバーを有し、操作にかなりの熟練を要する作業機械である。作業時には、ブレード負荷の偏りにより車体が左右に流れるため、直進を維持するために頻繁に当て舵操作が必要となる。
【0003】
一方、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの衛星測位システムを利用した自動操向システムも農業機械などを中心に実用化されている。このようなシステムを搭載したモータグレーダが、たとえば米国特許第8060299号明細書(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8060299号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような自動操向システムにおいて、各種センサの検知誤差により進路のずれが生じた場合またはオペレータの好みによりモータグレーダ100の進路を微調整したい場合がある。このような場合に、進路を容易に微調整できることが望まれる。
【0006】
本開示の目的は、進路の微調整が容易な作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械の操向制御システムは、操向機構と、方向修正入力部と、コントローラとを備える。操向機構は、作業機械の進行方向を操作する。方向修正入力部は、オペレータにより操作される。コントローラは、操向機構による操向を自動制御している状態で、方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するように操向機構を制御する。
【0008】
本開示の作業機械の操向制御方法は、作業機械の進行方向を操作する操向機構と、オペレータにより操作される方向修正入力部とを備えた、作業機械の操向制御方法であって、以下のステップを有する。
【0009】
操向機構による操向の自動制御が実行される。自動制御の実行中に、方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するように操向機構が制御される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、進路の微調整が容易な作業機械の操向制御システムおよび作業機械の操向制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示す作業機械の構成を示す側面図である。
図3図1に示す作業機械における操向制御システムの構成の一例を示す図である。
図4図1に示す作業機械の操向制御システムにおける機能ブロックの一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態における第1モード(ステアリングスタビライザモード)での作業機械の操向制御方法の一例を示すフロー図である。
図6】進行方向を維持するように第1モードの操向制御が行われる様子を示す図である。
図7】方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整する様子を示す図である。
図8】第1モードの操向制御において走行経路を擬似的にオフセットする様子を示す図である。
図9】本開示の一実施形態における第2モード(オートステアリングモード)での作業機械の操向制御方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0013】
本開示は、モータグレーダ以外に、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、フォークリフトなどの他の作業機械にも適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、図1に示す運転室11内の運転席11Sに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0014】
<作業機械の構成>
まず本実施形態の作業機械の一例としてモータグレーダの構成を図1および図2を用いて説明する。
【0015】
図1および図2のそれぞれは、本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図および側面図である。図1に示されるように、モータグレーダ100は、走行しながら、整地作業を行なったり、除雪作業を行なったりする作業機械である。
【0016】
モータグレーダ100は、フロントフレーム14と、リアフレーム15と、一対のアーティキュレートシリンダ28と、運転室(キャブ)11と、エンジンカバー13と、前輪16および後輪17と、作業機12とを有している。
【0017】
フロントフレーム14およびリアフレーム15は、モータグレーダ100の車体フレーム18を構成している。フロントフレーム14は、リアフレーム15の前方に配置されている。
【0018】
フロントフレーム14は、回動中心の軸線121上に設けられたセンターピン(不図示)により、リアフレーム15に回動可能に連結されている。回動中心の軸線121は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0019】
一対のアーティキュレートシリンダ28は、フロントフレーム14を挟んで左右両側に設けられている。アーティキュレートシリンダ28は、油圧により伸縮駆動する油圧シリンダである。アーティキュレートシリンダ28の伸縮駆動により、フロントフレーム14は、リアフレーム15に対して回動中心の軸線121を中心に回動する。
【0020】
エンジンカバー13は、エンジンルームを覆っており、リアフレーム15により支持されている。エンジンルームには、トランスミッション、トルクコンバータ、エンジン、排気処理構造体などが配置されている。
【0021】
前輪16および後輪17は、走行輪である。前輪16は、フロントフレーム14に回転可能に取り付けられている。前輪16は、操向輪であり、フロントフレーム14に対して操向可能に取り付けられている。後輪17は、リアフレーム15に回転可能に取り付けられている。後輪17には、エンジンからの駆動力が伝達される。
【0022】
作業機12は、前後方向において、前輪16および後輪17の間に配置されている。作業機12は、フロントフレーム14により支持されている。作業機12は、ブレード21と、ドローバ22と、旋回サークル23と、一対のリフトシリンダ25とを有している。
【0023】
ドローバ22は、フロントフレーム14の下方に設けられている。ドローバ22の前端部は、フロントフレーム14の先端部に揺動可能に連結されている。一対のリフトシリンダ25は、フロントフレーム14を挟んだ左右両側に設けられている。ドローバ22の後端部は、一対のリフトシリンダ25を介して、フロントフレーム14により支持されている。
【0024】
一対のリフトシリンダ25の伸縮によって、ドローバ22の後端部がフロントフレーム14に対して上下に昇降可能である。一対のリフトシリンダ25がともに収縮駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは上方に調整される。一対のリフトシリンダ25がともに伸長駆動することにより、フロントフレーム14および前輪16に対するブレード21の高さは下方に調整される。
【0025】
ドローバ22は、一対のリフトシリンダ25の互いに異なる伸縮によって、前後方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。
【0026】
旋回サークル23は、ドローバ22の下方に配置されている。旋回サークル23は、ドローバ22に旋回可能に連結されている。旋回サークル23は、上下方向に沿った軸を中心に、時計回りおよび反時計回りに旋回可能である。
【0027】
ブレード21は、旋回サークル23の下方に配置されている。ブレード21は、地面と対向して設けられている。ブレード21は、旋回サークル23により支持されている。ブレード21は、旋回サークル23の旋回運動に伴って、上面視において前後方向に対してブレード21がなす角度(ブレード推進角)が変化するように旋回する。ブレード21の旋回軸は、上下方向に沿って延びる軸である。
【0028】
図2に示されるように、モータグレーダ100は、ハンドルセンサ31と、レバーセンサ32と、自動制御操作部33と、方向検知センサ34と、方向修正入力部36と、FNR・車速検知センサ37とをさらに有している。
【0029】
ハンドルセンサ31は、オペレータによるステアリングハンドル41(図3)の操作を検知する。ハンドルセンサ31は、たとえばステアリングハンドル41の回転によって発生するステアリングハンドル軸の角度変位を検知する軸変位センサである。
【0030】
レバーセンサ32は、オペレータによるステアリングレバー42(図3)の操作を検知する。レバーセンサ32は、たとえばステアリングレバー42の角度位置を検知する位置センサである。
【0031】
自動制御操作部33は、たとえば運転室11の内部に配置されている。自動制御操作部33は、オペレータにより操作される装置であって、たとえばスイッチである。自動制御操作部33は、オペレータにより操作されることにより、モータグレーダ100の操向の自動制御を開始する信号(以下、「開始信号」と称する)または自動制御を停止する信号(以下、「停止信号」と称する)を発生する。操向の自動制御については後述する。
【0032】
方向検知センサ34は、モータグレーダ100の車体フレーム18が向いている方向を検知する。方向検知センサ34は、たとえばIMU(Inertial Measurement Unit)34a、ステアリング角度センサ34b、アーティキュレート角度センサ34cおよび撮像装置34dのいずれか1つまたはこれらの任意に組み合わせであってもよい。
【0033】
IMU34aは、たとえばフロントフレーム14に取り付けられている。IMU34aは、たとえば6軸IMUであるが、9軸IMUであってもよい。6軸IMUは、3軸加速度および3軸ジャイロ(角度、角速度または角加速度)を搭載した複合センサである。この3軸が、作業機械の前後方向、左右方向、上下方向に沿うようにフロントフレーム14に取り付けることができる。この場合、6軸IMUは、前後方向、左右方向、上下方向の各軸に沿う位置変化と、各軸周りの角度変化(すなわち、作業機械のローリング、ピッチング、ヨーイング)を検出することができる。また9軸IMUは、3軸加速度、3軸ジャイロおよび3軸磁力計を搭載した複合センサである。9軸IMUは、3軸磁力計により地磁気を計測することにより6軸IMUよりもジャイロのドリフトを抑えることができる。
【0034】
IMU34aにより検知された加速度およびジャイロに基づいてモータグレーダ100の現在方向の変化を知ることができる。なおIMU34aは、リアフレーム15または運転室11に取り付けられていてもよい。
【0035】
ステアリング角度センサ34bは、たとえばステアリングシリンダ74に取り付けられている。ステアリング角度センサ34bは、前輪16のステアリング角度(フロントフレーム14の前後方向に対して前輪16がなす角度)を検知する。
【0036】
アーティキュレート角度センサ34cは、たとえばアーティキュレートシリンダ28に取り付けられている。アーティキュレート角度センサ34cは、フロントフレーム14とリアフレーム15とのアーティキュレート角度(連結角度)を検知する。
【0037】
撮像装置34dは、たとえば運転室11の外部または内部に配置されている。撮像装置34dは、たとえばモータグレーダ100の一部およびその周囲を撮像する。撮像装置34dにより撮像された画像によってもモータグレーダ100の現在方向の変化を知ることができる。
【0038】
方向修正入力部36は、たとえば運転室11の内部に配置されている。方向修正入力部36は、オペレータにより操作されるスイッチであり、たとえば右ボタンと左ボタンとの1対のボタンを有する押しボタン式のスイッチである。方向修正入力部36は、後述する第1モード(ステアリングスタビライザモード)においては、オペレータにより操作されるごとに(押されるごとに)、モータグレーダ100の進行方向を左右のいずれかに一定角度調整する。また方向修正入力部36は、後述する第2モード(オートステアリングモード)においては、予め設定された走行経路をモータグレーダ100の進行方向に対して左右のいずれかに所定量だけオフセットさせる。
【0039】
FNR・車速検知センサ37は、たとえばトランスミッション(図示せず)に取り付けられている。FNR・車速検知センサ37は、前進(F)、後進(R)、ニュートラル(N)の状態を検知し、またモータグレーダ100の走行中における車速を検知する。
【0040】
モータグレーダ100は、衛星測位システムを利用してもよい。衛星測位システムは、たとえばGNSSを用いていてもよい。衛星測位システムとしてGNSSを利用する場合、モータグレーダ100は、GNSSレシーバ35と、モード切替部38とをさらに有していてもよい。
【0041】
GNSSレシーバ35は、たとえば、GPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ35のアンテナは、たとえば、運転室11の天井部に配置されている。GNSSレシーバ35は、衛星から測位信号を受信し、測位信号によりGNSSレシーバ35のアンテナの位置を演算して車体位置データを生成する。すなわち、衛星測位システムを利用することにより、モータグレーダ100の現在方向の変化だけでなく、地球を基準としたグローバル座標系における現在位置や現在方向(現在の方位)そのものを知ることができる。
【0042】
モード切替部38は、たとえば運転室11の内部に配置されている。モード切替部38は、オペレータにより操作されることにより、操向の自動制御(自動操舵)における第1モード(ステアリングスタビライザモード)と、第2モード(オートステアリングモード)とを切り替え可能に構成されている。
【0043】
第1モードは、モータグレーダ100の進行方向を直進に維持するように操向を自動制御(自動操舵)するモードであり、衛星測位システムを利用しないモードである。第2モードは、衛星測位システムを利用して予め設定された走行経路に沿ってモータグレーダ100の操向を自動制御(自動操舵)するモードである。第1モードは、第2モードに比べれば簡易的と言えるモードであるが、ブレード負荷の偏りにより車体が左右に流れるような場合でも当て舵操作を行うことなく直進を維持することができ、作業時におけるオペレータの負担は大幅に軽減される。
【0044】
第1モードが選択されている場合、オペレータが方向修正入力部36の右ボタンを押し操作すると、モータグレーダ100の進行方向が右方向に一定角度だけ調整される。またオペレータが方向修正入力部36の左ボタンを押し操作すると、モータグレーダ100の進行方向が左方向に一定角度だけ調整される。
【0045】
また第2モードが選択されている場合、方向修正入力部36はオフセットスイッチとして機能する。具体的には方向修正入力部36の右ボタンを押し操作すると、予め設定された走行経路が右側へ所定量だけオフセットされる。また方向修正入力部36の左ボタンを押し操作すると、予め設定された走行経路が左側へ所定量だけオフセットされる。
【0046】
<操向制御システムの構成>
次に、本実施形態における操向制御システムの構成について図3を用いて説明する。
【0047】
図3は、図1に示す作業機械における操向制御システムの構成の一例を示す図である。図3に示されるように、操向制御システムは、コントローラ40と、操向機構66と、操向操作部67と、電気流体圧制御弁73とを有している。
【0048】
操向操作部67は、操向機構66を動作させるためにオペレータによって操作される。操向操作部67は、ハンドルセンサ31と、レバーセンサ32と、ステアリングハンドル41と、ステアリングレバー42と、操舵用パイロットバルブ71とを有している。
【0049】
ステアリングハンドル41は、たとえばホイール形状のハンドルであり、オペレータによって回転操作される。ハンドルセンサ31は、オペレータによるステアリングハンドル41の操作を検知する。ハンドルセンサ31は、たとえばステアリングハンドル41の回転によって発生するステアリングハンドル軸の角度変位を検知する軸変位センサである。ハンドルセンサ31の検知信号は電気信号としてコントローラ40へ出力される。
【0050】
ステアリングレバー42は、たとえばジョイスティックであり、オペレータによって傾倒操作される。レバーセンサ32は、オペレータによるステアリングレバー42の操作を検知する。レバーセンサ32は、たとえばステアリングレバー42の角度位置を検知する位置センサである。レバーセンサ32の検知信号は電気信号としてコントローラ40へ出力される。
【0051】
操舵用パイロットバルブ71は、ステアリングハンドル41における回転操作に応じて、圧油をステアリングバルブ72に供給する。
【0052】
操向機構66は、モータグレーダ100の進行方向を操作する機構である。操向機構66は、ステアリングバルブ72と、ステアリングシリンダ74と、ステアリング角度センサ34bとを有している。
【0053】
ステアリングバルブ72は、電気流体圧制御弁73および操舵用パイロットバルブ71の各々から供給される圧油により制御される。これによりステアリングバルブ72は、ステアリングシリンダ74へ供給する圧油を制御する。
【0054】
ステアリングシリンダ74は、ステアリングバルブ72からの圧油により伸縮する。ステアリングシリンダ74の伸縮によって、前輪16の前後方向に対してなす角度が変化する。
【0055】
コントローラ40は、ハンドルセンサ31の検知信号またはレバーセンサ32の検知信号に基づいて電気流体圧制御弁73を制御する。これにより、オペレータによるステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作にしたがって、ステアリングシリンダ74が伸縮し、前輪16の前後方向に対してなす角度が変化する。
【0056】
前輪16が前後方向に対して右側に傾くと、モータグレーダ100の進行方向は右前方に変化する。また前輪16が前後方向に対して左側に傾くと、モータグレーダ100の進行方向は左前方に変化する。
【0057】
以上により、オペレータによる操向操作部67の操作にしたがって操向機構66が動作する、いわゆるマニュアル操作が行われる。マニュアル操作の下においては、オペレータの操作通りにモータグレーダ100が走行する。
【0058】
またコントローラ40は、各種の電気信号に基づいて、電気流体圧制御弁73を自動で制御する。コントローラ40には、自動制御操作部33、方向検知センサ34、GNSSレシーバ35、方向修正入力部36、FNR・車速検知センサ37およびモード切替部38の各々から電気信号が入力される。コントローラ40がこれらの電気信号に基づいて電気流体圧制御弁73を制御することにより、モータグレーダ100の自動操舵が実行される。
【0059】
<操向制御システムにおける機能ブロックの構成>
次に、作業機械の操向制御システムにおける機能ブロックの構成について図4を用いて説明する。
【0060】
図4は、図1に示す作業機械の操向制御システムにおける機能ブロックの一例を示す図である。図4に示されるように、コントローラ40は、レバーセンサ計測値取得部40aと、ハンドルセンサ計測値取得部40bと、ステアリング指令信号生成部40dとを有している。
【0061】
レバーセンサ計測値取得部40aは、レバーセンサ32から取得した検知信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。ハンドルセンサ計測値取得部40bは、ハンドルセンサ31から取得した検知信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0062】
ステアリング指令信号生成部40dは、レバーセンサ計測値取得部40aおよびハンドルセンサ計測値取得部40bのいずれかから取得した検知信号に基づいて電気流体圧制御弁73を制御する。
【0063】
これにより、オペレータによる操向操作部67の操作にしたがって操向機構66が動作する、いわゆるマニュアル操作が行われる。
【0064】
コントローラ40は、方向信号取得部40cと、開始・停止信号取得部40eと、開始・停止判定部40fと、現在方向特定部40gとをさらに有している。方向信号取得部40cは、方向検知センサ34から取得した方向を示す信号(以下、「方向信号」と称する)を現在方向特定部40gへ出力する。なお、方向信号取得部40cが方向検知センサ34(34a、34d)から取得する「方向信号」とは、ある時点の方向(基準となる方向)に対する現在の方向の変化(すなわち、相対的な方向の変化)を示す信号であり、GNSSレシーバ35によって取得されるグローバル座標系における方位(すなわち、東西南北などで表される絶対的な方向)とは異なる。
【0065】
開始・停止信号取得部40eは、自動制御操作部33から第1モードもしくは第2モードでの自動操舵を開始する開始信号または自動操舵を停止する停止信号を取得し、開始・停止判定部40fへ出力する。レバーセンサ計測値取得部40aおよびハンドルセンサ計測値取得部40bの各々は、検知信号を開始・停止判定部40fへ出力する。
【0066】
開始・停止判定部40fは、取得した開始信号、停止信号または検知信号に基づいて、モータグレーダ100の自動操舵を開始するか否か、または停止するか否かの判定を実行する。
【0067】
具体的には、開始・停止判定部40fは、開始・停止信号取得部40eから開始信号を取得した場合、モータグレーダ100の自動操舵を開始する旨の判定をする。また開始・停止判定部40fは、自動操舵の実行中において開始・停止信号取得部40eから停止信号を取得した場合、モータグレーダ100の自動操舵を停止する旨の判定をする。
【0068】
また開始・停止判定部40fは、レバーセンサ32からの検知信号に基づいて、ステアリングレバー42のオペレータによる操作が停止された状態が所定期間継続されたことを検知した場合、自動操舵を開始する旨の判定をする。また開始・停止判定部40fは、自動操舵の実行中にレバーセンサ32がオペレータにより操作されたことを示す検知信号を取得した場合、自動操舵を停止する旨の判定をする。
【0069】
また開始・停止判定部40fは、ハンドルセンサ31からの検知信号に基づいて、ステアリングハンドル41のオペレータによる操作が停止された状態が所定期間継続されたことを検知した場合、自動操舵を開始する旨の判定をする。また開始・停止判定部40fは、自動操舵の実行中にハンドルセンサ31がオペレータにより操作されたことを示す検知信号を取得した場合、自動操舵を停止する旨の判定をする。
【0070】
第1モードが選択されている場合、開始・停止判定部40fは、自動操舵を開始または停止する旨の判定結果を示す信号を現在方向特定部40gへ出力する。現在方向特定部40gは、開始・停止判定部40fから自動操舵を開始する旨の判定結果を取得すると、方向信号取得部40cから取得した方向信号に基づいてモータグレーダ100の現在方向を特定する。
【0071】
現在方向特定部40gは、方向検知センサ34としてIMU34aからの信号を取得した場合には、IMU34aにより検知された加速度およびジャイロ情報に基づいてモータグレーダ100の現在方向を特定する。
【0072】
また現在方向特定部40gは、方向検知センサ34として撮像装置34dからの信号を取得した場合には、撮像装置34dにより撮像された画像に基づいて、モータグレーダ100の現在方向を特定する。
【0073】
現在方向特定部40gは、特定した現在方向を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。また現在方向特定部40gは、開始・停止判定部40fから自動操舵を停止する旨の判定結果を取得すると、取得した判定結果を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0074】
ステアリング指令信号生成部40dは、現在方向特定部40gから取得した現在方向を示す信号に基づいて、モータグレーダ100がその現在方向を目標方向として走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0075】
これによりオペレータによる自動制御操作部33の操作がなされたこと、またはオペレータによるステアリングレバー42またはステアリングハンドル41の操作が所定期間継続してされなかったことをトリガーとして、走行における第1モード(ステアリングスタビライザモード)の自動操舵が開始される。第1モードの自動操舵においては、自動操舵開始時のモータグレーダ100の方向を目標方向として維持するように自動操舵が実行される。これにより、たとえばブレード負荷の偏りにより車体が左右に流れるような場合でも、モータグレーダ100が目標方向に向かって直進するように自動操舵される。
【0076】
またステアリング指令信号生成部40dは、現在方向特定部40gから自動操舵を停止する旨の判定結果を示す信号を取得した場合、その信号に基づいて、自動操舵を停止する。この場合、ステアリング指令信号生成部40dは、レバーセンサ32またはハンドルセンサ31の検知信号に基づいて電気流体圧制御弁73を制御する。このようにステアリング指令信号生成部40dは、自動操舵を停止する。自動操舵が停止された場合、モータグレーダ100は上記のようにマニュアル操作される。
【0077】
コントローラ40は、第2モードの自動操舵を実行するために、GNSS信号取得部40jと、位置・方位取得部40kとをさらに有していてもよい。GNSS信号取得部40jは、GNSSレシーバ35から取得したモータグレーダ100の位置データおよび方位データを位置・方位取得部40kへ出力する。
【0078】
位置・方位取得部40kにより取得されるモータグレーダ100の位置データは、グローバル座標系において規定されるモータグレーダ100の位置である。位置・方位取得部40kにより取得されるモータグレーダ100の方位データは、たとえばモータグレーダ100の前方に対応する方位である。
【0079】
第2モードが選択されている場合、開始・停止判定部40fは、自動操舵を開始または停止する旨の判定結果を示す信号を位置・方位取得部40kへ出力する。位置・方位取得部40kは、開始・停止判定部40fから自動操舵を開始する旨の判定結果を取得すると、GNSS信号取得部40jから取得したモータグレーダ100の位置データおよび方位データをステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0080】
ステアリング指令信号生成部40dは、位置・方位取得部40kから取得した位置データおよび方位データと、予め設定され記憶部40nに記憶された走行経路(目標経路)とに基づいて、モータグレーダ100がその走行経路に沿って走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0081】
これによりオペレータによる自動制御操作部33の操作がなされたこと、またはオペレータによるステアリングレバー42またはステアリングハンドル41の操作が所定期間継続してされなかったことをトリガーとして、走行における第2モード(オートステアリングモード)の自動操舵が開始される。第2モードの自動操舵においては、衛星測位システムを利用して生成した走行経路に沿ってモータグレーダ100が走行するように自動操舵が実行される。
【0082】
第1モードおよび第2モードのいずれの自動操舵が実行されるかは、たとえばモード切替部38により切り替えられる。モード切替部38により第1モードが選択された場合、ステアリング指令信号生成部40dは現在方向特定部40gから現在方向を示す信号を取得する。この場合、ステアリング指令信号生成部40dは、現在方向特定部40gから取得した現在方向を示す信号に基づいて第1モードの自動操舵を実行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0083】
またモード切替部38により第2モードが選択された場合、ステアリング指令信号生成部40dは、位置・方位取得部40kから位置データおよび方位データを示す信号と、記憶部40nから走行経路を示す信号とを取得する。この場合、ステアリング指令信号生成部40dは、モータグレーダ100がその走行経路に沿って走行することで第2モードの自動操舵を実行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0084】
コントローラ40は、方向修正部40hと、方向修正指令取得部40iと、記憶部40nとをさらに有している。方向修正指令取得部40iは、方向修正入力部36およびFNR・車速検知センサ37から取得した信号の各々を現在方向特定部40gおよび方向修正部40hの各々へ出力する。
【0085】
現在方向特定部40gは、方向修正指令取得部40iから取得した信号に基づいて、現在方向が前進方向および後進方向のいずれであるかを特定する。
【0086】
方向修正部40hは、第1モードにおいては、方向修正指令取得部40iから取得した信号に基づいて、モータグレーダ100の進行方向(目標方向)を左右のいずれかに一定角度修正した修正方向を算出する。方向修正部40hは、修正方向を算出する際に、記憶部40nに記憶された角度情報(たとえば角度の数値)を参照してもよい。記憶部40nに記憶された角度情報は、たとえば前進の場合および後進の場合のそれぞれにおける車速に応じた修正角度の一覧を表すテーブルを含む。方向修正部40hは、算出した修正方向を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0087】
また方向修正部40hは、第2モードにおいては、方向修正指令取得部40iから取得した信号に基づいて、モータグレーダ100の進行方向に対して左右のいずれかに走行経路をオフセットさせる。方向修正部40hは、走行経路をオフセットさせる際に、記憶部40nに記憶された予め設定された走行経路の情報を参照する。方向修正部40hは、方向修正入力部36において右ボタンの押し操作がされたことを示す信号を取得した場合にはモータグレーダ100の進行方向に対して右側へ走行経路をオフセットさせる。また方向修正部40hは、方向修正入力部36において左ボタンの押し操作がされたことを示す信号を取得した場合にはモータグレーダ100の進行方向に対して左側へ走行経路をオフセットさせる。方向修正部40hは、オフセット後の走行経路を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0088】
なお方向修正入力部36は、同一のボタンで第1モードと第2モードとにおいて2つの異なる機能を兼用する。つまり方向修正入力部36は、第1モードにおいてはモータグレーダ100の進行方向を修正する機能を有し、第2モードにおいては走行経路をオフセットする機能を有する。
【0089】
ステアリング指令信号生成部40dは、第1モードにおいては、方向修正部40hから取得した修正方向を示す信号に基づいて、モータグレーダ100が目標方向から修正方向へ進行方向を修正して走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0090】
具体的には、第1モードの自動操舵では、ステアリング指令信号生成部40dは、方向修正部40hから取得した修正方向と現在方向特定部40gから取得した目標方向(現在方向)との差分を算出し、その差分に基づいて電気流体圧制御弁73を制御する。
【0091】
またステアリング指令信号生成部40dは、第2モードにおいては、方向修正部40hから取得したオフセット後の走行経路を示す信号に基づいて、モータグレーダ100がオフセット後の走行経路に沿って走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。
【0092】
具体的には、第2モードの自動操舵では、ステアリング指令信号生成部40dは、方向修正部40hから取得したオフセット後の走行経路と、記憶部40nから取得した予め設定した走行経路との差分を算出し、その差分に基づいて電気流体圧制御弁73の制御量を決定する。
【0093】
これにより第1モードおよび第2モードの各々の自動操舵が実行されている状態でオペレータが方向修正入力部36を操作することにより、その方向修正入力部36の入力操作指令に基づいてコントローラ40は進行方向を左右のいずれかに一定角度調整するか、あるいは目標経路を一定量オフセットするように操向機構66を制御する。この制御により、第1モードまたは第2モードの自動操舵中にオペレータがモータグレーダ100の進路を微調整することができる。
【0094】
コントローラ40は、車体全体のシステム用のコントローラC1と、ステアリングスタビライザモード用のコントローラC2と、オートステアリングモード用のコントローラC3とに分かれていてもよい。コントローラC1には、たとえばレバーセンサ計測値取得部40a、ハンドルセンサ計測値取得部40bと、方向信号取得部40cと、ステアリング指令信号生成部40dとを有していてもよい。コントローラC2は、たとえば開始・停止信号取得部40eと、開始・停止判定部40fと、現在方向特定部40gとを有していてもよい。コントローラC3は、たとえばGNSS信号取得部40jと、位置・方位取得部40kとを有していてもよい。
【0095】
また方向修正部40h、方向修正指令取得部40iおよび記憶部40nは、コントローラC1~C3とは別のコントローラに含まれていてもよく、またコントローラC1~C3のいずれかに含まれていてもよい。
【0096】
<作業機械の操向制御方法>
次に、本実施形態における作業機械の操向制御方法について図4図9を用いて説明する。また作業機械の操向制御方法について、第1モード(ステアリングスタビライザモード)と第2モード(オートステアリングモード)とに分けて説明する。
【0097】
(第1モード)
まずは第1モードの操向制御方法について説明する。
【0098】
図5は、本開示の一実施形態における第1モードでの作業機械の操向制御方法の一例を示すフロー図である。図6は、進行方向を維持するように第1モードの操向制御が行われる様子を示す図である。図7は、方向修正入力部の入力操作指令に基づいて進行方向を左右のいずれかに一定角度調整する様子を示す図である。
【0099】
この操向制御方法の説明においては、図6に示されるように、モータグレーダ100が、図の100A、100B、100Cおよび100Dに示される位置(以下、「位置100A」、「位置100B」、「位置100C」および「位置100D」とそれぞれ称する)を順に移動する場合を例に挙げて説明する。
【0100】
図4および図5に示されるように、まずモード切替部38が第1モード(ステアリングスタビライザモード)に切り替えられる。これにより第1モードが設定される(ステップS1)。
【0101】
第1モードに設定された状態で、オペレータによりステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作が行なわれる場合、モータグレーダ100は、マニュアル操作によりオペレータの操作通りに走行する。たとえば位置100Aから位置100Bまでは、モータグレーダ100は、マニュアル操作によりオペレータの操作通りに走行する。つまり位置100Aから位置100Bまで、モータグレーダ100は、オペレータによるステアリングハンドル41またはステアリングレバー42の操作にしたがって走行する。
【0102】
図6に示されるように、第1モードに設定された状態におけるマニュアル操作中に、操向操作部67(図3)の操作停止が所定期間継続された場合または自動制御操作部33にて自動操舵の開始操作が行われた場合に、それをトリガーとして第1モードの自動操舵が開始される。第1モードでの自動操舵は、たとえば位置100Bから開始される。
【0103】
図4および図5に示されるように、操向操作部67(図3)の操作停止が所定期間継続されたか否かは、開始・停止判定部40fにより判定される(ステップS2)。具体的には、開始・停止判定部40fは、レバーセンサ32およびハンドルセンサ31からの検知信号に基づいてステアリングレバー42およびステアリングハンドル41がオペレータにより所定期間継続して操作されていないか否かを判定する。
【0104】
この判定において操向操作部67の操作停止が所定期間継続されたと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第1モードでの自動操舵が開始される(ステップS3)。
【0105】
なお、ステップS2において、オペレータにより制御開始の操作がされたか否かは、開始・停止判定部40fが、自動制御操作部33から自動操舵を開始する開始信号を取得したか否かによって判定されてもよい。
【0106】
この場合においては、自動制御操作部33がオペレータにより制御開始の操作がされたと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第1モードでの自動操舵が開始される(ステップS3)。
【0107】
第1モードでの自動操舵の開始は、開始・停止判定部40fが第1モードの自動操舵開始を示す開始信号を現在方向特定部40gへ出力することにより行われる。現在方向特定部40gは、開始・停止判定部40fから開始信号を取得すると、方向信号取得部40cから取得した方向信号に基づいてモータグレーダ100の現在方向を特定する(ステップS4)。
【0108】
現在方向特定部40gは、特定した現在方向を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。ステアリング指令信号生成部40dは、現在方向特定部40gから取得した現在方向を示す信号に基づいて、モータグレーダ100がその現在方向を目標方向として維持して走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。これにより操向機構66が制御される(ステップS5)。
【0109】
このようにオペレータによる操向操作部67の操作停止が所定期間継続したこと、またはオペレータによる自動制御操作部33における制御開始の操作がなされたことをトリガーとして、第1モードの自動操舵が開始される。
【0110】
図6に示されるように、第1モードの自動操舵においては、モータグレーダ100の進行方向(目標方向)を維持するように自動操舵が実行される。このためモータグレーダ100は、位置100Bから、第1モードにおける自動操舵開始時の進行方向を目標方向として基本的には直進する。
【0111】
しかしながらIMU34aのドリフトなどの方向検知センサ34の検知誤差により、モータグレーダ100の進路が目標方向からずれる場合がある。またオペレータの好みによりモータグレーダ100の進路を微調整したい場合もある。そこで本実施形態では、以下のように、第1モードの自動操舵中にオペレータがモータグレーダ100の進路を微調整することができる。
【0112】
図7に示されるように、オペレータは、進路を微調整したい場合には方向修正入力部36を操作する。方向修正入力部36は、たとえば右ボタン36aと左ボタン36bとの1対のボタンを有する押しボタン式のスイッチである。オペレータが右ボタン36aおよび左ボタン36bのいずれかを押し操作することにより、方向修正入力部36により方向修正を示す信号が発生される。
【0113】
図4および図5に示されるように、方向修正入力部36は方向修正を示す信号を方向修正指令取得部40iへ出力する。方向修正指令取得部40iは、方向修正入力部36から方向修正を示す信号を取得したか否かにより、進行方向修正の入力操作があったか否かを判定する(ステップS6)。
【0114】
方向修正指令取得部40iが方向修正の入力操作がなかったと判定した場合には、方向修正部40hは現在方向(目標方向)を維持する(ステップS7b)。この場合、モータグレーダ100が現在方向を維持して走行するように、ステアリング指令信号生成部40dにより操向機構66は制御される(ステップS8)。
【0115】
一方、方向修正指令取得部40iが方向修正の入力操作があったと判定した場合、方向修正部40hは、方向修正指令取得部40iから取得した方向修正を示す信号に基づいて、モータグレーダ100の修正方向を算出する(ステップS7a)。方向修正部40hは、修正方向を算出する際に、記憶部40nに記憶された角度情報を参照してもよい。方向修正部40hは、算出した修正方向を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。この場合、モータグレーダ100が修正方向に向かって走行するように、操向機構66がステアリング指令信号生成部40dにより制御される(ステップS8)。
【0116】
図7に示されるように、方向修正入力部36の入力操作があった場合、モータグレーダ100は、方向修正の入力操作がされた位置100Eでの進行方向(目標方向)から所定角度だけずれた修正方向に進路を変更する。図7では、方向修正入力部36のたとえば右ボタン36aが押し操作されることにより、モータグレーダ100は進行方向から右側へ所定角度だけずれた修正方向に進路を変更する。
【0117】
図4および図5に示されるように、この後、操向操作部67の操作があったか否かの判定(ステップS9)が行われる。
【0118】
操向操作部67の操作があったか否かの判定(ステップS9)は、具体的にはステアリングレバー42およびステアリングハンドル41のいずれかがオペレータにより操作されたか否かを判定することにより行われる。この判定は、レバーセンサ32およびハンドルセンサ31からの検知信号に基づいて、開始・停止判定部40fにより行われる。
【0119】
この判定において操向操作部67の操作があったと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第1モードの自動操舵は終了する(ステップS10)。
【0120】
またステップS9において、自動操舵停止の操作がされたか否かの判定は、開始・停止判定部40fが、自動制御操作部33から自動操舵を停止する停止信号を取得したか否かによって行なわれてもよい。
【0121】
この場合においては、自動制御操作部33から自動操舵を停止する停止信号を取得したと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第1モードの自動操舵は終了する(ステップS10)。
【0122】
図6に示されるように、第1モードの自動操舵が位置100Cで終了した場合、オペレータによるステアリングレバー42およびステアリングハンドル41のいずれかの操作にしたがってオペレータの操作通りにモータグレーダ100は走行する。つまり第1モードの自動操舵が位置100Cで終了した場合、位置100Cからはオペレータによるマニュアル操作によりモータグレーダ100は走行する。この後、位置100Dから再度、第1モードで自動操舵が開始されてもよい。
【0123】
また第1モードの自動操舵においては、方向修正入力部36の入力操作により疑似的に走行方向をオフセットすることができる。以下に、この擬似的なオフセットについて図8を用いて説明する。
【0124】
図8は、第1モードの操向制御において走行経路を擬似的にオフセットする様子を示す図である。図8に示されるように、たとえば位置100Fにおいて、方向修正入力部36の右ボタン36aが押し操作される。これにより上述したように、モータグレーダ100は進行方向を右側へ所定角度だけずれた方向へ変更する。
【0125】
この後、位置100Gにおいて、方向修正入力部36の左ボタン36bが押し操作される。これにより、モータグレーダ100は進行方向を左側へ所定角度だけずれた方向へ変更する。これにより位置100G以降には、モータグレーダ100は、元の走行経路から擬似的にオフセットした経路を走行することが可能である。
【0126】
(第2モード)
次に、第2モードの操向制御方法について説明する。
【0127】
図9は、本開示の一実施形態における第2モードでの作業機械の操向制御方法の一例を示すフロー図である。
【0128】
図4および図9に示されるように、モード切替部38により第2モード(オートステアリングモード)に切り替えられる。これにより第2モードが設定される(ステップS11)。
【0129】
第2モードに設定された状態におけるマニュアル操作中に、操向操作部67(図3)の操作停止が所定期間継続された場合または自動制御操作部33にて自動操舵の開始操作が行われた場合に、それをトリガーとして第2モードの自動操舵が開始される。
【0130】
操向操作部67の操作停止が所定期間継続されたか否かは、開始・停止判定部40fにより判定される(ステップS12)。具体的には、開始・停止判定部40fは、レバーセンサ32およびハンドルセンサ31からの検知信号に基づいてステアリングレバー42およびステアリングハンドル41がオペレータにより所定期間継続して操作されていないか否かを判定する。
【0131】
この判定において操向操作部67の操作停止が所定期間継続されたと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第2モードでの自動操舵が開始される(ステップS13)。
【0132】
なおステップS12において、オペレータにより制御開始の操作をされたか否かは、開始・停止判定部40fが、自動制御操作部33から自動操舵を開始する開始信号を取得したか否かによって判定されてもよい。
【0133】
この場合において自動制御操作部33がオペレータにより制御開始の操作がされたと開始・停止判定部40fが判定した場合には、第2モードでの自動操舵が開始される(ステップS13)。
【0134】
第2モードでの自動操舵の開始は、開始・停止判定部40fが第2モードでの自動操舵の開始を示す開始信号を位置・方位取得部40kへ出力することにより行われる。
【0135】
一方、GNSS信号取得部40jは、GNSSレシーバ35から取得したモータグレーダ100の位置データおよび方位データを位置・方位取得部40kへ出力する。位置・方位取得部40kは、取得したモータグレーダ100の位置データおよび方位データに基づいてモータグレーダ100の位置および方位を特定する(ステップS14)。位置・方位取得部40kは、特定した位置および方位を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。
【0136】
ステアリング指令信号生成部40dは、位置・方位取得部40kから取得した位置データおよび方位データと、予め設定され記憶部40nに記憶された走行経路(目標経路)とに基づいて、モータグレーダ100がその走行経路に沿って走行するように電気流体圧制御弁73を制御する。これにより操向機構66が制御される(ステップS15)。
【0137】
これによりオペレータによる操向操作部67の操作停止が所定期間継続したこと、またはオペレータによる自動制御操作部33における制御開始の操作がなされたことをトリガーとして、第2モードの自動操舵が開始される。
【0138】
上記により第2モードの自動操舵においては、予め設定された走行経路に沿ってモータグレーダ100が走行するように自動操舵が実行される。このためモータグレーダ100は、予め設定された走行経路に沿って基本的には走行する。
【0139】
しかしながら検知誤差により、モータグレーダ100の走行経路が予め設定された走行経路からずれる場合がある。またオペレータの好みによりモータグレーダ100の走行経路を微調整したい場合もある。そこで本実施形態では、以下のように、第2モードの自動操舵中にオペレータがモータグレーダ100の走行経路を微調整することができる。
【0140】
オペレータは、第2モードの自動操舵において走行経路を微調整したい場合には方向修正入力部36を操作する。オペレータが方向修正入力部36の右ボタン36aおよび左ボタン36bのいずれかを押し操作することにより、方向修正入力部36により走行経路のオフセットを示す信号が発生される。
【0141】
方向修正入力部36はオフセットを示す信号を方向修正指令取得部40iへ出力する。方向修正指令取得部40iは、方向修正入力部36からオフセットを示す信号を取得したか否かにより、オフセットの入力操作があったか否かを判定する(ステップS16)。
【0142】
方向修正指令取得部40iがオフセットの入力操作がなかったと判定した場合には、方向修正部40hは予め設定された走行経路を維持する(ステップS17b)。この場合、モータグレーダ100が予め設定された走行経路を維持して走行するように、ステアリング指令信号生成部40dにより操向機構66は制御される(ステップS18)。
【0143】
一方、方向修正指令取得部40iがオフセットの入力操作があったと判定した場合、方向修正部40hは、方向修正指令取得部40iから取得したオフセットを示す信号に基づいて、モータグレーダ100の走行経路をオフセットする(ステップS17a)。
【0144】
方向修正部40hは、走行経路をオフセットする際に、記憶部40nに記憶された予め設定された走行経路の情報を参照する。方向修正部40hは、方向修正入力部36において右ボタンの押し操作がされたことを示す信号を取得した場合には、記憶部40nに記憶された走行経路をモータグレーダ100の進行方向に対して右側へオフセットさせる。また方向修正部40hは、方向修正入力部36において左ボタンの押し操作がされたことを示す信号を取得した場合には、記憶部40nに記憶された走行経路をモータグレーダ100の進行方向に対して左側へオフセットさせる。方向修正部40hは、オフセット後の走行経路を示す信号をステアリング指令信号生成部40dへ出力する。この場合、モータグレーダ100がオフセットされた走行経路に沿って走行するように、操向機構66がステアリング指令信号生成部40dにより制御される(ステップS18)。
【0145】
これにより、たとえば図8に示されるように、第2モードが選択された場合、走行経路がオフセットされ、オフセット前の走行経路からオフセット後の走行経路に沿うように、モータグレーダ100の進行方向がオフセット前の走行経路における進行方向から左右いずれかの方向に一定角度だけ調整される。
【0146】
この後、本実施形態の操向制御方法は、図5に示したステップS9~S10と同様のステップS9~S10を経る。以上により第2モードの自動操舵は終了する(ステップS10)。
【0147】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0148】
本実施形態においては、第1モードまたは第2モードにおいてモータグレーダ100の自動操舵が実行されている状態で、方向修正入力部36の入力操作指令に基づいて進行方向が左右のいずれかに一定角度だけ調整される。これによりオペレータがモータグレーダ100の進路のずれを微調整可能である。このため、方向検知センサ34などの検知誤差により自動操舵の経路から進路のずれが生じた場合またはオペレータの好みによりモータグレーダ100の進路を微調整したい場合に、進路を容易に微調整することができる。
【0149】
また上記進行方向の微調整をするに際しては、衛星測位システムを利用する必要は無い。このためシステムは安価にでき、目標経路を予め設定する必要もない。またトンネル内などの衛星の測位状態が悪い環境下でも用いることができる。よって安価かつ容易に進路を微調整することができる。
【0150】
また本実施形態によれば図4および図6に示されるように、コントローラ40は、自動操舵の制御開始時点におけるモータグレーダ100の進行方向を目標方向として操向機構66を制御することにより第1モードまたは第2モードの自動操舵を実行する。これにより目標方向の設定が容易となる。
【0151】
また本実施形態によれば図4および図6に示されるように、コントローラ40は、操向操作部67の操作が停止された状態が所定期間継続されたことに基づいて自動操舵を開始する。これによりオペレータによる自動操舵開始の手間を省くことが可能となる。
【0152】
また本実施形態によれば図4および図6に示されるように、コントローラ40は、自動操舵開始操作部からの開始指令に基づいて自動操舵を開始する。これによりオペレータの明確な意思によって自動操舵を開始することができる。
【0153】
また本実施形態によれば図4および図6に示されるように、コントローラ40は、衛星測位システムを利用して操向機構66を制御することにより第2モードの自動操舵を実行する。これにより第2モードの自動操舵においては、直線経路のみならず曲線経路の走行が可能になるとともに、高い走行精度を得ることができる。
【0154】
また本実施形態によれば図4に示されるように、第1モードと第2モードとを切り替えるモード切替部38が設けられている。これにより第1モードと第2モードとをオペレータが切り替えることができる。
【0155】
また本実施形態によれば、モード切替部38により第2モードに切り替えられた場合に、方向修正入力部36はモータグレーダ100をオフセット走行させる際のインターフェースとして機能する。これによりモード切替部38の操作によってオフセット走行が可能となる。
【0156】
なお図3に示されるコントローラ40は、作業機械100に搭載されていてもよく、作業機械100の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ40が作業機械100の外部に離れて配置されている場合、コントローラ40は、センサ31、32、34、37、GNSSレシーバ35、操作部33、36、38などと無線により接続されていてもよい。コントローラは、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0157】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0158】
11 運転室、11S 運転席、12 作業機、13 エンジンカバー、14 フロントフレーム、15 リアフレーム、16 前輪、17 後輪、18 車体フレーム、21 ブレード、22 ドローバ、23 旋回サークル、25 リフトシリンダ、28 アーティキュレートシリンダ、31 ハンドルセンサ、32 レバーセンサ、33 自動制御操作部、34 方向検知センサ、34a IMU、34b ステアリング角度センサ、34c アーティキュレート角度センサ、34d 撮像装置、35 GNSSレシーバ、36 方向修正入力部、36a 右ボタン、36b 左ボタン、37 FNR・車速検知センサ、38 モード切替部、40,C1,C2,C3 コントローラ、40a レバーセンサ計測値取得部、40b ハンドルセンサ計測値取得部、40c 方向信号取得部、40d ステアリング指令信号生成部、40e 停止信号取得部、40f 停止判定部、40g 現在方向特定部、40h 方向修正部、40i 方向修正指令取得部、40j GNSS信号取得部、40k 位置・方位取得部、40n 記憶部、41 ステアリングハンドル、42 ステアリングレバー、66 操向機構、67 操向操作部、71 操舵用パイロットバルブ、72 ステアリングバルブ、73 電気流体圧制御弁、74 ステアリングシリンダ、100 作業機械(モータグレーダ)、121 軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9